あの日


 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第5弾です。

 前々回、前回の2回で、小保方晴子さんは「発達障害」なのであろう、こだわりの強いASD、さらにその中でもIQの高いアスペルガー症候群の中の言語能力の極めて高い人であり、さらにミスが多くぼーっとしやすいADHDも組み合わさっているだろう、ということを書きました。
 そして残念ながら家庭環境、すなわちお母さんとお姉さんが心理学者であるという環境がそれを助長していたろう、とも。 

 今回の記事では、そうした小保方晴子さんが成人してから影響を受けた、ひょっとしたら現在も影響を受けている可能性のある、心理学セミナーやカウンセリングの害について取り上げたいと思います。
 えっ、職場の対応法を書くんじゃなかったのって?すいません、その前にちょっと寄り道です。

 そして例によってお忙しい現役ビジネスパーソンのために、この記事の骨子を最初に挙げておきます:

●「小保方手記」に登場するような感情表現を学べる場がある。一部の心理学セミナーでは、「身体が―」「内臓が―」といった身体表現を伴う感情表現が奨励される。
●身体表現を饒舌に駆使することを学んだ人々は、表現力を手に入れる代わり被害者意識が強まる。メンタルが弱くなり持続力がなくなる。言い訳が多くなる。
●視覚・聴覚・体感覚に訴える言葉を使うことで聴衆に訴える力を磨く心理学セミナーもある。そこでは同時に「目標達成」を奨励し、過去にも「目標のために手段を選ばない」人をつくっている
●心理学セミナーにかぶれた若い人について、職場運営実務における提言⇒本文参照
●小保方さんへの提言

     
 すごーく要らんお節介かもしれない記事なんですけど、なのでご興味のない方は読み飛ばしてくださればいいんですけど、わたしの過去アーカイブの中に、教育によって「小保方さん的症状」を呈した人は何人も出てきているんです。何がどう作用してそうなったのか。因果関係を知っていると、やっぱり大人として1つ階段を上がるかもですよ(うそうそ)

 そしてもちろん、われらが小保方晴子さん自身がが現実を受け入れ、社会で再び自分の道をみつけて地に足をつけて生きていかれるためにも、こうした一見よさげな心理学セミナーの害をご指摘しその影響をオフにすることは、大変重要なプロセスであろうと思います。多くの人はまだその害をご存知ありません。

 では、やっと記事の中身に入ります・・・。

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●感情表現は心理学セミナーでつくれる!


 この本、『あの日』の後半は希望にみちた前半と異なり、一気に暗転します。小保方晴子さんは、論文の共著者に裏切られマスコミのバッシングを浴び、残酷な運命に翻弄されます。みているこちらの胸が痛くなるほどです。
 そこの事実関係はここでは置いておいて。

 ここに出てくる「表現」について見てみたいと思います。多くの識者、コメンテーターの方が、小保方さんの「表現力」を絶賛されます。

 この後半のくだりでは、「苦しみ」を表す感情表現が大量に出てきます。
 少し引用してみましょう:

「驚きのあまり全身の温度が下がり、パニックになってしまった」(p.143)
「申し訳なさで胸が張り裂けそうだった」(p.144)
「鉛を呑み込んだように大きな不安を抱えた」(p.145)
「すべての内臓がすり潰されるような耐えがたい痛みを伴う凄まじいものだった」(p.148)
「体が凍りついた」(p.203)
「ただただ恐怖だった」(p.205)
「押し寄せる絶望的な孤独感が心の一部をえぐり取っていくようだった」
「小石を1つずつ呑み込まされるような喉のつかえと、みぞおちの痛みを感じ、息苦しさは日を追うごとに増していった。」(p.216)
「毎日、着せられるエプロンは、レントゲンを撮る時に着せられる鉛の防衣のように重く感じられ、体を自由に動かすことができなかった。」
「身動き一つ制限されることへの精神的な負担が、肉体的な痛みだけでなく、思考力や記憶力までも、少しずつ奪っていった。」
「熱く焼けた大きな石を呑み込み、内臓が焼け焦げているようだった。」(p.224)
「(検証実験中)体中が痛く耐えられない。皮膚が裂けるように痛い。内臓が焼けるように痛い。頭が割れるように痛い。何より魂が痛い。魂が弱り薄らいでいくようだった」(p.226)
「突然の質問がシャープに耳を通り抜け、脳に突き刺さった。」(p.230)
「ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。」「虚無感だけが、あふれでる水のように、体内から湧き出して体を包み込んだ。」(p.232)
「ギプスでカチカチに固めた心が研ぎ澄まされたカミソリでサクッと半分に分かたれるのを感じた。」(p.236)

 いかがでしょうか。
 1人の人が、生きたまま内臓をすり潰され小石を呑まされ脳に突き刺さり研ぎ澄まされたカミソリで半分に分かたれ…、
 なんて、ひどいんでしょう。むごいんでしょう。
 わたしも、もらい泣きしてしまいそうです。
 小保方さんの肉体は、これが本当なら既にこの世にないはずです。

(しかし「内臓をすり潰される」ってどんな感覚なんでしょう・・・実験では、マウスの内臓をすり潰すことはしょっちゅう小保方さん自身がなさっていたのではないかと思いますが・・・こういう主語の転倒、「投影」あるいはその逆のような現象が小保方さんやその擁護派の方々にはよくあります)


 この方、小保方晴子さんがもしASDだとすると、一般にASDの人は脳の中の恐怖を司る部位、扁桃体が普通より大きく、恐怖を感じやすいといわれます。人一倍怖がりさんなんです。トラウマも残りやすいです。そのことは特記しておきたいと思います。

 また、ASDだとすると、「知覚過敏」がひょっとしたらあるのかもしれません。小保方さんは視覚もかなり鋭敏ですがそれだけでなく、こうした内臓の感覚もとても鋭敏な方なのかもしれません。(だとしたら食べ物も刺激の少ないものだけを選んで食べなければならず、不自由なはず。とてもラーメンの替え玉なんて食べてる場合じゃないはず。大丈夫ですか小保方さん!!!)
 また、経験的にも、ASDの人は内臓が弱い人は多いようだ、ある程度以上負荷をかけると内臓の病気を起こしてしまいやすいようだ、というのも思います。

 そうした「ASD的恐怖心と知覚過敏要因」も可能性があるとして。

 実は、こうした「内臓がどうのこうの」という種類の感情表現が、奨励され、量産される場所があるのです。そういう表現をしなさいと指導する場所があるのです。と言ったら、読者の皆様は驚かれるでしょうか。いえ、作文教室ではありませんよ。

 それは、一部の心理学セミナーの場です。詳しくいうと、わたしが経験したのは某コーチング大手研修機関です。コーチングというよりカウンセリングの要素がかなり入っていて、わたしはその研修機関をこのブログで長年批判してきました。カウンセリングの中でもかなりディープな、その場でクライアントを傷つけてしまう危険性も長期的副作用もある手法をど素人にやらせている、と言って。はい、わたし自身もそこのワークショップの手法は一通り学んでいます。3日間連続のワークショップが基礎から応用まで5回、計15日間のプログラムです。

 そこでは、4回目に「感情」にどっぷり「浸かる」3日間のワークショップがあります。
 どんなかというと…、
 ちょっとその実例をご紹介しましょう。

 最初に、リーダー(インストラクター)がお手本をやってみせます。
「何かをしていて、『自分の心に引っ掛かりがある』」という意味のことをクライアント役のリーダーが言う。
もうひとりのコーチ役のリーダーが、
「ほう、その引っ掛かりとはどんなものですか?」
と、そこに着眼してきく。最初のリーダーが答える。
 すると、コーチ役は
「それを言っていて〇〇さんは、どんなお気持ちですか?」
と再度尋ねる。
「ちょっと嫌な感じです」
「ちょっと嫌な感じ。それは体の感じで言うとどんな感じですか?」
 最初のリーダー、沈黙。自分の身体感覚を探っているのでしょう。
「…こう、胃のあたりに小さなトゲが刺さっているような感じです」
 さあ、「身体感覚語」が出てきました。
「なるほど。では〇〇さん、そのトゲが刺さっている感覚を、ラジオの音量を最大にするような感じで、思い切り強く感じてみてください」
「・・・」
 しばしの沈黙のあと、最初のリーダーは、
「ああ、胃がかたい岩のようにこわばった感じです。おなか全体にずうん、ときます。抱えきれない、ような気持ちです」
 リーダーはそう言って、「抱えきれない」ということを表わすように、両手をおなかの前にまるく形づくります。
「もっと、もっと、それを強く感じてみてください。どうですか?」
「…おなかの中の岩が地球のように膨れ上がって私を圧倒しています」
「今どんな気持ちですか?」
「無力感です。泣きたい気持ちです」
「泣いていいですよ」
 リーダー(男)の頬に涙がつーっと流れます。
「ああ、少し気持ちが楽になってきました。
 あの仕事を一緒にしているパートナーにこの違和感を伝えてみようかな、と思います」
「いいですね。是非おやりになってください」
 ぱちぱちぱちぱち・・・。

 いかがでしょうか。
 リーダーはごく日常の些細な言葉の行き違い的なことから違和感を感じ、それをグワーッと拡大して身体に感じ、岩が地球の大きさまで拡大するところまで感じ、涙まで流し、それから「パートナーに何かを言う」ことを決断しました。

 その、何かを決断したということだけ見るとめでたしめでたし、なんですけれど。
 このブログを読まれている、有能なビジネスパーソンのあなたなら、
「そんな手間暇かける必要のあることかい!」
 って、つっこみたくなりませんか。

 些細なきっかけから始まってすべてがそのクライアント役の心の中だけで起こり、膨張し、収縮し、完結する。その徹頭徹尾主観の中のわけのわからないプロセスを経てさいごは「パートナーに何か言う」というアウトプットになるようですけれども、言われたパートナーも困ってしまうでしょう。妙にハレヤカな顔をして相方が何か言ってきても。新興宗教のお告げでももらったんか、と思うでしょう。
 涙を流すと、人はストレスホルモンが涙と一緒に外へ出ていくので、爽快な気分になるらしいですけどね。
 この、かなりカウンセリング的なやりとりが、ここの研修機関の「売り」です。感情の谷間を下り、上がる、それを「コーチ」がついていて質問して手助けしてやる、というのが。


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●身体感覚表現を学んだ人びとが被害者意識過剰になる


 わたしは2000年代の前半のある時期、怖いものみたさでしばらくこの流派のコーチングも受けていました。ただその結果、「この手法はその時はちょっとしたカタルシスになるけれど、あとあと情緒不安定になるだけで、またちょっとしたことも一々コーチのサポートを受けないと解決できない『ひよわ』な人になってしまいそうで、良くないな」と思い、早々にリタイアしてしまったのでした。

 また、その当時はマネジャー教育の団体を運営していたのですが、団体運営の中でこの研修機関の影響を受けた人たちが妙にイレギュラーな行動をとってくることにも気がつきました。彼・彼女らの行動も第三者的にみることもわたしによい示唆を与えてくれました。
 その人たちはやたら提案をしてくるのだが、その提案を採用してその人たち自身にやってもらおうとすると、妙につべこべ言い訳が多くなり、人の揚げ足をとり、「ちょっと違和感があった。胃に小さなトゲが刺さっている気がする」的なことを言い、それをもって、自分が言いだしたことをやらない(不履行)の言い訳にしようとするのでした。

 たしか、その過程では、
「正田さんから督促のメールがくると、胸がばくばくして苦しい」
みたいなことも、おっしゃった方もいらっしゃいます。そう、まるで『あの日』の中で小保方晴子さんが、毎日新聞の須田桃子記者から脅迫的なメールが来た、ただただ恐怖感でいっぱいだった、と書いているように。
 そのたぐいのことがあまりに多いので、私はこの研修機関の人を出入り禁止にしてしまいました。

 要は、「自分の身体感覚に敏感」というのは、「無用に被害者意識が強い」ということにつながるんです。傍迷惑な人なんです。
 でもその人たちは、それが「有害」だとは気がついてないんです。だって、とっても優しそうな人たちが集まる、優しそうなリーダーが主宰するワークショップで、
「身体感覚をじっくり感じ、表現するのはいいことだ」
って習ったんですから。
(困ったことにこのワークショップのリーダーをやる人たちはおしなべて高学歴でもあります。東大出、慶大出なんてゴロゴロいます)

 なので、お話を小保方晴子さんに戻しますと、
 小保方さんがこのワークショップの受講者だったかどうかは、わかりません。しかしこのワークショップに限らず、心理学には、自分の感情を微に入り細をうがち表現することを奨励する流派があります。そこでは、
「内臓が破れた」
「身体のどこそこが痛む」
と言うと、「マル」をもらえます。ひょっとしたら小保方さんが現在受けているカウンセリングがそういう流派かもわかりません。

 わたしなどは周りの人がやたらと「心臓が」とか「内臓が」とか自分の内臓を主語にして饒舌に言っているのをきいていると、人としてミットモナイと思ってその手の表現はしないことにしているのですが、まだ32歳、うら若き小保方さんは、そういうのがすばらしいことだ、と思っていらっしゃるかもしれません。「身体が」とか「内臓が」と言えば、褒めてもらえる世界なんです。

 このワークショップは最終的には「自己実現」「自己表現」を売りにしているので、自己実現ずき表現ずき小保方さんが受けていても不思議ではないんですよね。

 …えっ、小保方さんは本当に心を病むところまでいってしまったのに、苦痛の感情表現を冗談ごとにするのはけしからんって?
 どうなんでしょうねえ、本当の鬱というのは、そのさなかでは「失感情、失感覚」というのが普通だと思います。感情もないし感覚もないんです。こんなに強くものごとを感じたり表現力豊かに表現したりは、できないものですよ。

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●視覚・聴覚・体感覚に訴え、目標達成に駆り立てるセミナーもある


 もうひとつ、心理学ワークショップで小保方さんが影響を受けたのではないかな、と思われるのが、神経言語プログラミング(NLP)です。こちらもわたしは応用コースまで述べ18日間受講しました。 
 このセミナーには、プレゼンを上手になりたい人が通うことが多い。周囲の受講生には、わたしと同様研修講師業のかたもいました。営業マンもいました。
 そこでは、「優位感覚」を時間をかけて扱います。あの、視覚・聴覚・体感覚のうち何が優位か、というやつ。人前で話すときには、聴衆の視覚・聴覚・体感覚に訴える言葉で語りましょう。文章を書くときには、読み手の視覚・聴覚・体感覚に訴える言葉で書きましょう。
 ・・・小保方さんの『あの日』の文章には、NLPの影響があるだろう、と考えるのは考えすぎでしょうか。

 ひところはコーチングをやる人も猫も杓子も「NLPコーチング」と名刺に刷ったものですが、今はブームも下火になり、それほど見かけなくなりました。小保方さんが学会発表の寵児になった2007年はちょうどNLPブーム真っ盛りのころ。プレゼン能力を上げるために、小保方さんがNLPセミナーに通ったとしても不思議ではないのです。

 NLPにはまた、「目標達成セミナー」という性格もあり、もともと夢ずき自己実現好きの小保方さんとはこの点でも相性がいいのです。
 ところが、その「目標達成」に駆り立てる要素が、こんどは目標のためには手段をいとわない人をつくりだす性格となり・・・(後述)
 

 ここまでをまとめましょう。
小保方晴子さんはもともと発達障害の特性をもって生まれついているのに加え、ご家族が心理学者というご家庭環境、それに今どきの心理学ワークショップにより、もって生まれたその特性を助長・強化された可能性が高いのです。
 こうしたセミナーにはおそらく小保方さんと同様の、自覚していないASD、ADHDの方たくさん来られ、そしてその偏った認知特性を強化されていきます。わたしが「一応の勉強のために」そうしたセミナーに通っていた当時、発達障害の概念にまだ親しんでいませんでした。今振り返ると、あそこでご一緒した方々の半分ぐらいは、そうだったん違うかなーと思います。
 
 そしてまた、知性の高いアスペルガー症候群を含むASD(自閉症スペクトラム障害)の人のもつリジッドな特性、すなわち、一度思いこんだことはなかなか修正が利かない、「くっつきやすくはがれにくい」知性があるため、こうした心理学セミナーでの教えが現実と整合しないことになかなか気づかず、長期にわたってその教えを信奉してしまうということが考えられます。
 これは、ASDの中でも特に重症の自閉症の人にたいする療育を学んでみるとわかります。自閉症の人の「誤学習」というのはやっかいで、一度間違ったことをおぼえるとなかなか抜けません。たとえばスーパーに連れていって駄々をこねてお菓子を買ってもらった、という経験をすると、その経験から学習してしまい、スーパーに行けば必ずお菓子を買ってもらえる、買ってくれるべきだ、と考えます。ひいては、買ってもらえないとパニックを起こすようになります。これと同様なことが、アスペルガー・ASDの人たちでも日常的に起こっています。間違った思い込みの修正が利かないのです。

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●職場への提言


 こうした心理学セミナーは今もあります。あからさまに自己啓発セミナーでなくても、その内容や効果は自己啓発セミナーと同じようなものです。利己的で平気で他人を利用する人や、一見優しいけれど被害者的で言い訳の多い人をつくっていきます。
 そうして、正統的な心理学を装って若い人を吸引します。
 では、実際問題、現役マネジャーの読者の方向けの話題です。あなたの職場の若い人がこうしたセミナーにかぶれて仕事のできない、言い訳の多い人になったら、何をしたらよいのでしょうか?


 思想信条で人を差別したり解雇することは憲法をはじめ法律で禁じられています。だから、こうした心理学セミナーの教えにかぶれているというだけでは処分することはできません。
 しかし、その思想が原因で問題行動をとれば、その問題行動を解雇事由にすることはできます。いよいよ必要だと思ったら、問題行動や発言を日時とともに記録しておくことをお勧めします。
上述の感情表現を奨励するタイプの心理学セミナーでしたら、「不履行」という形の問題行動が起きやすいので、指示を出したこと、先方がその指示を確かに受け取ったこと、そして不履行が起こったことをそれぞれ日時とともに記録しておきましょう。
不履行とそれに伴う言い訳は、上司のあなたの感情を揺さぶり、ひょっとしたらカッとなってあなたのほうが不規則発言をしてしまうかもしれません。くれぐれも、感情的に動揺しないことをお勧めします。暴言を吐いてしまったりしたら、相手の思うツボです。「課長が酷い暴言を吐くので体が金縛りになったように硬直して動けなくなった」次の言い訳のタネを与えることになります。この記事を読んで、「こういう人の“被害”に遭ったのは自分だけではないんだ」と思って、気持ちを鎮めましょう。
解雇その他の処分のプロセスの中では、本人さんに対する「警告」の段階があります。このとき、できるだけ淡々と感情的にならないようにし、自分は本人さんの味方であること、できれば本人さんが職業生活を続けられるよう願っていることなどを伝えましょう。もし本人さんが失職を恐れて少し素直になってくれるようであれば、上記のような心理学セミナーに参加したことがないかどうか、それとなく訊いてみましょう。もし、それをカミングアウトしてくれれば、しめたものです。
あとは、時間をかけて、そうした心理学セミナーの中には間違った教えが入っていること、社会人にとっては「感情」ではなく「行動」が大事なのだということを教え諭してあげましょう。行動をとることを約束するのが雇用契約なのだと。

 めんどくさいですが、自社がSTAP騒動並みのスキャンダルに巻き込まれないためには、こうした企業理念に反するおそれのある人びとへの対応法をきめておいたほうがよいと思います。 



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●小保方さんへの提言


 この本、『あの日』の出版自体が小保方さんにとっての「癒し」なのではないかと言われた、医療関係者の方がいらっしゃいました。
 しかし、ノンフィクションの形をとりながら実名の人を登場させて事実関係のあやふやなことを書いて傷つける、ということは、すでにとても大きな加害行為です。
 小保方さん、ご自身の受けた被害をはるかに上回る加害を、人に与えてしまっていらっしゃいます。こんなことをしていても何も癒しにはなりませんよ。
 これからもこの本のようなオファーをしてくる出版社さんやTV局さんはあるかもしれませんが、是非、そうしたところとは手をきってください。
 それから、今回の記事で書いたような手法、「感情表現を思い切りしたら癒しになって次の前向きな行動がとれるんだ」というのを、心理学セミナーであれカウンセリングであれ、信じておられるとしたら、それは間違いです。もう、その手法とも手をきりましょう。それは、小保方さんがますます情緒不安定になって周囲の人への悪感情を増幅させるだけで、結局小保方さんにわるさをしてしまっています。ますます身心をむしばんでしまいます。また大切なご家族もますますダメージを受けてしまいます。

 この事件は小保方さんに大きなトラウマを作ってしまっていると思いますが、そのトラウマの処理方法としてわたしがお勧めしたいのは、「EMDR」という手法です。感情表現を多用することなく、スピーディーにトラウマを消してくれます。スピーディーといっても大体半年くらいはかかり、その間多少の副作用がありますが、やたらと感情表現をして人に相槌をうってもらうよりずっと効果がありますよ。



 このブログでは、定期的に「研修副作用」のお話をやっています。
 詳しくは「研修副作用関連」のカテゴリをクリックしてみてください。
 過去の記事で「小保方さん」に関係のありそうなものをピックアップしてみました

研修副作用の話(6)―「表現力」が大事か、「責任感」が大事か
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51905855.html  プレゼンセミナーやNLPセミナーでは「表現力」が上がるけれど「行動する力」は上がらないですよ。責任感は上がらないですよ。ひいては口先ばっかりの人をつくってしまうだけですよ。責任感は本人を日常目の前でみている指導者だけがつくってやることができるものですよ。ということを言っています

研修副作用の話(5)―目標設定セミナーについて
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51905839.html  「目標設定」「目標達成」を過度に重視するタイプのセミナーを受けると、目標のためには手段をいとわない人になっちゃう可能性がありますよ。NLPセミナーとか一部のコーチングセミナーなどがそうです。うちの団体で過去、その手のセミナーを受けた人から営業資料の盗用の被害に遭いました

ときどきコーチを返上してジャーナリストになるです
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51336521.html  「ワークショップ症候群」になってしまった人々の“症状”をリストアップした記事。仕事ぶりにむらが多く、言い訳が多く、自分を叱ってくる人を見下したり恨んだり。最後には会社を辞めてしまうことが多い。


自己実現の時代から責任の時代へ?
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51440997.html  アメリカでも「責任」を強調する子育てから「自尊感情」を強調する子育てに変わった。そして犯罪者や暴力的な傾向のある人は、「自尊感情」が高すぎるのではないか、とアメリカ心理学会会長・セリグマンが主張します

感情と自由の暴走がなにをもたらすか
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51339067.html 
 一部の心理学ワークショップに耽溺した人々の「感情の暴走」が起き、自律性を欠きだらしなくなる現象。また「自由」の観念も暴走し規律の観念がなくなる、というお話



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html