『女神的リーダーシップ―世界を変えるのは、女性と「女性のように考える」男性である』(原題”THE ATHENA DOCTRINE  How Women (and Men Who Think Like Them) Will Rule the Future" 、ジョン・ガーズマ+マイケル・ダントニオ、プレジデント社、2013年12月)を読みました。

 著者は、消費者行動を分析する社会理論家とジャーナリストのコンビ。

 ここには「オキシトシン」は出てこなくて、膨大なデータベースと世界13か国6万4千人を対象にした独自の調査結果に基づき、「女性的資質をもつリーダーが成功する」ことを証明しようとしています。

1つ前の記事の『女性資本主義論』のタネ本でもあります。こちらは決して印象論ではなくしっかりした調査に基づいた本です。


●「成功している起業家、リーダー、オーガナイザー、クリエーターが示す特徴の多くは、一般に『女性的(フェミニン)』とよばれる性質に由来していた」と本書はいいます。その「女性的性質」とは誠実さ、共感力、コミュニケーション力、忍耐強さなどです。


●リーマン・ショック後に行った調査では、人々は男性の振る舞いに不満を持っていることがわかった。
「自国における男性の振る舞いに不満だ」と答えたのは全世界の57%、男性平均の54%、ミレニアム世代(2000年以降に成人した世代)の57%。日韓では若者の4人に3人が男性の振る舞いを批判的に見ている。

―日本は、「若者がおっさんを嫌いな国」と思ってもいいようなのです。
 はい、うちの団体の「よのなかカフェ」でも過去、「男のプライド」という回で「おっさん」を攻撃しました。

 「オキシトシン」「女性資本主義」の流れで毒食わば皿で「新女性ヨイショ論」をみてきているわけですが、ちょっと距離を置いておこうと思っていたら、「東京都議会で女性議員にセクハラヤジ」の報道があり、(私はFB友達に教えてもらった)みるとなんと過去から連綿とこの手のヤジの歴史があるそうじゃありませんか。
 あ〜、わが国の「おっさん」は選良でも品性が低すぎます(ため息)


●「男性がもっと女性のような発想をしたら、世界は良い方向へ変わるだろう」と答えたのは、グローバル平均で成人の66%、男性の63%、ミレニアム世代の65%。日本人男性だと79%。

―みっともない「おっさん」に顔をしかめている男性がわが国に多いことに安堵します。


●「男性的と思われてきた発想や行動の流儀に対して、世間の苛立ちが募っているようだ。具体的には、管理や統制、競争、侵略、さらには、戦争、収入格差、無謀にリスクを取る行い、不祥事など、今日わたしたちが直面する多くの問題を引き起こした、「白黒を決めつけようとする姿勢」が苛立ちの対象となっている。」


●著者らのデータによれば、今日の理想的なリーダーに求められる資質の多くは「女性的」とみなされている。特筆すべきは、思いや感情を包み隠さず率直に表現するリーダーが望まれていることだ。

(なお、さまざまな資質の「男性的」「女性的」というカテゴリー分けは、著者らの上記の6万4千人を対象とした独自調査で、被調査者に分類してもらったそうです)

●リーダーの資質として忍耐を重視する人も多く、イデオロギーよりも理性や常識をもとに難局を打開できるリーダーが待望されている。くわえて、ご都合主義に流されずに、長期の視点から将来プランを立てて一過性ではない解決策を導き出すことも、理想のリーダーには必要だとされる。
 私欲よりも全体の理念や目標に関心を集中する姿勢も、リーダーの資質として尊重されていた。だからこそ、プライドが高い(男性的)よりも忠実であること(女性的)のほうが大切だ、という結果になっているのだろう。

●このほか、道徳観、幸せ観も女性的とされる資質や理念と強く関係したそうです。

―男性は幸せになれないのか、ひどいなーと思うなら、男性の生涯にわたるテストステロン値の変遷の知見などを考えてみるといいでしょう。自然低下してきたころにうまくオキシトシン的な行動様式や観念を学習することに成功したひとは幸せになれる、できなかったら一生幸せになれない、競争と他者支配のイデオロギーを信奉したまま不幸せな人生を送る、のかもしれません。
 それと社会的地位が上昇すると男性は低下してきたテストステロンが再度上昇するんだそうで、地位の高い男性が人格がわるいことが多いのはこのためです。ですのでトップマネジメントに近い層のひとびとが「女性的」行動様式や観念を再学習するのは生物学的に必要なプロセスです。わたしは「承認」はミドルマネージャーだけの学びだとは考えていません。

 
●全体の65%が、政府に女性のリーダーが増えれば信頼や公平さが増進して戦争や不祥事は減ると見ている。回答者の念頭にある女性的なリーダー像は、柔和で感傷的なのではなく、賢明で静かな強さをたたえている。

 調査で最も高い評価を得た、成功へのカギを握る資質は以下のようである。

つながり―人脈を築き保っていく能力
謙虚―よく話を聞いて他人から学び、手柄を分かち合おうとする姿勢
率直―包み隠さず誠実に話をしようという意思
忍耐―解決策がすぐに見つかるとはかぎらないという認識
共感―他者への深い理解につながる気配り
信頼―信頼される実績と人柄
寛容―すべての人や考えを受け止めるあり方
柔軟性―必要に応じて変化、順応する力
弱さ―自分は完璧でなく失敗もあると認める勇気
調和―調和の取れた目的意識

 
●そして本書のタイトルになった「女神的」これはギリシア神話の女神アテナを指します。アテナはその知性、技能、文明化への影響、公正さなどが崇拝の対象となり、産業、芸術、工芸の女神とされた。



 このあとは調査対象13か国での「女性的」リーダー―男性でも女性でも―の活躍ぶりを紹介しています。
 

「おわりに」の章で、

●わたしたちは女性的な資質と価値観を頼りによりよい暮らしと世の中を実現しようとする人々こそ、最も有望な革新者だと考えるようになった。

●男性的か女性的かは二者択一ではない。女性らしい思いやりをもつ男性もいれば、男性顔負けの分析や自己主張をする女性もいる。性別は天与のものだが、後天的に異性の美点を取り入れることは可能である。わたしたちは女性的な価値観を女性だけのものと見なすのをやめ、いまの時代にふさわしいイノベーション手段として受け止めなくてはならない。

―だんだんわかってきました。男性的女性的という括りに違和感がとれなかったわたしですが、だれかが従来の「男性的」手法に異を唱えより人道的で効果の高いやり方を提案したとき、予想されるのは「そんな女子供みたいな」という見下しの入った反論でしょう。それには「いや女性的というのが今最高にかっこいいイノベーションなんですよ」と再反論すればいいのです。「男性か、女性か」という二者択一はそもそも権力者の「おっさん」が持っている発想であり、かれらを説得して突破するにはその二者択一を逆利用しなければならないのです。
 こういう理解でいいんでしょうか。


●わたしたちは、女性の権利を擁護する最善の方法は、「男性が女性的な価値観を身に付けること」だと考えている。・・・女性と、女性のように発想できる男性が、暮らしやすい世の中を創造している。

ーこれはその通りと思います。「女性活躍推進」は、男性を教育したほうが早く達成できます。というのが当協会の主張でもあり、実際にこれまでみてきたことです。


●リーダーに表現力と共感力が求められる傾向がかつてなく強まっている。「リーダーシップは情熱だ」という言葉をよく耳にするが、わたしたちは「リーダーシップは献身だ」と主張したい。リーダーシップを発揮したいなら、関係者に共感しなくてはいけない。

―いまでも多いんだな、定年後の「おっさん」たちによる、男らしさを煽るようなリーダー研修が。「もっと、もっと、男らしくあれ!」って。ほんとうの勇気は愛や信頼から生まれる、ナルシシズムからは生まれない。そういう研修がパワハラを招くんじゃないだろうか。
 そんな中では若い人がリーダー、マネジャーになりたくないっていう気持ちもよくわかるし、もし「女性的リーダーシップ」が組織の中に横溢していて、役員部長からミドルマネージャーまでがそうしたリーダーシップをモデリングして見せてくれるような職場だったら、若い人はマネージャーになることに憧れをもつかもしれない。


●リーダーシップと最も関連が弱い特徴は「プライドが高い」(男性的な特徴とされる)、最も関連が強い特徴は「忠実」と「利他的」(いずれも女性的とされる)だという結果が出ている。
 
―当協会では「承認教育」のかたわら「ナルシシズムに陥るな」という戒めもつねにやっていますね


●本書に登場する〈女神的〉リーダーたちは、透明性とオープンな意思疎通を重んじ、タテヨコ両方、とりわけ部下からの意見や提案を歓迎していた。

●リーダーの資質のうち人々が最も尊重するのは、将来を見据える姿勢と忍耐である。世の中でも「一朝一夕に完璧な成果が上がるはずはない」という理解が深まっている。リーダーには目先のことだけでなく、長期的な視野に立った発想と発言をしていく姿勢が求められている。

●イノベーションには批判よりも称賛を。男性的な発想で検証や分析を行ったのでは、アイデアが実を結ぶ前に芽を摘んだり、アイデアの創造に役立ちそうなグループ活動を停滞させたりしがちである。イノベーションの活性化を目指すなら、組織のあり方を振り返ってみるとよい。アイデアを育てようとしているだろうか。それとも厳しい視線を向けがちだろうか。

●失敗は恥ずべきものとされてきた。男性主体の世の中では、失敗を取り繕ったり非難したりする、あるいは自分の評判を守るために後ろ向きな行動を取るといったことさえも行われる。しかし、失敗を恐れていると、試行錯誤や前向きな変化のチャンスを逃してしまう。

●若年成人層には、〈女神的〉価値観に沿って生きようという心構えがある。調査回答者のうち若年成人層は、男性的、女性的といった区別にあまりこだわらず、人間のあらゆる強みや資質を大切にしようとする傾向が強い。


 引用は以上であります。

 男性女性論、これで出尽くしたかな?
 過去わたしがみてきたリーダーたちも、色んな要因で「男性的」とされる考えに流されたときには恐ろしくいやな人格になり、部下たちによくない態度をとったのでした。ひいては見放され、はっきりと業績が下降したのでした。

 できれば、「男性的」なほうがいいものだ、と思いたいのでしょうけど。自己否定になるからお気の毒ですけれど、男性は20代と40代以降では、まったく別のガソリンで動くのが望ましいのです。


 参考になるかもしれない過去記事

◆男性的リーダーシップと女性的リーダーシップ

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51834972.html


◆続・テストステロン

http://c-c-a.blog.jp/archives/51360389.html


◆リツイート感謝。団塊の世代価値観を問う「男のプライド」よのなかカフェ

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51753490.html




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