「月刊人事マネジメント」誌(ビジネスパブリッシング社発行)7月号に掲載された、「上司必携・『行動承認マネジメント読本』〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜」第1章のゲラをいただきました。

 掲載から1か月たちましたので、同誌編集部のご厚意でこちらにも転載させていただきます。第一章は題して「『行動承認』は”儲かる技術”である」です。


pdf_page_1


 
pdf_page_2



以下、本文の転載です:

****

上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜


一般財団法人 承認マネジメント協会 理事長
正田佐与


第1章 「行動承認」は”儲かる技術”である


 生産年齢人口、若年労働者人口の減少に伴い、採用した人材をいかに余すところなく活用し戦力化するかは、人事部の方、そして管理者の方にとっても喫緊の課題でしょう。

 本連載では、人手が足りないなかでもチームのやる気と力を安定的に引き出して業績向上に寄与する「行動承認マネジメント」という手法をご紹介し、上司の立場におられる読者の皆様に職場の課題解決のヒントをご提供します。


「行動承認」って何ですか?


 「行動承認」とは、文字通り「行動を認める」ことです。

 一口に「認める」というと漠然としていますが、そこには「行動承認(良い行動を事実通り認める)」をはじめ、「共感する」「任せる」「力づける」、ときには「叱る」など、場面によって様々な言葉がけや行為が該当します。総じては「相手の存在価値や良い行動を認めること」といえます。

 この中の「行動承認」について、なぜ、部下を持つ上司のあなたにそのマネジメント手法をお伝えしたいのかというと、行動こそが承認を通して最も「人」の成長を促す基準だからです。

 そして、実はこの「行動承認」は、単に人の行いを褒めるだけの”甘い”マネジメントではなく、極めて業績向上の効果が高い手法であることが実証されています。

 過去13年にわたって、「承認」を導入した職場では、製造・銀行・生保・コールセンター・OA機器販売・福祉・自治体など業種を問わずに、売上・品質・生産性・人材定着率といった各種指標が上がることが報告されてきました。そこでは「人」の成長が促され、それも女性・若手・外国人・障がい者…といった従来マイノリティだった人々が成長し、その力が業績を押し上げたのです。

 業界・業種の個別性、企業戦略の適否を別にすると、「人の成長」そして「良好な人間関係」「マネジャーの求心力」が業績向上に大きく寄与するということは、おそらく時代を超えて変わらないことなのでしょう。そして、上司による「(行動)承認」というシンプルな行動規範こそがそこで”儲かる技術”としての大きな役割を果たすというわけです。

 こうした過去の事例も踏まえて、「行動承認」の具体的な手法とその応用により組織に起こる各種の効用について、これから述べていきたいと思います。

 
 なぜ「承認」が業績につながるのですか?


 上司による「承認」は部下たちの前向きの行動を増やすとともに、部門内の協力行動を増やし、情報共有を増やし、極めて効率のよい組織運営につながります。なぜでしょうか?

 そのメカニズムが科学的に解明されているわけではありませんが、ここでは有力とされる3つの点を指摘しておきます。

 嵒坩造米本人」を能動的に変える

 例えば、アメリカ人と日本人では生得的にも成人してからも大きく気質が異なるといわれています。文化心理学、遺伝子学などの研究でも、平均的な日本人はアメリカ人に比べて不安感が高く、他人からの評価を気にかける人が多いことが分かっています(図表)。

 「承認」はこうした日本人特有の不安感を払拭し、プラスの行動量を増やす働きがあると考えられます。実際に、「承認」をトップ以下全社的に取り入れた職場の例では、社員の失敗を恐れずチャレンジする気風が生まれ、逆にそれまではよくみられた、仕事を振られて尻込みsるうような社員の後ろ向きの発言がなくなった、ということです。

脳が成長することの幸福感

 「脳は貪欲なまでに成長を求める臓器だ」という脳科学者の言葉があります。そうした脳の性質から成長が人の幸福感をつくること、さらに受験勉強的な知識の蓄積ではなく、行動を通じての学びによって脳は最も成長することが分かっています。

 「行動承認」では行動することを尊び、行動を奨励しますが、身近な他者から行動と成長を励まされることは、特に若手にとっては大きな幸福感につながるといえそうです。このことは離職防止の回で詳しく述べたいと思います。

信頼⇒幸福感⇒協力行動の促進

 近年、信頼ホルモン、共感ホルモンと呼ばれる女性ホルモンの1つ「オキシトシン」という物質の作用が大きくクローズアップされています。人は、他人との間で信頼する・される経験をすると、男性・女性を問わず血中にオキシトシンが分泌され、幸福感を覚えます。幸福感が高いと身体の行動量が増えることも分かっており、このことも「承認」のある職場の業績全般が上がることの根拠の1つとなりそうです。

 幸福感が高まることのもう1つの効用として、他人に親切な振る舞いをするようになることが挙げられます。「承認」が定着した組織では、人々が成長するだけでなく、例えば困っている同僚がいればさっと近寄って手伝うというような「協力行動」が増えます。

 「行動承認マネジメント」では、お世辞を言うのではなく事実に基づいて相手のプラスの行動を言うことを奨励します。間違いのない事実の言葉ですから、それは言われた相手が上司のあなたの存在を信頼することにつながります。すると、幸福感が高くなり、互いに協力し合う、有機的な職場が生まれるのです。


どうすれば実践できるのですか?

 こうした「行動承認」による一連の職場改革を起こすためには、まずはマネジャーが一定の行動規範に沿って適切な言葉がけや行動をとり続けること。そのために適切な教育プログラムを施すことが大切になります。

 しかし、日常の多くの実務に忙殺されているマネジャーがコンスタントに実践できるということを考えると、あまり専門的・複雑になりすぎず、シンプルな法則から成り立ったプログラムであることも大切です。

 では、どうすれば職場のマネジャーが行動承認マネジメントを実践できるようになるのでしょうか。まず簡単にそのポイントに触れておきます。

●行動理論による「強化」の考え方を理解する
●「承認」が人の働く動機づけの最大のものであること(承認論)を理解する
●「行動承認」をはじめとする「承認」のバリエーションを理解する
●「行動承認」+「Iメッセージ」を使った実習で部下の心にどう働きかけるかを体感する


 次回は、上記のような「行動承認」をはじめとした「承認」の具体的な学習ステップを、実際の研修の順序に沿ってお伝えします。

(了)



「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51919833.html
 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51921667.html
第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51923763.html
第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
第七章 伝えたいことが「伝わる」伝え方(2016年1月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51934650.html