山本カオルさんのインタビューも今回が最終回。


 今日は、思い切り「数字」に直結したお話になります。読者の皆様、要チェックですよ


連載第5回(インタビュー最終回)
「だれでも簡単にできるコツを伝えたい」 



(1)離職率低下で月40−50万のコスト削減
(2)売上日本一の「コツ」とは
(3)コストをかけずにいかに変化を起こすか



 ※この連載は長文です。毎回の記事を読み終えるまでの時間は約2分。
 その2分が、きっとあなたのお仕事と人生を一層豊かに意義深いものにしてくれることでしょう。
(1)離職率低下で月40−50万の経費節減

(「1:3:6:1の法則」の続き)


山本:あくまでアパレルの場合ですけれど、スタッフが長くいる、すなわち定着率が高いとそれだけでメリットがあります。商品がそんなに高くないのであれば、お客様からみると、知った子がいてニコニコして名前をおぼえて話しかけてもらえる、というだけでお店の魅力になるんです。


 マネジメント側からすると、とにかくよく聴くことで、共通の問題点が見つかります。一人ひとり面接していくことで、離職率が低下し・個々の能力が高くなり・1人当たり生産性が上がります。


正田:そうですね。離職率が下がることには、経営上それだけ大きな意味があるということに、皆さん早く気がついて欲しいですね。

 離職率が何%から何%に低下した、という数字はありますか。


山本:それは出していないんです。ちょうど、結婚、妊娠などの時期に当たる子らでもありますから、離職率を出すことにあまり意味がないと思って、やめました。

 ただ、1つの指標を言うと、それまで3年間で月に採用の募集広告のために40−50万円くらい払っていました。それが10分の1に減りました。その後3年間で募集広告を3〜4回しか出していません。募集広告を出すときというのは、緊急性があるわけですけど、最近は辞める時も円満に辞めるので、3ヵ月前ぐらいに言ってくれれば、その間に補充ができますから。

 純利で40万円というと、売上で言うと100-200万円は上げないといけないところです。それが浮いた、ということです。


正田:すごい。月商100-200万ぶん浮いている。


(注:ここで「離職率を出すことに意味がない」ということについて、正田からちょこっと補足です。

 コーチングが浸透している職場で、スタッフの結婚・妊娠出産などの現象が多い、というのは、わりあいよく目にします。大事な人材をそれで失うことも…。

 なので、コーチング実施イコール離職率の右肩下がりの低下、というふうにはならないのですが、山本さんの言われるように、おめでたいことは事前にわかっているので、口コミなどで補充ができ、募集広告を出すには至らない、したがって広告代が浮く、というメリットがあるのだと思います。

 すこしスピリチュアルな表現をすると、スタッフは職場で「人を愛する力」を育てることができるのかもしれません…)


(2)売上日本一の「コツ」とは


正田:山本さん、1つ1つほんとに本を書いていただきたいような取り組みですね。
 さて、「人気ブランド店の売上日本一」の時のことについてもうかがいたいんですが。どんな取組みをされたのですか。


山本:以前そのブランドは直営店、フランチャイズ(FC)店とあって、FC店は全国40-50店舗です。売上日本一はその中で何通りかあって、月間日本一、半期での日本一、それに「ネクタイで1位」「ボーダーシャツで1位」といった、アイテム別での1位。

 私たちの店は徳島県の郡部にあり郊外のお店です。私がコーチとして関わり始めて間もなくの2004年夏に初めて売上1位になり、それ以来比較的上位をキープしています。競合店がなくなって商環境が良くなった時期もあったのですが、さらに近隣に大きなショッピングセンターができた後もかなり検討していると思います。


正田:ほうほう。それで、その店が売れた要因は…。


山本:離職率低下イコール販売力アップなんです。

 心がけていたのは、とにかく接客をする、個人個人の接客力を上げる。従来は店長がイベント準備やチラシ手配などのかたわらにスタッフ指導をしていたんですが、それは1人でできる仕事ではなかったので、コーチの私と分業にして、私がスタッフ指導を。お父さん役とお母さん役のようなものですね。


正田:「接客力を上げる」というのは…。やっぱり、お客様とのトークの仕方を教えるとか、指導という要素が入ってこなかったですか。コーチングでできるのですか。


山本:それが、このようなお店の場合、モチベーションを上げるとか心の持ちよう次第で、接客力は上げられるんです。客単価が低いので。もし上下10万円もするスーツをお勧めするのなら、巧妙なトークも必要でしょう。そうじゃなく、何が大事かというと、感じ良くタイムリーにお客さんに接することができるかどうか。それはテクニックというより、その日の体調とかモチベーションの問題なんです。

 まずお客さまに当たらないと、販売ということは始まらない。上手とか下手の前にどれだけ間口を広げられるか。指導者、スタッフもそこは誤解するところで、まず商品知識を持っていないと、と思うんですけど、商品知識はアプローチするために必要なのであって、説得するためのツールではない、ということですね。

 アプローチの方法を知っている、素材やお洗濯などの商品知識を知っている、でもアプローチができない、という販売員がいかに多いことか。


正田:なんだか耳が痛いです(笑)


(3)コストをかけずに変化を起こす


山本:うちの価格帯のブランドであれば、大事なのはどれだけお客様が声をかけてほしい時に声をかけられるか。正田さんが何万円もするお洋服でなく、1980円の服を買うときのことを想像していただければ、そんな極上の接客をしてもらったらかえって「ひく」でしょ?きいたことに対して正確に答えてくれればいい、って思いませんか?

 中には、いわゆるカリスマ販売員になっていく人はいますけど、それはその基礎の上の延長線上のことなんです。まず間口を広げないと。


正田:時々、お客様が来ていても無視して店員同士おしゃべりしているような人もいますよね。そういうのは…。


山本:そういうのは定期的にお互い「しちゃいけない」と共有しますけどね。お客様を無視するよりは接客した方がいい。それはみんな知っているんです。それを素直に実行するだけ。


正田:よくサービスの極意を知るためにリッツカールトンに泊まって、とかいうと「そんなお金ない」って皆さんあきらめてしまうけど、山本さんの手法は敷居が低いっていうか(笑)


山本:コストをかけずに変化を起こす、って私、考えてるんです。ほっとくと質の低下が起こりますが、定期的にケアしたら大丈夫。

 売上って客数×客単(価)なので、キーワードで「○○といえば」というのを作っておくんですよ。「ジャケットといえば、このブローチ」とか。素直に使えば客単価は上がります。その素直に使うところにコーチングは機能するわけで。


正田:きたきた。山本さんの場合、単純にコーチングだけでもないな、と思うんですけど。視野も広く持って、幅広く読書をされていて、コーチング以外の理論とか手法とも組み合わせて。ただコアな手法としてはコーチングがあるわけですね。


山本:どういう目的でコーチングを使うかが明確だと、いろいろアレンジできるんです。ただアレンジした先のやり方だけを学んでもらってもそれは使えない。私たちも(聴く・承認・質問などの)基本的なスキルを繰り返しやってるから、他の手法と組み合わせられるんで。


正田:まったく同感です。山本さんは、アレンジした色んな手法に名前をつけて商品として売ることもできるだろうに、あえて「コーチング」という名前で売られますね。そのことにとても心強く感じます。


 ぜひおききしたいのは、今度2月24日に神戸でセミナーをしていただきますね。山本さんとしてはそこで何を一番伝えたいですか?


山本:今私が一番伝えたいのは、「大げさなことをしなくても、日々のちょっとした工夫で人間関係も良くなるし、業績も上がる」ということ。
「コストゼロで定着率と業績が上がる」という言葉を考えてるんですけど。皆さん、時間がとられるとか忙しいとおっしゃるんですが、私は日々の業務でできることばかりやってきたので。シンプルに簡単に出来るステップだということをお伝えしたいですね。(了)


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 山本カオルさんのインタビューは今回で終了です。

 ここまで、いかがでしたか?

 「離職率が下がれば、売上は伸びるんです」

 あっさり言われる山本さん。

 それは、ひょっとしたら他の業種にも、たとえば販売・サービス業全般、あるいは福祉職や看護職にも、当てはまることかもしれませんね。

(たとえば成果を測る指標が売上ではなく、サービス指標とかお客様の満足度とか、ミスの低減などになるかもしれませんが…)



 さて明日は、

「なんだかまだ、しっくりこない」
「全体像がわからない」

 というあなたのために、

 恒例・山本さんの全取り組み「レーダー・チャート」をお送りします。


 これも当協会オリジナルで、組織に働きかけて最終的に業績を上げるまでになる複雑なプロセスを、「働きかけ」⇒「スタッフの行動変化」⇒「業績への影響」の3ステップにまとめています。


 全体像をみてご自身の参考にしたいという方、どうぞお楽しみに!!




 そして、

 山本カオルさんのお話を聴いてみませんか?

 小売・サービス業様向け無料コーチング講習会

「なぜ、『ご機嫌な職場』では売上も上がるのか」


 2月24日(火)、神戸市産業振興センターにて。

 既にたくさんのお申し込みをいただいていますが、まだ若干お席の余裕ございます。

 詳細とお申込は、企業内コーチ育成協会ホームページ
http://c-c-a.jp
から、どうぞ。


 なお、ホームページが文字化けして見えることがあるようです。
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