「叱れない管理職が増えている」と、いわれます。今どきの空気を読む、嫌われたくない、風潮が関わっていそうですがそれでは職場の規範維持ができません。

 
 好ましくない行動をとる社員がいるのを知りながら注意/指摘/叱責をせず放置していると、職場のやる気の高い、規範意識の高い人までもモチベーションが下がってしまいます。


 
 当協会方式の「承認中心コーチング」はこの状況に何ができるのか、ということですが、


 「承認」を他にないくらい強いトーンで伝える代わり、「承認」にはマネジメントのコミュニケーションのおよそすべてが入っているといっていいのです。

 すなわち、指示命令依頼、伝達/連絡、教える/OJT、問いかける、理念・ビジョンを語る。そして注意/指摘/叱責 もであります。

 「承認」がイコールこれらだ、というわけではありませんが、「承認」導入後は驚くほどこれらを伝えたとき伝わりやすくなります。

(それは、お世辞の歯が浮くような「ほめ」ではなく、相手の行動を正確に「認める」ことを繰り返す、当協会方式の「承認」の場合は、であります)


 なので当協会方式で長くおやりになっているマネージャーさんがたにききますと、結構いまどきの人でも「叱って」おられます。現代でも「叱る」ことは別に禁忌ではありません。ただ相手の納得性の要求度が高くなっただけです。

(こういうことを言うとどうしても一部の受講生さんのところで「叱る」が正当化され増えてしまう、という現象もみられるようです。皆様くれぐれも気をつけて。安易に「叱る」に頼りませんように)


 
 わたしは基本受講生様方を信頼していて、皆さん基本的に自分の部署を良くしたい、問題など起こすことなく運営したい、そして業績を伸ばしたいと思っておられると。もちろん「承認研修」をして反応する人、しない人といますが反応する人に関しては、です。(反応しない人はもともと非常に問題の多い人である可能性大です)


 その「信頼」は、メディアの世界の「バーチャル」な意識の方々には信じられないことかもしれません。若い人=善、中高年マネージャー=悪、というバイアスがあるようですから。

 また大学の先生もそう。自分が企業に送り出した若い人=善、それを職場側で迎え指示命令を出すマネージャー=悪、という構図があるようです。マネージャー側に関わる機会などない人たちですから、仕方ないですね。


 
 さて、それはともかく、

 1つ前の記事で触れたような従来の「質問中心コーチング」ではその「規範維持」はどうなるかというと、

 叱れないマネージャーをつくる可能性大です。規範維持はできなくなります。


 というのは、前述のようにセミナー運営の必要上「遊び半分ノリ」「自己啓発セミナーノリ」を作りますから、そこでは「叱る」など野暮なものとみなされるのです。

 シャイな日本人に質問に答えるというストレスフルな状況に耐えさせるために、「自由」「責められない」を強調します。

「自由!」
「創造性!」

 魅力的な口調で連呼する講師もいます。

 そこでは、「でもときには叱らなくちゃいけないんじゃないの?」などと口を挟むすきがありません。


 こうした講師の方々の「場を巻き込む力」は凄いもので、わたしなどは逆立ちしても真似できなくて舌を巻きます。「巻き込み力」は「扇動力」と呼ぶこともできると思います。

 しかしそうした教育を受けた人びとは―、前項の記事のように、きわめて無責任な軽々しい調子で仕事をするようになります。あるいは、業種によってはそんな調子では1日も持たない仕事もありますから、そこで即頭打ちに遭い、「にどと『コーチング』なんて信じないぞ」と思うようになります。


 現実世界は、「自由」どころではない規律規範で一杯です。社会人になるということは、そのルールの世界にすすんで身を投じるということなので、そういう契約なのです。ところがとうのたった40いくつになって、マネージャーになって、「自由!」「創造!」の教育に暴露したとき、当初の契約など忘れて自分の都合のよい「自由」にはまりこんでしまいます。なまじ「権限」をもった年代の人が。なんと危険なことでしょう。


( ほんとうは、イノベーションというものも「自由!」「創造!」の文脈でうまれるわけではないのだ、ということを過去にも書いたことがありますし、次の記事でも触れたいと思います。)


 ともあれ「質問中心コーチング」が「叱れないマネージャー」をつくる一助になっている可能性大、ということは言っておきたいと思います。とりわけ短時間の、1日だけ、半日だけの研修だとその可能性があります。もし長期のシリーズ研修で、承認傾聴質問だけでなく「フィードバック研修」まで入るなら別かもしれません。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp