ひとつ腑に落ちた。


 このところ出会う、妙に追い立てられるように早口の人々。


「ワークライフバランス教」の信者の方々なんだと思う。


 この感覚は、そういう人と出会ったことのある実体験をもった人でないとなかなかわかっていただきにくい。


 この分野の講師の先生は、独特の猛烈な早口でしゃべる。いかにも頭良さそうに、2時間か2時間半の間に、ありとあらゆることにささっと触れながらしゃべる。頭もそうだし身体能力もすごいと思う。


 この件には以前にもブログで触れたことがある:

「ワークライフバランスの人はみんな早口♪」(2010年12月)

 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51537683.html


 
 これまでの私の観察によると、これらの早口の人々は会話を短時間で終わらすことを何よりも大切なことと考え、早口のあまりハイテンションで人を傷つけたり、「言ったつもり」「伝えたつもり」で仕事のロスができることにあまり頓着しない。

 ほんとうはもっと落ち着いてしゃべったほうが仕事のロスが少なくて、効率がいいんじゃないの、などという見方は受け付けない。だって講師の先生はあんなに早口なんだから。


 あと早口で自分の頭の良さに自信を持っていて、相手の反応にあまり関心をもたず自分の頭の中でストーリーを作ってしゃべる傾向があるので、「ひとりよがり」気味でもある。相手を黙らせてしまう。その場では、「勝った」ことになる。


 こういうのは本来のワークライフバランスのあり方ではなく、それの「布教方法」の問題なのだと思う。


 対話は大事、わかり合うことは大事。情報を正確に受け渡すことは大事。相手がちゃんと受け取ったか確認することは大事。複数の人で仕事してるんだから。受け渡しに失敗することが事故につながることだってある。

 「U理論」などでは2日も3日もかけて延々と対話することを推奨するから、WLBとは真正面からぶつかり合うといえる。

 よのなかカフェのような「対話(=リアル会議)」の形式を、WLBの分野の人が批判した文章をみたこともある。


 WLBの先生は早口なうえに結構「上から口調」でしゃべって「偉そう」でもあるので、コーチングの先生なんかより社会的地位が上っぽい。


 ひとつの新しい教えに出会ったとき、それにどの程度手放しで「かぶれる」かは、教養の問題だ。


 心痛む実話のエピソードをひとつ言うと、かつて一緒に仕事をしたある女性が、急に言動がおかしくなり、れいの「取り憑かれたような躁的な早口」をともなった。WLBの講師の方の話をききにいって「かぶれた」のと、もう1つアメリカ人の学者の話をきいてやはり影響を受けたという、これは話を総合すると「自己愛のすすめ」のようなものだったのではないかと思うが、私をさんざん罵って一緒にしていた仕事を辞めた。

 この人は起業家のはずだったが、その後数年経って検索してもほとんど名前が出てこない。同姓同名の人ばかりだ。おそらくあまり成功しなかったろう。

 「病的な早口」と「自己愛のこころの構え」は、仕事にいい影響をもたらすはずがない。

 だが、大企業の人事などにいると、現場・末端で仕事にどう影響を与えるか、想像が働かないと思う。



 WLBの本場アメリカでも、WLBは結構ナルシシスト社員の食い物になって、真面目な働き手がその割を食う現象があるらしいのだ。

 たしかにWLBがすきなひとって、本当の育児とか介護の必要がある人というよりは自己愛っぽい。

 「仕事も趣味も大事にする、人生欲張りな僕・わたし」が大好き。

 どうかすると、「趣味に生き、仕事は片手間な僕・わたし」に傾く。




 あと前のブログとも重なるけど「最上志向」「自我」あたりがあると、早口な人が偉いようにみえるみたいだ。

 彼ら・彼女らには、

「早口=賢い・優れている・偉い・地位が上」

「ゆっくりな話し方=愚か・劣っている・地位が低い」

という、誤った信念がある。

 以前にも言ったように、「人は、自分のもともとある好みを強化するような情報に暴露したがる」のであり、もともと早口傾向の人は、「そうか、早口は正しいことなんだ」と信じ込むと、際限なくそっち方向に行く、まるで不毛な競争をしているように。(こういう人達は、たまたま幸運にも「承認研修」を受けたとしても、そのあとまた「早口研修を受ければ、すぐまた見下しに満ちた人間に戻る)


 ほんとは、あらゆる可能性を考えながらしゃべる「戦略性」の人だと、話し方がゆっくりになったりするんだけどね。大人の経営者などはそうですね。

 不肖正田などは、「早口でぺらぺらしゃべれるのは、早口でならすべての可能性を想定しカバーできると信じているだけで、本当はあまり良く考えてない。考えが浅い」などとやっかみを込めて思う。

 いや、もっと正直なわたしの言葉をいうと、

「早口でしゃべる身体能力を競ってるだけで、頭悪い。バカらしい。見落としがいっぱいある。巻き込まれたくない」

のである。

 れいの「教育研修は間違っても人は死なない・・・(反語)」で言うと、

 「早口のすすめWLB研修」は、人を死なせる種類の研修かもしれない。「雑なコミュニケーション」や、「時間管理至上主義」(=重要な問題を見なかったふりをして処理しないで帰ってしまう。割とよくある)によって、人を死なせるぐらいなら、WLBなんかしないほうがいいのである。


 このブーム、いつか終わるのかなあ。「教」じゃなくて本当の意味のWLBはあっていいと思う。去年よのなかカフェにきた、スウェーデン流マネジメントのイケア神戸の女性たちは別にそんなに早口じゃなかった。わかりやすくしゃべってくれた。彼女たちはとても自立した人格をみせてくれていた。


 私がよく引き合いに出す、コーチングを使って「定時退社」をなしとげた人たちは、話好きではあるけど「病的な早口」ではない。普通に時間の区切りの感覚をもち、意見を引き出し、承認によって部門内の協力行動を引き出した結果時短になった。変な研修によって植え込まれた人工的なものでなかったので、彼らの体験談は好感が持てた。

 個人的に好きなWLB分野の方も、熱く語る方ではあるが早口ではない。
 「この人の人柄が好きだから、この人からWLBを語ってほしい」というファンが私の周囲にもいる。




 当協会の非リアル会議、臨時総会の開催事後報告のメールをお出ししたところ、何人かの会員さんから返信いただき、温かいものが流れた。
 リアル招集じゃない選択をしたとしても、人と人、尊重し合ったり思いやり合ったりすることは大事だと思う。

 それにしても、承認コーチングを身につけることがますます困難な世の中になりつつある・・・

 

神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp