13日夜は、昨年度「承認大賞」の林義記さんとお食事。
神戸市西部の介護福祉施設にお勤めの33歳、2児のパパです。
昨年の「承認大賞2011プロジェクト」は、受賞者の名前などがベタ記事で地元紙の経済面に載ったのみだったけれど、
林さんの旧友がそれに気づいて切り抜き、お手紙をつけて送ってくれたそう。
嬉しいプレゼントだったそうです。
また「大賞」の題材になった2年目の若手介護士クンは、その後も元気に働いており、先輩の林さんに対して感謝を欠かさない。
「林さんがあのときこう言ってくれたから、ぼくはこういうことができるようになった」
ということをつねづね言ってくれる。
そして、「林さんのセンスはやっぱりすごい」と言い、(でも本人も非常にセンスが良く、年数からすると非常に高度なことができるそうだ)
最近では自分で探してきたセミナーに自主的に行くようになったのだそう。
ものすごい順調な成長ぶりですね。
林さんの施設で来月研修をするにあたり、過去のレジュメなどをお渡しして検討していましたが、
それをぱらぱら見て、
「ああ、『強み』の考え方はいいですね。(介護職の)みんなに知ってほしいです」
何かというと、例えば利用者さん(高齢者さん)の問題行動に目をとめて規制しようとする考え方が、介護職の人には強い。
そうではない、その問題行動はその人の何らかの強みの表れではないのか、それがわかればその強みを何か別のことに使ってもらえるのではないか。と、林さん。
一例として、ほかの利用者さんに関わりたい、お手伝いをしたいという気持ちで身体を動かしてしまう利用者さんがいる。しかしご本人の身体の状況からすると、そのように動くのは危ない。だから職員は止めようとする。
しかし、この人のご家族に聞き取りをすると、この人(女性)は若いころボランティアをして人助けをしていた。阪神大震災前の、日本ではまだボランティアが一般的でなかったころです。
そうすると、人を助けたい、関わりたいという気持ちがこの人は人一倍強いはず。そこで、「(手を出して手伝うのではなく)あの人が悩んでいるようだから、話を聴いてあげて」と促すと、喜んでそうしてくれるようになったという。
「それはすごい。前々から『強み』は高齢者援助に使ってもらえると思っていました。脳のはたらき全体が衰えてきているが、自分の強みの部分は残っていることが多い。そこを刺激してあげれば、脳機能全体の回復につながるのではないかと」
と私。
「それと恐らく、介護職の人で『回復志向』(なおしたい)という強みを持っている人は多いと思うんです。一種のやさしさでもあるんですけど。相手の問題をなおしたくてしょうがない、という。そのために利用者さんの問題行動にばかり目をとめてしまう、というのもあると思うんですよね」
また、「クレーマーさん」を承認してあげることで、改善した例というのもあるそうです。
ある利用者さんの娘さんが、大変なクレーマーで訪問のたびに介護のここが悪い、あそこが悪いと指摘されていた。職員は困り果て、普通はこういう場合「そんなにクレームばかり言うなら援助できません、お別れです」と、施設と利用者の関係ではなることが多いという。
しかし林さんは相手を承認できるところはないかと考えた。
「まず決まった日時にきちんきちんと訪問されている。お母さんのためを一生懸命考えて必要な届け物などもされている。お母さんのためを考えるからこそ文句が出る」
そして訪問のたびにそれを言ってあげることにしました。
すると、クレームは激減しました。担当の職員も、「最近ようすが違いますね・・・(クレームを言わなくなりましたね)」と、言うようになりました。
さらに、
「お母さんにお役に立つためにわれわれ施設で何かできることはありませんか?」
ときくと、ウーンと考えてくれました。
そこから、利用者さんご本人、その(元クレーマーの)娘さん、そして施設職員2人の4人で、「外でお食事する」ということが実現しました。
そこは結婚式場にもなるレストランでした。向こうにきれいな花嫁さんがいますよ、と指さすと、90歳になるその利用者さんは娘に、「あんたが結婚したときはピンクのウェディングドレスだったねえ」と話しだしたのです。
その娘さんはもう70近いお歳。自分のお母さんが、自分のピンクのウェディングドレス姿をおぼえていてくれた。どんなに嬉しかったことでしょう。
・・・と、いうのが「クレーマーさんを承認する」というお話の顛末です。
ほかにも「承認」がらみの楽しいお話がいっぱい出て・・・、
毎日、生身の人相手で問題発生はひきも切らないお仕事のはずですが、折にふれて林さんは「承認」を駆使してくれ、そして
「林さんと仕事すると楽しい」
と言われ、
「そう、その秘密はね」
・・・と、今度私を施設に研修によんでくださるようになった、というわけです。
その人の人柄に触れると楽しい、という人がいます。
私にとって林さんは確かにそういう人です。
(世の中には、1人の悪い人に触れるとそのストレスを解消するために5人の良い人に会わないといけない、とかいうデータもあるんですが。グーグルのお話がらみでしたか)
神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
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