今年から会員になられた脇谷泰之さんが事務所にこられて、しばし懇談。


 ものづくり企業様での研修はなんどかありましたが、会員として残ってくださったのは今のところ脇谷さんお1人です。(それは効果が出にくいからではなく、色々利権構造が複雑だからです。詳細割愛)


 今年秋には「事例セミナー」を計画する中で、脇谷さんはそのなかで中小製造業代表として、また中国工場の総経理として、話題提供してくださる予定です。

 昨年の脇谷さん登場の愉快な記事一覧

 「とにかく現場を見てください」で仕事が来る中国工場―脇谷泰之さん(大島金属工業執行役員)インタビュー(13年5月)
 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51857608.html

「責めない現場」は可能か?―脇谷泰之さん(大島金属工業)インタビュー(2)(同8月)
 http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51866966.html

承認の輸出先 「上海大島」訪問記(1) 手作り治具にウルトラC改善・知恵と工夫の戦場上海
http://c-c-a.blog.jp/archives/51871514.html


承認の輸出先 「上海大島」訪問記(2) ―「僕嫌われ者ですよ」―「まじめ」「元気」な現場づくりはダメ出しと質問と承認の風景
http://c-c-a.blog.jp/archives/51871516.html



 上記のように、中小製造業のばあい良い現場をつくってお客様に見せれば、それで受注がくる、売り上げが伸びる、というのはわたしも初めて経験したことで、「承認」はこういう形で中小のものづくり企業に「お役立ち」ができるということにしみじみ感動させていただいたのでした。


 初めて当協会会員として決算書等をみた感想を脇谷さんにきくと、

 「ぱっとみて宗教法人だと思いましたね」

 そう思えば別に違和感はなかった、のだそう。


 事例セミナーでは個人にとっての「ビフォー承認」と「アフター承認」、そして人々や組織、会社、業績の変動、という一連のお話をしていただきます。

 「ビフォーアフター」については、今回初めてきくお話をうかがいました。

 脇谷さんの現在の会社(日本本社)に、30代後半(当時)の契約社員がいました。この人を仮にAさんとしますと、Aさんは2011年2月の「承認セミナー」前、脇谷さんとの面談の中で「自分はこんなによくやっている。正社員にしてほしい」と訴えてきました。

「アホか、あなたはまだそんなことを言える段階じゃない」

 脇谷さんは一蹴したそうです。「全否定ですよね」苦笑いする脇谷さん。

 そして「承認セミナー」後。

 再度の面談でAさんは前回と同じことを言ってきます。

「今度は、なんと最後まで聴けたんです、彼の言い分を。とにかく認めてやろう、と思ったので。そして『僕、こんなに頑張ってるじゃないですか』というAさんに、『ああ頑張ってる、頑張ってる』。」

 それはそれまでの脇谷さんだったら絶対出なかった言葉だったようです。技術解説をするとそれは「行動承認」です(すいません)

 とはいえそれですぐ正社員にしたわけではなく、

「正社員になってもらうにはこういうこういう条件がある。工程や職場を良くするために君から声を上げてもらうこと。周りに働きかけてもらうこと」

 Aさんの言い分をすべて聴きおわった脇谷さんは語りはじめました。

 そして、翌日からそれまで見なかったような姿勢で仕事に取り組みだし、頭の固いリーダーにも果敢に提案するAさんの姿がありました。

 今年春、Aさんは念願かなって正社員となり、「今度クルマを買い替えるんですよ」。満面の笑みで脇谷さんに話しかけてきたそうです。

 Aさんのケースは、恐らく脇谷さんにとって日本で「承認」の一歩を踏み出した例になったことでしょう。その後脇谷さんは主に上海工場を舞台に「承認」で人々が見違えるように活き活きと働く職場をつくり、組織のすみずみまで浸透させ、横ばいだった売り上げをとんとん拍子に伸ばしていきます。


 承認セミナーは当時うすうす「人を肯定せなならんのちゃうか」と感じはじめていた脇谷さんにとって、背中を押す内容のものでした。

 脇谷さんはそのときのセミナーについて、「論理的でありながらお仕着せでなく、講師が自分の言葉で話してくれるセミナー」と評価してくださっています。

「自然ですよね。いいことも悪いことも言う。アカンと思ったらアカンと言う。これならできる、と思いました」


 脇谷さんは前職の車載電子機器メーカー大手でひととおりの研修は受け、コーチングの研修も受けました。

「それは褒めるにしても、『褒めなさい』『絶対叱ってはいけない』という、一方的なものでした。私は講師に質問して、『でもどうしても褒められない、叱らないといけないときだってあるじゃないですか』『でも褒めなさい!』『怒ってるじゃないですか』『いえ怒ってません!』まあ、怒らせようとして質問したんですけどね」

 いやな生徒だなあ。

 脇谷さんの当時の会社に限らず、ひと昔ほど前までは企業が湯水のように研修費を使い、長時間の研修をしていた時期がありました。とはいえ、その内容はわたしの知っている範囲でも「誕生日占い」やら「血液型占い」やら、かなり怪しげなものがありました。コーチング研修も上記のように…(略)

 その当時の印象で教育研修というものをみる方は、教育研修について、「自己満足なもの、役に立たないもの、省略しても一向に構わないもの」ととらえることでしょう。その結果が今の悲惨なほどの研修時間削減なのか…。


 またわたしからみて、ものづくり企業の受講生さんは、研修講師からみると非常に素直に何でも学んでくれるか、脇谷さんのように徹底的に疑ったうえで受容する人か両極端のようにおもいます。わたしは自分の性格からしても、「大人が何か新しいコンセプトに出会ったら疑うのが当然」と考え、細部までおかしなところがないように自分で徹底検証してプログラムをつくります。

 もうひとつ脇谷さんが言われた中で嬉しかった言葉は、

「これなら自分たちも作っていける」

と、いうものでした。お仕着せでなく、というか、徹底して合理精神と経験でつくりあげ、つくったプロセスが明確なものであれば、聴いた人にも「自分にもできる」と思ってもらえる、いわば自己効力感をもってもらえる、それも意図していることなのでした。つくったプロセスや原材料がわからないものを大人が素直に受け取れるでしょうか。


 ただ、徹底してわかりやすく、実践しやすくつくられた研修は、「出来るようになった」生徒をつくる代わり、講師の権威が低下するリスクも負います。社内講師として平気でパクろうとする人も出てきます。それは宿命のようなものでしょう。


「正田さんが言われているように、人を幸せにする、自分自身の幸福感にもつながることをやっているという実感は確かにある。かつ、リクエストしているのは非常にシンプルなことである。だから普及させたいと思うし、このNPOを潰したくない」


 事例セミナー等でさらし者にしてしまって大丈夫なのか、との問いには

「まったく問題ありません。お取引先、お客様にも『なんでそんなにうまく回ってるの?』というのは訊かれますから」


 むしろ、製造業のトップに、「現場はこれほどまでに元気になれる」「現場が元気になれば製造業は良くなる」ということを知ってもらいたい気持ちは強いそう。


 過去にも書いたように兵庫は製造業県です。製造業が伸びれば県全体が伸びます。そこがわかっていながら、現実には有効な手が打てていない。

 脇谷さん自身「グローバルリーダー」ですが、過去記事にもあるように「言葉のできないグローバルリーダー」です。現地社員に日本語の堪能な人がいるので、リーダーに必要なのは語学力ではなく別なもの、すなわち従業員の話をしっかり聴き認めてやること、とそこを誰よりもよく解っておられます。「その当たり前のことが出来ていないから工場ストや暴動が起こり、そして海外リスクなんて話になりますが、そうじゃないでしょ」。

 このことも、わたし自身語学の大学出身ではありますが、語学うんぬんよりむしろマネージャーとして基本的な訓練―主に「コーチング」的な―を受けていない人が海外赴任することが問題、と感じていましたから、脇谷さんは見事にその証左だったのでした。


 グローバル進出を後押ししたいならむしろマネージャーの基本的トレーニングを、と言いたいのでした。


 そんなこんなで事例セミナーの打ち合わせのひとつの風景でした。

(でも実際にやるのは11月の予定なので、途中でこけないか心配なんですよねー。)


100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp