第25回よのなかカフェ「新エネルギーと節電を考えよう」を開催しました。梅雨の晴れ間の6月2日(木)、19時より「アロアロ」にて。


 お客様10名、スタッフ3名の計13名での議論となりました。

 集まられたのはネットショップ経営、自治体サイト運営スタッフ、元企業の自家発電担当者、企業研究所顧問、企業広報部長、議員秘書、コールセンターマネジャー、といった人たち。


 冒頭、ファシリテーターの山口裕史さん(フリージャーナリスト)より、エネルギー問題の概況を説明。


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 2030年には世界のエネルギー消費量が2005年の1.6倍に増える見通し。今は多くが化石燃料に頼っている。エネルギー資源には限りがある。石油で42年、天然ガス60.4年、石炭122年、ウラン100年。 

 エネルギー自給率の話。日本は国際的にみても非常に低い(19%) 石油は99.8%を輸入に頼る日本。これに近いのはフランス。 

 一方京都議定書でCO2をいかに出さないかが求められ、石炭、石油、LNGは排出量が非常に高い。


 発電コストでいうと原子力は安いと表現されている。天然ガスも比較的安い。対して太陽光は40円ぐらい。風力で10円から10数円ぐらい。


 オイルショックで世界各国脱石油をめざし、石油依存度がだんだん減ってきた。それに代わって台頭してきたのが原子力。


 主要国の電源別発電電力量の比較。原発への依存度が抜きんでて高い国はフランス。日本、韓国も高い。ほかにはドイツも原発依存度が高いが、ドイツはバイオマスや再生可能エネルギーに熱心に取り組む。 


 ドイツは今週初め、脱原発にかじを切りました。17基ある原発のすべてを廃炉にする方針。


 それでは関電エリアでは。実は日本の中でも関電エリアは原発依存度が一番高い。48%。福井県に集中。


 エネルギー自給率の内訳。1950年代は自給率58%の時代があった。バイオマス、水力。そこから石油、原子力にかじを切るにつれて自給率が低下。


 新エネルギーはまだまだ効率が悪いのではないかという議論。デメリットを抱えている。しかし世界に目を転じると、日本と比べて先進国は再生可能エネルギーに力を入れている。


 ヨーロッパは太陽光よりも風力に力を入れている。デンマークは30%以上風力発電。それに比べると日本は再生可能エネルギーへの取り組みはまだまだ微々たるもの。


 新エネルギー、再生可能エネルギー、言葉の定義。再生可能エネルギーは太陽光のように使っても使っても無尽蔵にあるもの。 新エネルギーは国が定めた言葉で、経産省の補助金の枠組みに入るもの。たとえば海洋エネルギーはその中に入っていない。


 と、ここまでが山口さんによる概要説明。

 ここから、「昨年まで年間10回以上海外出張しエネルギー事情をみた」という企業技術顧問の方より補足。


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 再生可能エネルギーについて、日本は去年6月に新成長戦略というのを出してその中で再生可能エネルギーについての方針を出した。


 風力は風が要りますから僻地でないといけない。ヨーロッパではだんだん場所がなくなって今は海の上に風車を立ててやっている。デンマークはそういうやり方。ドイツが先日原子力全廃。3・11の直後にメルケル首相が1980年以前につくった原発をとめてしまった。


メルケルはキリスト教民主党。社民党は反対していた。シュレーダー首相のときに一度原発全廃を打ち出した。SPD時代にそれを打ち出したのは、ドイツはもともと反原発がすごく強い。 今度の放射能事故でドイツ国民の世論が盛り上がり、メルケルもこれはまずいということになった。ドイツの反原発は止まらない。 



 
 ヨーロッパがこんなに自然エネルギーに一生懸命なのは、エネルギー安全保障という問題。フランスが親原発なのはドゴール時代に。 今後国際問題の根本はエネルギーと食糧だ。


それに備えてヨーロッパは域内で食料を90数%自給できるようにした。エネルギーはまだできない。ドイツも原発を全部やめてしまうんだから、新エネルギーに賭けるしかない。

 
東電がああいう形になったのは、発電も送電も独占しているから。世界ではこれらを分離するのがふつう。


1か所でああいうことがあったとき送電網が非常に弱い。ドイツでは発電、送電を分離してしまったので、送電網を整備するのに数兆円かかる。それを民間企業がやるので、電気料金にはねかえる。日本は世界一高い電気料金と言われていたが、今やヨーロッパの電気料金はどんどん上がっていて日本を追い越した 


新エネルギーはコストが高いから消費者が負担しないといけない。太陽光発電の比率が上がっているのでどんどん電気代が上がっている(ヨーロッパ)。


 ただやっぱりすごいなと思うのは、そういうデメリットがありながらも脱原発をしている。私はエネルギー問題の基本は省エネだと思う。京都議定書でCO2排出の目標値が出ているけれどそれは省エネをしなければ達成しない。

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電力使用量を抑え込むというシナリオを世界で描かないといけない。ドイツに有名な町がありますが、エネルギーのマネジメントをしている。ドイツは寒い。太陽光をとりこむ家の構造にして発電だけでなく熱エネルギーを利用する。 昼間の熱を蓄熱して夜使う。


エネルギー問題を考えるときはそういった住生活に取り組むこと。最近スマートシティという考え方。もう少し分散型の電源。そういうことを復興計画に盛り込んでもらえたらいいなと思うが。


 ここまで、企業技術顧問のIさんのお話でした。


 ここから2グループに分かれてGディスカッション。


「私は過激な意見なので。水力発電も何かあったら、水が決壊したらというのはある。火力発電もそう。原子力が多大なリスクを負っているのは当然のこと。

原子力がリスクが大きいからやめるべきかというと、リスクを絶対的に制御して使うべきだというのは私の考え方。原子力は熱エネルギーに変換している部分がかなりある。今のマスコミは現実を反映していないのではないか。」(定年退職者、男性)


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「私は原発はどちらかというと反対。発電コストが安いという話ですが、今回のような事故が起きたら補償にものすごいお金がかかるじゃないですか。コストが安いというのは間違いであると思う。」(ネットショップ経営、女性)


「一面的なデータだと思うが太陽光発電とかの発電コストが高い。原発の大体8倍くらい。事故が起きたときにこうむる損害が8倍かというとそれではすまない。友達が福島に住んでいて女性なのですごく心配。」(サイト運営、女性)


「事故を考えた時に被害があまりに大きい。何かしらほかのエネルギーを考えないといけないのかなと。」(同)


「今の生活がすごく原発で支えられているので、暮らし方を見直す覚悟がないといけないのかなと。自分の住んでいる土地が放射能に侵されていくことを考えるとすごく不安。」(同)


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「ちゃんと制御して使うということも、もう少しちゃんとしないと。専門家の意見がTVで出るけれどだれの言葉も信じられない。」(同)


「日本は両面提示されることに慣れていない。私たち受け取り手が両面提示に慣れていないし、発表する側も両面提示に慣れていない。メリット、デメリット。今まで何回も小さな原発の事故が起こって中で働いていた人が亡くなって。それでも安全だ安全だと言い続けている。」(ネットショップ運営、女性)


「今現在、原発を止めることのデメリットをもっと伝えるべき。例えば採算性の悪い火力発電を使うとか。浜岡を止めたらなんぼの経済に影響を与えるかという話が伝わっていない。

私はセメント会社にいた。新人で入社してオイルショックになり、石炭に転換したりバイオマスを試したりした。そういうことを電力会社がやったかというと意外としていない。私らは少しでも安いものを選んで選んでやっていた。

ニュースのデメリットの側面をちゃんと伝えてほしい。また電力会社の高コスト体質をかえてほしい。

自家発電で売電というのもやってきました。しかし故障したら電力会社からの電力でまかなわないといけないので、ある程度以上増やせられない。自家発電を60%程度に増やした。容量としては100%にできた。 

海外企業との価格競争力がなかったら日本でものを作れない。 そこまでやる覚悟があるのか。」(定年退職者、男性)


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「原発ではそもそも熟練工がつくれない(生涯被ばく量が一定量を超えると退職してもらわないといけないので)。すると事故のリスクを完全に制御することがそもそも難しい。それは他の発電と大きな違い。 」(正田)


「火力発電にするには結局火力を外国から買わなければならないということも、そろそろ市民が知っていかないといけないのではないか。」(定年退職者、男性)


「石油や石炭を輸入に頼らなければならないという話、尖閣諸島の周辺に石油の埋蔵があるときいたが。」(ネットショップ経営、女性)


「メタンハイドレートは確かに日本は進んでいるが、まだまだコストは高い。当面は天然ガス、石油、石炭でまかなわないとまずい。 民間企業がこれは採算になると思ったら(新エネルギー)結構やってますよ。私自身、山林の間伐材をチップにしてもやすようなこともやって回った。その結果やらないことも多い。マスコミに載ることが少ないだけであって。CO2がらみで断熱材もやったし。そういう話はなかなか一般に流れてこない。

新エネルギーを取り入れるのであれば、コストが高いので高い電気料金を我慢しないといけない。それだけの覚悟があるのか」(定年退職者、男性)


「これから節電ということを考えていかないといけないときに、考えてらっしゃいますか。」(山口)


「あんまりみみっちくやりたくない。経済が落ち込んでいるので。 消費電力をちゃんと記録して、毎月何にどれだけ使っているかみるとか。そういう見える化をしたらいいんじゃないか。一日中PCがついている家なんで(笑)」(ネットショップ経営、女性)


「具体的なことが思い浮かばないですがほんとに身近な、コンセントをまめに抜くとかはやっています。」(サイト運営、女性)


「東京に友達がいて、会社とかすごく暗くしているらしい。冷房つけてなくて暑いし東京が全体的に暗い。百貨店が早くしまるのも昔はそうだったんで。 ただそうなると経済が回らない。」(同)


「津波を感知するような機械が開発されていたのに日本にそれが1こしかない。そういう技術があるのに知られていない、使われていない。企業がアピールしたらいいのになと。」(同)(「SPEEDIという放射能漏れ検知システムがあったのにつかわれませんでしたね」)


「お役所の電子化もとても非効率なやり方で。書類を郵送して帰ってきて初めて使えるとか、Windowsしか使えないとか。昔、市役所の関連のホームページの仕事をしていたが、ユニバーサル化といってHPの内容を全部読み上げられるようにしてくれとか、中国人の名前を現地のフォントにしてくれとか、そうすると読み上げソフトが動かなくなるとか。」(ネットショップ経営、女性)


「企業はCO2の排出権を買わないけなくなるから、それがいやで進んでる。何千万も出して買うんだったら、何百万か出して発電した方がとくですから 」(定年退職者、男性)


「コストを下げるための投資を、企業さんなら必ずすると思うんです。兄の家がマンションで電気を全部LEDにかえた。少し暗い。長い目でみたら投資になりますけど」(サイト運営、女性)


「ここで10万円かけて全部LEDにかえたら将来的に低コストになると、しかしその10万円がかけられないというときは低金利で貸し付けるとかすれば。今、お金を借りやすくなった方が経済的にも活性化するだろうし。住宅を建て替えるのもお金がかかるし。安い金利でお金を借りられれば、企業さんも儲かるし、お金を動かさないと経済は回らないから。」(ネットショップ経営、女性)(「それは重要な視点ですね」と山口氏)


「去年築20年の家のメンテをしたが、太陽光も検討した。しかし老後の夫婦2人だとペイしない。それよりは2重サッシなどをした。メーカーさんの提案をうのみにしないで、自分のライフスタイルに合わせて考えることが大事。」(定年退職者、男性)


もう一方のグループでは…


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(参加者Mさんメモより)

東京での現状、省エネは勿論だが、東電の使用量削減がメインでは無いのか?


■原発・新エネルギー

「意識が無かった、原子力は安全なモノだと思っていた、原発はドラッグだと言われている
リスクを知る必要があると思った」

「原発の比率が気がついたら大きく伸びていた、昔のミュージシャンが歌ってた記憶
原発老朽化も…、仕事柄使わないわけには行かない」(お菓子製造、女性)




「オール電化=安全の意識があった、明石在住なので潮流発電に興味ある」(政治家秘書、女性)


「鉄鋼関連で原発の関連部品も扱ってた、技術屋として想定外は禁句。
科学を活かすための技術のはず、私は今も原発推進派です
日本は慎重派だから安全だと定着していた」(技術顧問、男性)


「一過性の話題に成らないで欲しい、この夏を乗り切るだけでは済まない筈
見える化の必要性がある」(マネージャー、男性)

■節電・省エネ
「自宅の電気を消す程度、会社の昼休みは電気が消えてる」


「世の中の流れ、自分は省エネにほど遠いと思っていた、発想の転換」


「優先順位をつけるべき、工夫が必要(個人・地域・企業)
TVの付けっ放しを消すだけで、六割とか削減出来るなんて話もあった
いきなり無くす訳には行かないのではバランスを考えながら使う…」


「スマートメーターの説明
電気だけでなく石化燃料も含めた省エネが必要ではないか」


「サンフランシスコでは相乗りでなければ走れない車線がある
日本でも可能では?」



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 最後に司会から、


「電力会社の取材でも情報を鵜呑みにしていたことがあったのを反省する。皆さん情報に触れるときに、一時情報なのか、本当なのか、大変だけど確認して、ご自身で判断する癖をつけてください。」


正田から、

「震災後何度か東京に行ったが、余震もあるし節電も徹底してやっているし、東京の人は『自分ごと』なのを実感する。関西にいるとそれはあまり見えてこないと思う。新聞や雑誌のエネルギー特集でも、一見両論併記だが、『海外ではこんな風に取り組んでいる』という情報があまり入っていないことに気づく。それがあると印象はガラッと変わる。意識的にアクセスすれば情報はとれるので、皆さん情報は主体的にとりに行ってください」


・・・と、ちょうどお話が来月のテーマに触れたところで「お開き」になりました。


 来月は7月7日、「情報とどうつきあうか?」というテーマで、アロアロさんで行います。


神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp