兵庫県中小企業団体中央会の会報、月刊「O!」に連載中の「誌上コーチングセミナー」第5回。


  同誌編集部のご厚意により、転載させていただきます。


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 気付かないうちに「人」の問題が起きて、成長の足かせになっている…そんな現象があなたの会社にもありませんか?「人」の問題によく効くクスリ、「コミュニケーション」「リーダーシップ」の観点から解決法をお伝えします。



 管理職研修の中で、参加者の皆さんに「あなたの会社の『組織図』を書いてみましょう」
 
とお願いすることがあります。

 大きめの紙とペンを渡し、

「あなた自身を真ん中に『私』と書いてください」

「次に仕事でやりとりのある周囲の人を書きこみます。『〇×工場長』など、職制だけでなく名前も入れるように」


 10分ほどお時間を差し上げて、書いていただくと・・・。


 単純な作業なのですが、面白いようにその人の周囲の人との関係や感情があぶり出されてしまいます。


「〇×工場長」「△△専務」をすぐに大きく書きこんだ人。上司である自分の部門トップを、自分と真横の水平の位置関係に書きこんだ人もいます。

 そして、そのあと。

 ある人は、「部下」を、名前を入れずただ「部下」と、数人並べて書いていました。


「部下の方には名前はないんですか?めんどくさいなんて言わないで、部下の方にも名前を書いてあげましょうね」

 それを目にするたび、私はなるべくやんわりと言います。しかし、「たかが名前」と言うなかれ。このことが大きな意味を持っているのです。

 研修前に受講生の部下たちのモチベーションをみるためにとったアンケート調査では、こうした「部下」に名前を記入しない管理職の部下は軒並みモチベーションが低いことが多いのです。


 この連載で繰り返し出てくる「承認=人の行動や存在価値を認める行為」では、人を「名前で呼ぶ」は、承認の基本の「き」に当たる重要なこと。「存在承認」といって、相手がそこに在ることを認める、受け入れていることを示す行為です。名前を呼ぶのは相手を仕事上の能力や機能だけではなく、1人の人としてリスペクトしている、認めていることを表します。部下を名前で認識しない、「部下」という機能で認識するのは、人として認めていないことになります。

 こうした「まず上司を大きく書き、部下を名前抜きで小さく書く」管理職は、おそらく上司の顔色ばかり気にし、部下の気持ちをまったく考えない「ヒラメ型上司」であることが大いに考えられます。そうした無意識の感情は、部下にははっきり伝わりモチベーションに影響を与えます。こうした人の中には研修の中で非常に高いコミュニケーション能力を発揮する人もいるのですが、研修で上手に出来るかどうかよりも職場での部下に対する人としての意識のほうがまず重要です。

 最近のベストセラー『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』で、「ザ・ボディショップ」「スターバックス」のCEOを務めた著者の岩田松雄氏は、「現場、そして弱い人たちを大切にする」ということを繰り返し挙げました。また、近年の複数の調査では、日本企業の従業員のモチベーションが先進国の中でも際立って低いこと、それはリーダーシップの問題であり日本企業の低迷はリーダーシップの欠如に原因があることが浮き彫りになっています。

 そろそろ本気で「やる気を高めるリーダーシップ」を考えませんか。


(兵庫県中小企業団体中央会「O!」2013年1月号 所載)


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