長いことマネージャーさんに「承認」を教えることをしておりますと、

一人のマネージャーさんでもその時々で、承認についての理解が偏ることがある、というのは見ていて思います。

ある程度は許容範囲だし、ある程度逸脱してくると業績にも影響してきます。


あるマネージャーさんは、

「結局『ありがとう』と言うことが大事ですよね」

と言いました。正しいようでもあり、でも「その人のくせが出た」とも言えます。

このかたは回復志向さんなのです。そして「人を助けて、『ありがとう』と言われたい」という気持ちが人一倍強い。

そういう人が「ありがとうが一番大事ですよね」というときは、少し気持ちが弱っていて、そしてありがとうに飢えているときかもしれない。
また、回復志向が支配的になっているときは、回復志向は問題点をみがちな資質ですから、人の美点より欠点に目が向きやすくなっているかもしれない。それで重要な承認どころを見逃してしまっているかもしれません。


一方、「承認=ほめる」と理解しやすい人もいます。「すごーい」「さすがあ」みたいな言葉を使いやすい。それは、多分ご本人が「ポジティブ」が強いかたなのだと思います。
「ポジティブ」が強いと、見通しが甘いとか同じミスを繰り返すとか、そういう問題があるかもしれない。また、人によってはポジティブな人のいう「すごーい」「さすがあ」系の褒め言葉はかえってバカにされた、と感じて不愉快になるかもしれません。

去年の7月東京で、「上司が見えすいた褒め言葉を言ってきて不愉快」という話が出ましたが、すごーいさすがあ系の言葉はある程度誇りを持って仕事している人に使うのは気をつけたほうがいい、と思います。

こういう、人によって理解にくせが出る、というのは、最近でこそパターンを帰納して「あなたの場合はそういうことなんですね」と言えるようになったけれど。


ではどうすればいいのか?というと、当協会方式で研修のあと「宿題」をお出ししますが、そのとき指示した「型」を守っていただくのが一番で、業績にもいい影響を与えます。

一応あの「型」を守っていただくと一番汎用性が高く、(定型発達の人なら)相手が誰でもほぼ伸ばすことができ、また以前「瞑想」との関連で述べた「変化に気づく」というところにもつながる、いわば「拡張性が高い」のです。

そんな風に単純なものでも考え抜いて作られてるものなんですが、なかなかわかっていただけなくてねえ。。


従来のコミュ力研修では考えられないぐらい、当協会は「型」を重視します。そしてそうむずかしいものでもありませんが武術経験者は、習得がいいです。

「型」による指導をするためには、先生に一定以上の「権威」がなければなりません。
あんまり皆さんそう思ってくれませんが、わたしは「家元」のような立場です。


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去年の秋、高槻商工会議所というところで講演し、そこでは年配の経営者中心の聴衆で「過去の研修の中で一番良かった」と、嬉しいご感想をいただきましたが、

そこで使ったのは今時のプレゼン術とは真逆の話し方でした。

関西だからと言って笑いの要素を一切入れない。身振り手振りも、自然に出る範囲以上のものは入れない。

そしていつもの芸のない淡々とした口調で、ひたすら自分の「やってきたこと」に徹してしゃべりました。
決して愛想のないのがいいことだと思っているわけではないので、聴衆と高槻の土地に対するありったけのリスペクトを込めて話しました。

ちょっと上手さを自慢する講師の先生のような「いなす」「いじる」というのは、一切やりませんでした。


でも、わたしが思うに関西の聴衆だってそういう講師の先生に飢えてたんじゃないかと思うんです。


「過去の研修で一番良かった」とまで言っていただけるというのは。


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わたしは記者出身ですが、もう12年、マネージャーたちと接してきたお蔭で彼らの堅実な思考回路というのは身についてきたと思います。

わたしの仕事は女性としては「重い」種類の仕事だとおもいます。組織の底辺の部分に変化を起こして組織を良くしてしまう、というのは。


この「重い」仕事を理解するのは、「重い」思考力のある人でなければなりません。
「重い」思考力を持てるかどうかは、かなり「才能」だな、と思います。


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いつものことながら、

「正田さんの思い」
「正田さんのご主張」

という言葉は大嫌いであります。

わたしが女だから矮小化している。

「正田さんの実績」

という言葉がふさわしいでしょう、これだけ実績があれば。
「思い」「主張」はだれでも語ることができます。
「実績」は、その都度起きていることと誠心誠意向き合い、考え抜きやり抜く態度から生まれます。
自分自身何かをやり遂げてきたビジネスパーソンなら、その違いはわかるはずです。


これも繰り返されている問題で、こちらに初出記事があります。

「想い」についての違和感


http://c-c-a.blog.jp/archives/51788949.html

ああ、また嫌な人間になりそうだ、わたしは。