今年5月にインタビューさせていただいた大島金属工業(株)・執行役員生産統括部部長の脇谷泰之さん(中国法人総経理)を再度お訪ねしました。

 今回のテーマは「責めない現場」について。日頃はコーチングの質問法を型通り教えている正田ですが、生産現場にはそれにとどまらない「真の原因を探る質問」のノウハウが存在するよう。「現場の知恵」を伝授していただくべく、「特別なことはしてないですよ」を連発する脇谷さんに教えを請いました。(長文です)


ききて:正田


脇谷さん初回登場インタビュー記事は
「とにかく現場を見てください」で仕事が来る中国工場―脇谷泰之さん(大島金属工業執行役員)インタビュー
http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51857608.html 



「責めない現場」は可能か?―脇谷泰之さん(大島金属工業)インタビュー(2)


(1)「犯人探し」をやめよう
(2)社会人としての心構え?
(3)「普通のことを普通にしよう」
(4)「不良は出るもんや」から始める
(5)眠たくなったら機械止めろ
(6)2日に一度口を酸っぱく
(7)真因を探る質問テクニックとは
(8)中国での採用基準は「嘘つかない」



(1)「犯人探し」をやめよう


―今日は「責めない現場」ということについて、是非お伺いしたいんですけど。


脇谷:責めない現場。講座で話が出たそうですね。出席した本岡課長と会話してきいたんですけど。


―はい。そこは(受講生の)皆さん必死でメモとりはって、かなり画期的なことをおやりになっているような。


脇谷:もともと社長自身の考え方に責めない現場っていうか、現場を責めない、人を責めない、という発想はお持ちやったんです。


―そうなんですか。何からきてるんですか。


脇谷:かれこれ11年ぐらい前からそういう発想をされてて、でも言うてる本人ができてないですけど(笑)。でもなかなか現場に浸透しきれていなかった。結局、中で犯人探し。不良が出たときに犯人探しをやる。

 僕がちょうど(転職して)来たときも不良が出て社長からは「人を責めるな」と言われて。でも現場は犯人探しをやってる。結局探しても結論が出ない、前へ進まない。で、だれが悪いかれが悪いというのをやめよう、と。当初本岡もうちへ来たばっかりで、彼らと一緒に「そうしよう」と。

 不良が出たとき、トラブルが出たとき、「誰がやったか」ききますよね。誰が担当していたかはききます。で本人に「どういうことをやったか」「どういうことをしてたか」やり方をまずききます。きいた上で、「なんでこれ(不良)ができたんやろ」というのをもう一ぺんみんなで関係者と考える。1人の頭でなく集団で、現場と営業と技術と品証と入って、一緒に考えて解決していく、という方法に変えていきました。


―ははあ。そうして複数部署の合議で話をすることでどういう効果があるんですか。


脇谷:一つの不良について現場だけで真因を調べたり、対策を打つと、どうしても自工程の都合や、立場を優先して部分最適な対策を打ってしますことが、往々にしてあります。また、経験値だけでなく、他社情報や、顧客での情報は、品証、営業技術の方が持っており、いろいろな知恵を出し合うことで製品の製造する流れ全体を見た対策を打てることができます。
 
 たとえば、打痕(プレス工程で穴などを開けた抜きカスが製品のと金型の間に入り、凹みを作ってしまう不良)の場合、プレス加工では、防げないとの業界常識があり、現場だけで検討すると出荷前検査で全数検査という対策になります。しかし、場合によっては、金型を調整したり、加工速度を調整することで対策できる場合があり、今年度は、この対策を中心に実施して効果が出始めています。


(2)社会人としての心構え?


―さすがですね。でも明らかに単なるケアレスミスという場合でもそうなんですか。


脇谷:一緒です。なんでケアレスミスが起こったか、というのをやっています。彼本人がたまたま前の晩夜中まで起きててゲームして寝不足であくびしてたのか、暑くてぼーっとしてたのか、寒くて身体が動かなかったのか、というところまで含めて一応話をして確認はします。

 当然、本人の社会人としての心構えが出来ていなければ本人にちゃんとそういう形での話はします。

 だから本人を叱ったり怒ったりするのはあります。例えば個人のプライベートの時間を夜中まで(ゲーム)やってて、朝寝坊しかけて慌てて飛んできて作業している、というのは、親じゃないんですけどそういうところをしっかり叱ります  作業現場の環境、例えば「暗い」とかね、なんであれば当然それをどう改善しようか、という形にもっていきます。寒い暑いはなかなか工場なんで改善できないんですけど、できることはやっていく、対応していく、という形で。大抵のことはその環境が悪い、ということでもし問題があってもじゃあどうしようか、と一緒に考えて解決していこうね、というのはずっとやっていますね。

 まあ全員が全員そういう考え方でやっているかというと、中には「オレは悪くないのに」というのは、まだまだおりますけどね。30数名であっても。

 あんまりそのへんは、叱っても答えが出なかったんで。逆に口つぐまれてお客さんに報告が出来ない、原因がわからない、再発する。そんな悪循環でしたんでね。ここ(叱る・責める)からやめなあかん、というので。


―お客さんに報告を出す時にも「なぜなぜ分析」の書式があると伺ったんですけど、そこにも本人が深夜までゲームしてたとか、そういう理由も記載されるんですか。


脇谷:お客さんには報告しません(きっぱり)。そこは飾ります。


―あ、そうですか(笑)いや〜やっぱりこれ、皆さんにきいていただきたいお話です。


脇谷:どこも同じだと思います。他の大手さんの方と話しても同じ様なことを言われてましたから。普通にすることを普通にできるかでけへんか、だけやと思ってるんで。


(3)「普通のことを普通にしよう」


脇谷:僕ここ何年かずっと言うてるんです、「普通のことを普通に仕事しよう」と。普通のことを大げさに仕事するのやめようと。


―今の「普通のことを大げさに」というのは例えばどういうことですか。


脇谷:例えばプレス部品で、1時間に450個できますと。本人は一生懸命頑張って人より早い、遅い人と比べてだから私は人より頑張ってる、特別だ、という表現をするんですよね。僕はそれは「違う」と。450個できる人が450個するのが普通であって、これが500個になったら頑張ったけど、500個になったら今度はこれが普通で、普通のことを普通にしまし ょうね、人から見て努力してるなとか、すっごい必死になって仕事してるなと思われずに普通に仕事してるやんね。と思われるように。

 だけど私ここまでできないわ、すごいね、と思われるように。自分がやることがすごいことじゃなくて自分が当たり前にできることを当たり前にやろうね。その代わり、それをまたレベル上げて頑張ってこうなりました。でもこれが今度普通になりました。もっと上を目指そうね。ということを言うてるんですけど、なかなかね、まだまだ。


―それは例えば、その人は450個作れる、ほかの人の平均例えば300個ぐらいだと。いう場合でもこれは凄いことじゃないんやで、と。


脇谷:そう、その人にとっては普通ですよね。その普通というラインをしっかり守ってるときに人と比べて、その少ない人たちがその人をみて何が違うんかなー、それを普通にできるようにしましょうね、考え方かえて普通にしましょうね、先行している人も追いつかれるんだから次、考えましょうね、と。

 それは出来高だけではなく仕事の質に対してもそう。今まで知らなかったことを、何か問題が出ました、でもプレス屋やからプレスのことだけ知っておけばいいという時代じゃないんで、そのためにも材料の特質とか、うちの苦手な化学的な話も出てくるんですけどね、油も使うんでね。そういうことを含めて、今までは分からなかった。これを調べていくうちにおぼえてきた。じゃあ次、こんなことが起こったときにそのことを普通に処理しましょうね。ワンランク上がるからこれが普通の仕事ですよね。これがいつまでも凄いんだよ凄いんだよ、うちの会社は技術あるんだよ、と思うとそこで止まってしまう。一瞬はそれができたから凄いけどそれからはここを普通にして普通に処理できるようになりましょうね、という。普通のことを、むずかしくせず普通にしましょうね、ということです。


―それが「普通のことを普通にしましょう」ということなんですね。なんか耳が痛いなあ私進歩がないからなあ。


脇谷:ものづくりも、技術の進歩とかいいますけど人の進歩が一番先に走らんと。人が育ってもらうようにしたいなあ、と思ってやってます。ただなかなか浸透はしないです。。
結構(自分の仕事を)アピールしてくる人達も(社内に)おりますけど、お前それ去年アピールしてきたことと変わってないやん、と言うたりします。「承認」からいうと逆方向になるんですけど(笑)


―いやいやいや。それも正確にみたうえでのことでしょうから。


(4)「不良は出るもんや」から始める


脇谷: 先程の「叱らない」とか「責めない」というのは、どうしても不良が出たとき「人が悪い」と考えてしまうけど、人が悪いから人を責めたって解決しないという痛い思いを何度もしてるんで。結局わからずにダラダラ時間ばかりかけてお金かけて原因追及をやったところでまた不良が起こる。どうせかけるなら1回で終わりたい、ちゃっちゃっと終わらしたい。というのが元々の本音であって。

 まあ、その成果というかそのお蔭で、今までずうっと検査をせなあかんかったような金属のバリも今材料的に問題あって出た2点以外は、検査なしで普通に加工条件さえしっかり出来てたら、問題なくできるようなところを見つけられたんでね。そういう意味ではそれは自分ところの中でのノウハウが出てきたのがあったんで良かったと。みんなも経験してそれなりにいい答えが出たんで、成功事例としてみなさんが理解して動いてくれればいいかなあと、期待しながらやってるとこです。だから責めないとはいいながら、まあ責めてはないですけど、完全に定着してるかというとそうではないです。やっぱり僕らが「責めるな」というのをしながらやってるところです。


―凄いことです。真因がわかったからこそ新しいノウハウの開発につなげられたわけですね。


脇谷:いやいやこれは普通のことで。どこもやられていること、でしょうし。


―いやー皆さん浸透してるかどうか、怪しいですよ。
 もうひとつの疑問は、その「責めない」方針でしたときに、じゃあ作業者のかたが、「そもそも不良というのは出したらあかんものやで」という教育は当然なさってると思うんですけど、その前提を忘れてしまわへんかな、とか。


脇谷:あ、最初の前提は「不良は出るもんや」から始めました。


―ほんまですか。


脇谷:「人間ミスしないわけない」って。ミスしない人間なんて世の中いない、って言うてましたから、7年前から。


―へーえ。新入社員の教育からおやりになるんですか。


脇谷:新入社員というより、途中入社ばっかりですが、そのときします。人間はミスします、必ずします。ミスしない人間はいません。ミスしたかどうかがわかることが大事です、って言っていました。私がミスしたとき「ミスしました」ということを言ってください。そこで止めれます。いまだにそれはみんなに言うてますね。ミスして不良作るっていうのはいけません。でも不良ゼロというのは、お客さんに対してゼロというのは頑張ります。社内不良をゼロに近づけることはできてもゼロにはできません、できないことをやれとはいいません。だけどゼロに近づけることはやりましょう。悪ければすぐに言って止めましょう。調子がおかしいと思ったらそこで確認しましょう。だから「(不良を)作るな」と言ったことは僕はないです。思ったこともないです。

 不良はできるものや、と思ってます。本当に不良ができなくしようとすると、相当お金をかけて、色んな設備を全部入れて、予防保全に最大限お金をかけたら出来るかもしれない。僕はゼロに近づけることはできるけどゼロにはできないと思ってる。で(不良を)作ることがダメだ、というのでなくゼロに近づけることをしましょう、と言ってます。それはみんな、同じように言っててくれてるから理解してくれてると思いますけど。


―そうですか、そうですか。7年前から。それは社長とも意見が一致してるんですか。


脇谷:ええ、社長も知ってます。社長も「連続不良は許さんけど1個の不良はしゃあない、そこで止めろ。その1個が毎ロット出たのなら、次は2ロットに1回、5ロットに1回、1か月に1回、1年に1回していって近づけることを考えろ」て、ずっと言われてます。それがなかなか現場には理解されてなかったんで、まず「責めない」という話を大々的にする前にそこの話を先にしました。必ずミスは出る、ミスするからあとで誰かがチェックする、あるいは自分でチェックすることを考えようね。


(5)眠たくなったら機械止めろ


脇谷:ただ事故はね、これは絶対ゼロにせなあかん。けがした人間の体は絶対に替えはきかない。機械なら直るけど人の体は替えはきかない、だから絶対自分の身は自分で守らなあかん。先に逃げろ離れろ、機械止めろというのも言ってます。だからちょっと変な音がした、逆に今日は調子が悪かったら機械止めろ。眠たくなったら機械止めろ。そこから始めることをやってます。


―それはちゃんとやってくれてますか。


脇谷:そうですね、今のところケガもないんで。時々止めていて、「どうしたん」ってたまにききに行くこともありますけど。たまーに、年に1人くらいかな、「すいませんきのう夜中までサッカー見てたんで眠たいんで」って言うから「ええ加減せえ」」って言って終わってましたけど(笑)
それなら会社来んで休んでくれ、とはっきり言ったこともありますし。「そんな状態で来てケガされてなんかあっても会社としても困るし、あなたがケガするのは僕らが一番辛いんで、いやだ。はっきり計画的に有給休暇とってくれ」と。それ言うと次から大体しませんね。脅しに聞こえるみたいなんで。あとはまあ、本当に体調が悪い。そういうときは状況きいて、場合によっては休ませたり。「早く帰れ」って帰らしたりはしますけど。そんなに頻繁にはないですけどね。
 ただ、変な音がするからと一旦止めては、連絡をくれる。僕だけじゃなくて現場の機械がわかる人間何人か見に行かせて見てもらって、どうも怪しいなとなったらメーカーに来てもらって。大きな故障・トラブルもあんまりないですね。手に負えんのもないかな、最近は。前はね、ある日突然機械が止まってどうしようかと大騒ぎすることがあったけど。


―変な音がするのを長い事放置しておくと大きな事故とかトラブルになるわけですね。


脇谷:なりますね、機械は壊れる前に信号を出しますんで。PCと一緒です。昔のフロッピーディスクは、初めは静かやけど段々音が大きくなってくる。壊れる前兆ですから。もう壊れるなというのは身構えながらできるんですけど、機械も同じで、こすれる部分の音が変わってきたり普通はすんなり動くところがちょっとこう、カタカタという感じが出たりする。大体それでスピードが遅くなったりばらついたり。日頃使ってる方は分かるはずなんで、それは大体事前にわかります。スイッチなんかでも普段やったら押せばちゃんとつくのが、押し方がグッと押さなければ効かんとか早く押さなければ効かんとか、なるともうスイッチが壊れかけてる。なら交換しようかと部品とって壊れる前に交換するとかの形をとりながら。


―うちの換気扇それやわ(笑)


(6)2日に一度口を酸っぱく


―脇谷さんはそういう、「不良は出るもんやで」とか、「体調悪い時は機械止めてくれ」とかを、どのくらいの頻度で皆さんにおっしゃってます?


脇谷:「体調悪い…」のは年に2回、最近は。「機械調子悪いときは止めろ」というのは2日に1回言うてます。


―やっぱり相当な頻度で、口酸っぱく言われているわけですね。


脇谷:いつもと違う音がするとか、止めろというのはいうてます。
 全体朝礼が週に1回です。週に月曜日だけ、全体で。そのときは必ずそれは言ってます。このへんは正しいかどうかわからへんのですがただ単純に僕のこだわりだけであって。


―いやいやいや。結局それで機械の壊れるのが無くなって。


脇谷:お金かかるんです。壊れてから修理すると。壊れる前に修理すると安いんです。そこだけです。壊れてからすると1か所じゃ済まへんからね。僕自身が神経質なのか、結構それを気にする方なんで、歩いてるとたまに変な音するなーと思って見に行ったりして、自分で。家では家内に「お金のかかる人や」と言われています。


―家電の壊れたのもすぐ気がつきますか(笑)


脇谷:はい。今言われた換気扇でも風切音悪いなー、と思ったらばらしてみて、「あ、部品壊れてるわ交換しよう」って、止まる前に交換する。で怒られます。「高い!金ばかりかかる!」って。


―いいお話をありがとうございます。価値あります、このお話。


脇谷:完全定着はしてないんで。まあ「機械」だけは定着してるかな。「叱らない、責めない」というのももうちょっとかなーという感じ。


(7)真因を探る質問テクニックとは


―皆さんほんまの原因を言ってくれますか。「深夜までゲームしてた」とかいうのを。


脇谷:訊き方ですね。やっぱり。正田さんのセミナーにもあるような、発展的な質問(拡大質問)、向こうがしゃべりやすい質問をやっていかんと。

 それとある程度こっちが読みます、顔をみて。「ああ多分寝てないやろな」と、そこから「どうなん?」と。誘導尋問ではないですけど、しゃべってくれるようにはなりましたね。それまでは頑なに「いいえ、いいえ」と言ってたのが。もともと僕も質問が上手な方じゃなくて、以前は責めるような質問があったみたいで、人から「詰問や」とよく言われましたけど、それをやめようと意識するようにしてからは一応答えてくれはったし、逆に僕らよりは本岡なんかのほうが友達的にイメージ近いみたいなんで、割とそういうのは上手にききだしてくれます。僕であかん場合はそういう形で誰か使うとかね。で聞いた本人にも横に座らして、「こうこうこうで、こうやな」(確認)「はい」「じゃあこうしような」(要望)と。


―ふーん…。テクニックが色々あるんですね〜。


脇谷:どうなんでしょうね、テクニックなのかどうかわかりません。たかが30何人ですけど色んな人間がおりますんで、ええもん持ってりゃおかしなやつもおるし、おかしな奴の中にもやっぱりええもん持ってる。どう見抜いていくかというのが、いいところを伸ばしていくしかないんでね。そういうところを伸ばしていかないと。うちらみたいな規模では、優秀な人間ばかり集めては仕事ができませんから。やっぱりええとこ伸ばしながら、ほかも付随して伸びていくのを期待するしかないんでね。

 中国も同じで、中国人のええとこを伸ばしながら悪いところもついでにくっついて伸びてくれるやろうと期待してるんで。


―よく、きめ細かく見てはります。


脇谷:みれてないんで、怒られますけどね。皆さんから、はい。


―やっぱり両方みるというのは大変なんでしょうね。第2、第3の脇谷さんがいてほしいですね。


脇谷:要りません。


―あ、ほんまですか。

脇谷:みんなが自律して動くようになったらええかな、と。今言ったことに反してるんですけど、元々僕自身の考え方は、トップが誰がおるかで組織が回る回らないが決まるのはおかしいと思う、組織として。組織は自分で自律神経持ってちゃんと自律してお互いが牽制して仕事ができる組織がいいんであって、トップは最後お客さんとこに怒られに行くときの責任者であって。それができるまで、みんながそれぞれの持ってるもんでレベルを合わせて「ちゃうよね」「おかしいよね」言い合いながら組織が回る、ホンマ理想ですよ。できないですけどね。それをいつまでも子どものように夢で追っかけてるだけであって。それができたらいつでも抜けれるし。そうあってほしいんで、第2第3が欲しいとは思わないです。

 同じような人間がおって育てていったら育てられると思うんですけど、それが育ってもしょうがない、ちゃんとこみんなが自立してくれんかったら、みんなでやってみんなで回さんかったら文化って残らないんですよね、
それを何とか、あと10年ぐらいで何とかならんかなと思ってますけど。…こんなことばかり考えてやってるもんでねえ。


―いやいやいや、それが本来の総経理のお仕事なんや思います。中々それをわかってる方は少ないと思います。未来志向なんやろうなあ、脇谷さんは。


脇谷:1人が誰かおるから回る組織はおかしい。やっぱりみんなが牽制しながら、というのをやっていかんと、キーマンは要りますけどね、やっぱり。キーマンがキーマンを育ててくれる。それはしっかりとお互いが人間同士尊重しあうような、やっぱり「承認」の世界でしょうね。尊重し合いながら組織を作っていけるのが一番ベターやと思うし強いと思うんですよね。
それができる、得意にしている民族は日本人やと、僕はずっと思ってたんでね。外国人ではなかなかそういうところは-相手を承認するとか尊重するとか、言い方が若干違うとか違和感を感じるときがあるんでね。


(8)中国での採用基準は「嘘つかない」


―ああ、そうですか。
それでいうと中国で前回のお話のようなことができるのは凄いことやなあと思いまして。従来の私たちがイメージしてる中国人像とすごい違うなあと。マネジメントのやりようによっては本当に人の性(さが)まで変えてしまうのか、あるいはある程度採用の段階でスクリーニングしてそういう人格の人を採ってるのかしらと。


脇谷:ええと採用の段階で言うと、―設立当初から残ってるのが2人。その2人は、採用基準は・日本に住んだことがある、・日本が大好き、・日本人と付き合ってどんな相手か知っている奴、というのを社長が連れてきた。
あとは僕が面接して入れたけど僕が入れた基準は、「嘘つかん奴」というのを狙いましたね。


―ほう。それは見抜けますか。面接って化かし合いじゃないですか。


脇谷:2回面接したらわかります。日をあけて。今の営業技術部の部長してるのも2回しました。今、承認を教えてる第二世代目のメンバーも僕が2回面接しました。1回目と2回目でまったく同じことをききます。過去の成績。どんなことをしてきたか。あなたが今自信をもっていえる成果は何ですか。ということを2回、同じことをききました。20人ぐらい面接してると1回目と2回目はほとんど違います。1回目に言ったことが2回目になるとすっごい膨らんで言うときもあります。


―ははは、ありそうやなあ。


脇谷:そこで色々突っ込んでいくと、じゃあどういうことしたの、こうしたのああしたの、こんなこと起こらなかった、あんなこと起こらなかった?と、通訳を交えてしゃべっていくと、大体「こいつはこのレベルまでしかしてない」とか「誰かにくっついて一緒にやったことやなあ」とわかるんで、そういう人は全部排除します。


―ははあ、自分でやったように言う人は排除。


脇谷:営業技術部長を入れたときは、「いや、僕はそんな大きな成果はありません」と言ってました、最初。「しゃべれることはありません」ちょっと日本語ができるもので、「成果はありません」。ならお前何が売りなん?ときいたら、「僕はこんなことを考えてます」というのを作ってきました。1週間後の2回目のときに。ならお前これ説明してみ、ときいたらとんでもないわけのわからない夢をみてたんで、おもろいなということで入れました。 とんでもないわけのわからない夢をみてるからあとで修正きくかなーと思うから入れました。ちょっと今修正に苦労はしてますけど。

 で、主幹クラスをやっている第二世代のメンバーは、やっぱり言ってることは変わらなかったし、突っ込んだことに対してもちゃんと答えてたんで入れました。現場の方は全部向こうに任してるからね。主幹から下の人間については中国人の彼らに任してますけど、基本的に僕の方針は「嘘つく奴は入れるな」。


―じゃあ20人に1人とかそのレベルじゃないですか。


脇谷:でもないですよ。中国人うそつきやって言いますけど、意外に素直ですよ。顔に出ますからね。嘘ついてる顔って。日本人よりは素直ちゃいます、ある面。


―ふーん、面白い。そんなことおっしゃった人初めてです。


脇谷:中国人にそんな腹黒さはないです。悪い奴は悪いです。はなから顔見たら悪いとわかります。嘘つきは顔みたら嘘つきって思います。日本人みたいに顔でニコニコ笑いながら腹の中で「このクソ、ボケ」っていう感じはないです(笑)少ないです。。でも中国人は意外に素直と、僕は思ってますね。


―それは高専とか、工業高校とかを出てる人ですか。


脇谷:副総経理は大学出てますね。日本の四年制大学ね。営業技術部長はは工業高校卒。主幹の子らは専科という、日本で言う短大出。あとはまあ高卒、中卒。現場の40代の人は中卒が多いですかね。その下の一部も高卒ぐらいです。
 今の若い20代の子のほうが使いにくいですね。


―ああそうですか。八零後(パーリンホウ)とか九零後(ジウリンホウ)の人達。


脇谷:日本人の若い人以上に使いにくいですね。


―よそでもききますね、中国からの研修生すぐ休んだり、国帰ります言うたり訳わからんからもうベトナムからの研修生に替えた、と。



脇谷:我慢できないんですよ。暑かったらイヤ。しんどかったらイヤ。残業はしたくない。こんなトラブル起きたら僕関係ない、知らないと言ってどっか行く。多いですね。だからもう若い子は少ないです、30代後半が中心。1人22歳の人がいます。彼は今、暑い中やってくれてるんでね、中にはそういう人がおるんでそういうのを見つけては一生懸命鍛えて、次の技術を憶えてもらおうとやりますけど、一般に若い人は仕事ができない、高い賃金は求めるけど仕事はできない、ミスマッチですよね。だから今日本の人らも、若い人が大学卒業して就職ないというけど、本当に仕事がないのかというと仕事はある。就きたい仕事と合わない。したい仕事は何なん?と聞くとみんなクーラーのきいた綺麗な部屋で定時に終わる仕事、というから「そりゃない」と。それと変わらへんのかなあと思いますけどね。

 今両方みてますが本社のメンバーのほうが向こうのメンバーに負けてますからね。向こうのメンバーはどんどん新しいことを憶えていったりするけど本社のほうはどっちかというと今の世界を何とか確保できればいいや的な、景気の動向もあるんでしょうけどね。仕事が忙しくなると色んなことを当然考えますけど。

 意外かもしれないけど、腹黒いのは日本人のほうが多いです。中国人のほうがまだすっきり、はっきりしてます。僕は中国人のほうが付合いやすいです。
中国人は好きなもんは好き、嫌いなもんは嫌いとはっきりしてますからね。ホンマに嫌いな人とは絶対しゃべらへんから。


―ふーん。社員さん同士でもあります?


脇谷:ありますよ、グループが。対立はしませんけどしゃべるグループとしゃべらんグループが。昼ごはん一緒に食堂で食べてみていたら、「ああこのグループ仲悪そうやな」と思います。まあ酒飲むときはみんなわあわあ言いますけど。仕事上はそれはないようやから、注意して見とけというのは副総経理や製造部長とかには言っています。ちゃんと中入って取り持てよ、と。とくに支障は出ていないんでね。人間好き嫌いあるんでそれはあえて言わんと。ただ仕事は仕事、プライベートはプライベートで割り切れなくなったときはちょっと言おうかなと。
 まあ、変わったことはしてないですよ。会社的には変わってるでしょうけど、日本人がおらんから。ものづくりは日本と同じものを作ってますし。工場もここと同じで窓から現場が全部見渡せますし。

―インタビュー以上―




 このあとはプレスと溶接の生産現場を急遽見学させていただきました。「普通工場の写真撮影は厳禁ですよね。僕はオープンにしたんです。金型と製品のアップ写真でなければOKです」と脇谷さん。

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脇谷さん(左)と本岡さん(右)




 工場内の掲示物意外と少ないな〜。掲示物についても伺いました。

「生産性の指標は、表示していません。
品質は、1か月を修正し、内容ごとに品管課のほうでまとめてから
現場に展開しております。現場も各ラインの機械のところに掲示しています。
基本的に毎日の生産性や、品質状況を現場で修正することが、本当に
現場で役立つのかの疑問があり、あえて日々の集計は、日本ではしおりません。
過去には、しておりましたが、どうも集計する事が目的となり、自分たちの
弱みをしっかり分析することまで進まないので止めました。
月1回の現場のリーダー会議を開催してそれぞれの現場の改善目標や、進捗状況を
話し合い、それぞれのライン間で共有する方法を取っています。
ちなみに中国では、彼らのやる気と努力を認めるために週1回、品質状況、生産性等に
ついて品質管理部門、製造部門のスタッフでまとめて掲示をしています。
現場朝礼で現場の作業者全員に製造部長もしくは、品質管理主管からよくなったところ
悪かったところを連絡するようにしています。
(少しずるいですが、それぞれの持っている競争心をあおっています。)」(脇谷さん)


 脇谷さん独自の非常に細かい観察に基づいた「人」と「生産」に関するノウハウ。小さい規模の組織だからこそできるPDCAの速さもあるでしょう。本来「人」について独特の哲学をもった人が、当協会のシンパでもいてくださるというのは有難いことです。
 

 脇谷さん、このたびもご無理なお願いに応じてくださいまして、ありがとうございました!


 脇谷さんへの最初のインタビューはこの年の5月。上海工場の驚異的な躍進ぶりについて初めてお話いただきました。

 「とにかく現場を見てください」で仕事が来る中国工場―脇谷泰之さん(大島金属工業執行役員)インタビュー
http://c-c-a.blog.jp/archives/51857608.html
 
 またこの日記の翌9月には、上海工場を実際にお訪ねしました

 承認の輸出先 「上海大島」訪問記(1) 手作り治具にウルトラC改善・知恵と工夫の戦場上海
http://c-c-a.blog.jp/archives/51871514.html


承認の輸出先 「上海大島」訪問記(2) ―「僕嫌われ者ですよ」―「まじめ」「元気」な現場づくりはダメ出しと質問と承認の風景
http://c-c-a.blog.jp/archives/51871516.html


ものづくり企業を元気にしたい!元気な現場、自然さと合理精神、グローバルリーダー―脇谷さんとの対話
http://c-c-a.blog.jp/archives/51891670.html





100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp


「第3回承認大賞」募集ページはこちら!あなたのエピソードを教えてください

http://www.shounintaishou.jp


「承認大賞ハンドブック2013」ご紹介ページはこちらです

http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51861106.html