去る4月19日、加護野忠男・神戸大学大学院経営研究科教授と正田が対談させていただきました。
加護野教授の新著『経営の精神―われわれが捨ててしまったものは何か』(日本生産性出版)を読んで正田が感動。ぜひにとお願いして対談が実現したものです。
上記の本は『叱る』という行為について触れています。経営者の「企業精神」の発現としての「叱り」。
「今、叱れるリーダーが少なくなっていますよね」(加護野教授)
「少々の言葉の行き過ぎは本当は許されていいと思うのですが、今はハラスメントと言って厳しくとられる傾向がありますね」(正田)
というやりとりから、対談ははじまりました。
さあ、どんな話題が出るでしょうか…。7回に分けて、ご紹介いたします!
第1回は、「プライド」から生まれたシャープの戦略
■「精神」に理由をつけるのは難しい
■シャープの亀山工場売却は
加護野教授の新著『経営の精神―われわれが捨ててしまったものは何か』(日本生産性出版)を読んで正田が感動。ぜひにとお願いして対談が実現したものです。
上記の本は『叱る』という行為について触れています。経営者の「企業精神」の発現としての「叱り」。
「今、叱れるリーダーが少なくなっていますよね」(加護野教授)
「少々の言葉の行き過ぎは本当は許されていいと思うのですが、今はハラスメントと言って厳しくとられる傾向がありますね」(正田)
というやりとりから、対談ははじまりました。
さあ、どんな話題が出るでしょうか…。7回に分けて、ご紹介いたします!
第1回は、「プライド」から生まれたシャープの戦略
■「精神」に理由をつけるのは難しい
■シャープの亀山工場売却は
(1)「プライド」から生まれたシャープの戦略
■「精神」に理由をつけるのは難しい
正田:変な話なんですけれどわたくし盛和塾の塾生でもございまして、加護野先生がアメーバ経営の方のご研究もなさっているということを今回、このご本『経営の精神―われわれが捨ててしまったものは何か』で初めて知った次第なんです。お恥ずかしいです。ありがとうございます。
加護野(教授。以下敬称略):ああそうですか。盛和塾は何年ぐらい入っておられるんですか。
正田:もう4,5年入らしていただいてるんですが、幽霊塾生だったような年も含めて。
加護野:じゃあがんばって日本航空乗らなあかんね。
正田:はい、乗れっていうお達しが来まして。でもスカイマークユーザーなんで(笑)
加護野:東京での仕事が多いですか。
正田:いえ、私は地元神戸にこだわって、神戸で定期講座もさせていただいておりますし、お蔭様で公的機関様からも非常に、後援名義をいただいたり、ご支援いただいております。
加護野:正田さんはどこでコーチングの勉強をされたんですか。
正田:一番初めはコーチ・トゥエンティワンで、そのあとCTIジャパンで、そのあと同志社大学の太田肇先生と出会ったり、あと関学の武田建名誉教授のもとでしばらく勉強させていただいたり、ですね。
加護野:太田さんもご存知なんですか。同志社の。
正田:はい、うちの団体の顧問をしていただいております。
加護野:ああそうですか。彼は私のMBAのゼミの出身なんですよ。
正田:あ、そうなんですね。(太田教授は)神戸大の出身でいらっしゃるのでご縁がおありなのかなーと思っていました。
加護野:彼はMBAのコースに来ていてそのあと博士課程は京都に行ったみたいですけど。
正田:そうですか、そうですか。
このたびこのご本を出されて、拝見した時にものすごく経営学の流れからコンパクトにまとめてくださっていて。私たちなんかが読ませていただくとかえってこれでわかった気になったら怖いな、というぐらいのご本なんですけど。
加護野:経営学の感じをつかんでいただこうということで、前半に軽く書きましたね。
正田:これは、よろしければ、どういう意図のもとに書かれたご本なんでしょうか。
加護野:私はこれをまとめる積りはまったくなくってね。序文に書きましたけど、日本生産性出版の(編集者の)中村さんが来られて、『まとめませんか』と。たまたま私が一橋(大学)のビジネスレビューに書いたのを読まれて、書かれませんかと来られたんで、書いてもいいかと思って書いたんですけど。
正田:そうなんですか(笑)
加護野:ところが、最初の3章そして4章まではどうにか書けたんですが、5章の「どうするか」っていうところがなかなか書けなくってね。大変苦労して。そのうちにね、中村さんが亡くなってしまってそれでしばらく遅れてたんです。
正田:ああ、そうですか。
加護野:最近になって仕切り直しをして、ようやく。
正田:時間がかかっておられたんですねー…。
加護野:「精神」なんてものに理由を求めたら、何をしたらいいかってなかなかわからないですよね。重要ではあるんだけど。それで最後苦労したのかなと。
■シャープの亀山工場売却は
正田:ちなみに「精神」というところにおいて、加護野先生から及第点をつけられる経営者さんてどなたですか。
加護野:うーん…経営っていうのは、経営者だけがやるものじゃなくて、恐らくその企業にずっと脈々と受け継がれた精神があるわけですから、及第点を上げることのできる会社っていうのは随分たくさんあって、例えば関西でいうと、シャープさん、松下(現パナソニック。以下同じ)さんなんかはかなり頑張ってると思うね。とりわけシャープは頑張ってる。
正田:ははあ、それはどんなところから。
加護野:一番典型は液晶工場の売却でしょ、亀山工場はシャープの主力工場だったんですよ。その前は天理とか奈良に工場があったんですが亀山に大きな液晶の工場をつくって、これが主力工場だったんです。液晶に関してはシャープが一番初めにTVで商品化して、ずっと技術的にリードしてきたんですが、あとから技術を、言葉は悪いけど、パクる会社がどんどん出てきて、随分苦労されて。
そういう会社と対抗するために、シャープはかなり思い切ったことをしましたよね。中国の会社に亀山の工場を売ったんですよ。しかも技術指導つきで。そうして結局中国との連合で、韓国のパクリ企業と戦っていこうという、かなり大きな絵が描けている。そういう意味で、これはトップのかなり思い切った決断だと思いますが、こういうことができる企業というのは強いな、と思う。
正田:凄いことですね。その意思決定プロセスというのはどんなだったんでしょうねえ。
加護野:意思決定プロセスは判らないけれど恐らくそれを支えたのはある種の「プライド」っていうかね。
正田:プライド。
加護野:ただ単に利益を上げるだけじゃなかったと思うんですね。
正田:ははあ。プライドをもう少し言葉にするとどういうものだったんでしょうか。
加護野:それは非常に難しい。つまり「この技術は自分たちが作り上げてきたものだ」と。「それで自分たちが勝ち抜こう」と。
正田:なるほどですねえ〜。
加護野:経営というのは難しいのはね、持続的なものだから、ある段階で良くても次もそれでいいという保証があるわけではないですね。だから「精神」というのが大事で、それが支えていくんですね。
正田:これはひとつの成功体験にこだわらない、また捨てていく、という。
(以下第2回)
■「精神」に理由をつけるのは難しい
正田:変な話なんですけれどわたくし盛和塾の塾生でもございまして、加護野先生がアメーバ経営の方のご研究もなさっているということを今回、このご本『経営の精神―われわれが捨ててしまったものは何か』で初めて知った次第なんです。お恥ずかしいです。ありがとうございます。
加護野(教授。以下敬称略):ああそうですか。盛和塾は何年ぐらい入っておられるんですか。
正田:もう4,5年入らしていただいてるんですが、幽霊塾生だったような年も含めて。
加護野:じゃあがんばって日本航空乗らなあかんね。
正田:はい、乗れっていうお達しが来まして。でもスカイマークユーザーなんで(笑)
加護野:東京での仕事が多いですか。
正田:いえ、私は地元神戸にこだわって、神戸で定期講座もさせていただいておりますし、お蔭様で公的機関様からも非常に、後援名義をいただいたり、ご支援いただいております。
加護野:正田さんはどこでコーチングの勉強をされたんですか。
正田:一番初めはコーチ・トゥエンティワンで、そのあとCTIジャパンで、そのあと同志社大学の太田肇先生と出会ったり、あと関学の武田建名誉教授のもとでしばらく勉強させていただいたり、ですね。
加護野:太田さんもご存知なんですか。同志社の。
正田:はい、うちの団体の顧問をしていただいております。
加護野:ああそうですか。彼は私のMBAのゼミの出身なんですよ。
正田:あ、そうなんですね。(太田教授は)神戸大の出身でいらっしゃるのでご縁がおありなのかなーと思っていました。
加護野:彼はMBAのコースに来ていてそのあと博士課程は京都に行ったみたいですけど。
正田:そうですか、そうですか。
このたびこのご本を出されて、拝見した時にものすごく経営学の流れからコンパクトにまとめてくださっていて。私たちなんかが読ませていただくとかえってこれでわかった気になったら怖いな、というぐらいのご本なんですけど。
加護野:経営学の感じをつかんでいただこうということで、前半に軽く書きましたね。
正田:これは、よろしければ、どういう意図のもとに書かれたご本なんでしょうか。
加護野:私はこれをまとめる積りはまったくなくってね。序文に書きましたけど、日本生産性出版の(編集者の)中村さんが来られて、『まとめませんか』と。たまたま私が一橋(大学)のビジネスレビューに書いたのを読まれて、書かれませんかと来られたんで、書いてもいいかと思って書いたんですけど。
正田:そうなんですか(笑)
加護野:ところが、最初の3章そして4章まではどうにか書けたんですが、5章の「どうするか」っていうところがなかなか書けなくってね。大変苦労して。そのうちにね、中村さんが亡くなってしまってそれでしばらく遅れてたんです。
正田:ああ、そうですか。
加護野:最近になって仕切り直しをして、ようやく。
正田:時間がかかっておられたんですねー…。
加護野:「精神」なんてものに理由を求めたら、何をしたらいいかってなかなかわからないですよね。重要ではあるんだけど。それで最後苦労したのかなと。
■シャープの亀山工場売却は
正田:ちなみに「精神」というところにおいて、加護野先生から及第点をつけられる経営者さんてどなたですか。
加護野:うーん…経営っていうのは、経営者だけがやるものじゃなくて、恐らくその企業にずっと脈々と受け継がれた精神があるわけですから、及第点を上げることのできる会社っていうのは随分たくさんあって、例えば関西でいうと、シャープさん、松下(現パナソニック。以下同じ)さんなんかはかなり頑張ってると思うね。とりわけシャープは頑張ってる。
正田:ははあ、それはどんなところから。
加護野:一番典型は液晶工場の売却でしょ、亀山工場はシャープの主力工場だったんですよ。その前は天理とか奈良に工場があったんですが亀山に大きな液晶の工場をつくって、これが主力工場だったんです。液晶に関してはシャープが一番初めにTVで商品化して、ずっと技術的にリードしてきたんですが、あとから技術を、言葉は悪いけど、パクる会社がどんどん出てきて、随分苦労されて。
そういう会社と対抗するために、シャープはかなり思い切ったことをしましたよね。中国の会社に亀山の工場を売ったんですよ。しかも技術指導つきで。そうして結局中国との連合で、韓国のパクリ企業と戦っていこうという、かなり大きな絵が描けている。そういう意味で、これはトップのかなり思い切った決断だと思いますが、こういうことができる企業というのは強いな、と思う。
正田:凄いことですね。その意思決定プロセスというのはどんなだったんでしょうねえ。
加護野:意思決定プロセスは判らないけれど恐らくそれを支えたのはある種の「プライド」っていうかね。
正田:プライド。
加護野:ただ単に利益を上げるだけじゃなかったと思うんですね。
正田:ははあ。プライドをもう少し言葉にするとどういうものだったんでしょうか。
加護野:それは非常に難しい。つまり「この技術は自分たちが作り上げてきたものだ」と。「それで自分たちが勝ち抜こう」と。
正田:なるほどですねえ〜。
加護野:経営というのは難しいのはね、持続的なものだから、ある段階で良くても次もそれでいいという保証があるわけではないですね。だから「精神」というのが大事で、それが支えていくんですね。
正田:これはひとつの成功体験にこだわらない、また捨てていく、という。
(以下第2回)
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