理研「脳と道徳」シンポジウムのレポート第二弾です。



 岡ノ谷一夫氏(理研脳科学総合センター 生物言語研究チーム チームリーダー)は、

「道徳は感情と言語の相互作用によって起こる意思決定のプロセスである」と言います。


 そして「ルール」から「行動」を決めるメカニズムとはどんなものかというと、


 ある刺激が海馬、内側前頭前野といった「道徳フィルター」を通って善悪の判断を下され、扁桃体に入り、そして扁桃体がルールを破る行動に対する反応を引き起こす。環境の刺激を検知し、ルールに反する場合回避行動、不安、恐怖、を引き起こす。


 
 さまざまな生物を使った実験では、


 あるげっ歯類では、互いに毛づくろいしたり軽い仲間内の喧嘩をするという、社会的行動をとることで知られています。ところが海馬を損傷すると、この社会的行動は流血の殺し合いになりました。これは行動的な文脈を見失ったと考えられます。


 またあるネズミでは、副内側前頭前野が損傷すると女王ネズミに対するあいさつの回数が崩れることがわかりました。この部位は社会的階層を認識する、認知する役割を果たしていると考えられます。


 キンカ鳥での実験では、オスがメスを惹きつけるために歌を歌います。しかし扁桃体を損傷すると発声回数が減りました。性的行動に変化が起り、歌を歌う⇒あいさつをする⇒毛づくろいをする⇒交尾する の順番だったのが、順序を飛ばしていきなり交尾に入ろうとします。恐怖の感情を失い、相手に拒絶されることを恐れなくなった(から、拒絶されないために必要な手続きをすっとばした)と考えられます。


 
 こうして、moral sense=道徳観を形成するもの、

 どの器官がどのような道徳的フィルターの役割を担い、最終的に道徳的な行動につながるのかがわかってきました。



 
 このほか「不公平提案のゲーム」「囚人のジレンマ」などを使った実験で、人は不公平を嫌悪し、自分が損をしてでも不公平を避ける行動をとること、この拒否は未就学児や霊長類でより強く、拒否とは感情的な反応であること(山岸俊男・北大教授)、などの知見がおもしろかったです。




 質疑では、「道徳観の習得に臨界期はあるか」との質問に対し、

「非常に関心の高い問題。5歳までが重要かもしれない。Attatchment(愛着)が育つ時期。孤児院で育った子は愛着が育ちにくいと言われる。しかし成人後に道徳的見方がかわる例もあり一概に言えない。」(ブルーム教授)


 
 これも大事なポイントかも、としょうだは思ったのでありました。


 起業家教育でも、ビジネスモデル構築やファイナンシングの教育に関心がいきやすいですが、ある人の中の倫理規範がどう育つか、起業家教育の中で育てられるのか、はなかなかむずかしい問題です。


 コーチング教育に対する個々の管理職の反応の良さ、にもつながるかも。最終的には、そのひとがこども時代にどう育てられたかが重要になってくるのかも。


 もちろん、英才教育一辺倒で「他人を押しのけてでも成功せよ」と教えられ成績がわるければ罵倒されるようなご家庭や幼児教室で育っていたら、先行きは暗い、といわなければならないかも。


 発表された知見は、ひょっとして今まで書籍で知っている範囲のことかも?というものもあり(こらこら)こうしたシンポジウムを無料で主催することに理研の置かれている立ち位置などもちょっと感じたりもするのですが(裏読みしすぎ?)しょうだにとってはたいへん有意義でございました。




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