2つ前の記事で「ウチダ本学ぶものなし」と取り上げた『困難な成熟』という本のAmazonレビューが、今新規投稿・編集ができなくなっているようです。

 ので、こちらに取りあえずアップしておきます。

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 無知と知ったかぶり、恣意的な用語と思考、ファンタジーのオンパレード ★1つ


組織論を名乗っているが底が浅くペラペラ薄い。用語の用法や、基本的知識で間違いが多く、まったく依拠するに値しない。著者のファンだけが共同幻想のために買えばよい。
間違いを2、3例示する。

”組織論というのは「生き延びるための集団づくり」の知恵のことです。…構成員の心身のパフォーマンスが最大化するのは、どのようなサイズの集団においてか。人類の祖先たちはそれを考え、答えを見出した。”(p.113)
⇒組織論イコール集団のサイズ、という定義づけ。この後もずっとこの定義で行っているが、こんな定義を付与する文献はほかにないだろう。通常はリーダーシップ、組織心理学、組織制度設計などが複雑にからみあっている。

"でも、そのときに見出された組織論的知見は今では軍隊にしか残っていません。もう親族共同体にも、地域共同体にも、企業にさえ残っていない。軍隊だけなんです。”(同)
⇒「軍隊にしか残っていません」がまったく根拠不明。ただ「組織論的知見=最適な集団のサイズ=150人」というこの著者の独特のルールだと、親族共同体に援用するのは難しいかもしれないが。この変な定義づけの下では、確かに残っていないかもしれない。常識的な定義での「組織論」に真摯に取り組む企業は決して少なくない。

”自衛隊では先般「いじめ」による自殺者が出て問題になりました。「戦友」に心理的・身体的ストレスをかけてパフォーマンスを低下させ、ついには自殺するまで追い込むようなことは臨戦体制ではありえないはずです。”(p.114)
⇒ここが一番笑えた。著者は、旧日本軍の下でどれほど熾烈な「いじめ」「しごき」が行われ死者や脱走者が出ていたかご存知ないのだろうか。詳しくは『日本軍と日本兵』(講談社現代新書)など参照。「臨戦体制ではありえないはずです。」このフレーズは完全に著者の妄想の産物である。
わずか2ページで3つの明らかな間違いが見つかった。様々な分野の専門家が力を合わせれば、400ページの本書に600の間違いを見つけるのも夢ではないだろう。
ことほどかように、無知と知ったかぶり、テキトーに作った用語をテキトーに組み合わせた恐ろしく場当たり的な思考、ファンタジーのオンパレード。だが著者の年齢(1950年生まれ)を考えるとちょっと微笑ましくさえある。無害な妄想として、言葉を楽しめばいいのではないだろうか。


(一財)承認マネジメント協会 正田佐与