「もし受講生様がそれで女性差別というもののおぞましさを知り、自分は絶対に手を染めないと決意してくれるなら、私はこれからも手ひどい形で差別を受け続けるのがいいのかもしれない。」


なんておどろおどろしいことを2つ前のブログに書いたけれど、

「おぞましい」とまでは言えないが「みみっちい」タイプの性差別にきょう遭ったので、記録しておこうと思う。


 25日午前、ある公的機関を訪問したときのこと。

 こういう場によくいる、大企業からの出向組のいかにも「調和性」の強そうな顔の人が1人で出てきて対応した。

 この人は自分の古巣の大企業の人事などに行ったそうで、

「女性の登用を積極的にする、と言っています」

と無邪気に話した。


 そういう大本営発表をはいそうですかと鵜呑みにするのが、どこかの新聞社経済部長と一緒で子どもなの。

 いずれにしても大企業にお勤めするなんて日本の人口のごく一部だ。

「いや、意識は全然変わっていませんよ」

私は言い、そして「例えば・・・」と、工場の優秀な女性がリーダーに登用されない例を話した。周囲の男性リーダーはパート女性たちから不満百出で「叱れない」人格で、その優秀な女性がリーダーになって権限を持ったほうが絶対現場が落ち着くのだがそういう人事をしない。恐らく男性リーダーたちの面子を潰すのを恐れているからなのだ。


 すると出向組氏は話をそこでさえぎり、

「私の考えでは、女性にはもっと自分の得意分野があるんだと思いますね。現場には、女性ができない仕事もあるでしょう。女性はソフト面など得意分野で昇進してもらう。その人の場合はそれがいいんじゃないかなあ」


 お言葉ですが。
 反論するのもあほらしかったが、事実は出向組氏の想像するのとはまったく違う。

 その優秀な女性はもともと作業者時代からものづくりの方で評価されてきた人であり、今もその社の技術、営業どちらからも「あの工場で一番信頼できるのは彼女」と、その誠実な品質管理ぶりを評価されている。現場へのにらみも男性たちよりはるかにきく。


 ・・・と、「話は最後までききなさい」という問題でもあるのだが、ここには一般的な傾聴研修ではカバーできない問題が恐らく横たわっている。


 出向組氏は、要するに骨の髄まで性差別主義者なのである。
 大企業出身やしね、甘ちゃんなのよ。女の人にはごはんつくってお着替えもってきてほしい人なのよ。

 「調和性」の人にありがちなナチュラル性差別主義のイデオロギーの持ち主なので、自分以外の組織のことであっても、性差別について指摘・指弾されるのは我慢ならない。それで思わず人の話をさえぎってしまう。人生観、価値観の発露なのだ。そして自分の頭で勝手に考えた「合理的な理由」をつくりだす。

 私にとって上司ではないから良かったけれど、こういう人が上司だったらたまらないな。
 はい、私は平気で事実はこうだ、と反論しましたけどね。


 私がこういう場合の聴き手だったら、というと、まあそもそもこの手の思い違いはしないと思うんですが、仮にするとして、幾つか前の林義記さんとのやりとりなどをご覧いただいてもおわかりになるとおり、もっと軽いトーンで「仮説検証」をしますね。

「私まったくわかってへんのやと思うけど、例えばこういうこと?」

と。そういう、「あくまで仮説検証なのだ」という表現方法をしないと、現実との齟齬が起きるおそれがある。


 そういう謙虚な会話方法ができない人は、正しく情報収集し正しくものを考える資格はないのである。

 出向組氏の「私の考えでは・・・」は、事実と恐ろしく食い違っているのだが、出向組氏はそのギャップの大きさについて想像力が働いてない。だから、「・・・だと思いますね」と、乏しい判断材料から大いに間違った推論を、しかも妙な確信を持ってしてしまっている。


 まあ、もうひとつ出向組氏にはたらいている無意識を想像するなら、かれはやはり性差別主義者なので、

「女の正田さんが考える結論は間違っている。男でかつ人生経験の長い私の頭に思い浮かんだイメージのほうが恐らく正しいはずだ」

と、思ったのだ。ごめんね、私のほうがあなたより判断能力高いと思う。歳は多少若いけれど。私は事実関係をきちんと押さえながらものを考えるということを知ってる。

 まあいいよね、おたくの組織は多分どんなに会員が減っても潰れないから。


 このところ「正しくものを考えるための日本語の用法」ということをよく考える。

 今日の題材などはいい教材になるはずだが、しかし教育プログラムとして体系化できるかというと自信がない。まだ全体像がみえていない。


 あと、真面目な話、この出向組氏は偉そうに
「女性活用も大事だがグローバル経営だから外国人の雇用や登用のほうこそいまや大事で」
てな風なことをどっかから仕入れて言ってましたが、
私の勘では、外国人を使える使えないより女性を使える使えないのほうが、そのへんの中小〜零細企業のあす潰れる潰れないに直結しますね。だって、「今目の前にある資産」なんだから。偉い人とか大企業の言った通り考えるんじゃないの、子どもみたいに。女性活用の問題から逃げたいのは、あなたがいくつになっても女の人にごはんつくってお着替えもってきてもらいたいお子ちゃまだからでしょ。




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