金木犀が匂っています。


 株価下落と円高は止まるところを知らず、

 私たちの世代が初めて遭遇する規模の不況の足音が聞こえてきます。



 なにが起きつつあるのか、なにができるのか。

 軽々しい気休めの言葉を使う勇気はありません。


 ここでは、

 CLSでもお世話になっている先輩コーチであり、常に時代と向き合ってこられた吉田典生さんのメルマガ「ドリームコーチ・ドット・ジャーナル」10月9日号から、お許しをいただき記事を引用させていただきます。



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ビジョンの力〜はっきりと心に描く理想像〜
      
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 世界同時不況の足音が刻一刻と近づいてくる予感。少ない投資
で巨額の富を生む投資銀行のビジネスモデルの終焉。

 先日仕事で訪れたばかりの町にある大きなショッピングセンタ
ーが、リーマン系金融機関からの借り入れがストップして閉店に
追い込まれたというニュースを聞きました。
 狂気じみたビジネスの終わりは他人事ではなく、私たちがこれ
から何を新たにどう始めていくか、ということにつながっている
ような気がします。

 米国発の投資銀行式ビジネスモデルは、社会のニーズとかけ離
れた会社の欲望を肥大化させ、両者の接点をズタズタに引き裂き
ました。
 そんな彼らのビジネスが華々しく膨張していた頃、静かに着実
に世界に広がっていったのがムハマド・ユヌス率いるグラミン銀
行です。

 2006年にノーベル平和賞を受賞した氏は、発展途上国の貧
困層に無担保の低利融資を行うという前代未聞のビジネスモデル
を打ち立てました。
 ユヌス氏が起業を決意したときの言葉を、ボクはある本で知り
感銘を受けました。

 クレジットは人権。 

 米国から貧困にあえぐ母国バングラデシュに戻り、世界のどん
な起業家も想像すらしなかったであろうビジネスを立ち上げた彼
のビジョン。そのすべてが、この言葉に集約されています。

 行動を促すビジョンとは、はっきりと心に描く理想像です。
それは、世界をより良くしたいという社会のニーズと、確かな接
点をもつビジョンです。
 
 社会のニーズと重なり合うビジョンのもとでは、そこで働く一
人一人が“仕事の意味”を共有することができます。
 だからそれぞれの役割や待遇の違いを超えて、働く者たちのつ
ながりの中に価値を見出すことができます。

 かといってビジョンは単なる理想論ではありません。それは現
実に立脚して一歩一歩進みながら、出てくる結果から学び、学び
を次の行動に反映させつづける、その先にある光です。そして光
に照らされて進むプロセス全体を包含したものを、ボクはビジョ
ンととらえています。
 
 だからビジョンは現在と未来を結び、現在をつくり上げた過去
と現在結び、ときに未来を示唆する過去と未来を結び、ごく小さ
な一歩と大きな展望をつないでこそ、組織のリソースになります。
 
 そしてもう一つ大切なことは、組織の実体である個のビジョン
と、その集合体としての組織のビジョンを接続させること。
 ムハマド・ユヌスが自らのビジョンを組織のビジョンに昇華さ
せたように、働く一人一人が個の思いを働く場に重ね合わせるこ
とができたとき、まちがいなく世界は変わります。

 ただしそれもけっして理想論ではなく、現実の中にある個の思
惑と組織の思惑の違いを受け止め、意図的に何らかの接点を見つ
け出していく仕掛けが必要なのです。
 
 これを丁寧にやっていけば、一つのビジョンにもとづいて生き
生きと協働するチームが必ず誕生するでしょう。
 
ボクがライフワークとして提唱しているビジョンマッピングは、
そうした根本的な変革に内部主導でじっくり取り組むアプローチ
です。
 それは一時的な成果のためにではなく、世界をより良い方向へ
シフトさせる変化のために。
 
 特にここ3年くらいの取り組みの中で、チェンジリーダーに必
要な基本的技能がクリアになってきました。
 段階的にビジョンを組み立てていくフレームワーク、そのため
に欠かせないシステム思考、知を融合させるダイアローグ。(略」






 

 時代の転換点であることは明白。

 「なにが終わったか」

の議論はすでに百出していますが、


「では、なにが始まるのか」

については、、


 これまでの時代へのかすかな懐疑から出発し、

 人びとが漠然ともっていた理想像を、


 これから力強く提示していくときなのかもしれません。

 これまで以上に切実感をともなって。