「担当者」というものが今の時代、油断もすきもならない存在であるのは訳があって、


 彼らは基本、「社内講師になりたい予備軍」なのだ。社外講師を「先生、先生」とおだてるより、自分が人前に立って教える側になりたいのだ。

 (私だって本当はおだてられるのなんか嬉しくない)


 しかし、私から見て彼らの技量も知識も経験も圧倒的に劣る。彼らに教える仕事を譲りたくない理由は実際のところそれである。私の真の顧客はラインマネジャーであり、彼らに質の高い教育を届けたい。彼らには自分の知識欲を思う存分満たしてくれる、自分がそうであると同じように真っ直ぐに関わってくれる「先生」が必要なのだ。


 「社内講師」が少々のコスト節減になっても、残念ながらプロと比べると質の低さは目を覆うばかりである。


 そう、とりわけ「承認」というこのたいせつなものを、私はレベルの低い講師に教えさせたくない。


 私から見て教える力量のある人々は、むしろ自分でやろうとはしないで、私に依頼してくる。それは、「承認」がいかに大きいものか、彼ら彼女らにはわかるからだ。私はこの人たちにはむしろ言ったのだが、「あなたたちはもう教えてもいいですよ」と。


 たまたま非常に教えるのが上手い、わかりやすく教える講師にめぐり合って自分が身につけた。それは決してその人が人に教える立場になるためのパスポートを手にしたことにはならない。そのわかりやすさがいかに高いレベルの研鑽の上に成り立っているか、そうした人たちにはわからないからだ。


 むしろ、そうした人たちが「承認」とそれを教えるという行為を自分でもできるかのように軽々しく考えてしまうとしたら、それはその人たちの力量不足を示しているといえる。
 そもそも、ラインマネジャーという人々がどれほど厳しい世界を生きている人か、彼らがどれほど厳しい目で研修というものを見ているか、そうした人たちにはわかっているのだろうか。自分が教えることになる相手がどれほど大きな存在か。

 たとえばこの記事を読んでいるあなたがラインマネジャーだとして、あなたは自分の会社の総務や人事の人からどこかで習ってきた「承認」を教わりたいだろうか。


 私は著書『認めるミドルが会社を変える』の中に、「大人に教える16か条」というものを入れた。

 ラインマネジャーともあろう人々が一介の研修講師の言葉をききいれて実行し始めるからには、講師の側も相当の覚悟がいる。人生全体を賭けて伝えなければならない。2006年から始めたこのブログもその1つである。


 「承認」の社内講師になりたいという人は、まずこの16か条を実行してみてはいかがだろうか。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp