8月5日に行われた「拡大版よのなかカフェ・日本人と仕事」公開対談の詳報を全5回でご紹介しています。


 北条勝利・ひょうご仕事と生活センター センター長と、太田肇・同志社大学政策学部教授(組織論)のビッグ対談。


 今回はいよいよ最終回:



(5)成果・行動ではなく「態度」を評価する日本、男女を意識しないヨーロッパ


■遅くまで残っていると評価される日本

■「この会社とともに成長したい」という気持ちも必要―北条

■仕事に集中させればがんばれる―太田
(5)成果・行動ではなく「態度」を評価する日本、男女を意識しないヨーロッパ

■遅くまで残っていると評価される日本



太田:それから少し話がそれるかもわかりませんけど、今まで成果主義が流行で、それが上手くいかなかったことへの反省から、「成果だけではなくてプロセスも大事だ」と言って、プロセスを評価しようという傾向が強くなってきました。


 ではアメリカなどではプロセスは見ないのかというと、アメリカでももちろんプロセスは見るんですね。また熱意も重視するんだそうです。やはり仕事をさせるのに熱意がないと、成果だけではだめですから。では日本と同じかというと、大きな差があるということがわかりました。それは、プロセスを私の言葉でいうと川上か川下か、ということだと思います。川下というのは成果につながるプロセスということ、そこを重視しています。たとえば研究開発でいうと途中の発表とか。まあ最近日本で流行っている言葉でいうとコンピテンシー、成果に近い行動。そこを重視しています。


 ところが日本の場合は、だんだんと成果よりもそこから離れていく傾向があると思います。つまり成果から行動へ、行動から態度へ、態度からさらには思想とか考え方まで、「君が仕事ができないのは人生観に問題がある」とかですね、「根性がなってない」とかですね。だんだんと成果、期待されている役割、そこから離れたところにいってしまう。そこに私は違いがあると思うんです。ですから、遅くまで残っていると「よく頑張った」と評価されるとか、休暇をとらないと評価に何らかの形で反映されるとか、そういった問題が出てきてしまう。それは休みにくいし早く帰りにくいといった問題にも関係していると思うんです。ですから私は最終的にはアウトプット、そことの関連で見ていく必要があると思うのです。


―成果と直接関係のない態度とか思想とか、そういったところでみるということで、色々な弊害が表れるということですね。



太田:誤解を招かないためにもう少し申し上げると、能力開発の場面で態度をみることはあるだろうと思います。態度や思想をみることが評価と結び付くことが問題だと思います。それと現場の能力開発とは切り離すべきだろうと私は考えます。


―たとえば「君のミスが多いのは仕事の姿勢が傲慢だからだよ」なんていうのは、確かにそういう指導もしなければならないわけですね。それと評価は別ということですね。ありがとうございます。

 それでは最後に、太田先生と北条センター長おふた方にお伺いしたいと思います。こういう現状の中で、今日も沢山の方がいらしていますが、はたらく人全般にはどんなことを望まれますか。また、経営者の方も今日いらしてますが、経営者、管理職、また人事労務関係の方にはどんなことを望まれますか。
 センター長、いかがでしょうか。



■「この会社とともに成長したい」という気持ちも必要―北条


北条:はたらく方に。派遣制度が自由化されてむちゃくちゃになった職場、会社を替わるのがええことやと、太田先生はそのようにおっしゃいました。あれは限られた人の話であって、それが当てはまらん人も多いやろと。もう少し、この会社に入った時の動機、気持ち、しっかり忘れずにそのままの気持ちをもっておれば、会社を辞めずに済んだというケースもあったんではないかとものすごく感じています。したがって、ぜひはたらく側の人は、「この会社とともに成長したい」という気持ちをもってほしいと思います。よっぽど今の会社では磨けないスキルがあってステップアップしていくために転職が必要ならともかくそうでなければ、今の会社の中でもっと力をつけていく努力をしたほうがよろしいと。そしてチャンスを作ったらええ。会社の為に汗をかきながら自分も成長したらええ。そういう風に思います。


 また仕事は個人でやる場合はともかく基本的にはグループでやるものですから、報告・連絡・相談、キーになるような情報がきちっと飛び交うような職場になるように、お互いに気をつけて。


 それと経営者管理者、人事労務担当者の方々に訴えたいのが、この企業が立ちあがった背景である地域社会にどう貢献していくか。人・物・金、この3つがきちっとバランスがとれている企業はいい企業として成長していきます。そこから、はたらく方々の意欲、活力が出てくる。企業にとっては従業員は会社の財産やと思っておられる社長さんもおられます。その通りやと思っているわけです。そういうことをもう一度見つめ直していただければありがたい。そのお手伝いをできればと思っております。


 また、かなりの企業で男女雇用機会均等法の考え方が入ってきました。女の人が結婚しても子どもが生まれても職場に残ってほしい、女の人の方も旦那さんと一緒に働きたい、という時代が目の前に来とるわけやから、働き続けられる制度、システムを構築する。


―ありがとうございます。はたらく人には、「自分がこの会社を良くしていくんだ」という気持ちを持って、そしてキャリアアップしてほしい。そして経営者さんには、人・物・金のバランスのとれた経営をお願いしたい。組合もまた強い気持ちで、はたらく人のために頑張ってほしい。女性が働き続けられる職場を。というご提言でした。センター長ありがとうございます。



■仕事に集中させればがんばれる―太田



―それでは、太田先生いかがでしょうか。はたらく人に、また経営者、人事担当者の方に。


太田:はい、今センター長がおっしゃったように一つの今の会社でがんばる、それは本当に大事なことだと思います。ただ、中にはそれで追いつめられてしまう人もいる。特にまじめな人はですね、「ここしかない」と思ったら、つい働き過ぎてしまったり、ストレス過重になってしまう人もいますので、私は色々な面でものごとを相対化してみることが大事だと思うんです。例えば私生活を犠牲にして猛烈に働く。若い人にもそういう人がいますけれども、だけどそれほどのものかなと。私生活を犠牲にするほどの価値があるのかなと。今の会社が絶望的ならほかがあるんではないかと。そう思うだけでもだいぶん相対化して考えることができるんではないかと思うんです。



 それから会社の方についてですけれども、先ほど管理過剰ということを申し上げました。色々な調査からみて従業員の尻を叩くだけではモチベーションは上がらないわけです。尻を叩かなくても、条件さえそろえば、例えば仕事に集中させて、集中して成果が上がればキャリアアップする仕組みがあるとか、そうであればほっといても従業員はがんばるんです。ですからその条件を整えるほうに力を入れていただきたい。


 それが一点と、もう一点センター長さんの方から、女性が長く働けるように、というお話がありました。それに関連して申し上げますと、最近の傾向として特に、セクハラとかそういった問題にかなりデリケートになっていて、一緒に働くという原点が見失われているような気がするんですね。半分は女性ですし本来の男女平等というのは男女が自然な形で一緒に仕事ができるんだと思います。


 その点ヨーロッパなどに行くともっとフランクですね。もっと自然で、例えばこれからプロジェクトに取り掛かろうというときはみんなで肩を組んで頑張ろう、というように。例えていうと小学校。小学校だと男とか女とかあまり意識しないですね。自然な形で仕事している。私はそちらの方がいいんではないかと思っているんです。


 ちなみに昨年、私の大学のゼミ学生たちが調査をしたのです。仕事をする中で異性と一緒に仕事をする職場と、同性だけで仕事をする職場とで、意識調査をしたところ、異性のいる職場の方が「仕事がつらい」と答える人が少ない、また「朝仕事に行くのが楽しい」とか、色々な指標ですべて上になっているんですね。要するに男性も女性も、異性がいるほうが楽しいしやる気が出る。これは自然なことだと思いますので、もっと男女が一緒に仕事ができる、そういう職場づくりを推進していただけたらと思います。


―ありがとうございます。私去年太田先生のそのヨーロッパのはたらく人の小学生のような雰囲気、ノリ、というものについてのお話を伺いまして、「いいなあ、それ」と思ってしまいました。私元ドッジボール少女でしたので、小学校のころは男の子とまじって走り回っていまして、そういう感じで仕事できたら楽しいだろうなあって思いまして。ありがとうございます。

 以上をもちまして「日本人と仕事」第一部、北条センター長と太田教授の公開対談の部を終了させていただきます。(了)



ききて:正田佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)



よのなかカフェ拡大版「日本人と仕事」8月5日アロアロにて
主催:特定非営利活動法人企業内コーチ育成協会Supported by (株)毛利マーク