久しぶりに読書日記でございます。


 3つ前の記事

 「承認と生産性向上」宿題まとめファイルへの添え書き

 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51860119.html


 で引用した、「拡張―形成理論」というのは、「ポジティブ心理学」の中の理論でした。


 ポジティブ心理学は、考え方はとても共感するところが多いし大規模な疫学調査等で立証されていることも多い、有益な考え方です。

 でも何せ「ポジティブ」という言葉の響きで誤解を招きそうなので、あまり強く打ち出せないでいます。


 今回ご紹介する『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』(日本実業出版社、2010年)は、その「拡張―形成理論」の提唱者であるバーバラ・フレドリクソンの著書。原題は'Positivity'。

 フレドリクソンは、「学習された無力感」で有名な元アメリカ心理学会会長、マーティン・セリグマンのお弟子さん。セリグマンが1999年、ポジティブ心理学という概念を打ち出したとき、弟子の提唱した「拡張―形成理論」を拠りどころにしたのでした。


 ああ前置きが長い。


 本書『3:1の法則』では、「ポジティビティ」という言葉が繰り返し出てきますが、これをそのまま使用していいものかどうか、迷います。「自己肯定感情」みたいな訳語ではだめなんだろうか。

 迷いはありますが、この記事では「ポジティビティ」をそのまま使わせていただきます。


 本書によれば、


「ネガティブ感情は、『何ができるか?』と考えることのできる範囲を狭くしてしまいますが、ポジティブ感情は、それを広げる働きをする。さまざまな考え方や行動に目を開かせるのです」(p.46)


「ポジティブ感情とネガティブ感情は、異なる時間尺度の上で意味をもつということです。危機に臨んだときにネガティブ感情が思考を狭めることは、ある意味その瞬間を生き延びるために有効でした。

 一方、ポジティブ感情によって広げられた思考は、もっと長い時間尺度において、別の形で有効に作用したのでしょう」(p.47)


「明るい気分で興味を持ち、好奇心に突き動かされて行動しているときには、多くを学ぶことができる」(p.49)


「ポジティビティを多く示す人は、そうでない人よりも長生きします。寿命の違いは長いと10年になります」(pp.53-54)
 ―最近身近に起きた事例から妙に納得している私であります―


「何かつらいネガティブな感情を経験したときには、そこから自分を引き上げるために、心から感じるポジティブな感情を少なくとも3回経験する必要があります。この『3:1』という比率がティッピングポイント(転換点)であることが、研究の結果わかっています。ここが下降と上昇の分かれ目だということです」(p.62)


「ポジティブ感情の代表的なものは、次の10の感情です。ヾ遒(Joy) 感謝(Gratitude) 0造蕕(Serenity) ざ縮(Interest) ゴ望(Hope) Ω悗(Pride) 愉快(Amusement) ┯殄(Inspiration) 畏敬(Awe) そして 愛 (Love) 。(p.72)


「大きな概念(略)でものをとらえるかどうかは、その人の感情の状態による。・・・ポジティブ感情を持たせることにより、人の関心範囲を拡張できる」(p.102)


 マネジャーがポジティブだと判断力も高い。

「ポジティビティの高いマネジャーは、より正確で注意深い判断ができ、効果的に人間関係がつくれる。・・・また別の研究では、『ポジティビティが高いマネジャーの場合、部下たちも高いポジティビティを持つようになる」という結果が出ています」(p.106)



 ポジティブな人は交渉にも強い。

「込み入った交渉に臨む場合、ポジティビティが結果を分ける。・・・協調性と人なつこさ(ポジティビティ)をもって交渉に臨む人が、最もよい形で交渉をまとめることができる」(pp.106-107)


 ポジティブな人は逆境にも強い。

「より多くポジティビティを持っている人は、逆境にあっても解決策を複数考えつく」(p.108)
「ポジティブ感情を増やすことによって、レジリエンスを上げることが可能だというわけです」(p.164)


 ポジティブな感情は差別をなくす。

「ポジティビティによって心が温まっている人は、他人種の人も同じ人種の人の顔も。同程度によく認識できる」(p.117)



「ネガティビティにも『生産的なもの』と『破壊的なもの』がある」(略)
「怒り」や「対立」は健全で生産的なネガティビティであり、「嫌悪」や「侮蔑」は破壊的なネガティビティだといいます。(p.196)

★だから、議論で対立したとか、少々否定的な質問をしたとかは、別に人間関係を壊すようなことではないのです。そんなことで人間関係が壊れたら相手は大した器ではありません。正田は「反論することも(相手を信頼する、という意味での)承認だと思え!」てなことをいいます。


「ポジティビティ比に持続的な変化を生じさせるには、体重を減らしたり、コレステロール値を下げたりするのと同じように、意志と努力によるライフスタイルの転換が必要であることがわかりました」(p.218)


 質の良い人間関係を作るための4つの方法。
〜蠎蠅鯊砂鼎垢襦
∩蠎蠅鮖抉腓垢襦
A蠎蠅鮨頼する。
ご愀犬魍擇靴燹
(pp.277-278)


 本書からの引用以上。

このブログを長くお読みになっている方は、つねづね「ポジティブ」に懐疑的な私のスタンスと今回の記事は相いれない、と言われるかもしれません。

 どうも、私が嫌うポジティブは「空元気ポジティブ」とか「現実逃避/現実軽視ポジティブ」といわれるものであり、本書のいうポジティビティとは違うもののようです。


 本書の言うとおりであれば、ポジティビティとは、例えば視野が広がり逆境にあっても解決策を複数思いつくので、問題からあえて目をそらす必要がなく、むしろ問題に真っ向から立ち向かう勇気をもたらすものであります。
問題から逃げたり先送りしたりするのと対決するのでは随分違います。


もうひとつ言えば「ナルシシズム」とポジティビティもすろすれ近いところにありそうな気がして気になります。


 それらの違いをもっとはっきり説明してくれるといいんですが。


 あと、ポジティビティを増やすこころみとして本書では「メディテーション(瞑想)」をとりあげていますが、私としては当然「承認」を挙げたいです。他人を意識的に肯定することによって、初期設定ネガティブである日本人の自己肯定感情は間違いなく増えます。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
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