今月1日、改正労働安全衛生法によるストレスチェック義務化が始まりました。

 従業員のメンタルヘルス対策、このブログ読者諸兄姉の職場ではどうされているでしょう。

  「月刊人事マネジメント」誌に連載させていただいている、「上司必携・承認マネジメント読本」の5回目の記事を編集部様のご厚意により「公開OK」でいただきましたので、転載させていただきます。

 今回は、「承認マネジメント」による「メンタルヘルス問題を起こさない職場づくり」について、お伝えします。
 

11月号完成稿


11月号完成稿2


 
 以下、本文の転載です(正田肩書は11月1日当時のものです):

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上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜

一般財団法人 承認マネジメント協会
理事長 正田佐与


第5章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策
 


 改正労働安全衛生法により、従業員のストレスチェックが今年12月から義務づけられます。
 メンタルヘルスケアについては、厚労省が平成12年より制定した4つの柱があります。すなわち、1.従業員1人ひとりによる「セルフケア」、2.管理職による「ラインケア」、3.社内の産業保健スタッフによるケア、4.社外の専門機関によるケアです。
 本章では、2.のラインケアについて、現場の上司の方1人ひとりにできることを解説します。

マネジャーはカウンセラーになるべきですか?

 「ラインケア」のためには、「職場では上司・マネジャーが部下のカウンセラーであるべきだ」という主張があります。部下の話を共感的に聴き、受容することが大事だ、と。
 筆者は、それにはあまり同意しません。マネジャーはあくまで仕事の現場を前に動かすことに責任を負う人であり、心を病んでしまった部下のケアを担当するのは荷が重すぎるのです。部下がもし本当に心を病んでしまったら、マネジャーはできるだけ早く産業医または医療機関にバトンタッチすることをお勧めします。
 むしろ、読者の上司の皆様にお勧めしたいのは、「未病段階」の日常のケアとしての「承認」です。
 ピースマインド・イープ(株)が今年8月に発表した約4万人を対象としたストレスチェック調査結果の分析によると、「上司の部下対応に改善が必要な職場では、それらが良好な職場に比べ高ストレス者比率が約10倍」という結果が出ました。
 「上司の部下対応」とは、より具体的には、上司のリーダーシップ、すなわち部下の育成やキャリア形成に積極的であること、上司の公正な態度ほめてもらえる職場失敗を認める職場―などが指標となります。ですので、上司の必要な行動様式としては、「承認」を日頃心がけて行っていただくことで大丈夫なのです。

傾聴より承認が大事なのでしょうか?

 少し抽象的な話になりますが、「傾聴(話を聴くこと)が大事か、承認(認めること)が大事か」、どちらでしょうか?
 「傾聴」の一環として「承認」をするのが正しいか、「承認」の一環として「傾聴」をするのが正しいか。どうも、経験的には後者のようだ、と筆者は考えます。
 「認める」ことを日常行動のコミュニケーション手法としても心の構えとしても基盤として持ったうえで、場面に応じて「傾聴」もする。「承認」は「見る」ことと「聞く」ことの両方を駆使し、「声がけ」の段階の「浅い」レベルのものから「行動承認」その他の各「承認」カテゴリ(第2章参照)を行うこと、さらに、指示出しやトップダウンで語ることまで通じ、極めて使用頻度も応用範囲も広いものです。
 「話を聴いてもらいたい」という部下の真意は多くの場合、「認めてもらいたい」とイコールです。
 逆に、「傾聴」が大事だ、という構えでいると、マネジメントのなかでじっくりとした「傾聴」ができる場面は限られていますので、せっかくの宝の持ち腐れになってしまいます。また、たまたま「傾聴」したことに囚われて、物事の本筋を見誤ってしまうことになりかねません。
 ですので、メンタルヘルス対策の「ラインケア」としてマネジャーが行うべきことは何か?というとき、やはりここでも「承認」をお勧めしたいのです。
 そして実際にやってみると、「承認」は鬱など心の病気になる前の「未病」の段階で非常に大きな予防的効果を発揮し、日常行動として行う価値があることが分かります。

「承認個別面談」は必要ですか?

 日常の声がけや「行動承認」などの「承認」に加え、やはり前章同様、ここでも「承認個別面談」をお勧めしたいと思います。ラインにおけるメンタルヘルス対策としても、これが現時点でベストの解だと思われます。
 定期的に、月2回〜週1回の頻度で、マネジャーが個々の部下と対話する。あらかじめその部下に即した「承認」の言葉を3つ、考えておきましょう。ここでも具体的な行動を観察した結果を伝える「行動承認」は非常に効き目があります。
 実際にやってみると、こうした「承認」を交えた個別面談では、部下は実に素直に仕事の進捗状況はもとより、今抱えている悩み事を、仕事だけにとどまらずプライベートも含めて話してくれ、マネジャーは的確に状況把握ができます。

鬱から復職の部下にも「承認」は使えますか?

 鬱休職からの復職は、難しい問題です。回復期に入ると本人は1日も早く復職したいと思われるものですが、

実際にはフルタイムの勤務は心身の負担が大きく、ちょっとしたきっかけで再度悪化してしまうことがあります。リハビリ的な勤務を経て慎重に本格的な復職のタイミングを見極めたいものです。
 いざ復職したら、普通よりこまめに様子を見て声がけをしましょう。本人の机を上司の机の近くに配置替えするなどもよいでしょう。
 よく「頑張れ」は禁句だと言われますが、逆に「では何を言ってあげたらいいの?」と困って声をかけづらくなってしまうようです。第2章に示したさまざまな「承認」では、「頑張れ」以外の「承認」の言葉が多数紹介されています。
 ぜひ、これらを使って細やかに声がけしてみてください。一般に、やはり「存在承認」「行動承認」「感謝」「Iメッセージ」などは、復職後の人にも素直に受け入れられ、静かなやる気につながります。
 一方で、「ラインケア」ばかり強調すると、本人の自助努力による「セルフケア」がなおざりでよいのか、と思われるかもしれません。やはりセルフケアは大事です。現代特有の、PCやスマホの使用からくる寝不足やストレスの問題、またバランスの良い食事や適度な運動など、本人の生活態度がメンタルヘルス疾患の予防にも治療にも大きく影響します。
 こうした自己責任のセルフケアの重要性を十分に啓発しながら、一方でラインケアにも取り組んでください。

(了)

「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51919833.html
 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51921667.html
第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51923763.html
第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
第七章 伝えたいことが「伝わる」伝え方(2016年1月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51934650.html


 正田佐与