ひきつづき、城ヶ崎滋雄先生(千葉県公立小学校教諭)と正田の対談をお送りします。
 だんだんお話が核心に入ってきます。徹頭徹尾実践の世界の人である城ヶ崎先生が正田の一枚看板「承認」について有難いお言葉を…。 
 また、一番最初のレポートに出てきた「先生のお仕事には日本の将来がかかっている!」という、正田のマニアック発言の意図も明かされます。
 レポートはこちら
 「褒めること聞くこと、記録、スピード、歌声…城ヶ崎先生クラス訪問記」 


(1)メンバーの個性をどうつかむか
(2)不登校指導は「自己流」
(3)子どもの指導と成人教育と
(4)教師が「怖い」と感じるとき
(5)「冷徹な眼」と「間の技術」
(6)保護者との風景―懇談、連絡帳、学級通信
(7)武術家にとっての教育
(8)小学校時代の荒れと恩師
(9)翻訳は「みる」修業だった
(10)日本人と承認と城ヶ崎メソッド
(11)承認教育―大人が教育を受容するとき
(12)武術は「型」にこだわる
(13)「なんで」の訓練が子どもになぜ大事か





(10)日本人と承認と城ヶ崎メソッド
■「日本の社会って依存しあう、だから『承認』」(城ヶ崎)
■遺伝子的に不安な日本人
■「あなたの仕事に日本の将来がかかっている!」



■「日本の社会って依存しあう、だから『承認』」(城ヶ崎)

城ヶ崎:
やっぱり正田さんの場合、外国の本が多いんですか。

正田:翻訳物で今、認知心理学とかどんどん面白いのが出ていますよね。スタンフォードの意志力の本とか、ヒューリスティック、バイアスとか判断ミスに関する研究の分野。あれはやっぱりフォローしてないといけない感じがします。
 ただ私のコーチングに関していえば日本人の研究者のものが一番ベースにあります。「武田コーチング」の武田建さん(関学名誉教授、行動心理学)、「承認論」の太田肇さん(同志社大学教授、組織論)、また最近は社会心理学の山岸俊男さん(北大名誉教授)の本なんかも面白いです。「日本人」というところからコーチングを構築できる気がします。

城ヶ崎:私はね、アドラー心理学が出てきた時に。

正田:ああ、あれはコーチングに近いですよね。

城ヶ崎:でも正田さんの書いているコーチングの本を読んだりすると、「あ、これだよな」と思いますね。

正田:え、そう思っていただけるんですか。ありがとうございます。

城ヶ崎:コーチングの中でも正田さんが凄いなと思うのは「承認」という、さらにそこに焦点を当てて迫っている。私は日本の社会って言葉は悪いけど依存しあっていく社会だと思っているんです。頼り、頼られる。当てにする、当てにされる。お互い様っていう世界。そういう意味では「承認」というのはまさにそこじゃないかな、と思います。

正田:そう仰ってくださると嬉しいです。まさしくそこに「承認」は働きかけるものだと思います。また、「コーチング」よりも「承認」の方が、普段からワーキングメモリの中に置いておきやすいんです。普段から置いておけるということは、ちょっと人に事務作業を頼むとか、部下から報・連・相を受けるとか、あらゆる瞬間瞬間で使える、ということなんです。


■遺伝子的に不安な日本人

正田:
今日そういえば何がお役に立つかなーと思って持ってきたのがあるんですけど、(資料を出す)最近講演で使っている遺伝子学に関する資料で、ご覧になってみてください。

城ヶ崎:セロトニン…?

正田:セロトニントランスポーター遺伝子。

城ヶ崎:すみません、初めてききました。

正田:そうですか。不安感とか安心感に関わるセロトニンという物質があるんですけど、これが多いか少ないかで例えば鬱になりやすいかどうかが変わってくる。あるいは安定した楽しい気持ちだとかいつも漠然とした不安にかられる、とかが決まってくるわけです。セロトニンの影響力ってすごく大きいんですけど、このセロトニンの血流内の濃度を決めるのがこのセロトニントランスポーター遺伝子というもので、それがどういう型かによって、その人のセロトニン濃度がある程度決まっちゃうわけです。つまり、安心感を感じやすいか不安感を感じやすいか。

城ヶ崎:ほ〜。冒頭にこれが書いてありますけど、日本人ってSS型(とても不安)だと思いますね。それを自覚するかしないかで鬱になるかならないかが変わってくるんじゃないか。ボーダーラインってそこなんじゃないか。ここに菅さんの写真がありましたけど、菅さんなんてきっと自分が周りからああいう風に思われてると思ってないんですよね。

正田:そうですね(笑)原発のときやたら怒り散らしてましたけど、やっぱり不安感を怒りにすり替えて怒ってるタイプの人だなという感じはありましたね。

城ヶ崎:ああ、そうですね。

正田:この最後の問いどう思われますか、先生は。

城ヶ崎:いやー…、とにかく菅さんだったら、生き残っていけるかどうかというよりは、変わるか変わらないか。菅さんのような人は変わらないだろうな。

正田:そうですねえ(笑)

城ヶ崎:何故かというと、自分がそうだと気付いてないから。


■「あなたの仕事に日本の将来がかかっている!」

正田:
菅さんはじゃあ置いといて、一般的な日本人、あるいはこういう子どもがいた時に、どうしたらこの子は生き残っていけると思います?

城ヶ崎:不安感が強いということは…、不安を無くしてあげればいいんじゃないかなと思う。どうしたら不安を無くせるかと言うと、言葉は抽象的ですけどやっぱり寄り添うというか、その子を認めるというか、その子の失敗を全部受け入れるというか。
 もっというと、子育てで言うと、お母さんのおっぱい吸うような赤ちゃんのレベルまでもう1回育て直しをしてあげなきゃいけないんじゃないかな。

正田:それはもう抱っこして愛着関係とか?

城ヶ崎:はい。私などは今自分の頭で想像するのは小学生ですから、騙すんだったら騙される。出来ないんだったら出来るまでつきあうしかないかなと。

正田:まさしくだから先生のおやりになっているのが、それだと思うんです。出来るようにあの手この手をやって自信をつけさせる、褒めてあげる、さらに高い負荷をかける。最終的に物凄いレベルまで「できる」ように指導されますね。だから、「先生のお仕事に日本の将来がかかっている!」と言ったんです。
 遺伝子的に先天的に決まっている部分があるんですけど、「エピジェネティクス」といって遺伝子の変異だけを扱う学問もあります。先生がおやりになっているようなのは教育による後天的エピジェネティクス。私もそれを志向してはいますが、先生の方が小学生さんを対象にやられている分、より根源的なその人の変容に、一生ものの自信につながると思います。それをやらないと日本人は生き残れないだろうと。

城ヶ崎:でどうしたらいいんですか。

正田:いやいや、どうしたらいいんでしょうね(笑) 
 最近やっている講演では、この問いを投げかけて休憩を入れちゃうんです。で休憩明けから、「これの答えに完全になっているかどうか分かりませんけれども私どもの取り組みとして承認のお話をします」とやるんです。



(11)承認教育―大人が教育を受容するとき に続く



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