例によって「はしたない」話題ですが副作用情報を。

 ここ1−2年非常に流行った心理学の分野に「アドラー心理学」があります。
 特定の本の題名を挙げず「アドラー心理学」というにとどめておきたいと思います。

 アドラー心理学で勧める手法に、「勇気づけ」というのがあります。


 それだけきくと、何もわるいことはない、いいもののようにみえますが…、「勇気づけも『承認』の一部分としてあるから、わるいものじゃないよね」と当初は思っていました。

 こういうものでも「副作用」がちゃんとある、という体験を最近しました。これは、実際体験してみないとわからないですねえ。


 今年またベストセラーになったこの分野のある本では、文中で「承認欲求」を否定しながら、有効な手法として「勇気づけ」を勧めます。


 この結果―。

 わたしが実際体験したある会話。

 わたしの出してきたエビデンスや、出版や事例セミナーといったそれらのエビデンスを提示する誠実な手続きを完全否定し、何の価値もないように言う。そうしたエビデンス提示を何もしていない同業他社といまだに横一線、何の差別化も出来てないように言う。

 そのうえで、「あなただけではない、女性経営者はみんな大変な思いをしていると思いますよ」と訳知り顔で言う。50代の男性です。
 やれやれ、わたしがどんなレベルの辛酸をなめてきたかなんてあなた知らないでしょ。またそういう理不尽を繰り返していいなんてとんでもないことです。


 恐らく、この男性はアドラー心理学の本を読んだのだろうな、とわたしは睨んでいます。

 アドラー心理学では、当協会方式のような「承認」や「リスペクト」が不在なんです。「承認欲求」を否定しているわけですから、他人の承認欲求を満たす行動をとる必要もありません。リスペクトについては一切触れてないんじゃないかなあ。大体「哲人」なんていう上から目線の人が説教するわけですから…。

 承認とリスペクトが不在のまま「勇気づけ」だけを行ったのが、上記の男性の事例であります。


 「盗人猛々しい」ということわざは状況的に今ひとつ当てはまらないが、感覚的にはそれに近いものを抱きました。

 あなたごとき苦労の足りない人があたしに説教垂れるんじゃない。

 あたしがどんなレベルの苦労をしてきたかをしっかり推し測ったうえで、共感とリスペクトを示したうえで、そういうことを言うなら言いなさい。ていうか知ったらもう言えなくなると思うけど。


 この感覚、まっとうじゃないですか?
 わたしは少なくともこの同じことを他人様にはできません。してはいけないことだという感覚があります。


 あえてこれを言わなくてはならないと思うのは、今年そのベストセラー本のお蔭で、全国津津浦浦でそういう事態が起こっているだろうと思うからです。たぶん似たようなやり方で他人に不愉快な思いをさせる人がいっぱいいるだろうと思います。
 「上から目線」でしたり顔で「勇気づけ」を行う、「釈迦に説法」状態の人。相手にリスペクトも何もないまま。

 でも、その人たちは正しいことをしてると思ってるんです。ベストセラー本に書いてあることだから。


 このベストセラー本については、以前も少し言及しましたが

 http://c-c-a.blog.jp/archives/51900284.html 

 要は、「オウム信者」になるような人たちとこの本にはまり込む人たちとは重なるだろう、という意味のことを書いています。

 ここで書いたことは今も全然間違ってない、と思うのと、いざ自分が被害に遭ったとき「ああこれはイヤだなあ」と心底思いました。ので、「副作用情報」を迷わず書こうと思いました。


 恐らく、今年何かのきっかけで「心理学」に興味をもった人が、ベストセラーだから読んどこうと手にとったのが「この本」。
 そしてまた恐らく、子供のころからの読書経験の少ない、教養レベルの低い人ほど「この本」にはまり込みます。
 かつ、恐らくASDの傾向のある人がはまりやすいだろう、というのは、意味もなくプライドを持ち他人を見下したがっている人が、見下すための「言い訳」を与えてくれる、というたちのわるい性質をもった本だからです。「見下し病」が強化されます。


 そして、どうも「研修担当者」の層の人たちにそういう人が多く分布しているだろう。
 こういう場合も決して「みんながみんな」と思っていないのは少し長い読者の方はご理解いただけると思います。

 「想像力の欠如」と「一面的な論理への傾倒」。

 わたしは1963年生まれで、学生運動などは一通り終息した時代に学生生活を送りましたが、恩師・中嶋嶺雄のもとで、「文革」のファナティシズムの愚かさはしっかり学んだと思います。だからそれにつながる可能性のあるものは敏感に嗅ぎ分けます。でも近い世代の人でも似た状態にはまりこんでしまう人がいます。



 
 もうひとつ、出版界のベストセラーの作られ方についても、今に始まったことではないですが思うこと。
 お金を出して本を沢山買うのは、基本20〜30代の独身者なんです。
 だから、その層をターゲットに本を作ったほうが「堅い」。自己啓発本の類い。前出のアドラー心理学の本もその類いです。
 わたしからみると、視野の狭い人向けにますます視野狭窄にさせるような文体や内容の本が好まれる傾向があります。

 また、「書店の店員さん」も基本、その層の人たち(中堅〜若手の中の本が好きな人たち)。

 前著『認めるミドルが会社を変える』も、ミドル層自身からは非常に評価の高かった本ですが、売れませんでした。
 わたしは近場の書店に営業に行き、比較的見る眼のあると思われる書店の店長さんにあって「管理職からすごく共感してもらえる本なんです」と言いました。
 「わかりました、ビジネス書担当に話してみましょう」
と店長さんは言い、数週間後、同じ書店に行ってみると、コーチングの近い分野の別の本が「推薦図書」になってPOPが立っていました。ああ中堅層以下の人はこういうトーンの本が好きだよね、と思う自己啓発がかった雰囲気の本でした。


 前出のアドラー心理学本が出版されたのは昨年12月。今年大変な売れ方になりました。
 今年11月に出版された『行動承認』が来年それ並みに売れるのかというと、ターゲット層(ミドル)から考えると難しいかもしれない、と思います。

 内容は恐らく圧倒的に『行動承認』が正しい。
 いつもそうですが「100年後に残る仕事」だと思います。

 1つ前の記事にもあるように人事の人向けの雑誌から早速お声がけいただいたり、最近もフェイスブックで大学の先生のお友達から「学生に勧めます」と言っていただいたり人事の人から「当社の管理職に良書として勧めました」と言っていただいたりしています。
(ちなみにこの人事の人からは「あの承認の一覧はよくできていますね」とおほめの言葉をいただきました^^)


 出版の経緯もいろいろありましたが、基本パブラボ社さんが『行動承認』の正しさにほれ込んだ、と言ってくださり、新人著者同然のわたしの構想通りに本を書かせてくださり、大きな知性による判断をしていただいた、それの連鎖が起こった、と思います。

 
 そして平易な文体で書かれた本としてミドルの手元に届いたときの、ミドルたちからの熱い支持が、今も「ああ真実を探りあて丁寧にエビデンスを積み重ねてきてそのうえで書いてよかった」と思わせてくれます。


 さあ、このあとはどんな展開になることでしょうか…。


 
 
100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

<シリーズ・アドラー心理学批判>

●「勇気づけ」についての副作用情報。。(2014年12月)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51903598.html

●褒めない・叱らないは正しくない!「逆張りロジック」に正しく反論する知性を磨こう―『嫌われる勇気』著者講演会 (2015年12月)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51927076.html

●「自己認識には事実のフィードバックが大事」「思考的盲目が心配」―宮崎照行さんのメッセージ(同)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51927143.html

●「子どもさんは大いにほめてください。そして叱ってください」―正田、アドラー心理学セミナーで吠えるの記 (2016年1月)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51933511.html

●「誰もが活躍できる社会」とは「承認社会」―NYさんからのメッセージ (同)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51933591.html

●「勇気を持って指摘されたからこそ、いずれ考えを改める」―永井博之さんからのメール (同)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51933656.html

●『行動承認』Kindle化に向けて(4)メディアの考える怠惰なお客様と「行為者」の乖離、王道とパチモンの「大衆的人気」(2016年5月)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51940842.html

●NHKおはよう日本 アドラー心理学特集を批判する(同)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51940920.html

●NHKおはよう日本 アドラー心理学特集を批判する(2)友人たちの反応 (同)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51940923.html

●『行動承認』Kindle化に向けて(5)行為者の脳発達と細胞レベルの変化の可能性――林田直樹先生との対話より(同)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51940962.html

●アドラー心理学批判 「承認欲求否定」「ほめない叱らない」はどこから来るか―「共同体感覚」との関連において―アドラー『個人心理学講義』をよむ
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51941070.html

●アドラー心理学批判・友人からのお便り「幼稚さ、ナルシシズム亢進、成熟拒否」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51941137.html

●アドラー心理学批判 「トラウマ否定」「承認欲求否定」起源はみつけたが誤読と捏造だった―『人生の意味の心理学』をよむ
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51941143.html

●アドラー心理学批判 アドラーの罪:発達障害者向けのお説教と批判封じ
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51941204.html

●アドラー心理学批判 まとめ:「承認欲求を否定せよ」「トラウマは存在しない」有害フレーズの捏造と岸見氏の罪
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51941255.html