体調を崩しているのでやめた方がいいかもと思いながら引き続き「研修副作用」の話を。


 数年前に「NLP(神経言語プログラミング)」というのが、「コーチング」よりもっとディープな心理学として流行りました。

 
 当ブログでは何度かこれの問題点についても話題にしてきました。

 代表的なのはこちら


上から目線を喜ぶ人々―コーチングネガティブキャンペーンへの反論

http://c-c-a.blog.jp/archives/51859011.html


 要は、NLPはエリクソンという不世出のカウンセラーの行った技法を再現し習得可能にしたもの、という触れ込みでしたが、それは

「あなたもイチローになれる!」

というのが嘘くさいのと一緒なんです。

 心理学の基礎訓練を受けてない人に、心理学界のイチロー並みの人のやることを「短期集中講座」で習得できるかのように煽る。

 
 かつ、野球より心理学のほうが「たちが悪い」というのは、それが他人様の心をいじくる方法、とりわけ上司部下関係で使う場合には立場の弱い部下の心をいじくることになるからです。


 NLPもいくつか前のコーチングの某流派と同じで、よりどぎついもの、きわどいものが好き、という価値観の人たちに好まれるところがあります。

 とりわけ、「某流派」と類似しているのは、「恐怖症の治療」という、心理学の専門家にとっても最もディープなことをやらせることです。

 「某流派」が「恐怖症」を扱うやり方は、「エクスポージャー」とか「フラッディング」という手法で、オペラント条件づけも属する行動療法の中の最もディープなものです。当然、熟練したカウンセラーしかやってはいけません。でないとクライエントを傷つけてしまうおそれがあります。

(最近この件でカウンセラーさんとお話する機会があり、これらの手法は時間がかかるわりにあまり治療効果がない、またわたしが実感したとおり情緒不安定になりやすい、ということでした)


 NLPでは、恐怖症を「タイムライン」と呼ばれるやり方で取扱います。

 ある時期NLP流行りのせいであまりにも上から目線の人に出会って鬱陶しかったので、わたしは2008〜09年、不承不承NLPのセミナーに通い一通りのワークを体験しましたが(ので一応マスター・プラクティショナーの資格も持っていますが表示したことはない)、
 正直言って「タイムライン」というやり方で恐怖症が治るとは思えなかった。周りの人が「治った」と言っていたり「個人契約のNLPコーチングを受ける」と言っているのが不思議でした。

 どのみち治るにせよ治らないにせよ、素人が他人様のそこまで深い部分の心をいじくることは「危険」です。

 
 ―現在は「EMDR」という心理学の最新のトラウマ治療の手法は信頼できると思い、人に勧めたりしています。これも選ぶのは自己責任でお願いします。わたし自身は自分がこれの施術者になることはありません―


 ともあれわたしはNLPは素人が行ってはならない領域を犯しているものだ、と当初から認識していたし、一通りの訓練を経験したあとも資格を表示したりはしていません。


 「承認研修」の中では、「行動理論」の説明の中の「レスポンデント条件づけ」のところでこれは恐怖症の治療に使われる、職場のマネジャーさんが使うものではないから説明は割愛する、とお話します。


 2007年、武田建氏の大学院の講座を聴講して同氏がレスポンデント条件付けの「脱感作療法―恐怖症の治療法にもつながるもの―」をやるところにも立ち合いました。1人の院生さんが暗示にかかったようになって倒れてしまいました。


 わたしがセミナーでそこの部分をやらないからと言ってNLPの先生に比べて「劣る」先生だと思わないでくださいね。ああこんなことクギをささなきゃいけないなんて。

NLPが鬱陶しかったのはそれ以外にも、カタカナの心理学用語が頻出し、「ペダンディック」「スノッブ」と形容したくなる「上から」ぶりだったせいもあります。武田建氏の「コーチは選手にわかる言葉を使わなければならない」とは対局にあるものでした。

 
 思うのですが、良識ある研修機関が「それはやってはならないことだ」と、やるのを避けていることを、あえてやることで新規性や奇抜さを売り込もうとする研修業者は、絶えず出るのだろうと思います。

 そして購買側にはそうと見抜くほどの知識は、ないです。(「知識」と言うにとどめておこう。。ほんとは「見識」って言いたい)

 どうしたらいいんでしょね。
 被害者は現場のマネジャーや、部下たちです。




100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp