「上司は、私に仕事をふる時、すごいしかめっ面してるわよ。あなたがた男性にふる時は満面の笑顔なのにね」



 知人男性(特に名を秘す)が、同僚の女性に言われたそうです。

 びっくりして、それ以後仕事中の上司の表情をうかがっていると、確かにそうなんだそうな。


「オレ達には想像のつかないところで、女性にとって仕事しにくいようにしてるんやなあ」


 しみじみ言った知人でありました。


 他人にとっての世界の見え方は、自分とはちがいます。

 正田も、しょっちゅう心しないといけません。

『老いはこうしてつくられる』(正高信男著、中公新書)。


 ひじょうに面白く、一気に読みました。


「アフォーダンス」という概念。


 この本によると、
 ある高さにしたバーをまたいで超えられるか、それとも下をくぐらなければならないか、

 ということを、私たちはバーを見て瞬時に判断します。

 大体、足の長さ×1.07の高さなんだそうな。


 こういう外界の把握のしかたのことを「アフォーダンスの知覚」といいます。

 
 「外界の事物を、私たちは、それによって自分たちにいかなる行為が可能となるのかという視座から認識するのだという。(略)

 環境に接するとき、私たちは外界が、自らにどういう行為の遂行を保証するものであるかを認識する。つまり、いかに有用であるかを把握するわけです。」




 何か新しい事物をみたりふれたりしたとき、私たちは、

「それ私にとって何ができるもんなん?」

と、瞬時に判断するわけです。


 何かできる余地のないものについては…、

 回避するか、排斥するかもしれないですね。それはこの本には書いてないことです。


 またこの本は、「老い」は若い人からみると誤解されやすいところがあり、心ない「レッテルはり」によって「老い」が加速されやすいことを述べていてたいへん説得力があります。


 いっぽうで加齢によって起こるはっきりした変化、おもに身体的変化は、肌のハリやツヤがなくなる、のどの筋肉など薄い筋肉にハリがなくなる(だから声が低くなりしゃがれる!)などがありますが、


このほか、

「スピード感覚の変化」も顕著です。


「年をとると、動きがなにかにつけ緩慢になるのは、からだの加齢によってもたらされる不可避の、いわば『必然的』な結果といえるかもしれません。60歳を超えると、からだの代謝機能が顕著に低下しはじめます。神経細胞間での情報の伝達速度すら、一割は遅くなるといわれている。」


 
「神経細胞間での情報の伝達速度」というところが、ミクロで良いですね。


 
 さて。
 この「アフォーダンス」と「スピード感覚の変化」の概念の組み合わせで、正田の頭のなかにはまた新しい珍説が起こり。


 それは、

「年寄りが若手の提案を潰したがるのはなぜか」

という従来からもっていた問いの、ひとつの答えであります。


 つまり、若手が新しい提案をもってくる。並べ立てている御託をきくと、どうも正しいことを言っていそうである。

 しかし、その提案を実行に移させたとき、どうせITを使ったなんやかやであるから、トップの自分はつんぼさじきに置かれる。そして正しそうなことを言ってるとはいえ、何が起きるかは実際、予測もつかない。事故が起きた時責任者の自分がとっさに適切な手当てができるかどうかわからない。


 そういう、「アフォーダンス」の観点からみても「スピード感覚」の面からみても、新しい提案は自分の無能力をさらに浮き彫りにするだけであり、いけ好かない。

ていうか、ぶっちゃけムカツク。


 というとき、年寄りはお得意の

「揚げ足取りワザ」

とか、

「ああ言えばこう言うワザ」

を使って、引き延ばし策をはかるのではないか。

 ようするに、

「ついてゆけないと感じた(スピード感覚)から、せめて自分のできることを見つけて、やる(アフォーダンス)」

ということですね。


 ただし自社の存続のために必要な提案に対してもそれをやっちゃうから、ビジネスマンとしては「自滅行為」であります。


 生きる、生存する、ということについて、自分個人の身体感覚を超えた大きな視座をもつ必要があります。


 なーんて、正田そのときになってできるのかな。


 
 もうひとつ、

「反社会的行為」について書かれたおもしろいブログをみつけました。

http://charm.at.webry.info/200610/article_3.html


人間社会で起こる『犯罪・暴力・レイプ』といった反社会的行動(個人間の攻撃行動)の問題や『戦争・紛争・テロリズム』といった集団力学的行動(集団間の攻撃行動)を、脳科学的に考えてみると、『利己的・排他的・防衛的な本能的欲求』を前頭前野が動物的本能(性衝動・攻撃本能)を抑制できなかったり、大脳辺縁系の情動的価値判断が歪められることによって起こってきます。



 こっちの世界も入り込むと深そうです・・。

 じゃ理性って、どうすりゃ発達させられるの?!
 「アフォーダンス」ばっかりで脳ができてる正田。