さて、「起きた現象にきちっと対処する」ことはべつにわるいことではないのだと思う。


 世間にはいまだ、というか、ますます”変な説明”がはびこっている。

 最近私がきいたあるセミナーでの説明。メジャーなマスメディア主催の準公的なセミナーである。特に名は秘す。


(×)コーチングはカウンセリングと同様、内省支援の手法である。

⇒一義的にはコーチングは行動促進の技術である。内省支援の機能「も」もっている、というほうが正しい。エグゼクティブ・コーチングなどでは内省支援のほうにウエートがかかることが多い。またコーチングでも流派によっては、内省支援を「売り」とするところもある。当協会のコーチングは行動理論の武田建氏を引用しているのでもわかるとおり…。



(×)外資系企業ではマネジャーの機能は育成ではない。外資のマネジャーにきくと「われわれの役割は育成ではない、チームマネジメントだ」という。

⇒P&G出身のマネジャーにきくと、同社でははっきり「マネジャーの役割は育成」と位置付けていた。高い業績を上げているマネジャーでも、部下の育成がうまく行っていなければ評価を高くしない。「外資系でも転職者をあまりとらない企業とそうでない企業の違いではないか」とのことだった。米国でも家族主義的な経営をしているエクセレント・カンパニーはおおむねそう。



(×)コーチングは1対1で行われる。マネジャーは沢山の部下をもつ。忙しい職場では1対1だけでは上手くいかない。

⇒2通りの反論が考えられる。(1)コーチングにも「グループ・コーチング」というジャンルがあり、1対他でコーチングを行うのは珍しいことではない。ただトレーニングでは基本の「1対1」で行うことが多い。(2)多数の部下をもつマネジャーであっても、個別面談は強力な武器である。部下がいかに「個」として扱われることを渇望しているかは、驚くべきほどである。わたしの経験した中では最大80名の部下を抱えるマネジャーが全員と個人面談を行い、その結果目標達成をした。


・・・

コーチングではない、新しい手法を売らなければならないのだ。市場は新しい商品を求めているのだ。主催元はそう考えたに違いない。

たしかにこの市場は飽きっぽい。しかし、すでにあるきわめて有効な手法を否定してまで新しい不完全な手法を売らなければならないこともないだろう。


このセミナーで推していた手法は、わたしがきいている限りその手法単独では効果を上げられない種類のものだった。結局はマネジャーたちに、コーチング的なトレーニングも施さなければならなくなるはずだ。


ただ現実にはそこまで研修に時間をかけられる企業は少ない。


そして周囲のマネジャーたちとディスカッションした中では、


「結局は『認める』『認め合う』ことですよねえ」

という話になった。


そこからトレーニングに入った方がはやいのだ。


世間にはこのほか、どれだけ多くの真実ではない情報がとびかっていることだろう。

たのしくはないが、そういう「勉強」もしておかなければならない。




100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp