あの日



 引き続き、かの有名なSTAP細胞論文騒動の主役、小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)を読んでいます。

 きのうこのシリーズ第一弾の記事をUPしフェイスブックにも転送したところ、信頼できるマネジャーのお友達からさっそく、感謝の言葉をいただきました。

「読んでいないのでコメントできません。ただ、この類いの本を出すのは、あまり品の良いことではありませんね。正田さんのおかげで、読んだような気持ちになりました。」

 ああそうなんだ、と正田は安堵いたしました。わたしが信頼申し上げるマネジャーの知性のもちぬしは、この本をはなから買わず、したがって“汚染”されてない方が多いんだ。

・・・でもその方々の部下は読んでるかもしれないんですよね・・・

 たぶんこの本の主流読者は学生、主婦、高齢者その他ワイドショー視聴者の方々なのだと思いますが、その他に会社にお勤めしている人の中の末端の働き手、いわば「部下側」の方もいらっしゃると思います。

 なのでこのブログでは、
・この本を「読まない」主にマネジャー層の方々
と、
・この本を「読んだ」主に部下側の方々
を、読者層に想定しながら、すすめたいと思います。マネジャーの方々にはウンチク材料として、また読んでうっかりこの本を「良い」と思われた方も「大人はこういう読み方をしたほうがいいんだ」という学びの場として。


 前回は、この本の冒頭にある印象的なエピソード「病気のお友達の話」を題材に、「そこで何もしなかっただろー小保方チャン!!」とつっこんでみました。
 自分は何もしなかった(と思われる)のに病気のお友達をネタに美しいエピソードを1つ作り上げ、それをひっさげて早稲田のAO入試、東京女子医科大学、ハーバード大、と門戸を叩き扉を開けていく才能。さすがです。

 これに続き今回は、ツカミネタ第二弾。すっごい難しい実験をやったと書いてあるけれど「それ自分でやってないだろー小保方チャン!!それか、その実験ほんとにあったのか小保方チャン!!」とつっこみを入れるお話です。そして今度のエピソードも、著者・小保方さんがその後ハーバード大・バカンティ研に留学するのに役立ったと思われる、いわば「立身出世の立役者」的なエピソードです。「実験の天才・小保方晴子さん伝説」をつくりあげたエピソードです。

 なのですが今回は前回よりはるかにページ数も多く専門用語も多いので、お忙しい読者の皆様の利便性のために、この記事では、構成をこのようにしようと思います:

1.結論(短く) 2.理由(かいつまんで) 3.一般的な実務上の提言  4.資料としてこの本『あの日』からの引用。

 それでは、肝心の結論…。

1. 【結論】小保方さんは、『あの日』pp.19-25に書かれている「ラットの口腔粘膜自家移植実験」の少なくとも手術部分を実際にはやっていなかった、すなわちだれか心優しい人に代わりにやってもらった可能性が濃厚。あるいは、この実験自体が存在せず、別の実験のデータを使いまわした可能性もある。


2.【理由】
‐保方さんは、早稲田の応用化学から東京女子医大の修士に進学、そこで初めて動物実験や細胞培養を行ったのでした。手術―細胞培養―手術―組織観察というこの実験の手順全体からみて、膨大な量のOJTや個人トレーニングが必要になるでしょう。
⊂保方さんは、この研究を2007年3月14日の第6回日本再生医療学会総会で発表し、輝かしい研究者人生のデビューを飾ります。しかし「数十匹のラットを用いた自家移植の実験を連日8カ月以上にわたって行った。」(p.24)というからには、遅くても2006年7月初めにはこの実験を始めていたことになります。,任いΔ箸海蹐OJTや個人トレーニングの期間がどうみても足りない。この実験をするのは素人がリストを弾くようなもの、あるいは素人が甲子園に行くようなもの。
この本の中に細胞培養のやり方はテクニカルスタッフから習った(p.15)とあるのですが、手術の仕方を習ったり独学でトレーニングしたという記述はありません。本当は実験全体の中では手術の部分がはるかに難しく(とくに縫合)、この実験がチャレンジングなものであるポイントはここなのです。それにチャレンジしたということを言う以上は、そのトレーニングについての説明があったほうが自然ですね。
ぜ存核榿屬竜述をみると、やはり細胞シート上の培養された細胞の時時刻刻の変化は克明に文学的な表現で記されています。いっぽうで難しい手術場面はごく技術的な説明に終始しており、論文や学会発表の原稿をそのままコピペしたかのようです。実際にやったという臨場感が感じられません。(唯一臨場感があるのは、手術後のラットが手の中でピクピクして目覚めるというくだり(p.21)です)このあたりこの記事の後半で『あの日』から文章を引用してご紹介したいと思います。

 以上 銑いら、この実験のとくに手術の部分は小保方さん以外の心優しい人がやってくれた可能性が濃厚です。あるいは、もし手術がうまくいかなければラットが死んでしまい、自家移植が成り立たなくなるので、実験自体が存在せず、細胞培養のデータなどは別の実験から使いまわした可能性もあります。

 また蛇足ですが、この本『あの日』では、小保方さんの初めての学会発表は2007年4月のシカゴでのバイオマテリアル学会年次大会だったとなっていますが(p.25)、上記のようにそれはウソで、本当は1か月早い2007年3月14日の第6回日本再生医療学会総会(横浜)が最初の発表のようです。(現在確認中⇒確認がとれました。日本再生医療学会事務局より、上記の日付・学会においてポスター・セッションの発表者になっているとご連絡をいただきました)

 なんでそんなウソつくカナー。小保方さん、見栄っ張りさんなのカナー。研究発表デビューの場は日本よりシカゴだったことにしたかった?あるいは、のちに2014年8月、日本再生医療学会は声明を発表して小保方さんを見放してしまったので、この学会の存在自体を頭から消したかった可能性もあります。というわけで実験そのものの疑義はまだ「疑いレベル」ですが、この記念すべき学会発表デビューの日時場所は明らかにウソが入ってます。

 ふーふー、ここまででもうワード原稿3ページ目に入ってしまいました・・・。
 で、お忙しい読者の皆様のためにお待たせしました、一般的な実務上の提言です。


3.【提言:実績は2度訊け】

 あくまで一般論で、ここで小保方さんがそうだ、と決めつけるわけにはまいりませんが、「経歴でウソつく人」って、やっぱりいらっしゃるんです。自分がやったのじゃないことを自分がやったように言う。あるいは根本的にやってないことをやったかのように言う。

 そこでマネジャー側、あるいは採用側としては、どうしたらいいでしょう。

 わたしの受講生さんで脇谷泰之さんという、上海工場を大成功させた総経理の方がいらっしゃいます。今どうしてはるカナー。この人の話でおもしろかったのが、
「面接は時間を置いて2回やれ。同じ業績を2度訊け」
というお話。

 こちらの記事に載っています
「『責めない現場』は可能か?」後半部分
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51866966.html 
 中国でも人材採用難です。脇谷さんは募集をかけて色んな人を面接するうち、
「ウソをつかない人間を採用する」
という方針になりました。
 そして、じゃあ、どうやってウソをつく人を見分けることができるでしょう。
 それが、「時間を置いて2回面接し、同じ質問をする」という方法です。
 脇谷さん自身の言葉をご紹介しましょう。

「2回面接したらわかります。日をあけて。今の営業技術部の部長してるのも2回しました。今、承認を教えてる第二世代目のメンバーも僕が2回面接しました。1回目と2回目でまったく同じことをききます。過去の成績。どんなことをしてきたか。あなたが今自信をもっていえる成果は何ですか。ということを2回、同じことをききました。20人ぐらい面接してると1回目と2回目はほとんど違います。1回目に言ったことが2回目になるとすっごい膨らんで言うときもあります。
 …そこで色々突っ込んでいくと、じゃあどういうことしたの、こうしたのああしたの、こんなこと起こらなかった、あんなこと起こらなかった?と、通訳を交えてしゃべっていくと、大体『こいつはこのレベルまでしかしてない』とか『誰かにくっついて一緒にやったことやなあ』とわかるんで、そういう人は全部排除します。」

 いかがでしょ。
 これが現場の知恵です。こういう、仕事の現場の人の言葉ってなかなか表に出ないですよネー。大学教授なんてそれに比べると、全っ然世間を知らない、実務を知らない。

 小保方さんの美しい「病気のお友達エピソード」や、「私はこんなすごい実験をしましたエピソード」も、どちらも「そこであなたは何をしましたか?」と「行動の質問」でつっこんだほうがいい。それも時間を置いて2回、同じところをつっこんだほうがいい。そういうお話です。



 ここまで、駆け足で・結論・理由・提言 という、この記事の骨子の部分をお話してきました。

 この後は、ちょっとお時間の余裕のある読者の方向けに、この本のストーリーを丁寧に追いながら、また本文の抜き書きもしながら、どうしてこういう理由、こういう結論になったのか?というお話をいたします。本を読まないでウンチクに肉づけをしたい方は、どうぞこちらもお読みになってください。


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 さて、この本の筋書きを追いますと、われらがヒロイン小保方晴子さんは成長し、高校に進学し、大学は早稲田大学理工学部応用化学科にAO入試で受かり、大学院は再生医療を志して東京女子医大先端生命医科学研究所へ。
 この修士課程に入ったころから、がぜん専門用語が多くなります。ここで文系の多くの読者の方は挫折感を味わうようです。

 なるべく、私自身も文系ですので(でも過去には科学記者や医薬翻訳者だったこともあるのだが。恥。ちょっと詳しい話になるとお手上げです)そうした“挫折組”の方々もあっなるほどあの話はそういうことだったのか、と思っていただけるように解説したいと思います。

 大学を卒業した小保方晴子さんは晴れて、女子医大先端生命研の修士課程に外部研究生(外研生)として入り、大和雅之教授(現先端生命研所長)の率いる上皮細胞シートの研究チームに配属されます。

 上皮細胞シート。これ、どこのメーカーの製品かご存知ですか。
 はい、あの「株式会社セルシード」社のなんですね。
えっ、どこかできいたことあるって?そうでしょう、小保方晴子さん主著者のSTAP論文ネイチャー誌掲載!を発表したときに株価がガーンと上がった、あの会社です。
 こんな頃から小保方さん、あの会社とご縁があった。看板娘だったんですね。
 で、ここからはこの「細胞シート」が大活躍してくれます。

 「大和教授から最初に与えられた研究テーマは口腔粘膜上皮細胞に関する研究だった」(p.17)
 口の内頬からとった細胞を、上皮細胞シートとして目の角膜に移植すると角膜として機能を果たす。現在ではこれは角膜治療法として確立されているそうです。

 では角膜でない他の場所に移植するとその場所に応じてどう変化するか?小保方さんが挑戦するのは、そういう未知の課題です。
 これを、大型のネズミであるラット、それも若齢のラットの口腔粘膜で実験してみることにしました。

 ほらほら〜、既に漢字が多くて疲れてきていませんか?

 普通、移植手術って同じラットの個体同士で移植する「自家移植」なら、拒絶反応が起きにくいわけです。
 だから理想としては自家移植したい。でも若齢のラット(離乳―性成熟前、8−9週齢まで)を使うと若いから細胞の分化がいいはずなんだけど、若齢のラットだと口が最大でも1センチほどしか開かない。すると、生かしたまま組織をほほの内側から採取することは難しいだろう。要は採取後、止血して縫合するのがうまくいかなくて出血多量で死なせてしまうだろうということですかネ。死なせてしまうとそのラットに自家移植ができません。

 なので大和先生は無理だろうという意味のことを言われます。
「そのために、先生からは、この(他家移植をしても拒絶反応が起きにくい)ルイスラットを用いた『他家移植』による実験系を提案されていた。」(p.20)

 しかし、われらが小保方晴子さんは納得しません。難しい若齢ラットでの自家移植をすることにこだわります。
「しかし、この提案を受けても、私はどうしても、口腔粘膜を用いるからこそ、組織を採取する患者さんへの負担が少なく、自分の細胞を用いることができるので拒絶反応が起こらないという、この研究の原点にある角膜治療研究の根本の価値となる原理を崩したくなかった。自家移植にこだわりたい。無知であるがゆえに、沸き起こるチャレンジ精神が背中を押した。
 そこで、ラットに麻酔をかけ、生きたまま口腔粘膜を採取し、培養した口腔粘膜を同じラットの背中に移植する『自家移植』の実験系の立案を試みた」(同)
 やれやれ、小保方さんたら、とっても向こうっ気の強い方ですね。

 この文章に続いて次のセンテンスではすぐ、ラットの手術が始まります。
「ラットに麻酔をかけ、顎が外れないように優しく、しかしできるだけ大きく口を開ける。舌やその他の部分に傷をつけないように小さなピンセットでラットの口元を支えながら、先端に直径4ミリの円形の鋭利な金属が付いた細長い筒状の道具をラットの口腔内に挿入し、ラットのほほの内側に金属の先端を優しく押し付けて直径4ミリの円形の切り込みを作り、できるだけ傷が浅く済むように、厚さ3ミリほどで小さなはさみで剥離し、必要最小限の口腔粘膜組織を採取する。血の塊でのどが詰まらないように綿棒で圧迫して止血を施し、術後から負担なく食事ができるように口腔内の傷口を丁寧に縫合した。」(pp.20-21)
 「優しく」という言葉がこの中で2回、「丁寧に」という言葉が1回、使われています。小保方さんって、とっても優しい丁寧な人なんですねっっ。。
 (というかむしろ、「こんな難しい手術を練習もせず、優しく丁寧にやればできるって思ってんじゃねー!!」ってつっこむのが正しいのかもしれない)

 この後には、手術後の麻酔の覚めてないラットを手のひらで包み込んで温め、「どうか生きてください」と祈りながら、麻酔から覚めるのを待った、という印象的な光景があります。まあなんて優しいんでしょう。実験動物にこんな愛をもって接するなんて。

 おい。わたしはここでツッコミをいれます。
 先生も無理だからほかのやり方で、と言ってる実験系を主張してやりはじめた割には、えらいすんなり手術しちゃってるじゃないかい。
 上の文章をよ〜〜く見ましょう。
「私はどうしても、口腔粘膜を用いるからこそ、…原理を崩したくなかった。自家移植にこだわりたい。」
の文のあと、いきなり
「無知であるがゆえに、沸き起こるチャレンジ精神が背中を押した」
って言ってますが。
 ここは、「沸き起こるチャレンジ精神」なんて精神論を言ってる場合じゃないのです。
「具体的にどうやって、難しい手術を成功させてラットを死なせず自家移植まで持っていくか」
というテクニカルな説明を、先生を納得させるような形でするところです。もちろん読者のわたしたちにも。
 で次のパラグラフではいきなり手術成功しちゃってる。やれやれ、神の手小保方さん。

 この手術、「ラットの口の中の粘膜から組織をとる」の部分の最大のカギは、「縫合」にあります。1cmしか開かないラットの口の中をいかに縫合するか。それも後の食餌で不都合のないようにきれいな縫合で。
 今は「縫合トレーニングセット」という、手術初心者のための有難いキットもある由ですが。それでも、相当難易度の高い手技だと思います。
 実はこれ、わたしが初めて言ったんじゃなく、ある生物系というAmazonレビュアーさんから、
「小保方さんこの実験自分でやってないでしょう!本当にやったのならこの部分もっと詳しく説明してみて」
という疑義が上がっていました。
 わたしのような素人からみると、上記の手術の描写も十分詳しくみえるのだが、経験者には全然そうではないみたいです。相当の難手術のようです、これ。特にやはり縫合の部分は。
 縫合を手早く正確にやらないと、この手術はラットを出血多量で死なせてしまい、自家移植をすることはできなくなります。
 しかし。早稲田の応用化学から東京女子医大の修士に来て1年目の小保方さん。テクニカルスタッフから細胞の培養の仕方を習ったとはありますが(p.15)、ラットの手術の仕方を習ったとはどこにも書いてありません。
 じゃあ誰がやったの?

 ここは、まったく想像ですが、この研究室の先輩とかで「実験マイスター」「手術マイスター」というような方がいらして、その部分はやってくださったんじゃないですかねえ。
 一応あとでラットの背中の皮膚下に細胞シートを移植してますから、自家移植はしてたんだと思います。なので同じラットの頬の内側の組織をだれかが採取したんだと思います。
でも早稲田からきたばかりの小保方さんにはどう見ても無理ですね。そういう離れ業をやったのなら、それについて猛特訓したという文章が、ここにあってしかるべきだと思います。
 案外、「はるちゃん、これ持ってて」と手術後のラットを渡され手の中で温めていた、そこだけは自分でやったかもしれません。

 この実験は、要は4つの段階から成ります。
(1) ラットの頬の内側の組織を採取する(手術)
(2) 採取した組織を細胞シート上で培養する
(3) 培養した細胞シートを同じラットの背中の皮膚下に移植する(手術)
(4) 移植後の組織の変化を観察する

 で(1)と(3)の手術シーンは、先ほどもあったように、一応の手順を書いてはありますが、論文に記述した通りなのか、妙に機械的でそそくさとした文章です。ほんとはすごく難易度の高い、実験者にとってはドラマチックなはずの場面がね。
 ところが、(2)の細胞培養のパートは豪華絢爛たる文章で、視覚優位・絵画的あるいは動画的な小保方さんの文体の面目躍如です。
 どんなかというと―。

「若齢のラットの口腔粘膜上皮細胞の増殖力は強く、1週間ほどで、たった直径4ミリの組織から採取した細胞を直径35ミリの細胞皿を埋め尽くすまでに増殖させることができた。フィーダー細胞上に播かれた口腔粘膜上皮細胞は最初コロニーと呼ばれる円形の細胞集団をつくり出す。培地の海の中に小さな島々が点在しているように見えるコロニーの周りには、フィーダー細胞が、海のさざ波のように散在して観察される。日が経つにつれて、この島状のコロニーはだんだんと大きくなり、島の間のさざ波はだんだんと数が減っていく。こうしてコロニーが大きくなっていくと、いつの間にか、離れ小島だったコロニー同士がくっつき、一枚の細胞シートとなる。隙間なくコロニーが接着したら、いよいよ細胞シートの回収時期だ。うまくいくと1週間ほどで温度応答性培養皿上に、ヨーロッパの道の石畳のような、敷石状に敷き詰められた美しい口腔粘膜上皮細胞シートが観察される。」(p.22)
「実験は純粋に楽しかった。毎日、温度応答性培養皿上で巻き起こる陣取り合戦のような世界。増殖していく細胞が描き出すモザイク画のような芸術。細胞が変化していく様子を観察するたび、生と死との生命の神秘を感じ、さまざまなことを考えた。」(p.25)

 いかがでしょうか。「口腔粘膜上皮細胞シート」「フィーダー細胞」なんていう専門用語のところを我慢すれば、「ヨーロッパの道の石畳のような」細胞シートなんて、詩的な表現でしょ?
 しかし細胞シートというのが某社の商品であることを考えると、この文章はなんかそれのプロモーションビデオのナレーションみたいにきこえなくもないのだが。小保方さあんセルシード社から広告料とってます?
 

 でこの研究がなんと、2007年4月シカゴで開催されたバイオマテリアル学会の年次大会で口頭発表の栄誉に浴しました。と本書にはあります。

 ふーんふーん。
 実は、小保方さんはこのほかに・2007年3月14日第六回日本再生医療学会総会と2008年3月14日第七回日本再生医療学会総会で、2回にわたって同じ演題で発表しています。(日本再生医療学会事務局に確認ずみ)なので、この実験に関する延々7ページにわたる記述は、この修士時代の2回に渡る日本語での発表原稿にもとづいているのだろうと推測されます。まあ、コピペなのかもしれません。
 大和教授が特許を持っている、当時最新式の細胞培養皿を使った細胞シートの研究を担い、大舞台で発表を繰り返していた、看板娘の小保方さんでした。
 同期や先輩の方々、嫉妬しなかったのかなあ。まあどうみても可愛がられっこですよね。しかし、提案者は小保方さんだったかもしれないけれど、内容的にはどうみても自分ではない。こういう抜擢の仕方ってどうよ、と大人なので勘ぐってしまいますね。

 あと、バイオマテリアル学会でデビューした、というのは、やっぱりウソ。本当は上記のように、1か月早い日本での日本再生医療学会総会で発表したんです。これでも相当名誉なことだったと思うんですけど、小保方さんにとっては今いちだった。シカゴでデビューしたことにしたかったんですね。

(注:好意的に解釈すれば、小保方さんのつもりでは「オーラル(口頭発表)のデビューがシカゴだった」ということなのかもしれません。日本再生医療学会総会では、ポスターセッションでの発表でした。ただ、ふつうはそうと断りますね、つまり「口頭での初めての発表は」という言い方をしますね)

 そして実験のお話がこの本で延々7ページも続いたのは、やはり、自分を凄腕の研究者、実験者だと印象づけたい、からだろうと思います。これ以降のページでは、こんなに1つの実験を長々と書いたものはありません。STAP細胞と直接関係ないのにね。

 このエピソードも、小保方さんがその後ハーバード大学のバカンティ研究室に自分を売り込むことに役立ったことでしょう。バカンティ教授は「そんな優秀な学生なのか!」と目を輝かせたことでしょう。
 しかし、こんなすごい実験ができるのに、バカンティ研に移ってからの小保方さんは、この系統の実験を長くは続けませんでした。最初ヒツジの鼻の粘膜を自家移植する実験をやっていましたが、すぐSTAP細胞の、あまり高度な実験スキルを必要としない研究テーマに替わっています。神通力は、落ちてしまったのでした。


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 ふうふう。まとめです。

 前回の記事とあわせると、小保方さんを「すごくお友達思いの、優しい人」と印象づけた「病気のお友達エピソード」、しかしそこで本人さんは実は何もお友達を助けたりしてなかった。
 それに続き今回の記事では、小保方さんを「すごい実験の天才」と印象づけた、「すごい難しい実験のエピソード」は、実はほかの人が難しい部分をやってくれたか、あるいはそもそも実験自体が存在しなかった疑いすらある。
 そういうお話でした。
 (ついでに記念すべき初めての学会発表の日時場所の間違いもみつかりました。より華々しい方向に「盛って」いました)

 どうでしょう。『あの日』という本の印象、ここまででどうなりましたか?

 えーとここまででわたしもだいぶ疲れてしまったので、次回は、わたしの得意分野である、小保方晴子さんという人のプロファイリングのお話をしたいと思います。

 これまでの記事:

●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html