何度か書いている話題ですが、2006年ごろに担当したある男性生産部長さんの「女性リーダーづくり」のお話をご紹介しようと思います。


 もう時効だから多少詳しく書けるかな。いやその分忘れちゃってるかもしれませんけど。

 
 島根のほうのプラスチックの小さな部品をつくる工場で、もちろん今どきの多品種小ロット生産で細かい納期に追われ苦しんでいました。作業者はほとんど女性でした。
 部長さんは、人柄のいい方でしたが何かの理由で(社長にいじめられた?でも私に彼を紹介してくれたのは社長さんだったんですが)コーチング開始時にはすごく落ち込んではりました。話していて、やや言葉が曖昧で抽象的で、聴き直し(チャンクダウン)の場面がいっぱいありました。


 ただ初回のたっぷりの「承認」が効いたのか第2週には既にだいぶ元気になられていて、話しぶりも具体的になられていて、さらに「私も『承認』ができるようになりたい」と言われました。

 そこで、遠隔地の方だったので「承認の種類」のシートをメールでお送りすると、次週には
「正田さんあれ役に立ってますよ!机のガラスの下に入れて毎日見て気合いを入れて部下を承認してますよ!」
と言われたので私がそれをセミナー等で吹聴するようになった―、というおおもとのエピソードがこのかたです。

 このかたは当初いくつかの目標を掲げられていましたが、そのうちの1つが
「現場に女性リーダーを1人作りたい。しかし実現できるかどうかわからない」
でした。
 ところが。第3週には、早くも「この人をリーダーにしようという女性が見つかった」といいます。当初は「みんなどんぐりの背比べ。適任者がいないからどうしようか」と言ってたのに。

 なんでも、会議である40代の女性作業者が発言するのをきいていたらそれがひときわ責任感のある発言だった。そして考えてみたら、その人は以前にも会議でそういう種類の発言をしていた、というのでした。

 なんのことはない、元々責任感のある人でそういう振る舞いをしていたのが、「承認」をする前は見えておらず、「承認」をするようになると急速に見えるようになったのでした。

 このあたりは以前にもご紹介したポジティブ心理学でいう「ポジティビティは差別を減らす―異人種の顔の見分けがつくようになる」ということに通じるかもしれません。


 そうして、これと見極めをつけた人に「リーダーになってほしい」と口説く段階に。しかし女性は男性と違い、金銭欲や権勢欲が強くないせいかすすんでリーダーになりたいとは言いません。私はそこで、また「承認」の入れ知恵を部長さんにしました。「行動承認」を使って、「あなたはあの日あの時〇〇(プラスの行動)をしましたね」を言いまくってあげよう、だからあなたこそリーダーにふさわしい、なってほしい、という口説き文句です。

 部長さんは、女性と面談しそれを実行されたそうです。で、「私が全力でお守りします」なんて皇太子みたいなことゆうたかどうかまでは知りませんが、首尾よく第4週にはその人にリーダーになってもらいました。3か月で達成するかどうか、とか言ってたのに、早かったですね。


 リーダーになってもらいましたが、まだその先に波乱があります。詳しいことは忘れちゃいましたが40代の彼女がリーダーになった時、どうしてもガタガタ言う人が60近い女性パートさんにはいるのでした。そのあたり私は最近もあるところで言いましたが「女の敵は女」、どうでもいい些末なことを言う人がいるものです。でも適任の人にその部署でリーダーになってもらうのは品質問題につながる喫緊の課題であり、ガタガタ言う人が全員辞めてくれるのを待つわけにもいきません。


 でまた入れ知恵をしまして、要はまた「承認」でありました。新リーダーの彼女はその場その場でこういう振る舞いをしてきた人でありリーダーに最もふさわしい。ベテランの皆様のこれまでの貢献もありがたく思ってるがどうか若輩者の彼女を盛り立ててやってほしい。てなことを部長さんはミーティングで言ったわけであります。どのぐらい紛糾したかしなかったかわかりませんが、結局ベテラン女性たちも納得して、その後は彼女の援護にまわるようになったそうです。

 というような、やっぱりどこでも「女の敵は女(と、めめしい男)」の現象はありますから、これと見込んだ女性について「全力でお守りします」の姿勢は必要です。そのあたり今年夏ごろの「日経ビジネス」の記事には「もう女性特有の配慮は要らない」なんて書いてありましたけど、とんでもない今でも要りますって。記者さんという人種は最先進事例ばっかり見て目がおかしくなっているので、底流の昔と全然変わってないところは見えてないんです。

(あ、「女性同士は攻撃性が高い」という現象については、マウスかラットで姉妹だけを一緒にしたところ攻撃行動が増えたという実験がありますから、ほとんど生理的なものと言えると思います。時代が変わってもそういうのは変わらない可能性があります。要は注意ぶかく見て、「これは本筋の議論ではない」と判断したら「切って」しまうことです)


 ・・・と、「承認三題噺」のようなものでやっと女性リーダーを1人つくりましためでたしめでたし。こういうのはもう7年も前の話ですが、今でもどこでも同じ、原型のような話ではないかと思います。逆に「承認」という武器をもってなかったら女性リーダーどうやってつくるんだろ、工夫のないトップダウンでつくるんだろか、それとも根性のない男性リーダーで現場を我慢させるんだろうか、みたいな話です。
 今日は特にオチなしです。


 ※追記 なお、なんでこのかたに関してこのエピソードだけ良くおぼえてるんだろう、と資料を見直してみましたが、ほかの目標はこのかた自身の決断ひとつでサクサクできることだったので、セッション毎に「正田さんあれやりました」とご報告だけいただいて終わり、ほとんど話題として取り上げることもなく3か月はおろか1か月かそこらで達成してしまったのでした。一番手のかかる目標が「人」がらみのことであり、それはセッションで話し合った結果私が入れ知恵することになったのでした。しかしまた品質とかその他の目標がそれに付随してついてきたりするのでした。ああ問題解決が速いコーチは儲からない。でも「1位マネジャーをつくる」実績はこういうことの集積なんです。正田ほらふいてるわけじゃないんですよ。


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 そういえば、この記事に「いいね!」してくれた人がいいねを取り消しちゃうかもしれないことを、付け加えます。

 いくつか前の記事で「特定秘密保護法案」に関してちょろっと書いたことが誤解されたかもしれないんだけど、私の趣旨はですね、えーと、、、

 あれ国防上必要だから急いでるんちゃうの?こういうこと言う私って甘いの?

ってことです。またその程度の当たり前のことが言いにくいヒステリックな世の中がイヤなんです。

 消費税も上げなしゃあないんだから上げればいいの。あたし貧乏人だから困る側だけど。日本人は政府のこと疑いすぎです。そりゃことの種類によっては疑うことも必要ですけどね。


 会員さんがたすみません。もしあたしが間違ってたら合宿で土下座してあやまります。


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NPO法人企業内コーチ育成協会
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