6日、DIAMONDハーバードビジネスレビュー創刊35年記念セミナー・「リーダーの役割と使命」に行きました。東京・椿山荘フォーシーズンズホテルにて。


 伊丹敬之(ひろゆき)・東京理科大学教授と三枝匡(ただし)・ミスミグループCEOの講演と対談。


 いずれも「濃い」内容で楽しめました。2回にわたり、その模様をご紹介します。

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 伊丹氏の講演で最も印象的だったことは、

「リーダーの鍛え方」として、

「名経営者はかならず名教育者。教育者を目指すのが、一つの鍛え方」

ということでした。


「経営と教育、二つの作業の本質が似ている。
たんに、人材育成の大切さが共通点の本質ではない

経営の要諦:
(a) 部下たちに仕事全体の方向を指し示す
(b) 部下たちが仕事をしたくなる、やりやすくなる環境を整備する
(c) その後は、彼ら自身が自分で仕事をやるプロセスを刺激する、応援する

教育の要諦:
(a) 学生たちに学習全体の方向を指し示す
(b) 学生たちが学習をしたくなる、やりやすくなる環境を整備する
(c) その後は、彼ら自身が自分で学習するプロセスを刺激する、応援する

(ほら、「学生」を「部下」、「学習」を「仕事」に置き換えても全然問題ないでしょ?と伊丹氏)」

経営も教育も、ともに人を動かすこと。」


と、いうのでした。


このあたりは正田の実感とも大いに符合しました。


私的にまた我田引水すると、コーチング研修の意義とは、単にマネージャーたちに人を育てるノウハウを憶えてもらうことではないのです。

経営者として、人を動かし人を通じて経営をすることを憶えてもらうことでもあるのです。

だからミドルマネージャー研修であると同時に、次期経営者育成コースでもあるのです。

こういうことを経営学の側から言ってくださる伊丹氏はまた、名著『よき経営者の姿』(日経新聞社、2007年)の著者でもあり、この本はエグゼクティブ・コーチングのお客様にプレゼントしたことがあります。

この日冒頭に講演したHBR誌編集長によれば、かつてH・ミンツバーグ(これも私の私淑する人です、はい)にインタビューした時、

「君、日本にはイタミがいる。私はイタミほどスマートな日本の経営学者に会ったことがない」

とミンツバーグは言ったそうであります。



 このほか伊丹氏講演の要旨:


 リーダーシップの鍛え方は、まず自分を鍛えること。また外から学ぶとすれば、学び方には3通りあり、

1)特定のリーダーの言動を深く学ぶ
2) リーダーシップ理論を深く学ぶ―あまりお勧めしない
3)さまざまな事例から学ぶ

 そして1)のよいリーダーの事例として「本田宗一郎」を挙げます。伊丹氏は本田宗一郎の評伝を書いているそうです。  ・・・私自身も「スパナで人を殴る」タイプかも、と思うときがあります。はい、すみません。


理論から学ぶリーダーの条件として、

リーダーに必要とされる三つの資質:
A. エネルギー
   土光敏夫のバイタリティ公式 
    バイタリティー=知力×(意力+体力+速力)
  ※なぜ知力が×になっているのかというと、論理性が大切だから。

B. 決断力
   決断力=判断力+跳躍力
C. 情と理のバランスよきミックス

そして現代に育つ経営改革リーダーにも、三つの要諦があるのだとします。
A. 論理性
B. 原理(理念)の大切さ。経営の具体策=原理(理念)×環境
   ※環境が変わっても原理を変える必要はないことが多い。
     原理まで変えよという「アメリカではの守」の愚かしさ
C. 決断。捨てる決断も大切
  

・・・だんだん、レジュメの丸写しのようになってきたので以下省略しますが、このほか印象的だった言葉言葉をご紹介します。


「本田宗一郎は戦後浜松での『第三の創業』翌年に『世界一になる』とぶちあげた。その志はどこから来たか。大きな志をもつ人のそばにいると、大きな志が生まれやすい。当時水泳の古橋広之進(浜松出身)が、プールを1往復ぶっちぎって優勝し、日本人の心に火をつけた。」

「リーダーの育つ条件として、仕事の場の大きさがある。考えるスケールを変える。現代の不幸は仕事を細かく切り刻み低成長。無理やりにでも仕事の場を大きくしないといけない」

「人は、志の高さに応じて、日ごろの仕事の大きさに応じて、日ごろ考えることの深さに応じて、育つ。小さいことを考えている人は、小さく育つ。大きいことを考えている人は、大きく育つ」

当たり前のことを、多くの人々に(他人に)きちんとしてもらうことのむつかしさが、経営のむつかしさ。戦略を考えるよりも組織構造を考えるよりも大切。」

「仕事の現場には、つねにカネ、情報、感情という三つのものが同時に流れている。この三つをつねに総合して考える、「三眼の発想」が必要。しばしば、カネの流れという見えやすいものに過大な注意が集中する。どうやってカネの流れを軽視してみるかが要諦


「(よき経営者の姿で使った)『リーダーの切断力』という言葉の由来を対談で三枝氏に問われて。決断力のある経営者に話をききながら、『完全に断ち切るにはどうしたら』という言葉があり、それを反芻していたら『切断力』という言葉が出てきた。決断力では弱い、切断力という言葉を使った。ずるずる悪くなっている状況、みんなが見て見ぬふりをしている状況をどこかで「切断」する。それができる人は明らかに性格。切るのはだれかに小さな苦しみを与える。しかしあとで喜びを与える。その足し算、引き算ができる人」


「『偏界曾て蔵さず』。あまねくこの世界のどこにでも、真理は蔵されずにじつはあらわれている。それが見えないとすれば、それは見る側の意識と心の問題。この言葉は道元禅師が、宋の国寧波の寺の典座阿育王からきき、終生この言葉を座右の銘とした」



上記の「偏界曾て蔵さず」の言葉について思うこと。このところまた「脳科学本」にかぶれている正田ですが、「セロトニンの足りない状態(鬱のような状態)の人は、長期的報酬を考えられない。短期的報酬に飛びつく」という知見があるそうです。


「お金が足りないからコーチング研修を受けれない」「時間がないからコーチング研修を受けれない」という人は、研修の数か月後に得られる業績(お金)や効率(時間)という長期的報酬を考える力がないから言っているのかもしれません・・・
(それは、研修参加者が「学ぶ」「実践する」という要素に依存するものではあるものの、「こういう教育」を通じてしか起こり得ない好ましい変化なのです)



講演・対談終了後にはまた図々しくお名刺交換に行き、
「ミドルマネジャーの支援をしております」
というと、
「それはいい。ぜひ支援してください」
というお言葉が返ってきました。


・・・「正田のコーチング」は、このあたりの賢い経営学者の言うことと矛盾が起きないようにつくってあるのです。


ここまで書いて伊丹氏による本田宗一郎の評伝『本田宗一郎―やってみもせんで、何がわかる』(2011年、ミネルヴァ日本評伝選)を注文してしまいました。


神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp