引き続き、今年11月に「承認」「傾聴」「質問」の全3回の研修を企画・アテンドいただいた関西の某経済団体の研修担当者・Nさん(30代後半、男性)のインタビューをお送りします。

 後にも先にもこの人はわたしが出会った中で最高のご担当者さんだったろうなあ〜、と思います。企画・事前告知・当日アテンド・宿題督促 すべての面において。

 全4回(たぶん)の第2回、今回は「教える」「型で教える」ことに関する、不肖正田が思索し実践し続けそしてNさんが見出した「真実」について語っていただきます。


****


柔道有段・凄腕担当者がみた「12年1位」の研修とは(2)―これは闘いなんやなあ!


■知識を詰め込むのか、現場を良くするのか
■傾聴ワークの優しい気づき
■「型で教える」ことの意味
■教えるとは「フォルダを作る」こと―「教えない教育」との決別
■これは闘いなんやなあ!
■社内研修と経済団体主催と自主勉強会、意識の差
■末永い真実とリスペクトの教育を






■知識を詰め込むのか、現場を良くするのか


正田:Nさんの担当者としての思いとしてどうなのか伺ってみたいことがありました。経営者管理者さんにこういうものをお教えするということは、彼らが部下のもとに戻って実践して、それでやっと部下がモチベーションが上がって、というようにワンクッション入ってるじゃないですか。そのワンクッション入っているものを目の前でみているというのはどんなお気持ちなのかな、という。
 例えば若手従業員さん対象のセミナーだったら、元気になる若手さんが目の前にいるわけでしょう。それと比べると。


Nさん:そこが一番の大切なテーマでして、実際に現場に戻って、行動変容につなげていただきたい、そうでなければ、何も変わらないので、そういう気持ちを理解していただける講師の先生を探し続けてました。
 そして、やっと理解していただける人にあったなと思えたのが正田先生だったんです。
 これは先生にお話したことなかったですが、色々自分なりに探して、最初のうちは、理解してもらえる方に、まったく出会えませんでした。実際、最後の結果まで追うことなどできないんだから…みたいな。一度や二度ではなかったんです。ズブのど素人が、初めての仕事で熱くなってるでみたいに、鼻で笑われることが幾度もありました(笑)でも、そこで終わってたら、なにも変わらへんやんと思いました。少なくても、来ていただいた管理者の方の心に残る研修ができたなら、変革を起こしていただけるのではないかと思い先生にお願いいたしました。
 変革を起こしてもらうためには、まず受講者の方にとって後々も思い出しやすく、残る研修でなければなりません。実際、正田先生の研修を拝見して、一つ一つ論理的に落とし込んでいき、その背景や成り立ちまで説明いただけるので、やはり、その時の納得感とか理解度も高いと思いますし、後々、学んだことが活かしやすいなと思いました。やはり、そこが大切なことだと思うんです。
 それから、今回の研修が満足感が高いと感じたのは、皆さんの筆記してる時の集中力。後々使えるかもしれないと思うから、一生懸命書いていただけていたのかなと感じています。ああいう時の様子で、なんとなくその日の納得感とか理解度が分かるような気がします。
 もちろん、今回は、最高の受講者様にも恵まれましたが、そういう真摯に受講していただける方だからこそ、もし、満足感が低ければ、厳しい態度も出ていたかもしれません。先生と受講者様には、集中を切らさず、取り組んでいただいていますので、本当に感謝しております。

正田:「満足度」というのも人によって捉え方が違って、よく人事担当者の方にあるのは、テンポが速くて次々新しい話題に切り替えてセミナーをやると、「いっぱい習えた」という満足度が高いみたいなんです。その人たちにとって。

Nさん:なるほど。
 ただ、今回の研修のような企業の変革とか課題解決というテーマであれば、やはりテーマを深掘りして理解してやっていく方が、結果的に定着ということを考えるといいなと拝見してて改めて思いました。


正田:やっぱり、「それであなたはできるようになりましたか?」という話なんですね。


Nさん:満足度というか、密度が違うんです。密度。
 若手従業員さん向け研修では、みんなこう(机に伏せて昼寝)してます。たまに役立つことがあるとびくっと起きるんです。

正田:アハハ。

Nさん:成り立ちを説明している箇所もあるんですけど、深く理解して説明している人と、理論だけ理解して説明している人とではやっぱり違うんです。前者の人だったら、こう(前のめりに)なります。
 それがなかったらお昼寝タイムです。口開けて寝てます。
 若手向けセミナーは、参加者は最初の時30人ぐらいおったんです。後々ワーク(実習)を入れたんです。その子たちが課題解決のプロジェクトを考える考え方。そのワークをしたときはすごく満足度が高かった。授業の乗りも「自分の向上につながるかもしれない」と前のめりになるんですけど、最初は営業職向けでも講義だけだったんです。そしたら昼からは後ろ3列がこう(突っ伏せ)ですね。午前中それだけ一生懸命聴いてくれてたんです。やんちゃな感じの子が多かったですけど。
 ゆったりなのと単調と違うじゃないですか。「ゆったり」は穏やかなんですけど、穏やかな中にリズムがあり、笑いがあり、考える時間があるから楽しい時間になるじゃないですか。学校の授業と同じですよね、特に大学ですよね。僕専攻は経済学だったですけど、統計学とかどんないいこと言ってくれてても寝てました(笑)
 それと一緒で、上げるところとか落としどころとか、知っている先生はやっぱり違う。単調な講義でしたら、短時間集中詰め込みですよね。

 だから比較にならない。大事にしようと思うポイントがそもそも違うと思うので。

 正田先生は際立っています。やっぱり結果にコミットされているじゃないですか。骨太の研修ですよね、一言でいうと。自分自身「受けて立つぞ!」という人はあんまり見たことがない。
 先生の研修はアクションのインパクトも強いし、それに対するみんなの反応、返りのアクションが大きいので、講義として締まってきます。密度も濃い研修になると思います。
 ですので次回ラスト3回目、すごく期待しているんです。もう空気も完全に馴染んでますので。

正田:ありがとうございます。

Nさん:最初のときの緊張感の中であれだけ密度の濃い研修をしていただいたというのが、やっぱり一番大きいです。
 3回目で「人はここまでこう動く」ということを自分で目の当たりにして、それを自分で言葉にすることによって「正田先生の研修はこういう効果が出ますよ」という言葉に力が入ってくるかな、と思う。最初は警戒もされていたと思いますが、どういう形で受講者の心に入って行って、こういう風に変わっていきましたということをお伝えしたいなと思います。(3回目までみられてここはいかがでしたか?)
 それを伝えたらみなさん分かってくださると思うんですよね。「ああそうなのか」と。


■傾聴ワークの優しい気づき


正田:そういえば、2回目のあのワーク(傾聴の実習のこと。「傾聴8本ノック」と銘打って8通りの聴き方の実習をしてもらう、非常にハードな実習)はいかがでしたか。ハラハラされたんじゃないかと心配でしたが。

Nさん:あれね、ハラハラするというのはいい意味やったんです。
 一番感じたのが、「これ(悪い聴き方)やられる側になったらイヤでしょ?」という。「それあんたらやってんねんで(笑)」。言いませんけど(笑)

正田:ハハハ(笑)そうそう。「みなさんは決してこんなことないと思いますが」と言いながら(笑)

Nさん:そう。あれが先生、お上手なんですよ。
「気づかせる」ってそういうことじゃないですか。反感を買う人って、そこで言っちゃうんですよ。悪くないんだけど「気づかせてやろう」というのが相手を抑えつける形でやると、そこで反発が起こるんです。
 「そんなことないですよねえ」と、敬意があると、「よく考えたらオレもあるなあ」(笑)あえて責めないわけじゃないですか。そこがやっぱりお上手ですね。

正田:それはね、研修講師のずるいところで、上司部下関係だったらもっとストレートに言わないと上司の責任としてあかん場合もあるだろうなと。やっぱり講師は基本「業者」ですよね(笑)「業者の立場で言えるところは基本ここまでかなあ」というところで抑えて、皆さんが考えてくださったら、と期待するんですよね。

Nさん:絶対そうですよね。ホンマに難しいところだと思います。
 例えば心から「お前ら変えてやるわ」という講師の方がおられたとして上手くいくかな、という。仮にその講師の方に圧倒的な威圧感があって、受講者が怖くて「変えなならん」と思って変えたとしても、それがストレスになって八つ当たりされてる方いますよ、多分。

正田:うんうん、そうですよね(笑)

Nさん:正田先生はそこまで読み切って配慮されて。あれが僕もみていて一番言っていただきたかったことだった。
「みなさんはないと思いますけどね」
「いやオレ、あるって」(笑)
 でも正直、いかつい人同士のペアのところは、「大丈夫かな」「怖いな」と思いました。びびってましたよ。

正田:あの「C(主導型)」のペアの方々ね(笑)

Nさん:でもみなさん大人の対応をしてくれて、理解してくれて、良かったです。
 
 みなさんに一番忘れて欲しくないと思ったのは、そこですね。
「やられたら、イヤでしょ」
 言うこときかんヤツおんねんって言う前に、自分もこういう態度をとってるからそうなってるところも多少はあるでしょ。そこに気づいてもらえたら…、ということです。
 その優しい気づきの与え方、その演出がエクセレントですよね。

正田:ありがとうございます、そこまで見ていただいて。有難いなあ。

Nさん:僕、楽しみたいんですよね。賢い人の考え方、思考法、メカニズム、観点がすごく面白くて。「は〜こういうこと考えてるのか」と思ったり、遊びじゃないけど一番興味のあるところです。

正田:Nさんは戦略性さんですもんね。

Nさん:面白いんです。その人がどういう戦略をもって「聴かせてやろう」と思ってるか、考えた跡が面白い。
 そしてみていて考えるんです。「どんなことあったんかなあ」「どうやってああいうことに行き着いたんかなあ」と。背景とかに思いを馳せるのが好きなんです。頭の中で勝手に盛り上がるタイプです。

正田:Nさんのその頭の配線ね。わたしも多分この業界の中では考えてるほうだと自負してるんですけれど、その考えた道筋をかなり正確に追ってきてくださってますよね。でもNさんはこの業界歴そんなに長い方じゃないじゃないですか。すごいなこの方、わたし12年かけて考えたことを、って。

Nさん:追っかけて楽しんでるだけですけどね(笑)ひょっとしたら誰よりも興味持ってるかもしれないです。面白いなーと思って。
 すっごく考えて作り込まれる方ってすごいな、と思っています。尊敬以外ないです。


■「型で教える」ことの意味


Nさん:すいません、しゃべりすぎました。
 「型で教える」はどんな印象か。
 これはね、大事なことだと思うんです。
 「型」が堅苦しいと感じるか、役に立つか、ということで言うと、「型」の意味が違うと思うんです。
 「自分が考えてきたことがすべてなんだ、これ以外は消してしまえ!」という威圧的な雰囲気があるかないか、です。あった瞬間、「型で教える」という印象はものすごく悪いものになる。

正田:ああ、それを是非きかせてください。

Nさん:「型にはめる」ということでしょうか。
 例えば僕、柔道をしてたんですけれど、技に入るのでも何ステップかありましてね。例えば引いて、回転して、投げる。
 それがなくて人がやってるのを見て「お前やれよ」と言われても、できるわけがない。
 先生が仰っている「行動理論」はすごく大事だと思います。行動理論がすごいと思うのは、僕なんか不器用ですから、順序を追って理解したいんです。一発でできたらだれも苦労しないです。まれに天才はそれをやっちゃいますけど。僕らみたいな凡人は「なんでこうなるのか」を教えてもらいたいんです。

正田:わたしもそれはありますよ。前どこかに書いたかもしれないけれど、お料理で「サシスセソの順番に調味料を入れるのよ」と言われると、「なんでサシスセソの順なん?分子レベルでどうなるん?」とそこまで教えてくれないとイヤだという(笑)

Nさん:そこまで理解したものがあった上で、何回も反復を繰り返して、ということが必要ですよね。
 立ち帰るための「型」が欲しいんです。間違ったところを修正するために、一番大切な基本のところは、やっぱり教えて欲しい。幹になるところを。
 それを教えてくれる正田先生の研修は、やっぱり僕は役に立つと思っています。これはやはり、聴いた人でないとわからないと思います。
 堅苦しく感じないかというと、オレがオレがと、教えるより自己顕示欲とかのほうに気持ちがシフトしてしまっている印象を与えてしまうと、これは「型にはめる」ということになる。堅苦しくてだれも聴くに堪えない、という状況になると思います。正田先生のはそれとは全く異質のものであると思います。

正田:ああやっぱりそこなんだ。よく、そこまで言ってくださいました。
 わたしがナルシシズムにものすごく神経をとがらしているのは、自分が「型で教える」というやり方をしているからだと思いました、今。

Nさん:なるほど。

正田:あのね、「型」に戻っていただくというのは本当に必要なことなので、あえて「必要悪」というか、自分でもマンネリズムなんじゃないかと思いながらお教えしているんです。ただ、それを教えているわたしの口調の中にひと粒でもナルシシズムが混じってはいけないのだろう、と。なんでか分からないんですけど以前からそういう気がするんです。

Nさん:受けている方からしたら印象論としてさっき僕が言ったようなことですね。
 正田先生の場合は、役に立つために「型」で教えているわけですから。
 例えば研修で「型」を持って帰れるということは、プレゼントを持って帰れる、武器を持って帰れるわけですね。
 だけど堅苦しいだけの「型」にはめられたら、気分も悪い、そんなん役に立つか!という話です。なおかつプレゼントがないというイメージになってしまいますから。
 だから「型で教える」ということも、そこにリスペクトということが流れていて、使えるものを提供していただいてるんで、これは役に立つんだ、と。

正田:実は「例の表」つまり「承認の種類」の表ですね。よくあるのは、あれを社内でコピーして配布して「これできるようになれよ」って言っちゃう、という。そうしたくなるのはすごく分かるんです。わたしもその立場になったらしたくなるだろうと思います。
 でも恐らく、あの表だけ単独で「これできるようになれよ」と言われたって、言われた人はできないだろうと思います。それは恐らく表とともに解説があって、その解説が人間的な温かさやリスペクトを伴うもので、かつナルシシズムを厳密に排除したものでないと。それがあって初めてあの表が生きたものとして心に入ってくるんだろうと思います。

Nさん:多分そうやと思います。


■教えるとは「フォルダを作る」こと―「教えない教育」との決別


Nさん:教えるということに確信を持っているか、覚悟を持っているか。
 これはもう、完璧に確信も覚悟も持たれていると思います。

正田:ほかの先生方がされているかどうか分からないけれど、「わたしはこれを本当に知っていると言えるんだろうか?」とすごく自問自答します。アホだって思われそうですけど。

Nさん:すごく謙虚だと思います。

正田:だから、例えばマズローの何々というのに言及するときは必ず原典の『人間性の心理学』、分厚い本はPDF化してiPadに入れてすぐ読めるようにしていますし、とにかく「自分は知っていると言えるのか」というのは、つねに内省はしますね。

Nさん:自信と覚悟ってまったく違うなあと思います。「オレの言ってるのは正しい!」「間違いない!」っていうのと、一歩踏み込むのは一緒じゃないですか。間違ったときに折れるか折れないかの違いだと思います。依怙地になるのか、言ってることがいいのか悪いのかきく耳を持ちますよ、という姿勢か。
 それが、「知っていると言えるのか」と愚直に突き詰める姿勢になると思います。
 自信って、「オレやってるし」「間違いないんだオレは」(笑)それとはまったく違うから、1回1回「正しいのかどうか」と確認しながら、きく耳をもつ。そこは全然違いますよね。
 そこまでおやりになっているので、確信をお持ちになるのは当然です。

正田:もう一つうちの業界のわるいところ。「教えない教育」とか「教えない人材育成」とか、ここ2−3年「教えない」というのが流行りの言葉なんです。
 90年代かな、学校教育の世界にも結構あったんです。「教えない教育」ブームが。気づかせるとか、ワークの作業だけやって気づいてもらうとか。
 わたしがこの業界に入ったときもそれは流行ってたんですけど、迷ったすえに「いや、違うだろ」「やっぱり教えなあかんだろ」と、スタンスを決めた時期があったんです。
 そのスタンスを決めた少し後のタイミングで、ある脳科学者さんの講演を聴きました。それは京都のATRのそんなに一般に有名じゃない方ですけれど、その方によると
「教えるというのは、学んだ人の頭にフォルダを作ってあげる作業だ」と。

Nさん:名言ですね。

正田:わたしも名言だなと思いました。フォルダに明確にラベルを貼ってあって「これは何々のフォルダ」とわかる状態になっているということが、学んだ人がそれをまたいつでも引き出せる、ということなんだと。

Nさん:すごいですね。

正田:そして、「気づかせる」ということに頼っていると、その綺麗な形のフォルダが作られない、と。ああ確かにその通りだ、と思いました。

Nさん:ホンマに思いました。
 教えるテーマによりけりだと思います。人を伸ばす、創造力を伸ばす、成長させる、という研修であれば、そのための時間も必要だし、創造させてもらえるような空気づくりも必要です。
 しかしこと、今先生にやっていただいている研修の内容というのは、「世の中が出来なかったから、ほっといたから組織がこうなったんでしょ」ということなので。この先ほっといて変わるぐらいならそもそも研修の元になった課題が要らないわけですけど、絶対必要です。
 基本がないと。土台のないところにきれいな家を建てても倒れるじゃないですか。みんなが上に立派な家を建てようとしてる感じがありますけれど。土台、スポーツや柔道でもそうですけど、基本が一番大事で、時々あかん時にきちんと戻るベースって大事。その一番肝心なところを教えてもらうことが大事。そして一番最初に時間をかけて教えてもらった方が、確実に結果として出る、と。その部分は時間がかかります。

 よく言うじゃないですか、今どきの子らは何でもかんでもサービスとして提供してもらっているから、してくれるものだと思っている、と。そういう角度でみたらそう。
でも僕がみていてあの子らの強みって何かというと、今どきの子って意外と、そういう考え方の基本を教えてもらってるから出来てる。色んなことをよく知っている。
 成り立ちの基本を知っているがゆえに、好きなことについては突き詰めて応用もきく。そのへんは、僕らの年代よりもあの子らのほうが全然すごいと思います。それは成り立ちを知っているからなんです。
 何を言いたいのかというと、やっぱりある程度最初の基本のときに大事なこと、「型」、成り立ち、を教えてもらったほうが、明らかに速く正確に大事なことを身につけていける。そのためには、正田先生がされているような研修の考え方はものすごく大事です。そこに意識を持てば、ね。
 研修時間(を短縮すること)だけにみんな意識が行っているわけです。でも組織を結果的に変わらせようと思えば、あの最初の「承認」の4時間を真剣にやったほうが、あとあと時間かからずして改善ができると思う。ここを慌ててやって結局時間がかかる、上手くいけば時間がかかる、悪ければ何も変わらない、時間も労力もムダやった、みんなが悪口言う。そんなことするぐらいだったら、やっぱり時間をかけて落とし込むべきですね。結果が欲しければそうすべき。
 そういうことですよね。先生が「時間をかけてやらなければならない」と仰るのは。

正田:その通りです。


■意外と大きい、「講師紹介」の影響力


Nさん:僕らの同じ立場の人(研修担当者)に、多分言っても分からないと思うんですよ。そこまでの気持ちが多分ない。

正田:(笑)

Nさん:先生、セミナー前に集客を気にしてはったでしょう。僕も集客は気になります。色んな仕事を並行してやっていますし。
 でも今、何が大事なのか。必要な、求められている研修とは何なのか。
 結果的には、告知開始数日で満席になりましたからね。
 先生の方も仕事を選別されて、「これは受けてやってあげないといけないなあ」という研修であれば、お互いが密度の濃い仕事ができるんじゃないか。僕ら担当とも話が出来るんじゃないか。
 今、先生も『行動承認』の本を出版されて、反応としては非常にニーズが高くて、それだけ望んでいる声があるわけですね。私どもの団体のようなところとお仕事をされると、温度差をお感じになっていらだちも多分あるでしょう。


正田:温度差は…、Nさんも多分団体の中でご苦労されたと思います。


Nさん:僕は「わがこと」というか、自分自身が好きやったから。ほかの研修でもそうですけど。やっぱり興味があった、結果にコミットしたかった。
 でも大抵の担当の人は、どう思ってるでしょうね(笑)僕、そういう人の心は変えられへんし。僕みたいな不器用なことをしてる人、あんまりいないですよね、この業界に(笑)


正田:よくぞ、Nさんはここまで、やる前から確信を持ってくださったと思って。本当に感謝申し上げたいです。ご担当者さんでそんなふうに「やる前からの確信」を持てる方は少ないです。持てるだけで才能やと思います。


Nさん:いいものだと思ってますので。もっともっとやってほしい、伝えてほしい。
 僕、争いごとはあまり好きじゃないですけど、こんないいことやってる先生がひどいことされたら怒りたくもなるだろうと思います。見ていて心配になるときもあります。
 今からの時代はそういう愚直にやっていることを、もっと骨太にアピールされたら、本当に人の心が動くと思います。
やっぱり人、動きましたもん。
宿題でも時間ギリギリにぱぱっと書いて送ってくれたのでも僕はいいと思ってたんです。時間を割いて送ってくれたことだけで満足しようと。


正田:宿題については、細かく声かけしてくださって本当にありがとうございます。
 わたしも自社主催の研修だったらあれを直でやることもあるわけですけれど、Nさんが真ん中に入ってあんなに丁寧に細やかに、相手の方が気持ちよくきけるように声かけされたので、「強制された」「無理強いされた」という意識なくみなさんおやりになれたと思います。
 細やかさのリレーでしたね。


Nさん:いやいや。先生もそういう感じでおやりになってたので。
 そこは流れ作業になりやすいところだと思います。言われるのもイヤやし。
 メールって、言葉が難しいじゃないですか。友達に「頑張れよ」と言っても、それが重くなったり、「これ以上頑張れるか」という話になります。それぐらい友達であってもメール言葉って難しい。
 ましてや知らない人に、こちらが優しい言い方をしたつもりで書いてもそう受け取らないことがある。忙しい時だったら「ちっ、なんやねん」となって次回来たときも気分が悪かったりする。
 だからホンマ、メール送るの怖かったんです。
 でもみなさん急かしのメールが来たから、「あ、出さないと」と思ったと思うんですけど、そこの急かしを入れる緊張感ですね、やっぱり気を遣う。
 でも(実際に承認を)したら、やっぱり喜ばしい結果が出るじゃないですか。
「結果が出るから喜ばしいんですよ」
というのは、やるまでわからへんですよね。それを口で言って分からせるのはなかなか難しい。
 そういうことに感化される担当者の方から順に輪が広がってほしい。
 いきなり「わっ」と広がるのは難しいと思います。
 僕も、お話していて楽しい。偉い、すごいことやと思っていますし。
 どんな気持ちで聴いているかわからへんのにちゃんと結果が返ってきて。今回来られた方はゴリゴリ系の方もおられたですけれど(笑)大人やったですね。
 おききしたかったんですけど、過去の受講者の人って何文句言ってきたんですか。何を角立ててたんですか。


正田:それはちょっと技術的な問題もあって一番当初は、わたし自身も下手だったところもあるけれど。
 主催者さんによる「講師紹介」の場への影響というのも、こういう研修の場合すごく大きいです。こちらからご担当者さんに「こういう講師紹介をして」と言ってないと、すごく変な形で紹介されてしまったこともあるし。
 また、講師紹介が「ない」というのも、参加者からしたら「この講師は自分で『12年1位マネジャー』と実績を誇っているけれど、主催者はそれを信じてないんだ」というイメージになるので、スタートから減点になってしまいますね。


Nさん:ハハハ。
 僕も講師紹介のとき、グダグダだったじゃないですか。


正田:そんなことないですよ。思いがすごい入っていて。
 緊張していても思いが入っているというのは聴かれる方はわかると思うんです。


Nさん:僕の卑怯なところです(笑)。


正田:あと発達障害のところで書いたんですけど、脳の仕組みがもともと「承認」とは真逆の方向にとんがってる方がどうしてもいらして、そういう方はこれを学ぶと苦痛なんだと思うんです。負荷が高すぎるんだと思うんです。そういう方が研修にとんでもない変なクレームをつけてきた、というのも過去にはあったと思います。


■これは闘いなんやなあ!


Nさん:その負荷をかける気持ち、勇気。それがすごいと思います。みなさん手間暇かかりすぎてそんなアプローチしないですよ。


正田:ありがとうございます、「勇気」って言っていただいて。ちょっと「勇気」大事にしているものなんです。


Nさん:僕ら一般人のファンが凄いなあと思うのはそこですね。効率を考えたらそんなことできない。


正田:「気づかせる」というのに頼っていたらできないです、負荷をかけるというのは。


Nさん:あえて泥水かぶる覚悟で進まれているから、1人でされていたらイラつくわなあ、と(笑)。心配ばっかりしてたんです。


正田:ご心配お掛けしたと思います。担当者さんも下手したら泥かぶるようなことなので、これは。
「泥かぶる」というのを言っていただいたのも良かった。玉砕の覚悟で真っ向対決するんです。


Nさん:面白いですね。ケンカですからね、ある意味(笑)。


正田:ですね、リンクの上の死闘をみているような感覚でしょうね。


Nさん:「本気で向き合う」というのをよく言うじゃないですか。そこなんだと思いますね。学校の先生でも「本気で向き合ってガチンコで行かないと分かり合えない」とかよく言うじゃないですか。
 論理的に表面的に綺麗にまとめることもできるんでしょうけれど、先生はドロドロの対決をされてきてるわけでしょう。
 ウルトラマン好きやった、みたいな話もされてたじゃないですか。面白い人やなー、と思って。


正田:多分ベースにそれはあるんだと思います(笑)。受講生さん決して怪獣じゃないんですけど(笑)


Nさん:僕らもハラハラしてるんですけど、まあ面白いんですけど。


正田:Nさんみたいに「これは闘いなんやな」と読み取ってくださっている方もいるし、ご担当者さんで全然そこが分からないで、「先生ニコニコして話してるだけやな」「あれやったら僕もできるな」と思う方もいるし。なまじ論理的な順を追った教材とか「例の表」も手元にあるし。
 

Nさん:僕、ムリです。マジでこれ、闘いやなと思いました。
 僕はこの仕事(研修)に入った当初、お師匠さんがいて生徒がいて、学びにくるものだと思ってたんです。学びの場だと。そこから何か持って帰るものだろう、それが大人だろう、と思ってたんですけど、そうじゃない。大人じゃない、人間の生々しさが出ますよね。


正田:そうでしたか。今回の3回の研修もそうでした?


Nさん:いや。今回の人たちは、僕からみてすごい大人の対応をしていただいたと思いました。学びに来た、理解しようとして来てくれたと思いました。
 受講生が若ければ若いほど色々いるじゃないですか。会社から派遣されてきて、嫌々でも来て座っていきなり寝る人もいない。ただ、せっかくだから何か持って帰ろうと思っても、お話されるポイントがずれてたり、かゆいところまで届かなかったり、というときに人間、集中力が続かない。すると態度にもそういうのが出るし、生々しいのも出るし。
 聴いているうちに先生のお話いいなあと思っても、現実はそんな甘いものじゃない。そうなったときにどうするかというのが、やっぱり真価を問われるかなあ。
 僕ら担当も後ろで聴いていると、ドーンと疲れますもん。気を遣って。


■社内研修と経済団体主催と自主勉強会、意識の差


Nさん:先生も前でしゃべられてて緊張されるのは僕らの比じゃないと思いますけれども、最初の頃どうでしたか。

正田:最初の頃はこうして講師を依頼していただくということがなかったので、ひたすら自分で非営利で主催して来てもらって、という。ですから最初からそういう気持ちのある人が受講生で来てますよね。そこで鍛えてもらったから、良かったのかな。

Nさん:ああ、はいはい。
 お伺いしたかったのは、学ぶ姿勢というもの。僕、最初はセミナーって一緒だと思ってたんです。学びに来るんやろ、聴きに来るんやろ、と。しかし違うんですよね。
 その学ぶ姿勢の差ってお感じになりますか。うちの団体主催のセミナーに来られる方と、そういう自主勉強会の方と。

正田:3段階あって、貴団体主催のセミナーだと真剣さで言うと中間ぐらいだと思います。うちの協会主催のセミナーに自分のポケットマネーで来られる方というのはさらに一段階真剣で。
 一番真剣じゃないのは社内の主催の研修。慣れ親しんだ人同士で2人1組のワークをやって、「はい今からパートナーと話してください」と言ってもなんかだらっとした感じでやられたりします。
 そして主催している人事の人に対するリスペクトもないものだから、「また変なの連れてきた」と思いながら参加するわけじゃないですか(笑)

Nさん:なるほどですね。社内研修って本当に難しいんですね。

正田:昔はというか初期の頃はそれをやらせてもらえなかった。全く採用されなかったから、逆に自主勉か経済団体さん主催セミナーか、そういう比較的真剣さの度合いが高いところでやらせてもらったので、それで「真剣にガチ勝負する」というスタンスが身についたのかもしれないです。もし社内研修ばかり最初からやっていたら、「かわす」研修講師のやり方になっていたかもしれないです。なんか予定調和で、「なーんちゃって、チャンチャン」っていう感じ。

Nさん:それそれ。予定調和ですね、はいはい。
 先生は絶対その予定調和がないですね。合理精神で、最後の着地点がイヤでも以前とは変わりますね。
 僕、先生のブログを最初読んでいて「怖いなあ」と思いましたけれど、でもある意味優しさなんだと思いました。ダイレクトに書かれているところもありますけど、でも考えさせる。

正田:12年もこういうことをやっていると、ときどき何のためにやってるか分からなくなっちゃうんですけど、結局は現場の人がものすごくいい状態で仕事して、スピード感も持ってぱっぱやり上げてお家帰って子供さんの面倒をみて、という循環を作っていい社会を作れるのがやっぱりわたし的には一番嬉しい。
 その結果をつくるためにはどこかとケンカすることも厭わない。別にわたしは傷ついてもいい。

Nさん:この心意気がいいです(笑)

正田:すみません、ハラハラさせちゃって(笑)
 Nさんは、その作業を横でみてくださる方もどういう品質でサポートすべきなのか、ということを身をもって示してくださった方ですね。事前告知のやり方、研修当日のアテンドの仕方、宿題急かしの総務の方とのメールのやりとりなど、どういうレベルの仕事をしなければならない、というのは分かってくださる方。そういう方と初めてお出会いしました。

Nさん:いえいえ、恐れ多いです。


■末永い真実とリスペクトの教育を


Nさん:今度、組織を変えてどういうところを目指されるんですか。

正田:いいご質問をありがとうございます。基本、こういう研修業なんです。
 名称からは「コーチ」という名前が消えます。コーチングの従来品にわたしは満足していないんだと思います。従来品のイメージをつけられると、わたしたちの提示したいレベルとは違うものになってしまう。
内容としては「企業内コーチング」、あるいは「承認マネジメント」です。武田建氏のことはリスペクトしているから、プログラムの中ではコーチングという言葉は使おうと思います。団体名からは外します。
 わたしは「公益性」「非営利」ということは好きなんです。武田建氏から「コーチの非営利精神」ということも教わりました。そのときに「商業主義のビジネスコーチングとわたしのやりたいことは確かに違うな」とも思ったんです。本気で相手に役に立つために、と考えたら、ビジネスコーチングの流れにも乗れないし普通の商業教育の流れにも乗れない、と。それで公益法人という形がいいんだと思います。


Nさん:さすがですね、自信をもった内容ですもんね。


正田: 「12年、1位マネジャー輩出」さらに昨2013年度だけでも(業績向上)事例を8つも作ってしまってますから、これは再現性のある真実の教育なんだという実感があったんです。


Nさん:1年で8事例ってすごいですよね。確かに、確かに。もっと誇ってもおかしくないです。
 だから企業が一斉にこっちの方向に動かない理由が僕には分からない。だって一番欲しいことじゃないですか。従業員にやって欲しいことをやってもらえなかったわけですもんね。エンジンの中にガソリンが空の状態で空回しで走っているわけですからね。


正田:いい表現ですね(笑)


Nさん:いや本当に。エンジン、焼けてるじゃないですか。
 人の心が動いて身体も動く、一番大事なところを突いておられますからね。
 「承認」じゃなくて「褒める」の場合、褒めたら一瞬だけ「ワーッ」となりますけれど、人によってコントロールしてくるような褒め方もあるし、疑わしいですよね。変に褒められるのはイヤですよね。
 それでも、エンジンが焼け付いてる人間からしたら有難いんですけどね。
 もっと前の、自分が頑張ってることを認めてくれたら、圧倒的に沁みますよね。「上がる」んじゃなくて「沁みる」んです。


正田:いい言葉だなあ。そうですよね。


Nさん:この違いを理解して欲しいですね。
 (「承認」のエビデンスを無視しようとする人は)目を凝らしてみてますか。目をそむけてるんですから、そりゃそうでしょ、という話です。
 僕だって認めてもらえたらもっと仕事できるのに、と思います。僕がここに可能性を感じたのは、こうしてもらったら間違いなく人は伸びる!本当に幸せになる!と思ったから。
 先生にご依頼して、今宿題などで結果が出始めているのをみると、やっぱりそうだ、と思います。
 頭が凝り固まった人たちからしたらあり得ない結果にみえると思うんですけれど。
「半沢直樹」で最後土下座させたじゃないですか。「ウワアア」ってなったじゃないですか。あの状況でしょうね(笑)大事なことだと分かってるのに、認めたくない。
 自分のことだと分かって痛い部分をいじられて反発しているのだと思います。
 先生がまずすごいのはそこに、反発を恐れずにガーッと食い込んでいくところだと思います。その上でグッとこらえて、変わってくれるところまで待とうという気持ちですよね。普通の人はそこまで出来ないです。そして納得させるための努力を惜しまれてませんもんね。
 下の人からしたら、「これが実際現場にあったらどう思う?」「やっぱり仕事頑張る」となりますよね。大事なのは間違いない。その大事なことをしんみりと、しっとりと、ズシンと、伝えている。そこによどみがない。
 みんなは「ない」って諦めてますからね。


正田:そうですよね、諦めてますよね。


Nさん:諦めさせるようなムードを作ってます。今までの歴史が。


正田:歴史的なところで言うと、ある世代の人、言ってしまうと団塊世代に特徴的に極端に人格の悪い人がいた。それは個人差がありますけれど、わたしの周囲の人では「あの世代がガンだった」という人が多いです。ナルシシズムとか悪意とか、組織がそれのせいで歪んだ状態になった。
 そのあとの流れとして、まず「コーチング」というのがブームになって、それの成功から火がついて心理学とかコミュニケーションの新しい流派が入れ替わり立ち替わりブームになったわけですね。ある時期はほめる研修の流行、そして今年、2014年はアドラー心理学。
 結局やったとしてもその時ちょっと嬉しいだけで、すぐ元に戻ってしまう。そういうものが繰り返し流行って廃れてきたわけです。それを繰り返してきているので、みなさん諦めていると思うんですよね。新しく流行ってきても「絶対ウソだろ」みたいに。
 『行動承認』がああやってジワジワとまだ失速しないで売れているところをみると、「こういう本物が欲しかったんだ」という人は沢山いらっしゃるんじゃないかな、と思うんです。


Nさん:ああやっていい本を出されて突き抜けられれば、人からイヤなことも言われにくくなると思います。「承認教育」浸透させたいですね。


正田:現実には、「この教育」が正しければ正しいほど反発してとんでもないことを言う人はいまだにいるので、永遠にそれはなくならないのだろうと思いますけどね。正しさの代償なのだろうと思います。
 でも傲慢な言い方なんですけれど、「この教育」はガリバーになっていかないといけないと思います。日本人の現状からしたら。

(第二部了)



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp