正田佐与の 愛するこの世界

神戸の1位マネジャー育成の研修講師・正田佐与が、「承認と職場」、「よのなかカフェ」などの日常を通じて日本人と仕事の幸福な関係を語ります。現役リーダーたちが「このブログを読んでいればマネジメントがわかる」と絶賛。 現在、心ならずも「アドラー心理学批判」と「『「学力」の経済学』批判」でアクセス急増中。コメントは承認制です

2014年11月

 
 29日(土)、NPO法人発達障害をもつ大人の会の会合「関西ほっとサロン」に伺わせていただきました!

 
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 午後2時から5時まで、お座敷の会議室で40〜50人が集まり、全員の自己紹介のあと雑談。3時間はあっという間に過ぎました。


 感想は…、


 事前に抱いていたイメージはそんなに間違っていなかった、といいますのは、
 自己紹介の中で「診断名」に多くの人が触れていたのですが、
 一部の「知的が入っています」という人以外は、ほとんどはぱっと見てそうとわからない人ばかり、話しぶりをきいていても「この人どこが障害?」と感じる人ばかり。
 むしろ、もっと重症でそれでも自覚がないまま普通に会社で社会人やってる人が多いよね、という感想をもってしまったのでした。
 「この人のもってる雰囲気は、知り合いのあの人(未診断)にそっくりだなあ」
という人もいました。


 でもしばらくお話をきいていると、
「ミスが多い、忘れ物が多い」
「時間内に仕事が終わらない。残業が月30時間ぐらい」
(そんなに多いとは言えない程度だが、今どきの残業に厳しい風潮のもとでは問題になり、診断を受けざるを得なくなるらしい)
「子供が先に診断を受け、その病院で『家庭環境の問題もある。親御さんがADHDなのではないか』と言われて自分も診断を受けた」
といったお話が出てきます。

 また中には、

「診断を受けADHDの薬をのんでいるが、こうした自助グループに入れば薬を減らせるとお医者さんに言われた」

という人もいて、自助グループに入るということはQOLを上げるために非常に有効なようです。


 またもうひとつ事前イメージが割と当たっていた、というのは、
 わたしがこれまで漂流してきたコーチングや各種心理療法の勉強会とも、会合の空気が大いに重なる部分があり、人口的にも重なっているのではないかと思え、むしろ発達障害の会のほうが自分の問題に誠実に向き合っている分「おとな」だと言えるかもしれない、ということでした。
 コーチングでいう「個性」「自己実現」という言葉がなんとなく胡散臭く感じられてきたのは、それらが「生きづらさ」を抱える人たちの逃げ口上にきこえる場合もあったからです。その種のセミナーで出会う人の中に「傍迷惑な人」の匂いを感じることもあったからです。この人と一緒に仕事しててこのロジック振り回されるとイヤだよな〜、という。
 実際、認知行動療法や一般的なカウンセリング、コーチングを漂流してきた、という人もいます。

 「生きづらさ」にも色々あり、中には「共感しすぎる超女性脳」とよべる特性で悩んでるんじゃないだろうか?という人もいます。それは余談。

 
 カウンセラーさんの卵でこの会に参加しながら発達障害者支援の勉強をしている、という人にも会い、そこで一致したのが、
「今どきの流行りの『アンガー・マネジメント』という分野は、むしろ『発達障害』という切り口でみた方がいいのではないか」
ということでした。
 発達障害の当事者の一部の人のもつ「易怒性」や、発達障害の働き手の人との間で発生しやすい「言った、言わない」の問題、「説明したけど理解してもらえない」「わかったやりますと言ったけどやらない」の類の問題は、自分や相手の特性を理解することで初めて解決する。入り口が間違っているといつまでも解決しない。


 ・・・で、そういう正田自身は?という問題に必ずなるのですけれど、

 以前にも書いたように自閉症スペクトラムの度合いをはかるAQ値は20(30以上だと「疑いあり」になる)でした。忘れ物が多い、片付けられない、という問題は昔からありましたが最近忙しいせいかひどくなってると思います。初めて行く場所に行くのに迷い、遅刻するという問題も出てきています(えと、この問題に関しては言い訳になりますがHPのアクセスマップのところに「地番」を載せていただけるようせつに希望します。「地番」があれば普通はスマホのマップアプリでたどり着けるのです;;)

 診断を受けられる一部の病院でも2−3か月待ちという状況なのだそうで、ほんとわかってるお医者さんがまだ切実に少ない状況なようです。だから診断受けに行くべきなのかどうか悩むなあ。
 
 

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 障害を受容したさわやかな皆さん



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
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また、新聞に褒める叱る研修の特集記事が出た。
「ほめまくれ」とか「手が痛くなるまで拍手する」とかいう類いのやつ。

残念なのは、そういう記事を目にした人はわたしに対してはっきり態度が「ぞんざい」になってしまうのだ。
「おたくのやっていることなんて何も目新しいことじゃないよ」
と言いたげに。

やれやれ。
一目みて、こういうのはわたしのやっていることと天と地ほど品質の開きがあるって気づかないかなあ。
「わが社」が「承認」にはっきり舵を切り出したのは2005年からだった。
それ以前から、色んなコーチング研修機関の失敗などに鑑み、マネジャーがその後どうなるか、エネルギーの質がどうなるかに神経をとがらしてきた。そういう「副作用つぶし」の効用もあっての「1
位マネジャー輩出」だった。
ー「副作用つぶし」の必要性をいくら説いてもわからない人も多いのだー

そのあと、有名なほめる研修が出てきて、メディアを席巻した。
あれって長期的にどうなんでしょ。

そうして悪貨良貨を駆逐する。
わるい種類のエネルギーに暴露した人は、そういうものを丁寧に抜いてきた「わが社方式」の良さがわからなくなる。
それと、「当社方式は本当に成果が出るんです」と言ったとき、「本当の成果」とか「本当の変化」を嫌がる人も多い。むしろ極端なものを取り入れて「はい、長続きしませんでしたね、ちゃんちゃん」と、予定調和で元のところに着地するのが安心だったりする。教育研修にタッチする立場の人たちに多いなあ、そういうの。リンゴダイエットとかパナナダイエットの類い。


今日の記事なんかをみると、大新聞もお笑い芸人が裸になったり熱湯に浸かったりするような「ネタ」を求めてるんだなあ、と思う。まあ、従軍慰安婦などでひとしきり話題になったとこですけど。ヒマなのか。


そういうことをしているうちに、わたしが一番危惧するのは、「承認」がないがゆえに組織の中のもっとも良心的な人たちが壊れていく、潰される、そのことにまったく目が向けられない(それはあなたが今丁寧に育てているわが子かもしれないのだ)、また、地方のマネジャー教育の遅れた地域に若い人の足が向かない、若い人を引きとめられない、そうした現象にまったく処方箋を出せないということなのだ。

****
ぼやきネタを書いてしまいましたが、今日は東京で『行動承認』をきっかけにフェイスブックでお友達になったマネジャーさんとお会いしました。

月50冊本を買うという読書家さんでしたが、『行動承認』のことはあちこちページを折って(古本で売れないじゃないか!)読んでくださっていて感激でした。


都営新宿線のドア横の広告(ブログトップのリンクから画像がみれます)と、八重洲プックセンターでの平積みの様子もみれて感激でした。今日はいい日だ。



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お世話になっている皆様


 おはようございます。
 企業内コーチ育成協会の正田です。

 お天気に恵まれた3連休とは一転、週明けの雨の今日です。
 しっかり切り替えていいスタートとなりますように…。

※このメールは、NPO法人企業内コーチ育成協会のスタッフ及び代表理事・正田が、過去にお名刺を交換させていただいた方・当協会のイベントやセミナーにご来場いただいた方にお送りしています。ご不要の方は、メール末尾にありますURLより解除ください。
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 本日の話題は:

■「正田承認研修」の秘密を解剖していただきました!
 担当者Nさんへのインタビューからみえたものは。

■「行動承認」の世界
 インパクト(1)―組織の人々の成長とは

■改めて「女性活躍推進」考えてみませんか?
 第41回よのなかカフェ「女性が輝く社会には何が必要?」(12.4)募集開始しました

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■「正田承認研修」の秘密を解剖していただきました!
 担当者Nさんへのインタビューからみえたものは。

 3連休の間、進行中の「承認」「傾聴」「質問」の3回研修を企画・アテンドしていただいている、関西の某経済団体に勤めるNさんに、「正田研修」のご感想を語っていただきました。
 日ごろ研修というものにシビアな批判精神をもちながら、当協会の教育に惚れ込み遠方からご依頼くださったNさんです。
 柔道有段者でもある、研修事務局にはちょっと珍しいキャラのNさんがみたものは…。
 一部をご紹介しましょう。

「あの研修は闘ってますね。ニコニコ穏やかですけれどめちゃくちゃ対決してる。あれは普通の人にはできない。疲れるというのはよくわかります」(Nさん)

「冒頭に『この研修内容を実践してくださったら必ず成果が出ることをお約束します』と言われたじゃないですか。あれで受講生のみなさんがビシッと背筋が伸びて聴く姿勢になったのがわかりました。最初にマウンティングする講師もいますが真摯に向き合う姿勢の先生は受講生にもわかりますね」(同)

「『型で教える』ということはすごく有難いです。僕も柔道で沢山の技を型で教わりました。現場で実践しようと思ったら、必ず迷いが出て、戻るところ(型)が欲しくなる。何度でも戻れるところがあるというのは有難い」(同)

「一方で、『型で教える』ということが堅苦しさとか不自由さだと感じないのかというと、そう感じるというのは、教え方の問題です。『オレの言う通りやれ!』とか、『こう決まってるんだ!』という押しつけがましさ、いわばナルシシズムが入っていると嫌な気持ちになる。正田先生はナルシシズムが一切入らないですね。リスペクトと温かい雰囲気、それを保っておられるからその通り学ぼうと思う」(同)

 自身経営者管理者ではありませんが、動体視力に長け、「実践する」ということの重みもわかるNさんならではの研修評でした。
 今年6月のNさんからのご依頼電話でのお出会い以来、Nさんの言語化の力に何度となく励まされてきました。
 「気づかせる」全盛の研修業界にあって、「いや、『教える』ことが大事なんだ」と独自路線を保ち、その結果「12年間1位マネジャー輩出」というどこにもない成果を創り、それでもこのやり方が正しいという保証はどこにもない。そんな手探りの中で出会えた研修評でした。
 「承認研修」が成果を出すのは、メカニズム自体が正しいのももちろんですが、12年にわたる歳月によってできた伝統工芸品のような細やかな教授法もそこに関わっているのでした。
(インタビューの中でNさんは「愚直」という、高倉健さんのような賛辞も使っていただきました。これも大変光栄なことでした)

 Nさんへのインタビュー全文は近日、ブログで公開させていただきます!どうぞお楽しみに。

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■『行動承認』の世界
 インパクト(1)―組織の人々の成長とは

 今号から、「行動承認」によってつくられる優れた組織には、全部でどんな現象が起こっているのか?というお話をシリーズでご紹介します。
 まず最初に「人々の成長」のお話を―。
 
 「承認」の世界では、部下がきわめて速いスピードで成長し、業績向上を創っていきます。
 このことを、研修では脳のfMRI画像を使って説明します。
 まだ、1人の人を追跡したMRIの資料はありませんが、遺伝的に非常に似ているという親子の脳の画像を使います。
 26歳の息子と56歳のお父さん。MRI画像に見える脳の白質(神経線維)の量や形が明らかに違います。お父さんのほうがはるかに発達している。お父さんは会社のプロジェクトリーダーを歴任した有能な人だということです。
 大学の受験勉強を経験してきた人でも、社会人として経験値を積んできた人とははっきり脳の形が違う。
 受験勉強は大して脳の発達に寄与していない、ということと、では脳の発達をつくるのは何か、それは「経験」がつくる、「行動」がつくる、ということなのです。
 かつ、「脳は貪欲なまでに成長を求める臓器だ」という、これも事故などで損傷した脳の回復しようとする力をみた脳科学者の言葉を紹介します。

 これを「上司からの承認」と結びつけて考えますと―。
 あくまで上司が信頼できる人格の人だ、という前提の下でなのですが、信頼できる人格の、かつもっとも身近にいて経験値が高く、自分の行動を逐一みてくれている上司が「承認」を与えると、それは部下にとって最もよい「行動の奨励」となり、スピーディーに成長していける。かつ、成長欲求を妨げられず成長することができ幸福感も高い、ということになるのです。
 前年に大人しかった営業マンが今年ホームランバッターになり業績トップに寄与してくれた。
「承認」の世界ではこうした現象にたびたび出会います。それは、こうした現象なのです。

 なお『行動承認―組織の能力を最大化する「認める力」』(パブラボ)は、前号以降Amazonで在庫切れが続き、残念ながら順位が下がってしまいました。申し訳ございません。
 神戸地域では、ジュンク堂三宮店さんで5F「ビジネス新刊・話題書」のコーナーにあります。また大阪難波のジュンク堂さんにもあるそうです。
お近くの書店さんで注文していただくことも可能です。

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■改めて「女性活躍推進」考えてみませんか?
 第41回よのなかカフェ「女性が輝く社会には何が必要?」(12.4)募集中です!

 「アベノミクス解散」で忙しい師走です。
 よのなかカフェ今回のテーマは「女性活躍推進」。
 この件について「語りたい!」「ほかの方のご意見を聴きたい!」という方、12月4日夜どうぞお集まりくださいませ。

 詳細とお申し込みはこちらのページから
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第41回よのなかカフェ「女性が輝く社会には何が必要?」
 http://c-c-a.jp/cafe/index.html

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「誌上コーチングセミナー」
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 せっかくなので引き続き「マウンティング」について考えます。

 なぜ女のリーダー研修講師・正田が担当者のマウンティングで不当なめに遭いやすいのか。

 たぶん、「女」と「リーダー研修」「承認」それに「わかりやすい教え方」4つの要素すべてがそれの原因になりやすいのだと思います。


 まず、「リーダー研修」から。

 自社の経営者・管理職層の頭を改造したい。
 それは、「研修担当者」の立場の人のおよそすべてがもつ、不遜な願いであろうと思います。
 彼らは日頃経営者管理者にアゴで使われている。不当だと思うことも「御意!」って言って従っている。


 その経営者管理者たちを自分の思うように「改造」できたら。恐らくだれでもいちどは妄想するだろうし、とりわけ総務の席にいると社長・役員からアゴで使われたり叱責されたりする頻度は高いだろうと思う。

 かつ、スタッフ部門の人はライン部門の人にコンプレックスを抱きやすい。
 たまに人事がエリートコースだ、という会社もありますが、一番多いのはとりわけ製造業などで、「仕事できない」「モノづくりさせられない」「お客様にも接触させられない」とレッテルを貼られて人事総務等、スタッフ部門にいるケース。

 そういう理由の人事だ、とわかっている場合、会社のことも恨んでいるしライン部門に対してもコンプレックスを抱く。

 その心理がどうして正田に対するマウンティングになるのかというと…、


 「承認研修」でにっくきあいつらを改造して懲らしめることができる、と彼らは勝手に思う。するとテンションが上がってしまいそういう研修を企画担当する自分が一気に偉くなった気分になる。

 講師の正田は懲らしめるなんてつもりは毛頭なく、リスペクトのスタンスで、
「この手法を習得して実践していただいたら、皆さんも部署全体も幸せになりますよ」
と、教育するんですけどね。でもそれは修練を積んだからそういうこころの状態を保てるので、企画担当する方々は修練を積んでないので舞い上がってしまうんです。


 舞い上がると、自分をコントロールできなくなり講師のわたしにさえも見下しが出る。
 それくらい、彼ら彼女らは世間知らず身の程知らずでレベル低いんです。


 それがおおもとの原因で、プラスアルファ、内容が「承認」なものですからにわか勉強でその人たちも「承認」を勉強した時に、「承認欲求」が強くこみあげてくる。
「オレはあたしは偉いんだ、わからないのか!」
という状態になる。

 正田は「承認欲求について勉強するのは承認を与える側になるためですよ」ということを研修で言うけれど、近著にも書いてあるけれど、彼ら彼女らはそこまでわからない。危険な、人に与えもしないうちに自分の承認欲求が高くなる、という状態になる。

 ―以前人材育成会社に勤める知人が言っていたのですけれどそこの会社は仕事柄太田肇氏の「承認論」本がゴロゴロあるのだそうで、そして親会社からつかえないと判断されて出向してきた元々承認欲求の高いおじさんたちが喜んでその本を読んで、そして自分の承認欲求を正当化して手に負えなくなっているのだそうです―


 そして、承認欲求ってある程度高まると攻撃性に変貌するものなんですけれど、その攻撃性は、自分の社内の人に向けて出すとパワハラになったり上司に対する不敬になったりするものなので、どこへ行くかというと弱い立場である外部講師の正田先生に出る。


 で何も悪いことしてない正田が被害に遭う。ということになります。
 ああかわいそ正田先生。


 さらに正田が「女」だというので、担当者が男なら「女のくせに生意気だ!」というロジックがおっかぶさってきます。承認欲求と攻撃性が高まった状態の人に理性はないですからね。えと、あたし御社の皆様が幸せになるために仕事しに来ている人なんですけど。

 また担当者が女なら「あたしなんか組織の中で安泰に生きてるのよ!」というのを誇示するタイプのマウンティングをします。前の記事にも書いたように服装などに如実に表れます。ああ疲れる。


 もうひとつ、これも正田先生特有の問題なんですが、

 なにしろ恐ろしくわかりやすく要点を絞り込んで教えてくれるので、かつ一目でわかる資料作りなども受講生さんの習得のためにしているので、
 「コンテンツ盗用の誘惑」がすごく出やすいんです。
 一応資料に著作権の表示はしていますが、それでも盗みたくなる魅力的なコンテンツだと思いますね。
 なまじ習得しやすいので、習得するとこんどは教える側にまわりたくなります。

 それダメですよ、という意味のことをこのところ何度も書いているのですけれどね。話し方とか、全人格的なものまで習得しないと、教える側には回れません。

 コンテンツ盗用の誘惑にかられると、こんどは正田先生を一刻も早く追っ払いたくなります。
 あなたそれ犯罪ですよ。



 マンガチックですけれど、わたしが「承認教育」である程度の評価を確立した現在でもこうした問題が繰り返し起こります。人類の知恵でこういうの抑制できるんでしょうか。「この教育」を通じてしかつくりえない会社の巨大な幸せの世界があるんですけどね。

 誰か彼ら彼女らを何とかしてください。


****


 ふと思い出しました。
 不肖3人の子育てをしましたが、子育ての中で思いもよらないことを学ぶことがあります。その中の1つ。

 確か長女の小学校の入学式に保護者として行ったとき。16年ぐらい前ですね。
 子供たちが体育館での入学式から晴れて1年生の教室に入り、そして先に解散となり、保護者だけ少し残って担任の先生からお話をききました。

 そこで、
「担任のことは保護者の方々もおうちでも『先生』と呼んでください」
と言われたのです。
 当たり前だと思うか、ああそうか、と思うか。
 保護者は大抵もう30は超えているおっさんおばさんなので、先生が新卒だったりすると自分の会社の後輩みたいにみえてしまいます。すると自然、「さんづけ」で思ったり声に出して言ったりします。子供の前でも。
 すると子供はまねして先生を「さんづけ」で呼びます。アメリカ式に。

 だから、保護者が率先して先生を「先生」と呼ぶことが大人の知恵なんですね。たとえ自分より年下でも。


 これ、会社に当てはめるとどういうことが言えるでしょう。




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「マウンティング」という現象について、まじめに考えました。

 このブログにも少し前出て来た話題ですが、ちょうど今発売中の「週刊文春」の林真理子氏のエッセーにこの現象のことが載っていて食い入るように読んでしまいました。

 林氏の場合は出身地の山梨の同窓の先輩からの講演依頼に、すごく偉そうな口調で「マウンティング」が入っているのでお断りする、というお話でした。


 でわたしが経験したことも一緒だ、と言い立てるのは大人げない気もしますが、ことリーダー研修をしていると、かつ女性講師でやっていると、担当者による「マウンティング」に頻繁に出会ってしまいます。


 こういうことを書くと進行中の研修にアテンドしてくださっているNさんがまたプレッシャー感じてしまわれそうだけれど、彼は柔道有段者とかでガタイのいい人ですがいちどもこの「マウンティング」めいたことを感じたことはありません。いつもすごく講師のわたしを嫌みなく立ててくださいます。
 
 しかし一方には、「マウンティング」を戒めなければならないご担当者さんは残念ながらいっぱいいるのです。


 少し前に「マウンティング」に言及したのは、講師に対する「さんづけ」でしたかね。


 
 去年などは、女性の担当者も「マウンティング」をする、と驚きの目でみたものでした。


 例えば。

1)長期シリーズ研修の直接の担当になった女性(30代独身。なぜかこういう分野の女性担当者は「30代独身」が多い)。直接研修の採用を決めたのは彼女の男性上司(40代半ば、既婚)。
 
 彼女の上司はわたしのことを「正田先生」と呼ぶのに、彼女は上司のいないところでは「正田さん」と呼んできました。社内のリーダー向け研修告知を見せてもらうと、研修タイトルのみ掲載し、講師名、研修機関名はない。
これには「講師名や研修機関名も入れて告知して、興味をもった方がHPにアクセスできるようにするものですよ」と抗議しました(これ、当たり前のことなんですヨ)。
 全体として彼女の講師に対する「不敬」の態度が気になり、こちらから研修前日に注意喚起。「受講生の前では『先生』と呼んでください。また研修冒頭の講師紹介はしっかりやってください」というと、「はいやります」と答えました。
 どうもこの彼女は田舎の人にありがちな、地元の商工会議所でセミナーをやったコーチングの先生が世界で一番偉いコーチングの先生だと思うタイプの人だったようです。
 研修当日、ふたを開けると。自社の経営者・役員・部長層を前に、彼女は講師紹介を読み上げるが、カミカミヨレヨレ。実際に職位の上の人たちを前にして自分がどれほど緊張するか想像できなかったみたいでした。場の空気がだーっと盛り下がったところでわたしはしゃべり始めました。
 
 わたしなどは、と思います。今でも、経営者管理者の受講生たちを目の前にみて、足がすくむ思いがないわけではありません。彼ら彼女らのずば抜けた経験、知識、情報収集力、人への洞察力、批判的思考力、の前に身をさらしている自分。それでも、過去12年にわたる幸せな変化の経験から、今からわたしが話すことによって彼ら彼女らも幸せになると確信できます。多分次回会ったら、みなさん目元が少しずつ優しくなって、幸福のオーラを放っていて、そして業績向上の兆しが現場からみえていることでしょう。それはいわば、経営者管理者の長い人生の歴史との正面対決であります。30代、会社の中だけで過ごしてきた彼女には逆立ちしてもできないことをわたしはやれます。

 それぐらい「できること」のスケールの違う人に対しては、大人しく「先生」と呼ぶべきでしょう。

 この彼女が情けなくも失敗した回は長期シリーズの研修のキックオフで経営層向けの説明会のようなものでした。実際に研修を受けるリーダー層(係長級、30〜50歳)への研修の初日は、彼女の男性上司にバトンタッチして冒頭挨拶、講師紹介をしてもらいました。こちらもかなり緊張はされていましたが真摯なトーンで終始話をしてくれました。

 「自社を変える」ということの重みがわかってない人にはいい仕事ができないのでした。


2)これも去年、女性担当者がらみの例。
 ある経済団体でセミナーをさせていただき、女性会員が参加した。みなさん大変機嫌よく参加されました。
 数か月後、その中のある企業の人事総務の女性のところへ「あいさつ」に行きました。
 すると、その女性担当者が言うのに
「その後社内の女性活用度の統計調査をとりました。『承認』の概念も使わせていただきました。私たちの仮説で、『女性のほうが承認欲求は強い』との仮説に基づいて調査紙を作成しました」

 あ、ばっかだな〜。
 先生のわたしに訊いてくれれば、「承認欲求は男性のほうが強いです」と答えたと思います。まあ、そういう傲慢で無鉄砲な人間にかぎってわたしを「先生」とは呼ばないのですが。
 経験上、承認欲求は男性のほうが強いです。ただ、会社という装置は比較的男性の承認欲求に応えるようにつくられていて、昇任昇格も男性のほうが早かったりします。難しい仕事を与えられるのも男性のほうです。
 女性は承認があってもなくても下働きをこなしますが、あった方がはるかにパフォーマンスが良くなります。「承認」による伸びしろは女性のほうが大きいようです。
 「ベースラインの承認欲求が強いのはどちらか」といえば、強いのは男性のほうです。
 たぶん、彼女らは女性の自分の身に照らして「承認してほしいのに、されない」という実感から、「女性のほうが承認欲求が強い」と判断したのだと思いますが、それは単にセミナーによって「寝た子が起こされた」だけなのかもしれないのです。
 結局百戦錬磨の先生にきいたほうが客観的なところの答えを教えてくれるんですけどね。間違った仮説に基づいた統計調査がその後どうなったかはきいてません。ワケわからない結果になったかもしれません。
 
 そしてこの女性担当者は、いかにも「承認はわたしもう知ってます」と言いたげに、「(承認の)やり方については正田さんにお願いすることもあるかもしれません」と、いけしゃあしゃあと言ったのでした。
 「やり方については」だって。
 自分が数か月前、「承認」だけではない、正田先生の全人格的な、誠実さや温かい人となりや勇気、決断力などからいかに多くを学んだか、心動かされ「やろう」と思ったか、などを忘れ、普遍真理としての「承認」が正田先生の人格と別に存在しているみたいに思っているのです。そしてなまじ先生が超わかりやすく教えてくれたものだから、自分が「承認」をマスターできたのにまるで習得した自分が偉いみたいに思ってるんです。ああこんなことまで言わなくちゃいけないなんて。
 この人たちは、すぐ「コーチングスキル」とかいうバタ臭い言葉も使うのですが、技は精神と切り離してはありえません。それは12年教えて来たわたしの実感です。



 以上のように「女性担当者」で嫌な思いをすることは結構多いです。要は、今どきの「女子カースト」というやつで、流れ者の正田先生なんかより組織の中にいるあたしのほうが偉いのよ、というマウンティングをしたがるのだと思います。こちらからみると笑止で、あんたなんかどうせ組織の中で女子力比較されてびくびく怯えて生きてるでしょ、と思うのだけど。女の子でも、「マウンティング」というけだものじみたバカバカしい言葉が似合うことがあります。打ち合わせの場にやたら胸元の見えるカットソーを着て出てくるのとかもね。


 で、これはもちろん男性担当者にも大いにあることで、女性のことを先に言ったのは「女性だから女性とはうまくやれるでしょ」という思い違いがよくあって仕事の支障になるからであります。男性でも女性でも結局今時はマウンティングが多いのです。「自分は講師の先生より偉い」という勘違い人間が多い時代なのです。だから林真理子氏のコラムにも出てくるのです。

 
 大マウンティング時代。人前で話をするという因果な商売をしてしまったお蔭で(前著『認めるミドルが会社を変える』を読まれた方はおわかりのように、正田は決して好きでしゃべりの仕事をしているわけではないのですが)この「担当者のマウンティング」という現象をほんとにうんざりするほどよく見てきました。最近の事例セミナーでのパネリストのおかしな発言もその類で、「魔が差す」とはこういうことか恐ろしいものだなあ、という目で見ていました。「しゃべり」という作業が人を発狂させるのでしょうか。普通に考えて、たった15分のプレゼンもちゃんとできない人に講師をナメる資格はありません。

先に「柔道有段者」の話が出ましたが、マウンティングをするのは得てして、とても視野が狭く世間知らずで、他人の力量がどれぐらいかを推し量ることができず自分の力量がそれに比べてどれだけ低いかが見えていない、恐ろしくレベルの低い人種だったりします。


 正田はまた、打ち合わせの段階では別にオーラプンプンなんて出さない人間で、当協会理念のように謙虚に、他人をリスペクトする姿勢で打ち合わせに臨みますから、すごく「普通の人」っぽくみえていると思います。ただいざ受講生さんを前にしたら、腹をくくり腹式呼吸で発声します。温かく、リスペクトの雰囲気を失わないまま。


 今後も、偉そうにしたいつもりは毛頭ないですが、「マウンティング」の行動を警告するような文書をつくることは必要だな、とは思っています。それぐらい時代のレベルが下がってるんです。

 今年は「先生」と呼んでいただくことに注力するなど、「正田は偉そうだ、勘違いしている」と思われるかもしれませんが、逆に「さんづけ」をマーカーとした、担当者のマウンティング現象がいかにばかばかしくみっともないか、かつ研修プロジェクト失敗を招くものか、おわかりいただけますでしょうか。

 圧倒的な力で経営者管理者とガチ対決する講師なのにね。



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お世話になっている皆様


 おはようございます。
 企業内コーチ育成協会の正田です。

 あす21日に衆院解散・来月14日総選挙となりました。消費税増税は1年半先送りとなりました。さて、わが国にとってよい再出発となりますかどうか。


※このメールは、NPO法人企業内コーチ育成協会のスタッフ及び代表理事・正田が、過去にお名刺を交換させていただいた方・当協会のイベントやセミナーにご来場いただいた方にお送りしています。ご不要の方は、メール末尾にありますURLより解除ください。
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 本日の話題は:

■研修後わずか1週間、10日で効果実感
 「効果がない」は過去のものになりました


■『行動承認』お蔭様で大好評です!
 ―企業革新8位。なぜ「人材育成ではない」と銘打ったのか―


■「女性が輝く社会」考えてみませんか?
 第41回よのなかカフェ「『女性が輝く社会』には何が必要?」(12.4)

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■研修後わずか1週間、10日で効果実感
 「効果がない」は過去のものになりました

 現在、奈良県中小企業団体中央会様で「若手従業員育成セミナー」と題して管理職層向け4時間×3回の研修が進行中。わたくし正田が講師をさせていただいています。
 これが、今どきとしては長時間のセミナーなのに正式募集開始わずか数日で満席となってしまう人気ぶり。
 そして、受講生様方もとても真摯にご参加いただいています。
 当協会名物「承認の宿題」は、21名中17名の方が提出してくださいました。
 ほとんどの宿題は、上司の「承認」の言葉がけによって「元気良く返事をしてくれた」「次の行動をとってくれた」と、部下の方の反応や行動変化について書かれています。これらも大変嬉しいことです。
 そのうち、おひとり1週間後の締切日より少し遅れて10日後に提出された方がいました。管理職の方々に交じってご参加いただいた営業所長・役員の方でした。
 「(承認を伝えた結果)お客様の信頼がUPされてきている。特に現場からの状況や問題点など、こまめに連絡が入るようになっているので、取引先や当方にとっても情報が活かされスピーディーに判断が出来る」
と、いう結果の観察事項でした。
 宿題の上司の行動としては個々の部下に声掛けされたのですが、結果の部分は部下個々の動きを超えて、組織としての動きの変化をみてくださったのです。報連相などの情報共有行動が増える、というのは従来も「承認研修」の中で言っていることです。しかし、そうした動きの変化に目を留めて、自らの判断材料とし、さらにそれが「お客様からの信頼」にもつながっている、という観察は、確信をもって実践された上司の方ならでは、と思います。
 こうした変化の実感が、研修後わずか1週間〜10日の間に実践によってみられたのでした。
 従来、「研修」というのはどういうイメージだったでしょう。ひょっとしたら、コンサルタントや大学教授の講師が自己満足的にあんなことこんなことをしゃべり散らかし、受講生も「お説ごもっとも、しかし自分の現場は違う」というモードで聴き、終了後には気晴らしにお酒をのんで忘れ、そして何も現実には変わらない、というのが通り相場だったのではないでしょうか。
 「この研修はそうではないんだ」「現場に根差して本物の変化を創るんだ」。担当者の方が確信をもって告知され、当日の場づくりをし、わたくしも確信をもってお話をし、そして経営者・管理職の受講生の方々にもその「確信」が乗り移った。
 すばらしいご報告をいただいた受講生様方に感謝いたします。きっと皆様の職場の中から、「1位マネジャー」「売上倍々ゲーム」といった現象が出てくることでしょう。
 そして、長時間・3回シリーズの研修をご採用いただいた奈良県中央会様にも、今の段階で少し面目が立ったようで、わたくしも少しほっとしております。
 来月からは、また地元神戸で、兵庫県中央会様でのセミナーが始まります。こちらも、募集開始1週間ほどで残席わずかの状態になったと伺っています。
 奈良県中央会様でのセミナーの模様はこちら

 まじめ受講生さんの実践 お待ちしています―奈良県中央会様セミナー1回目
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51901653.html

 宿題にみる企業変革、ともにゴールを目指すこと、嬉しい林先生のお便り
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51902191.html 

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■『行動承認』お蔭様で大好評です!
 ―企業革新8位。なぜ「人材育成ではない」と銘打ったのか―

 今月初めに出版した『行動承認―組織の能力を最大化する「認める力」』は、お蔭様で大変いい売れ行きのようです。
 きょう(20日)現在ではAmazonの「企業革新」カテゴリの8位。(お友達の話では、日によって最高「4位」までいくことがあるようです)このカテゴリ上位は『ビジョナリーカンパニー2』『戦略プロフェッショナル』などロングセラーがひしめき合います。恐らくビジネススクールで紹介される本が多いだろうと思います。
 東京で電車広告を打っているので、初速がいいのは予想できたのですが、その後も勢いが落ちないところをみると、読まれた方が次の方に「これ、いいよ」と広げていただいているかもしれません。わたくしのフェイスブックのお友達の方々も随分、ご自分からタイムラインでご紹介くださっていました。
 女性著者がマネジメントに関する本を執筆する、というのは実は前例のないこと。今でも書店のマネジメント本コーナーに、本書以外ほとんど見当たらないと思います。ですのでだれも手に取らないのではないかと心配だったのですが、杞憂でした。

 さて、この本の“制作秘話”をまた少しご紹介したいと思います。
 今月いっぱい都内で行っている電車広告では、この本を「コーチングでもない、人材育成でもない」と紹介しています。
 広告の画像はこちらから
 http://www.shounintaishou.jp/201410-b3-train.jpg

 これにはちょっとした裏話があります。
 出版前、ある広告会社の方にこの本のプロモーションをご相談したとき。本の前半部分の原稿を読まれた方は、「コーチングの本ですよね」「人材育成の本ですよね」と言われました。
 わたしは首を傾げ、「多分違います」とお答えしました。それが、この広告コピーになってしまいました。
 厳密にはコーチングの要素も人材育成の要素もあるのですが、「コーチング」「人材育成」という言葉の使われ方が、現在わたしの意図するところと違う使われ方をしてしまっている、そのイメージをつけるべきではない、と判断したのです。
「人材育成の要素もありますが、これは究極には『マネジメント』の本です。組織がオペレーションするかどうか、のお話をしています。そして業績に直結するものです」
 この、見方によっては大変女だてらに生意気な啖呵を切ったのが、遂には広告コピーになってしまいました。
 最初出版社さんからこの「コーチングでもなく、人材育成でもない」のコピーを見せられたとき、
「これ、本当に売れるんですか?確かにわたしはこういうことを言いましたが…」
と、息をのんだのです。しかし実際には、都内の通勤途上のビジネスパーソンの心を大いに惹きつけたようです。
 そして決して誇大広告ではない、といいますのは、1つ前の記事に見るように、実践された方のもとでは組織がガラガラと音を立てて短期間のうちに変わり、動き出してしまうからなのです。

 次回からは、組織に全部でどういう変化が起きるのか?というお話をしたいと思います。

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■「女性が輝く社会」考えてみませんか?
 第41回よのなかカフェ「女性が輝く社会には何が必要?」(12.4)募集開始しました

 よのなかカフェ今回のテーマは「女性活躍推進」。
 この件について「語りたい!」「ほかの方のご意見を聴きたい!」という方、12月4日夜どうぞお集まりくださいませ。

 詳細とお申し込みはこちらのページから
  ↓ ↓ ↓
第41回よのなかカフェ「女性が輝く社会には何が必要?」
 http://c-c-a.jp/cafe/index.html
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※このメールは、NPO法人企業内コーチ育成協会のスタッフ及び代表理事・正田が、過去にお名刺を交換させていただいた方・当協会のイベントやセミナーにご来場いただいた方にお送りしています。

解除される場合は、下記の解除フォームから受信していただいたメールアドレス入力して下さい。
メールアドレスを入力していただいた後、解除専用の確認メールをお送りさせていただきますので
解除専用のURLをクリックして下さい。
いたずら防止のため解除の確認メールをお送りさせていただいておりますのでご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

http://mag1.hyper-mail.jp/md/publish/quit.asp?mid=848



※このメールは転送歓迎です。
もしこのメールを新たに購読ご希望のかたがいらっしゃいましたら、
info@c-c-a.jp まで、「メールニュース希望と書いて
お申込みください。



俳優の高倉健さんが亡くなりました。
寡黙で誠実な、日本の男性がこうありたいと思える男性像を一貫して演じ続けた稀有な方でした。
無意識のうちに「健さん」をご自身の人生の指針とされてきた方も多いことでしょう。
合掌。


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100年後に誇れる人材育成をしよう。
特定非営利活動法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
代表理事 正田 佐与
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Email:info@c-c-a.jp
TEL: 078-857-7055 FAX: 078-857-6875
Post:〒658-0032 神戸市東灘区向洋町中1-4-124-205

ツイッターアカウント: @sayoshoda

フェイスブックページ: http://www.facebook.com/sayo.shoda

ブログ「コーチ・正田の 愛するこの世界」
http://blog.livedoor.jp/officesherpa/

日本人の勇気と自信は、ここから生まれる
「第3回承認大賞」
http://shounintaishou.jp

「企業内コーチ育成のすすめ」
(株)帝国データバンク社『帝国ニュース兵庫県版』
2008年〜2012年 長期連載このほど完結
http://blog.livedoor.jp/officesherpa-column/

兵庫県中小企業団体中央会発行月刊「O!」連載コラム
「誌上コーチングセミナー」
http://c-c-a.blog.jp/archives/cat_50054961.html


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 プレゼンのときの心のあり方について。


 正田の話し方というのは、1つ前の記事でみるような、研修により見込まれる大きなリターンを念頭に、
「この研修で学ぶことを学び逃したら受講生様は一生の損」
という考え方からできています。


 つまり、生身の人間が話し、それを耳で聴く作業を通じてもっとも効率よく学ぶには話し手はどう話せばいいのか?という発想で成り立っています。


 それは、以前にも書いたように、究極の「伝達」の作業です。自分が話したいように話せばいいものではありません。頭に思い浮かんだことをしゃべり散らかしていいものではないし、相手が段階を追ってロジックを吸収してくれるよう、あらかじめ設計したロジックに沿って話すことが必要です。


 また、「反発を買わない話し方」というのも大事です。とりわけ女性の正田の場合、「あたしえらいのよ」という態度はたちどころに反発を招きます
(スピーカーが男性コンサルタントの場合、「自分はこんなにえらい、あんなにえらい」というマウンティングのようなフレーズもよく入りますが)
 人は、自分が反発している人の言葉は耳に入らない。先日のプレゼン大会のような場で、1人、極端に攻撃的な態度で話し話題にする人を次々貶めるような人がいましたが、その人には質疑の時間、とうとう質疑の手が上がりませんでした。また、会場参加者にインタビューしたところ、その人の話の内容は印象に残っていませんでした。


 人に何かを教えるときどんな心のあり方で話せばいいのか、を以前、「人に教えるということ」という記事にまとめました。

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51754001.html


 この記事を引用するのはもう何回目になるでしょう・・・、

 
 要点としては、

(1)人に教えるのは自分を大きく見せるためではない。虚勢を張らず、かといって自己卑下することなく、等身大の自分を引き受けて話せ
(2)「相手のために」という気持ちを濾過して絞り込んだものを話せ

ということを言っています。
 これは話す内容が正しいかどうか、とは別の話であります。正しい内容を話すことは大前提であります。


 わたしのみたところ、ほとんどのコンサルタントの先生は(1)がだめです(だから偉そうにはみえるけれど内容は頭に残らない)
 また、ほとんどの大学の先生は認知能力の偏りがあるせいか、(2)の「相手のために絞り込んだものを話す」ということができません。知識をひけらかしあれもこれもとしゃべり散らかして要点がわからなくなり、忙しい現場のマネジャーがどう行動したらいいのか、一貫した指針を与える、ということに気持ちが向きません。


 人が生身の人から真摯に「学ぼう」と思うときは、(1)の「偉そうにみえるマーキング」は要らない、むしろ邪魔なのだと思います。(これは情報として全然要らないというのではなく、指導実績がサイド情報としてよそから耳に入っている、というのが望ましい。錦織圭選手がチャンコーチの言うことを「指導実績のある人だから」と素直に取り入れたように。なので事前告知や講師紹介は大事なのです)


 ただ少し脱線しますと、恐らく人事の人は「自分が内容を無心に学べるか」よりも、「偉そうにみえる人を会社に連れてくるか」を気にかけるので、「偉そうなマーキング」があったほうが嬉しいのだと思います。それは肝心の最終ユーザーであるラインマネジャーが喜んで学ぶかどうか、とは全然別のロジックであります。


 スピーカーとしてのわたしの性格上、いくら「人事の人」が「偉そう印」が好きで必要だ、と頭ではわかっていても、自分の行動として「自分は偉いんだ」ということが言えるかというと、うーん。
 「この教育プログラムで12年、1位マネジャーを作ってきました」
ぐらいは事実として言えますけれどそのへんが精一杯ですね。

 


 さて、脱線から戻ります。

 上記の記事「人に教えるということ」は、読んだ人にオキシトシン―セロトニン的な心の平穏をもたらすようです。それで、プレゼン前の緊張している人に読むよう勧める、ということもします。その助言に従った人はいいプレゼンをするし、従わなかった人は、何のために話しているのかわからないようなプレゼンをしました。ということで効果てきめんなわけですが、、


 
 人前で話をすることが、ドーパミン的な、つまり承認欲求過剰的な、「ボクを見て、ボクを」という心の状態をもたらすことがあります。
 そうした神経化学作用はたぶん個人差があるのですが、人によってその傾向がとても強い人がいます。
 たとえばその1つの症状で、話すスピードがどんどんゆっくりになってきます。
 推測すると、内容は一緒でもスピードを落とすことで、話す時間を長引かせることができ、その分人が自分に注目してくれる時間を引き伸ばすことができるんです。
 しかしそれは内容のなさが一目瞭然ですし、スピードがある程度以上ゆっくりになってしまうと、聴き手は内容を聴き取るのに困難を生じます。
 結果的に何を聴いたのかよくわからないプレゼンになってしまいます。情感豊かなのは伝わったかもしれないですけどね。演歌みたいなものですね。理屈はまったくない、感情だけの世界になります。


 もう一方には、テストステロン―ドーパミン的な、攻撃的で底意地のわるい、オレがオレがの悪質なナルシシズムに陥る人がいます。これは先ほど言った、あの人もこの人もこき下ろすような話の仕方になります。まあ政治家とか政治評論家にもいますしお笑い芸人にもいます。TVには最初からそういう人があふれているかもしれませんが。TVがそうだからといって普通の社会人がそのまねをしていいわけではありません。そういうものに影響されるのは若者が2ちゃんねるに影響されてとげとげしい攻撃的な物言いになるのと同じようなものです。いずれにせよそのタイプのプレゼンは人々が聴く耳を持ちません。そういうのは自然の摂理で上手くできている、と思います。


 いずれにしても、良い心の状態で話すということは絶対条件です。たとえ直前に嫌なことがあってもそれと目の前のプレゼンを切り分ける。話している最中に自分の中にナルシシズムが湧いてくるのを意識して抑制する。心のありかたはスピーカーが発散するエネルギーの質になって、いいにつけ悪いにつけ会場に影響を与えます。


 「承認研修」の場合は当然、会場に美しい感情が流れるよう努力します。人びとをリスペクトし、幸福を願い、仕事が効率よく回り上手く循環することを願う態度で臨みます。自分より他人に意識を集中します。


 その発露として、また次の段階、論理的に組み立てたり頭に残るようなフックを作ったり、会場の人々とオープンな態度で対話して、ということをするのですが。


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 NPO法人企業内コーチ育成協会の団体理念。

 もう、これを書くのも最後になるでしょう。


ミッション

■承認中心コーチングを応用したリーダー育成により、活き活きした人の創出と経済活性化に努めます。
■上記の目的に資するため、承認中心コーチングの活用事例や成果を社会へ向けて発信します。
■自主・尊重・友愛の精神に基づき、人と人とのよりよい関わりを模索します。


 行動規範

○私たちは、組織の上下、内外にかかわらず、互いに尊重し、承認しあいます。私たちは、   人としての基本の敬意、礼節、思いやり、誠実と正義を大切にします。
○私たちは、約束を守り、行動する勇気を重んじます。私たちは、つねに自己責任の感覚をもち、社会、顧客、仲間、自己それぞれに対して力の限り責任を果たします。
○私たちは、理性と感情の両方を重んじます。私たちは、よき社会人として節度をもち、法令を重んじ、倫理と規範ある行動をとります。私たちは、他者の感情を思いやり、自己の感情を認識し制御し、適切な形で伝えます。
○私たちは、つねに謙虚に、あらゆる場面で学び続けます。




100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp




 


 


 


 
 
  


 


 

 奈良県中小企業団体中央会様での「承認研修」は、受講生21名中ご提出17名となりました。

 たくさんの企業にまたがっているのに、立派な数字であります。


 ふとしたことから、受講生派遣+宿題督促の窓口になっている企業の総務の方と中央会の担当Nさんとの間のメールのやりとりをみる機会がありました。

 Nさんから、実にこまやかな丁寧な表現で「講師の先生は必ずコメントして返してくれますよ」と督促し、企業の方もそれに礼節正しく応答されているのでした。


 そして、無理強いされて負担なのでは、という心配をよそに、提出された宿題は大変レベルの高いものでした。

 初期のご提出分もみごとでしたが、やや遅れて提出された分は、あとの「行動観察」がよく入っていました。


 全従業員にスケジュール記入に感謝の言葉をかけ、それに応えてスケジュール記入をしてくれるようになった、というもの。

 その他、「認めた結果次の行動をとってくれた」というもの。

 一番詳しい結果観察としては、

「上記3項目を伝えた結果、お客様からの信頼度が、UPされて来ている 特に現場からの状況や問題点など、細目に連絡が入るようになって来ているので、取引先や当方にとっても 情報が生かされ スピ-ディに判断が出来る」

というのがありました。研修から10日後のきのうご提出のものだったので、「承認」実践後に1週間から10日かけて経過観察されたと思われます。


 これ、経営的にすごく大きなことですよね〜。

 また
「研修って、効果ないものでしょう」
「効果が出たとしてもすごく時間がかかるんでしょう(3年とか)」
という従来の見方を完全に覆しています。


 中には、近著『行動承認』を読んで実践していただいたんじゃないかな〜という、レベルが高いというか、趣旨を正確に理解しておやりになった感じの実践もありました。


こうして、「できるようになる(受講生様が)」ことのために4時間という研修時間があった、と考えれば、「4時間」は決して長くない。むしろ、2時間ぐらいでやろうとするほうが狂気の沙汰だ、と思えます。
今回の4時間もフルに目一杯使って、・やっていただきたいこと・そのために気をつけてほしいこと の両方をお伝えしていますからね。


 やっぱりこういうことって担当者さんの「確信」がすごく大きく影響していると思います。
 Nさんが担当だから、ここまでになった。


 こうして、「まずは、レベルの高い宿題を提出していただく」というゴールも、多くの担当者さんはご理解いただけないところがあります。ので、そのためにどんな告知をし、講師紹介をし、場づくりをしたほうがいいのか、ご説明しても「ピン」とこないし、「うるさいヤツ」と思われてしまったりします。

 Nさんは、これまでご一緒したどの担当者さんよりも、この「ゴール」をよくイメージされていらっしゃいました。

 こういうのはわたしから強制できることではないので、本当にそのかたのもっているセンスとか、未来に対する想像力とか、みんなが幸せな状態ではたらくことを心底願う気持ちだと思います。


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 先日の国際教養大学(AIU)開学10周年式典でお会いした、宮崎公立大学学長の林弘子先生(弁護士、労働法)より、嬉しいご著書『労働法〔第2版〕』(法律文化社、2012年)のご献本とお便りをいただきました。


 たまたまパーティーでお話して、ご専門が労働法であることを知り近い分野とあって色々とご質問させていただき、また拙著もご献本させていただいたお返事です。


 添えられていたお手紙には、変革途上の公立大学の学長として多くのご努力をされていること、その中で拙著を読まれ大変共感できたと書かれていました。
 

 しっかり読み込んでいただいたご感想に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 そうなのです、心正しいリーダーの「企業変革」の武器であってほしいのです。
 たぶん、しっかり読まれたかたにはそういうものとして理解していただけると思うのです。


 
 また、以前にも神戸弁護士会のセミナーに行ってコメントを求められそうになりましたが、これも不遜な言い方ですが当協会方式の「承認」は、たぶん企業実務に関わるどの分野のかたからみても風通しの良い、矛盾を生じない方法です。

 たとえば所謂「コーチング」の中には、「それ労基法に定める『労働者性』の概念からしてどうなん?」というものもあり、賛同できず距離を置いています。

 
 ひとりのマネジャーがパワハラもコンプラもメンヘルも、ありとあらゆる研修を受けますから(ただ大半は表面的なものですが)、他分野と矛盾せず、安心して使い続けられるものをご提供することが大事です。残念ながらそういうものは他にほとんどありません。



 だから、ほかならぬ「この教育」を普及することが大事。ということを、きちんとわかり、頭でわかっているだけでなく行動レベルでできる人と今からはご一緒したいなと思います。


 「自分の自慢ができればいい」とか「部下の自慢ができればいい」とかいうのは「向こう三軒両隣しかみえない視野の狭いおばちゃん」同然(それもおばちゃんに失礼な言い方ですが)なのです。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

 いくつか去来する考え。

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 感情に溺れるということ。

 このブログでは数年前、繰り返し「感情」に重きを置く某コーチング研修機関のプログラムを批判した。

 その当時、その研修の「信者」の方々との間で、「約束をすっぽかす(ドタキャン)」「責任を放り出す」といった問題が多発した。たまりかねてある時期からその研修機関の人を出入り禁止にし、そこのプログラムを推奨しないことにしてしまった。


 その人たちというのは、自分の感情を大事にするあまり「お子ちゃま」なのである、わたしからみると。自分の感情をドロドロ表出する、「自分の都合」のかたまりになる、しかし他人の感情を同じように大事にしているか。人は誰にも同じように感情があって、都合があって、それらを調整して社会が成り立っている。調整してかつものごとを動かしていかなければならないから、ルールや責任という概念が出てくる。


 そのルールや責任に「感情」が優越する、と強調するような教育をすると、あまりに自分の都合ばかり振り回す人ができる。行動したがらない、ものごとが全然先にすすまない。

 当協会の「行動承認」+「Iメッセージ」の手法は、そうした過去の教育プログラムで起きた現象をつぶさにみて、それへの反省からできた。

 仕事の中では、仕事の全体像がわかっている上司から「行動承認」をすることで「何が称揚される行動か」を提示してやり、プラスアルファ「Iメッセージ」で感情の温かさを付け加える。「Iメッセージ」はプラスアルファ程度に使うとバランスがよい。


 「行動承認」をすることで「まず行動を尊ぶ」という姿勢を提示する。「行動」は本来痛みを伴うので、「感情」を強調すればするほど怠惰になり行動しなくなってしまう。(ある脳科学本では脳の「感情優位」な状態というのは仕事で疲れ切った深夜の脳の状態で、抑制が効かない状態だという)

 「行動」に重きを置く限り、人はおおむね「喜んで行動する」ので行動量が増え働きものになる。また脳の実行機能がフルに動き、自己抑制なども適切に行われる。「信頼関係のある上司からほめられれば責任感がアップする」というのは2008年ごろ有名になったJR西日本の安全レポートだけれど、責任感が増す現象もよくみられる。

 それでも「行動、行動」ばかりでは味気ないので「Iメッセージ」(助かっている、嬉しいなど)をプラスすると人間味や誠実さが加わる。

 「感情」を添付するのはそのぐらいのさじ加減でいいのだと思う。
 ただアスペルガーの傾向のある人にはその「感情を添付する」というのも大仕事なのだけど。

社会や仕事は、大半は「理性」でできている。「理性」は学校教育や社会人時代を通じて長い時間をかけて前頭葉を発達させるので、ゆめゆめ「理性」をおろそかにすべきではないのだ。

 当協会方式で人々が働きものになり業績が上がるのは、色々と過去の教育プログラムへの反省に基づいてプログラムを作っているので、おおむね問題が起きないのだと思う。

 逆にこれ以上あまり手を加えるとバランスを崩すし、ほかにも有効なプログラムがあるかもしれないと探していて当協会方式の「型」が崩れるとたちどころにおかしくなる。

 「行動」と「感情」のバランスを大事に。


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 「他の研修が80点なら承認研修の価値は1000点」

 これは今年8月にNPO理事会でわたしが言った言葉だけれどおおむね間違ってないと思うのだ。


 本来数値化しにくいことだけれどこれまでの「承認研修」での効果の出方をみると、それぐらいの点数の開きがある。要は、ほとんどの研修の類は効果があったとしても部分的なことにしか効かないが、「承認」は雪崩式にすべての問題に効いてしまい、そして人々が伸びて業績が上がってしまう。


「承認研修」の正しさに反発してほかの手法に乗り換えればたちどころに1000点から80点ひょっとしたら0点に墜ちる。

 その「1000点」のものを、従来人びとが「1000点」のものなんて想定もしていない見慣れていないのを、いかに安売りせず「1000点」の価値のまま売るか、普及させるか、というのがわたしたちのやってきたことだった。


 そしてもちろんそれは人びとが一気に幸せになるやり方だ。


 せっかく今目の前に「1000点」のものがあるのだから、利用可能なのだから、有効に使おうよ、という。

 
 そしてこれも不遜なことだけれど、その「1000点」のものの価値を十分にわかり、あますところなくリーダー研修で人々に伝え、人々に行動してもらうことのできる講師は今のところわたししかいないのだ。


 「承認研修」は要点をシンプルに絞ったものなので、学んだ人は「これを自分も教える側に回ることもできるかもしれない」と思いやすい。
社内講師の立場の人なんか、すぐそう思う。


 でも「1000点」のものを限られた時間でリーダーに伝えている、というとき、その伝え方にはたくさんの暗黙知があるのだ、ということを、よその色んな研修をみたりわたしのコピーを意図したらしい人をみながら思う。コピーしても大抵はごく一部しかコピーできず、コピーできなかった部分があることでリーダー層に説得力を持たなかったりする。


 1つその「暗黙知」の例を挙げると、わたしは「行動理論」の話をするときに必ずアメフトの常勝監督・武田建(関西学院大学名誉教授)の名を出す。この手もいつまで使えるだろうかと思うのだが。彼がアメフトを指導している風景をイメージしてもらいながら話す。そこで「ほめて伸ばす」という一見優しげな、お母さんがやることみたいな手法に、男のスポーツ・アメフトの骨太なイメージや「勝つ」という目的のために合理的な方法だということを伝える。いわば、行動理論をただの理論ではなく「属人的」な色をつける。そのほうが同じ理論でも頭に入りやすいのだ、ということを、やりながら学んだ。

 そして、単なる行動理論でなくアメフトや禿頭の武田建のイメージがあることで、リーダーたちに「自分たちが取り組むこと」だという身体感覚をもってもらえるのだ。


 かつ、その行動理論を紹介するときに、正田自身がちょっと身体を使ったアクションをする。

 そのことも受講生さんへの記憶に残りやすいようだ、というのはあるとき2年前に受講した上司が自分の部下を研修に派遣していただき、あとでその上司の方が「彼(部下)に感想をきくとあなたのアクションを使った教え方のところが記憶に残っていたようだ。『あそこが記憶に残っているなら合格だ』と話した」と言ってくださった。この上司さんは、「承認研修」のことを「過去の研修ベストスリー。他の2つは品質と安全」とも言ってくださり、コミュニケーション部門1位にしてくださったのは光栄なことだった。

 
 身体を使って印象づけながら教える、というのも武田建氏本人から学んだ。いちど同氏を講演に招いたとき、同氏がやったのは、「行動理論」の始祖スキナーのことを説明しながら、当時実験動物になったのはハトやラットやイヌである、と話し、イヌのところでいきなり四つん這いになってイヌのまねをやってみせたのだ。

 どぎもを抜かれたけれど、武田氏はアメフトの「武田コーチング」の人としてビジネスコーチングより前の時代からビジネスパーソン向けの講演に行っていて、そこで「ほめて伸ばす」という当時最先端のことを伝えるのにやはり腐心したようだ。そんな中で「大学の先生が意表を突くようなアクションをする」という奇抜な方法を編み出したようだ。


 そういうやり方を(イヌのまねではないけれど)わたしも有難く取り入れさせていただいた。やはりそうして記憶に残るフックをつくると、全体のことが芋づる式に思い出されるようである。


 その2つは最近思い出した暗黙知の1例である。こうやってときどき「自分は暗黙知としてこういうことをやってるな」と思い出す。そしてわたしをコピーしようとしている人たちがそこまで注目していないことを残念に思う。


****


 そしてわたしは素朴に(みる人によっては少女っぽい表情で)過ごす。これも外界にいつも好奇心を向けていたほうが見落としがないからだ。偉い人然とはみえないと思うがそういうあり方で過ごすことでほかの人が見落とすいろんなことが見えてきた。


 「承認」の世界の住人でなくなった人は残念ながら表情が変わる。

 攻撃性、嫉妬、卑しさ、いまいましさ、嘲り、そうした表情が入れ替わり立ち替わり現れる。


 まったく違う感情世界の住人になったのだ。

 男性はそうなるのはすぐだ。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp



 
 


 

 奈良県中央会様若手従業員育成セミナーの「承認」の宿題が返ってきています。
 いつもながら宿題をみさせていただくのは楽しみであります。


 あのときの真摯な瞳の受講生様方だけあり、ひときわ果敢に取り組まれています。

 
 失礼して一部をご紹介すると・・・


●「前回(のセミナーで)お聞きしたように私(C)は褒める言葉が薄っぺらく苦手であるがこのセミナーで是非とも会得したいと思います。
承認する事で自分も含め、人の動き・表情が変わっていくのだなと少し実感しました。
第2回も宜しくお願いします。」


●「「状況」
・専門性のあるむつかしい見積もりを短期間の期限通りにお得意様に提出できた。
「ほめたこと」
むつかしい専門性のある言葉をよくわかったね
 いろいろな仕入れ先に連絡をとり 、期限通りによく提出できたね
「そのあと起こったこと」
仕事が終わって帰るとき大きな声で「お先に失礼します」と元気よく帰っていった。
「私の感想」
 自分ができたという達成感と認めてもらえたという満足感が伝わってきた。


●「研修内容に関しては非常に興味があった。性格類型を人に当てはめてみて人によって言い方を変えなければいけないと思った」



最初の例はちょっとコワモテの方。研修中に「C」の人についてお話していると「オレだよ」と横を向いてうなずき合い笑っていた人。
とても潔く気持ちのいい実践とともに上記のようなご感想を送ってくださいました。

2番目の例は、部下の行動を分解して的確に行動承認をするということができています。「専門性を承認する」というところもいいですね。これ、1週間時点の宿題としてはかなり高いレベルです!!


3番目の方は、興味をもって受講していただけて何よりですね。3日間の内容の説明がヒットしていただけたでしょうか。



 会社の中の個々の人の動きが良くなり、ものごとがガラガラと動いていくのがイメージできそうです。


 皆様、引き続き実践くださいね!!


100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp


 

 11月7日の「承認マネジメント事例セミナー」において、一部残念な事態があり、ここにお伝えいたします。


 当日発表された篠山市商工会事務局長原田豊彦氏の発言の中で、


「今日の事例セミナーには正田先生から電話があり『事例セミナーに来なさい』と言われた」

と、登壇を強制されたような発言、(「来なさい」という表現は事実として一切ない)

また

「われわれの商工会が『共済1位』『補助金1位』という成績を出していることは承認研修のお蔭だから発表しなさいと言われた」

と、まるで成果と承認研修の間には因果関係がないものを正田が強引に結びつけているかのような発言、

また


・上記と関連して、全体的な被害者意識
・2013年2月工業会講演での正田の発言の捏造
・宿題に関して「邪魔くさい」と発言、出来るようになった喜びなど一切触れなかった


など、当協会及び正田にとってイメージダウンにつながる発言が多数含まれ、来場者の方には誤解を招いたかもしれないと思います。

本日これらについて同氏より口頭で謝罪がありました。

 法的手段をとるかどうかは追って検討いたします。



 今年というタイミングできわめて残念なのは、春先に理研の女性研究者の研究不正とみられる行為があり、そのことできわめて高いエビデンスを出す当協会や正田もダメージを被ったことです。データ捏造のイメージがついてしまったのです。

 過去12年にわたり地道に教育をし、事例収集や統計調査を積み重ねてきた当協会ですので、そうした負のイメージは極めて不当であり残念なことでした。


 やや時間が経った今秋、3年ぶりの事例セミナーを開催することで、「異常値」ともいえる成果事例を並べて聴いていただき、「本当に成果の出るものなのだ。また成果の出方は本当に尋常ではないのだ」と多数の方にわかっていただきたく思いました。


 しかし、せっかくのその場で、原田氏により研修の効果やセミナー登壇の自発性を疑わせるような発言が出てしまったことはきわめて遺憾であります。

 ちなみに原田氏に登壇を依頼したいきさつはこちらの記事

 事例セミナーに4人目の論客登場。。
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51894318.html

にあり、この記事でもわかるように強引に引っ張るような言い方は一切しておりません。正田は普通の常識人です。


 ただ、男性スピーカーは往々にして、女性について、発言内容をデフォルメし攻撃的で強引な人格の女性であるかのように表現することはあります。

 それはイメージ商売のコンサル業にとってはときに「致命的」になることがあります。


 ですので、今後のアクションについては少し考慮させていただきます。


 ご来場の皆様には、大変残念な、事実と離れた発言をおきかせしてしまい、おきき苦しく本当に申し訳ありませんでした。この場を借りてお詫びさせていただきます。


 原田氏以外のスピーカーはみな事実に基づいて発表しておりますので、何卒ご信頼くださいますよう。




 わたしも心したいと思います。一部でも事実でない発言があると、発言全体が信用できないものにみえてしまうな、と。これまでも相当気をつけ、デフォルメなどしないようにしてきましたが。また近著『行動承認』は各エピソードの関係者と丁寧に時間をかけ取材し確認作業をし、「この形で出して間違いない」というものを書いているのですが。




100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

お世話になっている皆様


 おはようございます。
 企業内コーチ育成協会の正田です。

 W杯で試合前の練習で激突・転倒し、流血のケガを負いながら本番を滑りきった羽生結弦選手。彼の圧倒的な精神力に拍手を送りたいとともに、ケガのこともつい心配になります。しっかり休んで治療して、またあの華麗な舞いをみせてほしいですね。


※このメールは、NPO法人企業内コーチ育成協会のスタッフ及び代表理事・正田が、過去にお名刺を交換させていただいた方・当協会のイベントやセミナーにご来場いただいた方にお送りしています。ご不要の方は、メール末尾にありますURLより解除ください。
(解除方法が変わりました!詳細はメール末尾をご覧ください)


 本日の話題は:

■嬉しかった反響
 「よい本を読みましたので、ご紹介します」

■職場マネジメントと発達障害
 ―空白を埋めるインタビュー 掲載と同時に大好評です!

■「あの登場人物」が神戸に結集しました!
 「承認マネジメント事例セミナー」白熱の開催。

■改めて「女性活躍推進」考えてみませんか?
 第41回よのなかカフェ「女性が輝く社会には何が必要?」(12.4)募集開始しました

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■嬉しかった反響
 「よい本を読みましたので、ご紹介します」

 きのう嬉しかったこと。
 フェイスブックで親しくさせていただいている、ある出版社の女性社長さんが、ご自分のタイムラインに「よい本を読みましたので、ご紹介します」と、わたくしの近著『行動承認―組織の能力を最大化する「認める力」』のAmazonページのリンクをつけてご紹介くださいました。
 他社の出版物だというのに。
 社長さんが書かれた文章をこちらに引用させていただきます。
「職場の雰囲気をよくするために、毎日奮闘努力中のみなさんへ。
しばらく前に堀場製作所の社是が「おもしろ、おかしく」だと聞いて、さすがにイノベーション命の企業は違うなあ、と思いました。
厳しく辛い環境では、仕事のパフォーマンスは低下しますもんね。
それで、うちでもそういうスタンスで仕事するのもいいかなと思うようになっています。
『行動承認―組織の能力を最大化する「認める力」』(正田佐与、発行:パブラボ)
 いやー、私も色んなスタッフさんと働いてきました。全員のパフォーマンスを上げるために、さまざまな態度をとってきましたよ。権威主義的だったり、平等主義的だったり、友達的であったり。あれこれ試したものですが、この本で正田さんが論じられている「行動承認」は、いい効果を生むことが大いに期待できます。何よりも過剰な努力を強いないのがいいです。ほめるのもほめられるのも苦手という、日本人気質に合った方法ですね。よいスパイラルで物事がすすんでいきそうです。
 子育てにも応用できそうですし、自分を励ますにも使えそう。」

 いかがですか?嬉しかったですねえ…。色んな意味で。
 大企業と小さな企業では人の質も異なり、マネジメントの風景も異なるので「ここに書かれているようなことはできない!」と思われる向きもあるかもしれません。でもこの社長さんは、大企業中小企業の区別なく普遍的に通用する真理を、本書から読み取ってくださったのです。女性リーダーとして男性の場合にはないようなご苦労もされながら。
 そして、他社のもの自社のものと区別せず、良いものを「良い」と言ってくださることは、本来どれだけ偉大な無私の行為だろう、と思うのでした。
 ともあれ、『行動承認』まだ読まれていないあなた!是非手にとってみてください。
 なお、Amazonではこのところ品切れ⇒入荷⇒残り1点 とめまぐるしく「動いて」いるようです。できるだけお近くの書店でお買い求めください。

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■職場マネジメントと発達障害
 ―空白を埋めるインタビュー 掲載と同時に大好評です!

 去る10月6日、NPO法人発達障害をもつ大人の会(DDAC)代表・広野ゆいさんにインタビューさせていただきました!

 発達障害については今世紀に入り急速に研究がすすみ、それにつれて想像をはるかに上回る出現率があることがわかってきました。気をつけてみればあなたの職場のここにもあそこにも、発達障害/発達凸凹の人がいるのに気がつくことでしょう。しかし、「発達障害の人に対するマネジメント」はまだ手つかずのままです。

 広野さんは当事者側でADHDとアスペルガー両方の傾向をもち、診断を受けたあと自覚が進まれたので、お話していて一方的だとかかみ合わないとかの印象はまったくなく、むしろ非常に公正にオープンに語ってくださいました。詳細に現実をみられていて、沢山の共通認識を持てることに安堵の念をもちました。

 8日インタビューを公開させていただいたところ、フェイスブックのお友達が次々シェアしてくださり、また「今回も一気読みしました!」「診断のことや仕事のことなど、これまでわからなかった微妙なところがよくわかりました!」「正田さんのここ数年の地道な発達障害に関する取り組みが内容の濃いインタビューになりましたね!」と、嬉しいお褒めの言葉をくださいました。
 公開と同時に大きな反響を呼んだ、そのインタビューはこちらからお読みください:

広野ゆい氏にきく「凸凹の部下と凸凹の上司、どうつきあう?」

1.発達凸凹があっても職場でうまくやっていくには
http://c-c-a.blog.jp/archives/51901745.html 
■凸凹の概念で発達を説明する
■アポを忘れる営業マン―カギはメインの仕事ができるかどうか
■製造から介護へ、凸凹社会人の流入現象
■新しい枠が必要、正社員でも障碍者枠でも非正規雇用でもなく
■会社でうまくやっていくには自覚がポイント
■「私も仕事できない人だった」(広野)

2.見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり
http://c-c-a.blog.jp/archives/51901747.html 
■メンタルヘルス問題のかなりの部分が発達障害
■「できる部分」にしがみつく当事者
■当事者の集まりで初めて「ゆるむ」
■新型鬱と発達障害
■自己愛は発達障害なのか?
■「指摘されると切れる」敏感さから「出来ない」と認められる当事者コミュニティへ
■虐待、過干渉と発達障害
■DVと発達障害
■引きこもりと発達障害
■当事者の人生―趣味、コミュニティ、介護


3.凸凹部下と凸凹上司、どう付き合う?
http://c-c-a.blog.jp/archives/51901749.html 
■もし発達障害の部下をもってしまったら
■部下の発達障害に気づけないマネジャーたち
■「発達障害上司」は承認が難しい?
■「発達の問題」わかったら降格がベストか
■診断を受けてもらうことは役に立つか
■診断を受けてもらうトークとは


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■「あの登場人物」が神戸に結集しました!
 「承認マネジメント事例セミナー」白熱の開催。

 7日(金)、神戸・三宮の兵庫県経営者協会において、「夢物語みたいなこと、言うてもええんですか―承認マネジメント事例セミナー」を開催しました!

 近著『行動承認』の中で、「企業小説」のようにエピソードを紹介した登場人物たち。書き方は企業小説ふうですけれども、実在の人物、事実であり小説ではありません。

 今回は、35歳から56歳、中年期のマネジャーたちが挫折にみちたマネジメントの中からどうやって「承認」に出会い、華々しい成果を上げたかを語っていただきました。
 「ダブル1位」「2期連続表彰」「売上倍々ゲーム」「2年間不良ゼロ」「4年間離職ゼロ」と、当協会過去7回の事例発表でも、また国内のコンサルティング業界を見渡しても例のない強烈な成果ぞろいの発表になりました。
 
 こちらの記事にご紹介しましたので、ご覧ください:

「あの登場人物」が語りました。。ここにしかない奇跡 白熱した承認マネジメント事例セミナー
http://c-c-a.blog.jp/archives/51901726.html
 このメルマガを読んでくださっているあなたは、「歴史的な転換点にきているんだ」ということを、この記事から実感していただけますでしょうか…。

ご登壇くださったみなさま、またご来場くださったみなさま、改めて本当にありがとうございました。

 この事例セミナーの模様は、近日動画配信いたします。お楽しみに!!

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■改めて「女性活躍推進」考えてみませんか?
 第41回よのなかカフェ「女性が輝く社会には何が必要?」(12.4)募集開始しました

 よのなかカフェ今回のテーマは「女性活躍推進」。
 「うちは女性が少ないから―」なんて仰ってる企業様、人手不足の折「女性」をちゃんと使えなかったら経営の致命傷になってしまいます。
 ただやみくもに「女性を採用して、今いる女性を管理職に昇進させて」というのがいいわけでもなさそうですよね。
 この件について「語りたい!」「ほかの方のご意見を聴きたい!」という方、12月4日夜どうぞお集まりくださいませ。

 詳細とお申し込みはこちらのページから
  ↓ ↓ ↓
第41回よのなかカフェ「女性が輝く社会には何が必要?」
 http://c-c-a.jp/cafe/index.html

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◆ブログ「コーチ・正田の愛するこの世界」人気記事ランキング

1.発達障害者は注意するのが好き?『大人の発達障害ってそういうことだったのか』
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51884228.html

2.恐怖!イノシシに襲われましたの記
http://c-c-a.blog.jp/archives/51874063.html 

3.神戸は住みやすいのか住みにくいのか?よのなかカフェ「内から見た神戸、外から見た神戸」開催しました
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51833038.html

4.『行動承認』の本 まさかのタイトル決定。。
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51899158.html

5.調光器とLED騒動「工事」に行き着くまで
http://c-c-a.blog.jp/archives/51742296.html 
 

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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
皆様にとって素晴らしい1週間でありますよう。


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日本人の勇気と自信は、ここから生まれる
「第3回承認大賞」
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2008年〜2012年 長期連載このほど完結
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兵庫県中小企業団体中央会発行月刊「O!」連載コラム
「誌上コーチングセミナー」
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 きょうとても嬉しかったこと。

 きのうアップした発達障害者の当事者の会の代表、広野ゆいさんへのインタビュー記事を、フェイスブックのお友達がシェアしてくださり、そのまたお友達が再シェアしてくださっていた。

 最初のお友達からはわたしの「発達系」に関するここ1−2年の地道な取り組みが内容の濃いインタビューにつながったと、とても嬉しい賛辞をいただいた。(わたしも、実はこのインタビュー記事は内心「会心の出来」だったので嬉しかった)


 もうひとりのお友達で出版社の女性社長さんが、ご自身のタイムラインで「よい本を読みましたので紹介します」と、『行動承認』の本を取り上げてくださった。他社からの出版物なのに。

 自分他人を乗り越えて率直にいいものをいいと言ってくださる、それは単なる「承認」だけではなくナルシシズムを乗り越える高次の作業であろうと思います。ひときわ偉大な「承認」をいただいたなあ、と思います。


****


 人前で話すことは麻薬だ。

 このブログでは過去に何度かそういう話を取り上げたと思う。人びとの視線がマイクを持った自分に集中することが、いつか肉体的快感になりやめられなくなる。


 この話は初めて書くと思うが、過去、それで痛い目に遭った。

 ある女性コーチの方と一緒に研修をした。販売業の業界団体さんからわたしに来たご依頼で、管理職と一般職とりまぜた講習会なので、販売業出身でわたしよりもう少し販売スキルに詳しい人とペアで研修するとよりわかりやすいのではないか、と思ったのだ。2時間の研修のうち前半90分は彼女で販売の仕事に密着した話、おわりの30分はわたしから管理職向けに「承認」の話、という取り決めだった。


 ふたをあけてみると、彼女が予定以上にあれもこれもと話してしまい、90分をはるかにオーバー。わたしの残り時間はわずか10分になり、仕方なくごくあっさりと「承認」の定義のような話をして終わった。


 そして彼女は首尾よく自分を魅力的な先生と印象づけ、講習会の終了後その業界団体の重鎮の経営者さんをウルウルとうるんだ目で見上げ、首尾よくその会社の研修をゲットした。


 そうしたときの彼女の顔の色ツヤや目の輝きをみると、人前で話すときというのは、快楽物質ドーパミンがバンバン出ている、というのがわかる。性欲に溺れるのと同じ状態である。


 わたしは長話をして自分ひとりが時間をとって友人を裏切る人にはなりたくないなあ。いいです、ツヤツヤしたお肌をしてなくても。冷静で思いやり深く、謙虚で思慮深い人でありたいと思います。クールなもんで。


 研修講師の仕事をしていて「人前で話すこと」の麻薬的魅力に抗い続けるのはむずかしい。もしわたしがそのことに成功しているとしたら、それはつねに「承認する主体」であり続けることで、外界を好奇心旺盛に観察し続け、自分以外の他人の素晴らしさを感じ続けることで成り立っているだろう、と思います。


 
 「人々の視線が自分に集中すること」に夢中になりはじめると、気がつくのは、「相手に伝える」ということがなおざりになる。

 よく「表現と伝達は違う。マネジャーの仕事も研修講師の仕事も、表現することではなく伝達すること」だということも言う。その2つはどう違うのかというと、「表現」は相手に伝わっても伝わらなくてもいいのだ。ワーッと訳わからない雄たけびを上げたり、よくワークショップ参加者がやるように「花火!」と言ってぴょんと飛んだり、表現したいようにすればいいのである。それは「送り手中心」の表現、ともいえる。

 「伝達」はそうではない、受け手の受け取り方に絶えず注意力を向け、いかに効果的に伝えるか工夫を凝らす。戦略的な伝達、という言い方もできる。長い話より短い話、要点を先に言ったり、強調したいところで声を大きくメリハリのある発音をしたりして、受け手の記憶に残るようにする。


 人々の視線が自分に集中することを「楽しい」と感じはじめると、とにかく自分の話す時間を長引かせる。相手にとってどうでもいいことを話す、ねっとり情感豊かに、スピードがどんどんゆっくりになり、しかし受け手が疲れきっているのもおかまいなしに感情の押し売りをする、平坦でポイントのわからない話し方になり重要性にお構いなくあれもこれも付け加えるという話し方になる。


 「人前で話すこと」の快感に溺れてしまうようだったら、話し手としてまだ未熟だなあ。でもマネジャーの仕事ってしょっちゅう人前で話すはずなんやけど。


 だから、「社内講師をするようになるとマネジャーとしての力が落ちるかもしれないよ」ということをちょこちょこ書くんです。
 最近しばらくこの話題を書かなかったけれど周期的に必要ですね。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp
 
 

 NPO法人発達障害をもつ大人の会(DDAC)代表・広野ゆい氏へのインタビュー 第3回(最終回)です。

 実際に「発達凸凹」の部下がいたらマネジャーはどうしたらいいの?マネジャー側が「凸凹」だった場合には?
 誰もが気になる疑問に広野さんが真摯に答えてくれました。


広野ゆい氏にきく「凸凹の部下と凸凹の上司、どうつきあう?」

1.発達凸凹があっても職場でうまくやっていくには
■凸凹の概念で発達を説明する
■アポを忘れる営業マン―カギはメインの仕事ができるかどうか
■製造から介護へ、凸凹社会人の流入現象
■新しい枠が必要、正社員でも障碍者枠でも非正規雇用でもなく
■会社でうまくやっていくには自覚がポイント
■「私も仕事できない人だった」(広野)


2.見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり
■メンタルヘルス問題のかなりの部分が発達障害
■「できる部分」にしがみつく当事者
■当事者の集まりで初めて「ゆるむ」
■自己愛は発達障害なのか?
■「指摘されると切れる」敏感さから「出来ない」と認められる当事者コミュニティへ
■虐待、過干渉と発達障害
■DVと発達障害
■引きこもりと発達障害
■当事者の人生―趣味、コミュニティ、介護


3.凸凹部下と凸凹上司、どう付き合う?
■もし発達障害の部下をもってしまったら
■部下の発達障害に気づけないマネジャーたち
■「発達障害上司」は承認が難しい?
■「発達の問題」わかったら降格がベストか
■診断を受けてもらうことは役に立つか
■診断を受けてもらうトークとは


 
(ききて:正田佐与)



広野ゆい氏インタビュー「凸凹の部下と凸凹の上司、どう付き合う?」

3.凸凹部下と凸凹上司、どう付き合う?
■もし発達障害の部下をもってしまったら?

正田:これは是非お伺いしたいと思っていたんですが、あるマネジャーが自覚してない発達障害あるいは凸凹をお持ちの方を部下に持った。非常に仕事上支障が出ている。感情的にもこじれてしまっている。この場合マネジャーには何ができるんでしょう。

広野:まず、マネジャーの方がどうしたいか。その人に対して何ができると考えられるか。ですよね。「あいつ困るから自分のところから別のところに入れてくれ」という人もいると思うんです。

正田:多分よくあるんです。

広野:そうですよね。
 「何とか(自分のところで)したい」という場合には、やっぱり環境設定ですね。本人が自覚していなくてもできる対処というのは、ちょっとはあるんです。伝え方であったり、その人のミスを減らすようなシステムを全体で作っていくとか。そういう風に周りを少しずつ変えていくというのが、出来る範囲で出来ることの1つ。
 それで上手くいったときに本人がそれでちょっと「ゆるむ」とか、上手くいくことが多くなるということで、ちょっと上がってきたぐらいが本人に自分の特性について自覚をもってもらうタイミングなんです。一番最悪の時というのはほとんど何も受け入れないです。そこの時点でその人のメンターができる誰かを作るとか。マネジャーがそんなに信頼関係を結べるかというと、難しいことも多いと思うので、できればちょっと離れた人がメンターとしてその人と関わるということができれば、そこが突破口になります。

正田:家族で言えば親戚のおじさんおばさんみたいな存在ですね。

広野:そうです。隣の部署の仲のいい人とか、前の部署の自分のことをわかってくれた人とか、直で評価される関係ではなく、ちょっと離れたところの人に本人が何を困ってるのか、何にこだわってるのか、とかを拾い出せる人がいると、そこはアプローチがし易いかなと思います。本人がなんでそれにこだわってるのか、なんでそういう風になっちゃうのか、また本人が自分のことをどう思ってるのか、そういうことをどこかで情報が入ってくれば、対処の方法が見つかる可能性はあると思うんです。
ですから、直で何かできるというよりも、周りからやっていくという感じでしょうか。
直でやればやるほどお互いストレスが溜まると思います。

正田:そうでしょうねえ。

広野:「同じ部屋にその人がいるだけで全然何もできなくなる」っていう人が結構います。
余計こじれちゃう。

正田:はい、はい。

広野:そこは、(直属のマネジャーは)遠いところから見てやっていくと。
 あとは、抱え込まないことでしょうか。そこだけで困っているとすごくストレスが大きいですよね。その問題をみんなで共有して、「みんなで何とかしよう」という感じに持っていけるとまだいいのではないでしょうか。

正田:多分、何が起こっているかを正確に言える人はマネジャーでも少ないです。腹が立っちゃうと、やっぱり物事を歪曲して伝えたりしますよね。感情を交えて伝えたり。

広野:うんうん。


■部下の発達障害に気づけないマネジャーたち

正田:人の個別性を感じる力のある人とそうでない人、マネジャーでもすごく差が激しくて、私の知っているマネジャーでも、みんなが発達障害と知ってる部下をひどく怒ってるとか。「怒ってもしょうがないんですよ、そういう人なんだから」と言ってあげても分からなくてキレちゃうみたい。またあるマネジャーは発達障害の部下に「君はもっと感情を素直に出したほうがいいよ」と説教するらしいんですけど、「どういう感情を感じていいかわからなくて戸惑ってるんじゃない?」っていう。

広野:そうですね、そうですね(笑)
私たちからみると、私たちをいじめる人たちっていうのもそういう傾向がある方なんですよ。人の立場とか人の気持ちとか若干分からないんだけれども出来る能力を活かして活躍されているから、そこは誤魔化されて見えなくなっているという。

正田:それすごくわかります(笑)

広野:まさか、「あなたもそうですよ」とは言えないんですけれど、ちょっとずつ知っていく事によって気づいてくれたら有難いですね。気づかなかったら、その方(上司)がそういう方だということでこちらも対処していかないといけない(笑)

正田:(笑)ああ良かった、今日広野さんとお話して「これだけ共通認識を持てるんだ」と思いました。すごくほっとしました。
 あまりこの問題は綺麗ごとで話せないので。

広野:そうですよね。当事者同士の話でもかなり厳しいですよ。
「その職場はあなたに合ってないから辞めたほうがいいよ」って当事者同士だと平気で言うので。
 お給料が下がっても自分に合った仕事をやった方が幸せだと思うんですよね。みんなでそういうことを共有することによって「あ、そうだね」となる人もいますし、それは会社に言われるよりは当事者の同じような目に遭っている人に言われたほうが、すっと入っていくと思うんです。

正田:うーん、だと思います。


■「発達障害上司」は承認が難しい?

広野:ややこしいのはやっぱり自己愛傾向が入ってるタイプですね。

正田:どんなケースがありますか。

広野:(上の人が自己愛入ってる場合)上の人も、下の人が何を考えてるかを特性上全然分からない上に、分かりたくない。怖いんですよね。

正田:怖い。

広野:上であっても、言うことをきいてもらえない、イコール「否定された」。否定されたくないんですよ、結局は。上も下も否定されたくない(笑)
 そういう場合は、その人の自尊心をくすぐるような言い方とかやり方で、「あなたのお蔭でこの人がこう良くなるから、それはあなたの成果だから、こうしたらどうか」という提案をしてみるとか。「これはダメだからこうしなさい」じゃなくて、「こうするとあなたの評価は上がりますよ」とか、そういう言い方だと聴いてくれるかもしれないです。

正田:なるほどー。
 実は「承認研修」のようなことをもう12年やってきまして、多分定型発達の上司の方だと特別難しいことをやっているわけではなくて、ほとんど誰でも習得できるようなことなんですが、やっぱり発達障害入ってる上司の方にとっては難しいことのようで、「あなたは何々をやりましたね、やってきましたね」と相手の文脈を認めることが難しいみたいなんですね。

広野:ああ。やっぱりそれは特性ですね。

正田:で、自分が習得できないって思うと怒りが湧いちゃうみたい。研修の中でも怒ってきたりとか、言いがかり的なクレームをつけたりとか、あるんです。私、長いことその問題で悩んできていて、「この簡単なことを出来るようになれば皆さんが幸せになるよ」ということを教えに来ただけなのになんで「自分が否定された」みたいに思っちゃう人が出るんだろうと不思議で不思議でしょうがなかったんです。割合最近になって「否定された怒りが湧くほうの人って発達障害的な人なのかしら」と。

広野:可能性はありますね。ちょっと分からないと「そんなのは要らん!」みたいな。

正田:そうそう。「こんなものはただの人情噺だ!」みたいな。

広野:ああ、はいはい。…なりますね(笑)
 先生などにも多くって、子供が潰れちゃうんです。

正田:ですよね。

広野:ですのでその人が理解できるようなやり方。…まあ、その人が本当にその部分が出来ないのであれば、「この部分はこの人に任す」とか、ほかの人に介入してもらう方法があるかなと思います。それを本人が「否定された」とか「出来ないから頼まなならん」という感覚にならないように上手に、「あなたは忙しいからここまで出来ないから、じゃあ部下のこの人のお仕事にしよう」という感じでやっていくのは「あり」かな。
 無理に(承認を)しようと思うと、「脳が疲れる」んですよね。

正田:ああ。はいはいはい。

広野:動かない部分を無理やり動かそうとするので、脳が疲労するんですよ。そうするとイライラしたり、抑鬱状態になったり、色んな支障が生じてくる。
 「この部分が難しいのであれば、こうしたらいいですよね」というのがいくつかあると、対処できる可能性はあります。それを「上手に投げる」ということも、その手法の中の1つですよ、みたいな感じでマニュアル化してしまう。そうすればその人は「じゃあ自分はこれを選ぶ」と、自分で納得して選んだことは特に騒がないので(笑)

正田:なるほど、なるほど。
 すごい貴重なヒントをいただきました。長年悩んでいたことなので。
 人事の人が「承認研修をこの人には受けてほしい」という人ほどそうなんですよ。


■「発達の問題」わかったら降格がベストか


広野:そうですよね。
 実績を上げるということができても、人と関わることが難しいという人がやっぱり一定数いますので、その人たちをどう使うかですよね。昇進させないならさせないで。


正田:難しいですねえ…。
 会社の昇任昇格試験の中に発達に関するちょっとしたテストを入れたほうがいいんじゃないかと、今思ってしまいました。

広野:それはありますね。
 ただ、それを克服できる方もいるんです。

正田:ははあ、それはテスト勉強で。

広野:テスト勉強というより、失敗から学ぶ能力。私もそうなんですけれど、実際の学んでいくときの失敗が必ずあるんですが、「なんで自分は失敗したのか」ということを客観的にみて改善していくことができるかどうか。失敗して学ぶということを経験したときに、それを認めないか、それとも認めて直せるか。

正田:私も仕事上で失敗を認めない人と色々もめています(苦笑)

広野:そうですよねえ。昇任試験…の前に(発達障害が)分かったほうがいいですね。
 アスペルガーの人で賢い人というのは、「こういうときはこうする」ということを学ぶことはできるんです。試験勉強はして、通るんです。表面的なやりとりも、決まってることであればそれはこなせるんです。だから、試験でしたらそれをクリアできる可能性は高いと思います。試験勉強しちゃうと。
 逆に試験勉強しなかったら、できないと思うんですけれど。
 実際の現場に入った時に(障害や凸凹が)発覚するケースがほとんどだろうと思います。その場合は、何かトラブルがあったときにそれでも分からなければ降格、というシステムを作るのが大事かなと。

正田:大事ですね。下の人を鬱にしてしまうと、本当に人生が破壊されてしまいますから。

広野:そうなんです、そうなんです。
 トラブルの当事者が色んな部署を経験してきている場合、問題が起きたら多分よその部署でも問題を起こしているはずなんです。問題を起こしてなかった部署でも、誰かがフォローして上手く行っていたケースがあると思うので。ちょっと深くみていくとそれも見えてくると思うんです。だから、どっちに問題があるかというのは今までの経験を丁寧にみていくと分かってくると思います。客観的な判断のラインがあるだろうと思います。
中には自分で気づいて修正していける人もいます。例えばビル・ゲイツさんもアスペルガーですよね。それがあるからダメ、と言ってしまうのは問題です。


正田:なるほど。発達の問題があるかどうかというより、失敗や問題から学ぶ力があるか、ということですね。



■診断を受けてもらうことは役に立つか

正田:どうなんでしょう、この方々がご自身の発達凸凹を認めるには、「凸凹がある」ということを分かるだけで十分なんでしょうか、この方(営業マン)などは(発達障害の)診断を受けたということですけれども。診断は役に立つんでしょうか。

広野:診断は、そうですね…。ADHDの場合は、薬もありますので診断を受けたほうがいいかもしれません。

正田:ああ、なるほど。

広野:その人の程度にもよるんですけれど。
 最初、私はすごく鬱だったんですね(笑)ですのでADHDの治療を受けに行くときは鬱の治療からやったんですけど、私自身は鬱の自覚はまったくなくて。

正田:朝起きられないとか。

広野:そうですね、それも子供のころから苦手でした。失敗も子供のころからしているし。ただ鬱がものすごくひどくなってご飯も碌に食べれてないし、ちょっと動くと疲れて寝ちゃったりしてたんです。自分のことを全然客観的に見れてないんです。だから「鬱です」って言われて「えっ!鬱じゃないです」とか(笑)ずーっと先生とそういうやりとりをしていて。
 ただ鬱の薬を飲んでいると薬が効いてきてご飯が食べられるようになって、「死にたい」とか「生きていたくない」という気持ちが無くなっていったんです。それは多分お薬が効いたせいだと思うんです。
 それで元気になって、自助グループをやっていけたんです。
 やはり診断がなかったら難しかったろうな、と。やっぱり二次障害ですね。私の場合は鬱ですし、強迫であったりパニックであったり不安神経症であったり、色んなものを皆さん持っています。それは診断してもらい、自分の特性を分かり、さらに二次障害の治療をしてもらうと大分よくなる。その点で診断はしてもらった方がいいと思います。
ただ、それができる先生があまりいないんです。発達障害が診れて、大人の発達障害の二次障害も診れる、という先生が。ほとんどいないですね(笑)

正田:そうなんだ…。

広野:そうなんです。当事者会の中でお話することによって「こういう症状にはこの薬が効くよ」といった情報を得たうえで先生ともやりとりする、っていう。

正田:なるほど、患者さんの方から「先生この薬がいいと思うんですけど」っていう(笑)

広野:そうです。それを聴いてくれる先生と付き合っていける、というような。

正田:ちなみにどこの先生がお勧めってありますか?

広野:実は大人の発達障害を診られる病院はまだほとんどありません。
 発達障害を診るためには発達障害児の臨床経験が必要ですが、精神科の先生のほとんどはそれがありません。また発達障害児を専門に見ていた先生は大人の精神疾患が分かりません。
 そして発達障害に効く薬というのがあるかというと、そんなに直で効くお薬というのは、ない。二次的な鬱とか不安とかが軽減されると、改善することはあります。それでとりあえず対処してもらうという感じでしょうか。
 (私の場合)お医者さんは、自分が良くなるためにサポートしてくれるその一部だったんです。二次的なもので何か(鬱などを)発症しているときには指摘してもらって薬をもらうというのはすごく必要なんですけれども、(社会適応を)上手くやっていくときというのは自分で色々やっていかなきゃいけない。
 でも一番最初の訳わかってないぐちゃぐちゃな時というのは、医療の手助けが必要かと思います。あまり大量にお薬を出さない先生だといいですね。

正田:よく、発達障害がベースにある鬱は治りにくいと言いますでしょう。で、お薬をどんどん増やしちゃうという。

広野:ベースの発達障害が診断されていない場合はそうだと思いますが、発達障害がわかっていれば、私は逆だと思います。というのは、私もそうだったんですけれど、今思えば高校生ぐらいからずーっと抑うつ状態できているんですけど、逆に今は深刻な状態にはならないです。仲間がいっぱいいるし。

正田:それは支えになっておられるという面があるんですか。

広野:すごくありますね。だから薬よりもまず仲間。医者の診断よりも仲間の診断のほうが確実やし(笑)そういうコミュニティとつながることができるとどんどん元気になっていくんですよ。お医者さんとか薬(のサポート効果)というのは一時的で、それが助けてくれるのは本当にわずかです。一部分です。
 生活全体にわたって、長期にわたってのサポートとなると、それ以上の何かが必要になります。病院は、だから私的には「上手に使う」という感じ。
 そういう風に、(当事者のコミュニティの支えがあると)鬱は治っていきますね。
 ただ、躁鬱を同時に持ってらっしゃる方は難しいですね。

正田:難しそう。

広野:それはでも、発達障害とは別の物なんです。発達障害がベースにあって、ストレスがほかの人よりも多いことによって、双極性障害を発症したということは言えるかもしれないと思うんですけれども。発達障害だから双極性になるわけではない。そこは診立ての間違いだと思います。なんか調子よくなってきたなーと思ったら、またがーっと落ちてきて、というのは大体躁鬱なんですね。
 ただね最近思うのが、なりやすいなというのはすごく感じてます。双極性に。発達の傾向がもともとある人が二次障害という形で双極性障害、気分の浮き沈みが定期的にやってくるというのを発症してしまって、ずっと繰り返しているというケースは非常に確かに多いなと。



■診断を受けてもらうトークとは

広野:特性のかなり強い方は、できれば手帳を取ってもらって地域の支援と繋がってもらうというのが必要かと思いますけれど。そこはやはりその方の困難のレベルですね。

正田:手帳をとってもらって、というそこの手続きは、どれぐらい大変なんだろう。
 例えば50人未満の会社ですと、産業医さんがいないんです。上司が自分で(診断を受け手帳をとるように)言えるかといったら…。

広野:言えないでしょうね。その部下の方はだいぶコミュニケーションとかが難しいタイプですか。

正田:ものづくりなので、決まったことはやれるけれど、やっぱり先ほど出た、今どきの問題で小回りが利かないと困った問題が出ている。
 また休憩時間を勝手な時間にとってしまうとか。

広野:ああ、なるほど。年齢を考えると難しいですよね。

正田:ほんとに難しいですね。

広野:ただね、手帳を取るということに関しても抵抗がすごくある方とそうでない方といる。「取ったほうが楽だよ」と言われたらポーンと取る方もいるんです。

正田:ほう。

広野:だから一概に「そんなこと言ったらどんなトラブルになるか」と思わなくても、「しんどいとか困ってるんやったらこういうやり方もあるよ」という投げかけの仕方で、(受診に)行ってもらうのは「あり」だと思うんです。

正田:なるほど。

広野:そこは、こちら側がじょうずに。
 特に、依存的で「楽になりたい」という人は飛びつくかもしれないです。そこは本当に相手の特性とか性格によりますね。「助けてもらいたい」「話を聴いてもらいたい」と思っていたら、「手帳を取ることによってこんなこともしてもらえるしあんなこともしてもらえるよ」と言うと結構すんなり行っちゃうこともありますね。

正田:「こんなこともしてもらえる、あんなこともしてもらえる」って例えばどんなことですか。

広野:例えば、障害者地域生活支援センターというのが地元に絶対あるはずなので、そこに行ったら支援員さんとかが話を聴いてくれますし、市の保健所とかでも保健相談の中で、そういう生活の中で困っていることや今後の不安を聴いてくれてそういうところ(センター)へ繋げてくれるということがあります。そういうところに行くのも1つの手です。
 必要があれば、会社から保健所に連絡してもらって、ということも「あり」かな、と思います。

正田:はあ。それは本人さんに診断を勧める前に、ですか?

広野:そうですね、診断しなくても使えるサービスもありますし。そして「こういうサービスが受けられるメリットがあるから病院行ったら」と言ってあげると、多分本人も行きやすいと思います。
 ですから「病院ありき」というよりは、「これがこういう風に良くなる」「こういうメリットがある」から、手帳を取る、病院へ行く、と考えて勧めると、まだうまくいく。「病院へ行く」ということを目標にしてしまうと、「なんで?」となる(笑)
「なんでオレが病院行かなならんねん」となるとうまくないので、「このサービスを受けるためには医師の診断が必要だから診断書を書いてもらうために行ったらどうか」と、そういう目的やったら行くかもしれない。
 その人がその気になるポイントというのは、人によって色々なんですけど、ポイントを探していったら行けるかもしれない。

正田:ここに戻っちゃいけないのかもしれないけれどやはり「診断」ってネックで、診断を受けてもらうための上司のトークというのが難しいですよね。言い回しをどうしたらいいんでしょうか。

広野:その人のタイプを大まかにきいて、「こういう言い方をしたらどうですか」ということは、私も大体アドバイスできるんです。

正田:ほう。それは福音かもしれない(笑)

広野:詳しい情報、普段のその人との会話とか行動とか、こういう言葉でどう反応するとか、からある程度そこはできることもあります。
 思考回路がちょっと普通の人と違っていて、どういう育てられ方をしてきたか、どういう仕事をしてきたか、またはその人の価値観などでちょっとずつ思考回路が違ってくるんです。そしてこだわりの強い方だったら、どこにどういう風にこだわっているのかを分かることによって、その人の考え方をある程度変えていくことができる。

正田:これを公表したら広野さんに問い合わせ電話がバンバンかかってきちゃいそうです(笑)
 今日はどうもありがとうございました。


(終わり)



広野ゆい氏にきく「凸凹の部下と凸凹の上司、どうつきあう?」

1.発達凸凹があっても職場でうまくやっていくには
■凸凹の概念で発達を説明する
■アポを忘れる営業マン―カギはメインの仕事ができるかどうか
■製造から介護へ、凸凹社会人の流入現象
■新しい枠が必要、正社員でも障碍者枠でも非正規雇用でもなく
■会社でうまくやっていくには自覚がポイント
■「私も仕事できない人だった」(広野)


2.見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり
■メンタルヘルス問題のかなりの部分が発達障害
■「できる部分」にしがみつく当事者
■当事者の集まりで初めて「ゆるむ」
■自己愛は発達障害なのか?
■「指摘されると切れる」敏感さから「出来ない」と認められる当事者コミュニティへ
■虐待、過干渉と発達障害
■DVと発達障害
■引きこもりと発達障害
■当事者の人生―趣味、コミュニティ、介護


3.凸凹部下と凸凹上司、どう付き合う?
■もし発達障害の部下をもってしまったら
■部下の発達障害に気づけないマネジャーたち
■「発達障害上司」は承認が難しい?
■「発達の問題」わかったら降格がベストか
■診断を受けてもらうことは役に立つか
■診断を受けてもらうトークとは






※2015年春、インタビュー第二弾
b>広野ゆい氏にきく(2)発達障害者マネジメントの「困った!」問答


1.「一律」になじまない現実と付き合う
■メンタルヘルス問題に「発達障害」の視点がない
■「軍隊式マネジメント」はなぜ存在するか
■5Sに「発達障害」の視点を入れると
■全体の質低下を防ぐには
■「発達障害」と昇進昇格と嫉妬


2.「弱みの自覚」のむずかしさと大切さ

■自己診断にチェックリストは有効か
■若い人の成長過程のむずかしさと自己認知
■適性のない仕事についていたら?
■「強みを活かす」の限界 弱みの自覚の大切さ
■感情表現(Iメッセージ)の壁を訓練で乗り越える


3.発達障害者マネジメントの「困った!」問答

■管理職研修と発達障害
■ASDの人の固定観念と性バイアス
■ADHDは薬で改善されるか
■告知はどんな言い方が有効?
■ADHDの人が自己判断で仕事をしたら




あとがき:
このインタビューを行ったのは10月6日。

これまでの人生、とりわけ仕事人生の中でのあんな場面、こんな場面は「発達障害」が関わっていたのだろうか、と思いをめぐらしながら録音を起こしていると、起こし作業がどんどん遅くなりました。

広野さんにも原稿に手を入れていただき、やっと1か月後の今、公開できました。


その間、新著『行動承認』が出版されましたが、その新著がマネジメント全般にまたがる手法をご紹介しているといいながら、「発達障害」に関しては紙幅の関係で中途半端にしか触れられなかった、その問題があるがゆえに本書の手法を実践してみても成功しない人がいるかもしれない、といささか後ろめたさを感じています。


この分野この問題に気づいている精神科医や心理学者、臨床心理士はまだわずかで、人材育成やマネジメントの分野の人で気づいている人は皆無に近い状況です。
いささか傲慢な言い方をするなら、わたしたちは「承認」というなまじよく切れる鋏をもってしまったがゆえに、それでも「切れない」人々の存在に敏感にならざるを得なかったかもしれません。


参考記事:
「1つのまとめ 1位マネージャー育成と発達障害はどう関連するのか」
http://c-c-a.blog.jp/archives/51884908.html


そして今回のインタビュー後も、以前ブログで取り上げた「依存」の問題など、積み残しの問題が出ました。
定型発達者の「可塑性」とどう折り合わせていくか、というのもクエスチョンのままです。
まだまだ、この分野で考えていかなければならないことができました。

広野さんには「第2ラウンドも是非お願いします」とお伝えしました。



ブログ読者の皆様も、是非ご一緒に考えていただければ幸いです。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

 NPO法人発達障害をもつ大人の会(DDAC)代表・広野ゆい氏へのインタビュー 第2回です。

 今回は、まだ新しい概念・発達障害/発達凸凹が、いかに多くの問題に関わっているか、問題解決のために欠かせない視点であるかについて。


広野ゆい氏インタビュー「凸凹の部下と凸凹の上司、どうつきあう?」

1.発達凸凹があっても職場でうまくやっていくには
■凸凹の概念で発達を説明する
■アポを忘れる営業マン―カギはメインの仕事ができるかどうか
■製造から介護へ、凸凹社会人の流入現象
■新しい枠が必要、正社員でも障碍者枠でも非正規雇用でもなく
■会社でうまくやっていくには自覚がポイント
■「私も仕事できない人だった」(広野)


2.見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり
■メンタルヘルス問題のかなりの部分が発達障害
■「できる部分」にしがみつく当事者
■当事者の集まりで初めて「ゆるむ」
■新型鬱と発達障害
■自己愛は発達障害なのか?
■「指摘されると切れる」敏感さから「出来ない」と認められる当事者コミュニティへ
■虐待、過干渉と発達障害
■DVと発達障害
■引きこもりと発達障害
■当事者の人生―趣味、コミュニティ、介護


3.凸凹部下と凸凹上司、どう付き合う?
■もし発達障害の部下をもってしまったら
■部下の発達障害に気づけないマネジャーたち
■「発達障害上司」は承認が難しい?
■「発達の問題」わかったら降格がベストか
■診断を受けてもらうことは役に立つか
■診断を受けてもらうトークとは


 
(ききて:正田佐与)




広野ゆい氏インタビュー「凸凹の部下と凸凹の上司、どうつきあう?」

2.見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり
■メンタルヘルス問題のかなりの部分が発達障害


広野:(企業の理解がないことで)本人が病気になって辞めることもあるし、周りの人が何とかしようとしすぎて病気になってしまったり。

正田:それはありますよね。それは本当にお気の毒な話で。

広野:やっぱり理解が進まないことによって、企業にとってコストとしても負担だし、精神的にも職場環境がいい方向に行ってないと思うんです。まずこれを分かるということで、全部じゃないけど何割かは解決できるんじゃないか。

正田:やっぱりそうですか。今メンタルヘルスと言われている問題は今「何割か」とおっしゃいましたがかなりの部分、発達障害かその周囲の人か、どちらかの問題ではないかと思っていました。

広野:ええ、ええ、そうですよね。ただ、今のメンタルヘルス対策の中に発達障害のことってあまり考慮されてない気がするんです。

正田:そうですよね。

広野:(職場で)直で関わっている方は気づいていると思うんです。ただメンタルヘルスと発達障害、発達凸凹の関係というのがしっかりとリンクしていて、なんでメンタルヘルスの問題が発生してしまうのかということでこういった特性のことも考えられる、という流れにはなっていないような。
 そこは今、大きな課題なのではないかと思いますね。

正田:今のお話、私なりの言葉でまとめさせていただくと、まず発達障害、発達凸凹の方は元々ストレス耐性の割合低い方々なんでしょうね。かつ仕事上の問題で無理解な上司の方から叱責にあう機会も多い。非常にメンタルヘルス(疾患)になりやすいリスクを持っていらっしゃる。そういうその方々ご自身の問題が1つと、その方々が無自覚にある部分のお仕事の能力が欠落しているために、周りの方々がフォローに追われる。なのにご本人さんはそのフォローする大変さがわからないし、本人さんからあまり感謝の言葉がないと、そういうことで周りの方を心の病気にしてしまう。

広野:そうですね。教育が画一的なものを目指して「普通になれ」ということを目指して教育がなされてますよね。点数さえ取れば許されるんですよね。それで人の気持ちがわからなくても、みんなと上手に色んなことが協力してできなくても、点数さえ取っていたら見逃されてきてしまう。そういうことがあって、ところが実際お仕事を始めるときというのは、ほとんどが人とのやりとりで結果を出す、ということですので、そこでものすごく支障が出てくる。ストレス耐性が低いというよりは、いろいろなことに過敏すぎてストレス過多になりやすく、余裕もないし成果も出ない。だけどそれは、認めたくないんですよね。成績がいいということにしがみついてずっと生きてきているので(笑)


■「できる部分」にしがみつく当事者

正田:ははあー。やっぱりそこ(しがみつく)はご覧になっていますか。問題の当事者の方に自覚がないということがこの問題をすごく難しくしているように思いますが。

広野:そう、自覚がないというより自覚したくないんですよ。認めちゃうと、皆さん感じてるのはものすごい恐怖感なんですね。ダメな人間と思われたくない。やっぱり「認めてもらいたい」んです。
 本当は、「ここはできないけど、ここはできるんだね」という認められ方を人間はしてもらいたいと思うんです。「あなたはこういう人なんだね」と、丸ごとみてくれて、その中で「じゃああなたができる仕事はこれだね」という認められ方をしたい。特にその凸凹の大きい人は必要としていると思います。
 だけどできる部分だけにしがみついて、できない部分を隠して隠して生きてきた人にとっては、ここは絶対に見せてはいけないというか、認めてはいけないところなんです。ここが崩れると全部が崩れちゃう(と思いこんでいる)からなんです。

正田:はい、はい。

広野:薄々、何かみんなよりはできないとわかっていて、迷惑かけているかもしれないとわかっていたとしても、ここ(できること)を守るために、ここ(できないこと)は認めないということがどうしても起こってしまうんです。
 そして仕事になると「辞めさせられるんじゃないか」、また「ここを辞めたら就職ができないんじゃないか」とそういう恐怖感はものすごくあります。そのへんは発達障害の問題というよりは、発達障害の人が障害があることによって生じる二次的な「認知の歪み」とみることができると思うんです。
 というのは、すごく凸凹が大きくても「ここは自分はできないからやめとこう」「ここは自分はすごくできるからどんどん頑張ろう」と頑張って、ものすごい能力を発揮されている方も中にはいらっしゃいますので、そのあたりはどういう風に育ってきたか、どういう風に周りがその人と関わってきたのか、ということがすごく大きいと思います。
 でも、会社員になってから子供の頃のことまでどうにかするというのは難しいですよね。

正田:その「全人的に認めてあげる」というのは、仕事の中では難しい…。私も教育として「認めるって大事だよ」とお伝えしてはいますけれど、いざその場面に立ち会ったときに、「でもこの場面でこうしてくれないと困るよ!」と心の叫びみたいのが出てきちゃったりして。


■当事者の集まりで初めて「ゆるむ」

広野:そうなんです、ええ。
 結局、会社だけでそれをやるのは難しい。私たちのやってる活動は、やはり当事者活動なんですよね。当事者だけで集まって、「実は自分はこういうことができないんだよね」と言ったときに、「あ、実は自分もできないんだよね」と共有しあって、「あ、自分だけじゃないんだな」ということを感じてもらって、ほっとしてもらう。そういうことがないと、何というか「(警戒が)ゆるんでこない」と言いますか。

正田:「ゆるむ」というのはそのすごい恐怖感ですね。ははあ。

広野:その段階があって初めて、じゃあできなかったらどうすればいいの?という次の段階ですね。そこに行くときにそこで集まっている人たちのリソースと言いますか、「自分はこうしてるよ」とか「こうしたらいいんじゃない?」ということをみんなで考えることがすごく役に立つんです。そういう当事者活動というのが、その人が色んなことを受け容れて、さらに外の人にどう説明したらわかってもらうのか、とそういうことを自分で学んでいくための学習の機会でもあるんですね。
 そういう場があることで、会社でももう少しうまくやっていける、というケースも結構あります。
 だから会社で全部やるんじゃなくて(笑)、そこは会社以外のところでそういったところを作っていく、というのも必要だろうと思います。

正田:それでそういう当事者活動を続けていらっしゃるんですねえ。尊いこと。
 やっぱりその経路じゃないと難しいんだろうな、と思います。マネジャー教育の側からやってきて。

広野:そうです。私たちが今やりたいと思っているのは、継続して当事者同士が学び合う場をつくるということと、もう一つは会社の方に理解を進める働きかけをすること。こちらで当事者の自己理解が進んで「自分はこういうタイプだからこういう風にしてほしいんです」ということが言えるようになったときに会社側が「いやいや、うちのやり方はこうだからこういう風にしてくれなきゃ困るよ」と言われると、もうそこでストップなんです。
 
正田:会社が、みんなが一律にじゃないとダメだ、と。

広野:そうです。その人がどうだということを無視して「こうでなければならない」という会社だと、やっぱり私たちとしては難しい。自分のことがわかって、工夫したいと思っていてもできないんです。

正田:例えばの話、5S活動にすごく力を入れている会社だったら机の上がみんなきれいに物ひとつない状態でないといけない、それも自分でできないといけない、とか。

広野:ええ、ええ、そうです。
 企業さんにも「こういう人がいるんだよ」ということを理解していただかないといけないですし、場合によっては「この人はこういうタイプなんですよ」と間に入ってやっていかないといけないこともあります。そういうコンサルティング的なことが今後できたらいいと思っています。やりたいなと思っている段階ですね。

正田:そうですか、そうですか。
 その「間に立つ」というのは例えばジョブコーチとか、今まである既存の資格というか職種ではなくて、ですか。

広野:ジョブコーチの制度というのがあんまり私も詳しくないんですけれど、基本的には対象が障害枠の方ですよね。一般枠でそういう問題が起こったときにジョブコーチさんが行くっていうのが、実際どのぐらいあるんでしょうか。

正田:いや、きいたことないです(笑)


■新型鬱と発達障害

広野:あとは、今言われている新型鬱ですね。

正田:はいはい。それもおききしようと思っていました。

広野:あれは、苦手なことをお仕事だとどうしてもしなきゃいけないですよね。ちょっとでも苦手なことをさせられるということ自体が、ものすごい恐怖とストレスに結びついているんです。だからお仕事がそれに直結しているというよりは、お仕事の中で自分の苦手な部分というのを、まあ分かっていないんです、本人も。何でか知らないけれど責められる、怒られる、と思っているから、だからお仕事イコール自分に何かダメージを与える脅威的なもの、という風に受け取っちゃってるので。一種の防衛反応かもしれません。
 自分がどういうタイプで、できる部分がこういう仕事だったら活かされるよ、ということが分かってくると、まだましにはなるかなと思います。
 でも例えば、間違って正社員になっちゃって色々やらされて、そして「正社員という立場をどうしても守りたい」となっちゃうと、厳しいですね(笑)お仕事はしたくないけれど、正社員は辞めたくない。「それはおかしいよ」ってみんなに言ってもらって「そうやね」となる人はいいんですけれど。そこの部分にこだわっちゃってる人はちょっと難しいですね。しかも結構多いですね(苦笑)特にASDのこだわりの強いタイプの方は。ゼロ100で、「これがあかんかったらもう自分は生きていけない」と思いこんじゃってると、そこを変えていくというのはちょっと力技と言いますか。
 そこで当事者のグループにポンと行ける人はまだいいんです。問題は行けない人です。
 どのぐらいの人がそう(新型鬱に)なるのか、というのは見えてはいないんですけれども。というのは来てくれる人としか関われないので。

正田:そうですよねえ。

広野:でもまあ、会社の方からの相談というのもちょこちょこある中で、その問題が非常に多いなあという実感はあります。

正田:(発達障害を)自覚してない新型鬱ということですね。

広野:そうです、本人が認めないとか。未熟なパーソナリティや認知の歪みも関連しています。

正田:私らの世界でも「エステに行くのは美人」っていう言い方をするんですけど(笑)マネジャー教育の門戸を叩いてくれるのも比較的ましな方のマネジャーなんです。

広野:そうですよね(笑)
 ただ、その課題よりもまだまだ簡単に解決する課題があるはずや、と思っています。まずそこを何とかしていきながら、最終的にその部分を(取り扱う)、っていう。
 自己愛の問題とかは根っこが深いんです。多様性を認められる社会であったり、本当にその人の特性とか個性が尊重される教育、そういうことが整備されないとそういう人はいなくならないと思うんです。
 今困っている会社の人がそれに対してどうできるか、というのは、本当にひどい場合は本人よりも周りの人のメンテナンスにエネルギーを使ってくださいと言うしかないこともあります。



■自己愛は発達障害なのか?


広野:でもね、本当にややこしい人はこういう会に来ないんですよ。ほんとに(笑) この人に来てほしい!という人に限って、行ったら向き合わなきゃいけないから。だから来れる人というのは、変わる可能性がある方だと思っていいと思います。問題は来れない人ですね。

正田:そうですねえ…。自分は絶対そんなものじゃない!っていう。

広野:そうです、そこは大きな課題なんです。そこは認知の歪みに関わる部分です。発達障害よりもパーソナリティー障害の域に入ってますね。みてると。

正田:あのね、パーソナリティー障害との関係でとてもお伺いしたかったことがあるんですけど、「自己愛性人格障害」ってありますね。最初は「自己愛だろう」と思ってみていった人が、なんか能力の欠落的なものを持っていて発達障害的なものを抱えた人なんじゃないだろうか、ということがあるんですけれど。

広野:ありますよ。

正田:あ、そうですか。

広野:かなりありますね。でね、発達障害だと気づいた時にどう対処するかで、本物のパーソナリティー障害なのか、ただの発達のむずかしいタイプなのか、が分かれてくるように思います。

正田:ははあ…

広野:小さいころどうだったかをおききしたり、普段の生活がどうなってるのか、その方の思考回路がどうなってるのかを聴いていくと、その辺は大体わかるんですけど。

正田:これって、まだどこの教科書にも書いてないですよね。発達障害の本にも自己愛の本にも書いてないですよね。

広野:ああそうですね、当事者はみんなわかってますけどね(笑)というのは、やっぱりこれ(発達)を知ることによって「自分は変わった」という人がいっぱいいるんですよ。



■「指摘されると切れる」敏感さから当事者コミュニティで「出来ない」と認められるように

正田:広野さんすごいドラマチックだったんだなあと思いますけど、最初ADHDとアスペルガーの傾向があって「仕事出来ない」って言われて、でもあるとき気がついたことで今がおありになって。広野さんの中でそれはどんな変容だったんですか。

広野:そうですね。私の中でつねに「存在不安」というんですか、「自分は何の役にも立たないし居てもしょうがない」という感覚が根っこのところにあるんです。自己否定ですよね。じゃあそれで全部だめになっていくかというとある部分では出来る部分もあるので、それで出来ない自分のことを「守る」。
 大嫌いなんですよ、自分のことが。生きてるのもしんどいくらい。それを認めたくない、認めてしまうと生きていけない。そのために堅い殻のようなものを作って、「自分はこういうことをやってるんだから、あとのことはやらなくてもいい」とか、自分のことを評価してくれる人の話しか聞かないとか。そういうことをしてると何とか生きていける。
 薄々「みんなに嫌われてる」って思っても、認めてしまうと生きていけない。なのでそれはもう見ない(笑)そういうのが私の20代ぐらいの状況ですね。

正田:なんだか信じられない…。

広野:ADHDって分かったときに、「原因があるなら何とかできるかもしれない」と思ったんです。

正田:はあ。それもまた前向きな(笑)

広野:本当に(笑)生きててもいけないし、死んでもいけないんですよ、私的には。どうしたらいいか分からない。
 でも「何か原因があってそうなってしまってるんだったら、何とかできるかもしれない」という思いで色々調べたり仲間に会いに行ったりし始めたんです。
 それをし始めたら、同じようなことで困ってる人がいっぱい集まってきていて、話が合うんです(笑)「自分はこう思ってるんだけどそれは分かってもらえない」とか、「自分だけじゃないんだな」というのでまずほっとしていて、まずそこが出発点なんです。
 そして自分でこういうグループを作ったことによって、そこに来た人たちを否定できなくなっちゃったんです(笑)ここに来てくれた人には元気になってもらいたいし、みんなで仲良くなって一緒にいい方向に行きたい、と思うじゃないですか。そうするとその特性を否定するわけにはいかない。
 するとその仲間に対して、「ここは出来なくてもこういうやり方したらいいんじゃないかな」とか、「そこは生まれつきやし諦めも必要だよね」などと言っているうちに、だんだん自分でもそれを受け容れられるようになっていった。

正田:へえ〜。人に言う側になって自分の言うことを受け容れられるようになった。

広野:そうです。だからこれも訓練なのかもしれないと思います。

正田:訓練なんでしょうねえ…。
 よく発達の特性のある人にあるのは、「あなたこれができないよね」って言われるだけでギャーッと、心の傷がばくっと開いちゃうみたいな。いっぱいいらっしゃるでしょう?

広野:そうなんです、そうそう。
 それがそこのグループだと、「これが出来なくって」というと「私も私も」って言うんです、みんなが。そうすると、「あ、なんだみんな出来ないんだね」(笑)それで一気に「責められないんだ」という感覚になるんです。
 普段は「責められる」という感覚がものすごく強くって。否定される、責められる、のが基本なんです。そして「否定されたくない」「責められたくない」というのだけで生きてる。それに関わるようなことは一切しない、認めない、と。
 それが「あ、みんな出来ないんだったら出来なくていいか」という風に思える場所が出来たことで、「この場所では(出来ないことが)許されないけれどここでは許されるんだ」と、客観的にみられるようになってきたんです。そこで「これが出来ないんだったら、こういうやり方でやったらいいんじゃないか」という風に視野もだんだん広がってきたりして。それがすごく良かったなと思うんです。
 そうすると、当事者以外のほかの人にも「私ちょっとここ苦手でねえ」と言えるようになってきたんです。最初はそういうことを本当に言えなかったんですけれども。それが上手に伝えられるようになればなるほど、分かってくれて手伝ってくれる人が出て来たんです。それでうまく行ったらものすごく自信がつくというか。
「自分はここが出来なくてもこういう風に助けてもらってやって行くことが出来るんだ」
と思えるようになりました。
「私はこれが出来ないんです」と言うとか、自分が出来ないことによってすごく迷惑を掛けてしまうことに対する恐怖感というのがそんなにひどくなくなってきたんです。

正田:ふーん。ほかの当事者さんに関わることによってそうなってきた。

広野:そうです。私にとって難しいことを相手に頼むということ、昔はそんなこと到底できないし、「そんなことが出来ない人は辞めさせられる」と思っていたんです。そうではなくて、出来ないことを手伝ってもらえることもあるし、自分が出来ることをしっかり自分で分かってそれをやって行くということが大事なんだな、ということが、やっとそれで分かってきたんです。
 そうなったのはすごく遅いんです。30代半ばくらい。
 それが分かり始めたら、仕事も上手くいくようになってきて。
 ここ(冊子)に載っているのは大体それが分かってきた人たちです。やっぱり30代半ばくらいなんです、みんな。
 だから上手くいってそういうことが分かってくると、こういう風に職場と上手く折り合いをつけてやっていくことができるようになる。



■虐待、過干渉と発達障害

正田:お話を伺って、「こういうやり方(発達障害・凸凹)での人間理解って大事だなあ」とすごく思います。というのはさっきの「自己愛」の話、一時期「自己愛」にもすごく凝ったんですけれども、「自己愛」ていう考え方をすると、憎しみが湧いちゃうんですよね。

広野:あ、そうなんです。

正田:「倫理的な悪」って思っちゃうんです(笑)

広野:ええ、ええ。

正田:でも(能力の一部の)欠落から来てるんだな、と。

広野:そうなんです。まあ、本当に愛されなくて自己愛になってる方も結構いらっしゃるんですけれども、「発達凸凹」を理解してもらえないことによって「自己愛的」になってる方は、そこを理解してもらうことによってそこのこだわりがすーっと消えていくことがあるんです。ですのでそこは何とかできるんじゃないかと思います。
幼少期から虐待を受けながら育った、とかいう生育状況だと、ちょっと。
あと虐待もそうなんですけれど、「過干渉」もそうなんですよね。虐待と過干渉と同じなんですよ、実は。

正田:ああ。あのね、最近よくネットで話題になるんですけど、「電車の中でわが子を足蹴にした母親の動画」とか、電車で子供にものすごく口うるさくずーっと言い続けてる母親とか、ひょっとしたら早期教育で塾の帰りかもしれないんですけど、夜遅い時間に。その話をきくたびに「発達障害じゃないかなー」と。

広野:そうですね。あり得ますね。
発達障害の母親の場合、子供時代に本当にその子に対して与えなきゃいけない教育とか愛情とかを与えられずに育てられたケースが多いと思うので不安も劣等感も強い。それでわが子がたまたま成績が良かったりするとそこにしがみついちゃうんですよね。

正田:有名小学校に入れそうだと思うと「その方向に頑張れ」とか。

広野:そう。大学も、「このレベルの大学に入れば一般企業に就職できるだろう」みたいな感覚で多分親御さんも言うし、だけどそこ(勉強)以外のことは全然出来ない。

正田:うん、うん。解決になってないわけですよね。

広野:そこはやっぱり大変ですよね。

正田:広野さんもっとメジャーになっていただかないと(笑)
 本当にむだな不幸を作り出してるように思うんです、この考え方が広まらないと。

広野:ええ、本当にそうですね。
 小さい時からすべての人にあっていい、「発達障害かどうか」のすべてかゼロかより、凸凹ってすべての人にあるし、コミュニケーションの違いも多少は皆さんありますので。

正田:はい、はい。

広野:でも一般でお仕事されてる方が分かってくだされば、それは「お父さん」なわけなので、お父さんが分かったらきっとお母さんも分かると思うんですよ。
 子供を何とかしなきゃいけないとき、やっぱり大人を変えなきゃいけないし、社会を変えなきゃいけないと思うんです。

正田:おっしゃる通りです。

広野:そこはまずは分かってもらって、分かることによって楽になれる人たちにまず、楽になって欲しいなと。ややこしいほうの人はそんなに簡単にいかないですけど(笑)



■DVと発達障害

広野:私、DVで離婚してるんですけど、だんなさんがすごいアスペルガー的な人で、相手の気持ちとか考えかたとか分からないんですよ、全然。でも営業をやっていて実績はすごく上げていたんです。どんどん営業所から支社に行って支社から本社に行って、だけど営業企画までは良かったんですけれども、そこから上に行くには色んなほかの部署を経験したり、深く人と関わるというのが出てくるじゃないですか。そこでものすごいストレスになっちゃって、何をやりだしたかというと私に暴力を振るいだしたんです。

正田:ほう…。

広野:それだけじゃなくてあっという間に部署が合わなくて鬱状態になっちゃって、もう相当分からなかったんじゃないかと思います。違う考え方に合せることができない。会社の中のそれぞれの部署の複雑な立ち位置が理解ができない。彼が分かるように説明してもらうこともできなかったんじゃないかと思います。
 ああいう人のことは、いいところだけを会社で活かしてもらって評価してもらうということができたら良かったのかな、というのはありますね。
 結局、彼も離婚したあとで仕事も辞めちゃってたんですけど。

正田:ふーん…。

広野:営業は自分の裁量でできることも多いですし、実績を上げれば予算もくれますよね。ですからそれは結構得意分野だったんですね。だからちょっと可哀想だな、という部分もあります。ただ上に行けば行くほど無理な面は出てきただろう、と。

正田:そうでしたか…。
 今ごめんなさい、不謹慎なんですけど、綾屋紗月さんっていらっしゃいますね、アスペルガーの当事者の本を書かれてる方。その方のお話を思い出してしまって。あの方も確かだんなさんのDVで離婚されてますね。

広野:ええ、ええ。
 DVで離婚は結構多いんですよ(笑)私もそのアスペルガーが入ったタイプで、そして当事者同士で共感できるところもあるので、くっついちゃうんです。
 そして2人でいる間はいいんです。勝手に自分の好きなことをやっているだけでいいから。だけど社会生活、子供を育てなきゃいけないだとか、役割をしっかりお互いが果たさなきゃいけないとなってくると、ぐちゃぐちゃになるんです。お互いが相手を思い通りにできないし、もちろん子供も思い通りにならないんですけど。
その辺で「私はこういう特性がある」と自覚して自分を直していったんですけど、彼はある意味会社で認められてる部分もあったので、もう私のことは「頭のおかしいヤツ」呼ばわりでしたね。ほんとに。
言ってることが、「特性があるから分かったほうがいいよ」と、本も渡したんですけど、「お前らと一緒にするな」。
 なまじ出来ることがあるとそこにしがみついて、あとのことは認めたくなくなる。


■引きこもりと発達障害


広野:今は大阪府のおおさか仕事フィールドというところがあるんですけれど、キャリアコンサルタントの資格を取って、そこでニートの発達凸凹の個別の就労支援をしています。あとは一般、企業向けの講演。

正田:大事ですね、キャリアコンサルの方の発達障害の方についての知識、理解というのは。

広野:そうなんです。でも私も資格試験を受けましたけれど、発達の勉強なんか一切ないですから。ほとんど。発達障害というのがあります、とテキストに数行書いてあっただけ。試験にも出ませんし。だから厳しいなーと思いながら。


■当事者の人生―趣味、コミュニティ、介護


正田:私はやっぱり未診断の部下をもったマネジャーの側から話をきくことが多いのですが、本人は悩んでますね。マネジャーの悩みのほとんど9割はそこ、という感じです。もう寝ても覚めても「その人」のことを考えている、わるい意味で(笑)やっぱり何かあった時、自分の責任問題になりますから。
 最近きいたのがもう50代の未診断の方で、親が死んで天涯孤独になって、という部下に対しては何ができるんだろう、と。未診断で自覚がない、結婚もしてない人で。

広野:うんうん。まあ、本人さんが何か好きなことがあって、趣味のコミュニティに出入りできていれば、それはそれで上手くやっている人はいますけれど。

正田:なるほどね。その人は釣りの仲間はいるって言ってました。

広野:あ、そうですか。それがあれば大丈夫ですよ。釣りがあれば。そこを大事にしてもらえれば。
 逆に親がいると邪魔になる(笑)、介護できないのに親が歳取っていくとどうしようもなくなることがあるので。

正田:要介護の親を見捨てるケースなんかもひょっとしてそれでしょうか。

広野:そうでしょうね。だって、多分自分のこともできないのに、親の介護まで無理だと思うんです。「あ、無理かな」と思ったときに助けが外から入ってこれるような地域のシステムが必要なのではと思います。
 景気が良かった時代に見過ごされてきている凸凹の方というのは、今50代60代で非常に多いと思うんです。だからうちの会にも50代、60代の方が増えてきてるんです。
 まあそれはそれで、ここで楽しくやってくださる方は、文句言いながらでも生きていけると思います。
 自覚がなくても、野球の応援が好きだとか釣りが好きだとか、そういう何かがあるとやっていけると思います。まあその人の程度にもよりますけど。
 本人が孤立しても全然平気なタイプの方もいらっしゃるので、好きなことで誰かとつながっていて、自分はそれ以上の関わりを特に求めていないという方であれば、それで安定すると思うんです。
ご本人がそれについて問題意識があるかどうかですね。その方の特性の強さによって「もっと自分はああしたい、こうしたい」と思う方もいれば、「自分は友達もいなくても平気だ、たまに困った時に行ける先がいくつかあればそれで構わない」という方もいる。


3.「凸凹部下と凸凹上司、どうつきあう?」に続く)



広野ゆい氏にきく「凸凹の部下と凸凹の上司、どうつきあう?」

1.発達凸凹があっても職場でうまくやっていくには
■凸凹の概念で発達を説明する
■アポを忘れる営業マン―カギはメインの仕事ができるかどうか
■製造から介護へ、凸凹社会人の流入現象
■新しい枠が必要、正社員でも障碍者枠でも非正規雇用でもなく
■会社でうまくやっていくには自覚がポイント
■「私も仕事できない人だった」(広野)


2.見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり
■メンタルヘルス問題のかなりの部分が発達障害
■「できる部分」にしがみつく当事者
■当事者の集まりで初めて「ゆるむ」
■新型鬱と発達障害
■自己愛は発達障害なのか?
■「指摘されると切れる」敏感さから「出来ない」と認められる当事者コミュニティへ
■虐待、過干渉と発達障害
■DVと発達障害
■引きこもりと発達障害
■当事者の人生―趣味、コミュニティ、介護


3.凸凹部下と凸凹上司、どう付き合う?
■もし発達障害の部下をもってしまったら
■部下の発達障害に気づけないマネジャーたち
■「発達障害上司」は承認が難しい?
■「発達の問題」わかったら降格がベストか
■診断を受けてもらうことは役に立つか
■診断を受けてもらうトークとは





※2015年春、インタビュー第二弾
b>広野ゆい氏にきく(2)発達障害者マネジメントの「困った!」問答


1.「一律」になじまない現実と付き合う
■メンタルヘルス問題に「発達障害」の視点がない
■「軍隊式マネジメント」はなぜ存在するか
■5Sに「発達障害」の視点を入れると
■全体の質低下を防ぐには
■「発達障害」と昇進昇格と嫉妬


2.「弱みの自覚」のむずかしさと大切さ

■自己診断にチェックリストは有効か
■若い人の成長過程のむずかしさと自己認知
■適性のない仕事についていたら?
■「強みを活かす」の限界 弱みの自覚の大切さ
■感情表現(Iメッセージ)の壁を訓練で乗り越える


3.発達障害者マネジメントの「困った!」問答

■管理職研修と発達障害
■ASDの人の固定観念と性バイアス
■ADHDは薬で改善されるか
■告知はどんな言い方が有効?
■ADHDの人が自己判断で仕事をしたら





100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

 去る10月6日、大阪・NPO法人発達障害をもつ大人の会(DDAC)事務所にて、同会代表・広野ゆいさんにインタビューさせていただきました。


 近著『行動承認』ではカバーしきれなかった、「発達障害をもつ人に対するマネジメント、職場運営」という問題を中心にうかがいました。

 発達障害は今世紀に入り飛躍的に研究がすすんだ分野で、それまで思われていたよりはるかに出現率が高く、気をつけてみると職場のあちこちにこの問題を抱えた人がいることがわかります。こうした問題を視野に入れたマネジメント、というテーマもいわば新分野であり、フロンティアです。


 広野さんは大変オープンにお答えくださり、たくさんの共通認識を持てることがわかった今回のインタビュー。発達障害の部下をもつマネジャーにも、発達障害らしい上司をもつ部下にも、目からウロコのお答えが満載です。
 非常にたくさんのポイントを含んだインタビュー記事で話題もあっちこっちにまたがりますが、全3回でお伝えいたします。


広野ゆい氏にきく「凸凹の部下と凸凹の上司、どうつきあう?」

1.発達凸凹があっても職場でうまくやっていくには
■凸凹の概念で発達を説明する
■アポを忘れる営業マン―カギはメインの仕事ができるかどうか
■製造から介護へ、凸凹社会人の流入現象
■新しい枠が必要、正社員でも障碍者枠でも非正規雇用でもなく
■会社でうまくやっていくには自覚がポイント
■「私も仕事できない人だった」(広野)


2.見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり
■メンタルヘルス問題のかなりの部分が発達障害
■「できる部分」にしがみつく当事者
■当事者の集まりで初めて「ゆるむ」
■新型鬱と発達障害
■自己愛は発達障害なのか?
■「指摘されると切れる」敏感さから「出来ない」と認められる当事者コミュニティへ
■虐待、過干渉と発達障害
■DVと発達障害
■引きこもりと発達障害
■当事者の人生―趣味、コミュニティ、介護


3.凸凹部下と凸凹上司、どう付き合う?
■もし発達障害の部下をもってしまったら
■部下の発達障害に気づけないマネジャーたち
■「発達障害上司」は承認が難しい?
■「発達の問題」わかったら降格がベストか
■診断を受けてもらうことは役に立つか
■診断を受けてもらうトークとは


 
(ききて:正田佐与)


広野ゆいさんプロフィール 
0072-3

NPO法人発達障害をもつ大人の会(DDAC) 代表
子供時代から、遅刻、片付けができない、周りに合わせられないなどの特性があり、忘れ物の女王、遅刻の帝王などと呼ばれながら学生時代を過す。専業主婦であった28歳でうつ病、31歳のときADHDと診断される。2002年に大人の発達障害のグループ関西ほっとサロン、2008年4月に「発達障害をもつ大人の会」を立上げる。現在は発達障害当事者の立場でキャリアカウンセリング、教師や専門職向けの講演、成人当事者向けの片付け・金銭管理セミナー等も行っている。
S47年生まれ。青山学院大学卒。ICDSキャリアコンサルタント。2級FP技能士。
NPO法人発達障害をもつ大人の会(DDAC)HP http://www.adhd-west.net/

関西ほっとサロン http://kansai-hotsalon.main.jp/
関西ほっとサロンは、大人のADHDの会のセルフヘルプグループでとして2002年に活動を開始しました。現在2008年4月より『発達障害をもつ大人の会』が設立され、月に一度のサロン(ピアサポートミーティング)を中心に活動しています。



広野ゆい氏にきく「凸凹の部下と凸凹の上司、どうつきあう?」



1.発達凸凹があっても職場でうまくやっていくには
■凸凹の概念で発達を説明する




正田:私どもは「承認」を中心としたマネジャー教育をしているNPOです。発達障害をもつ大人の会(DDAC)さんのホームページも拝見して「認める」という言葉が入っていたので嬉しくなってしまいました。

広野:確かに、なかなか「認めてもらえない」というのが発達障害の人の悩みというか。

正田:そうなんですね。
今日はいっぱいお伺いしたいことがあるんですけれども、マネジャー教育の団体なので、「職場運営」というところを中心にお話を伺わせてください。

広野:わたしたちは去年から、こういうパンフを作っています。これは企業向けにつくったパンフなんですけれども、チェックリストでみんなにやってもらうように。

正田:みんなにやってもらう。大事ですね。「自分は正常だ」と思っている人たちにも。

広野:そうです。発達障害って、「障害」と言っているので皆さん「自分とは違う」という目で見がちなんですけれども、本当はディスオーダー。ディスオーダーっていうのは、厳密に言うと混乱状態にあるということ、みんなと一緒にできないということであって、能力的にできないとか欠けているというのと少し違うものなんですよね。そして環境によって適応障害を起こしたり起こさなかったりする。その人の特性を知らずに会社が関わったり仕事を振ったりすることで障害になってしまう。

正田:ああ、そういう捉え方をするんですね。なるほど。

広野:ほめればいいとか言うよりは、その前の段階としてこの人はどういう特性を持っていて、何ができて何ができないのか、それが生まれつきだった場合には、この部分を「みんなと一緒にやれ」って言われることでその人自身を潰してしまうことがあるんですね。生まれつきの能力の場合はほかの人と違うやり方で対処するということになってきますので。それができればその人は障碍にならずに出来ることを活かしてお仕事が出来る可能性がある、ということで。
 そういうことを知ってもらいたいというのがこの事業なんです。

正田:なるほどねえ…。私、発達障害の方に関する本を去年からかなり読んできました。多分もう50冊ぐらいになってると思います(笑)はい、凝り性で(笑)
 それでいうと広野さんのおっしゃるのは今までなかった切り口でいらっしゃいますね。

広野:そうですね。今までは、「こういう風にすればみんなこうなるはずだ」と、やっぱりそれは、みんなを「こうであればこうである」と枠にはめている。もちろんそれで大多数の人は上手くいくかもしれないんですけれども、上手くいかない方は何割か何%か、絶対いらっしゃると思うんですね。じゃなんでだろう、というときに、この「凸凹」という概念を使うと「あ、なるほど」っていうことが結構あると思うんです。

正田:はい、はい。

広野:そこは多分、まだどこもそういう視点で人材というものを扱ってないんじゃないかなと。

正田:少数者の存在を「ない」ものという前提で語っているということですね。



■アポを忘れる営業マン―カギはメインの仕事ができるかどうか


正田:去年から大人の発達障害の方の本を読んできたときに、「診断を受けさせるか受けさせないか」というのが結構焦点になりまして、それはもうあるところで区切っちゃうということですよね。区別しちゃうということですよね。

広野:そうなんです、そうなんです。
 ただ、診断を受けてもずっとその会社で働いてらっしゃる方も結構いらっしゃるんですね。診断があっても、その人が例えばすごい優秀なプログラミングができる方だったとすれば、その周辺の例えば片付けできないとか(笑)、ちょっとやりとりが一方的だというところを周りの人が理解してフォローすることによって、その人のプログラマーとしてのお仕事ができるようになれば、別に辞めさせたり障碍者枠に行かせたりさせないで済むわけなんです。そういった形でお仕事ができている方というのも現実にはおられますから。。
 この1冊目の冊子、『発達凸凹活用マニュアル』(2013年3月刊)に載せている5名の方というのは、障碍者枠でお仕事しているというのではなくて、診断は受けているんですけれども一般の人と同じお仕事をされている、という方々です。
 この冊子に出てくる彼なんかは普通に建設会社の営業マンです。営業自体はできるんですけれども書類が滅茶苦茶になっちゃったり、アポイントを忘れてしまったり。

正田:え〜(笑)

広野:あと取引先にカバンを置いたまま帰っちゃうとか、そういう方なんですね。

正田:なんか人ごととは思えない…(笑)いやいやいや、それは営業マンとして致命的にはならないんですか。アポ忘れると怒られるでしょ?

広野:そうなんです。それは彼自身がやっぱり自覚をして、例えば「誰々のところでこういうアポをとりました」と周りにもお伝えしておいて、「明日アポやろ」とか「あ、もうすぐ○社に行く時間やろ」という声かけを周りにしていただくとか、「この人忘れるから」と会社全体でわかっていて、フォローするということができているんですよね。そうしてあげさえすれば仕事自体はすごく出来る方。
そうでなければ、「なんでこんなに基本的なことができないんだ」と、本人の意識とかやる気ということにされてしまう。すると評価もだんだん落とされてしまって、最後は些細な失敗がすごく大きく扱われ、会社に居られなくなる。そういうことを何回も彼は経験してきているんです。

正田:うーん、わからない上司だとそうなるだろうなあと思います。
 でもほかの面では営業の適性がきっとあるんですね。明るいとか社交的とか。

広野:そうなんです、彼は人と関わること自体は大好きなんです。
 だから、メインのお仕事が出来るかどうかなんですよね。例えばプログラミングが出来るとか営業が出来るとか。その本人がプログラマーになりたいと言ってもプログラミングをする能力が足りなかったらそれは出来ないですよね、発達障害であってもなくても(笑)。
能力的に中心の仕事ができて、周辺の仕事が(発達障害の)特性のせいでできない、という場合に会社が配慮してくれるかどうか、というのがとても重要なポイントなんです。

正田:うん、うん。

広野:環境次第で障害になったりならなかったり、ということがあります。

正田:はい、はい。

広野:だから診断されたら「障害」っていうんじゃなくて「凸凹」というのがふさわしいのかな、という感覚です。それで「発達凸凹」という言葉に。

正田:それはこちら(NPO法人発達障害をもつ大人の会)のオリジナルの言葉ですか。

広野:それはですね、杉山登志郎先生が『発達障害のいま』(講談社現代新書、2011年)という本の中で公に使ってくださったお蔭で私たちも使えるようになったんです。昔から「私たち『凸凹』だよね」っていう認識は当事者の中ではあったものですけれど。

正田:ほうー。

広野:表に出すと「人権に引っかかる」とかで、使えなかったんです。

正田:人権…。「障害」というほうがもっと人権問題みたいな気がしますが(笑)

広野:そうなんですよ(笑)まあ色々あってこの「凸凹」という言葉が使えなかった。今は使えるようになりました。



■製造から介護へ、凸凹社会人の流入現象


広野:今のような時代ですと、昔は「ちょっと変わってるけどまあまあええかな」と思われてた人も今はお仕事させてもらえなかったり、適応障害を起こすというような世の中になってきていますね。

正田:今は要求スペックが高くなっていますよね。

広野:そうですよね。
 昔は作業的なお仕事でも、景気がいい時代ならそれでも正社員になることはできたし、安定した生活ができた。それが工場のお仕事が日本からなくなることでお仕事自体もなくなっています。第二次産業がなくなっていくことで、じゃあ第三次(産業)で対人サービスができるかというと、やっぱり出来ない。

正田:そうですね。製造業で言うと日本から無くなっているというのが1つと、もう1つ日本に残っている製造業も「小ロット短納期」というかなり機転のきく人じゃないと出来ない仕事になってきている。

広野:ああ、昔の何倍も出来る人じゃないと。スピードも求められますし。

正田:そうなんです。定型的なお仕事だけではダメ、となってきている。
 そうすると介護などは求人がすごくあって、人がノドから手が出るほど欲しいんですけど、製造業が出来なかった人が介護に行けるかというと。

広野:ムリですよね。
 やっぱり相手の状況をみて柔軟な対処をするとか、関わり方もあれもこれも一度にこなさないといけないとか、全部苦手なことなんですよね。そういうことがあって生きづらい。
 そういう人たちが生きていくときに、今はそれが「障害」にならざるを得ないような世の中になってしまっている。

正田:そうですね、そうですね。
 介護のお話でいうと、介護マネジャーにきくとやっぱり人手不足は深刻なので、実際採用した方が発達障害らしいということがわかっても、使っていかざるを得ない。その分周囲の方にも負担がくる、という。

広野:そうですよね。手際よくできないことで、余計周りの仕事を増やしてしまうこともありますし、重度の要介護の方だと本当に命に関わることがありますよね。
 そのあたりそのお仕事ができるかできないか、というのは本当に難しいところなんですけれども。
 ただ、実際やっている方もいます。ですから「そういう人でも出来るような介護の現場というのはないのか」というのはすごく私たちの中でもテーマになっています。

正田:そうですか。重要なテーマかもしれないですね。

広野:例えば冊子に載っている広汎性発達障碍でADHDも結構入っている看護師の彼女が働いているところは重度の知的障害者施設なんです。いくつも同時に仕事をするので患者さんに言われたことをすぐ忘れちゃうというようなミスがありましたし、急性期の病棟だとミスが命に関わることもあるかもしれない。

 そういうわけで病棟勤務はもうやめようということで、次に健康診断の会社に入ったんですが、それでも何というか、人間関係ですかね。そこで彼女カミングアウトしたんですけれども、「いや障害者を雇っているなんで、周りに知られたくないから言わないで」って言われたりして、上司の理解が得られずそこも続けられなくて。
 今のところはどうかというと、「人間は誰でも忘れるんや」と言ってくれる上司の方で。

正田:いい方ですねえ(笑)

広野:忘れないようにメモにして貼ってくれたりとか、声かけしてくれたりとかがあるので、仕事をちゃんと出来る。彼女自身も利用者の方のお漏らしのお世話なんかも特に負担に思わずむしろ喜んでできる。そんなふうに配慮してもらいながら出来ることは頑張って、続けていられる、っていう。
 会社の方針と、その人の能力とがマッチすることがすごく大事なのだと思いますね。

正田:そうですねえ…。
 今、どちらの企業さんでもこの発達障害や凸凹の問題は避けて通れないと思うんです。ただ気がついてない企業さんも本当に多いんです。


■新しい枠が必要、正社員でも障碍者枠でも非正規雇用でもなく

正田:今日お話を伺って、新しい疑問がどんどん湧いてきてしまいました。
 発達凸凹の概念を使って特性を理解して仕事をすることによって障害にならずに済む、すごくすばらしいお考えだと思うんですけど、逆に障害者支援法の「2%枠」、あれで障害のある人は守られるんではないのか、診断を受けたほうが守られるという面はないのだろうか、とか。

広野:ああー。実際には、守られるのは「雇用」なんですよ。でも普通に、結構いい大学を出てはる人がいっぱいいるので、普通に通っちゃうことがあるんですね、正社員で。ホワイトカラーで。それのお給料と、守られた障害枠のお給料と、全然違うんですよね。

正田:なるほど。

広野:それを考えると、守られるとは言うけれども、まだ発達障害の人ってまだ企業さんもわかってないので、(障害枠での)待遇は低賃金、単純作業のパートと同じぐらいなんですよね。そうすると月10万ぐらいですか。ちょっと多くても、正社員で雇ってもらってだと15万、20万、いくかどうか。そして昇給とかほとんどないんです。
 だからそれを考えると、そこの枠にすすんで行きたいっていう人はやっぱりなかなかいなくって。正社員で入ってそれなりの年数経ってる方は、どんなに仕事ができなくても障害枠の何倍ものお金をもらってるんですよね。そういう現実があったときに、これを諦めてこっちへ行くか、という問題というのはすごくあります。
 そのへんは今後一つの大きな課題ではあると思います。
 今、正社員とそうでない人ってものすごくかけ離れてますよね。(非正規より)もうちょっと安定しているけれどもお給料は少しでいいような、そういう層のお仕事をつくっていただいたらいいんじゃないかなと。

正田:本当ですね。

広野:以前企業向けの講演でご一緒させて頂いた弁護士の先生が、そういったことをおっしゃってたんですよね。障害枠でもなく、正社員のすごく稼いでる枠でもなく、もう少し柔軟に対応できる中間の枠をつくって、正社員でほかの人のようにできない人でも正社員で雇用できるような規定のようなもの。そういうお仕事をつくれば、そこでトラブルになるようなことが減っていくんじゃないかと。そういうお話をされていました。
 そんなにめちゃくちゃ給料をもらえなくていいけれども、障害枠はイヤや、という人たち。多分発達障害の人のほとんどそうだと思うんです。
 本当に仕事がなかったり非正規だったり、不安定で来月お仕事があるのかどうか、というような感じで生きてらっしゃるので。でもそういう層の人、結構な数いらっしゃると思うんですよね。
 そういう人でも生きていけるような社会のシステムを作っていただけたら、この問題は少し解決するんじゃないかと。メンタルヘルスも含めてですね。

正田:今、相当数いるんじゃないかというお話がありましたけれども、ざくっと見積もって何%ぐらいの方がそう(発達障害)なんでしょう。
 
広野:パーセンテージはちょっと書いてなかったかな…

正田:実は去年マネジャー側から聞き取りをしまして、診断を受けているいないに関わらずマネジャーからみて特殊な配慮の要る、能力のアンバランスのある人が1割ぐらいいる、300人の中の1割ぐらいという感じだったんです。

広野:ええ、ええ、そうですよね。
これ(資料)は、「社内にそういう特性のある人がいますか?」と会社の方にアンケートをとらせていただいたんですが、色がついているのはADHDだったりASDだったり混ざっていたり。「こういう人たちが社内でトラブルを起こしたか」とか「対応は上手くいっているか」とか「誰がその人の対処をしているのか」などを調べてみました。
こういう人がいるかどうか、ということで言うと9割以上の会社が「社内に何人かはいるよ」という答えだったんです。まあ、それは当たり前の話やと思うんですけれど(笑)、
こういう人がいない会社というのは基本的にないだろうと。5人とかでやっている会社だとわからないですけれど。何人か集まったら絶対1人2人はいますし、配慮が要る人達はおっしゃったように1割以上はいると思います。
 でもその人たちをみんな障害枠にしてしまえ、と言ったら、2%では全然足りないですよね(笑)

正田:そうですよねー。


■会社でうまくやっていくには自覚がポイント


広野:その中で私たちがやっているのは、「凸凹があっても会社で上手くやっている人たち」を拡げる、という。

正田:会社で上手くやるのに、ご本人に能力の凸凹の自覚がないと難しくないですか。

広野:そうなんです。私たちの会に来る人たちは、基本的に自覚のある人なので。来たばっかりの人はまだ訳がわかってないかもしれませんけれど(笑)
 うちの団体自体は10年以上やっていますので、結構ご自分のことを分かってそれなりに上手くやってらっしゃる方もいますので、取りあえず仕事をしていて凸凹がある人を100人ぐらい集めて会をやったんです。「発達凸凹100人会」というのをやったんですけれど、そこで「私たちの困っている問題とはこういう問題だ」、「こういうことで私たちは会社でトラブルを起こしている」と自覚があるわけなんです(笑)

正田:(笑)

広野:そこで、じゃあどんなトラブルを起こしたのか、それをどんなふうに工夫したり変えているのか、ということをみんなで話し合ったんです。それをまとめてこのマニュアルを作りました。これが少しでも理解につながったらいいなーと。
 こういうことを会社の方が知っていただけるかということが大きいと思います。これを見ていただくと、「自分もこういうことがあるな」とか「こういうトラブルをこうやって乗り越えているな」ということに気づくというか、「自分にもそういう特性がある」ということを自覚してくださる方が結構いらっしゃるんです。
 そうすると、あとは程度問題ですね。すごい(凸凹が)強い人か、ましな人、みたいな感じになるんで、すごい強い人に合わせてみんながミスしないシステムとか情報伝達をしやすいシステムを作れば、みんながやりやすい職場になるはずなんです。
 そういう観点で「発達凸凹」というものを理解してほしい、というのが私たちの思いです。「ややこしいヤツやから排除してやれ」とか「困ってるから、じゃあほかと隔離しよう」とかそういう特別扱いする問題ではなくて、この人が上手くできるようなシステムを作ることによってみんなが上手くできる。という観点で業務改善をしていただきたいな、と。
 そういうことが出来ているケースもこのマニュアルの中にちょこちょこありますし、企業向けの講演を最近ご依頼いただいてしていると、

正田:なんだかすべての企業さんで知っていただきたいです。講演されたらいいと思う(笑)

広野:ええ(笑)。そういうとき、「うちではこういうことをしています」ということを教えてくれる企業さんが増えているんです。それをまた集めて「こういうことをしている会社さんがいます」ということを言っていったら、みんながやりやすい職場ができていくんじゃないかと思うんです。

正田:いいですね、いいですね。全員の方がこのチェックリストをやっていただければ。

広野:そうですよね。
 「発達障害をもつ大人の会」という会の名前が、「発達障害」と書いてしまっているので企業さんとしては「あ、障碍者の問題ですね」と捉えられてしまうのが今の悩みです。

正田:なるほど。


■「私も仕事できない人だった」(広野)


広野:私自身も昔はまったく仕事できない人間で、何を求められてるのか全然分からないんですよね。私もアスペルガーの傾向が強いので。

正田:お話していて全然そういう感じは受けないですね。一方的に話したりされないし。

広野:今はそうですね、今は多分そんなにないと思うんですけれど。
 大学卒業して配属されたのが秘書の仕事だったんです。なんかね、空気が読めないんです。そこでどんなお仕事をすることが認められることなのか、というのもまったくわからない。ただそれを教えてくれないんです。

正田:うーん、秘書って空気を読む達人がなるものだとばっかり(笑)

広野:そうなんですよね。多分、見かけが「出来る」と見えるみたいで、きちっとしてるように見えるらしいんです。見かけだけだと。

正田:そういえば確かに…(笑)

広野:けど実際は遅刻もひどいですし、スケジュールもめちゃめちゃ忘れますし(笑)

正田:え、そうすると今日なんかは。

広野:今日はですね、ちゃんとスケジュール帳を朝、確認できたので。
 でもね本当に忘れちゃうときもあって、人に言ってもらったりしないと本当に完全に飛んでてすっぽかすことが結構あるんです(笑)
 そんなわけで向いてない仕事に就いてしまったものですから、「使えない」と言われているということが周りから(情報として)入ってくるんです。

正田:つらいですね。

広野:つらいです。でも何でかわからないんです、まったく。で学歴はそこそこなので(笑)
秘書というのは病院の秘書さんなので、医療事務の専門学校を出ている方が多かったんです。すると専門学校を出ていても学歴的には高卒なんです。だけど私は四年制大学で、あまり考えないで紹介してもらって入ってきちゃったんですが、大卒だから「出来るだろう」と思われていたんです。だけど全然気が利かないし出来ないんです。とにかく何を求められているかが分からない。
上司とはまあまあ上手くやっていけたんです。上司は「これやっといて」と言う。で、やったら「ありがとう」と言ってくれる。それはすごく分かりやすいんです。それ以外の周辺の雑用的なものというのは全然分からなくて、でやらなかったら、「何であの子やらないの、下っ端なのに」的な感じになるんです。「下っ端というのはこういうことをこういう風にやるものだよ」ということを言ってくれたら言った通りやったと思うんですけれども、それはしてもらえなくて(笑)
で、私が「お仕事かな」と思ってやったことは、全然お仕事じゃなかったみたいなんです。

正田:私も時々あります、それ(笑)

広野:周りからみて「何あの子」って思われていて、多分どう扱っていいか周りも分からなかったと思います。私自身も「出来ない」と思われてる、自分自身「出来ない」と自覚していることもあったんですけれど、「私は出来ないから」と言えないんです。

正田:はあ…。

広野:なんかこう、よけい「出来ない」と思われるじゃないですか(笑)出来ないと思われたくないし、傷つきたくないんです。あと排除されたくないし。表面的には「私出来ます」みたいな顔してるんですよ。だけど中味めちゃくちゃなんです。

正田:かえって損しそうな気が。

広野:ええ(笑)。そうすると向こうには、「こんな仕事私やらないわよ」という態度に見えたかもしれないんです。ただ私は気づいてないだけなんですけど(笑)実際はどうだったか分からないんですけど。
 もう私、1年経たないぐらいでかなり鬱状態になってしまって、そのまま(会社へ)行けなくなってしまって。たまたまその時付き合ってる方がいて結婚して辞めたんです。
あのままいたらかなり色んな精神疾患になってたと思うんです。最後、電車にも乗れなくて。各駅で毎回降りながら行ったり、朝も起きれなくて起きたら午後くらいになっていたりして。「わあ、こんな時間だどうしよう」と思っていると電話がかかってきて、「信じられない」「無断欠勤なんてあり得ない」ってワーッと一方的に言われて。何も言えない、どうしようもない。本当に辛くって。

正田:辛かったですねえ。

広野:そうですね。その後で「発達障害」というのを知ったんです。知ってからは「ああ、そういうことだったのか」というのがいっぱいあって。自分が生まれつきそういうことが分からないんだ、ということもだんだん分かってきて。
 それでも最初は普通の人のふりをしようかなと(笑)普通のふりをする努力をしてたんですけれども、それだと上手くいかないんです。例えば人との関わり方を克服しなきゃいけない。それから私、数字が弱いんですね。単純計算とかも間違いがすごく多くて、それを克服しなきゃいけないと思って金融機関の営業になったんです。

正田:それはすごいですねえ〜(笑)

広野:ところが、なったはいいんですけど、表面的に仲良くおしゃべりはできるんですけど、「契約を取る」ということが感覚的によくわからなくて。仲良くなっても契約には結びつかないんですよね。

正田:ははあ。

広野:そして書類の不備とかもめちゃくちゃ多いですし、あと「段取りを組む」というのが難しい。営業って段取り組んでスケジュール組んで動かないといけないんですけど、それができないんです。「あ、今日はここに行かなきゃいけないな」というところには行って仲良くしてしゃべって帰ってくる、みたいな(笑)全然、導入して説明して、という風にいかないんです。
 だから今考えると全然仕事になってなかったと思うんです。周りも扱いに困ってたと思うんです。だけど勉強はするので、勉強してFPの資格とかは取るんです(笑)だけど全然お仕事はできない。
 でも最終的にはノルマ制のお仕事なので、だんだんお給料が無くなっていって辞めざるを得なくなったんです。
 そういう経験を私もいっぱいしてきてるので、なんでその人が「使えない」か、が分かるんです(笑)

正田:それはすごい貴重な経験(笑)

広野:30代半ばごろになって、自分の特性もわかってこういう活動をずっと続けているので、色んな同じような方と話をするようになって、「あ、この人はこういうタイプだからこういう風に周りに思われてるだろうな」「こういう風に『出来ない』んだろうな」と。
 本人は「これが出来ないんです」と言ってるけど「実はこっちも出来ないだろうな」「こっちも多分出来ないだろうな」ということが分かるようになった(笑)
 そういうことを分かったうえで、「その人に何をやって欲しいのか」を明確にして、じゃあそれをやってもらうために周りはどうしたらいいか、本人は何を自分で分かってやっていったらいいか、をお互いに「歩み寄る」というか「調整する」ということをやっていけたらいい。


2.見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり に続く



広野ゆい氏にきく「凸凹の部下と凸凹の上司、どうつきあう?」

1.発達凸凹があっても職場でうまくやっていくには
■凸凹の概念で発達を説明する
■アポを忘れる営業マン―カギはメインの仕事ができるかどうか
■製造から介護へ、凸凹社会人の流入現象
■新しい枠が必要、正社員でも障碍者枠でも非正規雇用でもなく
■会社でうまくやっていくには自覚がポイント
■「私も仕事できない人だった」(広野)


2.見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり
■メンタルヘルス問題のかなりの部分が発達障害
■「できる部分」にしがみつく当事者
■当事者の集まりで初めて「ゆるむ」
■新型鬱と発達障害
■自己愛は発達障害なのか?
■「指摘されると切れる」敏感さから「出来ない」と認められる当事者コミュニティへ
■虐待、過干渉と発達障害
■DVと発達障害
■引きこもりと発達障害
■当事者の人生―趣味、コミュニティ、介護


3.凸凹部下と凸凹上司、どう付き合う?
■もし発達障害の部下をもってしまったら
■部下の発達障害に気づけないマネジャーたち
■「発達障害上司」は承認が難しい?
■「発達の問題」わかったら降格がベストか
■診断を受けてもらうことは役に立つか
■診断を受けてもらうトークとは




※2015年春、インタビュー第二弾
b>広野ゆい氏にきく(2)発達障害者マネジメントの「困った!」問答


1.「一律」になじまない現実と付き合う
■メンタルヘルス問題に「発達障害」の視点がない
■「軍隊式マネジメント」はなぜ存在するか
■5Sに「発達障害」の視点を入れると
■全体の質低下を防ぐには
■「発達障害」と昇進昇格と嫉妬


2.「弱みの自覚」のむずかしさと大切さ

■自己診断にチェックリストは有効か
■若い人の成長過程のむずかしさと自己認知
■適性のない仕事についていたら?
■「強みを活かす」の限界 弱みの自覚の大切さ
■感情表現(Iメッセージ)の壁を訓練で乗り越える


3.発達障害者マネジメントの「困った!」問答

■管理職研修と発達障害
■ASDの人の固定観念と性バイアス
■ADHDは薬で改善されるか
■告知はどんな言い方が有効?
■ADHDの人が自己判断で仕事をしたら




100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

 7日、兵庫県経営者協会会議室にて 承認マネジメント事例セミナー「夢物語みたいなこと、言うてもええんですか」を開催しました。

 地域の経営者、管理職、商工会関係者らが来場され「全国でここにしかない奇跡のマネジメント事例発表」に熱心に耳を傾けられました。


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 姫路市立楽寿園園長・生駒眞一郎さんの開会の辞で開始。
(生駒さん、指定管理者更新おめでとうございます!)


・OA機器販売営業課長 柏原直樹さん(39)
・介護施設相談室長 林義記さん(35)
・中国工場総経理 脇谷泰之さん(50)
・篠山市商工会事務局長 原田豊彦さん(56)

の順に、発表いただきました。
 関西国際大学経営学科長 松本茂樹先生(58)からコメントをいただきました。

 
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 なりたかったマネジャーになったのに、成績が上がらず「もうマネジャーから降ろされるかも」と思っていた、と柏原さん。当時の上司、永井博之さんから「承認」の伝授を受け正田の「孫弟子」に。以後、部内の活気が出、2013年には上下半期とも社内表彰を獲得しました。

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 31歳の若さで「承認」に出会い担い手となった承認王子・林さん。今回も史上最年少の発表者となりました。当時、「頑張っていたのに認められない」「ダムが決壊した気分だった」。中堅の立場で辛抱強く「承認」を続け、涙の法人内表彰式という夢のような出来事を生みました。以後、5人の部署で4年間離職ゼロ。部署を超えて離職防止に取り組み続けています。

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 中国工場総経理の脇谷さんは「承認」前は「毎日誰かが遅刻早退。出荷前の不良対応による異常作業多発。顧客からのクレーム多発」で、脇谷さん自身が手を動かしてものを作っていた状態だといいます。(「最悪ですね」と松本先生)それが、「承認」後には顧客が現場を見学すると受注確定、倍々に近いペースで売上増、そして「2年間、顧客のもとに流出する不良ゼロ」を達成。ものづくりの世界でもきいたことのない、「奇跡」のような工場になりました。
  

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 篠山市商工会の原田事務局長。「承認研修」を導入したものの途中、職員からの辛口アンケートにびっくり。しかし気を取り直してワールドカフェ2回を経て、県下28商工会の中で「共済加入1位」「持続化補助金採択1位」を獲得します。途中、言葉に詰まった瞬間は、部下の名選手・北島氏の頑張りに感極まったのでしょうか…(ご本人はあとで「作戦だ」と言っておられました)



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 コメンテーターの松本先生から興味深いご発言。
 大学教育の世界でも今、「承認」「コーチング」の効果が検証されつつあります。
 関西国際大学では、松本先生ともうひとりコーチング的な手法を使う先生の学生が、大学全体の成績上位者10%を占めているそうです。
 また「離職防止」ならぬ「退学防止」に向けて、「最近どう?」というような「声掛け」(存在承認)を励行したところ、退学者が3分の1になったそうです。

 


 質疑の時間…。

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 脇谷さんに「中国での離職率は」。「1週間での離職率は80%です」とびっくりするようなお答え。 
 さらに独自の採用方針「ウソをつかない」などについても説明がありました。

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 柏原さんの元上司、永井博之さんの3年前の事例発表をきかれた方から。「まったく同じことを言っている。『承認に力を持つ』とはどういうことか」「私自身がぶれないことだと思います」。


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「私は部下に『任せる』ということをしていたが、承認といえるのか」「『君の判断力はOKだよ、信頼しているよ』という意味での承認だと思います。ただある程度経験値の高い人に使える手法」


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「組織の中で他にだれも知らない段階で自分ひとり使い始めるのは勇気の要ることだと思うが」
「私にも『お返し』が返ってきますから」

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 正田から締めのご挨拶。

「『承認』はきわめて有効な手法です そして今回は過去7回のなかでも、また国内のコンサルティング業界全体を見渡しても、最高レベルの粒ぞろいの成果事例であったと思います
 残念ながら、全国でもここにしかないものですので、皆様はこれまでこれに類したお話をおききになったことはないかもしれません まったく初めてかもしれません しかしわたしどもは12年間こうした成果をみてきまして、これは本物だと確信しております
 わたし自身も自分がこういう経営学上の法則を発見してしまった、これはものすごく強力な手法だ、ということを喧伝することが、どれほど知らないかたからみて不遜にみえるだろう、ひとりの女性として傲慢にみえることをやっていることだろうと忸怩たる思いになることがあります
 それでも、こういうものを知ってしまった以上、また現実の成果を手にしてしまった以上、わたしたちは伝え続けなければなりません このシンプルな手法で沢山のかたが幸せになっていただくために
 また、わが国が一層の躍進とはむずかしいまでも グローバルで一定の地位を できればリスペクトされる地位を確保していくために。
 わたしたち日本人が、持って生まれた遺伝子的な弱さも克服して、とりわけ地方に住んでいる人たちの良さを最大限発揮してローカル経済を繁栄させていただくために
 ここにいるわたしたちは既に知ってしまって共有しているんですけれども、逆にこれを知らないばかりに今も毎日苦しんでいる人がいかに多いかを思います これをその方々に届けてあげられないことがいかに損失かを思います
 ともすれば意気阻喪しそうになるわたしをいつも支えてくださる受講生の皆様に心から感謝いたします 今回は初めて平日開催の事例セミナーとなり 現役マネジャーであるパネリストの皆さんもそれぞれ職場に申告してお休みをとってくださいました そして経理の山口元子さん 素敵なスタッフもわたしの元気のもとです
 そして本日ご来場いただいた会場の皆様、本当にありがとうございます まだ第二ラウンド懇親会もありますので、物足りなかった方はそこで熱く語って本領発揮していただきたいと思います このメンバーで本日一堂に会せたことは奇跡のようなことです 会場を提供してくださった兵庫県経営者協会様にも感謝申し上げます」


 生駒さんから閉会の路

 
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 皆様、改めて本当にありがとうございました。
 今回の事例セミナーの動画は近日公開させていただきます。
 

 懇親会の席上、どなたかが「Amazonで『行動承認』品切れになっていますよ」と教えてくださいました…



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 4日、奈良県中小企業団体中央会様の「若手従業員育成セミナー」で正田が講師を務めさせていただきました。

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 4時間×3回という時間数、回数にもかかわらず募集開始わずか数日で満席になってしまったという、担当者Nさんもびっくりする羨ましいような応募状況。業種別では製造業や製材業、建設業、給食サービスなどでした。

 やはり心ある企業様にとって「若手の定着」は深刻な問題なのだと、うかがわせました。


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 4時間のセミナーでは実習で例文を自分の言葉で言い換えて言っていただくなど、とても主体的に参加していただき、またくそまじめな正田の講義部分をとても真剣なまなざしで聴いてくださり、


 管理職の方にまじって唯一経営者さんで参加された方が、帰りぎわに挨拶に来られて「今日は来てよかった。これ(例の表)はいい資料だ」と言って帰られました。


 Nさんのもとにも、帰りぎわに受講生さんがお礼を言われたり「次回も楽しみにしています」と嬉しいメッセージがアンケートにあったそうです。


 終始細やかに会場とわたしの様子をみてサポートし、いい場づくりをしてくださったNさんに心から感謝。大人の受講生さんがたにも感謝です。


 さあ、ここから奈良の元気な企業さんが出てこられるでしょうか…。


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 あすは当協会通算7回目の事例セミナー。
 史上最高の素晴らしい発表者さんがたに恵まれました。

 いいセミナーになることでしょう。


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 11月1日、秋田の国際教養大学(AIU)開学10周年式典へ。

 
 AIU開学10周年1


AIU開学10周年2



 県知事はもちろん国内の公立大学学長や海外大学の代表者らも出席する盛大な式になりました。

 建学の祖、故中嶋嶺雄前学長は「名誉学長」の称号を与えられました。


 国産杉材をふんだんに使ったコロシアム風の図書館―「365日24時間開館」で有名となりデザイン関係の賞も総なめにした―は、「中嶋ライブラリー」と命名されました。

 音楽だけでなく建築にも独特の才のあるかたでした。


 そして、図書館内には国公立大学では前例のない、創立者中嶋氏の胸像が置かれその除幕式もありました。


中嶋先生胸像


 これは公金をつかったのではなく、大学のOB会や保護者の会の寄付でできたものです。創立時に入学した学生らでつくるOB会の中嶋先生への思いは深く、「絶対胸像を」と譲らなかったそうです。

 ・・・えと、わたしも除幕の瞬間胸像をみて改めて「うわーっ」となってしまったほうです・・・


 中嶋先生の奥様は既に先生が終章に登場される『行動承認』の本を購入されておりご献本するには及びませんでした。

「中嶋をあんな風に登場させてくれてありがとう」

と言われたので、


「福沢諭吉や大隈重信、新島譲に匹敵するようなかたが同時代にいらした、ということをわたしたち教え子が言い続けなければなりませんから」

と申しあげました。

 

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