先週末、神戸から片道2時間20分、クルマを飛ばして津山での講演(対談)へ。

 「人口減少社会を見据えた、これからの美作国づくり」


 内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授)と藻谷浩介氏(日本総合研究所主席研究員)の対談でした。岡山県美作県民局とNPO法人つやまNPO支援センターの共催。14日、津山文化センターにて。


 このブログの読書履歴から言っても「マスト」の対談でしょう。「ウチダ本」はある時期出るそばから読みました。苦しいさなかの指針になったときもありました。そして藻谷氏はいまや地方創生・人口問題等の代表的論客で、先般来日したピケティもいうところの「所得移転」は、わたしたちは藻谷氏の『デフレの正体』(2010年。もう古典だ)によって馴染みのあったものでした。

 
 非常に興味深い取り合わせで、また期待にたがわず迫力あるやり取りになりました。
 
 撮影録音録画は禁止なのでメモを基に再現した聴講記です。あまり正確でないかもしれないことをお詫びします。

※藻谷氏資料はこちらの美作県民局ホームページからみることができます

  http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/405321_2615236_misc.pdf

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 対談は1.マーケティング 2.観光振興、おもてなし 3.地域づくり―について、主に藻谷氏が情報提供し内田氏がコメント・補足するという形ですすみました。


 藻谷氏の得意とする「人口の波」。津山市、岡山+倉敷、東京都、そして中国の比較。


 津山市は今の勢いだと今後130年で人口ゼロに。一方「岡山+倉敷は2000年後も持ちます」と驚くようなご託宣。しかし安泰なのではない、子供や現役世代人口は減っているのであり65歳以上が急増中。山間部から暖かく住みよい地域におとしよりが移動する。


 東京も人口減少の例外ではない、人が減っているのに不動産を建てるから100軒のうち11軒は空家(津山は100軒中13軒空家)。
 そして中国では隠し子も含めた国連のゲリラ予測によれば、まだ人口増加中。17年で日本が1こ増える勢い。しかし急速に65歳以上が増加しており、介護人口不足が見込まれる。


 ここから対談:


内田:統計数字は、分かっていてとんでもない数字が出ますね。社会システム自体が持たなくなる。
 新聞でいうと朝日が年間5万部減らしているところ、去年20万部減だったそうだ。新聞社はあと10年でビジネスモデルが破綻する。
 TVも、若い人は観ない。CMが売上に影響しなくなっている。こちらも近年中に破綻するでしょう。
 あまりに足元が崩れそうな大きな問題についてはだれも書かない。


藻谷:あまりに都合が悪くてだれも言わないですね。


内田:アメリカ主導のグローバリゼーションの下で、あるタイプの国々が今からシュリンクしていく、そして僕らと関係なかったイスラム国のような勢力が伸びて来た。
 世界が劇的な転換期です。今まで使っていたような思考の枠組みが有効でなくなる。
 既成概念を1回クリアしてみて、本当はどうしたらいいのか?を考えないといけない。
 未来を見越した仕事をしている人が日本にはほとんどいない、願望を語っている。


藻谷: こちらがデータで見せてもあなたの思い、あなたのご意見、あなたの主張という言葉が返ってくる。それはその人の主観を言っているんです。

 
内田: 少子化問題担当相というのがいるが、われわれが直面しているのは問題ではなく回答だ。過去数十年やってきたことへの答えだ。


藻谷:アメリカも人口が増えないんです。
 日本では85歳以上人口は、現在400万人、30年後には1000万人。


内田:私たちの頃は子供があまりに多かったので子供が大事にされなかった。出身地の太田区では子供が教室に入りきらないので二部制になり、午前と午後に分けて通学した。


藻谷:今のインドとアラブが全く同じ。子供が多く貧富の差が激しい。


内田:当時は地域社会がしっかりしていた。行政システムがまだ確立していないので、治安、どぶさらい、自治、自分たちでやっていた。今よりも秩序があった。


藻谷:70M先に住んでいる子供について「そんな子供は見たこともきいたこともない」と言う、それが今や田舎でも成立してしまうという現実ですね。
 私は山口県の田舎育ちで、学校に呼び出しの電話があったのを憶えている。
 それがバブルの頃はおやじがゴルフ、子供はスキー、個室にカギをかけている生活が普通になった。その生活習慣のまま今に来ている。

 
内田:85歳以上人口が1000万。これは既存のシステムが対応できないですよね。介護とか根本的に考え直さないとダメですね。最終的には老人が老人を介護しないと。現役世代には働いてもらう。
 先日も60歳の人が除雪作業をして家の中に80歳のおばあちゃんがいるという光景をみた。概念規定を変えていかないと。手足の動く人が現役で、フロントライン。老人は老人で何とか支え合っていく。
 就労人口が足りないと今度は奴隷を輸入しないといけない、と言い出すが。


藻谷:人数が合わないですよね。


内田:移民を入れて成功した国は1つもない。
 アメリカは成功したじゃないかというが、私は「それは現地人を殺したからでしょう」と言う。そもそもが移民国家だから。


藻谷:医療はアメリカは全然うまくいってないですね。
 中国は介護の人手が足りないですが、インドネシア、フィリピンで介護人材が余っていれば向こうは富豪が金に明かして買いあさる。善良な日本には全然来ない可能性がある。
 中国は今のところ意外と優等生なんです。食糧9割自給、エネルギー9割自給、移民受け入れゼロ。


内田:階層の違う人を輸入して使えるだけ使って国へ帰れというのは人を侮ったシステム。そういうのがうまくいくはずがない。
 フランスが50年代から移民受け入れを始めてどれほど大きな社会的コストを抱え込んだか。短期的な経済効率を求めてどこの国も失敗している。
 移民は文化資本に一切アクセスできないような環境に置かれる。郊外のイスラム居住地など、何もない。図書館、美術館、資料館のたぐいはない。学校は荒れに荒れている。
 子供はどんな才能があろうと気づけない。部活などもない。サッカーはプライベートのクラブで、金持ちの子供が家に帰ってママが車で送り迎えしてくれるもの。
 階層社会の一番邪悪なところは、自分には才能があるということに気づかせないことです。才能を知っていれば、怒りをおぼえることもできる。知らなければ怒りようもない。芽をつぶしてしまう。自尊感情を持たせない。
 シャルリを襲撃したのは一部のテロリストだとみるのは間違い。フランス社会全体が生み出している。


藻谷:そうすると日本はこういう状況を自分で何とかしないといけないわけですね。
 私は何とかなると思っているわけですが、是非批評していただきたい。

 島根県邑南(おうなん)町は私の一押しの田舎です。
 ホームレスがいない、イタリアンレストランでイタリア政府一押しのレベルのがある。
 65歳世代がもう戦力になっている。
 大学生の子はいったん出ていくがほぼ戻ってくる。人口は20年後もほぼ横ばい。出生率は2.65。
 都会からIターンしていて、一昨年から引っ越して入ってくる人のほうが出ていく人を上回った。20代―30代前半の人が移入している。昔は大卒の人が戻ってこなかったというが。
 なぜ、うまくいっているのか。
 あまり天気の良くないところで、町長も職員も優秀だが地道にやっている。


内田:定常型の社会構成ができているということですね。
 農業をやりながら子育てしたいという女性が増えている。神戸女学院は、昔はお嬢さん学校だったが今はカントリーガールが多いです。加古川とか丹波からきていて、しっかりしていますよ。


藻谷:過去に「マネー資本主義」をコロンビア大学大学院で学んだ。
 そのころ見たのがマネーゲームをやってる奥さんと理髪店のだんなというカップル。すごい知的な奥さんとガテン系のだんなという組み合わせ。


内田:そのカップルはリスクヘッジからいって正しいですね。
 
 一番大きいのは3・11です。当時、本当にどれくらいリスクがあるのか隠していました。西へ向かう新幹線がお母さんと子供満載で。メディアの人が奥さんに「逃げろ」という。東電も政府も全く状況を把握していない、というとき。あのとき日本のメディアは倫理性を失ったと思う。
 私はそれをブログに書いたら、官邸筋から横槍が入った。先生のような有名人がそんなことを書くと東京における経済活動が停滞すると。経済活動ですよ、人命がかかっているときに。


藻谷:私は東京にいて、とある大新聞の人に子供を移したほうがいいですよ、と言われたんです。福島原発4号機が収拾したのでしなくて済んだ。言われたときは危なかった、偶然助かった。東京壊滅、と菅直人も口をすべらしたとき。


内田:阪神大震災あれは原発事故とは比べられない。自然災害だったので、だれを恨むこともない。市民社会が立ち上がって、助け合って、みんな一斉に家が壊れたからと頭を切り替えて前を向くことができた。


藻谷:今の人災をだれひとり総括しないでいると、潜在意識にどこかに歪みが出ますね。


内田:事故について「自分には非がない」と言い続ける。あれで十分だったということを証明するためにあれと同じ基準でやり続ける。
 改善点があったということは、それまで悪かったということですから、改善点はないと言い続けるしかなかった。

(ですよねー。カイゼンしないということはわるいものを平気で温存するということ、わるいものをわるいと感じる感性を麻痺させてしまうこと。やたらうなずく正田)

藻谷:南相馬市民は忘れてないがほかの日本人と意識が違ってしまう、だから無理やり忘れさせられる。


内田:「フクシマ・イズ・アンダー・コントロール」。みんなウソだとわかっているのに短期的にそれで上手くいってしまうなら、みんなウソつくようになる。国のトップがそれをやるから。
 小学生じゃないんだからというような未熟なことをトップが平気でやる。情緒的な未熟さを平気で出せる。トップに情緒的成熟を期待しなくなった。日本人のモラルが一斉に下がっている。安倍晋三と橋下徹の影響は大きい。


藻谷:株価が2倍になった、だから経済成長しているかというと、よその国なら株価2倍なら給与も2倍になるとか、実感するものがあるんです。でも実質があまりないので。
 今の内部留保について、冬眠を前にしたクマがドングリを食いだめしているのと同じだと言った人がいました。脂肪の薄いほうから死ぬ。それぐらいビジネスマンが今、将来に対して絶望している。
 一方ですでにこの先に行っちゃってる農村がある。平均2.5人の子供がいて美味しいもの食ってる夫婦がいる。こうなると恐竜は死ぬ、哺乳類は生き残る。


内田:グローバル企業が生き延びていく環境ではない。
 私は医療系大学の理事もしていますが、医療とか学校教育に政府がどれだけ圧力をかけているかよくわかる。毎年減っていく。
 なんでこんなに医療を追い込むのか、ときくと、「公共工事に使いたいからじゃないですか」という。
 医療や教育は100年の社会をつくる。それより短期的に土建屋が儲かる道を選ぶ。


藻谷:すごい少ない人件費で年寄りをみろというシステムは無理ですよね。
 教育費は、津山のほうが東京より状況はまし。


内田:出生率の回復は、簡単なんです。フランスがV字回復しましたが、教育費無償化をやればいい。教育費と出生率は負の相関があります。


藻谷:長野県下條村は人口4000人ですが、子育て支援をした結果20年前から子供が減っていません。年よりも増えない。こういうことを真剣に社会的にやったところは子供が増えている。


内田:数千人規模のところがうまくいくことがありますね。
 (岐阜県中津川市)加子母では人口3000人なのに飲食店が27軒もある。1軒に100人客がついていれば何とかなる。「花見酒経済」です。中でぐるぐる回している。
 消費者が一番安いところで買う義務があるという考え方をしているとこうはならない。


藻谷:選択の自由がある。値段より価値。いや盲点でしたね、加子母。


 ―ここで「お金の使い方次第で地域が変わる」というスライド。
  (藻谷氏資料p.54)
 藻谷氏が「これは農協の人に説明するために知恵を絞って作ったんです」という、力の入ったもの。
 この人のスライドは過去に引用させていただいたこともあるが、よくあるコンサルタントさんの「上から目線」のきれいなスライドと違い、「共有したい」という意志に溢れている


・受け取った人が地域内でまた使う
・地域外に出ていってしまう
・地域内のだれかの貯金に回る(内部留保、個人貯蓄など)

 特に3番目が、「日本特有の問題」と藻谷氏は言う。
 そして2番目がアメリカ資本主義、1番目はスイスなどだと。


内田:「一番安いところで買い物しよう」というルールだと必ず地域外に出ますね。
 スイスの偉いところは自分たちの産業を守るために多少高くても買うというコンセンサスがあること。
 日本ではだれもそういうことを言わない、だれかから教えてもらうこともない、市民性が低い。
「賢い消費者であれ」というが、自分たちの社会が10年、100年続くことこそ賢い消費でしょう。


藻谷:節約して浮いたお金を何に使うの?という話ですね。貯金する、死ぬまで使わない。金を使わない貯金するのがいいことだ、豪遊して使う奴は悪い奴だ、と刷り込まれている。


内田:子供のころ、カメラに100円札を入れていたら無くなっていた。お兄ちゃんが「オレが代わりに使ってやった」という。それで学びましたね、金は使うものだと。
 貯めるビジネスマンのところには金は来ない。昔大蔵官僚に教わったのが、金は運動するもの。流すと流量がどんどん増えて横に川ができて、何かのときぱっとすくえる。


藻谷:グラフの右側(高齢者)の人たちが亡くなるころまで金をため込んで相続する頃には相続する相手も65歳になっている。

 では今までの話をまとめて美作の人にアドバイスを。


内田:「なんで周防島にしたの?」「なんとなく」。おいでおいで、と言われる気がして。
 最初に定着する人がどれだけ気分よく定着するかがIターンのカギ。都市部の若者たちはそういう情報を求めている。
 成長ではなく定常的な人口構成の維持。小商い、それ以上のことを求めない。
 それがあれば首都圏3500万人の一極集中は解消していくんじゃないか。


藻谷:一部の人が金を貯め込んでいる現象と人間が大都市にたまっている現象は同じ問題だと今、気づいた。
 美作20万だから関西600万とはちょっと規模が違うけれど、関西から2万人流入するだけでもすごく面白くなる。
 今日はどうもありがとうございました。



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 両先生の愛読者の方なら先刻ご承知、のことがひょっとして多かったかもしれませんがいかがでしょうか。
 一部、メモの不備で発言者がどっちだったか不明の部分がありました。間違っていたらすみません。

藻谷氏の講演は2013年10月に「男女共同参画」のテーマで聴いたことがあります。今回が初めて本領の「地域活性化」について聴く機会でした。その後安倍政権批判で風雲児になった時期もありましたが過去に比べると「戦闘スタイル」が影を潜め、いい意味でスタンダード感を醸し出している気がします。独自の発見と、「共有する意志」は健在です。


 内田氏の「階層社会の邪悪なところは、自分の才能に気づかせないこと」は、実はわが国では「女性」をめぐる状況が今もそうじゃないかな?などと勝手に頭が飛んでいたわたしです。



 この対談の前、愛車ホンダフィットを駆って11時半頃に津山に着き、
 中心街を歩くと見事にシャッター街。


 そんな中ちょっと怪しげなイタリアンレストランが営業していて、土曜日もランチをやっていました。
 ご主人の平本大介さん(年齢きき忘れた、30代かな)は、埼玉県出身で六本木で修業して
「津山には友達がいておいでって言ってくれたから」
というご縁でこちらに店をオープン。
「僕田舎が好きなんですよ、母方の田舎が北海道でそこに入り浸ってましたから。」
と平本さん。
 そういう感覚って確かにこの世代の人にあるんだなあ、とIターンに疎いわたしにもちょっと実感がわきました。

 そして「地元のものでしたらこちらがお勧めです」と、メニュー外のそずり肉(これも聞きなれない名詞だ)とすじ肉のフォッカチアを作ってくださいました。
 美味でございました…。
 夜はジビエ料理もあるんだそうです。




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