今、どちらの企業でも

「若手に言葉が通りにくくなった」

との嘆きの言葉がきかれます。

 小さいころからネット・スマホの世界に生きて来た若者世代。リアル人間関係の比重は、われわれの世代よりはるかに小さく、重視されなくなっているのです。
 その結果、会社に就職してからも上司の言葉が右から左へ素通り…。
 これでは、社会人はつとまりません。会社も回りません。

 とはいえ今の時代、ネット・スマホと共存していかなければならない、ではどうするか。
 そんなとき、またもや「承認」が功を奏します。「ウソだろ」と思われますでしょうか。

 「月刊人事マネジメント」誌に連載させていただいている、「上司必携・承認マネジメント読本」の4回目のゲラを編集部様のご厚意により「公開OK」でいただきましたので、転載させていただきます。


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 以下、本文の転載です:

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上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜

一般財団法人 承認マネジメント協会
理事長 正田佐与


第4章 「LINE世代」のマネジメントと離職防止


 インターネット、スマホ、とIT技術が私たちの生活に入りこんできたなか、近年とりわけ若手の日常を「激変」させたものがあります。それがLINE(ライン)というアプリです。

LINEは職場にどう影響しているのですか?

 ご存知のようにLINEはグループや個人間でメッセージや無料通話をやりとりするアプリですが、その大きな特徴は、メッセージを読むと「既読」マークがつくこと。それに返信しないことは「既読スルー」といって友人関係を大事にしない行為とみなされます。これがもとで若者たちはスマホ画面から目が離せなくなりました。
 スマホ特有の同時性もあり、LINEの若者世代への影響力は驚くほどです。それは職場でも同様です。ある部門で上司部下間の行き違いが起こると、それを若手目線で伝えるメッセージがLINEを通じて同世代間で飛び交い、他部署の若手が誤解したままになっているというケースがあります。
 「集団離職」にまでつながってしまうこともあります。上司への不満が若手グループ内でやりとりするうちに鬱積し、若手4,5人が一度に辞めてしまったというケース。筆者も昨年以来いくつかの企業で見聞きし、珍しいことではなくなっています。
 そこまで深刻でなくても、LINEで同世代の結束が固くなる反面、上司・先輩とのつながりが薄くなり仕事上の指導や経験の伝承がしにくいという傾向は広く見られます。LINEによってかつてない世代間の分断を招いています。また、「LINEいじめ」が職場で起こるケースもあります。
 LINE世代の登場はまだ新しい話題なので、はっきり確立されたマネジメントの方法論があるわけではありません。しかし、ー禺蠅悗侶屡 ⊂綮福先輩による「承認」 8鎚面銘漫´ぅ繊璽犲言―が今のところ有効です。

LINE世代をどうマネジメントしたらいいですか?


以下、順番に解説していきましょう。

ー禺蠅悗侶屡
 スマホ、とりわけLINEの使用方法について、ICTの専門家から若手に対して研修を行う。できれば同世代の先輩からも経験談を話してもらうとよいでしょう。また、上司・先輩もLINEを使えるようにし、若手と同じグループに入ってコミュニケーションの改善を図る企業がある一方で、LINEでの人間関係が煩雑だという社員からの訴えを受けて、「職場でのLINE禁止令」を出した企業もあります。

⊂綮福先輩による「承認」
 若手が上の世代と交流したがらないと先に述べましたが、実はそんな今どきの若手にも、「承認」は非常に有効です。「承認」をする上司・先輩には急速に心を開き、信頼してくれます。「行動承認」は世代を問わず有効ですし、とりわけ若手向けにお勧めしたいのが、「成長承認」。「…ができるようになったね」「成長しているなあ」といった言葉がけです。若い人であればあるほど、行動をとることによって自分の経験が広がり成長できることは大きな幸福感につながります。そして身近にいてそれをともに喜んでくれる上司・先輩は、信頼できる存在になるのです。
 「行動承認」や「成長承認」をベースにした「承認」は、「見ていてくれるんだなあ」という独特の幸福感をつくります。行動経験の少ない今の若い人であっても、職場のユニットの中で信頼する大人から日々の行動を「見てもらえる」というのは生涯初めての体験です。それによって「行動を通じて現実と格闘する」ことの面白さを学べば、それはLINEなどでのバーチャルな人間関係よりもはるかに大切にしたいものとなりえるのです。

8鎚面銘
 「承認」と並んでお勧めしたいのが個別面談です。会議では人目を気にして発言せず、1対1の場で初めて本当の心の内を打ち明けてくれるのが今の若手の特徴。ある営業会社では、課長が週1回全課員に個別面談をすることを義務づけたところ、離職が減ったそうです。先の「LINEいじめ」のような困り事の話も、こうした場で初めて出てきます。

ぅ繊璽犲言
 これは、少し説明が必要かもしれません。近年話題になるのが、「叱られ下手な子が増えた」ということ。叱責されるとその上司を恨んでしまい、その後ふてくされて、ちょっとした指導を受け付けなくなる、といいます。これは「ほめる教育」や、多くの時間をゲームやネットで費やし実体験が極めて少ないまま社会人になってきた、今の若い人の育ち方が影響しているかもしれません。
 こうした若い人を叱って行動の修正を図るのは過去より難しくなっていますが、お勧めしたいのが、複数の人が見守ることで、「叱り役」以外に「フォロー役」を設けておくことです。フォロー役の人は、叱責された若い人の傷ついた感情の受け皿となり、前向きの行動を促すとともに、叱り役の人に悪感情を持たないよう誘導します。ここで、フォロー役の人は若手に寄り添うものの、叱った内容については否定することなく、叱り役の人と同じ方向性を保つ必要があります。これを、「チーム・ティーチング」ならぬ「チーム叱責」と呼んでいます。

 この連載ではこれまで「叱責」については紙幅の関係で触れられませんでしたが、「承認マネジメント」の世界には「叱責」がちゃんと存在します。それも、メンタルヘルスやハラスメントへの懸念が先に立ち多くの上司が「叱る」ことを手控える昨今でも、「承認」をするマネジャーたちは一方でかなり部下を叱ることもしています。
 なお、若い人に限らず、職場で良い人間関係を維持しパフォーマンスを上げるには「5:1の法則」があります。「良いフィードバック:悪いフィードバック=5:1」。難しいとお感じになるかもしれませんが、すでに「承認」に取り組み始めたあなたなら、自然とこの比に近づけられることでしょう。

LINE世代は上司の承認を求めていますか? 

 実は想像以上に「承認」を求めています。そのことを示すデータがあります。
 昨年の新入社員を対象にしたジェイック社の調査では、新人は‖嵯匹垢訃綮覆梁減漾´⊂綮覆自分の成長を気にかけてくれる その会社で自分が活躍できるイメージが持てる―の3要素があれば、退職を考えるには至らないということが分かりました。このうち´△呂修里泙「承認する上司」を意味しているといえます。
 昔も今も、若者は「承認欲求」の強い存在であり、また「成長」も求めています。若者自身も「認めてほしい」という言葉を頻繁に使い、「承認」には驚くほど素直に反応します。
 昨年兵庫県のある大学では、退学防止に「存在承認」に取り組みました。教授陣が「〇〇君、おはよう」と学生に朝の挨拶をするようになったところ、退学者がそれまでの3分の1に激減した、ということです。また「承認」が浸透した職場では、若者たちが上司に心を開いて仕事の悩みはおろか、「恋バナ」までも打ち明け、「今の若い子は分からない」という一般の嘆きが嘘のようです。信頼できると認めた上司には反応するのも速いのが、今の若い世代であるようです。
(了)

 なんか今回は説明口調が先にたってあんまり出来のいい文章じゃないです
 書いてることは本当です。

「若者が上司の言うことを聴いてない」
 この事態に対して、若者の側に「傾聴研修」をする、という考え方もあるでしょうが、もっと有効なのが「上司からの承認」。

 脳の中で「自分を感じる機能(自己観)」をもつ領域は「内側前頭前皮質」といいますが(こんなの、おぼえなくていいですよ)、いわば「承認」に反応するこの同じ領域が、同時に自分の外部の規範を取り込む仕事もしている。ということを、『21世紀の脳科学』の読書日記でみました。
 つまり、「承認」によって自分の自意識を活性化させてくれる人の言うことは、若者にとって取り込むに値するということ。
 これが、「上司が承認をすると部下が話を聴いてくれやすい」ということのメカニズムです。


「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51919833.html
 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51921667.html
第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51923763.html
第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
第七章 伝えたいことが「伝わる」伝え方(2016年1月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51934650.html



(一財)承認マネジメント協会
 正田佐与