さて、「言い切り/断定」「恫喝」の教育手法と受講生の意識変性にまつわるお話です。



以前、ある講師の先生(お名前と分野は秘す)をNPOの例会にお招きしたところ、

かなりきつい「断定口調」でものを言われ、
「逆らう者は悪」という口吻で語られ、
かつ論法の中にいささか強引なところが目についたわけです。

その当時、社会正義と思われていた(今ももちろんそうではある)分野の方でしたが。


その結果、参加者はどのような状態になったかというと、

威勢のいい、そして美しい女性の先生でしたが、
若い女性参加者ほど、
うっとり見上げる。

「社会正義」を代表して、「勝ち組」になっている先生、
にあこがれの念を抱く。
「この先生についていけば、私も勝ち組になれる」
と思うのかもしれない。


その状態になると、ロジックの中の強引さはあまり気にならないみたい。

むしろ少々強引なロジックを言ったほうが、
その先生の優越性を証明することになるかもしれない。
・・・しかし、おうちや職場に帰って自分が習ったことをうまく他の人に伝えられるんだろうか。


でも、多分いいんです。
その状態になった人たちは、
リアルの世界で出会った人々に首を傾げられると、
「パンピーはだから困るのよ。わからなくて」
っていうふうに思います。

カリスマの強引なロジックに巻き込まれた人は、
一般社会で出会う人とコミュニケーションがとれなくなります。
見下すようになります。


正田が、セミナー・研修の中でも普通の人っぽく語っているのは、
こういう理由があるというのを、
受講生さん方はわかっていただけるでしょうか。

(いえ、単に体力がないだけ、というのもあるんですけどね。
あと自己陶酔するのはヘタですね)



正田は、「語りの力/雄弁術」で納得していただくことは
しないようにしています。
できるだけ聴き手のかたが、「内容」に神経を集中して聴いてもらえるように。

時々、いかにもボイストレーニングを受けた美しい声のスピーカーもみますが、
実はあまりに美しい声、美しい語り口は、
聴き手の脳を「音楽鑑賞モード」にしてしまい、
内容を注意ぶかく吟味・咀嚼することはしない状態にしてしまいます。

「正田の語り口」は、
受講生様方が、穏やかな理性的な心の状態で、
聴いた話を何度でも咀嚼し、批判思考をし、
そのうえでとことん納得して受容してもらうことを意図しています。

研修のあとで何度思い返しても、
そのときのロジックを正確に再現することができ、
第三者にも話すことができ、
他で得た情報と照合しても矛盾がなく、
自分の行動指針にすることも抵抗なくできる、というもの。

有能なリーダー・マネジャーには、
そのレベルの品質のものが必要です。



しかし、「人前で話す」とか、「大人相手にものを教える」という立場になって、
強引なロジックでねじ伏せてしまいたい、
その場の思いつきで人々を引っ張り回したい、
という欲(煩悩)をもたないでいるのは、むずかしいことです。

「子どもは生まれたときにはみんな一緒なのよ!!」

そう言い切って、
聴き手が「ほ〜」となってくれるなら、
言い切ったほうがたのしいじゃないですか。
そして自分のことをすごい人だ、この人についていこう、
と思ってもらえるなら。



正田がこの仕事に入って11年、
これまで何度か他の研修講師の方と一緒にお仕事させていただく機会が
ありましたが、
残念ながら私のそんな基準をクリアしてくれた方は少数でした。
非常に高いレベルのごく一部の方々でした。
なので、最近は他の先生とご一緒にお仕事することは少なくなっています。


もし、正田とご一緒に「企業内コーチ育成講座」の講師をしたい、という方がいらしたら、
その場合人前で話をされる内容について厳密な管理をさせていただきますことを
ご了解いただきたいと思います。
私は、事務的なもろもろのことはそんなにうるさくないのですが、
こと「講師としての心のもちようや発言」については異様に厳しく、スパナで頭を殴るタイプの人になります。


去年、「人に教えるということ」という題の記事をこのブログに書きました:

http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51754001.html


この記事はその後、キヤノンの柏原さんが職場で配った、と言われていました。
職場でのOJT、ティーチング、に大いに役立つ考え方だ、なかなかここまでまとめて書いたものはない、と言っていただきました。「この通りすれば、みんな教え上手になるでしょうね」と柏原さんは言われました。



勝ち組になりさえすればいい、という人も沢山みるけれど。
それは、中長期の幸せは生みませんから。


数か月に1度、これに類することを言っている気がします。


あれです、
「ボールを見てボールを見てボールを見て、ナイスキャッチ!!」
というやつ。
受講生様方は、おわかりになりますね。



神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp