東大のちょっと有名な先生が「研修内製化」に関する分厚い本を出版され、ここ数年の「内製化」のトレンドにまた火がつきそうです。
わたしの感想は―、この「内製化」ブーム、深刻な教育の質の低下を招くことに皆さんが気付くのはあと何年かかるのでしょう。研修ベンダーのほうも毒にも薬にもならないいい加減な研修を垂れ流してきたのが悪いのですが。
たとえば、一番わかりやすいところでいうと、「内製化」のメリットとして、「社内人材の活用」ということが挙がります。
これは、もっというと「余剰人材の活用」ということです。さらにもっというと「仕事できない」とレッテル貼られた人材が、プレゼン関係のことだけは嬉々としてやるところを見込まれて、社内講師の仕事をする、ということです。
まあそれはおおむねナルシシストです。
でも仕事できないけどプレゼンだけは上手い人に仕事のやり方教えてもらって、嬉しいですか?
たぶんその人は仕事の現場のロジックはわかってないです。マネージャーに登用されるような優秀な人の頭の仕組みまではわからないはずです。
たぶん大学の先生とか大手研修機関でならったことを真に受けて切り貼りして、現実感のないことをしゃべるはずです。
わたしは以前に一度だけ「社内講師」の人のする研修を見させてもらったことがあるんですが、見させてもらって言うのはなんですが、(だから時間をあけてから言う) あれは全然合格点をあげれんな、と思いました。
あくまでそのときは、ですけど、例えば当協会では「絶対」であるような、「出典の明示」がなく、出所不明の言葉をしゃべっていたり研修資料に書いたり、ブルーカラーである受講生に色々とヒューマンスキル上の指示をするんですが、「なぜこれをやらなければならないのか」が不明。間のロジックが抜けていて「なんとなく、フィーリングで」指示を出している。受講生は唯々諾々と従わざるを得ない。
こういうことを書いていると自然と「当協会のこだわり」とは何なのか、ということがあぶりだされてもくるんですけどね…、
そして、「彼らは現場の人ですから、むずかしいことはわからないんですよ」と高学歴のホワイトカラーの社内講師のかたはおっしゃるわけですが、
どっこいわたしの理解では、ブルーカラーといえども沢山の機械操作の講習には参加します。そこでは「なぜ、これをやらなければならないのか」「なぜ、これをやってはいけないのか」という理屈も含めて、叩き込まれるように教えられ、納得して従ってその機械操作を習得するわけです。自動車の教習を考えればわかりますね。
だから、「間のロジック」をきちんと言い含めながら教えれば、ブルーカラーホワイトカラーに関わりなく、非常に高いレベルで納得して学習してくれます。
(わたしはまあ、「リスペクト」が基本姿勢ですから強引な命令口調ではやりませんが、「科学的にこれが普遍真理だ」というところは、「きっぱり」した口調で教えます。その方が受講生さんにとって「親切」ですから)
そういう、相手の「学ぶ力」を信じることができていない。
でもたぶん社内講師のかたって「お山の大将」ですから、こういうちょっと厳しいフィードバックを浴びたり、師匠について徒弟制でやりかた、考えかたを教わりながら「教える」やりかたを習ったり、ということはしてないんです。ナルシシストさんなんですから。そもそも学ぶ力が低い人たちで、かろうじて東大の先生の言うことは正しいことだと思ってきく人たちですから。
そのときの社内講師のかたも、プロのわたしに「もし気がついたことがあれば遠慮なく言ってください」なんていう謙虚なことは一切言われませんでしたので、わたしも「こういう難点がある」なんて、親切に言って差し上げたりはしなかったんです。
ここに書いたのもわたしが教えるうえでのこだわりのごく一部であって、自分でも意識していない暗黙知はほかにもようさんあります。それ全部人様に伝えるにはすごい時間がかかり、畢竟、人に教える仕事をする人というのは促成栽培できるものではないだろう、と思います。
それとあれですね、もし「承認」を教えるんであれば、1つ前の記事に書いたような組織の「シニシズム」とまでも闘う覚悟があるかどうか。それがなければ、いくら形だけ「承認」を教えても入らないでしょう。こなすだけの「言い訳研修」になってしまうだけでしょう。通常、社内講師のかたというのはその組織の文化コードに従って振る舞い、悪い文化を覆すほどの力は持てないはずです。
「教育は間違いに気づくのに10年かかる」
2009年夏、IFU(国際大学連合)理事長で英国・アイルランドの大学教授を務める北中寿氏が言った言葉です。
「内製化ブーム」は数年前に火がつき、今年あたりがピークかそのちょっと手前ぐらいだろうと思います。研修費削減の流れに乗ったものですが、そもそも研修費削減もグローバルスタンダードからまったく離れた我が国独自の現象で、先進諸国と比べると悲惨なぐらい社員一人当たりの教育費が低いのです。その片棒担ぎを、「内製化ブーム」とそれを煽る東大の先生がやっている、ということです。
(「教育投資」の問題は過去にこんな記事をかきました
「教育投資あれこれ―GEの人材育成費は日本の10倍。竹槍日本、再来。 」
http://c-c-a.blog.jp/archives/51799358.html )
そして自分個人のポイント稼ぎをしたい総務系の人が「オレも社内講師に」と欲をかき、部長役員クラスも研修の中身まで知りませんから「いいことだ。がんばって」などと言います。教える質や学習効果が低いなんてことは社内のだれも知りません。
10年か20年後、今の時代をふりかえって「バカバカしいものが流行ってたなあ」と言えるようになりたいものです。
・・・まあ、遊休人材を沢山抱える大企業が「社内講師制」にしがみつくなら、むしろ中小企業のほうにチャンスが回ってくるかもしれない。という見方もあります。
なお最初のほうにも書きましたが研修ベンダーのほうにも淘汰されたほうがいいものがあることは否定しないです。
このブログには時折「論争スタイル」の記事が載るんですが、1-2年たってから見直すと「やっぱ言っておいて良かった。間違ってなかった」と思います。「報酬をこえて」だったかな、もうあの本のことだれも言わなくなりましたしね。
****
「承認」を教える仕事というのは、人から見下されやすい仕事です。
「ああ、きれいごとを言うお仕事をしている人ね」
初めての人とお名刺交換して、その人の頭をよぎる言葉は大体見当がつきます。
受講生様方が高い成果を上げて報告してくださらなかったら、この12年間のうちにとっくに放り出していたでしょう。
40歳前から今までの12年は、わたしにとって見下され嘲られ続けの12年でした。ひどい妨害も受けました。われながら精神状態がよく持っていたと思います。
そして今も、わたしを見下し嘲る人と「この人が窓口だから」と、お話をしなければなりません。
もうたすけて、勘弁して、と正直言って思います。
そしてまた思います。
当協会がいまだマイナーなこんにち、成果を報告してくださった受講生様方は、わたしとともに闘ってくださっているのだ、この長い「冬の時代」を一緒に耐えてくださっているのだ、同じマインドを持っているのだ、と。
100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp
わたしの感想は―、この「内製化」ブーム、深刻な教育の質の低下を招くことに皆さんが気付くのはあと何年かかるのでしょう。研修ベンダーのほうも毒にも薬にもならないいい加減な研修を垂れ流してきたのが悪いのですが。
たとえば、一番わかりやすいところでいうと、「内製化」のメリットとして、「社内人材の活用」ということが挙がります。
これは、もっというと「余剰人材の活用」ということです。さらにもっというと「仕事できない」とレッテル貼られた人材が、プレゼン関係のことだけは嬉々としてやるところを見込まれて、社内講師の仕事をする、ということです。
まあそれはおおむねナルシシストです。
でも仕事できないけどプレゼンだけは上手い人に仕事のやり方教えてもらって、嬉しいですか?
たぶんその人は仕事の現場のロジックはわかってないです。マネージャーに登用されるような優秀な人の頭の仕組みまではわからないはずです。
たぶん大学の先生とか大手研修機関でならったことを真に受けて切り貼りして、現実感のないことをしゃべるはずです。
わたしは以前に一度だけ「社内講師」の人のする研修を見させてもらったことがあるんですが、見させてもらって言うのはなんですが、(だから時間をあけてから言う) あれは全然合格点をあげれんな、と思いました。
あくまでそのときは、ですけど、例えば当協会では「絶対」であるような、「出典の明示」がなく、出所不明の言葉をしゃべっていたり研修資料に書いたり、ブルーカラーである受講生に色々とヒューマンスキル上の指示をするんですが、「なぜこれをやらなければならないのか」が不明。間のロジックが抜けていて「なんとなく、フィーリングで」指示を出している。受講生は唯々諾々と従わざるを得ない。
こういうことを書いていると自然と「当協会のこだわり」とは何なのか、ということがあぶりだされてもくるんですけどね…、
そして、「彼らは現場の人ですから、むずかしいことはわからないんですよ」と高学歴のホワイトカラーの社内講師のかたはおっしゃるわけですが、
どっこいわたしの理解では、ブルーカラーといえども沢山の機械操作の講習には参加します。そこでは「なぜ、これをやらなければならないのか」「なぜ、これをやってはいけないのか」という理屈も含めて、叩き込まれるように教えられ、納得して従ってその機械操作を習得するわけです。自動車の教習を考えればわかりますね。
だから、「間のロジック」をきちんと言い含めながら教えれば、ブルーカラーホワイトカラーに関わりなく、非常に高いレベルで納得して学習してくれます。
(わたしはまあ、「リスペクト」が基本姿勢ですから強引な命令口調ではやりませんが、「科学的にこれが普遍真理だ」というところは、「きっぱり」した口調で教えます。その方が受講生さんにとって「親切」ですから)
そういう、相手の「学ぶ力」を信じることができていない。
でもたぶん社内講師のかたって「お山の大将」ですから、こういうちょっと厳しいフィードバックを浴びたり、師匠について徒弟制でやりかた、考えかたを教わりながら「教える」やりかたを習ったり、ということはしてないんです。ナルシシストさんなんですから。そもそも学ぶ力が低い人たちで、かろうじて東大の先生の言うことは正しいことだと思ってきく人たちですから。
そのときの社内講師のかたも、プロのわたしに「もし気がついたことがあれば遠慮なく言ってください」なんていう謙虚なことは一切言われませんでしたので、わたしも「こういう難点がある」なんて、親切に言って差し上げたりはしなかったんです。
ここに書いたのもわたしが教えるうえでのこだわりのごく一部であって、自分でも意識していない暗黙知はほかにもようさんあります。それ全部人様に伝えるにはすごい時間がかかり、畢竟、人に教える仕事をする人というのは促成栽培できるものではないだろう、と思います。
それとあれですね、もし「承認」を教えるんであれば、1つ前の記事に書いたような組織の「シニシズム」とまでも闘う覚悟があるかどうか。それがなければ、いくら形だけ「承認」を教えても入らないでしょう。こなすだけの「言い訳研修」になってしまうだけでしょう。通常、社内講師のかたというのはその組織の文化コードに従って振る舞い、悪い文化を覆すほどの力は持てないはずです。
「教育は間違いに気づくのに10年かかる」
2009年夏、IFU(国際大学連合)理事長で英国・アイルランドの大学教授を務める北中寿氏が言った言葉です。
「内製化ブーム」は数年前に火がつき、今年あたりがピークかそのちょっと手前ぐらいだろうと思います。研修費削減の流れに乗ったものですが、そもそも研修費削減もグローバルスタンダードからまったく離れた我が国独自の現象で、先進諸国と比べると悲惨なぐらい社員一人当たりの教育費が低いのです。その片棒担ぎを、「内製化ブーム」とそれを煽る東大の先生がやっている、ということです。
(「教育投資」の問題は過去にこんな記事をかきました
「教育投資あれこれ―GEの人材育成費は日本の10倍。竹槍日本、再来。 」
http://c-c-a.blog.jp/archives/51799358.html )
そして自分個人のポイント稼ぎをしたい総務系の人が「オレも社内講師に」と欲をかき、部長役員クラスも研修の中身まで知りませんから「いいことだ。がんばって」などと言います。教える質や学習効果が低いなんてことは社内のだれも知りません。
10年か20年後、今の時代をふりかえって「バカバカしいものが流行ってたなあ」と言えるようになりたいものです。
・・・まあ、遊休人材を沢山抱える大企業が「社内講師制」にしがみつくなら、むしろ中小企業のほうにチャンスが回ってくるかもしれない。という見方もあります。
なお最初のほうにも書きましたが研修ベンダーのほうにも淘汰されたほうがいいものがあることは否定しないです。
このブログには時折「論争スタイル」の記事が載るんですが、1-2年たってから見直すと「やっぱ言っておいて良かった。間違ってなかった」と思います。「報酬をこえて」だったかな、もうあの本のことだれも言わなくなりましたしね。
****
「承認」を教える仕事というのは、人から見下されやすい仕事です。
「ああ、きれいごとを言うお仕事をしている人ね」
初めての人とお名刺交換して、その人の頭をよぎる言葉は大体見当がつきます。
受講生様方が高い成果を上げて報告してくださらなかったら、この12年間のうちにとっくに放り出していたでしょう。
40歳前から今までの12年は、わたしにとって見下され嘲られ続けの12年でした。ひどい妨害も受けました。われながら精神状態がよく持っていたと思います。
そして今も、わたしを見下し嘲る人と「この人が窓口だから」と、お話をしなければなりません。
もうたすけて、勘弁して、と正直言って思います。
そしてまた思います。
当協会がいまだマイナーなこんにち、成果を報告してくださった受講生様方は、わたしとともに闘ってくださっているのだ、この長い「冬の時代」を一緒に耐えてくださっているのだ、同じマインドを持っているのだ、と。
100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp