9月25-27日、「上海大島」をご訪問したもようを2回連続でお伝えしています。今回は後半、脇谷さんのダメ出し攻撃がさく裂します??
工場内を歩いていると、以前のインタビューでお客さんが「従業員の元気がいい」「まじめ」と評価してくれるという話がよくわかりました。素人目にも動きがきびきびしてむだがない。30年前の中国でもよく見た、手足をだらんと放り出すように、遠心力に任せたように動かす「やる気のない動作」というのがありません。自分の意志で身体を動かしている感じ、なのです。
たまたまお隣の敷地の現地メーカーの工場(上海大島とは提携関係なし)を覗くと、そこにはちゃんとあの「だらんとした動き」の従業員がいたので、違いがよくわかります。だらんとした動きは決して固有の文化というわけではなく、やらされ感がもたらすもの。自分がこの動作の主体だ、という自覚があればきびきびした動きになるのです。
そして、上海大島では問題があったらぱっとそこに2.3人集まって話し、携帯でどこかへ連絡をとっている。そうした風景がこの日もみることができました(残念、写真が撮れなかった)。
問題はないに越したほうがいいのでしょうが、ぱっと身体を動かして集まるその身体の動きは見ていても気持ちのいいものです。
「ぼくは『見える化』って、問題があったらその現場ですぐ見えることだと思ってるんです」と脇谷さん。
(あとで正田が思ったこと。こうして「問題が起きても面倒がらずにその都度タフに対処する」姿勢があれば、現地メーカー、現地製マシンを使っていても弱点にはならないのかもしれないな〜、と。)
もっとも、素人にはわからないけれど不合理な動きというのはやっぱりあるよう。この日もプレス機に向かう1人の女性作業者が、右手に完成品をもって離さないまま次の材料をセットしようとするので効率が悪い。これは指摘しても本人は「右手に持っているから『右手のは完成品』と思って、作業の順序がわかるんだ」と聞き入れないよう。それは「どうしたらもっと効率がいいか、考えて」と宿題にしてあります。
工場内に新しいお客さんから届いた年代ものの金型が積んでありました。一部、安定の悪い積み方で危なくなっています。
「これどう思う?」
脇谷さんが張さんに。
肩をすくめる張さん。
「今これ(危険な状況)をどうしたらいいかということと、どうやったらこういうことが起きなくなるか、その両方考えて」。
脇谷さんがこちらに来るのは1か月に1週間ほど。
来たらその都度指摘することが色々ありますが、極力「考えて」と宿題として投げて、中国スタッフ自身に考えさせます。
「だから僕嫌われものですけどね。ああ言っておいたら、次来る前にちゃんと考えて改善してくれてます」
「そして、改善してくれたら必ずほめてやって、定着させる。これが向上したことをそのまま維持してもらうために大事なポイントなんですよね。今、その『改善してくれたらほめる』ということを、張君、潘君から主管クラスまで徹底して言っています」
ほめる/承認には、相手の自律性をアップさせるはたらきがあります。最初はリクエストされてやったことであっても、それをほめてもらうと、次回から自然と同じようにする。それは言われてやったことではなく自ら選択してやったことになりますから、「自発的行動」と言えます。行動が自分の血肉になるのです。
工場の中の食堂と調理室。定年で自分の経営する食堂を畳んだコックさんを雇っています。毎日4品ほどの作りたての中華料理が並び、従業員さん同士卓の上でつついて食べる。50人ほどの工場で専属のコックさんを雇うのはかなり珍しいことのよう。普通はお弁当を配達してもらう、ただし美味しくはないそうです
そして夜は2日間とも従業員さん一緒の宴会で歓迎してくださいました
名物「乾杯(カンペイ)」の嵐。正田は「日式乾杯」といって一口のむだけで勘弁してもらいました。隣の脇谷さんは従業員からの献杯にはちゃんとグラスを空けてはります。総経理は大変…。「彼らと飲むと部屋に帰ってバタンキューなんですよ」。
男性も女性も元気にポンポン言い合ってます
元気な女性たち。左から金型設計者の梁さん、営業の謝さん、品管主管の虞さんと私。この30代の女性たちが上海大島の第二世代で、次世代リーダーたちです
男性陣。一番右から治具の作り手でもあるドライバーの鐘さん、それに提携先の現地金型メーカーである「上海合亜精密模具有限公司」の董事長の王緒光さんと経理の朱建軍さん。王さんと朱さんはあんまり似てないが兄弟。現地金型メーカーに日本式の生産方式を教え育てて提携するのも上海大島の強みのひとつ。他社だけどこれも脇谷さん流の「仲間」なのです。
(「上海合亜」の現場をみにいくと、脇谷さんは「(汚い所に)あれはないやろー」とか「作業者が安全装置を切っている」とダメ出しをしまくっています。その都度王さん朱さんにきっちり直してもらいます。掃除はだいぶ綺麗になってきたそうです)
男性陣はこのあとみんなでカラオケに行ったそうです
女性陣は、上海観光名所・「外灘(ワイタン)」に行って女子会としゃれこみました
「彼らは仕事も遊びも全力投球なんですよ」(脇谷さん)
「僕は日本人や中国人、男性と女性、関係なくみんなが持っている力を発揮したらいいと思っています。もちろん女性は出産や家庭のこと色々ありますが、その担っているものの大変さも理解したうえで平等に。
こうして隔てのない世界がここにあるんだということを日本の皆さんにも知ってほしいです」
自身3人のお子さんのパパであり、人を育てることに一家言もつ脇谷さんは言います。
お金はケチケチ路線だけれど、元気に仕事し元気に遊ぶ、国籍性別関係なく意見を戦わせる上海大島での駆け足の3日間は終わりました。新しいお取引先も増えさらなる業容拡大は必至とみえるなか、一部のIT企業のようなフラットで自由闊達な空気というのはこれからも維持されるのでしょうか。楽しみであります。
シリーズ「『承認中国工場』・上海大島の奇跡」
「とにかく現場を見てください」で仕事が来る中国工場―脇谷泰之さん(大島金属工業執行役員)インタビュー
http://c-c-a.blog.jp/archives/51857608.html
「責めない現場」は可能か?脇谷さんインタビュー(2)
http://c-c-a.blog.jp/archives/51866966.html
承認の輸出先 「上海大島」訪問記(1) 手作り治具にウルトラC改善・知恵と工夫の戦場上海
http://c-c-a.blog.jp/archives/51871514.html
承認の輸出先 「上海大島」訪問記(2) ―「僕嫌われ者ですよ」―「まじめ」「元気」な現場づくりはダメ出しと質問と承認の風景
http://c-c-a.blog.jp/archives/51871516.html
ものづくり企業を元気にしたい!元気な現場、自然さと合理精神、グローバルリーダー―脇谷さんとの対話
http://c-c-a.blog.jp/archives/51891670.html
100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp
工場内を歩いていると、以前のインタビューでお客さんが「従業員の元気がいい」「まじめ」と評価してくれるという話がよくわかりました。素人目にも動きがきびきびしてむだがない。30年前の中国でもよく見た、手足をだらんと放り出すように、遠心力に任せたように動かす「やる気のない動作」というのがありません。自分の意志で身体を動かしている感じ、なのです。
たまたまお隣の敷地の現地メーカーの工場(上海大島とは提携関係なし)を覗くと、そこにはちゃんとあの「だらんとした動き」の従業員がいたので、違いがよくわかります。だらんとした動きは決して固有の文化というわけではなく、やらされ感がもたらすもの。自分がこの動作の主体だ、という自覚があればきびきびした動きになるのです。
そして、上海大島では問題があったらぱっとそこに2.3人集まって話し、携帯でどこかへ連絡をとっている。そうした風景がこの日もみることができました(残念、写真が撮れなかった)。
問題はないに越したほうがいいのでしょうが、ぱっと身体を動かして集まるその身体の動きは見ていても気持ちのいいものです。
「ぼくは『見える化』って、問題があったらその現場ですぐ見えることだと思ってるんです」と脇谷さん。
(あとで正田が思ったこと。こうして「問題が起きても面倒がらずにその都度タフに対処する」姿勢があれば、現地メーカー、現地製マシンを使っていても弱点にはならないのかもしれないな〜、と。)
もっとも、素人にはわからないけれど不合理な動きというのはやっぱりあるよう。この日もプレス機に向かう1人の女性作業者が、右手に完成品をもって離さないまま次の材料をセットしようとするので効率が悪い。これは指摘しても本人は「右手に持っているから『右手のは完成品』と思って、作業の順序がわかるんだ」と聞き入れないよう。それは「どうしたらもっと効率がいいか、考えて」と宿題にしてあります。
工場内に新しいお客さんから届いた年代ものの金型が積んでありました。一部、安定の悪い積み方で危なくなっています。
「これどう思う?」
脇谷さんが張さんに。
肩をすくめる張さん。
「今これ(危険な状況)をどうしたらいいかということと、どうやったらこういうことが起きなくなるか、その両方考えて」。
脇谷さんがこちらに来るのは1か月に1週間ほど。
来たらその都度指摘することが色々ありますが、極力「考えて」と宿題として投げて、中国スタッフ自身に考えさせます。
「だから僕嫌われものですけどね。ああ言っておいたら、次来る前にちゃんと考えて改善してくれてます」
「そして、改善してくれたら必ずほめてやって、定着させる。これが向上したことをそのまま維持してもらうために大事なポイントなんですよね。今、その『改善してくれたらほめる』ということを、張君、潘君から主管クラスまで徹底して言っています」
ほめる/承認には、相手の自律性をアップさせるはたらきがあります。最初はリクエストされてやったことであっても、それをほめてもらうと、次回から自然と同じようにする。それは言われてやったことではなく自ら選択してやったことになりますから、「自発的行動」と言えます。行動が自分の血肉になるのです。
工場の中の食堂と調理室。定年で自分の経営する食堂を畳んだコックさんを雇っています。毎日4品ほどの作りたての中華料理が並び、従業員さん同士卓の上でつついて食べる。50人ほどの工場で専属のコックさんを雇うのはかなり珍しいことのよう。普通はお弁当を配達してもらう、ただし美味しくはないそうです
そして夜は2日間とも従業員さん一緒の宴会で歓迎してくださいました
名物「乾杯(カンペイ)」の嵐。正田は「日式乾杯」といって一口のむだけで勘弁してもらいました。隣の脇谷さんは従業員からの献杯にはちゃんとグラスを空けてはります。総経理は大変…。「彼らと飲むと部屋に帰ってバタンキューなんですよ」。
男性も女性も元気にポンポン言い合ってます
元気な女性たち。左から金型設計者の梁さん、営業の謝さん、品管主管の虞さんと私。この30代の女性たちが上海大島の第二世代で、次世代リーダーたちです
男性陣。一番右から治具の作り手でもあるドライバーの鐘さん、それに提携先の現地金型メーカーである「上海合亜精密模具有限公司」の董事長の王緒光さんと経理の朱建軍さん。王さんと朱さんはあんまり似てないが兄弟。現地金型メーカーに日本式の生産方式を教え育てて提携するのも上海大島の強みのひとつ。他社だけどこれも脇谷さん流の「仲間」なのです。
(「上海合亜」の現場をみにいくと、脇谷さんは「(汚い所に)あれはないやろー」とか「作業者が安全装置を切っている」とダメ出しをしまくっています。その都度王さん朱さんにきっちり直してもらいます。掃除はだいぶ綺麗になってきたそうです)
男性陣はこのあとみんなでカラオケに行ったそうです
女性陣は、上海観光名所・「外灘(ワイタン)」に行って女子会としゃれこみました
「彼らは仕事も遊びも全力投球なんですよ」(脇谷さん)
「僕は日本人や中国人、男性と女性、関係なくみんなが持っている力を発揮したらいいと思っています。もちろん女性は出産や家庭のこと色々ありますが、その担っているものの大変さも理解したうえで平等に。
こうして隔てのない世界がここにあるんだということを日本の皆さんにも知ってほしいです」
自身3人のお子さんのパパであり、人を育てることに一家言もつ脇谷さんは言います。
お金はケチケチ路線だけれど、元気に仕事し元気に遊ぶ、国籍性別関係なく意見を戦わせる上海大島での駆け足の3日間は終わりました。新しいお取引先も増えさらなる業容拡大は必至とみえるなか、一部のIT企業のようなフラットで自由闊達な空気というのはこれからも維持されるのでしょうか。楽しみであります。
シリーズ「『承認中国工場』・上海大島の奇跡」
「とにかく現場を見てください」で仕事が来る中国工場―脇谷泰之さん(大島金属工業執行役員)インタビュー
http://c-c-a.blog.jp/archives/51857608.html
「責めない現場」は可能か?脇谷さんインタビュー(2)
http://c-c-a.blog.jp/archives/51866966.html
承認の輸出先 「上海大島」訪問記(1) 手作り治具にウルトラC改善・知恵と工夫の戦場上海
http://c-c-a.blog.jp/archives/51871514.html
承認の輸出先 「上海大島」訪問記(2) ―「僕嫌われ者ですよ」―「まじめ」「元気」な現場づくりはダメ出しと質問と承認の風景
http://c-c-a.blog.jp/archives/51871516.html
ものづくり企業を元気にしたい!元気な現場、自然さと合理精神、グローバルリーダー―脇谷さんとの対話
http://c-c-a.blog.jp/archives/51891670.html
100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp