『問題は、躁なんです―正常と異常のあいだ』(春日武彦、光文社新書)。

 アマゾンで注文してもいくら待っても在庫がなく、近所の本屋さんで最後の1冊になっていたのを買いました。


 「うつ」と比べて取り上げられることの少ない「躁」というもの―こまかく言うと、「躁状態」と「躁病」に分けられるらしいのですが―をつづっています。


 たとえば「躁」になるとどんなふうか。
 少し長く引用します:


「ことに男は、尊大となる。やたらと威張り、声も態度も大きくなる。せっかちで豪胆になり、自分は度胸も才能も魅力も傑出していると思い込む。すると些細な思いつきが大発見をしたかのように感じられて、そうなると話はいきなり『やっぱり事務所は六本木ヒルズに置くかな」「キャンペーンガールにはアイドルタレントの誰それを起用しよう」「社長専用車は、ベンツよりもベントレーのほうがいいかな」などと、浮ついた枝葉末節へ飛んでしまう。思いつき程度のアイディアを商業ベースへ押し上げるための地道な『詰め』やリサーチのことなどは決して考えない。」



 このブログの読者のかたで、

「あ〜、うちの社長、それだ」

「うちの上司それっぽい」


なんて、思われたかた、いないでしょうか。

 どうも、ベンチャー・中小企業経営者さんによくある人間像と重なってくるような気がします。



 この本では、「躁病患者にはカウンセリングは効果ない」という意味のことも言っていて、正田がかねてから思っている、

「大量にしゃべるタイプの人にコーチングは効かない」


という実感とも重なります。

―往々にして、大量にしゃべるタイプの人が「話を聞いてもらいたい」と、コーチングを希望されるのですが―



 この本のあとのほうで、「談話心迫」という言葉(初めてきく)も出てきますが、躁の人は

「とにかくしゃべらずにはいられない。そしてしゃべりだすとますます声高に、早口に、多弁にと自ら駆り立てられていく状態」



だそうです。


 世間では、無差別殺人のニュースが続きます。


 「誇大自己妄想症候群」というキーワードもあるし(2年ほど前、このブログでとりあげました)「躁」という切り口も、もっておいて損はないでしょう。


 あくまで、こうした人たちをどうしても理解しておかないといけない、という立場におかれた場合ですが―。


 
 
 また蛇足で、「躁的気質」とパワハラは関連するそうです。
こちらのページ

 http://profile.allabout.co.jp/ask/qa_detail.php/9564
を、ご参照ください。


 どうもお医者さんの領分のようです。


 これまであまりスポットライトが当たらなかった「躁」ですが、「うつ」の治療をした結果「躁転」してパワハラ加害者になり、あらたな職場の不幸をつくる、という図式があるということを考えると、もっと知識が普及したほうがいいのかもしれません。



 きょうは正田の根暗さくれつブログ。