今年11月、3回にわたる「承認」「傾聴」「質問」研修を企画・アテンドいただいた関西の某経済団体勤務のNさん(30代後半、男性)。


 柔道有段者というごつい身体と、そこからは想像もつかない優しい心配りと語彙の豊富さと、また研修というものをみる目の厳しさと。

 
 Nさんの動体視力を活かした、「承認研修」が「12年、1位マネジャーを作り出してきた」秘密を語っていただきました!

 今回は全4回の連載(たぶん)の第1回を掲載いたします。


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柔道有段者がみた「12年1位」の研修とは(1)
―論理性、背筋の伸びる瞬間、ナルシシズム―


■なぜ、僕が「この研修」にたどり着いたのか
■出典明記主義について
■論理的であることの価値
■背筋が伸びた、独特の話し方
■ナルシシズムと経営者の受講生と
■専門用語、敬語
■アクションについて
■とことん突き進むのはすごいエネルギー






■なぜ、僕が「この研修」にたどり着いたのか

Nさん:担当者として研修にアテンドしながらもったいないなあと思うことがあります。
セミナーを何のために聴きにくるかというところで、「サービスしてくれるもんや」と思っている。確かにそうなのかもしれませんが、自分が拒絶した態度になると、受け取ることもできないし、提供しようとしてくれている講師の先生も力を出し切れない状態になります。それをどうお考えになるのか、私などは気になっています。
 正田先生もおっしゃるリスペクト。リスペクトということを軽くとらえる方もいらっしゃいますが、あくまで礼儀ですよね。基本。
「親しき中にも礼儀あり」という言葉があるぐらいで、当然見ず知らずの方には。
「オレはそんなん変えられへん」というのはお客さんだからあるのは分かりますけれども、何かを購入することと何かを教えていただく、学ぶ、ということは少し違うと思いますね。「損得」とか「お客さん」という意識を捨てたうえでまず自分が学びに来たいんですよね、ということを意識していただくことが願いですね。主催者側としては。

 私は第三者的に見ていますので、そういう空気感があると伝わります。そういうことがないように、というのは苦心しているところです。


正田:Nさんは今のお仕事(経済団体研修担当)を今年5月からおやりになっているということで、それからすぐの段階で6月に当協会に連絡をとってくださったんですね。どういうきっかけでご依頼いただいたんでしょうか。


Nさん:それはちょっと長いお話になります。
 私は今の仕事の前に1年間ほど大阪で仕事をしていたんです。大企業の人材関連会社でやはりコーディネーターみたいなことをしていました。
 何かのときにこういう人の役に立つ仕事をしたいと思っていたんですが、その当時は今と少し違っていたんです。何かをして喜ばれて認められたいという気持ちが自分にすごく強かった、誰よりも強かった。というより目立ちたい、目立ちたがりのところが俄然出ていたんです。
 それで何やねんこのモヤモヤした気持ちは、と思ってネットで調べたときに「承認欲求」という言葉を初めて知りました。去年のことです。
 さらに色々調べるうちに、自分はやっぱり認められたかったんやなあ、何かをしてあげるより返して欲しかったんやなあ、と気がつきました。それですごく苦しくなって。なかなかそんな簡単に認めてもらえるということはないじゃないですか。それを無理やり引き出してもそんなに嬉しくないし。
 そして「諦めたら楽になる」みたいなことも色々見たりして、自分で自分を満足させる方法もないんかな、とも思ったんですけど答えが出ないまま次の仕事に移ったんです。
 そして今の仕事になったときに「新人の離職」という課題解決のためにこの「承認欲求」の問題を解決できれば、と思いました。それで調べてたどり着いたのが先生のホームページだったんです。そこに可能性を感じてお電話させていただきました。

 だから今回は皆さんのためになんていうことじゃなくて、私自身が解決したかった。私なんかがムズムズ考えていることが解決するなら、普通の人なんかもっと伸びていくだろう。かつ、前任の人は全然やっていなかったので、やってみたらどんな反応が起こるだろう、とこの研修は私の今年一番の楽しみでした。
 言葉は軽いかもしれませんが「尊敬」します。何に尊敬するかということですけれど、そこまで費やされた時間とか努力。
 だれでも結果をみるはずなんですけど、結果が出てるのに文句言う人って何なんかな、と思いますけれど、そうじゃなくてどれだけ時間をかけて、時間だけじゃなくてやってきたか。それはやっぱりすごいと思います。ぼくは出来ないからなんですよ。自分が出来ないことをそこまでやり切った人はやっぱりすごいなあと思います。
 それだけすごい人にお願いするのだからやっぱりそこは「敬意」を僕ら担当は持ったほうが、中身も充実してくるだろうし大事なことではないか、と思います。


正田:Nさんは本当に担当者としてポイントポイントをきっちりおやりになってくださっています。逆にそうでない担当者の方も少なからずおられるので、仕事の品質として気になっていますが。
(注:このくだりは2014年12月直近の担当者の方のことではありません。くれぐれもみなさまお気になさいませんよう…)
 NPOを団体として改組していく予定です。品質の訴求をしっかりしていく。これだけの高品質のものをご提供しているから、盗用はしないでください。社内で1年でやりきれないような人数がいる場合には2年計画、3年計画でこういう研修計画を組むように考えていただきたい。
 Nさんにお願いしたいのは、担当者として横で研修をみていただいていますので、ほかの業者さんも並行でみられている中で講師としての正田はどうなのか、研修としてどういう価値があるのか、というのを語っていただけますでしょうか。


Nさん:はい、了解しました。


正田:若手従業員さん向けの研修を並行しておやりになっているとのことでしたが、経営者・管理者向けにはほかには?

Nさん:経営者向けのは今年1回やりました。ほかの研修を担当されていた先生もどちらかというとマネジメントを専門にされている方もいらしたので、そことの比較になりますが、私が感じた正田先生の良さをお伝えしたいと思います。

正田:よろしくお願いいたします。


■出典明記主義について


Nさん:正田先生は研修資料に必ず出典を明記されますね。
 受講者のメリットとして、根拠のもとを知ることで、しっかり裏づけられたことから導き出されたものであることを理解できますので、納得感、安心感につながると感じました。人間は、興味を持つと、理解を深めるために掘り下げたくなるものです。しっかりと現場で活用するためには、考えて理解して、自分を納得させる必要がありますので、学んだことを定着させたいその時に、原典に素早くアクセスできるようにしてもらえていると、セミナーで聞いたことも、後々そういうことなのだと理解を深めていけると思いますし、しっかりと腑におちるようなインプットが可能になると思います。また、忙しいマネジャー様方にとっても素早くアクセスできるように配慮がなされているわけですので、理解を深めたい方にとって、とてもありがたいことなのではないかと思います。


正田:では、仮に出典が書いてなかったら、受講生さんにとってはどんな印象になったんでしょう。

Nさん:知らない人に対しては人間、警戒しますよね。言ってることがすごく良くても警戒する。「ホンマかよ」と思う。だからまずは安心感。言ってることが腑に落ちたとして、「この先生の言ってたこといいなあ」と思って後日もう1回調べ直そうとしたときに、深い学習をしようとしたときに困ると思います。そこで忘れ去ってしまう、ゼロに戻ってしまう可能性があると思う、調べる先がなかったら。
 こうした出典明記主義を打ち出していただいていることは、「定着」ということに関してすごく有難い配慮だなと思います。

 
正田:ありがとうございます。
 ちなみに少し補足させていただきますと、最近私がよその心理学系の研修に行って勉強させていただいたところ、資料に出典はほとんど書いてなくて。「転載厳禁」は書いてあるんですけれども。一番最後に「出典:○○協会プログラム」と、まあそこの認定講師の方なんですけど。そして研修中に時々講師から「これは私が言ってるんじゃなくて心理学で言われていることです」という言葉が入る。
 そうすると、「心理学でも色々あるけどどこの心理学?」と、私などはなるんです。私だけではなく人事部の人で似たような心理学系の研修をいっぱい受けている人もいらっしゃる。今はやりのアドラー心理学もあるし私のやっているような行動理論もあるし認知行動療法もある。「どこの系統の先生が言ってるの?」「どこをあなたは選んでるの?」という。
 そこまで言ってあげないと、ある程度詳しい人には不親切になっちゃうんです。心理学の中でも「これ」を選んでやっています、と。


Nさん:面白い研修であればあるほど、「どこから来ている」というのは必ずあとから見ますよね。それで「ああなるほど」となって、活かしていこうと思うんですよね。
 一番残念なのはあとで調べたくてもどこで調べたらいいのか分からなくなること。それで多分、結果が分かれてくると思います。
 そういうことで先生のように見えない配慮をいただいていると、受講者の人はそれが当たり前と思いますけれど、非常にありがたい配慮ですね。


■論理的であることの価値


Nさん:論理的だとなぜ分かりやすいのか。
 これは、テクニックか、その行動の成り立ちまで理解するのか、は大きな違いがあると思います。
大半の人は、早くテクニックを知りたい、早く答えを知りたいという思考回路になっておられると思います。
 ここまで順序立てて、ステップバイステップでやれば、チェンジ(変化)していきますよ、という説明ですね。細かくステップを刻んでいただいている。
 自分があとあと実際の現場でやろうとしたときに、順を追っていけるじゃないですか。講義を聴いているときも、ここからここ(遠く)へ跳ぶよりも、細かくステップを刻んでもらった方が、何というか味わいながら、理解しながら、進んでいけるじゃないですか。「この順序」を論理的に説明していただけるほうが、非常にわかりやすいです。
 ぼくらのように頭の回転がちょっと遅い人間であればあるほど、こうやって説明してくれるほうがありがたい。「懇切丁寧」という言葉が当たるかなと思います。

 それとそれが「見えない」ように配慮されているということが一番ありがたいですね。
 「これやったってんねんで(こうしてやってるんだよ)」というのがわかると誰でも聴きたくなくなりますよね。「いけ好かん」という感じ。
 でも、「こうして成り立ってるんですよ」と言ってもらえると、認めざるを得ない感じ。どうしても認めたくない人はいるでしょうけど。
 この研修のように、ここまで説明してくれてそれでも入らないというのであれば、それは私も仕方ない、と思いますね。「理解したい」という人にとってはこの上ない配慮。

 どういうときに論理的だと感じるか。
 一番最初に大事なことを説明していただいたうえで、そのうえで解説を必ずつけていただいている。
 その解説も、一方向だけじゃなくて、脳科学的なこととか遺伝子学的なこと、神経経済学的なこと、すべて色んな角度からみていただいてますよね。
 例えば一方向のことって、先生「騙し絵」のお話をよくされますけれど、見方によって全然違うじゃないですか。大体人間って一方向でものを見ていると思いますけれど、こう見ている人にとってはこちら側の側面は見えないじゃないですか。
 でも「こっちから見てもこうだし、こっちから見てもこうですよ」と説明してくれてる時が、一番論理的だなあと思います。それはなかなか出来ることじゃない。
 よそでこの研修を2時間で依頼されて困られる、というお話がありましたね。僕は半日でも足りないと思っています。1日研修で2日間とか、みっちり落とし込んでやっていくのがすごくいいなあと思います。4時間では詰め込みすぎのように感じます。1日間余裕をもってやっていただいた方が後々いいのではと思いました。
 元々今の仕事に僕が入ったときは、「忙しいんで2時間で凝縮してしゃべってくれ」というのがセオリーだったので、そういうものかと思っていたんです。でも、先日のセミナーでのアンケートでは皆さん希望の時間数に「半日」に○をしていましたよね。
 もし、上辺だけとかの面白くないセミナーだったら、この回答が1時間とか2時間になってしまうんですよ。「長い」という感想になるんですよ。


正田:そういう回答もあるんですか。


Nさん:あるんです。そうなっちゃうんです。
 これは、ご依頼するこちら側もその内容に応じた時間配分でお願いできてなかったために上辺だけの内容になってしまった、という場合もあります。そうなると主催者側の判断ミスですね。

 
正田:それは内容は本当は半日でお願いしても良かったのに、1−2時間でお願いしちゃったから受講生も「1−2時間でいい」と思っちゃう、ということかしら。


Nさん:僕は基本そういう形でお願いしないんですけど、たまに圧力に負けて(笑)1−2時間でお願いしたときに、物事の成り立ちって話しているうちに1時間2時間すぐ経っちゃうじゃないですか。ましてや論理的にしゃべってもらおうと思ったら、2時間だけで最初の論理だけで終わっちゃう。で何も質疑はできない、ということが起こっちゃう。
 ですので、こういう論理的な研修は、1日研修が基本になってくるかと思います。意志がある人に1日研修というのが一番効果が上がる。論理的に多角的に検証して、そしてステップバイステップで。


正田:人って、できれば論理的に納得したいですよね。
 私はこの仕事に入る前に医薬翻訳者というのをしていましたので、臨床試験の論文の書き方などは「門前の小僧習わぬ経をよむ」という感じで親しんでいたんです。それで論文がどういう成り立ちで出来ていて、ものごとを証明するにはどういう手続きをするか、ということには馴染みがありました。
 この研修はそこまで厳密な手続きをしているわけではないんですけど、人が新しい物事について他人から言われたときに「できれば論理的に納得したい」と思う気持ちは、そういう仕事を経験したからよくわかるかな、と思うんです。


Nさん:納得感を持ちたい、理解させてほしいというのが受け手側の気持ちですよね。そこまで落とし込んでくれたら、わかるでしょ。というお話ですよね。


正田:あと、仰っていた「正しいけどでも聴きたくない」という気持ちもやはりすごく大事で、論理と感情ですよね。「これ正しいよね」と「これ好き」と、両方感じていただくにはどうしたらいいのか。
 やっぱり正しくても「立て板に水」とまくし立てていては正しさは通じないと思いますね。だから時間枠、時間数というのは必要。
 じゅんじゅんと、時間をかけて1つのことを落とし込んで、また少し置いて次のことを落とし込んで。その「じゅんじゅんと(諄々と、順々と)」という感覚は大事だと思うんです。


Nさん:まったくその通りだと思います。ど素人の受け手からしたら有難いことです。
 セミナーにあまり期待していない、という方も中にはいらっしゃるかもしれませんけれども、こういう論理的なセミナーを一度受けることによってあなたの考え方が変わるかもしれませんよ、と言いたいです。


■背筋が伸びた、独特の話し方


Nさん:先生にお伺いしたかったことがありました。
今年9月に神戸での「価値観セミナー」に出席させていただきました。あの時と今回の「承認」「傾聴」「質問」研修の時は、スピードが違いますね。
 価値観セミナーの時はものすごく「内観」させていただくセミナーだったでしょう。「間」をしっかり取って、一段階ゆっくりでしたけれど、今回はスピード感というかリズム感がすごくいい感じで進んで、そして止まるときに「ぱん」と止まって。


正田:あ、それ見ていただきましたか。ありがとうございます。


Nさん:そう、あの「間」のタイミングなんですけど、息が上がる前にぱっと次へ行く、いい感じなんです。あれは人間の呼吸の間隔を測ってるじゃないかと思うぐらい。あの「間」のタイミングは先生独自でおとりになってるんですか。


正田:よく分からないです…。2008年の夏、ある倫理学の先生がうちのセミナーを見て、「正田先生『間』の取り方が上手いですね」と言ってくださったんです。それで初めて、「『間』を取る」ということを自分がやっているということに気がつきました。


Nさん:「間」を取りすぎると間延びするじゃないですか。あの「間」はすごく考える。ちょっと「間」を取ってバッとまた入るので、すごく面白かった。
 「間」の取り方のポイントを知りたかったんですけど、無意識にされているということですね。


正田:あそこですね、「このセミナーがここで終わったらどうなりますか?」という。


Nさん:はい。いやそれ以外にも色々な場面で。


正田:ああ、そうですか。


Nさん:今おっしゃったところも急激に受講者の方に「覚悟」を持ってもらう。
 僕は3か所、受講者の方が「ビッ」と「変わった」印象があったと思います。最初のときに「結果にコミットします」というお話をされていたじゃないですか。
「この内容を実践していただきましたら、必ず成果が出ますということだけは最初にお伝えさせていただきたいと思います」
と。


正田:言いましたっけ(笑)


Nさん:言われました。あの瞬間受講者の方の背筋が「ビッ」と伸びたのがわかったんです。セミナーによっては受け手が「何ええかっこしやがって」で終わるかもしれないですけれど、あれを言うか言わないかで全然違います。皆さんの気持ちが「入った」のがわかりました。「そこに責任を持って私やりますよ」ということは、やっぱり聴かなあかんな、と人間思うので。あそこはやっぱり凄いな、かっこいいなと思いました。
 自信がある話を人間、聴きたいじゃないですか。ああいう方々(経営者・管理者)って、自信のない声を聴くだけで100からゼロになる。
 ああいうことを言ったのを僕は聴いたことがない。それぐらい真摯にやってますよ、だから聴いてくださいね、というのはあるべきだと思います。


正田:今、「真摯」という言葉を言っていただきましたね。
 ずっと考え続けてるんです。「真摯」ってどういうことなんだろう。人間が脳をどういう風に使うことを「真摯」と言うんだろう。
 やっぱり「真摯」な人とそうでない人では能力が全然違うんですよね。100%かそれに近いぐらいそこにコミットしている人というのは、ものすごい力を出してすごいことをおやりになれる。「ふんふ〜ん」ってこう斜に構えちゃっている人は、それに比べたら20%、30%しか力を出せない。


Nさん:おっしゃる通りだと思います。
 お互いがそういう姿勢で向き合うために一番「がっ」という瞬間ですね、音が聞こえましたね(笑)かっこいいなと思いました。あれを言い切るってかっこいいです。


正田:そうですか(笑)


Nさん:次にびっくりしたのが、武田コーチングの話をしたときに「いいぞ!」っていう、あそこでみんなびっくりしましたね(笑)


正田:あ、そうですか(笑) あそこはちょっと発声が違ったかもしれないですね。


Nさん:あれがいいんだと思います。ここ一番というところに抑揚をつけて。わかりやすく説明されてるなと思っていると、ここ一番で「バッ」と超える。あの演出がおもしろい。
 人間、集中すればするほど疲れるじゃないですか、集中してないわけじゃなくて。だから時折「踊り場」じゃないですけど場面がガラッと切り替わるところがあると有難い。
 声のトーンは、腹式呼吸されてますね。最初「すごい声通るなー」と思いました。


正田:価値観セミナーの時はそうでもなかったでしょう。


Nさん:優しい感じでしたね。ゆっくり語りかけるように話されてたので、そういう感じでスタートされるかなと思ったら今回は「ぱーん」と入られた。


正田:個別化さんなので、相手が誰かによって発声法自体変えてます。これも近年になって自分はそういうことを無意識にやっていると気がつきました。
 差別しているみたいですけれど、相手が経営者さんだと腹式呼吸になるというのもあります。それくらい仕事にコミットしてはるな、責任とか覚悟を引き受けている人だな、そう思ったとき発声が変わったりします。


Nさん:経営者になればなるほど「圧」がすごいじゃないですか(笑)。それに打ち勝とうと思えばあれぐらい腹式呼吸で声を出さないと。甲高い声じゃなくウワッと「下から」声を出す。
 優しくしゃべっておられるけれどすごく声に力がある。それと「間」の取り方、抑揚。あれが考えさせますね。


■ナルシシズムと経営者の受講生と


Nさん:ナルシスティックなところは全然ないです。


正田:どうですか、色々な先生をみられていて「この人はナルシスティックだな」と思うことはありますか。


Nさん:めっちゃいい人ですけど、それ(ナルシシズム)で失敗しているという場面はみましたね。
 「上から」行こうとした人がいて。大学の先生だったですが。
 最初に「ほら、出来てないでしょ」と気づきを与えようとしたんです。それがもう大失敗で、「どんより」してホテルさんが気を利かせてBGM入ったぐらいで(笑)


正田:それは経験の長い方ですか。


Nさん:どうかなあ、いい方で、優しいんです。あんまり怒らなくて。お話が上手な方ですよね。だけど業界特有の、人をばかにするというか、自信があって「教えてあげてる」というスタンスで「ほらできなかったでしょー」「大丈夫ですか」とやるので、こちらはナルシスティックに感じますし受講者からしたらちょっと受け容れがたい。
 今年それが一番どきっとした瞬間ですね。


正田:うちの業界の一部の人が、強い相手向けに自分の優位を示そうとすることがある、要はマウンティングですよね。


Nさん:そう、やっぱりマウンティングやったと思います。最初にマウンティングして聴く態勢をつくらせて、という意図だったかもしれないですけど最初のそこで失敗して、あとは並行線ですよね、入ってこなかった。
 正田先生はそういうところがなくて、元々「リスペクト」。受講者に敬意を払ってお話いただいてますよね。


正田:経営者さんの受講者さんは、色んな人がいますが全体的に言うと、Nさんもそうですが柔道で組む相手の力量をかなり正確に測っている方々だと思うんです。

 
Nさん:ああ、なるほど。


正田:それは前に立った瞬間からわたしも見抜かれてるんだと思うんです。
 わたし自身はちっぽけな人間で経営者でもない、ただの女性研修講師なんですけれども、でもその存在を尽くして一生懸命やります、真摯にあなたと向き合います、というのをお見せするのが一番かなと思っていまして。


Nさん:本来そういうものじゃないですか。真摯に学びましょう、私が経験してきたことをお話します、それに対して敬意を払って聴きます、というのが。
 うちの団体でしていただく方はおおむねそういう感じなので有難いことだなと思っています。
 受け取る人それぞれでナルシスティックだとお感じになる方はいるかもしれませんが、先生は底流に「リスペクト」をお持ちになっているので、そういうところはありません。偉そうぶるということもないです。
 だからこそ人は話を聴くし、深く理解する人はかなり深く理解します。


正田:本当に今回の宿題はみなさん理解が深かったですねー。


Nさん:ありがとうございます。僕ドキドキして、「怖い怖い」「出してくれんのかよ」と思って。


正田:提出してくださったのが十何人で、その中に「これまではこんな深い理解に基づく宿題は十何人に1人ぐらいだ」という方が何人もいらしたので。このグループは凄い!と思いました。


Nさん:最初の話に戻るんですけど、論理的に説明していただいたので、受講者の方も理解して現場で活用しやすかったのだと思います。順を追って説明をされ、経過観察もされていたので、その論理性が宿題にもいい影響を与え、現場でのアクションにつながった。正田研修の大きな特徴だと思います。やはりそこに結果としてつながりますね。


■専門用語、敬語


Nさん:難しい言葉は、なかったですね。難しい言葉を使おうとする人はナルシスティックですよね。
 私もね、コンプレックス強い人は横文字を使いたくなるんですよね(笑)あるんですあるんです。
 受講生にもずっと敬語を使っていただいていますね。マウンティングするタイプの先生だと、マウンティングした後敬語でないぞんざいな言葉遣いになることもあるんですが、正田先生はずっと敬語を使ってくださってます。
 ただ、私自身はは「敬語使ってもらっているかどうかとかそんなん気にするな!勉強せえ!」と受講者に対しては思いますけれど(笑)


正田:いやいや、会社でその立場になったら気になられることだと思います。
 自分が職位も高い、年齢も経験値も高い。こちらがちょっとでも「なめた」態度をとったら、「お前ごときになめられる俺ちゃうわ!」となるだろうと思います。


Nさん:今回もそういう立場の方、いらっしゃいましたもんね。ぼくも見ていて「この人良く見てるなあ」と(笑)

正田:かぶりつきで受講していただいて(笑)怖いぐらい。

Nさん:やってることにはすごい理解をしていただいていましたね。あの人があそこまで理解ていただいて宿題も出していただいたということは、ほかの人も多分理解してくれていたと思います。一番「大丈夫かなあ」と思ったところですが(笑)

正田:いやいや、ありがたいです。


■アクションについて


Nさん:先程も申しましたが、あのアクションのところではビシッと背筋が伸びますね。


正田:ああいうアクションだということは予想されてましたか。


Nさん:全然。まったく想像がつかなかったので、ワクワクしていました。
 優しすぎるということもなく、ホンマに大人の雰囲気、大人の学びの場やなあと思いました。


正田:よろしければ、どうしてそうつながるんですか(笑)


Nさん:一般にセミナーでは一番大事なことは何かということに頭が向かず、マウンティングとか、損得を気にしたりとか、ほかのちっぽけなところに気が行っていることがあるような気がするんです。最初は「学びに行こう」としていても、マウンティングするセミナーに出会ってしまったり、真摯に来れば来るほど「なんやねん」となりますよね。そんな「子供か!」みたいな小さなところでうまくいかなくなることが多いですけれど。


正田:本当にそうなんです。Nさんはよくおわかりですね。


Nさん:それをクリアしていこうと思ったら、リスペクトする気持ちを忘れず最後まで持ち続けてやる、というのが本当の大人だと思います。それが真摯だといえると思います。


正田:今おっしゃった、「それでもリスペクト」という感覚ですね、「何があってもリスペクト」。


Nさん:それがあってやっと小さいことに気が向かず、学びに集中できると思うんですね。
 向き合って、その先のこれを待っている人たちのことまで考えてやる。心意気というか信念というか。それを持っておられるのを感じるから、「大人」と感じるんだと思います。
そこは商売でやってるんじゃないなと。
 研修業界の人たちも、色んな不本意なことがあるから自己防衛で「ビジネスや」と言っておられるのが大半なんじゃないかと思います。教えようと思ってもうまくいかないことが色々ある。傷つくことは人間イヤですから、自己防衛で「ビジネスとして割り切ってるんです」と言っている気がします。そうじゃないと耐えれないんじゃないか。
 それをグッとこらえて突き進んでいく、愚直にそれをされている方というのは「大人やなあ」と思うし「強いなあ」と思う。


正田:そこを見てくださってありがとうございます。
 「愚直」って健さんみたいな言葉で嬉しいなあ、光栄だなあ。


■とことん突き進むのはすごいエネルギー


Nさん:男の人って、カッコよさを追求したいと思うんです。承認欲求も強いし(笑)
 そっちにこだわるので、本質的なことを忘れてしまいがちになる。(承認研修のような)そこまでケアしようと思ったら相当の根性が要る、エネルギーも要ることですから。
 それをやれるというのはやっぱり女性の方は強いな、と思います。
 物事をはっきり言い切れるじゃないですか、女性のほうが。そこは男のほうが弱いかな。


正田:その「自己防衛」のことも気がついていただいてありがとうございます。
 立ち回り先で最近よく言われるんです。「『承認』というのはほかの先生も言っておられましたよ」「ほかの先生の話の中でも聞いたことありますよ」って。
 もうけっこう流通しているらしいんです。言葉としては。
 でも、「じゃあその先生はあなたが実際にやれるところまで教えてくれましたか?」と、心の中で思います。
 生徒さんが「できる」ところまで、とことん突き進んで教えるのは、傷つくのが怖いとかイヤだとか思っていたらできないんです。
 「承認研修」のときは、「これをやれるかどうかがあなたがたのすべてよ!」という感じで、「腰の引けない」トーンでお伝えするから出来るようになるんだろうと。
 論理的というのはそれの手段なんです。最終的にはこちらの「腰の引けない」姿勢なんだろうと思うんです。
「この人が、結構コモンセンスもあって論理的にものを考えることもできるこの人が、ここまで言うんだから多分そうなんだろう」
とみなさんに思っていただけるような。
 その「腰の引けない姿勢」というところが見えないと、初めて習った人が「自分もこれを教えられる」という勘違いが出やすいだろうと思います。


Nさん:なるほど(笑)


正田:でもこれを実際にやろうとしたら物凄いエネルギーが要るんです。終わったらダーッと疲れますね。


Nさん:そうでしょうね。
 それだけ凄い仕事をやっていただくという前提でご依頼するのと、それがわかってないご依頼とでは、来ていただく先生のやる気にも大きく影響するでしょうね。
 やっぱり先生のご努力に敬意を払って、覚悟を決めた上でやってくれるという担当者がどれだけいるかでしょうね。
 何に本当に目を向けなければならないかということですね。上辺だけをみて仕事をしていることが多いので、良心的な先生方はご苦労されてると思います。
 先生のどこに敬意を払ってご依頼するか。そのポイントが明確になると、これまでのセミナーというもの全般が変わってくると思います。
 いい先生、名前が売れている先生を招んだら、お客さんは集まるかもしれませんけれど、後味の悪い、気持ち悪いのが残ったりする。それでいいの?という話です。
 セミナーでもない研修でもない、もっと違うネーミングがないかなと思います。「覚悟」とかもキャッチ―だからみなさん使うじゃないですか。
 そんなこんなで届いてほしい人に届かなくて、悶々としますね。解決するのはとても難しい。
 正田先生が今度組織を改組してそのあたりをしっかり訴求していかれると伺い、なるほどなと思います。是非やっていただきたいと思います。


(第一部了)


―第二部以降は今後順次掲載させていただきます―

 研修終了から10日ほど経った今週初め、「承認の宿題」の「一覧表」を「みなさんにご転送ください」とNさんに送らせていただきました。
 受講者21名中17名が提出、それも大変レベルの高い実践ばかり。
 このインタビューへのご恩返しがちょっとだけできたかな、と思うわたしです。

 みなさまもご覧になって「おおっ」と思ってくださいますように(*^-^*)



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp