白い沈丁花が、道端で満開になりました。

 季節を感じさせる匂いの中では、正田はこの沈丁花が一番好きです。

 あまり甘くない、澄んだ凛とした香り。


 冬は終わりつつあります。



 以前、ある行政の方と雑談して、

 差しさわりのない範囲で再現します。


行政マン氏:「われわれの役所では理念とか、ビジョンを持とう、と言ってもなかなか響かないんです。

 実は大企業の多い土地なので、税収はどんどん上がる。そして街はものすごい勢いで移り変わっていく。今の都市計画の完成形になったときには、だれも役所に残っていないはず。


 その中で住民の方の安全を確保して、まちづくりの問題を解決して…と、毎日ひたすらやっているんですけどね。」
正田:「なるほどー。ビジョンとかなくても、お金は入るし仕事としては回ってしまうんですね」


行政マン氏:「そうそう」


正田:「ひとつの案なんですけど、たとえば『絶対やっちゃいけないこと』で、皆さんで共有されていることってあるじゃないですか?そういうところからビジョンをあぶり出すっていうのは。

 たとえば、保護のお仕事だったら、暴力団の人が保護申請をしてきたら、審査して却下するわけですよね。

 その場合は、暗黙のうちに『適正配分』っていう原則が働いているわけですよね」


行政マン氏:「あ、なるほど。そういう意味では、保健福祉の各課などでは、共通のビジョンを持ちやすいかもしれないですね。ただわれわれの役所全体では…」



 …と、思いつきで言ったことに行政マン氏がうまく乗っかってくださったのですが、でも「ビジョンを共有したいけど、周囲に伝わらない」という思いもすごくよくわかるので。


 思いつきがうまくいくと思ってはいけないです、はい。


 ちなみに上で思いつきで挙げた「適正配分」という言葉を、もう少しかみくだいてなおかつ「ビジョン」っぽくポジティブな言い方で言うと、

「本当に困っていて必要としている人に、必要度に応じて適切に福祉サービスを届け、幸せな市民生活を創る(そのために不適切なものを却下する)」

というような言い回しになるかもしれないです。
 …いやこれも、関係者のかた、間違っていたらごめんなさい。


 
 「絶対やっちゃいけないこと」から共通の想いをあぶりだす、なんていうやり方は、ビジョンの抽出の仕方としては、あまりききません。

 行政の人などは、ほんとうにタテヨコに張り巡らされた「ルール」の中で「やっていいこと、悪いこと」を「ちゃちゃっ」と分類して、やるやらないを決めているので、「まず想いありき」で仕事をするということは少ないと思います。


 なのでそういう方法もありかと。

 (ここで急に心の声:とはいえ、時々この「ちゃちゃっ」というテンポが好もしく映るときもあります。いやいや深くつっこまないでください)


 
 最近ふと思い立って自分が2月に書いたブログ

 「楽しさ面白さで仕事が続かないわけ〜『認められる力』」
   http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51449502.html


 を、読み返しました。
 
 
 ここで、太田肇教授の著書から、こんな言葉を引用しています:


「問題はそれだけではありません。『楽しさ』、『面白さ』だけで仕事をしている人は挫折することが多いというのです。

 勉強だって仕事だって、楽しいときもあれば楽しくないときもあります。人間関係の煩わしさで心が揺らぐこともあるでしょう。まして仕事の場合、一人で根を詰めてやらないといけないこともあるし、楽しくない仕事に回されることだってあります。結果が出るまでに数か月や数年、あるいはそれ以上待たなければならないこともあります。そこでもたゆまず努力し続けるモチベーションは、使命感や志、それに野心です」


 2月のときも頷き、そして今も、うんうん、と頷いてしまった私がいます。


 「面白うて、やがて悲しき」。

 楽しい、面白い時間を共有できるときもありますが、それは毎年必ず訪れる花火の日のように、ひととき楽しみ、またそれほど楽しくはない毎日に戻るためのエネルギーチャージにするもの。


 毎日がクリスマスだお正月だ、なんてことはどの仕事もあり得ません。


 仕事の醍醐味はお客様の笑顔だ、と言いつつも、お客様の笑顔を1日みるために何カ月もの準備期間を費やすこともあります。
 

 組織論とか人材開発の話は、若い人向けの脳生理学的なモチベーションアップの話を入り口にして、

 しかし最終的には、人がビジネスパーソンとしてある程度成長を遂げたあとの、「周囲との関係性」や「時間軸」をきちんと見渡せるようになった状態でのモチベーションの維持向上を、理想形とするようです。


 そのふたつの間にはすこし距離があるような気がします。時間的にとか、人の成長段階においても。


 そこを埋める役割を果たそうと、この本『認められる力』は、しているのかもしれません。と今、気がついた。


 
 何人かの知人との心温まるメール。家人との電話。

 休みのない日々だけれど、小さな幸せがそこここにあります。