『U理論〜過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』(C・オットー・シャーマー、英治出版)では、Uのプロセスの5つの動きを次のように規定します。


共始動(コーイニシエイティング)――人生があなたに求めていることに耳を傾ける。そしてそのことに関わりのある人や状況(コンテクスト)とつながり、共通の意図を持ち、互いに触発しあう仲間を招集する。

共感知(コーセンシング)――もっとも潜在性を秘めた場所へ行く。そして、ただ、ひたすら観察する。開かれた思考と心で耳を傾ける。

共プレゼンシング――静寂な場所に行き、深い叡智の源(ソース)を開き、内から出現しようとする未来につながる。

共創造(コークリエイティング)――生きている小宇宙のプロトタイプをつくり未来への滑走路を用意することによって、実践を通じて未来を切り拓く。

共進化(コーエボルヴィング)――より大きく革新的な生態系をともに築き、人々が「全体を見て行動すること」によって境界を越えて互いに結びつける場所を確保する。

(p.52 「はじめに」)



 さらに、U曲線を下る動きにはダウンローディング、観る、感じ取る、プレゼンシングという認知の場を移動していくことだった。しかしより深い認知の場に下りるにはヴァレラが語る関門を通らなければならない。それは保留(サスペンド)、視座の転換(リダイレクト)、手放す(レッティングゴー)という過程だった。


(略)


 私はグループがこれらの関門を通り過ぎるのを幾度となく見てきている。集団に大きな改革や変化のプロセスが起きるとき、その集団の社会的な場は以下のように深層で変化している。


ダウンローディング 過去のパターンを再具現化する――世界を自分の思考のいつもの物差しで見る
観る 判断を保留し、現実を新鮮な眼で見る――観察されるシステムは観察する者とは分離されている
感じ取る 場に結合し状況全体に注意を向ける――観察する者と観察されるものとの境界がなくなり、システムがそれ自体を見るようになる
プレゼンシング 未来の領域(フィールド)が生まれてくるもっとも深い源(ソース)につながる――源(ソース)から見る
ビジョンと意図とを結晶化(クリスタライズ)する――新しい考えを出現する未来から見て明確化する
生きているマイクロコズムをプロトタイプする 実践によって未来を切り拓く――新しいものを「宇宙(ユニバース)との対話(ダイアログ)によって」具現化する
新しいやり方・仕組みを実行・実体化する――より大きな共進化する生態系の中に根づかせる
(pp.72-73 「第2章 Uへの旅 リーダーシップの内面領域」)



 うーん、上記のうち上の3つまでは理解可能だがやはり4つ目のプレゼンシングあたりから自信がなくなってくる。それ的な瞬間は恐らく経験しているのだと思うが。「宇宙との対話」といったフレーズが出てくるとお恥ずかしい話、お手上げであります。


 とりあえず上の3つをしっかりやって、4つ目がそれによって切り拓かれるかどうか、観よう。


(しかし、それって結局「エスノグラフィ」ってことではないのかなぁ)



 大体、女性の私からすると感覚・感情的なものが思考や理性に優越すると主張する流派の人は往々にしてセクハラ的で、人の本質という名の本能は決して上品なものばかりではない、と思うのだ。



 
 ・・続いて著者は、「高次の『自己(セルフ)』がリーダーシップの最も重要な道具」ということを言います。


 次に認識しておきたいのは、すべての人間は進化する性質を備えていること、自己は一つではなく二つあることを知ることだ。過去の経験から生み出された自己や社会が存在することは確かだ。しかし私たちは未来へ旅することによってより次元の高い自己、人間、地域社会へ変貌することができる。それこそ未来の最も高次の可能性ではないだろうか。最初のタイプの自己を習慣的な自己(s)、二番目のタイプの自己を高次の自己(S)と呼ぼう。

 これら二つの「自己」が交わるときプレゼンシングの本質を感じ取ることができる。


(略)


 習慣的な「自己」とより高い次元の「自己」が交流するとき、未来の最も高次の可能性と深遠だが確かなつながりを持つことができ、過去の経験では解決できない問題を解決するヒントと道筋を得ることができる。(pp.75-76、同上)
 


”未来を旅することによってより次元の高い自己が生まれ、それと習慣的な自己が交流する時未来の最も高次の可能性とつながれる”




 ・・・これは自己撞着ではないだろうか・・・最初に未来に行きつくのはどうやるって書いてないよね・・・


 著者は12歳のとき自宅の農場が火事で全焼し、燃え落ちる自宅を観ながら、過去の自己が消滅してもうひとりの自己と置き換わる体験をした、とありますが、それはやはり特殊な道筋といえるでしょう。



 だんだん突っ込みモードになってくる悪い読者です・・・



 その次の一節はもう少しわかりやすいです。


 「リーダーの内面のワークは三つの敵と向き合い克服すること」と題し、その3人の敵とは、


●開かれた思考への入口を塞ごうとする「評価・判断の声(VOJ)」

●開かれた心への入口を塞ごうとする「皮肉・諦めの声(VOC)」

●開かれた意志を閉じさせようとする「恐れの声(VOF)」


「それでもリーダーシップの本質に迫るにはこうした恐れの声と向かい合わなければならない。そして『古い自己(self)』を手放し、『新しい自己(Self)』を迎え入れなければならない。」(pp.76-77,同上)


 このへんはよくわかる。



 どうも「基礎コースC」は部分的に、U理論的みたいだ。


(でも、そういいながらU理論をいまだちゃんと理解していないでツッコミを入れるようになった私・・・)



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