晴れた金曜日の1日、思い立って六甲山へと単身向かいました。


 今回は割とちゃんとした装備、登山靴にリュック、水筒やヤッケを持って行ってます。

 ・・・しかし、せっかくのまじめな山おばはんに襲い掛かる魔の手が!!


 JR芦屋駅から住宅街の間の道をえっちらおっちら登りやっと大谷茶屋そして「高座の滝」へ出ます。

高座の滝


 ここが芦屋からの登山道の入口。


 そこからが急峻な岩道「芦屋ロックガーデン」。

 あと半月もすると休日には人でごった返し、この岩登りの道も人のお尻を見て登るような込みようになります。


芦屋ロックガーデン


 こんなふうにのんきに写真なんか撮っていられなくなります。ああ1人でマイペースで登れるって幸せ(遅いからね)。


 この芦屋ロックガーデンを抜けてしばらく普通の山道が続きます。そして休憩地の「風吹岩」にあと100〜200Mで着こうかというところ・・・

 イノシシの親子2頭が登山道をあちらから歩いてくるのに出会いました。

 折あしく両側は1.5Mほどの崖になった切通しのような道。よけようがありません。


 先頭の親イノシシ(たぶんメス)と目があってしまいました。こちらへそのままやってきます。うわ〜。

 私は登山道の少し広くなったところでわきへどいて、向こうがやりすごして行ってくれるのを期待しましたが・・・、親イノシシは通り過ぎてはくれず、こちらへどんどん近づいてきてのびあがり私の身体に前脚をかけます。わ〜やめれ。

 私は後ずさりしてイノシシを振り払います。すると、ラッキー、向こうは通り過ぎてくれたと思いきや・・・、

 私の背後に回り、リュックに猛然とかみつき、引っ張りました。

 私は後ろ向きに倒れ、それでもリュックは離しませんでした。ちゃんと肩ベルト同士を胸ベルトで固定していたので、引っ張られても簡単には奪われないのです。ただうっかりしていたのは、腰ベルトをしていなかったため、リュックの下半分はイノシシに引っ張られて私の身体を離れてしまいました。私はあおむけに倒れたままリュックごと地面を引きずられ、「ギャ〜〜」と生まれてから上げたこともないような悲鳴を何度か上げました。

 そうしているうち胸ベルトがのどに食い込んできたため、「もはやこれまで・・・」と観念してベルトを外し、リュックをイノシシにやりました。

 イノシシはリュックをくわえて登山道から外れた草むらに走り去り、向こうでガツガツかじっているのが聞こえます。
 悲鳴をききつけてか、若いハイカーのお兄さんがかけつけてきました。

「どうしたんですか」

「イノシシにリュックをとられちゃったんです」

 すると、山お兄さんはその辺の大きな石を拾い草むらの中でリュックから食料を漁ろうとしているイノシシに何度も投げつけました。何度目かでイノシシは逃げ去りました。

「これですね」

 お兄さんが取り返してくれた私の赤いアディダスのリュックにはファスナーの脇に大きな破れ目が・・・そして、私の大好きなローソンおにぎりの「和風ツナマヨネーズ」と「ごま鮭」が見事に消えていました。

「貴重品はありませんでしたか」

「はい」

 奇跡的に、その日はなかったのです。お財布をリュックに入れることも多いのですが、この日はたまたま財布もスマホもウエストポーチの中だったのです。だから被害は一応、おにぎり2個とリュックのみ。リュックの中にいれていたヤッケはリュック同様イノシシのよだれでビショビショでしたが、まあ無事でした。


 「こんなふうに実際に襲ったのをみたのは初めてです」と山お兄さん。それにしては冷静に対処してくださいました。


 お兄さんは逆方向からきた人だったのでそこで別れ、私は破れ穴のできたリュックを片手にもって引き続き進行方向へ歩きつづけ「風吹岩」にたどり着きましたがしょぼーん、そこで食べようとしていたおにぎりがもうないよう。
 
 よほど泣きそうな情けない顔をしていたのか、風吹岩から下りてきた山おじさん(この人を「山おじさんA」としましょう)が「どないしたん?」と話しかけてきました。


「イノシシに襲われてリュックを盗られたんです。リュックは近くの人が取り返してくださったんですけど、中のおにぎりを食べられて」

「そりゃひどいなあ。ちょっとあっちの人に言ってきましょう」

 山おじさんAは風吹岩の上にいたもう一人の人、山おじさんBを呼んできました。この人はおじさんAによると、県知事の委託を受けて山道をパトロールする人だそうです。

「ああ、襲われた話この頃多いんよ。ハイカーがリュックから食べ物をやるから、おぼえてまうんやな」

 なんでもこの風吹岩付近で襲われることが特に多いらしいです。

「・・・そいでも手口が狡猾ですよ。あれ何度もやってると思いますよ」と私。

「リュック背負わんと手に持ってたんちゃうん?」とおじさんB。

「いえ、背負ってました」

「腰ひも胸ひももせんと背負ってると、ちょっと引っ張られたらとれてしまうからな」

「いえ、胸ベルトもしてました(腰ベルトはしてなかったけど)」

「後ろからきたら、防ぎようがないわな」とおじさんA。

「はあ、前からきたのをやり過ごそうとしたんですけど、向こうが背中側に回ってきて」

「ああ、そりゃいかん。相手から目をそらしたらいかん。われわれでもイノシシに遭ったらずっと見てますよ、背中を向けたら何するかわからんもん」とおじさんB。

「あなたも街で変な男の人に会ったら見とくでしょ?」とおじさんA。

「・・・いえ、街で変な男の人に会ったらむしろなるべく見ないようにします、ガンつけたと思われたら怖いので」と私。

(ワケわからん会話になってきましたがネット情報などによるとやはり背中を向けるのは良くないらしいです。ただ今どきの六甲山のイノシシは目を合わせてればいいというものではなく、私にしても目を合わせた状態で前脚を立ててきましたし、ネット上には「イノシシに襲われる」という動画がありやはり六甲山で数人のグループがイノシシに遭遇したときのもようが見られます。私の場合はこれが女1人のときに起こった、ということです)


「しかし危険やなあ、射殺してくださいよ射殺」とおじさんA。

 このとき私も真情としてはそうだったかなー。

「いや射殺はできない、六甲山では」とおじさんB。

「2年ぐらい前、ヤリで殺したというのがあったでしょ」

「ああ、あれは体重80KGくらいの人をしょっちゅう襲っていたオス」


 おじさんAは私の方を向き、「あんたお腹すいたやろ」と、大きなリュックからみかん1個とりんごジュースを取り出して、くれました。

 なんと有難かったことか。

 それから、おじさんAにくっついて山を下りました。当初は保久良山ルートのつもりだったのですが、意地悪なおじさんBが「あっちもイノシシおるよ。あんた今日はもうイノシシ見たくないやろ」というので八幡谷ルートのおじさんAとともに。

 このルートで山を下りるのは初めてでした。おじさんAは

「この分かれ道はあとで合流するがこっちへ行ったほうが道が険しくなくて良い」

とか、

「この上を走っている道がハブ谷といってあまり整備されてない」

「この向こう側の道が住吉川上流に通じている。源流は芦屋カンツリー倶楽部のあたりから来ている、ゴルフ場の水なので農薬がまじっていて、飲めない」

などと親切に解説してくれます。週に2回ほど、六甲の中腹のあたりまでさまざまなルートで登ってらっしゃるよう。

 八幡谷は岡本の天上川の源流で、たどっていくと岡本梅林の東、岡本八幡神社に出ます。


 途中、おじさんは「あんた腹減ったやろ」と、山道をそれて林の中に入って行きました。みると、立木の枝のあたりから木の実をとっています。

「食べてみ、ほとんどは種やが周りの白いねばねばしたとこを食べるんやで、種はぷっぷっと吐くんやで」

アケビ


 それはアケビでした。バナナよりもっと苦味やえぐみがない、甘い甘いたべものでした。見た目はけっこうグロイのにね。

 
「もうちょっと時期が遅いな。・・・あんた、ムカゴを知っとるか。自然薯のこのツルの葉のところに実がつくんや、それも、自然薯の味や。ご飯に炊きこんで食べたりするんや。もう全部とられてるな」

 
 おじさんAと不思議な道行でした。やがて岡本八幡神社に着き、おしゃれな岡本の街に着いたところで、
「ここでお茶のんでいきます。どうもありがとうございました」
と、おじさんAとお別れしました。


 というわけで人の世をはかなんで山に行ったところ自然の脅威を知り人の情のあたたかさを知る、みたいな展開になってしまいました。

 イノシシママについては、
「あたし何も落ち度ないのに!あれって常習犯よ!射殺してもいいと思うワ」
と本気で思っていたのですが、

 家に帰り着いてわが家のなごみ犬「リン」の顔をみていると、

「考えてみるとこの子はのんべんだらりと生きてるのに比べ、向こうは必死なんやなあ」

と思えて来ました。

 あたしは単に山に遊びに行っただけ、本来向こうのテリトリーなんやしなあ。

 おじさんBに「あんたに落ち度がある」みたいに言いまくられていた時は「射殺よ射殺!」って、本気で思ってたのですけどね。

 そこでイノシシ対処法やら撃退グッズやらを検索しまくりました。 

 イノシシ対処法参考ページ

 http://www.pref.fukuoka.lg.jp/c02/inoshishi-souguu.html (福岡県)

 http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1280878785957/(広島市)

 「絶対に背中を見せないで」というところに該当するんかナー。

 あと手負い、発情中、子連れの時期は興奮しているので逃げないでよってくる、と書かれているページもあり、「子連れ」というところが今回の場合該当します。

 このほかのページで「六甲山のイノシシは逃げない、特別学習している」と書かれているものも―。


(考えてみると兵庫県や神戸市には、こういうお知らせページはないんかなー。「六甲山では今こういう状況になっています」っていうお知らせをしたほうがいいのではないだろうか。山おじさんAからBへ「ちゃんと報告してくださいよ!」って何度も念押ししていたが、ハイカーの過失の話にばっかりすり替えていて正確な報告が上がってないとか?
 ・・・と思ったらその後「イノシシ情報について」のページを発見。http://www.city.kobe.lg.jp/ward/kuyakusho/higashinada/bousai/inoshishi/疑って、ゴメンナサイ。ただハイカーの被害については「自業自得」だからかなあ、あんまり言及がありませんでした。)

 色々検索した結果、正田は「あるもの」を注文し、懲りずにまた山へ行こう、と思ったのでした。

 今年の冬は絶対「ぼたん鍋」食べよう、とも思いました。10倍返しだ!!(ウソ)


 心優しく勇敢に対処してくださった山お兄さん、山おじさんAさん、ありがとうございました。



100年後に誇れる人材育成をしよう。・・・今回はどうカナ?
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp