年末から引き続き、昨年11月に「承認」「傾聴」「質問」の全3回の研修を企画・アテンドいただいた関西の某経済団体の研修担当者・Nさん(30代後半、男性)のインタビューをお送りします。


 全4回の最終回。恐らく今後最大の難関であろう「2人目以降の講師はつくれるのか」などを中心に・・・。



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柔道有段・凄腕担当者がみた「12年1位」の研修とは(4)―未来への想像力、幸せを願う気持ち


■嫉妬のマネジメント、「認められてない」感覚
■2人目以降の講師はつくれるのか
■ネット情報提供へもリスペクトを
■未来への想像力、幸せを願う気持ち


■嫉妬のマネジメント、「認められてない」感覚…



正田:Nさんに変なご質問をお伺いしてみたくなったんですけど、ご担当者の方は「嫉妬」ってなさらないのでしょうか?わたしが受講生さんに「超接近戦」で接して、宿題にも細やかにコメント書いて、というのをご覧になって、「ぼくもあんなふうに接してほしい」っていう「嫉妬」をお感じにならないのかなあと。これ、しょってるかもしれないんですけどこれまで経験したご担当者さんとの「悩ましい関係」の中にどうも「嫉妬」の要素があったような気がして、あえてお伺いしてみたいんですけど。


Nさん:そうなんですか。嫉妬がいかにして起こりうるのかを考えたのですが、ちょっと想像がつきません。アテンドしてる時は、そんな心の余裕はあまりないのではと思うのですが、世の中には、いろんな方がおられるんですね。


正田:変なご質問してすみません。そういうことが意外に多い気がしています。
 Nさんはお仕事のミッションとか「本筋」の感覚がはっきりされていらっしゃいますよね。世の中そうでない方も残念ながらいらっしゃるので…。そういう方には、研修の中でわたしがお見せする「愛」の要素は「目の毒」なんだろうと思います。


Nさん:先生ご苦労されますね。


正田:色んな種類の苦労がありますよ。
 難しかったなあと思うケースでは…。昔、うちの地元の経済団体さんでセミナーをやらしてもらったことがありました。雇用調整助成金なんとかセミナーというので、市場環境でレイオフかなんかしてる休眠状態の従業員さんに、遊ばしておくのはもったいないから勉強させなさいという趣旨のセミナーで、受講料無料。それの場合は参加する人のモチベーションが低いというのは最初から分かっていたんです。それで「正田さんしんどい思いさせるかもしれませんよ」ってそこの経済団体の上の方の人に言われて。講師をしましたけれど、案の定こう(突っ伏してる)だったし、告知もこういう研修だと分からせるような告知をしていないから、まったく事前に内容が分からないまま、5Sセミナーの次のコマにこれ(承認研修)を受けた、という感じです。


Nさん:はいはいはい。


正田:寝ますよね。


Nさん:固定観念としてそういう状況があって、ましてや本人さんがそういう休眠の状態、来ただけでナイスファイトですよね。またそこに当てがわれたというか、お招きした先生は大変ですよね。生徒にやる気ないのに。


正田:5Sセミナーの先生はやっぱり職場の色んなビフォーアフターの写真を入れながらお話をされたので、そちらのほうが具体的で分かるんですよ。人に対してどうするこうする、の話よりは。それの後だった、というのもかなり損しただろうと。


Nさん:それは休眠されてる社員さんですよね。何らかの原因があってお休みされてる方ですよね。ということは、そもそも認めてくれる人がいないという状況の方。「いい話やけれどそれホンマの現実社会であったらいいなあ」という先入観があるのかもしれないですね。


正田:そうですね、あまりにも究極の「認めてもらってない」セミナーだったかもしれないですね。
 そのセミナーに限らず、何でも「お前ダメだから行って来い」という送り出し方をされたら、「認められてない」マイナスの状態から出発して「承認」のお勉強ができるかというと、普通できないですね。選抜の段階でよく出る問題です。


Nさん:ホンマに、大変やったと思います。
 だから、管理職から変えていかなあかんというのは本当。下からボトムアップというのは、なかなか難しい。
それをしてもらえる働きかけが、コンサルティングでも研修でもどこにどうやって生まれているのか。本当に先生のされているところしかないと思うんです。
 僕の考えでは、今後信頼できる賛同者の方が沢山増えて、「ホワイト上司マップ」みたいなものが出来て、就活の人の役に立つといいのかも。そういうことも普及活動のお役に立つという気がします。「ホワイト上司マップ」という名前がいいのかどうか分からないですけど(笑)。


正田:企業じゃなくて、人ですよね。


Nさん:そうです、企業単位だと結局色んな人がいるから。先生は人にピンポイントで、その人を変える、という取り組みをされていますよね。ホワイト企業の中にもクラッシャー上司がいるという可能性は大いにあるわけだから。


正田:ありますね、ありますね。


Nさん:僕はそういうやり方ってどこにもないことだし、やる価値があるのではないかと思います。最初にお話させてもらった時申しましたように、社会問題の解決になるのではないかと思いますし。
 みなさん、「上司を変えることが大事や」と気づいている人は多いんです。でもそれを具体的にどうするの?というところに関しては、具体的な手法というのはあまり聞いたことがないですね。
 だからこの「承認」は重要な意味を持ってくる。
 みなさん知らないから。先生が長いことやって来られていることも。
 でも、本(『行動承認』)もこれだけ認知されていますんで、時間の問題かもしれないですけど。
(この後2015年1月、パブラボ社での絶版が決定。このあとの展開はどうなるんでしょうか…)


■2人目以降の講師はつくれるのか


Nさん:会社の仕事でもそうですけど、仕事でお客さんに喜んでもらえる人が「仕事できる」って評価してくれるところって中々少なくて、そういうこと以外の要因が出世の要因としてあると思います。仕事ができるという判断とは別に人間が勝手に序列をつけたがるということがすごく気になってまして、何を基準にそれを判断するの?と。


正田:公正な判断基準がない、ということは今、あらゆるところでききますね。長い間それに対する処方箋がなかった。


Nさん:先生はご自分でそうやって事業をされていると、判断するのは全部お客さんですよね。自分がやったことがダイレクトに反応として返ってくる。そういう中で色々な経験もされながら、やめることなく継続して前に進まれている。
 僕らが言うのは簡単だと思うんですよね。でも先生は見せへんところで大変な努力があって、自分を律してされていると思います。
 努力の天才ですよね、多分。


正田:この仕事は確かに若さだけではでけへんですね。「計算して落とす」というところはどうしても必要です。


Nさん:やっぱりそれってホンマに大きな仕事じゃないですか。


正田:大きな仕事だけれども、多分仕事が軌道に乗ったとしても収入は僅かだと思いますね。かつ、最近色々あって、落語家さんみたいに内弟子修業、徒弟制度のようなものがやっぱり必要だとしみじみ思いました。
 結構フェイスブックのお友達も何人か「それ徒弟制度だよね」「必要だよね」「うちの業界にもあるよ」と色々書いてくださって。


Nさん:冗談抜きで研修って、先生のあれを真似できるかというと、しゃべる言葉を憶えて順番も憶えて、なんて誰もできないし、それを何年かかけてというのはかなりみんな苦労すると思います。大事な根本的なところに流れているものを理解するのが。


正田:うーん、どこにOKのラインを設けるかですよねえ。
 わたしはこれまで「もう(承認を)教えてもいいですよ」ってほかの人に言って、痛い目に遭ってきたので、以前の失敗の同じ轍を踏みたくないとは強く思ってるんです。でもじゃあ内弟子修業というのはどういう風にやるのが正しいんだろう、というのはわたし自身分かってないんです。多分落語家さんがやるみたいに「おい『時そば』しゃべってみろ」って言って(笑)「今のじゃ伝わらんな」とか(笑)


Nさん:ですよね(笑)
 それだけ熱心に学び取るというのはどれだけ大変か。「感じ取る」だけでも大変。


正田:どういう人が「第2の講師」の候補になるでしょうね…。その人のこの社会に対する夢のようなものをお持ちになっていたとしたら。「夢」という言葉は曖昧で本当は嫌いなんですけど、こうあって欲しいという望みをそこに載せられるようなものだったら、一緒にやってもらえるんじゃないかと、わたしはちょっと儚く望んでいるんです。
 ただ、設立から6年経った今、NPOのままではそれはできないな、と思っています。NPOという名前をきいただけで、会員さんもON、OFFの感覚でいうとOFFの感覚でみなさん来られてしまう。するとこちらの「最高の仕事をしてご提供したい」という気持ちがそがれてしまう。
 そういうのはその人自身の感覚をいくら改革しようとしても、奥さんとか周りの人の感覚までは変えられないので、永遠に不可能なんだろうと思います。


Nさん:わかります。


正田:わたしは「最高の」という言葉を人を傷つけるために使いたくない。だからそこに人を駆り立てることはあまり出来ないんです。ただ、わたし自身が最高の仕事を提示し続けることで皆さんに何かを感じてほしい。「これに近いレベルのものを自分も提供する側になろう」とみなさんに思ってほしいと思ってやってきました。でもそれは「NPOの会員さん」には通じないんだな、と。



■ネット情報提供にもリスペクトを


Nさん: 僕はもう半年ぐらいメルマガとかブログを見させていただいてるので、初めから知っていたようなつもりになっちゃうんですけど、先生のブログの記事で「(相手の発言に対して)これってわたしが書いたことだよね」と感じるという、実際おありだと思いますけれど、ああいう錯覚が出ると思うんです。あの仕組みはなんでああなのかな?と。
 聞いたことあること、イコール自分が発見したこと、みたいな錯覚に陥ることがあるようですよね。それって失礼な話ですよね。


正田:ああ、わたしの「出典明記主義」はその意味もちょっと入ってるかもしれないです。武田建氏が発見したこと、太田肇氏が発見したこと、彼らの膨大な読書とか勉強から見つけてきたことで、そのプロセスにリスペクトを持たなかったらわたしは人に伝える資格ない、と思っていますね。
 そして本音を言うと、わたしのブログに書いていることも、わたしの読書と経験、観察を丁寧に照合した結果生まれてきたもので、ほかの人がまだだれも言ってないことも随分書いているのだから、もう少しリスペクトしてもらえないのかな、というのもあります。


Nさん:はいはい。
 それこそ先生が発明したことを「自分は元から知っていた」と勘違いしたとしたら、すごい傲慢じゃないですか。それをよくよく考えんと。
 僕が「一」から身に着けたものじゃない。先生が長い時間かけて発見されたことを学ばせていただいているわけですから。僕は一瞬勘違いして「できるかも」「やってみたい」と思ったんですけど。


正田:難しいところですね。みなさんが最初の一歩、職場で実践する時には、その「できるかも」「やってみたい」という気持ちの高ぶりのようなものが必要だから。
Nさんみたいに、「自分が勘違いしてるかも」という内省をする方は、むしろ珍しいんです。
わたしはずっと低姿勢でNPOの「仲間」に対してきて、
「みなさんがいてくださるから」
「みなさんが一緒にやってくださるから」
と、自分の受けた恩恵を主に言ってくると、みなさんその言葉の通り受け取っちゃう。


Nさん:「その奥を感じろよ」という話ですね。


正田:ある程度は仕方がないのかな、とも思って目をつぶってきた部分がありました。今回、「それじゃダメなんだ」としみじみ思ったわけですが。
 でも、今度は「じゃあわたしにとって本当に『仲間』と呼べる人なんて本当に誰なんだろう」と思ってしまったんです。
 Nさんは今度貴団体でご自身で主催してシンポジウムをされるということで、頼もしい。その経験をいつかうちの団体にも還元してくださいますように。


Nさん:修行します(笑)


■未来への想像力、幸せを願う気持ち


正田:わたしは一つの研修を実現するのに交渉に次ぐ交渉を重ねてやっと(実現する)、なんですけど、実現したときの「一般職の人たちを含めてどれだけ幸せになるか」というのが見えてなかったら、辛気臭い交渉なんかしないですよ。


Nさん:そりゃそうです、うん(笑) そこがなければね。


正田:それは本当に、ブログにも書いたけれどちょっとした未来に対する想像力だったり、幸せを願う気持ちだったり、それらが強くなかったらできないんです。


Nさん:そこまでやって本当に喜びにつながっていきますからね。


正田:これ(承認研修)は演劇でも音楽でも絵画でもない。それらも素晴らしいけれどまったくそれとは違う力のあるものなんです。


Nさん:それはそうですよね。
 時代が一番望んでいることですよね。一番足りてない。
 いつもこれとは違うことで誤魔化す、というと言葉は悪いけれど、突飛なインパクトの強いものでカンフル剤的に紛らわすということをしますけれど。肝心なことは何も変わっていない。そこへ行くと「承認」は凄いなあと。


正田:そうですよね。
 これからも大事にやっていかせていただきたいと思います。
 こうやって深いレベルのご理解をくださった心温かいNさんとご一緒にお仕事できたことは、本当に貴重な経験でした。ありがとうございました。
(了)
 

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 全4回の連載はこれで終了です。いかがでしたか?

 少なくとも今生きている世代の人は生まれてから出会ったことがないであろう研修が「承認研修」です。

 是非次の担い手の方が出て来ていただきたい。
 そのためにもこうして真摯に味方になって発言してくださる方が出るのは得難いことです。

 一昨年より去年、去年より今年、少しでも前進していると感じられますように―。


 そして貴重なお話をいただいたとともに、4回にわたり休日を潰してインタビュー起こし原稿の校正をしてくださいましたNさん、本当にありがとうございました!


 このところ阿修羅のように闘っていた正田も「ほっこり」させていただきました・・・。


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Nさんに「仁王像」になってください、とお願いしました。

しかし中にいるのが阿修羅みたいな女でしかも最近ちょっと品位が。。



100年後に誇れる人材育成をしよう。
NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp