正田佐与の 愛するこの世界

神戸の1位マネジャー育成の研修講師・正田佐与が、「承認と職場」、「よのなかカフェ」などの日常を通じて日本人と仕事の幸福な関係を語ります。現役リーダーたちが「このブログを読んでいればマネジメントがわかる」と絶賛。 現在、心ならずも「アドラー心理学批判」と「『「学力」の経済学』批判」でアクセス急増中。コメントは承認制です

2014年02月

 『自閉症という謎に迫る―研究最前線報告』(金沢大学子どものこころの発達研究センター監修、小学館新書、2013年12月)を読みました。


 なぜこのところこんなに「自閉症」「発達障害」にこだわっているのかというと、その予想をはるかに超える出現率ともあわせ、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」の「敵」あるいは「己」に、その自閉症の性質が深く関わっているのではないかと思うからです。


 そんなことを言っているうちに、本日は面白い”事件”がありました。

 神戸で開催した女性活躍推進のシンポジウムのコーディネーターをされたダイバーシティーの専門家・渥美由喜氏が、冒頭あいさつの中で

「カミングアウトします。私、アスペルガーです。」

と言われたのです。数年前の来神のとき(2010年だったカナ)には言ってなかった。

 あとでお名刺交換して質すと、「ああ、最近言うようにしてるんですよ。大事でしょ?」とのことでした。

 私は承認という、ダイバーシティーに関連の深い手法の普及をしていること、最近「発達障害」にとりわけ関心をもっていること、などをご紹介しました。どうもやっぱりタイムリーな話題のようでした。


 いつもの伝で本書『自閉症の謎に迫る』の印象的だったところをご紹介します。


●自閉症スペクトラムあるいは自閉症スペクトラム障害について。自閉症の症状はスペクトラム状に現れて、自閉症の人とそうでない人を絶対的に区別することは非常に難しい。

●スペクトラムという考えを前提とすると、自閉的な傾向というものはすべての人にあるということになり、そのような傾向が濃いのか薄いのか、濃淡の違いにすぎないとも言える。ただし、誰でも自閉的な傾向があるからといって、すべての人に同じように問題が生じるかというとそうではなく、やはり自閉的な傾向が強いことによって、「生きにくい」状況を招くことは多々あるように思われる。


●青年期以降の自閉症をスクリーニングする自記式テストAQ(自閉症スペクトラム指数)。ネット上で無料で受検できる。たとえばhttp://www.the-fortuneteller.com/asperger/aq-j.htmlなど。質問項目50で50点満点。33点以上だと自閉症と診断される割合が一気に高くなる。健常大学生で33点を超える人は3%しかおらず、一方自閉症の診断を受けている人の9割弱が33点を超える。
 ひきこもり女でこだわり症の正田が上記のAQを試してみると、どれも真ん中へん(つまり「すごくそう思う」とか「全然そう思わない」ではないもの)の回答になり20点でした。ほんとか正田。本章の著者(大学教授)はいつも40点代後半だというが、正田は自分に甘いのかもしれません。
 えと、読者の方で「自分も怪しいかも?」と思われる方は、是非上記のサイトでお試しください…。


●自閉症の人の親やきょうだいに自閉症の徴候が部分的に見られる様態をBAP(Broader Autism Phenotype)という。自閉症とは診断されないきょうだいに、微妙な感情表出の苦手さがあったり、コミュニケーションの不得意があったりする。親は、人柄がよそよそしいとか、硬いとか、言語を対人的に使うのが不得手だとかいう報告がある。自閉症児の父親の他者の視線の動きに対する反応速度が、定型発達児の父親に比べて微妙に(0.04秒!)遅れるとする報告もある。

●一般大学生の専攻やパーソナリティとAQとの関連をみた研究では、英国でAQが高いと神経症傾向が強く、外向性と同調性が低かった。男子は女子よりも、また、物理や化学専攻の学生はそうでない学生よりもAQが高かった。興味深いことに、親が科学に関する仕事をしている学生は、そうでない学生よりもAQが高かった。日本では高知大学が一般学生にAQを実施したところ、文系学部よりも理系学部の学生のAQが高かった。

●自閉症はカテゴリでなく、程度問題に、すなわち量的に測定されるものに概念を変えることが今後検討されるだろう。(太字正田)


―ここなのです。私がこのところ「自閉症」について延々と考える理由は。わたしたち定型発達者の中にもある自閉傾向(ほんとは正田にも「おおあり」のはず)を考えることで、従来の人材育成の壁を突破できないか、と考えています。
 あっすいません突拍子もなくみえるでしょうが一応「12年、1位マネージャーを生んできました」の人が考えることだ、と思ってくださいね。当協会の会員さんぐらいは、ご理解くださるでしょうか・・・。


●自閉症はバイオマーカーではなく、行動特徴の定義に基づいて診断される。AQで勝手に自己診断しちゃいけません、あれはあくまで参考指標。観察や家族への聞き取り手続きが厳密に工夫される。が、所詮は観察し、聞き取りを行う専門家の直観に依存している。

―以前、「採用面接で発達障害を見抜けるか」と問われたことがあり、「セルフモニタリングが下手でできないことをできると答えてしまうことがある言行不一致の特徴を考えると、面接では見抜けない可能性がある。職場で日々行動をみているマネージャーが一番よくわかる」と答えました。


●発達障害の診断概念が広がり、それが一因となって診断が急増した。2012年にDSM-5が定められ、自閉症の診断名がそれまでの広汎性発達障害から、自閉症スペクトラム障害(ASD)に一本化された。ASD三基準の第一基準は、文脈の違いを超えた対人コミュニケーションの永続的な欠陥、第二が限局された行動、興味、あるいは活動の反復様式。三番目がこれらの徴候の小児期早期の発現だ。


●本書では落語「池田の猪買い」と「宿替え」を紹介する。古典落語に登場するおかしな人、粗忽な人はやっぱり発達障害だったっぽいのだ。正田は以前きいた落語で「これは絶対発達障害」と思ったやつをいまだに思い出せない…。


●「心の理論」の欠如は自閉症の専売特許ではない。

●自閉症状説明能力の高い理論構築が進んでいる。
1つめは、ローソンによる心の深部アクセス困難モデル(DAD)は、自閉症者が世界を、互いに結びつきのない原子論的現実に還元してしまっているとする。自閉症者の体験する世界は、膨大な、しかしばらばらな現実のモザイク、それの再現が興味や行動の反復性として現れ、対人コミュニケーションでは字義拘泥や文脈情報利用の失敗となる。

●2つめは、意識の進化論についての社会脳モデルだ。エーデルマンは低い水準の意識が、体から脳に遡上する価値感情と脳が外界から得てきた表象イメージの結合から成ると考える。この考えを自閉症に当てはめると、自己意識不全、ばらばらなモザイク的な体験世界、それらからもたらされる字義的な言語、他者理解の困難、反復的行動など、自閉症の謎が一挙に説明できるモデルが導かれる。感覚異常は、視床下部や扁桃体が担っている体内からの価値感情と表象イメージの結合の不全とみなせる。


―先日ご紹介した綾屋皐月氏の当事者研究に表れる独特の感覚は、上記2つのどちらにも当てはまりそうです。


●自閉症の地域差、民族差。英語圏に比べやや日本の方が高い。1万人あたりでみると、2006年に報告された名古屋市西部地域の調査では210人、2008年の豊田市地域についての報告では181人だ。これに対し、2011年のイギリスは全国的には98人、2006年の大ロンドンに属する大都市圏サウステムズ地域の報告では116人だった。アメリカでは、2008年連邦全体14か所調査では113人だった。


●世界最高の発現率を報告したのは韓国(246人)。大半が気づかれず、診断もされていないし、特別な教育も受けていなかった。これは勉強重視の韓国社会では社会性の問題は重視されないからだと調査者たちは考えている。一方台湾では34人と少ない。

―診断しないのは「障害者への差別、偏見」の問題もあるんでしょうか。わたしは、社会全体の嫌悪等のネガティブな感情の出現に発達障害は大いに関わっているのではないかと、韓国のこのデータに出会う以前から思っていましたが・・・。適切な療育を施せば、それは減らすことができるのではないでしょうか


●BRICSでは、ブラジルが2012年に27人、2004年から2005年の中国の天津市で10・9―13・9人と先進国よりはるかに少ない。しかも重症例がほとんどだ。先進国では知的な遅れのない事例が多数派であるのと大きく違っている。自閉症は行動観察で診断されるので、同じ生物的状態が社会文化の影響を受けて、異なる臨床的な判定になる可能性がある。


―ここからは発達障害の出現率増加の原因を追った章です。

―次の項は仮説とことわっていますが中々ショッキングなことを言っています。

●荒唐無稽に聞こえることを承知で次の仮説を書く。自閉症発現の急増は冷戦崩壊による資本のグローバル化にともなって生じた歴史的現象の可能性がある。経済活動のグローバル化が生み出す過剰な社会的ストレスが、母体もしくは養育初期の母親に影響を与える。それが、社交が苦手で論理優勢型の素質をもつ子どもの脳のあり方を変えてしまっている(例えば脳内オキシトシン放出の低下)。

―岡田尊司『発達障害と呼ばないで』も、母親との愛着関係の弱さを愛着障害―発達障害急増の原因としていましたね。うーむ男女共同参画に暗雲か?でも日本と韓国、女性は大して働いてないのに何で。

●2011年、カリフォルニアの研究チームが明らかにしたところでは、出産の時期または妊娠第三期に母親が、カリフォルニアのフリーウェイから309メートル以内に居住していることが自閉症発現を倍にしていた。この結果が衝撃的なのは、大気汚染がからんでいそうなことだ。

●大気汚染が引き起こすのは免疫疾患、つまりアレルギーの悪化だ。アレルギーは自閉症と関係している。幼児の鼻アレルギーとASQの得点に有意な関連が見つかった。アレルギーのみならず自己免疫疾患(多発性硬化症や強直性脊椎炎)が自閉症に関連しているとする研究報告もある。

●多剤耐性菌(MRSA)の感染も神経毒をもたらすことで自閉症になるリスクがある。


●都市生活は、農村や自然豊かな郊外に比べて、母体と胎児あるいは乳幼児の脳に好ましくない影響を与えることがわかっている。都市生活は、妊娠後期の母体のストレスに反応して放出されるコルチゾールを増やし、子どもが7歳になった時点で追跡すると、感情と記憶をつかさどる扁桃体および海馬の体積に影響している。また幼少期の都市生活は大脳辺縁系とネガティブな感情の調整をつかさどる前帯状回に影響を与えることもわかっている。

―一時期正田が傾倒していたデンマーク式教育のフリースクールの主宰者、これは某有名ビジネススクールの講師でしたがこの人が曰く、「事を成した人は子ども時代自然豊かな環境で育っている」。まあそれに当てはまらない人もようさんいると思いますけどね、その当時何の根拠もなかったけれど私は結構真実だと思っていました。


●自閉症の発現原因を調べるためアメリカでは自閉症の双生児研究やきょうだい研究が大規模に行われている。研究者たちの予測は、遺伝と環境の累積効果がある閾値に達した場合に自閉症が発現するというものだ。ホットトピックの一つは、アレルギー・炎症反応・自己免疫疾患など過剰免疫問題と自閉症の関連だ。脱工業化社会でのヒトの生物的環境(土壌菌・人体菌・寄生虫)の枯渇、ビタミンD不足、運動不足やストレス過剰が自閉症を含む一連の問題の根底にあるのではという仮説も立てられている。



―ここからは自閉症の療育のさまざまな技法について。


●自閉症に関する療育技術にほとんど効果は実証されていない。TEEACHは総体として効果を上げているが、TEACCHの技法の一つ視覚的構造化自体には本家ですら効果が検証されていない。

―あらそうですか。でも今度の合宿でTEACCHについてレクチャーしてもらうもんねー。

●ロバースに始まる応用行動分析(ABA)はアメリカ厚生省が唯一効果を公認している技法だが、長期予後は確認されていない。

●アメリカで効果が実証されつつあるのは、親子の相互作用を自然に充実する技法、社交を中心とする小集団活動だ。

―相互作用を自然に充実、って要するに「承認」でいいんじゃないのかな。それは早計か。


―このあとは自閉症治療にたいするオキシトシンの有用性の話題。鼻に噴霧するのですが、はっきりわかる程度に行動が変わるらしい。ただ噴霧している期間しか効果が持続しないようです。
またオキシトシン投与による人格変容が完全に望ましいものかどうかは慎重に見極めないといけないともいいます。自部署の人にはそれまでより打ち解けたが初対面の人に冷淡になった、いわばセクショナリズムがきつくなった、的な報告もあるのです。


●「自閉的文化」なる言い回し。英国よりも日本のほうが自閉症傾向が強そうだ、あるいはそう自己評価しているようだ。

―お叱りを受けそうだけれどわたしは以前から「日本は自閉症社会なのではないか」―つまり、英米より高い率で自閉症者を有していることで、その特徴をより大きく反映した文化社会のありかたになっており、「男尊女卑」や「飲酒文化」もその延長上にあるのではないか、と考えているのですね。
 2つ前の記事の『日本軍と日本兵』に関する記事も、登場する軍の上官とか自閉症っぽいじゃないですか。
 だんだん「自閉症」「発達障害」という言葉が人口に膾炙して、「私、AQいくついくつです」っていう自己紹介が普通になって、「そうですかそれじゃ承認研修の受講はムリっぽいですね〜」とか言って、自閉症が差別語でなく普通に語られる、ようになるとこの国は少しはましになりそうな気がします。
 で、マネージャーにはなるべく「心の理論」ができてる人がなってもらって、その人たちは「心の理論」をこれまでよりはるかに修練して高めてもらい、発達障害者も女性もその他マイノリティや「制約社員」も全部包含してマネジメントできるようになってもらい、優れた組織をつくってもらうといいと思うのです。日本人の強みは「勤勉性」による「修練」ですからね。



 本当はこの記事でもう一冊触れたかったのですが既に長くなってしまったので、次にゆずります・・・



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

 これも、フェイスブックには一度書いた話題で、たぶんあまり多くの人の目に触れることはないだろう、と思って書きます。

 お客様がメールをくださり、私の営業先にわざわざ電話をしてくださったそうでした。

 
「先生は君の話を聞く態度が怖いみたいだよ。優しく真剣に聞いてあげてね。」
「先生は元々強く営業はされない方だから、そのあたりを斟酌して対応してあげてください。われわれのところでも実績を上げておられますよ。」


 先生の実績と講座のわかりやすさ、そして顕著に効果が表れることを先方に植え付けて(脳に刷り込んで)あげることが大切かと…。

頑張ってください。




 有難いなあ。涙が出そうでした。

 お客様にこんなに気をまわしていただいたことへの感謝と後ろめたさが出たあとで、

 押し寄せてきたのはここ12年に自分が背負い続けてきたものの疲れでした。


 長いあいだ、「ひとり」でした。受講生様方が報告してくださる成果が、コーチングはおろかすべてのコンサルティング、研修業界を見渡しても例のないものでしたが、

 それを一介の女のわたしが言い続けることで、ごく一部の人は別として大半の人からは、「大言壮語」する「誇大妄想」の女、頭のおかしい女、とみられてきました。

 そういう視線を浴びながら生き続けることがどれほど苦しいか、ご想像がつくでしょうか。

 ―でもわたしの言うことが一見理想論に見えるけれど単なるオピニオンや仮説ではない、ということも言わないといけないのです。しょっちゅうそれらと混同されます―


 これまでも、「〇×社に行ってみなさいよ」と公的支援機関の人などに示唆されたことはあったけれど、私が出向いてもそこにいるのは、今からきくのがどれほどスケールの大きな話でかつ真実の話か、ということがイメージできていない人です。


 そういう人に対して「この話」をする、というときの困難さは、単に「あんたが頑張ればいいだけじゃないか」というものではないのです。プレゼンスキルとかの問題ではないのです。


 
 いちばん正直な話を言うと、教育する主体としての私と、広告宣伝する主体が早く分かれてほしい、とも思っています。共通の願いをもち、かつ直接の担い手は私、と割り振れる人ですね・・・。


 でも林義記さんのように、ご自分の判断でそのように行動してくださる会員さんもいらっしゃいますが。


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 かっこ悪い話ですが、最近、企業・組織単位でおつきあいするお客様に、「私を『先生』と呼んでください」とご要望することが続きました。
 そういうことを申し上げないでも最初から「先生」と呼んでくださる組織の長のかたもいらっしゃいます。

 もちろん個人的なおつきあいや、長いおつきあいの会員さんはこれまで通り「さん」づけしていただいていいのです。


 この問題も長年考えてきました。2009年夏の北中寿氏との対談では、

「日本人は『さん』ではいけないのかなと思います」

「英国ではプロフ(Prof)です。日本人と中国人はアメリカの考え方を輸入すると先生に対してひどい態度をとってしまいますね」

というやりとりをしています。


 組織単位のとき「先生」のほうがいいというのは、「さん」づけでもリスペクトを込めてそう言っている人と、隣のお姉さんとかおばさんとかとの境目がない感覚で「さん」と言っている人とが混在してしまい、とりわけ往々にして直接の担当者(多くの場合比較的年齢が若い)が、何のリスペクトも込めずに「さん」と呼んでしまう。

ひょっとしたら、若さとか知性の種類によっては、人の分類が「上か下」しかありえず、「対等」は存在しない。そういう人にとっては自組織の上司は「○×課長」と呼んだりして「上」ですが、「さん」で呼ぶ外部講師の人は「下」に分類してしまっている可能性があるのです。

  ただ「さん」と呼ぶだけでなく、仕事の仕方が「だらしなく」なる、のが深刻に困るのです。先日も書いたような「パワポ使用は必須」と伝えてあるのに使用できない会場を選ぶ、何とか使用するための努力をしようとしない、みたいな現象に私は過剰な「甘え」を感じます。仕事としての厳しさがなくなってしまいます。

 日本はまだそれぐらい、女性に対する無意識の「甘え」と「見下し」のある国なのです。





100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp


 

 『日本軍と日本兵―米軍報告書は語る』(一ノ瀬俊也、講談社現代新書、2014年1月)を読みました。

 「風立ちぬ」や「永遠の0」大人気、ともすればあの時代を美化しそうな風潮の時代にタイムリーな本なのではないかと思います。

 アメリカ兵や将校からみたわが日本軍は、悲惨ではあるが同時につっこみどころ満載の人達であります。

 わたしはここ数年「日本人の遺伝子的特性」など「日本人とは」に言及することが多いですが、日本人が嫌いなわけではありません。「世界で一番好きな民族は?」ときかれたら、やっぱり「日本人」と答えるでしょう。結婚以来住んでいる神戸・兵庫の風土が好きなようにそれは理屈ではないものです。


 ただわたしにはおそらく「面子」の感覚があまりないので、日本人の劣った部分を考えたり言及したりすることに抵抗がありません。興味は、そうしたもろもろの特性をもった日本人をいかに教育の力で向上させ優秀たらしめるか、にあります。そういう考え方が不遜なのか、しかしそういう考え方をする女のもとで受講生様が引き続き成果を挙げてくださるのだからしょうがないです。


 で、本書はある意味現代に通じる「日本人」をあぶり出す気がするので、ガダルカナルとかレイテとか硫黄島とか戦地の名前には相変わらず興味がもてないまま、本書の記述をなぞってみよう、と思うのであります。半藤一利さんの本とか頭に入らなくて投げ出しちゃったんだよね。


 ここでは交戦中に発行された、「IB」―Intelligence Bulletin―という、アメリカ軍の軍内報のようなものの記事から大量に引用しています。


●(日本軍の)訓練はたぶんどの国の陸軍よりも厳しいものだ。・・・体罰はひどいものだ。兵は上官に殴られ、蹴られている間直立していなくてはならない。もしビンタを受け損なえば立ち上がって直立し、再び罰を受けねばならない。…上級の者はそれがささいな怒りによるものでも、いつでも罰を加える権限を持っている。


●軍隊内から暴力がけっしてなくならないのは、殴られている者もやがて下級者が来たら彼らを殴れる立場になるからだ。


―去年の初めマスコミを賑わした「体罰」。漫画「柔道部物語」で、こうした先輩から後輩へ引き継がれる体罰を肯定的に描いてましたが・・・。



●日本軍は口頭、文書上の指示において「軍紀」「士気の改善」「軍の改革」「戦闘力の改善」「天皇のための死」「兄弟のごときチームワーク」を個人、集団、多様な部隊、軍に対し非常に強調しているものの、「軍指導者の望むような士気、戦闘能力の状態は達成されないことが多い。

●日本兵の個人的長所は、肉体的には頑健である。準備された防御では死ぬまで戦う。特に戦友が周囲にいたり、地の利を得ている時には大胆かつ勇敢である。規律(特に射撃規律)はおおむね良好である(すなわち上官の命令による一斉射撃は良好)


●日本兵の短所は、予想していなかったことに直面するとパニックに陥る、戦闘のあいだ常に決然としているわけではない、多くは射撃が下手である、時に自分で物を考えず『自分で』となると何も考えられなくなる。


●日本兵は銃剣戦において一対一の対決を避け、「直突」すなわち「突き」ばかりを用い、「剣術」ができなかったり銃床で殴るという技を知らなかったりで、そこを米兵に衝かれていたというのである。


●(敵の)火線へ飛び込む意志はあるものの、将校に続いて突撃するのをためらっている兵たちをみたことがある。あるときなどは、将校が突撃と絶叫して何百ヤードか進んだところで誰もついてこないことに気付いた。彼は舞い戻って兵たちを殴りつけ、そして突撃した。

―マンガチックだが今もこういう勇猛果敢な上司と臆病な部下の乖離はありそうだ…。


●日本の下級将校は下士官よりいいものは食べていない。食べ物は兵と同じもので、若干品数が違うだけだ。上級将校は王侯のような食生活をしている。日本陸軍の組織の擬似的平等性。同じ物を食べていたことが、将校と下士官、兵を心情的に結びつける効果を発揮していた。宴会では中隊長も兵も一緒に酒を飲んでいた。

●1943年に私が出会った日本兵は完全に戦争に飽いていた。彼らは熱帯を呪い、日本に帰りたいと願っていた。都会の日本兵は映画のおかげで親米(pro-American)である。対米戦争当初の日本にはアメリカ人に対する蔑称らしいものがなく「鬼畜米英」が盛んに叫ばれるのは44年に入ってから、つまり実際には対米戦意が高いとはけっしていえなかったという。


●日本人は決して天皇・ヤスクニ大事で戦っていたわけではなく、味方の暴力を怖れて戦っていた。思考能力は米兵からみて三流。

―わたしは今も「日本人ビビり」説をとっているが、恐怖心の強く働きやすい人を動かすのに暴力という、より身近な恐怖を与えることが有効と軍の上官は考えていたようだ。それはもちろん思考力の低下を招き、指示待ち人間をつくる。

ーついでにいうと日本人は元々あんまり頭が良くないかもしれない。最も高いIQと関連づけられる遺伝子スニッブの持ち主はごくわずかで、国際比較でみても低率だ。これは、社会全体の抽象的思考能力の弱さと恐らく関連しそうだ。それでも一部には「知能遺伝子」を持った人がいるわけで、こうした人々の存在が、全体像を正しく把握することを阻んでいるという意味のことを岡田尊司氏が言っている。


●日本兵同士は互いに愛情がなく、他隊の手伝いをしない。親分子分関係によるセクショナリズム。


●米軍は日本兵を捕虜にとらえると手厚く遇した。それは日本人がその特有の面子の感覚で、好意を受けたらお返しをしなければならないと思っており、厚遇のお返しに自国の機密を教えることもやぶさかでなかったからである。


ー米軍内の呼びかけとして、「あなた(米兵)が捕虜に対して嫌悪や侮蔑の感情を持ったらいい情報はえられない。正しく扱え」というのがあるが、現代のマネジメントにも大いに通じそうな思想。当協会方式の「承認」に「リスペクト」という要素を入れて割とうるさく言うのは、「見下しの感情を持つな」と言うことだけど、結構な修練を要する難しいこと。当時のアメリカ兵には容易だったのだろうか。謎


●一方で日本軍が連合国軍兵を捕虜に捉えたばあいは、「腕力」に頼り「上から目線」で尋問することをよしとしていた。ここでも工夫のない日本軍。


●日本兵は遺体の回収は熱心で死者に対しては丁重だが生きて苦しむ傷病者にはそうではない。撤退時には自決を勧める。


―井坂昭彦なんかによると昔から日本人は死者にたたられるのを異様に恐れてそれが行動原理になっているようですが・・・、
過去に臓器移植の議論で感じた不毛さにも通じそうな気がするし現代の若者や子育てに優しくない社会にも通じそう。過去になったものが好きで未来は重要じゃない。だから私も死にたくなるのカナー。


 このあとは戦場で「医療」を軽視する日本軍の話が続きます。


●医療が戦の勝敗を決めるとはどういうことか。例えばガダルカナル作戦での勝敗の差は、日本兵がマラリア、脚気、腸炎で弱って敗北が明らかになるまではわずかであった。ガダルカナルには4万2000人の日本軍がいたとされるが、その半分以上が病気や飢餓で死亡し、負傷者の80パーセント以上が不適切な治療、医療材料の不足、後送する意思と能力の欠如により死亡したとみられる。

●日本軍の短期決戦思想に基づく補給の軽視はよく指摘されるが、医療もまた当事者の言葉によれば「金がないから」という実に官僚的な理由で軽視されていたのであった。
 上から一方的に”滅私”と称して苦痛への我慢を要求する日本軍のやり方が、結果的に兵士たちの精神力・体力―軍の戦力ダウンとなって跳ね返っていた。


―このくだりはわたしなどはつい、「医療」を「教育」と置き換えて読んでしまいました。短期決戦思想に基づく教育の軽視、という言い方もできる。その結果が今のパワハラメンヘル現象だ。教育でストップをかけないからとことん病んでしまう。そして警鐘を鳴らすタイプの研修だけが横行する。

 もうひとつ著者のコメントの入ったくだりをご紹介しますと、

●「患者に対する日本人の典型的な態度は西洋人には理解しがたいものがある。敵は明らかに個人をまったく尊重していない。患者は軍事作戦の妨げとしかみなされないし、治療を施せばやがて再起し戦えるという事実にもかかわらず、何の考慮も払われない」 患者を役立たずと切り捨てる精神的態度が「日本人」なり「東洋人」特有のものとは思えないが、個人とその生命を安易に見捨てた過去の姿勢を現代の日本社会がどこまで脱却できているかは、常に自省されるべきだろう。

―そういえば年齢相応の病気したらくそみそに言われたなー、某プライベートな組織で。遠い眼。


 このあとは「夜間攻撃」と「穴掘り」を繰り返した日本兵、といった戦術面の記述になりますが割愛。


 
 この著者はこれまでも日本軍史研究の著書があったのだ。知りませんでした。大変おもしろいですね。



 もう、昭和に戻るのはやめよう。どんな集団なのかをクールに見極めれば、暴力暴言に頼らない動かし方伸ばし方というのはわかってくる。見極めをしないまま工夫もなくギャーギャー怒鳴ってボコボコ殴っていた世代から学ぶのは止めよう。


 最近は私はしゃべりの仕事の中で日本人の短所を声高に言うことはしなくなりましたが、教育の根底のところにはそういう考え方があります。日本人は決してかっこいい民族ではない。知覧とかで観光して騙されないように。


リアリズムに徹し敵を知り己を知れば百戦危うからず。「昭和的なるもの」に代わる決定版のようなリーダー教育をつくろう。


 
100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

お世話になっている皆様


 おはようございます。
 企業内コーチ育成協会の正田です。


 ソチ五輪はいよいよ閉会式を迎えました。

 先週末は女子フィギュア浅田真央選手のフリー演技に感動、感動で過ごしました。23歳の彼女の強い精神力に人生で大事なものを教えてもらいましたね。



※このメールは、NPO法人企業内コーチ育成協会のスタッフ及び代表理事・正田が、過去にお名刺を交換させていただいた方・当協会のイベントやセミナーにご来場いただいた方にお送りしています。ご不要の方は、メール末尾にありますURLより解除ください。(解除方法が変わりました!詳細はメール末尾をご覧ください)



 本日の話題は:



■「いい新卒の子が採れました」とご報告をいただきました!
 


■「有光毬子さん」ラジオ体操の会その後の進展は…



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■「いい新卒の子が採れました」とご報告をいただきました!


 「この業界で新卒を採るのは難しいんですよ」

 そう語るのは「介護職の承認王子」としてお馴染み、林義記さん(34)。神戸市西部の老健施設の相談室長さんです。

 その林さんが、最近求人サイトで、施設の教育担当者として動画に登場しています。

 林さんの企画で、今年度は新入職員7名に月1回フォローアップ研修。業務知識などを伝えながら、新人同士で「そういうことをやったんだ。良かったね」など、「承認」をしあう時間も設けたところ、1人も辞めなかった、といいます。

 通常は仕事のきつさと人間関係の難しさから、入所してすぐ鬱になり離職、ということも珍しくないそう。


 そして林さんの「バックアップしますよ」という動画での呼びかけが功を奏し、今年も高卒の新人が入所。動画をみた高校の先生が生徒さんに勧めてくださったそうです。


 「大事に育てて、大事に使う」時代。高校から施設へ、丁寧なバトンタッチをうかがわせるエピソードでした。

 

 前号のメールニュースでは、篠山市商工会様の「貯蓄共済加入1位」現象についてお伝えしましたところ、同商工会の原田豊彦事務局長が、わざわざ県商工会連合会に「裏取り」(確認)をしてくださいました。
 締切時点では1件の差で2位だったが締切後に16件の加入があり、という経緯でしたから。

 お返事は、「確認できていませんがたぶん1位」だったそうです。


 同商工会様では、ちょうど組織の「理念」についても策定中で、管理職への承認コーチング研修に続いて企画した「全職員ワールドカフェ」は、同局長によると理念の策定に非常に役に立った、作りやすかった、とのことでした。


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■「有光毬子さん」ラジオ体操の会その後の進展は…

 
 2月5日号でお伝えしました、コープこうべ顧問・兵庫県経営者協会副会長の有光毬子さん(59)のインタビューは、その後お会いした方々によく話題にしていただきます。

 ある企業様では、「女性活用の様々な手厚い制度を敷いているが、今度は『制度があるから使う』という女性も出てくる。そういう中、何も制度がなかった時代に切り拓いた世代の方の話は大変参考になる」ということでした。

 有光さんの出番が増えてしまうかもしれませんね。


 さて、その有光さんのお話の後半部分、「承認研修」に出会われて自ら実践されたお話を、要約の形で当協会のトップページに掲載させていただきました。

 http://c-c-a.jp/


 「年中無休ラジオ体操の会」で、「あること」を有光さんが実践された結果、俄然会の雰囲気が盛り上がり…、

 ラジオ体操といえば定年後の70代、80代の方々の集まりです。それもたまのことでなく、毎日のこと。

 超高齢化社会、そして社会保障も減る、という大きな社会状況の中で、とこういうことを言うのは無粋なようですが、そこでの生き方のヒントになるのではないでしょうか。


 有光さんからはその後メールをいただき、先日のバレンタインデーでは、ラジオ体操の会の女性会員から男性会員全員へ、チョコのプレゼントをしたそうです。可愛いラッピングをして、「ラジオ体操のステキな仲間へ!いつも元気をありがとう」とメッセージを添えて。なんとも微笑ましい情景ですね。



 なお有光さんのラジオ体操の会についてのインタビュー全文はこちらに掲載しています。そこで正田が生意気ながら解説めいたものもしております



 有光毬子さん物語 後編・地域に「承認」を持ち込んでみた、「承認」について語った

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51881426.html

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◆ブログ「コーチ・正田の愛するこの世界」人気記事ランキング


1.ANA河本宏子氏インタビュー(1)CAは約6000人の巨大組織

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51820117.html


2.発達障害者は注意するのが好き?『大人の発達障害ってそういうことだったのか』をよむ

 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51873335.html

3.承認カルトNPOが初の合宿。何を企んでいるのか

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51882638.html


4.調光器とLED騒動 「工事」に行き着くまで

 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51742296.html

5.ANA河本宏子氏インタビュー(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51820132.html



★こちらもお勧め

 「承認」の世界の人たちはなぜ聡明なのか?ここ数年、「瞑想」との関連を考えています


 気づきにみちた日常を生きる―受講生様の幸福を祈って―『マインドフルネス 気づきの瞑想』

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51824660.html



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 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 五輪選手たちから貰った勇気を忘れずに素晴らしい週をお過ごしくださいますように。 


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 「介護職の承認王子」こと、林義記さん(老健施設相談室室長)から、ご連絡をいただきました。

 ご用件は、来月の合宿に参加できないことのお詫びと、昨年林さんのご紹介で研修させていただいた「兵老健」―兵庫県介護老人保健福祉施設協会様―の会報に「承認研修」の話題で記事を執筆されたご報告でした。

「これからも承認が拡がればいいなと願いを込めて書いてみました」と林さん。


 林さん自身の施設の新しいトピックでいうと、

 最近、求人サイトの取材で林さんが施設の教育担当者としてインタビューを受け、動画でサイトに載っています。


 http://www.harikennabi.jp/recruit_detail.asp?jobNO=191


 この動画が信頼を集めたのか、「教育・バックアップ体制が整っているから心強い」と、高校の先生が生徒に勧めてくれ、九州から高卒の新人が今春入所するそうです。

 動画では「承認」までは言っていませんが、13年の新人大卒・高卒とりまぜ7人に関しては、林さんの企画で1年間月1回研修を行い、その中で「何々をしたんだ。良かったね」等、新人同士で互いに「承認」をしあうように仕向けたそう。それが奏功してか、7人のうち1人も離職者が出なかったそうです。

 介護職では仕事のきつさや人間関係のむずかしさから、入所すぐ鬱になったり離職したり、が絶えないなか、手塩にかけた生徒が施設にしっかりバックアップしてもらい働き続けられる、となったら、高校の先生からみても安心ですね。

 新卒者は奪い合いの介護業界だそうですが…、

 こうして「承認」は採用においても競争優位の源泉になるもののようです。


****


 賢い人たちがこうして嬉しいご報告を次々してくださる。


 しかしそれでも「広がらない」のが現代社会。


 「広がらない」のひとつの要因は、それぞれの組織のファースト・コンタクトに問題があることにあります。

 判断能力の低い人が第一接触者になり、そして大きなものを大きなものとして認識せず「ネグる」(=ネグレクトする、無視する。新聞記者が「記事として扱わない」と決めるときの用語です)。

 わたしからみて判断能力の低い人は今まさに困っている課題、たとえば「毒物を入れさせないためにはどうしたらいいか」とかの課題に「1対1」で効く「部分最適」のものが好きで、「1対多」で全体的に効いてしまう「全体最適」のものの話は理解不能なので、ネグる判断をする。


 一度それをやってしまうとその組織にはにどと「入らない」。往々にして判断能力も決断力もある人はより上層部にいるのですが、下位の人が一度「採用しない」と判断したものは上位の人はあえてそれを覆す判断をしない。単に下位の人が判断能力不足だっただけであっても。そういうのが現代日本の組織だ。一番レベルの低いところに全員が判断をそろえる、低きに流れる傾向、ともいえる。


 そういうプロセスで価値あるものが握りつぶされ、組織が良くなるきっかけが永遠にこなくなるという現実を上位の人達は知らない。


 
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 2004年秋〜にコーチング講座(当時)を受講され、銀行支店長として05〜06年に「地方支店優秀賞(トップ支店)」と「目標達成率150%」という驚異的な業績を上げたあと銀行を辞めた”伝説の会員”松本茂樹さん(現関西国際大学准教授)

 地元商工会議所の副会頭をされている、松本さんの出身銀行の顧問の方とご挨拶し、松本さんの名を出すと、よくご存知でした。辞める直前にものすごい業績を上げたことも。

 それをまた松本さんにご報告すると、

「(業績向上は)有終の美を飾ったんです」

そのあと、

「あれは、正田さんのコーチングの成果です。自然と伸びてしまったんです」

と、言い直してはりました。

 
 最近わたしも「承認のお蔭だと思えよ」みたいな、不遜発言をするようになってますからね…、

 ほんとは、元々実力があり、感性も高かった受講生さん方が、研修によく反応してくれた、相乗効果だ、というのが正しいのだと思います。

 わたしもずるいので、そういう人を最初からターゲットにして研修でしゃべってます。つまり、2つ前の記事にもあるように「騙されない」タイプの人に対して誠実にしゃべるのが一番、と。「騙されたい」ほうの人たちにアピールすることは考えてません。

ーただ「プロフィール写真」は「騙されたい」ほうの人がみるためのものだ。言い訳。新しい詐欺写真はホームページのどこかに掲載していますー


 ただ承認のお蔭だと思ったほうがいい、というのも本当で、業績が上がったのについて「オレの実力だ」と思って、承認方面の努力をやめてしまった人はずごーんと落ちます。また「承認でこんなに上がるんならほかの手法ならもっと上がるだろう」とか「研修ならどれでも同じだろう」と思った人も落ちます。

 ある研究機関では研修スタート時に企業風土調査で社内ワーストでした。それが、6か月後には、「忘年会の出席率がパートさん契約社員さんなどを含めて研究開発本部中トップになった」と、いうところまで上がりました。その頃はわたしからみても、リーダーそして職場から「幸せオーラ」が出ていました。
 そして次年度の研修継続も約束しておきながら所属長の交代を理由に研修をやめると、見事に火の消えたような組織になりました。

 たぶん長い読者の方はご存知のように、わたしは表向き業績向上をうたいながら本当はその中ではたらく人たちの幸福度を考えるのが一番すきな人間だけれど、そうやって研修次第で中ではたらく人の幸福が大きく左右されてしまうのが悲しみのたねです。こんなに大きな喜びを創り出すものが逆に不幸を創り出してしまう。いつもこの教育あるいはこの思想一色だったらいいのに。というのは小学生の発想なんでしょうか。


 大きな業績向上をもたらすことが証明済みのものがあることを知りながらそれを採用しないメンタリティというものがわたしには理解できないし、効果のあるものを意味もなくやめてしまうメンタリティも理解できない。建築のような分野だったら、作りかけたものを途中でやめてしまってはいけないのは自明のことなのに。それほどまでに教育研修というものはいい加減に扱われています。例えばコスト削減のために内製化したいなら、それをきちんと外部講師の先生に断わって講師に誠心誠意師事して教授法などを学べばいいと思うが、そういう工夫の跡もない。


 そしていつもついて回る、大きなものを大きなものとして認識することのできる知性とそうでない知性―。


 なまじ幸せになる道筋を知っているということは、なんと苦悩と背中合わせなことでしょうか。なんと多くの悲しみをみてきた10数年だったでしょうか。
 わたしはあとどれだけそれに耐えられるのでしょう―、


****

 有光毬子さんの主宰するラジオ体操の会では、先日のバレンタインデーに女性会員から男性会員にチョコのプレゼントをしたのだそうな。可愛いメッセージカードを添えて、ラッピングをして。絵として想像していただけるでしょうか。


 きのう合宿メンバーに詳細のご連絡をしたりブログにも情報を掲載したりしたところ、きょうになって女性お2人からお申し込みがあり、なんと男子4人女子5人という構成になりました。つい去年まで男子校だったのに。いえ正田はけっして女王蜂になりたい人じゃありませんよ。共学化はひょっとしたらこの団体の健全運営にとって正しい道筋なのかもしれない。



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 3月15-16日、当協会で予定している合宿研修に嬉しい進展がありました!


 青少年のスマホ問題で最先端を行っている、猪名川町青少年育成協議会会長の太田はるよ氏が、ゲスト参加してくださることになりました。両日ともフルのご参加です


 で、参加者は実質7名となっております。男子4名女子3名です。


 なんで急に合宿とか言い出したのか、何を目論んでいるのか、ということですが、

・これまでNPOの行く末来し方の話を総会などでしてきたが、時間不足で消化不良に終わっている
・話し合いの質が高くないことの原因として、よのなかカフェでもそうなのだがお互い「自分はだれか」を明らかにしていないことがあると思う。十分に自己紹介の時間をとったうえで話し合いに入りたい

このほか、

・クローズドの場でしか話せない人材育成のトピック・・・まあ、このブログを継続的にご覧になっている方は大体あれとあれが来そうだな、とおわかりになると思うんですけどね
私ではない、より専門的な話をしてくださる方もメンバーの中におられますので、お願いしようと思います
もちろん太田はるよ氏には、青少年のスマホ使用の現状、猪名川町の取り組み、などお話しいただく予定です

・それとまあ、合宿でなければいけないことはないんですけど、
「承認」を心がけているリーダーの方は、皆さん日頃すごく自分を抑えてはるじゃないですか
本来は結構ヤンチャ坊主だったり、ガキ大将だったりおてんば娘だったりするわけで、そういう「地」を安心して出せる場が必要なんじゃないか、と思ったりするわけですね
よそにもリーダー同士の会合とか団体は色々ありますけど、「承認」の人達の場合はとくに必要で、かつ実践者の人同士じゃないと力が拮抗しない、だれか1人がわがままに振る舞ってほかの人が受けに回っちゃう、みたいなことが起こりますよね
ポンポン言いたいこと言い合ってるとたのしいと思いますね、ええ

2日間の日程はざっくりと

1日目(15日)午後・夜=各自自己紹介、現状と将来展望 (と飲み会)
2日目(16日)午前=承認応用編・最新人材育成事情、難しい部下への対応

 太田氏の登場は16日午前の予定です 

 万一この記事をご覧になって来たくなった方は正田までご連絡くださいね(^O^)


****


 先日インタビューでご登場いただいた、有光毬子さんの「承認研修」について触れた部分を要約して、当協会ホームページのトップページに掲載させていただきました!

 http://c-c-a.jp/

 大変気さくに、宣伝用の掲載もご了承くださった有光さんでした。

 しかし!わたくし正田はこの有光さんの写真を気に入っておりません!ので27日、VAL21の会合のときに撮り直しをさせていただく予定です。

 もうちょっと親しみとか、いきいきと躍動する精神、のようなものを写真で表現したいと思っております。



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NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp


 


 

 ソチ五輪で羽生結弦選手が金メダルを獲得しわたしも珍しく徹夜でTVにかじりついてしまった日、また「ナルシシズム」について考えています。


 いや羽生選手がそうということではないです。それについての見方はこの記事後半にかきます。


 ここでの題材は、少し古くなりましたが”現代のベートーベン”といわれながらゴーストライターによる作曲が明らかになり、かつ全聾も虚偽だったらしいという、佐村河内守氏について(わたしと同い年だ。遺憾。。)。手元の「週刊文春」2月20日号に佐村河内氏の生い立ちと虚飾まみれの半生についての記事があります。


 音楽とは無縁の子ども時代を送り、青年期には芸能界に憧れて大部屋俳優やロックミュージシャンの卵として暮らし、その夢破れたあとは定職に就くことができず奥さんの稼ぎで生きる。奥さんは佐村河内氏に厳しく管理されマインドコントロールされていたふしがある。佐村河内氏が一か所で長く勤まらなかった理由は嘘つきで、金をごまかしたりもしたらしい。

 やれやれ、典型的なナルシシスト人生といえましょう。


 わたしも同じ号の「文春」の別の筆者の感慨とおなじく、今回の騒動まで佐村河内氏について何の知識もなく興味もなかったのでありがたいことに被害者ではありません。ただ思うのは、そのいかにもの怪しげなルックスをみるに、

「うちの受講生さんや会員さんだったら、この手の人に騙されたりはしないだろうなあ」

ということであります。

 自己演出のうまい人というのはいるのであります。研修講師業界なんかそういう人ばかりであります。

 しかし、彼ら彼女らが「マネジメント」について語るとすぐに馬脚を現す。現実のマネジメントは、彼らが予定調和的に語れるほど「きれい」なものではなく、ものすごく細かく泥臭い裏方作業で、きれいごとの仮説などもろくも崩れ去る。

 このブログでは過去にミンツバーグの著書をとりあげた読書日記「マネジャーは指揮者ではない。むしろ…ミンツバーグ『マネジャーの実像〜「管理職」はなぜ仕事に追われているのか』をよむ」で、そうした本職のマネジャーの実像を示す言葉として、

「好ましいマネジャーとは、カリスマリーダーでも戦略家でもなく、
次々に降りかかる『いまいましい問題』とエンドレスに付き合える
タフな実務家にほかならない」

というフレーズを紹介しています。

 この記事がもう3年もの間、高いアクセスをいただいているのは、現役のマネージャーたちの消耗する日々を正しく言い表しているからにほかならない、とわたしは思います。


 そうして、そのような「次々に降りかかる『いまいましい問題』とエンドレスに付き合う」ためには、望ましいマネージャーの人格はナルシシズムとは無縁な、注意ぶかい素朴な真摯なまなざしと思考能力の持ち主でなければなりません。

 マネージャーの仕事とはそのようなものだ、とはなから了解している人びとは、会社の人事の人が選定したいかにも自己演出のうまい研修講師、コンサルタントの先生をみてもその胡散臭さはすぐに見抜くはずであります。


 ところで、ナルシシスト同士はどうも引き合うところがあるようです。

 他業界出身の外部者目線でこの研修業界に暮らしてみておりますと、ナルシシストの先生がわーっと盛り上がるセミナーをすると、その熱気に同じテンションでわーっと巻き込まれるタイプの人がいて、ナルシシストは自分と同様のナルシシストに巻き込まれやすいのです。そしてナルシシストはラインよりはスタッフ部門により多く生息しています。
 なので、わたしもスタッフ部門の人とは多くの場合、うまが合いません。彼ら彼女らに現実ばなれした夢を見させてくれるナルシシストの先生にはかないっこありませんから。

 そしてそういう研修商品の流通メカニズムの中の強固な「ナルシシズムロジック」がある限り、反ナルシシズムの教育である当協会方式は今後も圧倒的優位を誇りつづけるでしょう。あと10年でも「1位マネージャー」を産み続けるでしょう。だって、よそさんは永遠にダメな仕事してますから。

 
 話が脱線しましたが、じゃあ佐村河内氏になんで大手マスコミが軒並み騙されたか、って答えは、もうわかりますね。
 はい、マスコミ自体がナルシシストの巣窟だからです。彼ら彼女らはナルシシストの親玉みたいな人に胸キュンとなっちゃうんです。そうした人を持ち上げることで自分のナルシシズムも満足させられるような気がするんです。


 先日このブログでご紹介した「有光毬子さん」の一代記は、あんなすごい話をどうも地元マスコミもまだ取り上げたことがなかったようなんですが、それについても解釈の余地がありそうです。


 さて、羽生結弦くんであります。

 わたしとしては珍しく徹夜して、男子フィギュアシングルのフリー演技を下位の選手からひととおりみてきました。

 最終的に10位以下になった選手には色々なキャラクターの人がいました。地元ロシアのある選手は自分で振付をするとのことで、チャーミングな身振りで会場を沸かせましたが、ジャンプ、スピン等の技の切れは今ひとつで、得点は伸びませんでした。

 フィギュアがジャンプにばかり注力して全体の美しさがなくなった、という論調があったのも今は昔、現代ではトップ選手はジャンプだけでなく、指先までの美しい動きや、ステップの時の上半身をフルに使ったダイナミックな動きなど、すべてにおいて高レベルです。しかしジャンプが男子なら4回転、女子ならトリプルアクセル、の成否で決まるというところまで進化してしまった以上、トップ選手は最終的にはそこで勝負しなければならないのです。


 10位以下の選手では、コミカルな動きや日常生活を描写したとみられる意外な着想や、さまざまな「勝負どころ」で勝負し、中には「この人はナルシシズムが勝っていそうだな」というキャラクターの人もいました。しかし最終的にメダル争いに挑んだのは、やはり最高レベルに進化したジャンプ、それにプラスアルファ動作の優雅さを武器にした人たちであり、

 そして頂点に立ったのは羽生選手でした。この人はもともとジャンプ向きの素質だったのでしょうがそれを絶えざる修練で極限まで高め、かつリンクに立つとき氷に触れ、表彰台に立つときも表彰台に一度手で触れてから上り、と「礼」の人でもありました。いかにも向こうっ気の強そうな表情のかたわらそうした仕草や、コーチら周囲の人と談笑するときの柔らかい表情が、ストイシズムと人間味の見事なバランスを感じさせたのでした。かれの到達した領域は、恐らくナルシシズムの勢いをもってしては到達しえないものであったでしょう。

 そしてメダル獲得から一夜明けた会見では「地元に貢献したい。メダルはそのための一歩」と語ったことも特筆ものでした。


 今日は単なる「ナルシシズム」に関して最近の話題から着想を得た感慨でございました。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
URL: http://c-c-a.jp
 
 

お世話になっている皆様


 おはようございます。
 企業内コーチ育成協会の正田です。


 ソチ五輪で日本勢の頑張りが続き、やはり朝ニュースで「メダル獲得」をきくと、職場に向かう足取りも軽くなりますね。


※このメールは、NPO法人企業内コーチ育成協会のスタッフ及び代表理事・正田が、過去にお名刺を交換させていただいた方・当協会のイベントやセミナーにご来場いただいた方にお送りしています。ご不要の方は、メール末尾にありますURLより解除ください。



 本日の話題は:



■ビジネスの世界にも「金メダル」があります―2014年 今年の「1位マネージャー」は
 


■「有光毬子さん」記事でお詫びと訂正



■読書日記・『つながりの作法』



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■ビジネスの世界にも「金メダル」があります―2014年 今年の「1位マネージャー」は


 当協会の受講生様から、2つ続けて嬉しいご報告をいただきました!


 1つは、OA機器販売会社営業課長の柏原直樹さんより。

「上半期に引き続き、下半期もコピー機部門6位(全国約100チーム中)に入り、表彰されました」。


 30代の若い課長さんで、10位以内に入るのは非常に珍しいことだそうですが、柏原さんはそれを2期連続達成されています。


 もう1つは、つい先日の10日に伺ったお話です。
 研修先の篠山市商工会様で、県下28商工会の貯蓄共済勧誘ノルマの「1位」をとられました。

 詳しくいうと、今年度の締め切りの1月20日時点では他商工会(香美町)が総ノルマ件数を51件オーバーで、篠山市商工会(50件)を1件だけ上回っており篠山市は2位だったのですが、
 
 篠山では締め切り後に16件さらに加入があり現時点で66件オーバーの1位なのだそうです。


 原田豊彦事務局長のハッパかけ、職員さん方の頑張り、ご立派でした。


 
 わたしはこうした嬉しいご報告をいただくと、(もちろんご了解をいただいたうえでのことですが)迷わずブログ、メールニュース等でご紹介することにしています。
 なぜなら、これまでにも何かのきっかけで「承認研修」を受講し、自分でも手ごたえをつかみながら会社の予算では研修を継続されなかった、というマネージャーさんがあまたいらっしゃるとき、その方々への勇気づけになるからです。

「あなたがしていることは正しい。そのまま続けなさい」

というメッセージになるからです。

 もしこのメールニュースをお読みになる方で、「また自慢している」とご不快に思われる方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。


 当協会では2003年から、前身の任意団体の設立前の自主勉強会の時代から、「売上・サービス指標で社内1位になりました!」というマネージャーの受講生さんを輩出し、その後も連続してご報告をいただいて今に至っています。
 ですので、もう受講生さんに「1位」をとっていただくのは12年目のことになります。

 ただ、「1位」になられるのはすべての問題が解決した、ということを意味するのでなく、個別の問題はありながら横の比較では圧倒的優位になっている、ということであったり、
 また良くなられる過程において、それまで抑えつけられていた不満が強烈な形で噴出することもある、というのも経験してきながら、であります。このあたりやや言い訳めいていますね。

 
 良いご報告をいただくことは、同じ道を歩まれる方々の勇気づけになります。これまでも多くの受講生様、会員様方の「善意のご報告」によって、わたしたちのリーダー教育は支えられてきた、と思います。深く感謝いたします。


 ともあれ、柏原さん、篠山市商工会の皆様、おめでとうございます。またありがとうございます。

 篠山市商工会様での第2回ワールドカフェの模様はこちらからご覧いただけます


「あと一歩の親切さ、あと一歩の丁寧さ―篠山市商工会様第2回ワールドカフェ、そして12年目の『1位』」

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51882041.html


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■「有光毬子さん」記事でお詫びと訂正

 
 前号のメールニュース(2月5日)でご登場いただいた、コープこうべ顧問・兵庫県経営者協会副会長の有光毬子さん(69)に関する記事は、多大な反響をいただきました。


 有光さんが代表幹事を務められる、同協会女性産業人懇話会(VAL21)の会員様方のところでも、職場で記事を回覧された、とうかがっています。

 やはり、同じ地域でほんのちょっと過去の時代を強靭な意志をもって切り拓かれた女性の先輩のお話は、現役の女性管理職の方々にとっても大きな力になられたことでしょう。


 有光さんはこれまでご講演などされてもここまで詳しい内容はお話されなかったとのことで、そこは、
「私たちの代の話などしても今の世代の人には響かないでしょう」
という遠慮もあられたようです。
 わたし個人は、「歴史的価値のあるお話」と思っています。

 字数制限のないWEB上の記事で、有光さんの気さくなお人柄となさってきたことの偉大さをできるだけ正確にお伝えすることに腐心しましたが、そのあたりはどうにかお伝えできたのではないかと自画自賛をしております。


 ところで、1つ誤りがございましたのでお詫びと訂正をいたします。

 前号のメールニュース本文中、有光さんがコープこうべで「女性初の役員となられる」という記載がありましたが、「初」ではなかったそうです。有光さんの前にも、昇任試験を受けずに管理職となり役員となられた女性がいらっしゃったとのことで、正しくは「女性役員となられる」とすべきでした。
 誤解を与える表現をしてしまい大変申し訳ありませんでした。お詫びして訂正いたします。


 「有光毬子さん物語」見逃されたかたは、こちらからどうぞご覧ください:

 有光毬子さん物語
前編・「志を曲げなかったわが人生」

(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

   http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51881408.html

(全5回で、毎回が長い記事ですので、くれぐれもお仕事中にはご覧になりませんように。。)

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■読書日記・『つながりの作法』


 受講生様やお客様との間で、「発達障害の人、あるいはそれらしい人」について、話題にすることが増えています。

 ここ1−2年、注意してお話をうかがっていますと、おおむね10人に1人程度の割合で、「そうかな?」と思われる方がいらっしゃるよう。

 多くは、診断を受けたりはしていないので、現場のマネージャーさんの裁量で仕事の任せ方、指示の出し方などを決めていかないといけません。そうした特徴をもった人について知識を持っておかないと、非常に戸惑われ悩まれるようです。

 
『つながりの作法―同じでもなく違うでもなく―』(綾屋紗月+熊谷晋一郎、NHK生活人新書、2010年12月)は、アスペルガー症候群の診断名をもつ著者による「当事者研究」の本です。

 ここでは著者自身の体内感覚が克明に語られますが、発達障害の方でこうした体内感覚を表現できる人は非常に珍しく、貴重な資料になります。


 同じ著者らの共著で『発達障害当事者研究』という本もあるのですが上記の本の方が手に入りやすいと思います。


 『つながりの作法』についての読書日記はこちらをご覧ください:


 「感覚の洪水の中を生きるとはどんな人生か―『つながりの作法』を読む」

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51881611.html


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2.神戸は住みやすいのか住みにくいのか?よのなかカフェ「外から見た神戸と内から見た神戸」開催しました

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3.プレゼン上手になると失うもの、消えた「いいね!」のごあいさつ

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4.ナルシシズムの蔓延を食い止めることはできるか―『自己愛過剰社会』
 
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温かいリーダーと強いリーダー、権力と影響力―HBR誌1月号より

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 10日、篠山市商工会様での第2回全職員ワールドカフェを開催しました!
 10月から始まった同商工会様管理職研修の最終回となります。


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 今度は、今春の事務所統合を控えて商工会の「未来」について考える前向きな回になりました。


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 恒例、付箋をはった模造紙ができ
 そしてフレッシュな顔ぶれが発表されました。


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 仲埜さん、小崎さん、薦野さん、足立さん、本庄さん、ありがとうございました!


 
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 最後に「アンケートでみんなが本音を書いてくれたのが一番良かった。これからも一丸となって会員のためにがんばってほしい」と原田局長からのお話・・・

 

 
 さて、こんな子どもの遊びのようなことをやっているうちに、

 篠山市商工会様は、県下28商工会の貯蓄共済勧誘ノルマの「1位」をとられてしまいました。ぱちぱちぱち。

 詳しくいうと、今年度の締め切りの1月20日時点では他商工会(香美町)が総ノルマ件数を51件オーバーで、篠山市商工会(50件)を1件だけ上回っており篠山市は2位だったのですが、
 
 篠山では締め切り後に16件さらに加入があり現時点で66件オーバーの1位なのだそうです。


 「10年間、1位マネージャーを生んできました」の今年の1位マネージャーは、原田局長だったのでした


 よく考えると10年10年って言ってきたけど2003年からはじまって2013というと既に足かけ11年で、今年は足かけ12年目ということになるのでした。
 「12年連続」という言い方ができないのは、お察しのように途中空白だった年もあるからです
 2004,5年ごろバタバタっと「1位」が相次ぎ、その後空白期間があって、近年再び「1位」が続き、また1位などではなくても「社内表彰をされました」とか「売上倍々ゲームで伸ばしました」というご報告をいただくようになっています

 空白期間の理由は、正田も個人的に仕事に注力できなかった事情が色々あったし、世間でも研修業界の流行り廃りで、別のものの勢いが強かったときは、「この手法」の効力を本気で信じてやってくれるマネージャーさんが出てこなかった、というのもあったと思います
 近年は、正田も謙虚すぎるのをやめて「これだけエビデンスが出続けています」というのを堂々と言うようになったし、現にリアルタイムでエビデンスが次々続くので、受講された方々もそのつもりで受講していただける、というのがあると思います。


 あー今年2014年のノルマ終わっちゃった、もう寝ようかな こらこら。。

 
 えと、篠山市商工会様の輝かしい「1位」はもちろん局長のハッパかけもあったでしょうし、個々の職員さんの頑張りもあったと思いますが
(とりわけ女性職員さんがたが頑張られたとうかがっていますが)
 「承認」なんか全然関係なかったよー、自分たちの功績だよー、と思ったりすると翌年ガタガタっとおちます。というのもみてきました。往々にして起こりがちです。

 わたしも駆け出しのころは「あなた自身が頑張られたんですよ」と、言っていたんですが、最近ではお客様の末永い繁栄と幸福を考えると、「承認の功績ですよ」と言って差し上げるほうがよいのかもしれない、と思うようになっています。
 それくらい、「承認」は習得可能なものではあるけれどつねに意識していないとすぐ落ちてしまうものであります。なので正田も毎日汗水たらしてブログを書き続けます(苦笑)

 承認のお蔭だ、と思うことを強制できるわけではないですが当協会の会員さんがたとえば「上半期に続いて下半期も表彰されました!」なんて、義理もないのにご報告くださることを考えるにつけ、
 「鰯の頭も信心から」
 いやそれここで使うか。うそです迷信じゃないですから安心してください。


 わたしはなんかトラブッたときに克明に状況を書いたりしますが、逆にいかに受講生様、お客様の人生を慈しみ、末永い幸せをお祈りするかについては、あまり文章に書くことはありません。

 
 今は、多くの方のお力添えをもって研修プロジェクトをつつがなく最後まで完遂させていただけたことにほっとしております。 
 原田局長、若狭課長、その他篠山市商工会の皆様、ありがとうございました。


100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
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 以前、帝国データバンクのコラムに「講演する社長は業績を悪化させる」ということを書きました。

「話を聴かない社長、原因を探ると」


 ―これも今読んでも割合おもしろい記事なのでご興味のあるかたはご一読ください―


 実はこの記事が出て間もなく、神戸でも割合有名だったベンチャー経営者の社長―MBAホルダーで成功者としてよく講演もされていた、わたしも何度かご同席したことのある方―の会社が倒産してしまいました。

 そうした符合を知ってか、当時の「帝国ニュース」の編集者コラムは「やはり講演する社長が倒産・・・」と絶句していました。


 個別のケースで実際にどうだったのか置いておくとして、わたし自身が「人前でしゃべる仕事」をするうえで自戒しているのは、

「大風呂敷を広げるスタイルをとらない。自分を大きく見せようとしない。感銘を与えるようなしゃべりかたをしない」
「できないことはできない、知らないことは知らない、わからないことはわからないと言う」
「謝罪すべきことは謝罪する」


など。当たり前のことのようですが、気をつけないとよく陥る落とし穴があります。
(いや、こういうことに気をつけつつでも「教える」スタイルで大事なことがちゃんと印象に残るように、ということも意図しながらしゃべっているので、結構芸の細かいことやってるんですヨ)


 人前で話すということはだれにとっても非常にストレスの高いこと、自然界ではありえない異常な事態です。
 それに適応するために、よほど厚顔無恥な人はべつとしてほとんどの人は、自分の中の一部の資質を「高めて」、乗り切ろうとします。


 あくまでわたしの経験では、その「人前で話すとき人が高めやすい資質」とは、ストレングスファインダーでいう「自我」「コミュニケーション」です。


 「自我」(significance)は、このブログでよく出てくる「ナルシシズム」と重なります。普通の言葉でいうと「自己顕示欲」や「夜郎自大」「勘違い」という言い方もできます。自分はすばらしいと思い、他人からも自分をすばらしいと思われたい。注目されたい。他人が注目されるとねたましい。はい、研修講師業界は嫉妬ぶかい人多いです。


 「コミュニケーション」は、「聴く力」とか「語学力」ではなく、人前で話すことが好き、人に話を聞かせて感銘を与えたい、盛り上げたい、受けたい、という資質。噺家さんなどはほとんどこれを持っていそうです。
 ただ、その資質をもった人からお叱りを受けそうだけれど、「強み本」にも書いていないけれど「コミュニケーション」の資質は「ウソをつく」ことにもつながりやすい。灰色の現実を面白いおはなしに変えてしまうときウソが混じる、と言ってもいいし、現実より面白い話で人に影響を与えたい、ということもできると思う。また、「コミュニケーション」の人は、結構人を傷つけることも言ってしまいやすい。下手に語彙豊富なので言葉が滑ってそうなってしまう。往々にして、弁慶のむこうずねのような相手の弱点を言葉で正確に突いて傷つけることも天性でうまい。


 要は、「人前でしゃべるために便利な資質群」とはよほど気をつけないと、「人格のわるい資質」であったり「(自分や自社に関して)事実を重視しない、謙虚さのない資質」であり得るのであります。

「フクシマ・イズ・アンダー・コントロール」
と言って東京五輪をもぎとった総理もいらっしゃいましたからね。。

 ・・・なので正田はしゃべりを仕事にする人ではあるけれど、これらの資質が高まることを警戒し、高めないように気をつけています。今どきのプレゼン術を磨くよりは、普通の人っぽくしゃべって受け入れられる講師でありたいと思っています(それは今の時代、かなり贅沢な言いぐさなのですが)。


 それでも「パーソナルコーチ」から「講師」へ転換した節目のころは一瞬「自我」が出てきてえっ、となったことがあるしこの仕事はやっぱり営業もしないといけないので、実績のあることをアピールしたりそういう人らしく振る舞ったりしないといけない、いわば「自我の人」っぽく振る舞わないといけない。そういうとき大きなジレンマを感じています。


 そんなことを言いながら最近3年ぶりに「プロフィール写真」をスタジオさんで撮ってきてしまいました。
 すごい宝塚ふうメークだったです。やれやれ…、自己撞着の私。

 えーと一応ですね、「2014年つまり今年のごあいさつ」の中で、

「10年間1位マネージャーを出し続けたことについて『根拠のある自信』を持ちたい」

みたいなことも言っているのです。ご興味のあるかたはみてみてください。

 「10年間の光と影、次の10年わたしたちにできること」


 「自我」という資質についても「合宿の話題」カナー。


 当協会の会員様・受講生様もですね、
「できるマネージャー」として認知された方が、社内講師として「しゃべり」の仕事で活躍するようになると、どんどん「承認」のほうがおろそかになってしまうことがあります。あるいは、「謙虚さ」「誠実さ」といった、「承認」に付随していてほしい価値(協会理念ではうたっている)がおろそかになることがあります。そうなると講師としては良くても、マネージャーとしてのあなたの部門業績のほうがどんどん下降してしまいます。過去に何人もそういう方がいらっしゃいました。くれぐれも気をつけてくださいね。


****


 ところで、お気づきになったでしょうか、

 このブログのドメインを新たに取得し、「http://c-c-a.blog.jp」というシンプルなドメインになっています。(過去は「http://blog.livedoor.jp/officesherpa/」)

 過去の記事も全部こちらにお引越しした形になっています。

 シンプルだし現NPOになってからの略称、「c-c-a.」が入っていて読者様にわかりやすいのではないかと思います。なおこのブログを「お気に入り(ブックマーク)」に入れてくださっている方は、これまで通り「お気に入り」から入ってくだされば、過去のドメインから「リダイレクト」され現ドメインに飛びます。元通り違和感なくアクセスしていただけると思います。

 ところが、1つ残念なことは、せっかくフェイスブックで記事に「いいね!」をしていただいたのが、ブログ上では消失してしまっているのでした。過去記事の「いいね!」は「0」になっているとおもいます。


 回覧していただいた記事が沢山の「いいね!」をいただいたことなど、1つ1ついい思い出になっているのですが、なので一瞬元の設定に戻そうかな〜と思ったのですが、やっぱり「シンプル」で「わかりやすい」ドメインのメリットにはかえがたいかな、と思いました。

 
 これまで「いいね!」くださった皆様、ありがとうございます。そして消えてしまってごめんなさい。これからも当ブログをどうぞよろしくお願いいたします。



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『つながりの作法―同じでもなく違うでもなく―』(綾屋紗月+熊谷晋一郎、NHK生活人新書、2010年12月)より。

 ここでは、アスペルガー症候群の診断名をもつ著者(綾屋氏)が自分の体内感覚を語ります。
 

…世界の中でモノや人がてんでんバラバラに統一感なく発している情報を、いやそもそも自分の身体の内部において、体の各部分が一致することなく勝手気ままに発している情報も、自分にとって大事かどうか、必要かどうかという優先順位をつけにくく、等しく感じとってしまうのである。そのため電車の中ならば、人々の服装、におい、しぐさ、話し声、車内広告の内容、温度、湿度、電車の揺れ、走る音、ブレーキ音、加減速の圧力、車内の明るさ、車窓の風景、駅名、揺れる自らの身体感覚、立ち続けるための身体のバランスなど、バラバラで大量の情報を無視できずに感じ取ってしまいがちだ。



 それと同じように私は、「頭がかゆい」「鼻水が出そう」「おなかがへこむ感じがする」「のどが痛い」といった身体のあちこちからくる不一致な訴えを同等に聞いている。また、それらひとつひとつの訴えがお互いに関連性があるのかどうかがわかりにくいので、たとえば「おなかがすいた」という、体全体の変化としてなかなか捉えられない。時間を経るにつれて、「胃のあたりがへこむ」「ボーっとする」「倒れそう」「胸がわさわさして、無性にイライラする」「胸が締まる感じがして、悲しい」などのいくつかの身体・心理感覚だけが徐々に大きくなっていくことで、どうもこの状態が「おなかがすいた」と名づけてよい感覚なのかもしれない。




 いかがでしょうか。

 こうして「自分の体内感覚」を雄弁に語れるアスペルガーの人は非常に珍しいようです。
 これはあくまで綾屋氏個人のもので、アスペルガーの人一般がこういうわけではない。自閉症スペクトラムであれADHDであれ、発達障害の人は一くくりにできるわけではなく、その中に非常に多様な個別性があるということを念頭におかなければなりません。上記の記述も自閉症スペクトラムとADHDの診断基準、どちらも混ざっているような気がしますし実際にその両方の障害をもちあわせている人も多く、また外部からの診断と本人の体内感覚が食い違うケースも多々あるそうです。


 しかし、やはりこうした記述に触れると、これまで接してきた発達障害、あるいはそれらしい人達のふるまいが、これまでよりはるかに「理解可能」に思えます。

 ここまであらゆる情報が混乱した形で入ってくるんだ。
 それらをまとめあげることができないんだ。


 そうすると、たとえばこうした感覚の持ち主の人たちにとって「構造化―明確なルールを与える」ことがいかに重要か、支えになるか、ということがわかるような気がします。

 また、こうした人たちが「人」について奇妙に序列意識が強く、「偉い人は偉い」といった固定観念を強くもっていたり、「あの人は女だけどたくましい」「女だけどリーダーシップがある」といった、わかりやすい記号で理解できないものを忌避したくなる気持ちもわからなくはないのです。いわば、人についての理解が「ステレオタイプ」的にならざるを得ない。(でも困りますけどね)
 変化とか変革といったものも苦手でしょう。なぜなら混乱を極めるこの世界の情報の中で、自分が唯一安心してよりどころとなる、仕事の仕方とか方針とかが変わるということは、大きなストレスになるはずですから。


 「発達障害者の当事者研究」というこの分野は、現在のところ冒頭の綾屋氏ぐらいしか公に発言していないので、できればより多くの人の発信に触れたい、と思うところですが、「この1つ」がもちろん唯一無二のものではないことを念頭に置きつつも、当方にとってやはり大きなヒントになり助けになる、と思うところです。


 このブログで過去に『大人の発達障害ってそういうことだったんだ』という、こちらは徹底的に「あけすけ」な外部者目線、しかし職場で出会う「診断を受けていない発達障害者」に接触する管理者等にとっては大いに助けになる本―を紹介してしまった立場上、こちら側からの視点を今度は提示しなければ、と責任を感じてしまったのでした。

 発達障害者の人がよく使う「生きづらい」「生きづらさ」という言葉、その中身はこういう種類のものであり、それが「ああ、それは確かに生きづらいだろうな」と皮膚感覚で理解できれば、それまでよりはるかに寄り添える。

 このブログの読者の皆様がそうした「寄り添える」感覚を持てる知性の持ち主であることを願っております。



・・・実はこれに関連して語りたいことはいっぱいあって、

 例えば、以前から「発達障害本」に「ADHDの人はものごとに優先順位をつけられずすべて並列に等価値として受け止める」といった記述がありましたが、冒頭の記述にもそれを想像させる記述部分があります。
 重要なことについて、「これは重要だ」と、ぴんとくる感性、というのは、発達障害ではない定型発達の人の特権のようです。
 個人的には正田は、ふだん接触することの多い部署の人びとが「これは重要だ」と思う感性がないことにいらいらすることが多いのですが、、、
 こういうふうに、「ビジネス思考としてこういうことが必要」と思われている、言われていることが実際にできるか、できないかにも「発達障害」はすごく関わってくるので…、

 「ものごとの重要性とか優先順位がわかる」ほうの人たちは、自分は運よくそういう知性に産んでもらった、と思ったほうがいいかもしれないです…。

 このたぐいの話はほんとにいっぱいあります…。
 つづきは合宿で。かな?



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NPO法人企業内コーチ育成協会
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 さて、この記事はほとんど自分1人だけのためのものなのでほかのかたは読まないでください
(じゃあアップするなよ(ーー;))


 2−3日、正田は萩・津和野の旅にいっておりました

 決して「神出鬼没」を気取りたいわけではありません。お目当ては萩の「松陰神社」にどうしても行きたかったのです
 「やり残したこと」を妙にやりたくなる今日このごろです

 フグ食べたかったんだろって?ち、ちがいます・・・


 
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 松下村塾


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 同上。奥の壁に塾生たちの写真が見えます


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 松陰先生が幽閉されていた三畳半の部屋。おいたわしい(>_<)


 儒教コミュニティでも萩を訪ねる旅、というのを企画していたようですがそういうのに入ると所詮、グループの中の「女性」という位置づけを意識しながらの旅になるので、

 男性・女性という枠組みをとりはらって松陰先生の遺構をたずね思いをはせたかったのでした


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 現地の売店で売っていた小学生向けのよみもの。こういうのを読むとすごく松陰先生のことがわかった気分になる。やっぱり小学生頭なのか正田

 松下村塾が隆盛を極めたのはたった1年半ほどのこと。このことは以前から何度も考える。「10年」はもう、長すぎるのではないかと。



 この記事はクローズドの日記のつもりなのでここだけの話ですが、今朝「有光毬子さん」のことを載せたメールニュースを配信したところ、案の定男性読者3人が購読を停止され(全体数は2000余り)、もちろん当協会にとって重要な人達ではなかったんですが、そのやめた人達の男性という以外の属性をちょっとばらすと、労組役員とか、儒教コミュニティのリーダーシップの有名な先生、というのもありました。


 そういう人達は、本当にリスぺクタブルな女性を正視することができず、嫌悪の念をもったり無視したりする人なんだとおもう。また女性が「リーダーシップ」について語ることなど耐えられないのだとおもう。

 (男性がいかに承認欲求の裏返しで嫉妬深い存在かについては、
  「男性の嫉妬と成長」という帝国ニュース記事の中で描いた。男性のほうが承認欲求が強いし、
  だれかに「負けた」というときに味わう痛みも強く、勢い嫉妬深いようである)


 儒教は、わるいけど男女共同参画に対応できてない。「女子と小人養い難し」から先に進めていない。御用学者の中には女性もいるけどね。

 わたしは小学生のころから誰にいわれるでもなく「論語」とか「荘子」とかを読んでいた人間なので、「承認」は「仁」と矛盾しない、と堂々といえますが。
(「荘子」に凝っていたのは今から考えると「宙二病」だったかもなあ、と思う)

 いにしえの偉人が現代に生きていたなら、あるいは現代の要請に対応したことを言っていたかもしれないと思う。しかし、現代日本のポピュラーな儒教コミュニティは、昭和期の碩学の教えた儒教であり、それはある時代で固まってしまったものなのだ。こんなこと言って火つけられないかな。

 松陰先生も弟が聾唖だったせいか弱者にやさしく、女性の才を評価したりもしたという。ほんとうに偉大な人はそういうものだ。


 わたしはもう50年、性差別という名の牢獄に囚えられているなあ。もうそこから見える風景も見飽きた気がする。

 
 有光さんについてのこのブログの記事は、兵庫県経営者協会女性産業人懇話会(VAL21)の方で回覧していただくことになったようです。


 
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NPO法人企業内コーチ育成協会
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お世話になっている皆様


 おはようございます。
 企業内コーチ育成協会の正田です。


 立春だった昨日以来、厳しい寒波が続いています。
 皆様、お変わりありませんか。


※このメールは、NPO法人企業内コーチ育成協会のスタッフ及び代表理事・正田が、過去にお名刺を交換させていただいた方・当協会のイベントやセミナーにご来場いただいた方にお送りしています。ご不要の方は、メール末尾にありますURLより解除ください。



 本日の話題は:



■リーダーシップ、曲げない人生、そして「承認」
  ―「頑張る女性は素敵」と思える人だけが読んでください
  ―有光毬子さん(コープこうべ顧問、兵庫県経営者協会副会長)インタビュー
 

■ワールドカフェで全職員対話をしました!篠山市商工会



■読書日記・『「勇気」の科学』



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■リーダーシップ、曲げない人生、そして「承認」
  ―「頑張る女性は素敵」と思える人だけが読んでください
  ―有光毬子さん(コープこうべ顧問、兵庫県経営者協会副会長)インタビュー


 昨年9-10月、わたくし正田は兵庫県経営者協会の女性産業人懇話会(VAL21)で、2回にわたり「承認」のお話をさせていただきました。

 その2回目の終了時、ひとりの女性が立ち上がって発言されました。

「2回にわたりこの『承認』のお話を聴かせていただきましたが、私にはこのお話はなんだか本当だ、と感じられます」

 それが、VAL21代表幹事の有光毬子さん(69)でした。


 その有光さんに先月27日、インタビューさせていただきました。

 そのお話は…、前半では有光さんが灘神戸生協(現コープこうべ)に一社員として昭和38年に入社されてから、女性の昇任制度など何もない中で1人で道を切り拓き、女性役員となられるまでの軌跡。

 そして後半では、9月以来の有光さんご自身の「承認」の実践を惜しげもなく披露してくださっています。

 
 「頑張る女性は素敵」わたしは自然とそう思いますが、世間には、あるいはこのメールニュースの読者の方にも依然、そう思わない方もいらっしゃることは承知しています。
 ひがまないねたまない素直な人だけが読んでください―。

(それぞれ長文ですので、できるだけお仕事中には読まないでくださいね)


有光毬子さん物語
前編・「志を曲げなかったわが人生」

(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

   http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51881408.html

 ■大きかった「上司の言葉」
 ■2つの壁「昇任試験」と「職域」
 ■人を動かすためには何が必要か


(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

   http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51881413.html

 ■商品に触れるために持ち帰り仕事
 ■通信教育で日本生協連会長賞を受賞
 ■ついに女性初のバイヤーへ


(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたのか

   http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51881415.html

 ■心の支えになった「演歌」があった
 ■何度も伝えること、聴くこと
 ―大切な「コミュニケーション」―
 ■「不公平だと思いませんでしたか?」(正田)
 「今は最高の体験をさせてもらったと思っています」(有光)


(4)男性と女性でつくる社会へ向けて

   http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51881417.html
 
 ■男性上司や同僚との関係は
 ■心無い噂と夫の理解
 ■「これまではこれでやってきたから」
 ―意思決定機構に入って感じた男女の価値観の違い―
 ■後輩の頑張りが嬉しい



後編・地域に「承認」を持ち込んでみた、「承認」について語った

   http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51881426.html

 ■ラジオ体操の会参加者が100人に
 ■名前を呼びかけ、話をしてもらう
 ■高齢化社会、関心を持たれることで人は変わる
 ■男性が命懸けで組織を変えていってほしい


 いかがでしたか?


 お若い頃から男性上司の言葉で仕事の意欲に目覚め、そしてリーダーシップなどを含む通信教育で表彰されるまでの成績を挙げられたという有光さんは、元々「リーダーシップ」について深い造詣の持ち主でいらっしゃいます。ほとんど「リーダーシップ」を人生そのもののように大事にしておられる方だ、とおもいます。


 その有光さんがあえて、「承認」について「本当だと感じられる」と人前で言ってくださり、また自らの実践体験を披露してくださったことのありがたさを思い、気を引き締めるわたくしであります…。


 
 ところで、前編にタイトルをつけるときに「志を曲げなかったわが人生」としましたが、今ひとつしっくりきていません。

 どなたか、もう少しセンスのいいタイトルをつけていただけないでしょうか…。


※この記事の冒頭部分で有光毬子さんのことを「女性初の役員」と当初、表記しましたところ、有光さんよりご訂正をいただきました。有光さん以前にも昇任試験を受けなかった女性役員がいらしたとのことで、正しくは「女性役員」でした。大変申し訳ありませんでした。お詫びして訂正いたします。(本記事は既に訂正ずみです)
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■ワールドカフェで全職員対話をしました!篠山市商工会

 
 先月31日、研修先の篠山市商工会様で「ワールドカフェ」をおこないました。

 読者のみなさまは、ワールドカフェってご存知でしょうか。4人1組のテーブルで決まったテーマについて話し合いをし、20〜30分すると1人を残して「席替え」をし、違う組み合わせでまた対話をする。

 同時にたくさんの人と対話し、十分に話したという感覚をもち、そして組織としての一体感をつくっていきます。


 通常は、ワールドカフェでは「AI/ポジティブアプローチ」といって、「くらいことは話さない」というお約束があるのですが、今回はあえて、くらいことを話すワールドカフェにしてみました。

 さあ、どうなったでしょうか…。


 その模様をこちらでご紹介しています。よろしければご覧ください:


 「商工会で初?ワールドカフェを行いました」

 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51881388.html


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■読書日記・『「勇気」の科学』


 勇気。多くの日本人にはたぶん、遺伝的に足りないもの、弱いもの。

 それを補うために、「勇気」を鍛える教育として「武士道」は発達したのだろう、とわたしは思っています。

 『「勇気」の科学―一歩踏み出すための集中講義―』(ロバート・ビスワス=ディーナー、大和書房、2014年1月)は、ポジティブ心理学者である筆者が、自らもたくさんの勇気を必要とする試みを行ってみながら、「勇気」をさまざまな側面から考察し、勇気の身に着け方も指南した本です。

 読書日記はこちらからご覧ください:


 「勇気と恐怖、武士道精神、「面子の文化」―『「勇気」の科学』を読む」

 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51880990.html


 ちょうど、この読書日記の中で「組織の勇気の欠如がイノベーションの欠如につながるだろう」と述べた矢先、

理化学研究所の小保方晴子・ユニットリーダーがiPS細胞作製の常識をひっくり返すSTAP細胞の作製に成功し、ネイチャーに掲載されたことが報じられました。

 わたしはこの件について新聞等で報じられている以上のことは何も知らない立場ではありますが、思うのは、小保方さん自身も偉かったし小保方さんに研究を続けさせた上司も偉かっただろう、と。(もちろん一番えらいのは小保方さんご本人。誤解のないように;;)つまり、1回目の投稿で「過去の研究をなめている」とまで酷評された、常識を覆す小保方さんの研究を支持し、研究を続けるための費用、設備等資源を与えたのはそれなりに「勇気」の要る決断だったはずですから。

 それとは真逆の判断も、日本中で一杯なされていることだろう、と思います。


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◆今回のメールニュースは、最初の記事の「有光毬子さん」も勇気ある人生の記録、だったと思いますし2本目の「商工会ワールドカフェ」も、組織内ワールドカフェでくらいことを言い合うのは結構勇気の要ることだったろう、と思いますし「勇気づくし」でございました。
 読者の皆様が読了された後、「静かな勇気」を心に抱いていてくだされば、嬉しく思います。



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2.発達障害者は注意するのが好き?『大人の発達障害ってそういうことだったのか』をよむ

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3.勇気と恐怖、武士道精神、「面子の文化」―『「勇気」の科学』を読む

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5.ANA河本宏子氏インタビュー(1)CAは約6000人の巨大組織

 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51820117.html 





※このメールは、NPO法人企業内コーチ育成協会のスタッフ及び代表理事・正田が、過去にお名刺を交換させていただいた方・当協会のイベントやセミナーにご来場いただいた方にお送りしています。

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もしこのメールを新たに購読ご希望のかたがいらっしゃいましたら、
info@c-c-a.jp まで、「メールニュース希望と書いて
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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

今週も寒波に負けず、良い週になりますように。


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特定非営利活動法人企業内コーチ育成協会
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ブログ「コーチ・正田の 愛するこの世界」
http://blog.livedoor.jp/officesherpa/

日本人の勇気と自信は、ここから生まれる
「第3回承認大賞」
http://shounintaishou.jp

「企業内コーチ育成のすすめ」
(株)帝国データバンク社『帝国ニュース兵庫県版』
2008年〜2012年 長期連載このほど完結
http://blog.livedoor.jp/officesherpa-column/
*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*

 コープこうべ顧問・兵庫県経営者協会副会長の有光毬子さん(69)へのインタビュー後編です。

 ここでは、有光さんがVAL21で9-10月と「承認」を学ばれて以来、みずから行った実践のお話を語ってくださいました。

 舞台は地域のとある活動ですが、まあ、その「成果」が半端ではないのです。

 高齢者にかかわるお仕事をされている方、またジャンルにかかわらず地域活動をしておられる方、必見です。


有光毬子さん物語 
後編・地域に「承認」を持ち込んでみた、「承認」について語った

■ラジオ体操の会参加者が100人に
■名前を呼びかけ、話をしてもらう
■高齢化社会、関心を持たれることで人は変わる
■男性が命懸けで組織を変えていってほしい



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■ラジオ体操の会参加者が100人に

有光:
 私も仕事をする中で色んなチャレンジをしてきたけれども、一番自分自身が関心をもち意識してやってきたのが、やっぱりリーダーシップということ。最初の上司が、理念とか仕事の価値とかいろんなことを語ってくださった、ああいうリーダー、私はすごく感動して、私もそういうリーダーシップのとれる産業人でありたい、と自分のライフプランにも描いたわけですよ。だから、リーダーシップということにすごく関心をもって仕事をずっとしてきたつもりなんですけれども、
 この間VAL21で(承認の)研修をおききして、改めて色々感じさせられるところがあってね。要はリーダーシップというのは、まず人にどれだけ関心が持てるか、ということなんだわと。人を駄目にするというのは、人を殺すのに包丁やピストルなんか要らへん、人というのは無視すれば駄目になっていく。関心を示してやらなければこの人は駄目になっていく、死んでいく、簡単なこと。私心底そう思えて、この間承認のお話をきかせていただきながら、またつくづくそういうことを感じていたんです。
 それで私が取り入れさせていただいたのが、もう企業という第一線にはいませんけれども、企業のような競争云々、というのじゃなくても、地域とか私的なところでも同じことなんだろうな、と。そこで地域のラジオ体操の会の中で少しそういうことを試みました。
 企業人の世界だけでなく、地域社会の中でもそういうことは必要なんだろうな、と思えたんです。

―ラジオ体操を呼びかけたら100人ですか、集まられたそうですが、すごいことですね。よろしければそこからお話いただけますか。最初どんなふうに立ち上げはったんですか。

有光:最初、ラジオ体操に私は参加してなくて、皆さんされてたのはされてたんです。大きな団地の中のグラウンドがあって、私も健康のためにそこを朝ウォーキングしていました。すると6時半ごろになるとラジオが鳴って、何名かが体操しておられる。そういうところへ参加したんです、最初はね。ウォーキングで自分でしばらく歩いて、6時半になって体操して帰る、と。
 そうしてずっと見ていましたら、やっぱりみんなで集まって体操して、という地域のコミュニケーションを、もっとみんなの中に濃いものにしていけないかな、と思ったわけです。だから先にやっておられた方はおられるんですよね。
 ところが神戸市が「年中無休ラジオ体操の会」というのをしていて、印鑑を押して100回になったらこの色のバッジ、300回だったらこの色のバッジとか、神戸市が提供してくれるんです。「せっかく体操をするんだったら、それをしよう」と、神戸市のサポートを受ける形をラジオ体操の会に持ち込んだんです。
 安物のバッジですよ(笑)だけどやっぱり目標をそういう形で与えられることによって、俄然増えてきたんです、参加者が。夏場、100人ぐらいになるんです。今、冬は寒いから40人か50人弱ぐらいになるんですけれど、また春からぐーっと増えてくると思う。
 人っていうのはラジオ体操して印鑑がいっぱいになったからいうてすごい賞金がもらえるわけでもなくて(笑)、そういう風に目標、目的があることによって随分違うな、と感じました。そこでその形でずっとやりよったんです。「いっぱいになったら言ってくださいねー」って。そして私が毎日印鑑を押すのは大変だから、自己申告で枠の中に日にちを書いて「いっぱいになったら持ってきて」と、バッジをあげるようにしてたんです。
 そうしてずっと続けていて、そこで去年の9,10月に承認のお話をVAL21で聴く機会があって、もっとみんなが活き活きと輝いてくれる方法はないだろうか、と思ったんです。そこで行ったのが、バッジを渡す時にみんな集まってもらって、「今日いっぱいになられた方がいまーす」と、みんなの前で渡す。そしてまたその方に一言喜びやとか感想を語ってもらう。というようにしたんですよ。そしたらね、もう全然会の雰囲気が盛り上がって、その話する人も「きのうからどう言おうか一生懸命考えてきたんや有光さん」(笑)

―可愛い(笑)

有光:本当(笑)参加者の方は70歳、年長の人で80歳、要は高齢者の方が多いんですよ。早い時間ですからお仕事してる人はラジオ体操参加しとられへんからか、高齢者の方が多い。そして1人で住んでるという高齢者の方も随分いらっしゃる。そういう方々がそこへ来て、みんなと「おはよう」って声かけて、元気が出かけて。そして話し合うからそこで友達同士ができて、「お茶飲みに行こう」って行かれる方も増えてるみたいだし、すごく盛り上がってるの。
 そして私思ったのは、大したことじゃないですよ、でも人の前に出て、みんなで認めて、「おめでとう」「100回おめでとう」「300回おめでとう」って認めて、そして自分が少しお話をされて、こういうことはやっぱり人に生きがいとかやりがいとか輝きを与えるんだというのを。だから研修はそういう演出を少し取り入れさせていただいたきっかけになったんです。

―まあよくそういう形に昇華してくださいました。


■名前を呼びかけ、話をしてもらう

有光:
それでこの間、もうバッジも大分渡しましたから、300回の人も随分増えてきているし、今度は私がもらう時だったんです。それでどんな挨拶をしようかなと思ったときに、「実は私、セミナーでお勉強してきましてね」と、この(承認の)話を少しして、「人というのは、こうやということを教わってきました」と。そして逆にね、何でもないところをちょっと歩いてて、「ラジオ体操始まるよ」て集まって、「おはよう、元気やった」とこの一言でね、人間というのは、「あなたのことをわかってますよ」ということいなる、これが大事なんや。「だから私こんなお世話してるけど、みんなが声掛け合っておられる、みんな一人一人が大事な役割を果たしておられると思う」という風に挨拶させてもらったんですよ。
 そしたらね、今まで何でもなかったものが、「明日は何々の用で出かけるのでラジオ体操来ないけど心配しないで」と、そんなことを言って帰られたりね。
 だからやっぱり、人というのは関心をもって、「あなた」と。
 そして何百回って表彰するとカードに住所や名前電話番号を書くようになっているから、それをいただいて、そこでお名前を憶えるわけですよ。そうすると「おはよう」でも、「○○さん、おはよう」と、名前まで言ったら、ただ単に「おはよう」だけ言っているのとは全然違うな、とかね。こんなこと今になって、この歳になって感じたっていう、ね。凄いですよ、人というのは。

―嬉しいでしょうね、皆さん有光さんに呼びかけられたら。

有光:勉強させていただいたんですよ(笑)いや気づかさせていただいたというか、ね。人というのはこんなに、「あなたに関心を持っています」というのを示せば、必ず反応がきて、そしてそれは相手が元気になったりいい方向に行く。
 企業はそれが競争力につながったりするわけやけど地域やからそんなことを求めてるわけではないんだけどね。みんなが元気で過ごせるような地域コミュニケーションができれば最高だし。

―本当にそうですね。

有光:私も地域のことには疎かったけど、あまり関わりもなくしてきたけれど、やっぱり地域でもそういうことをしていくことは大事だなあと。確かに地域でも1年間に何回か、70歳以上とか60歳以上のお食事の会とかしはるんだけど、私の考えはそんな年に何回っていうよりも、毎日が、暮らしっていうのは大事なので、ラジオ体操も毎日だから、顔を毎日合わして、そこで一言か二言か話する。「あ、これなんだ」と。
 だから「ここへ来なかったら1日誰ともしゃべらんといる」って言われる方も大勢いらっしゃるけどね。朝集まって「おはよう」「どうやった、元気やった」と言い合ってる、それがなんかみんなの元気の素になってるみたい。すごいですよ。
 この間なんか、80近い方にバッジお渡ししてみんなに一言、って言ったら、すごいいい話をね、それはもうびっくりして「すごい人やねえ」というぐらい。翌日お会いしたときに「いやーすごいいい話聴かせていただいた」と言ったらその人すっごく喜んでくださるんですよ。
 やっぱり大事なのは人に関心をもって、人がどうすれば活き活きとやる気・元気を出すんだ、ということを考えるということは大事なんだな、と。
 もっと若い時に真剣にそう思ってたらもっと出来ただろうに、と(笑)

―いえいえ、逆に本当にすごい方だなって思います。有光さんほどの蓄積があって、これだけやってきたという積み重ねがおありになって、そのあとでこんな若輩者の研修を聴かれて「あ、これだ」と思ったときに「あなたの言われること、取り入れましたよ」と言ってくださる、その懐の深さがすごいと思います。本当にどうしてそんなことができるのか、って思います。

有光:いえいえそんなおっしゃってるようなレベルの高いアクションを起こしているわけじゃないんですけど、私はあの考え方というのは今、地域の中でこういうやり方でしたら自分自身も活かせるんだ、と思ったんですよ。同じことしてもちょっとした工夫とか、相手への動機づけとか、それで人というのは変わる、というように思ったときに、「やってみよう」と思って。

―リーダーのお力ですね…。有光さんがそこに入られて今最大100人という集団になられたときに、そういう関わり方をされる方が有光さん一人ではなくなっていて、それ以外の方同士も「おはよう、元気やった?」という声掛けをし合うようになられている、というのが凄いです。

有光:うん、あれがいいですね。100人もおれば、気の合う者もできてくるんでしょうね。話して、楽しそうにしておられるのがね…、


■高齢化社会、関心を持たれることで人は変わる

有光: また嬉しいなと思ったのは、私がノートを出して「今日はこの方が」とやっていたら、何人かの方が「一緒に手伝うわ」と言ってくれたんです。そこで「1人じゃきびしいけど何人かだったらできるな」と思ったのが、今年の最後、12月31日。「1年間頑張ったね、喜ぼう」と言って、コーヒーの紙コップを私家でバーッと並べて、コーヒーの粉を入れて。微糖のスティックのを。まあ平均的やから微糖がいいかなーと思って。冬場だから50何個用意したらみんなに当たるわ、と思って。
 そこではたと困ったのは、お湯。うちのポットの容量では50何人分もないから、そしたらみんな「持ってきてあげる」と持ち寄ってみんなでお湯を注いで、そしてラジオ体操が終わった後みんなで立って熱いコーヒー持って「今年1年間頑張れたねー」と言ってね、

―わあー(拍手)

有光:うちの夫も協力してくれて一緒にやってるんですけど、夫が言うにはそのみんなの前で「よう頑張ったね」と声をかけてもらうのを、「お前が言ったらあかん」と。だれか頼んで、その人が前に出てもらうように、と。それである人に頼んだら「はいやります」。そしてみんなの前で1年の頑張りを感謝するような、たかがコーヒー1杯ですけどね(笑)。
 だから「いい会になりかけたねえ」って。

―本当に素敵なお話。皆さん笑顔になられて、きっと細胞レベルで若返ってらっしゃいますね。

有光:うん、でしょうねえ。私、感じるようになりましたもの。
 初めは黙々と何名か、ラジオ体操が始まる前グラウンドを歩きますからね、皆さん挨拶はするけれど「おはようございます」と言うぐらいだったのが、もう違う、会話になってきてるでしょ。だから全然違ってくる。
 「もうあと1週間で有光さん、一杯になるからね」と予告してくださる。「でもようしゃべらんけど」って言いながら、結構嬉しがってしゃべりはる(笑)

―嬉しいんですね、きっと(笑)

有光:だからね、勉強させていただいたことをそんな形で取り入れさせていただいて、真似ごとみたいなものですけど、良かったです。

―いえいえ、素晴らしい実践でいらっしゃいます。
 ありがとうございます。こういう形のこういう場でのご実践というのは、私初めてお伺いしますので、嬉しいです。高齢化社会にこういう形でお役に立てるんだ、と逆に励みに思いました。

有光:うん、うん。もちろん職場でも求められるし、でも地域には地域の中で結局は「人」ということを軸に考えたら一緒なんだ、って。やっぱりまず自分に関心を持ってもらう、ということが一番の喜びなんだ、って。そうするとそういうことは少し演出したほうがね、それは実感できる。そうすれば必ず元気になれる。
 近所に高層の団地があってここに運動場があるんやけど、あんまり大きい声出しよったら朝早いのに(笑)「団地からクレーム来いひん?」っていうぐらいみんな元気で、声掛け合うというのは変わってきましたね。
 ですから間違いなく、同じことやっとっても、そういう考え方を少し取り入れて工夫していくことで、状況はコロッと変わる、というのはねえ。

―そうなんですねえ…、びっくりします。


■男性が命懸けで組織を変えていってほしい

有光:
私自身のときも「こんな勉強してきてね」って話ができて、ああよかったなと思って(笑)みんな色々と工夫してお話してきておられるけれども。

―有光さんなんか他にもいっぱい、お仕事の中のご経験もおありになるし。

有光:いやいや、リーダーというわけではないけれどお世話役している者があんまりぱっと上に出て難しい高飛車なことをすると、やっぱりちょっと敬遠されるというのがあるので。そこらもうまくしないと(笑)
 やっぱり相手に受け入れられて初めて伝わっていく。どうしても一方的だと敬遠されて構えられてしまうけれど、やっぱり自分から入っていって気持ちのうえで受け入れられて初めてそこに本当のコミュニケーションみたいなものが出来ていくんだなあ、と。こんなことを通じてでも勉強させてもらいながら。うん。
 みんなにはよく言うんですよ、色んな講演会だとかセミナーで勉強しても「習ったわ」「きいたわ」で終わってしまったら絶対もったいないと。習った場で「あっ」と思ったら、それを必ず自分の行動として実践する、でないとあかんと。聴いて勉強してきたら知識は残るかもしれんけどそれはあくまで知識で、やっぱり実践に変えていかんといけない、という。実践に変えていくというのは必ずそれを体験することやと。だから1回「あ、これ」と思ったものは何らかの形で自分自身でやってみる。行動してみる。でないとせっかくの色んなお話を聴いても「あっ」「良かったわ」で翌日から忘れてる、それはもったいないですね。
 まあ本当いいことを学ばせていただいて、こちらこそ感謝しているんですよ。

―すみません押しつけがましくて。
 …まだまだ特に男性の方々は、これとは真逆のことを言ってる方も結構おられますので。

有光:ああなるほどねえ。うんうん。
 でもあんまりもう、のんびりゆっくりということでは、これだけ色んな環境が変わってきてるから、やっぱり早く、重要なこと価値観を取り入れる、そして間違った、まあ過去には正しかった観念なのかもしれませんけど、今の状況に合わない固定観念を捨てられる勇気を持てないといけないんでしょうねえ。
 固定観念で動いてたら楽ですけどね。今までやってきた通りにしてたらいいし、それを壊すということは非常にしんどい。けども変えなければ、やっぱりそういう状況変化に対応できなければ、やっぱり人は滅びるというか、ですからね。
 だから勇気をもってチャレンジをして、今の時代に必要なことを早く理解して。
 ワークライフバランスなんかも、女性だけが論じてるだけじゃなくて男性が大きな社会の問題として捉えないといけないですね。
 これ叱られるんですけど、企業でもまだまだ、ワークライフバランス云々ということに力を入れてる、と言わなければ、企業評価が落ちるからいうて取り入れているところがあるんですね。まだ建前で取り入れてる男性の方がいっぱいいらっしゃって、そうではないんだということまで言って、そして男性が本当に命懸けて企業風土を変えていく、そうしていただいたらありがたいですけどね


―そうですね…。
 いやー、なんかやっぱり感動に包まれてます。本当に私の生まれたときからお仕事されてきた方なので、その頃から志をずっと曲げずにやり続けて今があられる方にこんなにお話をうかがうことができて。

有光:いえいええらい雑談みたいなことで申し訳ないです。
 自分自身はそうやって無理もしながらしてきたけど、でも考えたら、たくさんの人に支えられて、そして作られてきた。最初の上司の方は忘れられないものね。もう亡くなっていらっしゃらないけど。本当に、あの人が色々と話してくださった。うん、あれで自分自身の人生観なり、「私もこうなりたい」と思ったのが、あれがスタートやもんね。だからやっぱり、人にも助けたり影響を与えてもらいながら、自分も少しでも人に影響を与えられるような生き方ができたら最高なんだろうけどねえ。

―いえいえ。そのルーツをお伺いして、「ああ、それでなんだ」とちょっと合点がいったような気がします。ありがとうございます。有光さんが私どものような者に何くれとなく言葉をかけてくださるのが。

有光:そうね…、まだ、まだ頑張らんといけない(笑)色んな頑張り方があるから。
 私もね、随分いい内容の企業内研修をやっていただいてるんだなあ、と初めてお話を聴いて思いました。例えば10人聴けば10人がみんな反応してくれるということはないかもしれない、でもその中の2人でも3人でもそのことを消化してくれればそれはもうすごいことやと思うので。是非頑張っていただきたいと思いますね。

―ありがとうございます。あと10年か20年、お言葉を励みに頑張らしていただきます。


****

 有光さんインタビュー、いかがでしたか?

 前編も「鳥肌たつくらい」すごいお話の連続なのですが、この後編はまた違った意味ですごかった。

 地域活動の中でも「ラジオ体操」は毎日のことなので、もっともおとしよりと近い距離にある活動といえるだろうと思います。

 それを毎日続けておられる有光さんならでは、またお若い頃から「日本生協連会長賞」をとられたほどの勉強の虫・有光さんならではの学習能力で、ラジオ体操の世界に「承認」をもちこみ、そして皆さんの笑顔と活発なおしゃべり、感動的なスピーチのある世界に変えてしまわれたのでした。

 「1日1回ここでしか人と話をしない」というおとしよりたちの、それまではどんなに灰色の日常だったことでしょうか。

 また、これほどまでにおとしよりを活性化させる「承認」というものを考えます。
 よくあるのです、現役男性リーダーたちが口を「へ」の字に曲げたまま、

「ふ、若い人にはこういうのは喜ぶんでしょうね、『ほめる』っていうやつはですね」

なんていう。そう言っているご本人が実は自分もほめられたくて一生懸命見栄をはり背伸びをしているのが見えたりもするのですが、

「承認欲求」はなにも若い人だけのものではなく、としをとって死ぬまで一生のものなのです。人はこれほどまでに「認められたい」存在なのです。

 いい悪いではなく、そのことを「認め」なければなりません。

 途中わたしが言った、「細胞レベルで活性化されているでしょうね」というのは、かなり本気で言っているのですが、どなたか理系の研究者のかたそういうことにご興味をもってくださらないでしょうか。

 哲学者の河野哲也先生もいみじくも言っているように、たとえば「フロネシス(実践知)」を体現している人の脳の状態に関心をもつ脳科学者などいない、なぜなら一般人がそれに興味をもたないからだと。これは寄り道^^;

 また心正しいリーダーがそれを使ったとき、場に隔てなく清らかなエネルギーが横溢することを思います。それはきっと、ナルシシズムの勢いで地域活動を牛耳ろうとするリーダーがつくる場にはないような、だれもが足を向けたくなるような場、だれもが「自分の居場所だ」と思えるような場であろう、と思います。



 最後のほうの有光さんの言葉、

「男性が本当に命懸けて企業風土を変えていってくれたらありがたい」

 これは、男性に比較的強いことになっている(女性にはあんまり強くない;;)わたしへのエールでもあり宿題でもあるな、と気を引き締めたのでした。

 当協会の受講生様、会員様方、よろしゅうございますね。



 ともあれ、有光さん、このたびは貴重なお話をありがとうございました!



有光毬子さんインタビュー前編
「志を曲げなかったわが人生」

(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか

(4)男性と女性でつくる社会へ向けて


後編・「地域に『承認』を持ち込んでみた、『承認』について語った」
 


100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

有光さん3
 コープこうべ顧問・兵庫県経営者協会副会長の有光毬子さん(69)へのインタビュー4回目、前編の最終回です。
 ここでは、女性初の役員になられた有光さんが「男性多数」の意思決定機構へ入られての感慨が語られます。
 男性だけだと、やっぱり変なんじゃないの!?どこがどう変なの?
 と、思われる方は是非本記事をご覧ください…。



有光毬子さんインタビュー・前編
「志を曲げなかったわが人生」


(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

■大きかった「上司の言葉」
■2つの壁「昇任試験」と「職域」
■人を動かすためには何が必要か


(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

■商品に触れるために持ち帰り仕事
■通信教育で日本生協連会長賞を受賞
■ついに女性初のバイヤーへ


(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか

■心の支えになった「演歌」があった
■何度も伝えること、聴くこと
 ―大切な「コミュニケーション」―
■「不公平だと思いませんでしたか?」(正田)
 「今は最高の体験をさせてもらったと思っています」(有光)


(4)男性と女性でつくる社会へ向けて

■男性上司や同僚との関係は
■心無い噂と夫の理解
■「これまではこれでやってきたから」
 ―意思決定機構に入って感じた男女の価値観の違い―
■後輩の頑張りが嬉しい


(ききて・正田)


****

(4)男性と女性でつくる社会へ向けて

■男性上司や同僚との関係は


―本当に密度の濃い人生でいらっしゃいますねえ。

有光:いやいや本当。でも今の若い女性たちなんかにも、この間でも会議できいてたら、育児休職制度ってもう大半の企業にありますでしょ。だけど取りにくいから辞めるっていうわけですよ。「なんで?」といったら「嫌な顔をされる」とか、云々とね。「贅沢や」と。制度があるんだったらきちんと活用して、ただし復帰したときにやはり企業にそれだけの価値があるように努力はせんとあかんと。と、いう話はよくするんだけど、ね。
(制度が)ないものを頑張ってあるようにされた企業のロールモデルの先輩たちは「ない」ところからスタートしておられるでしょ。しかし「ある」のに、使わないというのは、これは私にとってみれば、ちょっと甘えてるんじゃないの、というときもあります。

―ああ、やっぱりありますか。

有光:うん。

―男性の上司や同僚とのご関係もお伺いしていいですか。
 有光さんが人の何倍もの努力をして頑張られて、それに応えるように道が開けてきたわけですけれど、「彼女があれだけ頑張ってるんだから、結果も出してるんだから認めてやろう」という人と、逆に「いや、頑張ってるか知らんけど女は女や」とか、「女のくせにこれだけ頑張ってるから認めて、いうのは生意気や」とか、こっち側の男性もいたと思うし今も多分いるんだと思うんですね。どんな風にそのあたりは。

有光:そうですね、確かにタイプとしては、どっちが多いかったかは知らんけど2つのタイプがありますよね。同期より少し若い男性たちは、すごく気持ちよく、何の抵抗もなく私を受け入れてくれました。女性より男性のほうがやりやすかったというのも(笑)同期、また新しく入ってきた女性たちへ私自身がやっていることを理解してもらうことよりも、男性のほうが何となく受け入れてくれた、というのはあります。

―何だかわかる部分あります(笑)


■心無い噂と夫の理解

有光:
でも、難しかったのはすべての男性ではないけれど、私たちより上の、年齢も地位も上の人たちは、やっぱりその人たちが持っておられる独特の人生観を持っておられますからね。「そこまでせんでもええのに」とか、マイナスの評価、批判、それは間違いなくありましたね。
 うちの夫が今でも言うけど(笑)「主人が可哀想や」って、よくそれは言われましたね。

―(笑)ずきってきませんでした?

有光:いや、くるんですけど、今でも県の方とかといろいろ男女共同参画とかでお話する機会はありますけれども、心底そのことを理解してるのはうちの夫やな、と思うわけですよ。知事がワーッと言いはってもなんか響かない(笑)と思ってきいてるんですけどね。
 でも初めは、うちの夫もすごく嫌だったみたいですね。特に私が人事にいましたから、人事というのは人の評価もみんなわかる部署ですよね。主人は職場結婚ですけど違う部署でして、結婚するときには私は結婚してからも仕事を続けたいと言ったんだけど、やっぱり「辞めといてほしい」と。「退職してほしい」と、いう思いは持っていたみたい。

―そうなんですか、ご主人様そういう思いは口にはお出しにならなかったけれど。

有光:出さなかったけれど。「なんで続けるんだ」とか、何となく少しは言っていたけれど、どういう風に説得したかは忘れたけど、継続して勤めるのは説得した。
 あとできいたら、なんで彼が私が勤めるのを渋ったかというのは、私は逆に人事部にいるから、職員の色んな情報がみんな集まるところやからそういう意味で自分が嫌やと思うやろな、とこっちは思ってたけど、そうではなかったみたいです。自分が結婚をし、やがて子どもを作って育てるということになったら、やっぱり一人前に仕事をできないのを「やっぱり女の人はあかんなあ」とこれを言われるのが嫌だったみたい。
 だけども、私が結婚してから自分がやってる仕事家へ持って帰ってやってるのをみて、「これはやっぱりちゃんと評価してやらないといけない」と思ったらしいですよ。

―ああそうですか、そういうお姿をみてご主人様もお考えが変わったんですね。

有光:自分自身がただ勤めたいだけで、ともかく勤続だけを意識して嫌だと思っていた。「あの人の奥さん何や」といわれるのが嫌だったみたいです。後できいたら。だけど熱出しても仕事に行ってるし(笑)これはほんまもんやな、と途中で思った、と言ってましたけど。
 でも逆に周りの男性がうちの主人をみて「気の毒や」(笑)とか、結構言ってましたね。

―奥様がそんな頑張り屋でいらしたらご主人様お幸せやと思う、かえって(笑)絶対励みになるじゃないですか。

有光:色々あったみたいですよ(笑)今だから言えますけど本音を言えば、役員、経営層にまでなっていくというのは当然人数が絞られますでしょ。まあ女性にもそういう機会を与えんといけないということもあって、女性の役員になって。そうすると夫のほうは地位としては低いじゃないですか。周りの人は、すごく「あんなでようやってる」と言って主人への同情の声が随分あったんです。うちの主人は全然(笑)長い中で彼女自身がそういう風に頑張ってきたんだから、それだけの力があるんやったらそういうポストを与えられてもいいんじゃないかって。本人は全然そんなじゃないのに、周りからは色々と(笑)ありましたね。

―なるほどですね、年下の男性はかえっていい感じでおつきあいできる。

有光:ほんとですよ。そうですね、下の若い子はどうなんだろう、家にもよく遊びに来たりしよったし、自分でも仕方がないから女性やけど従ってるというような雰囲気を感じさせる部下の男性というのは居なかったように思うんだけどね。

―さすがですね、有光さんだからですね。

有光:1人1人の本音は知らんけど私自身ではそんな風に感じたことはなかったです。
 まあ、私さばさばとやる方ですからね。あんまりねちねちとはしないので。
 まあしかし―、振り返ってみればきつかったなあ、というのもあるけれど。

―うーん、想像したらものすごいきついご生活されてますよ。

有光:まあどんなことも今になったらいいことだけが思い出に残るものなんですかね。私何にもきつかったとか苦しかったとかいう思いはなくて。


■「これまではこれでやってきたから」―意思決定機構に入って感じた男女の価値観の違い

有光:
そういう男女共同参画へのチャレンジというのは今、主に2つのチャレンジについてお話しましたけれど、そうではなくて例えば部長職に就いたり、役員になったりして、会議で圧倒的に男性でしょ。そうすると議論をするときの価値観や評価の仕方がすごく大きく違うな、というのを色んなところで感じることがあったんですよ。

―有光さんからみてどんな違いでしたか、それは。

有光:男性は大半は過去にやってきたことを継続してその価値観を持ち続けてその延長で次のあり方みたいなのを評価をしはるわけやけど、私は「そうじゃないんじゃないの」っていう全然違う発想が生まれるんです。

―たとえば1つ例を挙げるとしたら、どんな。

有光:たとえばね、次年度の事業計画の作り方のプロセス。事業計画を策定しますよね、それのプロセスについて、なんせ今まで作ってきて、去年なんぼで、今年の実績がなんぼで、それに何%アップとか、数値計画でも大体こういう風につくりはるんですよ。それに対して私は、例えば今年の計画が、これまでの進捗であればこれだけ未達ですね、と。だのになんで毎年2%とか上の数字を目標としてするのか。これの意味が分からん、と。

―ふーん、そうですよねえ。

有光:だから極端なことを言えば、別に去年より低い目標でもそれはそれの事業計画がベースとして論議されるなら、低くてもいいと。大事なのは毎年毎年積んでいくという、その発想が私は分からん、というわけですよ。
 それだったら今年の計画に対して未達なものの要因が徹底的に議論をされて、その要因に対した手の打ち方を鮮明にして数値にするんだったらいいけど。とにかく「数値を乗せる」というのが分からん。
 そう言っても大半の男性は「いや今までもそれでやってきたんだから」。大体そういう意見ですね。

―ああそうなんですか。不思議ですね、だって男性たちもご自分の部署だったりもするわけでしょ、その未達の部署というのが。そしたら未達やな、というのはわかるわけでしょ。

有光:そうそう。でもね、やっぱり10対1の関係やったら、やっぱりこっち(男性側)のあれに。まあ何かに決めないとあかんわけですからね。だから私が思うのは男女って分けてはいけないんだろうけれども、もっと管理職にしても役員にしても女性の比率が上がっていかないといけないという思いを持ちかけたのは、その頃なんです。
 やっぱり女性のもつ考え方、価値観とか、男性とは歴史の中での違いもあるし、実際役割を担っているあれも違ったりするから、やっぱり対等のぐらいの人数で議論をしながらしていかないと、結局意思決定の場に入ってみたところで、やっぱりこの意見は少数の意見にすぎない。そういう経験っていっぱいありますね。

―はい。そういうお話を伺うとよくわかります。


■後輩の頑張りが嬉しい

有光:
でもわかりやすいでしょ。そういう場面がある。
 だから私はこの頃、ダイバーシティじゃないけれども、生活者がもつ価値観というのは色んなものがあるから、色んな政策論議は価値観の違いがぶつかりあって、そしていいものを産みだしていける、そういう組織にせんといけない。そのためには、男性と女性の持っている価値観の違いがある。だからもっと意思決定の場に女性たちを多く参加させてほしい。いうのが、そういう思いなんですよ。

―はい、はい。

有光:でないとね、なかなか(変わらない)。といつも思いますね。

―どうですか、今のコープ様にいらっしゃる女性の方々、有光さんのお気持ちをどれくらい理解してくださってますか。

有光:女性ももう今は数がたくさんいますから、ただ自分の身近で一緒に仕事をしながらやってきた女性たちは、すごく理解してくれてる。「こうなんですよ、ああなんですよ」なんて、色んなことを言ってくれるけどね。でも顔もみたことのない女性も当然一杯いるわけですから、そういう人たちとは、直接的な交流はなかっただけに難しい部分はあるんですけれども。
 色んなことを一緒に語りながら、私からも「自分はこう思う」と言いながら、一緒にやってきた人たちは、すごく。自分たちが壁にぶつかった時には「有光さんが言っておられたこと、ようわかる」と言ってくれる子もいるし。

―それは今いらっしゃる方の何歳ぐらいの層の方ですか。

有光:40過ぎたぐらいの子ですね。
 そもそもコープこうべは、結婚や出産で退職するというのがすごく少なくなったんです。だから全体に少ないんですけど、私たちと一緒に食事したり飲みながら話した女性たちは、結婚を選択した女性もしない女性も頑張って、そして課長職とかのポストに就いていきよるんですね。やっぱりそれはすごく嬉しいですね。
 今年の春の人事異動でも嬉しかったのは、〈大阪北とは合併したので〉コープこうべの活動エリアは7つのブロックに分かれている。そしてそのブロックに1人ずつ長がいる。そこに初めて女性の地区本部長ができた。それが一緒に横でやりよった彼女なんです。

―へえー。それは嬉しいですね。責任の大きいお仕事ですよね。

有光:そうなんです。そんなんで、…いろいろありました。

―来るときも「どんなお話やろう」とワクワクして来たんですけれど、鳥肌たつように感動しています。

有光:でもね、このあいだ兵庫県経営者協会で陸上の有森裕子さんが講演されたでしょう。マラソンを通じて色んな体験を話してくださったけど、まあ、あれだけ有名な人ですから、それはみんな感動するけれど、結局私たちの周りに1人はいる、各企業でも地域でもモデル的にやってきた人たちというのは、有森さんが話されたような同じことを自分で体験してきていると思うの。目的が、向こうはスポーツやし、私たちは企業の中であったり、その違いはあっても。「同じことなんだわ」と思って聴いていましたね。


(前篇・「志を曲げなかったわが人生」ここまで)


有光毬子さんインタビュー前編
「志を曲げなかったわが人生」

(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか

(4)男性と女性でつくる社会へ向けて


後編・「地域に『承認』を持ち込んでみた、『承認』について語った」





100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

有光さん3
 コープこうべ顧問・兵庫県経営者協会副会長の有光毬子さん(69)インタビュー3回目。今回は、女性初の管理職〜役員となっていった有光さんの「支えになったもの」のお話。それは意外なものでした…。



有光毬子さんインタビュー・前編
「志を曲げなかったわが人生」


(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

■大きかった「上司の言葉」
■2つの壁「昇任試験」と「職域」
■人を動かすためには何が必要か


(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

■商品に触れるために持ち帰り仕事
■通信教育で日本生協連会長賞を受賞
■ついに女性初のバイヤーへ

(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか

■心の支えになった「演歌」があった
■何度も伝えること、聴くこと
 ―大切な「コミュニケーション」―
■「不公平だと思いませんでしたか?」(正田)
 「今は最高の体験をさせてもらったと思っています」(有光)


(4)男性と女性でつくる社会へ向けて

■男性上司や同僚との関係は
■心無い噂と夫の理解
■「これまではこれでやってきたから」
 ―意思決定機構に入って感じた男女の価値観の違い―
■後輩の頑張りが嬉しい


(ききて・正田)


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(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたのか

■心の支えになった「演歌」があった


―すごい体験でいらっしゃいましたねえ。
 どこの時点でおききしようかなと思ったんですが、そういう有光さんの志を曲げないで頑張ってこられた、色んな大変なことおありだったと思いますけれど、その中に「男女共同参画のために頑張っているんだ」とそういう大義を背負ってるんだ、という意識はありましたか。

有光:あのね、やっぱりかすかにそれは持ってました。

―そうですか。

有光:ただし、私そういうことをあまり口にしてないんです。今だったら「男女共同参画」ってワーワー言ってるけど、自分がやってるチャレンジとか目標っていうのはあんまりしゃべってないんです。自分で思い続ける。
 この頃になってやっと「こんなことやってきたのよ」「こんなチャレンジだったのよ」って話するようになってきて、その思いと似たような演歌があって、
「やるぞ見ておれ口には出さず腹に収めた一途な夢を曲げてなるか挫けちゃならぬ」
という歌があるんですよ。畠山みどりかな。ここの歌詞があたしと一緒だわ、って。その歌を歌って、「私こんな思いでやってきてん」って。
だからあまり自分が「挑戦する云々」ということを口に出して言うんじゃなくて、ただし自分が決めたこれは曲げずにやるぞ、っていう。ね。曲げてはならんこれでやる、と「この歌」っていつも思い出すんだけど(笑)

―はあ、歌が人生の指針になるってことがあるんですね。有光さんのようにロールモデルがいらっしゃらなかった中でやってこられた方にとって。

有光:うん。だから私カラオケとかあまり好きなほうじゃないけど、好きな人に、自分の人生に照らして「この歌」っていうのが必ずあるでしょ、それ聴かせて、って言うんやけどみんな「え?」って(笑)
 ただ、そういう話はこの頃になってするけど、本当にさなかにいたときは、あんまりそういうことを人に言うことはしなかった。ただ自分自身は一生働きたい、そして結婚もし子どもも育てたい、そして自分自身も企業の中でキャリアアップしていきたい、とこれを自分のライフプランで描いた、これはやっぱりどうしてもやりたいと。そういう思いはずっと持ち続けてたから。

―よくそれを捨てずにずっと続けてくださいました。


■何度も伝えること、聴くこと―大切な「コミュニケーション」

有光:まあ、その間に色んな人に助けられてるのもあって、実はそのお店へ異動になって自分なりにあれこれしてた時の店長なんかにも随分学ぶことが多くて。まあ店長にも色んな人がいらっしゃるけど私はその店長からも一杯学びました。
 その店長は、部下とのコミュニケーションということをものすごく大事にされていました。「1回みんなを集めて話をしても大体2割ぐらいしか通じてないというのが普通だ」と。だから何度も何度も伝えなきゃいけない、繰り返し、ということを教えてくれました。そうでないと考え方だとか行動だとか時間だとか、というコミュニケーションギャップがある間は、組織というのは上手くいかないよ、と。

―すごい先進的なお考えですね。

有光:そうそう。だからリーダーというのは、このコミュニケーションをとる能力が最も大事だ、ということを私は店長の行動からも学んだような気がするし、だから人には丁寧に何度も何度もしつこくぐらい話して。
 私そもそもあまり話するのが好きではなくて、どっちかというと聴くほうが好きなんです。やっぱり大事だなと思うのは、上に行けば行くほど聴くことのほうが大事なんですね、耳を傾けるというのがね。聴いてると、相手との間にどこがギャップになってるんやというのがわかってくるんですけど、一方的に言っていると全然わからへんのですよ。相手とのズレが。相手が色々言ってる、「あ、こう思ってるからここが私と違うんだ」というふうに、聴いてたらわかるんですけれど。
 だから、ポストが上になっていけばいくほど、しゃべることよりも聴くということが大事なんだと、これもなんとなく長くやっている中で感じるようになったですね。
 
―あ、それはもう自然と体得されて。

有光:どこでどうやったか知らんけど、そう思うようになった。「なんでこう思ってるん?」って、聴いてるんですね。そしたら、話してくれる。「あ、ここが理解出来上がってないんだ」と、分かりやすくなるんだけど、こちらから「こうやろうああやろう、云々」って言ってたら向こうは大体「はい、はい」ってうなずきはるだけなんですよ。

―ええ、ええ。

有光:「いいえ」とも言わなくて、納得したようにしてはるけど。相手が話してくれたら、なんかそのへんが分かってくる、という。そういうことを色んな体験の中で実感したというのはありますね。聴くほうが好きですね。


■「不公平だとは思いませんでした?」(正田)「今は最高の体験をさせてもらったと思ってます」(有光)

―あとですね、おききしたいことはいっぱいあるんですが、今やったら「ロールモデル」という言葉はよく使いますが、有光さんの場合には社内には女性のロールモデル、結婚もして、昇進試験も受けてというロールモデルがいなかったわけじゃないですか。そこはどう思われましたか。

有光:私自身がロールモデルになると意気込んでしたというのは別段ないんですけど、特に私にとって印象深い女性の先輩は2人いらっしゃって、その方たちははっきり言って試験も受けておられないけれども課長とかになっていっておられる。すごい方だったなあと思ってるけど。その2人とも独身でした。仕事ではすごい人やなあと思ってたけど、私が描くモデルではなかったんですね。
 私自身はもしも先輩女性たちと同じようにしていたら別に試験を受けなくても課長になったかもしれないし、それはわからないですけどね。
 でも自分自身では違うように、と自分で(ライフプランを)描いたので、とにかく今みたいに勤務先以外のところに(異業種)交流なんてなかったですから。VAL21みたいなところで他の企業の人との交流なんてなかったですから、結局は自分自身が最初の例としてモデルを作っていくしかないなあと。そう思いかけたのはあるんですよ。
 だからね、チャレンジするときの一番プレッシャーはそれでしてね。例えば女性で初めて店長という辞令が出たわけです。そのときに「これ失敗したらあとの女性がそういう機会を得られなくなる」と。やっぱりずっとそういうことを感じてました。
 だから商品部でバイヤーという辞令が出たときも、女性がどんどん今後バイヤーになったらいいと思うけど、結局初めてそういう機会を与えられたものが、この人の失敗が全部それからにつながる。私、そのプレッシャーは結構あったんです。

―それはどれほどのプレッシャーだったことか、と思いますねえ。

有光:だから、自分だけが(昇進に)なったらいいわ、ということではなくて、それが一つの企業の中で女性の道を切り開いていく試金石になったらいい、とつねにそういう思いでやっていましたから。やっぱり人から、「あ、ようできるね」「女性でもできるね」と思われないとあかん、というね。この思いは強かったですね。
 男性と競争して男性より早く偉くなりたいとか、そういう競争心というのはないんですね。じゃなくて、やっぱりその課題から生まれるプレッシャーというのは大いにあって、ちょっとしんどい部分はありましたね。

―そのプレッシャーは、どうですかお仕事されていくうえで、例えばバイヤーさんになられて店長さんになられて、どういうふうに有光さんに作用されたと思いますか。プレッシャーを糧に頑張ることができたんですか。

有光:どういうんだろうなあ…、例えばバイヤーになった時も、本部ですから、朝始まるのは8時半やったか9時半やったか忘れましたけど始業時間がありますでしょ、大体みなそれの10分まえとかに来るじゃないですか。でもいざ仕事が始まると、電話やら何やら、もう目が回るようでしょ。だから色んなことを勉強する時間というのは仕事が始まったらとれないんですよ。だから6時半とか早い時間に本部に入って、朝の1−2時間が資料を読んでああこうなってるとか、商品の勉強をしたり、そんなことをしてましたね。

―朝の早い時間から。
でもお子さんも小学校に行かれてるでしょ。中学行ったらお弁当とか。

有光:母がやってくれました(笑)もうそこは母。そのために呼び寄せたんですから。そこまでしなくても女性が育児しながら、という条件を作っていく、そういう組織風土を改革するということが本来大事やったんだろうけど、そういう余裕じゃなくて、今はとにかく自分をその組織に合わせていく選択をしないといけない時もあったんですよ。結局はね。弾かれたらすべて終わり、というあれがあったから、要は自分をどう適合させて生きていくか、という選択。

―寂しいとか不公平だとかそういうのはありませんでした?第一世代でなければここまで苦労しなかっただろうに、と。

有光:そりゃあ、確かにね。本当にしんどい時は、「なんでここまで」と思いました。なんで乗り越えられたかは今となってはわからないけど。今だったら、「私はもう最高の体験をした」と思えるけどね(笑)その最中はもう色々と。


(「(4)男性と女性でつくる社会へ向けて」につづく)


有光毬子さんインタビュー前編
「志を曲げなかったわが人生」

(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか

(4)男性と女性でつくる社会へ向けて


後編・「地域に『承認』を持ち込んでみた、『承認』について語った」





100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

有光さん3
 コープこうべ顧問・兵庫県経営者協会副会長の有光毬子さん(69)のインタビュー2回目です。

 ここでは、「結婚して子も産んでかつ仕事も続けたい。そして商品にも触りたい」という有光さんの念願がついに叶えられる日がやってきました。しかし、それを実現させた有光さんの強烈な頑張りがまた凄まじく…。

 何が”奇跡”を生んだのでしょうか。



有光毬子さんインタビュー・前編
「志を曲げなかったわが人生」


(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

■大きかった「上司の言葉」
■2つの壁「昇任試験」と「職域」
■人を動かすためには何が必要か


(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

■商品に触れるために持ち帰り仕事
■通信教育で日本生協連会長賞を受賞
■ついに女性初のバイヤーへ

(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか

■心の支えになった「演歌」があった
■何度も伝えること、聴くこと
 ―大切な「コミュニケーション」―
■「不公平だと思いませんでしたか?」(正田)
 「今は最高の体験をさせてもらったと思っています」(有光)


(4)男性と女性でつくる社会へ向けて

■男性上司や同僚との関係は
■心無い噂と夫の理解
■「これまではこれでやってきたから」
 ―意思決定機構に入って感じた男女の価値観の違い―
■後輩の頑張りが嬉しい


(ききて・正田)


****

(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

■商品に触れるために持ち帰り仕事



―いやいや。2500人の規模の会社を若い女性1人で変えていくってものすごいことです。

有光:確かに、最初愚痴言ってるときは仲間何名もでやってたんですけど、なかなかね。1人1人も自分の生活があったり結婚して欠けていったりしていくと、結局は最後までやろうと思ったら1人でするしかない時期もありました。
 もう1つの女性の職種が限られてる問題。女性って最初そこに配属されるとずっとそこにいるパターンだったんです。確かに同じ仕事に習熟させておいたほうが効率もいいというような考えもあったのかもしれない。
 私も、今の仕事が嫌だとかいうことではないけれど、やっぱり商品を扱う仕事がしたいという思いがものすごく強くなりました。

―それは何かきっかけがあったんですか。

有光:それはね、私もよくお給料を封筒に入れて現場、お店とかに行ってたんですよ。当時は給料振込ではなかったので。そうしてみていたら、やっぱり店舗で商品を販売したり陳列したりする活き活きした姿にものすごく惹かれてたし、でまあ生協も色んな活動があるけれども、やっぱり事業としてのベースは商品の販売だったので、商品にかかわることの魅力度というのが高くて。
 そして、女性がもっといろんな職種に活躍できるように、チャレンジできるように、そんな道を切り開きたいという思いもあったんですけれども、これもなかなかチャンスがなくて、「どうしようどうしよう」と考えた挙句、人事異動を申し出たんですよ(笑)

―ははー。それが主任になられてから何年目のときですか。

有光:もうだいぶん経ってましたね。
その前に、女性も初めて試験を受けれるようになって、受けて受かりました。そして主任になって、人事でずっと仕事をしていたんですが、それから何年か経ってそういう思いになったんだと思います。はっきりとは憶えてないけどね。主任になってからもまだ人事の仕事をずっとしてました。
 主任になってから結婚して子供もできましたから、「女性も違う職種に」というのはちょっと期間が空きましたね。
 で、「女性が色んな職種に就けるようにしたい」って申し出て、「私は商品にかかわる仕事がしたい」「現場に出たい」と言ったんだけど、伝わらなかったのか、辞令は出たんです。現場への。でも結局はそこの事務主任。お店の事務の仕事やったんですよ(笑)

―直接商品には触れなかったわけですね。

有光:触れなかったんです。ウーンと思って、「どうしよう」と。いつも「どうしたらええんだ」と考えるんですけどね。
 これは今やったら労基法違反で摘発されるかもしれないけれど(笑)お店の事務の仕事っていうのは帳簿をつけたり、農産水産って言って商品分野の売り上げとか帳票をつけたり。そういう仕事ですから、はっきり言って家へ持って帰ってもできるんですよ。
 だから家でできるものは全部家に持って帰ってやっていました。

―え〜、お子さんもいらっしゃるのに。

有光:だからあの頃はほんまに、4−5時間も寝てなかったんちがうかなあ(笑)
 それで勤務時間は、事務担当にもう1人女性がいましたからその子に電話番などをしてもらって、私は店内に出て、そして男性の商品担当の主任とか係長さんに商品のことを一生懸命教えてもらって陳列したり、並べ方を教えてもらったり、そんなことばっかり店舗でしてたんですよ。

―すごいですねえ。

有光:うん、ほんとに。


■通信教育で日本生協連会長賞を受賞

―そのガッツはどこから来るんですか。

有光:だけど一方では結婚して子供を産んで、そして現場に出してくれって出て、ちょうどその時期に今度は係長の試験が受けれる時期がきたんです。けれどあの頃は子どもがまだ小さくて、そして係長とかでポストが上がっていくと、その責任感と子どもの教育と板ばさみで。

―気になりますよね、どうしてもお子さんのことは。

有光:うん、気になって。係長試験をどうしようかって考えた挙句、諦めたんです。というか中断したんです。試験を受けなかった。
 それはあの頃三つ子の魂百までとかいろんな情報も入って、ものすごい悩みがあって、受けるのを断念してたんです。

―そのときお子さんはおいくつぐらいやったですか。

有光:幼稚園ぐらい。保育所に預けるぐらいのときです。
 だけども、大事だとそこで思ったのは、試験は受けないけれどもやっぱり自分の存在感みたいなものを組織の中ではきちっと認めてもらっとらんとダメになってしまうという思いが強くありました。
 それでどうしようと思った結果、全国に生活協同組合って沢山あるんですけれども、そこを束ねている日本生協連というのがあって、そこが全国の生協向けに通信教育してるんです。マネジメントとか財務的なことやリーダーシップ、マーケティングのこと。色んなことを通信教育で勉強する。それを初級中級上級と、それを受けて、これで絶対いい成績をとって、頑張ってるという存在感をきちっと残しとかないといけない。それがひとつの私のチャレンジだったんですよね。

―ははあ、ここにもチャレンジのターゲットがあった。

有光:そうそう。「もう試験も受けないわ」という忘れられた存在になったら、もうダメになるという思いがあって、何とかそれをしとかないといけないと。
 それで頑張って日本生協連会長賞を受賞できました。
 それをしつつ、今お話ししたように仕事を家に持って帰って商品の仕事をやって。
 そうするうちに子供がちょうど小学校へ入る時期がきて、「これで大丈夫かな」と思って初めて係長の試験を受けることになりました。だから何年か試験を受けないブランクがあったんですよ。

―はあ…。何年ぐらい諦めはったんですか。

有光:4年か5年ぐらい諦めてるんじゃないですかね。


■ついに女性初のバイヤーへ

―私ね、有光さんすごい方やなって思うのは、僭越な表現をしますけれども、そういう電卓を速く叩くとか、通信教育で頑張っていい成績をとるとか、ターゲットがあったときにものすごくそこに集中して頑張りはりますよね。でもこういうタイプの方には、得てして人間的な幅が広くない方っていらっしゃるんですよ。今までお会いした方にもいらっしゃいましたけど、でも有光さんはそうじゃなくてすごく人としても懐の深い方で、一方でそういうターゲットが目の前にあった時にはものすごく集中力を発揮される。その両面をお持ちになっているのがすごいなー、と。

有光:いやいや人としてのあれとかはないですけれど、こうと決めたら、何とかそれを成功させたいという思いは強く持ってるタイプなのかなと思いますね。
 そしてその時代、今でもそれが大きな問題なんですけれども、やっぱり時間。仕事する時間というので、急な残業やら一杯あって、時間に対する価値というのが企業ではものすごく強い。だから、女性だから結婚してるから子どもがいるからといって、なかなかそういうことにタイムリーに対応できなければ、これは「やっぱり女性はな」とか「やっぱり子供ができたらな」と評価される時代やったんですね。
 この時間軸の問題を何とかうまくやってキャリアアップしていかないといけない。そういう思いから、「どうしよう」と考えたのが、これはすごく両親を犠牲にしてしまいましてね。
 私の両親は田舎でちょっとした商売をして人を何名か雇ってたんですよ。

―そうですか、経営者さんでいらしたんですね。

有光:経営者なんてそんな、内職の延長みたいな。でも4人か5人ぐらい(従業員が)来ておられましたわ。それを1年ぐらいかかったかな、説得して辞めさせて、「私のところへ同居してくれ」って(笑)田舎から呼び寄せて。そして時間ということにあまり男性とギャップが生じないように。それはね、手を打ったんですよ。

―すごいです。田舎どちらやったんですか。

有光:篠山からさらに奥に丹波の柏原(かいばら)というところがあるでしょう、そこです。JRで1時間半ほどのところの。
 1年ぐらいかかりましたかねえ、辞めてもらうのにずっと説得して。

―あのあたりの方は、やっぱり柏原も城下町ですけど、私城下町の方ってすきなんです、ちょっと武士道精神のようなものが残っているところがありますでしょう。

有光:あるでしょう(笑)うん、うん。
 で、そんなことをしながら、係長試験にチャレンジをしたんですよ。そしたらこれ幸い、1回で合格しましてね。でもそのとき憶えているのは合格したことのうれしさ以上に、合格と同時に出た辞令が、この本部に戻って商品部っていう、商品の仕入れをしたり企画をしたりする、ここのバイヤーの辞令が出たんですよ。

―バイヤーですか、かっこいい。

有光:うん、だから係長に受かって係長になった喜びより、「ああこれで商品に携わる仕事に就ける」という、「認めてくれたんだ」と、これがすごく嬉しかったんです。

―ああ、念願かないましたねえ。

有光:そうなんです。
 本当に、仕事を持って帰って無茶なことをして、でもやっぱりみんな見てるんでしょうねえ。そういう思いが伝わったのか、そんな辞令が出ました。
 だから大きくは、男女共同参画の自分が勤めている間にはそれを大きなテーマで自分がやってきたけれど、私自身は女性も試験が受けれるようにそういう制度の改革と、もう1つは女性が色んな職種に就けれるように、大きくはこの2つの課題へ。
 まあ、簡単にペラペラっとしゃべってるけど(笑)そんなことが自分の本当にいい体験だった、と思いますね。

(「(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか」につづく)


有光毬子さんインタビュー前編
「志を曲げなかったわが人生」

(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか

(4)男性と女性でつくる社会へ向けて


後編・「地域に『承認』を持ち込んでみた、『承認』について語った」






100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

有光さん3

 去る1月27日、コープこうべ顧問・兵庫県経営者協会副会長の有光毬子さん(69)にインタビューさせていただきました。

 これまでにもご紹介しましたように、有光さんは灘神戸生協(現在のコープこうべ)に一社員として入社され、女性のための昇任制度もないゼロからのスタートでキャリアアップし、職域を広げ、最後には役員(常任理事)まで登り詰めた方。

 そして後進の女性たちにはどこまでも優しく柔らかく成長を喜んでくれる素敵な大先輩です。

 これに先立つ昨年9,10月に有光さんが代表幹事を務められる兵庫経協の「VAL21」(女性産業人懇話会)で、正田が2回にわたって「承認」のお話をさせていただいた際、有光さんは自ら「承認」を身近で実践してみて大きな手ごたえを感じたことを語り、そして「この『承認』のお話は、私には何だかほんとうだ、と感じられます」と言ってくださったのでした。

 このたびのインタビューでは、前半でお若い頃からの壮絶ともいえる奮闘ぶりと、それを支えたものは何だったか、を語っていただきました。

 国際比較でみると男女共同参画がまだまだ立ち遅れているわが国で、かつ残念ながら既に手あかがつき「やらされ感」で語られることも多くなったこんにち、是非今頑張っている女性の方、それにそうした部下を持たれている上司の方にもご覧いただきたいお話です。同じ地域のほんの少し前の時代を切り開いた先輩の姿をみることで、ともに「勇気」を分かち合えたらいいな、と思います。

 今回は前半で有光さんの会社員時代の奮闘物語、そして後半で昨年9月以来の「承認」実践物語とうかがい、前後編として掲載させていただきます。

 まずはその「前編」を4回に分けて、ご紹介いたします―。



有光毬子さんインタビュー・前編
「志を曲げなかったわが人生」


(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

■大きかった「上司の言葉」
■2つの壁「昇任試験」と「職域」
■人を動かすためには何が必要か


(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

■商品に触れるために持ち帰り仕事
■通信教育で日本生協連会長賞を受賞
■ついに女性初のバイヤーへ

(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか

■心の支えになった「演歌」があった
■何度も伝えること、聴くこと
 ―大切な「コミュニケーション」―
■「不公平だと思いませんでしたか?」(正田)
 「今は最高の体験をさせてもらったと思っています」(有光)


(4)男性と女性でつくる社会へ向けて

■男性上司や同僚との関係は
■心無い噂と夫の理解
■「これまではこれでやってきたから」
 ―意思決定機構に入って感じた男女の価値観の違い―
■後輩の頑張りが嬉しい


(ききて・正田)


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(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

■大きかった「上司の言葉」



―今日は本当に楽しみにしてまいりました。
有光さんご自身のこれまでのキャリアのお話と、宣伝用のインタビューも兼ねておりますので私どもの研修についてのご印象、ご感想もいただければと。

有光:わかりました。
私自身は学校を出まして、今コープこうべの中では役員までなりましたけれど、就職したころは何年か勤めて結婚して家庭に入って、というくらいの漠然とした気持ちでした。私だけじゃなくてその頃の女性はそんな気持ちで社会に出てたんです。

―就職されたのが何年でいらっしゃいますか。

有光:昭和38年。

―私が生まれた年だわ(笑)

有光:そんな時代ですから、まだまだ今のような女性の活躍が社会で求められるようなことはなかったですし、女性自身も自分の将来の人生設計を持った形で就職するということはなかったんです。友達にもいなかったし、私自身もなかった。
 だけど私の場合、数年してすごく仕事に誇りを持てたり長く仕事を続けていきたいと思ったり、と気持ちの変化が起きたんです。

―何があったんでしょう。

有光:入社の頃はアメリカのセルフサービス形式を導入して、日本にもたくさんセルフサービスのお店ができた時代です。それで生協もそれまでは男性職員が多かったんですけれども、そういうこともあって女性をたくさん採用するようになった時期だった。ただ女性の仕事で圧倒的に多いのはお店でチェッカー(レジ係り)をする。それと一部、事務の補助。大体この2つの職種でした。
 で私は、採用されてチェッカーに配属されるのではなく、本部の人事労政部というところに配属されたんです。そこでお給料の計算をしたり、福利厚生の仕事をしたりしていたんです。そして何年か勤めたら結婚して辞めて、という思いで入ったんですけどね、当初とは思いが変わってきた。
 なんで思いが変わったんだろう、と考えたんです。そうしたら、それは間違いなく当時の上司だった方の影響でした。
 企業だったらどこも企業理念ってありますよね。コープこうべだったら「1人は万人のために、万人は1人のために」という理念があります。上司はそういう理念を語ってくれたり、それに基づいてコープこうべの仕事の意義だとかを語ってくれたり。それから、私自身が毎日同じ仕事をやっているんですけど、そのことがどんなに価値があることなんだ、ということを、常に語ってくれる上位者がいたんです。これで大きく変わったんだな、とあとで気づいたんです。

―それは得難い上司の方でしたね。そういう言葉にふさわしいお仕事ぶりをやっぱり有光さんがされていたのではないですか。

有光:そうでもないと思いますよ。でも本当にその言葉が色々と変えていってくれたんだ、と思ったので。
 だから3−4年経ったころに、「やっぱり私もずっと働き続けたい」と。そのためには、自分自身のきちっとした将来へのビジョンみたいなものを自分で持っていかんとあかんのや、というように思って、そこで自分自身はどうなりたいんだ、というように考えたのが、まず1つは、そのころの先輩の女性もいらっしゃったんですが、みんな結婚はされずに、長く勤めておられた。私は結婚もし子どもも作りたいなと。そして企業の中でも勤め続けていきたいし。そして何よりも、上位者が示してくれたようなあんなリーダーシップのとれる産業人になりたいと。すごくそういう思いが強くなったんです。

―ちなみにその上位者の方は人事労政部の中のどんなお立場の方ですか。

有光:その当時は課長職。私が入った当時は係長やったのかもしれない。そういう方が、1人というとあれですけれどひときわ強くそういうものをお持ちの方がいらっしゃって。その人に教えられた、私はそれだな、と。
 VAL21(兵庫県経営者協会女性産業人懇話会)では管理職になっている方が多いんですけれども、やっぱり管理職で一番大事な役割というのは、私「これ」やと思う、というのは今でもその経験から思うんですね。

■2つの壁「昇任試験」と「職域」

有光:そう簡単に思い描いたんですけどね、そこからが大変(笑)
 やっぱり時代もあるし、神戸の歴史の長い企業の組織風土だとか制度だとか、色々ありますから。

―その当時で何人規模でいらっしゃいました?

有光:約2450人ぐらいだったんだろうか。

―大企業ですねえ。

有光:まあまあ、ね。ただ、それまで長い歴史の中で中心だったのは、商品の注文をきいてそしてお届けするという宅配事業です。だから男性が圧倒的に多かった。力仕事ですからね。
 ただし、店舗を積極的に展開していき始めたので、チェッカーで女性がたくさん採用し始められた、とそういう時代でしたけれどね。

―じゃあ、急速に女性比率が増えた時期だったんですね。

有光:そうそう。
 そして、「自分はこういう風にしたい」というライフプランみたいなものを描いたんだけど、それを実際やっていく上ではすごい壁がありました。
 私が就職してすぐの時は女性結婚退職制度というのがあって、女性は結婚したら退職しないといけない。そういう制度まであったんです。

―制度まであったんですか(笑)すごいですね、それは。

有光:そう、だから、結婚して働いている女性というのは居なかったわけですよ。長く居られた先輩たちは、結婚せずに働くことを選択された先輩たちだった。
 そういう制度自体は、時代背景を受けてすぐ無くなったんですけれども、やっぱり企業の中で自分のキャリアアップを図っていくためにはいろんな壁がありましたが、中でも私自身が挑戦していくうえで大きな2つの壁があったんです。
 その1つは、女性は主任試験とか係長になるための試験を受けれれなかったんです。男性たちは受験制度があった。女性にはなかった。

―それは規則で禁じているとかではなくて、不文律として?

有光:就業規則に書いてあるとかそこまでのものではなかったです。でも女性は受験できなかった。
 それともう少したって思い始めたのが、女性の職種と男性の職種がきれいに分かれていたんです。女性は大体チェッカーか、事務でも補助的なお仕事。
 でも自分自身は、色んなことにチャレンジしていきたい、職種を超えて、幅を広げてやっていきたい。その思いを強く持ったんですが、これがどうしても壁になる。
 この2つが、私自身のチャレンジ体験になり私自身の職業観を大きく変えていった、という歴史があるんです。

■人を動かすためには何が必要か

有光: 初め、主任の試験を受けたいというのを、同期で入った女性たちもざわざわ話をしながら、何回でも人事やらいろんなところに申し入れをしました。「なんで女性が受けられへんの」みんなでぶつぶつ不満を言って。

―それは同期の方何人かで集まって?

有光:そうそう。本部に事務の補助系で配属されて、私は人事系でしたけれど同期は経理系の人とか庶務系の人とか配属されていましたから、その女性たちが「おかしいねえなんでやろねえ」言うて。
 本当に何度でも「なんでですか」「私たち受けたい」と。そうしているうちに4−5年たって同期で入った男性が受験の時期がきかけるわけです。それでも受けれない。何度も(申し入れに)行ったけれどそれでもだめでしたね。
 聞く耳がないというんじゃなくて、その男性―まあそういうポストの方は大体男性ですから―に申し入れをしても、その男性たちはそのことの必要性を本気で感じないから、「変えていかんといけない」という気になれないんだろうな、と。「なんでや、今まででうまいこと行ってるし」というぐらいの気持ちだったのか。本当に、だめでした。
 でそうしているうちに、「これだけ言っても無理だったらしゃあない」と諦めていく女性が大半だったですね。

―そうでしょうね…残念ですけどやっぱり結婚して抜けていかれて。

有光:そうそう、結婚されて人数も減っていきますしね。
 そのうち、いくら口で「この制度おかしい」「受けさせてくれ」と言っていても、これは人をその気にさすことというのは無理なのかなと、そこで考えて。次どうしよう、と。
 それはもう実際の行動と、「証し」みたいな形で、主任として女性が十分やれるんだということを実証するしかない、と思ったんです。言葉では人を動かせない。やっぱり人を動かすのは相手の心とか相手の目に伝える、このことしかない。
 それで、人事で厚生の仕事もしてましたから、社会保険労務士の資格にチャレンジしたり、それから当時はコンピュータでシャシャッと計算が出てくる時代ではありませんでしたから、お給料の計算なんかも電卓でダダダーっと計算して、そのスピードと正確さがもう圧倒的に、だれが見ても「すごい」って思えるようなスキルを身に着けて。
 要は、感じてもらう。それしかない。
 そういうチャレンジをして、そして改めて申し入れしたんですね。そしたら不思議なものですね、「せや、うん」って言って、それからですよ。試験を受けられるようになったのは。

―そうですか…!

有光:だから、女性が試験を受けて主任や係長になっていった最初のケースだったと思うんですけどね。

―壮絶っていいますか。

有光:だから今も、人をその気にさせたり、人に感動を与える、まあリーダーシップの基本もそうなんですけれども、やっぱり言葉よりもリーダーの態度とか姿勢とか、そういうことが人を動かすんだ、と。私あれでそう思いましたね。口だけでなんぼ言ってても、人をその気にさせたり、そう簡単にできるものではなくて。部下たちもリーダーの態度や行動をみて。口で「ああせえ、こうせえ」と言ってるのではなくて行動をみて動くものなんだと、私は体験から学んだと思うんです。

―よくそこで動かしましたねえ。山が動きましたねえ、大きな山が。

有光:やっぱり改革する、ものごとを変えていくっていうのは、なんかおかしいなあと感じたりする力は必要ですよね、ものごとを感じていく。でも感じても、大事なのはそれをどうしたら変えられるか、変え方を考える力が要るし、そしてもっとも大事なのは、実践する力。この3つの力がセットにならない限り、改革なんてできない。
「あれおかしい」とか、「あれは変えんとあかん」とか、色んなことを思うまではするんだけど、じゃどういう風にしていこうと(考える)。そしてどういう風にしていこうと思ったことを実際に実践する。この3セットの力が改革を可能にしていく、と思っています。
 それ以降の色んなこともそれを心掛けてきたけれど、なかなかね。挫折することは多かったけれども(笑)。

(「(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ」につづく)


有光毬子さんインタビュー前編
「志を曲げなかったわが人生」

(1)上司の言葉でライフプランを持てた私

(2)商品に触りたい!職域拡大へのチャレンジ

(3)ロールモデル不在でなぜ頑張れたか

(4)男性と女性でつくる社会へ向けて



後編・「地域に『承認』を持ち込んでみた、『承認』について語った」




100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

 1月31日、篠山市商工会様で管理職研修の締めくくりとなる「全職員ワールドカフェ」を実施しました。

 詳しくいいますと、ワールドカフェを2回行うことになり今回はその1回目です。

 暮れに実施したアンケートで思いのほか多様な意見があることがわかり、では最初から未来へ向けた綺麗ごとの話をするのではなく最初に現状把握のための回をとる、いわば「U理論」的な2回のワールドカフェをする、と急遽決まったのです。

 U理論でいうと1回目は「ダウンローディング」(現状把握・組織の膿出し)の段階にあたります。

 
 てなことを正田も冒頭にご説明をしたので、ちょっと緊張の面持ちで席に着かれた職員の皆様でしたが・・・、

 
 
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 ふたをあけると、和気あいあいと「問題点→解決策・私にできること」のお話をしてはりました。

 さすが「承認」を学ばれた管理職の皆様、いいファシリテーションをされていました\(^o^)/

 素敵な場のセッティングをしてくださいました商工会総務課・篠山振興部の皆様にも感謝です

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 いずれも力作ぞろいの思考プロセスでございます


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 ハイカラな赤いカーディガンの坪之内さん

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 クールで熱い北島さん

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 パッションの使い方がうまくなった?波部さん

 ※前中さんごめんなさい!トップバッターでプレゼンしているところの写真を撮りそびれてしまいました


 ちょうど同商工会様では事務局の統合や、理念の策定の最中というタイミングでもあったので、「問題点」の視点から入る「対話」をして、わだかまりを氷解できたようのは大変よろしかったのではないかと思います。

 次回は10日、これは「未来」へ向けての建設的な「対話」の回になる予定です。




 
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 そしてこの晩、正田は美味しい「ぼたん鍋」をいただき「10倍返し」の満願成就をしたのでした

 猪肉の脂身は美味なんですネ 感動でございました・・・




 ・・・さて、ここでまたネガティブ発言をすると、正田は決してワールドカフェの専門家ではなく、ただワールドカフェを成功させるためには押さえるべきルールがどうしてもあるようなのでそれを踏まえておこない、いつもの伝で面白おかしく盛り上げるわけでもなく淡々と説明し、進行していたのですが、

 ワールドカフェって、その場で目にみえる「出来物」ができちゃうんです。なんだかんだ言って。そう、フセンをはった模造紙ですね。

 そういうのは、例えば「組織風土を良くしたい。しかしすぐ目に見える成果がほしい」と思っていらっしゃるお客様がいるとすると、営業上の強みになるだろうな、と思います。承認コーチングなんかと比べて。

 しかし。

 これは組織の専門家としての勘なのですが、ワールドカフェをやりました、模造紙という成果物ができました、でもそれを「やりっぱなし、言いっぱなし」にしているところは、ようさんあるだろうな、と思います。
 そうしないためには、すなわちそこで話し合ったことをちゃんと活かし、継続するためにはワールドカフェをやる以前の段階の組織能力が問われます。

 手っとりばやいからといってワールドカフェをし、それ以外のことは無策で、やりましたね、でも何も残りませんでしたね、じゃあまたカンフル的に元気になるためにワールドカフェやりまひょか、ということを繰り返していると、こんどは「対話づかれ」という現象になると思います。実際に対話の手法を導入した多くの企業でそういう現象ってあるみたいです。

 というわけで、せっかく「承認中心コーチング」を導入されそこである程度組織の状態が温まったあとワールドカフェを導入される、という賢い選択をされた篠山市商工会様には、是非話し合いの成果を活かすために、再度承認中心コーチングのパワーを使っていただきたい、と思うのであります。


 まあご馳走になったくせになんて可愛くないぼやきを言う女でございましょう。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

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