◆西表焼「青峰窯」のご主人。

庭でとれたという粘土でやきものを焼きます。16年前既に窯元を開いていましたが今回訪れるとギャラリー兼自宅が拡大していたようです。

「粉引」様の陶器が中心だった前回に比べ作風が多様になり、今回は黒い釉薬のやきものが目を引きました。

「この『鈴石』というのを釉薬にすると、こういう色になるんですよ」

ギャラリーに座っているご主人が指さした先には、変哲もない赤土のような、子どもの握りこぶし大の石が。
振ると、カラカラ音がします。
(ネット上にはこれを土産物にして売ってる業者さんもありました。大きいのは1万5000円ぐらいします)

これを釉薬にして、どの粘土と組み合わせるかは散々苦心してみつけました、とご主人はいいます。
粘土は、この人の庭からとれ、西表全域粘土がよく出るけれど、ほとんどが国有地なのでとってはいけないのだそう。作家さんがた、残念。


よく日焼けして引き締まった顔立ちのご主人は、以前お会いしたときより表情の端々に自信があふれているようにみえます。青峰窯の器は高級ホテルの売店にも置かれています。


島の外から移住して窯を立ち上げ、一定の評価を得てブランドを確立した人生。夢を実現する人とは、こういう強靭さをもっている人なのでしょう。

◆「うめ工房」のご主人。


この人もよく焼けて引き締まった顔立ちの人です。
小さな粘土細工の「シーサー」を焼いて色付けしています。

イツキが友達にあげたい、とお土産に選んでいると、
「ペアのシーサーを単品であげるなら口をあけているほうをあげるといよ」
と、口をあけたシーサーばかり取らせてくれました。

釣りをしているシーサー、キャッチボールしているシーサー、仲たがい・口げんかしているシーサー・・・など、作品は愛嬌にあふれています。



◆「版画 のら」のご主人


版画「のら」


緻密な、島の自然を題材にした版画を描いてはります。
「残念ながらこのアトリエは来年春までに埼玉方面に引っ越します」と張り紙がありました。
奥には赤ちゃんのぱたぱた走る音がきこえました。

この人の作品も家族みんな気に入り、
絵葉書を買うとき顔を出したご主人は、やはりよく日焼けした若い人でした。

「絵葉書だけじゃなくて作品を買ったらいいじゃん」

あとでそう言うと、

「ううん買って飾りたくないの。好きな絵ってね、ずっと飾ってあると見慣れて好きでなくなっちゃうのよ。絵葉書みたいな形でとっておいて、たまに出して見たりするのがいいの」


というのが、美術志望のハルカの弁でした。
作家さんをもうけさせない論理です。



◆カフェ「唐変木」の奥さん


「新婚旅行で来て以来16年ぶりなんです」と予約の電話を入れると、ことのほか喜んでくださいました。

私たち夫婦は25品がつく「琉球懐石」、子ども達は少し品数を減らしたもののほぼ一緒の内容の懐石をお願いしました。


野菜の和え物が3品手前に並び、ほかにも豚の角煮やミミガー、貝などのほかはサラダ、炒め物などほとんどが野菜中心のメニューです。


「こちらはクワの葉、整腸作用があります。この島の植物はほとんどが食べられるんですよ」

きれいな白髪になった小柄な奥さんが1品1品説明してくださり、
子ども達がお料理を「完食」したので、

「ご両親のふだんからの食育がいいんですね」
と褒めてもらいました。

(いえいえ何もしてないです。ただ、「ちゃんと食べろ!」と怒鳴ってるだけです)


この人も島の外からの移住組のよう。でもこのカフェを開いて20年になるといいます。

厨房ではもう1人の若い女の人に教える声がきこえ、代がわりも意識しはじめたようです。

「また絶対参ります」
「ぜひいらしてください。頑張って営業しときますから」


宿までの帰りは満天の星で、最後の夜の最高のプレゼントになりました。