引き続き、城ヶ崎滋雄先生へのNPO理事・会員によるインタビューをご紹介させていただきます。

 文中で何度か「正田さんのレポート」と言及されているのは、今年2月1日の見学のもようを記したこちらの記事です。
  
 「褒めること聞くこと、記録、スピード、歌声・・・城ヶ崎先生クラス訪問記」
 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51846161.html



登場人物(敬称略):

城ヶ崎 滋雄(千葉県公立小学校教諭)

ききて:

山口 裕史(フリーライター、神戸市在住。NPO法人企業内コーチ育成協会理事)
大前 和正(人材派遣業役員、大阪府在住。同上)
間瀬 誠(コンサルティング会社代表、大阪府在住。NPO会員)


目次:
(1)駅伝初出場3位!
(2)ぼーっとする時間を作らない
(3)通知表:どんなふうに貰ったら嬉しい?
(4)朝練習:「竹馬」と「リレー」で子どもが変容
(5)不登校担当:「して欲しくないことは何か?」
(6)褒め褒めタイム:伸びを言われると嬉しい
(7)崩壊クラス:建て直しはどこから?
(8)ディベート:「まず結論を出してしまえ」
(9)教え合う教室:上を伸ばすか、下をテコ入れするか
(10)授業:つまみ食いでない知識を
(11)持ち物:子どもの二極化時代に先生は




(4)朝練習:「竹馬」と「リレー」で子どもが変容

■子どもの意欲と登校時間は比例する
■指導で出来た!→先生のカリスマ性
■リレーのトラブルは生産的
■授業より大事なことがあるから




■子どもの意欲と登校時間は比例する


山口:正田さんのレポートをみると、授業でもほかでも色んな考えさせる仕掛けをされてるんですけれども、それも今の子ども目線ということでしょうか。そこの想いも教えていただけますでしょうか。

城ヶ崎:そのレポートに書いてあったので言いますと、朝の運動とリレーがありましたね。私は子どもの意欲と登校時間は比例すると思っているんです。やる気のある子、学校が楽しいと思う子は、学校に早く来る。そう思わない子は遅い、と。早く来れば、楽しいと思えば、多少のことは我慢できるし頑張れる。多少つまんなくても、みんなと一緒にやってれば面白いと感じてくれるから、まずは学校に早く来させる。じゃそのためには何したらいいかと言えば、やっぱり遊ぶことだと。ただ遊ぶだけでは子どもが好きなことでばらばらになってしまうんで、こちらが何かそこで仕掛けなきゃいけない。そのときにはちょっと頑張ればできることを投げかけて、「ぼくもやりたい」「ぼくもできる」「あいつができるんならぼくもできる」「あいつができるのにおれができないのはおかしい」というのを持ってこようと思って、一番最初にやったのは竹馬でした。

山口:あー、そうなんですか。

城ヶ崎:竹馬はちょっと努力すればできるんですよ。でも一輪車はいっぱい努力しないとできないんで、竹馬から入ったんです。縄跳びも努力しないとできない。

山口:そうですか、「竹馬」というところがまずポイントなんですね。

城ヶ崎:はい。誰でもできて、でも練習しないとできないものを選んだ。
 そのとき、ある大人しい女の子で目立たない子がいたんです。声も小さいし。「あ、この子だな」と思ったんです。この子が竹馬をできるようにさせれば、ほかの子たちも「え、あの子が」と思うだろう。と思って、1週間くらい徹底的にその子だけ特訓しました。ただずっとその子のところにいると、「先生ひいきしてる」と思われるから、さりげなく毎日その子のところに。すると、できるようになるんですよ。

山口:はいはい。すると周りのみる目が変わる。


■指導で出来た!→先生のカリスマ性

城ヶ崎:
変わります。その子に対してみる目も変わるけど、「あ、ぼくもできる」とか「ぼくができないと恥ずかしい」とかいう風にも気持ちが変化する。あの子ができるんだから。

山口:うん、そうですね。そういう風に気持ちが動いていくわけですね。

城ヶ崎:そうです。それができるようにするには、「今日は何歩連続でできるようになりましたか?」と、毎日きいたんです。「私は何歩」「私は何歩」っていって、そのうち「あれ、あの子の回数が多い」という風に周りがだんだん気がついて。あとは、私の教え方で「こうやってるんだよ」というと、今度は私のカリスマ性じゃないですけど、「先生の言う通りにすれば、できる」ということを思わせる。

山口:はいはい。それはポイントですよね。やっぱり先生への尊敬の念というか。「先生をしっかり見ておこう」ということですよね。

城ヶ崎:ま、言うことを聞こうということですよね。言うことを聞いたらなんかいいことがある、っていう。

山口:そういうことから、まあ体験の中から気づかせる、ということですね。


■リレーのトラブルは生産的

城ヶ崎:
はい。で、それが終わったらリレーですが子どもはリレーは好きですから。ただそこで、必ずトラブルがあるんです。
 チームが4週間メンバーが変わらないんですけど、6人1グループなんですが、その時間にならないと何人揃うかわからない。校庭を3周することは決まってますから、6人だから半分・半分走ると2×3=6で最終で1チームが全員半周ずつ走るんですけど。で3周走るんだけど、休むとだれかが2回走らなきゃいけないんです。
 なのでまず「だれが来てないの?」から始まって、「じゃあ来てない人の分をだれが、どこを走るの?」ということになるんですね。当然、バトンが上手くいきません。渡らないんです。
 でけんかが起こるんですが、私はそのとき、「あしたも同じ状況だったら今どうするか」を相談して、「もしあしたもこのメンバーで走るんだったら、どうしたら走れるかを考えついたら、教室に帰っておいで」と言って、私は先に教室にたったか、たったか帰ってきちゃうんです。

山口:ふうん…、で考えるわけですね、子どもが。

城ヶ崎:考えます。そんなに難しいことじゃないです。

山口:それは、今日休んだ子に「あしたは来てね」と言ってみたり、ということですか。

城ヶ崎:そうです。「なんか言うことない?」ってきくと「あいつがちゃんと来てくれればこんなことなかった」とか言うから、「じゃあそういう言い方しないで、『あした来てくれれば助かるんだけどなあ』って言えば?」と。

山口:すべてそれは、自分で考えさせる。

城ヶ崎:まあ自分で、というんですかねえ。考える機会を与える。

山口:すると、次の日はちゃんと揃ったり。

城ヶ崎:そうならない場合もありますけどね(笑)バトンがつながらないことが悪い、悪だということじゃなくて、それが人間生活していく上での1つのトラブルだと。そんなことはよくあることだよ、アクシデントだよ。じゃあアクシデントをどう乗り越えるかを考えるほうが大事だね、と。前もって見学だったら見学って言えばいいわけですし、いつも遅いんだったら、「あの子が遅いから」という前提でリレーのオーダー組んでおいたら、その子をそこに入れればいいわけですから。


■授業より大事なことがあるから


山口:それを通じて問題解決力を育てるわけですね。
リレーが今のような形になったのはどういうプロセスですか。初めからそういうふうにやろう、と思ってやった?

城ヶ崎:いや、それはちょっとカギなんですけど、荒れてるクラスを持ったときに、なんか学校に来る楽しみを作らなきゃいけないな、と。子どもにとっての楽しみは何だろうと考えたら、「遊ぶこと」と「給食」かなと(笑)授業とか何とかっていうのはまた別の問題で、遊ぶことの中で子どもが「ああ学校行きたい」「みんなと一緒にいる時間っておもしろいな」って思わせれば、いいかなと。だけどそこにはやっぱり成長がある。それから競う場面がないと、子どもは飽きちゃう。で何かなーと思うと、「リレー」と「かるた」だったんです。ドッジボールは強い弱いが出て、やりたくないっていう子も出てきますから。みんなが外野というか、第三者にならないようにするには、みんなが関わるようなものじゃないとダメですからね。ボール運動って、必ず遊ぶ(参加しない)子が出るんです。サッカーなんかやると典型ですよね。

山口:なるほど、そういう子が出ないように。

城ヶ崎:実際それ(リレー)をやったらそれが楽しみで学校に来る子もいましたから。
 学級崩壊してる子たちっていうのは、何となくトラブルになってるんですよね。居心地がわるいとか。あいつは嫌いだとか。何となくトラブル。
 でもリレーのトラブルっていうのは、必然性のある、改善しなきゃいけないトラブルなんです。「あいつが来ないとできない」というのは、来させるためにはどうしたらいいか、とか、バトンがつながらないのは、順番間違えたからだとか。「じゃなんで間違えたの?」といったら、ちゃんと事前に打ち合わせして順番を確認しなかったからだと。改善しなきゃいけないトラブルと何となくのトラブルは違うんで、同じトラブルをやるんだったら、必然性のある改善性のあるトラブルをしながらそこでお互いを高めていけば。人間関係づくりをしていけば。
 すると、「あ、話し合うことっていいことなんだ」とか、「解決するっていいことなんだ」というのを場を設定できるだろう。
 そういう意味ではこちらのほうが、トラブルがあるのは想定済み。トラブルが起こってくれるほうが逆にありがたい。だから「話し合ったら帰ってきてね」「時間をあげるよ」っていうスタンスでいられる。
 だってね、学校の授業より大事なことって一杯ありますからね。仮にそれで1時間目が食い込んでも、私はそっちの方が大事だと思ってるんです。


(5)不登校担当:「して欲しくないことは何か?」 に続く



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NPO法人企業内コーチ育成協会
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