正田佐与の 愛するこの世界

神戸の1位マネジャー育成の研修講師・正田佐与が、「承認と職場」、「よのなかカフェ」などの日常を通じて日本人と仕事の幸福な関係を語ります。現役リーダーたちが「このブログを読んでいればマネジメントがわかる」と絶賛。 現在、心ならずも「アドラー心理学批判」と「『「学力」の経済学』批判」でアクセス急増中。コメントは承認制です

カテゴリ: 月刊人事マネジメント連載

 「月刊人事マネジメント」(ビジネスパブリッシング社)に昨年7月から全7回で連載させていただいていた、「上司必携・行動承認マネジメント読本」。先月号でいよいよ最終回でした。

 7回目は、「リーダーの伝え方」を取り上げます。

 といっても、このブログのこと、一般的な「プレゼンスキル」ではありません。読者の皆様にはおなじみの「例の漢字2文字」でございます。これが、変な小細工よりも絶大な威力を発揮しますよ、というお話。まさか、と思われますか?


 「行動承認マネジメント読本」最終回の記事を編集部のご厚意により「公開OK」でいただきましたので、転載させていただきます。

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 以下、本文の転載です:

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上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜


正田佐与承認マネジメント事務所
代表 正田佐与

第7章 伝えたいことが「伝わる」伝え方



「自分の話が部下に伝わらない」こうした悩みを抱える上司の方は多いことでしょう。それはプレゼン力の問題でしょうか。ロジカルさが足りないのでしょうか。「笑い」や「つかみ」が足りないのでしょうか。いやいや、その前にできることがあるのです…。『行動承認マネジメント読本』最終章の今回は、「伝え方」を取り上げます。

なぜ「承認」を伴った話は「伝わる」のですか?

 「あなたの応対技術の向上は目覚ましいですね。スピード、お客様満足度とも前期から大幅に上がっています。インストラクターの〇〇さんも『A子さんは努力家です』と折紙付きですよ」
 あるコールセンターにて。1年前にパート入社したオペレーターのA子さん(38)に、所長(女性)はこう切り出しました。さらに所長は続けます。
 「私は皆さんが自発的に努力してお客様満足と技術向上に努めてくださることが一番大事だと考え、あえて無理な要求をせず、皆さんの自主性に任せてきました。皆さんもよくそれに応えてくださいました。うちのセンターは、関西12センターの中でサービス指標ランキングがずっと『2位』です。『1位』のセンターは、ご存知のようにトップからの要求がきつく、厳しい指導のためオペレーターの離職率も高いところです。私たちのやり方が正しいことを証明するためにも、今期は『1位』を目指してみませんか」
 A子さんは、所長の言葉に思わず知らずのうちに頷いていました―。
 結論から言いますと、このコールセンターは首尾よく「サービス指標1位」を獲得しました。
 所長はA子さんに対するのと同じように、1人ひとりへの「承認」を盛り込んだ個別面談を80人のインストラクター、オペレーターに行い、全員から「1位獲得」への協力をとりつけていきました。
 「行動承認マネジメント」を取り入れた企業やグループでは、さまざまな業績指標ランキングで「1位」が生まれていますが、それはおおむね、こうした現象の繰り返しだったと思われます。
 ここでは、何が起こっていたのでしょうか。
 人は、「承認」をしてくれる人の言うことを自分の規範として取り込みます。だから、相手を自分の思う方向に動かしたいと思えば、「承認」をすればいいということになります。
 逆説的なようですが、これは過去10数年のマネジメント指導のなかで繰り返し出会って来た現象です。また最近の脳科学研究によって、この現象が説明できるようになってきました。
 すなわち、人は生まれてから外部の規範を取り込んで学習し、自分の規範意識を形づくります。このとき外部の規範を取り込む作業を行うのは、脳の「内側前頭前皮質」という部位で、私たちの額の中央の奥に当たる位置にあります。その同じ内側前頭前皮質が、私たちの「自己意識」をも司っているというのです。
 従って、社員にある規範を「自分事」として感じ行動してもらいたければ、その社員が「確かに自分のことだ」と感じるような「承認」の言葉をかけながら、望ましい規範についても話すことが効果的だ、ということになります。
 さて、「確かに自分のことだ」と感じるような「承認」の言葉とは、具体的にはどういうものでしょうか?やはり、本連載に繰り返し出てくる「行動承認」あるいは「成長承認」これらに優るものはないようです。
 これを習得し日常行動にしたマネジャーの下では、部下の成長や業績の向上が起きるほか、規範意識の向上も同時に起こり、職場全体がコンプライアンス的にも非常に高い評価を受けてきました。それらは決して偶然ではないということです。
 「承認」と並んで、やはり「個別面談」も大きな武器です。自分を「個」として扱われたい、見てほしい。従来以上に、部下の側のこうしたニーズは高まっています。「その人だけのために時間をとって個別に話をする」、そのこと自体にも「承認」の意味合いがあるといってもよいでしょう。
 また、「承認」を学んだマネジャーは、「良い『承認』をするためには『傾聴』もしなければなりませんね」とよく言います。相手の行動を目の前で見ているわけではない場合には、「傾聴」によって行動の聞き取りをしなければならないのです。「『承認』をするために、傾聴のなかで『良い行動』を抽出しよう」、そういう意図をもって傾聴をしていると、実は情報共有も非常にうまくいきます。相手が自分のとった行動に加え、現場の問題点や気がかりなども安心して話してくれるようになるのです。

ビジョンを語ることも有効ですか?

 経営学の世界では、「ビジョンを語るリーダーが説得力を持つ」といわれ、実証研究も多数あります。ところが、これを日本の普通のリーダーが普通の働き手を相手に行うと、「空回り感」が生じてしまいます。なぜでしょうか?
 日本の普通の働き手というのは出発点で「ポジティブ感情」が非常に低い状態なのです。ポジティブ心理学によると、ポジティブ感情の有無はその人の頭の働き、視野の広がりやレジリエンス(精神的強さ)に決定的な影響力をもたらすものですが、遺伝子的特性によって、また幼い頃からの育てられ方によって、私たち平均的な日本人はこのポジティブ感情が低いのです。ポジティブ感情が低いと、目先のことしか考えられず、中長期的な視野を持ちにくいといわれます。
 そうしたポジティブ感情の低い日本の平均的な働き手に対しては、リーダーが「未来のビジョン」をいくら説いても、「絵に描いた餅」として映ってしまいます。では、働き手のポジティブ感情を高めてあげるにはどうしたらいいのか?本連載をここまで読まれたあなたなら、もうお分かりですね。
 「ビジョンを語る」ことが決していけないわけではなく、その前に手順を踏まないといけないことがあるだけです。

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 7回にわたる本連載は、マネジャー層による「承認」の実践が、いかに社員のモチベーション向上、スキルアップ、多様な人材の活用、メンタルヘルスの向上、そして規範意識の向上につながるかというお話を順に述べてきました。いわば「承認教育」とは、上司部下問わず職場全体の大きな変容につながり、マネジメントの多くの分野に同時に効いてしまう、「オールインワン」の技術です。
 あまりにも「承認」が効く、という話が繰り返されたために、ビジネス経験豊富な読者の皆様には「そんなにうまくいくものか?」という疑心暗鬼の念が湧いたかもしれません。しかし、10数年来マネジャーの皆様とともに非営利教育のなかで泣き、笑いを経験してきた私としては、実際に経験してきた知恵として、また現代の脳科学や神経経済学その他の知見からしてもおそらく間違いないことを、皆様に誠心誠意ご紹介することしかできないのです。
 きっとなかにはすでに実践を試みられ、「ここで言っていることは確かに本当だ」と感じてくださった方もいらっしゃることと信じて、筆を置かせていただきます。これまでのご愛読に感謝いたします。(了)


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 いかがでしょうか。

 上司の方々にとっては、「自分の言葉が伝わらない」大変な焦燥感だと思います。たぶんこれまでにも色々な本やセミナーで「伝え方」を学ばれたことでしょう。

 わたしは「リーダーの伝え方」についての本も読んでみるのですが、そこに書いてあることを実行しても「伝わる」ようになるとはとても思えません。やはり、人は「認めてくれる人の話を聴く」、そのことを現実に見すぎてきたからだと思います。それを抜きにして語ることはできません。


 いっぽう。
 この記事を入力していて思ったこと。

 それは、やはり「乱用しないでね」ということ。「承認」がいくら効果のあるものであっても、「承認」を連発しながら到底受け入れることのできないようなことを言っていないだろうか。ブラック企業も多い昨今、無茶苦茶な労働条件を押しつけて「承認」を入れて説得しよう、というのはやめて欲しいものです。

 上記の記事では、「承認」を使って語る女性所長さんを、「Y理論」的な、もともと人々の自発性を尊重するリーダーだ、という設定にしました。(実際にモデルにした方はいます)

 強欲資本主義のためではなく、本当に人々が尊重され輝いて働くことを望む優れたリーダーの方々に、「承認」を手渡したい、と思うしだいです。

 
 「上司必携・承認マネジメント読本」名残惜しいですがこれにて終了でございます。

 改めて、連載にお声がけくださった「月刊人事マネジメント」編集部様、そして読者の皆様、ありがとうございました!

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「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51919833.html
 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51921667.html
第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51923763.html
第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
第七章 伝えたいことが「伝わる」伝え方(2016年1月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51934650.html



正田佐与

 
 

 「発達障害」。
 2つ前の記事(『ほめると子どもはダメになる』の批判記事)にも出てきましたが、今でも「知る人ぞ知る」の話題です。
 本当は、とてもポピュラーな障害ですのでだれもが知っておいたほうがよいことなのです。残念ながら少し古い世代の心理学者さんなんかは、タブー視していて案外知らない。

 このブログでは2013年ごろから「発達障害」についての記事が増え、14年暮れ〜15年春には、「発達障害をもつ大人の会」代表の広野ゆいさんと2回にわたる対談を掲載させていただきました。


「月刊人事マネジメント」誌に連載させていただいている、「上司必携・承認マネジメント読本」の6回目の記事を編集部様のご厚意により「公開OK」でいただきましたので、転載させていただきます。

 今回は、「発達障害を含む障害をもった働き手の戦力化」について、「承認」を絡めてお伝えします。

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 以下、本文の転載です(正田肩書を修正しました):

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上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜

正田佐与承認マネジメント事務所
代表 正田佐与


第六章 部下の凸凹を包んで戦力化する

「インクルージョンの波」が来年度、職場に押し寄せてきます。4月1日から、障害者に対する〆絞姪取り扱いの禁止、合理的配慮の不提供の禁止―を柱とする障害者差別解消法と改正障害者雇用促進法が施行されます。すでに、すべての職場で障害を持った人々の法定雇用率2.0%は施行されており、ここに平成30年度には、精神障害者も対象に加わります。
 障害を持った人の受け入れについて、とりわけ中小企業などでは「負担が大きい」という声もあるようです。しかし、実際に受け入れた職場では、「人の多様性への理解が進んだ」「社員が従来より優しい気持ちになれた」という効用も大きいようです。わが国では従来遅れていた分野でしたが、法改正を機に前向きに受け止めていtだきたいものです。
 今回は、安倍政権の「1億総活躍社会」の一角を占めることになるであろう、「障害者の活用」について、また障害とまではいかない社員の能力の凸凹を包含(インクルージョン)して職場運営をしていくうえで、上司の方ができる関わりについて、解説したいと思います。

障害を持った人にどう働いてもらうといいですか?

 これについては、厚労省の改正障害者雇用促進法に関するサイトから、「合理的配慮」の事例をダウンロードして参考にすることができます。
 また詳しくは、現在数多くある特例子会社の事例が参考になるでしょう。筆者も過去に(株)リクルートオフィスサポート、東京海上ビジネスサポート(株)などの特例子会社を訪問させていただきました。そこでは、グループ会社全体で発生する事務仕事を細かく分けてタスク化し、障害のある人々に個々の特性を活かして割り振る、というやり方で戦力化していました。興味のある読者の方は、一度そうした特例子会社を見学してみることをお勧めします。障害を持った人に対するマネジメント法、採用法いずれも参考になることでしょう。

各職場レベルでは何ができますか?

 障害を持った人についても、実は健常な人に対すると同様「承認」の関わりが功を奏します。
 本連載第1章で、「行動承認」は業績向上の効果が極めて大きい「儲かる技術」だ、ということを確認させていただきました。一方で、「承認」は大きくいえば「ケアの倫理」にも「共生の倫理」にも相通じ、一律でない、多様な特性を持った人を理解し、共に働くための倫理という性格も持っています。
 またとりわけ、相手の行動を事実その通り認める「行動承認」は、障害を持った人々への支援技法である「行動療法」を起源としたものですから、そのまま障害を持った人にも使っていただけるのです。
 相手の良い行動を伸ばすこと。さらにそれを通じて相手の特性を理解するということ。本人にできていること、できていないことを、上司の方が虚心に見、正確に把握するということができます。
 とはいえ、障害を持った人の特性は本当に様々で、「対応できるのだろうか?」と不安にお感じになる方もいらっしゃるでしょう。慰めになるかどうか分かりませんが、障害者対応の「プロ」であっても、最終的には出会ったその人に合う対応法をその場に即して編み出していくしかないのです。

発達障害の人が増えているようですが?

 近年、発達障害の概念が普及したことに伴い、過去には想像できなかったほど、人口の中で大きな割合を占めることが分かってきました。今回の後半はこの人々にとって紙幅を取ってご説明します。
 発達障害は、最新の精神疾患に関する区分である米DSM-5では、大きく、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と、自閉症スペクトラム障害(ASD)の2つに分けられます。
 ADHDは、全人口の5〜6%を占めるといわれ、大人の従業員では、「ミスが多い」「忘れ物が多い」「寝坊・遅刻が多い」「時間管理が下手、時間内に仕事を終わらない、予定忘れを起こす」などの”症状”となります。
 またASDは、全人口の1〜2%(最新の報告では4%)を占めるとされ、「こだわりが強い、固定観念が強い」「他人の気持ちに想像力が働かない」「変化、変更が苦手」「ごく狭い範囲の仕事にしか関心がない」などがあります。
 ADHD、ASDの両方の傾向を併せ持った人も多くいます。診断を受けていない人も含め、筆者の実感値としては就業人口の約1割は、発達障害かそれに近い、職場で特別な配慮を要する人がいます。
 上記の特性を持つ部下がいた場合、もし発達障害についての知識がないと、上司は戸惑い、また深刻に悩むことになるでしょう。こちらが適切に指示を出したつもりでも、こうした特性を有するために指示を取り違えたり、忘れたり、間違ったやり方で仕事をしてしまうことが往々にして起こります。
 実は、発達障害を持った人は職場でメンタルヘルス疾患になるリスクも高いですし、叱責しているうちに上司の方がパワハラに該当する言動をとってしまうということも大いに起こりえます。無用なトラブル回避のためにも、発達障害についての知識はこれから不可欠になっていくでしょう。
 発達障害は、軽度の症状の場合は職場での環境調整によって無理なく仕事をしてもらうことができます。環境調整とは、例えば、
●ミスが出やすい状況を見極め、予防する。周囲からの声かけやミスの影響が少ない職務への転換など。
●視覚優位の人が多いため、文書や図示などの方法で指示を出す。ある企業では「メールによる指示出し」を徹底し、ミスを減らした
●こだわりが強く変化に弱いASDの人に対しては、変更内容や変更の理由背景などの説明を徹底する
などです。
 こうした配慮をしても限界がある場合には、次の段階で本人にこの特性のために問題が起きていることを伝え(告知)、医療機関で診断を受けるよう勧めることが必要になります。ADHDの場合は治療薬があり、それによりある程度ミスを減らすことは可能です。
 ただし、この「告知」は非常に難題で、ここで上司による「起きている問題についての正確なフィードバック」が不可欠だ、と専門家は指摘します。
 上司の方にはここでまた、「行動承認」の効用が活きてきます。日頃から部下の行動を観察し、声かけし、良い行動を記憶し評価に活かすこと。これを励行していることで、部下のミスの内容回数、問題行動の種類頻度、といった情報も過度に感情的にならずに記憶・記録しておけることでしょう。
 告知はハードな壁ですが、実際には障害を受容したほうが、満足度の高い職業生活、そしてプライベートの生活を送れるようです。
 ある上司の方によれば、発達障害とみられた女性の部下に「行動承認」で関わり、プロジェクトを達成に導いた結果、部下は自信をつけて、自ら診断を受けて障害者手帳を取得し、そして結婚もして幸せに暮らしているというのです。
 仕事で達成感を味わうことが、いかに1人の人にとっての自信と幸福感の源になるか、また、とりわけ能力の凸凹を持った部下にとっては理解ある上司の適切な関わりがどれだけ助けになるか、考えさせられた事例でした。 (了)

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 いかがでしたか。
 実は、この記事を書くために正田は障害者さんについての知識を少しでも増やそうと、「同行援護(ガイドヘルパー視覚)」、「行動援護(障害者の外出をお手伝いするガイドヘルパー)」の資格を取りに行ったりしました。しかし、この記事にそれを盛り込めたかというと…、

 ダイバーシティもメンタルヘルスもインクルージョンも。「承認」は欲張りな技術です。

 次回は「伝え方」のお話。ブログ読者の皆様は「あれだな」って、もうお分かりですね。


「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51919833.html
 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51921667.html
第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51923763.html
第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
第七章 伝えたいことが「伝わる」伝え方(2016年1月号掲載)

 正田佐与

 今月1日、改正労働安全衛生法によるストレスチェック義務化が始まりました。

 従業員のメンタルヘルス対策、このブログ読者諸兄姉の職場ではどうされているでしょう。

  「月刊人事マネジメント」誌に連載させていただいている、「上司必携・承認マネジメント読本」の5回目の記事を編集部様のご厚意により「公開OK」でいただきましたので、転載させていただきます。

 今回は、「承認マネジメント」による「メンタルヘルス問題を起こさない職場づくり」について、お伝えします。
 

11月号完成稿


11月号完成稿2


 
 以下、本文の転載です(正田肩書は11月1日当時のものです):

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上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜

一般財団法人 承認マネジメント協会
理事長 正田佐与


第5章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策
 


 改正労働安全衛生法により、従業員のストレスチェックが今年12月から義務づけられます。
 メンタルヘルスケアについては、厚労省が平成12年より制定した4つの柱があります。すなわち、1.従業員1人ひとりによる「セルフケア」、2.管理職による「ラインケア」、3.社内の産業保健スタッフによるケア、4.社外の専門機関によるケアです。
 本章では、2.のラインケアについて、現場の上司の方1人ひとりにできることを解説します。

マネジャーはカウンセラーになるべきですか?

 「ラインケア」のためには、「職場では上司・マネジャーが部下のカウンセラーであるべきだ」という主張があります。部下の話を共感的に聴き、受容することが大事だ、と。
 筆者は、それにはあまり同意しません。マネジャーはあくまで仕事の現場を前に動かすことに責任を負う人であり、心を病んでしまった部下のケアを担当するのは荷が重すぎるのです。部下がもし本当に心を病んでしまったら、マネジャーはできるだけ早く産業医または医療機関にバトンタッチすることをお勧めします。
 むしろ、読者の上司の皆様にお勧めしたいのは、「未病段階」の日常のケアとしての「承認」です。
 ピースマインド・イープ(株)が今年8月に発表した約4万人を対象としたストレスチェック調査結果の分析によると、「上司の部下対応に改善が必要な職場では、それらが良好な職場に比べ高ストレス者比率が約10倍」という結果が出ました。
 「上司の部下対応」とは、より具体的には、上司のリーダーシップ、すなわち部下の育成やキャリア形成に積極的であること、上司の公正な態度ほめてもらえる職場失敗を認める職場―などが指標となります。ですので、上司の必要な行動様式としては、「承認」を日頃心がけて行っていただくことで大丈夫なのです。

傾聴より承認が大事なのでしょうか?

 少し抽象的な話になりますが、「傾聴(話を聴くこと)が大事か、承認(認めること)が大事か」、どちらでしょうか?
 「傾聴」の一環として「承認」をするのが正しいか、「承認」の一環として「傾聴」をするのが正しいか。どうも、経験的には後者のようだ、と筆者は考えます。
 「認める」ことを日常行動のコミュニケーション手法としても心の構えとしても基盤として持ったうえで、場面に応じて「傾聴」もする。「承認」は「見る」ことと「聞く」ことの両方を駆使し、「声がけ」の段階の「浅い」レベルのものから「行動承認」その他の各「承認」カテゴリ(第2章参照)を行うこと、さらに、指示出しやトップダウンで語ることまで通じ、極めて使用頻度も応用範囲も広いものです。
 「話を聴いてもらいたい」という部下の真意は多くの場合、「認めてもらいたい」とイコールです。
 逆に、「傾聴」が大事だ、という構えでいると、マネジメントのなかでじっくりとした「傾聴」ができる場面は限られていますので、せっかくの宝の持ち腐れになってしまいます。また、たまたま「傾聴」したことに囚われて、物事の本筋を見誤ってしまうことになりかねません。
 ですので、メンタルヘルス対策の「ラインケア」としてマネジャーが行うべきことは何か?というとき、やはりここでも「承認」をお勧めしたいのです。
 そして実際にやってみると、「承認」は鬱など心の病気になる前の「未病」の段階で非常に大きな予防的効果を発揮し、日常行動として行う価値があることが分かります。

「承認個別面談」は必要ですか?

 日常の声がけや「行動承認」などの「承認」に加え、やはり前章同様、ここでも「承認個別面談」をお勧めしたいと思います。ラインにおけるメンタルヘルス対策としても、これが現時点でベストの解だと思われます。
 定期的に、月2回〜週1回の頻度で、マネジャーが個々の部下と対話する。あらかじめその部下に即した「承認」の言葉を3つ、考えておきましょう。ここでも具体的な行動を観察した結果を伝える「行動承認」は非常に効き目があります。
 実際にやってみると、こうした「承認」を交えた個別面談では、部下は実に素直に仕事の進捗状況はもとより、今抱えている悩み事を、仕事だけにとどまらずプライベートも含めて話してくれ、マネジャーは的確に状況把握ができます。

鬱から復職の部下にも「承認」は使えますか?

 鬱休職からの復職は、難しい問題です。回復期に入ると本人は1日も早く復職したいと思われるものですが、

実際にはフルタイムの勤務は心身の負担が大きく、ちょっとしたきっかけで再度悪化してしまうことがあります。リハビリ的な勤務を経て慎重に本格的な復職のタイミングを見極めたいものです。
 いざ復職したら、普通よりこまめに様子を見て声がけをしましょう。本人の机を上司の机の近くに配置替えするなどもよいでしょう。
 よく「頑張れ」は禁句だと言われますが、逆に「では何を言ってあげたらいいの?」と困って声をかけづらくなってしまうようです。第2章に示したさまざまな「承認」では、「頑張れ」以外の「承認」の言葉が多数紹介されています。
 ぜひ、これらを使って細やかに声がけしてみてください。一般に、やはり「存在承認」「行動承認」「感謝」「Iメッセージ」などは、復職後の人にも素直に受け入れられ、静かなやる気につながります。
 一方で、「ラインケア」ばかり強調すると、本人の自助努力による「セルフケア」がなおざりでよいのか、と思われるかもしれません。やはりセルフケアは大事です。現代特有の、PCやスマホの使用からくる寝不足やストレスの問題、またバランスの良い食事や適度な運動など、本人の生活態度がメンタルヘルス疾患の予防にも治療にも大きく影響します。
 こうした自己責任のセルフケアの重要性を十分に啓発しながら、一方でラインケアにも取り組んでください。

(了)

「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51919833.html
 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51921667.html
第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51923763.html
第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
第七章 伝えたいことが「伝わる」伝え方(2016年1月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51934650.html


 正田佐与

 

 今、どちらの企業でも

「若手に言葉が通りにくくなった」

との嘆きの言葉がきかれます。

 小さいころからネット・スマホの世界に生きて来た若者世代。リアル人間関係の比重は、われわれの世代よりはるかに小さく、重視されなくなっているのです。
 その結果、会社に就職してからも上司の言葉が右から左へ素通り…。
 これでは、社会人はつとまりません。会社も回りません。

 とはいえ今の時代、ネット・スマホと共存していかなければならない、ではどうするか。
 そんなとき、またもや「承認」が功を奏します。「ウソだろ」と思われますでしょうか。

 「月刊人事マネジメント」誌に連載させていただいている、「上司必携・承認マネジメント読本」の4回目のゲラを編集部様のご厚意により「公開OK」でいただきましたので、転載させていただきます。


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 以下、本文の転載です:

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上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜

一般財団法人 承認マネジメント協会
理事長 正田佐与


第4章 「LINE世代」のマネジメントと離職防止


 インターネット、スマホ、とIT技術が私たちの生活に入りこんできたなか、近年とりわけ若手の日常を「激変」させたものがあります。それがLINE(ライン)というアプリです。

LINEは職場にどう影響しているのですか?

 ご存知のようにLINEはグループや個人間でメッセージや無料通話をやりとりするアプリですが、その大きな特徴は、メッセージを読むと「既読」マークがつくこと。それに返信しないことは「既読スルー」といって友人関係を大事にしない行為とみなされます。これがもとで若者たちはスマホ画面から目が離せなくなりました。
 スマホ特有の同時性もあり、LINEの若者世代への影響力は驚くほどです。それは職場でも同様です。ある部門で上司部下間の行き違いが起こると、それを若手目線で伝えるメッセージがLINEを通じて同世代間で飛び交い、他部署の若手が誤解したままになっているというケースがあります。
 「集団離職」にまでつながってしまうこともあります。上司への不満が若手グループ内でやりとりするうちに鬱積し、若手4,5人が一度に辞めてしまったというケース。筆者も昨年以来いくつかの企業で見聞きし、珍しいことではなくなっています。
 そこまで深刻でなくても、LINEで同世代の結束が固くなる反面、上司・先輩とのつながりが薄くなり仕事上の指導や経験の伝承がしにくいという傾向は広く見られます。LINEによってかつてない世代間の分断を招いています。また、「LINEいじめ」が職場で起こるケースもあります。
 LINE世代の登場はまだ新しい話題なので、はっきり確立されたマネジメントの方法論があるわけではありません。しかし、ー禺蠅悗侶屡 ⊂綮福先輩による「承認」 8鎚面銘漫´ぅ繊璽犲言―が今のところ有効です。

LINE世代をどうマネジメントしたらいいですか?


以下、順番に解説していきましょう。

ー禺蠅悗侶屡
 スマホ、とりわけLINEの使用方法について、ICTの専門家から若手に対して研修を行う。できれば同世代の先輩からも経験談を話してもらうとよいでしょう。また、上司・先輩もLINEを使えるようにし、若手と同じグループに入ってコミュニケーションの改善を図る企業がある一方で、LINEでの人間関係が煩雑だという社員からの訴えを受けて、「職場でのLINE禁止令」を出した企業もあります。

⊂綮福先輩による「承認」
 若手が上の世代と交流したがらないと先に述べましたが、実はそんな今どきの若手にも、「承認」は非常に有効です。「承認」をする上司・先輩には急速に心を開き、信頼してくれます。「行動承認」は世代を問わず有効ですし、とりわけ若手向けにお勧めしたいのが、「成長承認」。「…ができるようになったね」「成長しているなあ」といった言葉がけです。若い人であればあるほど、行動をとることによって自分の経験が広がり成長できることは大きな幸福感につながります。そして身近にいてそれをともに喜んでくれる上司・先輩は、信頼できる存在になるのです。
 「行動承認」や「成長承認」をベースにした「承認」は、「見ていてくれるんだなあ」という独特の幸福感をつくります。行動経験の少ない今の若い人であっても、職場のユニットの中で信頼する大人から日々の行動を「見てもらえる」というのは生涯初めての体験です。それによって「行動を通じて現実と格闘する」ことの面白さを学べば、それはLINEなどでのバーチャルな人間関係よりもはるかに大切にしたいものとなりえるのです。

8鎚面銘
 「承認」と並んでお勧めしたいのが個別面談です。会議では人目を気にして発言せず、1対1の場で初めて本当の心の内を打ち明けてくれるのが今の若手の特徴。ある営業会社では、課長が週1回全課員に個別面談をすることを義務づけたところ、離職が減ったそうです。先の「LINEいじめ」のような困り事の話も、こうした場で初めて出てきます。

ぅ繊璽犲言
 これは、少し説明が必要かもしれません。近年話題になるのが、「叱られ下手な子が増えた」ということ。叱責されるとその上司を恨んでしまい、その後ふてくされて、ちょっとした指導を受け付けなくなる、といいます。これは「ほめる教育」や、多くの時間をゲームやネットで費やし実体験が極めて少ないまま社会人になってきた、今の若い人の育ち方が影響しているかもしれません。
 こうした若い人を叱って行動の修正を図るのは過去より難しくなっていますが、お勧めしたいのが、複数の人が見守ることで、「叱り役」以外に「フォロー役」を設けておくことです。フォロー役の人は、叱責された若い人の傷ついた感情の受け皿となり、前向きの行動を促すとともに、叱り役の人に悪感情を持たないよう誘導します。ここで、フォロー役の人は若手に寄り添うものの、叱った内容については否定することなく、叱り役の人と同じ方向性を保つ必要があります。これを、「チーム・ティーチング」ならぬ「チーム叱責」と呼んでいます。

 この連載ではこれまで「叱責」については紙幅の関係で触れられませんでしたが、「承認マネジメント」の世界には「叱責」がちゃんと存在します。それも、メンタルヘルスやハラスメントへの懸念が先に立ち多くの上司が「叱る」ことを手控える昨今でも、「承認」をするマネジャーたちは一方でかなり部下を叱ることもしています。
 なお、若い人に限らず、職場で良い人間関係を維持しパフォーマンスを上げるには「5:1の法則」があります。「良いフィードバック:悪いフィードバック=5:1」。難しいとお感じになるかもしれませんが、すでに「承認」に取り組み始めたあなたなら、自然とこの比に近づけられることでしょう。

LINE世代は上司の承認を求めていますか? 

 実は想像以上に「承認」を求めています。そのことを示すデータがあります。
 昨年の新入社員を対象にしたジェイック社の調査では、新人は‖嵯匹垢訃綮覆梁減漾´⊂綮覆自分の成長を気にかけてくれる その会社で自分が活躍できるイメージが持てる―の3要素があれば、退職を考えるには至らないということが分かりました。このうち´△呂修里泙「承認する上司」を意味しているといえます。
 昔も今も、若者は「承認欲求」の強い存在であり、また「成長」も求めています。若者自身も「認めてほしい」という言葉を頻繁に使い、「承認」には驚くほど素直に反応します。
 昨年兵庫県のある大学では、退学防止に「存在承認」に取り組みました。教授陣が「〇〇君、おはよう」と学生に朝の挨拶をするようになったところ、退学者がそれまでの3分の1に激減した、ということです。また「承認」が浸透した職場では、若者たちが上司に心を開いて仕事の悩みはおろか、「恋バナ」までも打ち明け、「今の若い子は分からない」という一般の嘆きが嘘のようです。信頼できると認めた上司には反応するのも速いのが、今の若い世代であるようです。
(了)

 なんか今回は説明口調が先にたってあんまり出来のいい文章じゃないです
 書いてることは本当です。

「若者が上司の言うことを聴いてない」
 この事態に対して、若者の側に「傾聴研修」をする、という考え方もあるでしょうが、もっと有効なのが「上司からの承認」。

 脳の中で「自分を感じる機能(自己観)」をもつ領域は「内側前頭前皮質」といいますが(こんなの、おぼえなくていいですよ)、いわば「承認」に反応するこの同じ領域が、同時に自分の外部の規範を取り込む仕事もしている。ということを、『21世紀の脳科学』の読書日記でみました。
 つまり、「承認」によって自分の自意識を活性化させてくれる人の言うことは、若者にとって取り込むに値するということ。
 これが、「上司が承認をすると部下が話を聴いてくれやすい」ということのメカニズムです。


「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51919833.html
 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51921667.html
第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51923763.html
第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
第七章 伝えたいことが「伝わる」伝え方(2016年1月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51934650.html



(一財)承認マネジメント協会
 正田佐与

 「女性活躍」。

 どなたかが国連演説の中で「難民受け入れよりも女性活躍(国内問題優先)」と言って失笑を買っていましたっけ。。

 わが国の女性活躍の遅れからすると理の当然やらなければならないことなのですが、それが浮上するときの文脈などをみるとどこかスッキリしない感があります。


 ともあれ「月刊人事マネジメント」誌に連載させていただいている、「上司必携・承認マネジメント読本」の3回目のゲラをご厚意により「公開OK」でいただきましたので、転載させていただきます。

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以下、本文の転載です:
 
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上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜


一般財団法人 承認マネジメント協会 理事長
正田佐与


第3章 女性の活用と登用は「上司の眼差し」次第


 先にカナダで行われたサッカー女子W杯では、「なでしこジャパン」は準優勝でしたが、引き続き「日本女性の能力は世界トップレベル」であることを例証してくれました。しかしビジネスの世界では、わが国の女性の活用と登用は依然、先進諸国の中で大きく後れをとっています。
 こうしたなか、求められているのが環境要因としての「上司の承認」の効用です。


「承認」が女性活用にどう関わるのですか?

 女性の活躍は、出産や育児などのライフイベントに左右されやすく、そのため制度や施設などの整備が不可欠です。しかし、それらはハード面の課題なので分かりやすいのですが、上司の「承認」の有無は、ソフト面の見えにくい課題といえます。
 それはさまざまなハード面の整備を行った後にも厳然と横たわる根強い課題であり、実は根源的なものなのです。とりわけ管理職の意識の部分は変わりにくいことから、最近は「粘土層管理職」という呼び方もなされるようになってきています。
 わが国では女性が出産・育児期に退職する「M字カーブ」が顕著なことはよく知られています。しかし、出産・育児が本当に女性の退職の直接的な原因なのでしょうか。
 意外なことに現実には、日本の高学歴女性では家庭責任などのライフイベントよりも、仕事の不満や行き詰まり感が退職原因の大半を占めています。詳しくいうと、「女性が休職や退職をする確率が高いため、投資する対象とみなされず訓練を受け成長する機会が少ない」ことが、退職原因なのです。これを「不安の自己成就」といいます。
 訓練を受けない⇒認められていないと感じる⇒退職する⇒ますます訓練コストを絞るという負のループが存在しています。
 「訓練」とは重要性のある部署に配属するか否かも関わりますし、管理職からの日常の仕事の振り方にも「訓練」の要素があります。多くの男性管理職は「やはり女性より男性のほうがちょっとした仕事を頼みやすい」と本音を漏らします。
 「訓練を受けない」ことはまt、いざ社内にいる女性社員を管理職に登用する段に至っても、十分な能力や経験を積んでいないという形で壁になってきます。
 「認められたい」。マスメディアなどで女性活躍推進についてインタビューを受ける働く女性たちの切実な声が響くゆえんです。

「承認」がないと、どんな弊害が生まれますか?


 例えば中小企業で女性を活かしきれていないケース。優秀な男性はどうしても大企業が先にさらってしまうため、中小企業のある管理職は「われわれ中小は『優秀な女性社員と普通の男性社員』の組み合わせなんですよ」と自嘲気味に言います。ところがそうした現実をよそに、地方の多くの中小企業では依然、男性と女性との間に序列を付ける人事配置が行われています。能力の追いつかない男性上司の下で女性部下が実質的な管理職の職務を担い、現場に不満が渦巻いているというケースが往々にして見られます。
 また逆に、「機械的な女性登用の弊害」という問題もあります。一部官公庁や公的団体では、建前としての男女平等は浸透していますが、その結果若い頃からの訓練不在のまま本人の能力や意欲に関係なく、年齢順で女性を管理職に登用するケースもみられます。この場合も現場のモチベーションに深刻な影響をもたらします。
 一方、育児休暇から復職した女性社員への「過剰な配慮」により、責任のある仕事を与えないという現象も、本人の能力や成長意欲を認めない「承認不在」の現象といえるでしょう。
 「マミートラック」とは、復職後に負担の少ない仕事を与えられ男性社員とはっきりと差を付けられるキャリア形成の仕方を指す言葉ですが、この「マミートラック」に甘んじた女性のほうが会社には残りやすい、という指摘もあります。それまで男性並みにバリバリ働いてきた、仕事上の成長意欲のある女性は逆にそこで辞めてしまうのです。

「承認」によって、どんな効果がありますか?

 「行動承認」はバイアスをとる効用があり、「公正な評価」と「ダイバーシティ」の推進に大きく関わる要素です。
 これまで「承認」のトレーニングを受けた管理職の下では、研修直後から一転して「女性」への見方・関わり方が変わり、それに応じて女性社員の側も大きく成長したケースが多数見られました。例えば、

●個々の女性社員の動きがよく見えるようになった。その中で営業力の高い女性が一層活躍できるよう条件を整えたため女性の売上が飛躍的に伸びた。

●責任感のある女性を抜擢してリーダーに登用することができた。

●ネガティブな発言をするベテラン女性に「行動承認」で対応すると、俄然前向きな発言に変わり行動も改まった。

―などです。研修以前は、「女性」が十把一絡げにしか見えていなかったのです。
 コープこうべの元役員で、今年男女共同参画社会づくり功労者総理大臣表彰を受けた有光毬子さん(70)は、「結婚退職しか考えていなかった私に仕事の面白さを教えてくれたのは会社の理念を語って励ましてくれた上司の存在」と言います。
 またある営業職の女性は、管理職になる自信がなく悩んでいたときに外出先で自分の会社の社長に出会って名前を呼んでもらって「最近どう?」と聞かれ、「それだけで俄然モチベーションが上がった」と言っています。
 上司の期待に男性以上に敏感なのが女性。「承認」を導入したとき、部下世代では男女とも成長がスピードアップしますが、女性のほうがより大きく成長することが分かっています。「女性活躍推進」を、女性自身の側の努力に期待するのは一面的です。「上司の眼差し」が環境要因として極めて大きいことを管理者はしっかり認識すべきでしょう。
 では、上司は何から始めればいいのか?女性部下に対してこそ、お勧めしたいのが「行動承認―相手の行動を事実の通り記述的に認めること―」です。やってみると、「やったことを正確に認めてもらえた」と、女性たちが見違えるように生き生きと働くようになるのです。すべての「承認」の入り口として、「行動承認」にぜひ、取り組んでみてください。
(了)


「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51919833.html
 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51921667.html
第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51923763.html
第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
第七章 伝えたいことが「伝わる」伝え方(2016年1月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51934650.html



(一財)承認マネジメント協会
 正田佐与

 ふとTVから「承認」という単語が流れました。
 高槻の中学生殺人事件についての「クローズアップ現代」でスマホを持って漂流する中学生はじめ若い子たちの特集をやっており、筑波大学教授の土井隆義氏が「承認の質的劣化」という言葉を言いました。
 今の親子関係はフラットで、子供は過去ほど親に全面的に依存できない。勢い外の承認を求める。承認の質が劣化しているので、量で与えないといけない。
 ・・・と言うような趣旨でした。
 さて、この議論に同意してよいものかどうか。もともと、人は昔も今も根源的に「承認」を求める生物です。どうもそこが共有されていないまま、こんなふうに犯罪や問題行動の契機として「承認」を語る言説が溢れています。ふだんから「承認」という言葉に耳慣れていない、そのことについて考えたことのない一般視聴者にどれぐらい伝わったでしょうか。
 (またこのブログでの古くて新しい問題、「犯罪学」などの負の側から「承認」を語ると「承認」がおどろおどろしいものにみえてしまい、与え手の側の「やりたい」という動機に結びつきにくい、という問題もあります。)

 ともあれ「月刊人事マネジメント」誌に連載させていただいている、「上司必携・承認マネジメント読本」の2回目のゲラをご厚意により「公開OK」でいただきましたので、転載させていただきます。

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以下、本文の転載です:
 
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上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜


一般財団法人 承認マネジメント協会 理事長
正田佐与


第2章 「承認」の学習ステップ


 第2章では、「承認」スキルの習得について、「承認研修」の実際を通じて順に解説します。大きく4つのステップから成ります。

習得のために踏まえておくべきことは?

Step 1. 行動理論による「強化」の仕組みを知る

 心理学の行動理論では、「人は、行動した後に褒められると(ご褒美をもらうと/嬉しい気持ちになると)、その行動を繰り返しとる(強化される)性質がある」という法則(オペラント条件づけ)があります。まずは、この大原則を押さえていただきます。

Step 2.「承認」が人の働く動機づけの最大のものである(承認論)ことを理解する

 「承認」がすべての働く人にとっての根源的な欲求であることを、受講者自身の経験に照らし理解していただきます。金銭的報酬を得ることも、もちろん生活のためでもありますが、ひとかどの働く人として認められていることのシンボルでもあります。また精神的にも、労苦を伴った仕事が全く評価されなかったら、報われなかったら、誰しも深い悲しみを経験することでしょう。
 一方で「承認」の重要性を知ることは『両刃の剣』です。自分が認められたいという思いを募らせることは不幸なことでもあるからです。自分が「認める」側になり他人の「認められたい」を満たすことが、「承認欲求」を学ぶことの正しいゴールなのだ、ということも理解していただきます。


「承認」にはどんな種類がありますか?

Step 3. 承認の種類

 ここでいよいよ実際に使いこなすための知識の解説です。コミュニケーションの中での人を認める言葉、「承認」の代表的なものには、以下のような種類があります。重要な順になっています。

‖減濔鞠:あいさつや、名前を呼ぶこと、「最近どう?」など、相手が存在していることを知っていますよという意味合いのこもった日常的な声かけが「存在承認」です。すべての「承認」の中で最も基本的・根源的なものです。
行動承認(事実承認):存在承認と並んで最も重要なもの。「あなたは〇×しましたね」「してくれましたね」と、相手の行動したことを事実通り、記述的に言うものです。これは前述の「行動理論」を仕事の現場に応用したときに、「褒める」よりも「行動を事実通り認める」ことのほうが大の大人の場合、嬉しさすなわち「強化」につながりやすいことからきています。この後に述べる多くの「承認」は「行動承認」のバリエーションと考えられ、マネジャーが「行動承認」に重点的に取り組むと、前章で述べたような人々の目覚ましい成長が起こり、業績向上に直結します。
成長承認:「〇×ができるようになったね」「成長しているなあ」といった、相手の成長を認める言葉を言う「承認」です。とりわけ今の若い人は自分の成長を上司に認められたい気持ちが強いため、「成長承認」は有効です。
し覯名鞠:結果が出たときに言う「承認」。「やりましたね!すごい成果ですね」「よくやった!」など。当たり前のようですが大事なこと。
ゴ待・信頼:期待されると、それに応えようとしてパフォーマンスが上がる心の働きが私たちには備わっています(ピグマリオン効果)。ただし、根拠のない期待はかえって重荷になるもの。根拠を添えるには、△旅堝鮎鞠Г大事です。
ηい擦:人によっては言葉による「承認」よりこちらが嬉しい場合もあります。また「行動承認」をするうち、上司も「任せることが自然とできるようになるようです。
Т脅奸△佑らい:「行動承認」をしていると、自然とそれに伴って「感謝」の念が湧いたり、「大変だったろうなあ」と「ねぎらい」の気持ちが湧いたりします。これらは「行動承認」のバリエーションだ、と捉えます。こまめに相手の「行動」を認めていると「感謝、ねぎらい」も自然と出てきます。
╋Υ:相手の感情を共に感じること、あるいは理解すること。
感情を伝える(Iメッセージ):褒めることとは違い、「私は〇×と感じます」と、「私」を主語にして自分の感情を伝えます。嫌みにとられることが少なく、年上・元上司の部下との会話に悩む管理職にも使い勝手がよいようです。
Weメッセージ:「私たち」を主語にした言い方です。これも相手にとっては嬉しい表現です。
励まし、力づけ:「その調子です。続けてください」「あなたの判断は間違っていない」など、相手にエネルギーを与える言い方です。
褒める(Youメッセージ):「すごい!」「さすが!」など、よくある褒め言葉はここに分類しています。
第三者メッセージ:「お客様の担当者の〇×さんがあなたのことを『…』と褒めていたよ」など、お客様や他部署の人など第三者を主語にした言い方です。上司自身が「頑張っているな」などと言うと操作的に聞こえる場合がありますが、第三者が主語であると真実味があり、素直に喜べるものです。
その他:「話を聴く」「相手の考えを質問してみる」「相談する」「教えを乞う」「提案や意見を採用する」「決定の理由・根拠・背景・目的を説明する」「メールにすぐ返事をする」「叱る」など。
 研修では、上記の 銑を用例を添えて一覧にした表をお渡しします。このA4・1枚もののシートは忙しいマネジャーの役に立つようで、「机のガラスマットの下に入れて毎日見ている」「手帳のビニルシートの中に入れている」など、様々なやり方で研修後に手元に置いていてくれます。
 「べからず集」でなく「望ましいこと」の一覧なので、見ると自分自身前向きな気持ちになり、部下を「承認」しよう、という気持ちになれるのです。

実際に試してみたいのですが?

Step 4. 「行動承認」+「Iメッセージ」の実習

 Step 1.〜3.を踏まえ、最後に「行動承認+Iメッセージ」の実習をしていただきます。この実習の手順は以下の通りです。
/場の部下や後輩1人を選び、その人の最近行った良い行動を3つ、書き出してもらいます。
△修譴鉾爾辰董屬△蠅たい」「助かっている」「よくやっているなあ」といった、良い感情が自分の中にあれば、それも書いてもらいます。
 続いて、,鉢△鯊海韻新舛如■何唯荏箸料蠎蠅謀舛┐討發蕕い泙后
 相手は、部下の年齢、性別、人となり等を理解したうえで、部下になりきった状態でその言葉を受け取ります。
 この実習のポイントは「部下になりきる」こと。すでに功成り名遂げた管理職同士が互いを「承認」し合う形で実習を組むと、心があまり動かないことがあります。未熟な成長途上の部下にとって「承認」されることがどれほど嬉しいかを、管理職が自身の若い時代を思い出しながらしっかり体感していただくことがカギになります。実際にやってみると、女性管理職などでは感極まって涙ぐむことさえあります。
 ここまでくれば、あとは職場で「承認」を実践していただくのみ。部下の喜びの表情だけでなく、事後のプラスの行動変化まで観察していただけるといいですね。(了)


「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51919833.html
 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51921667.html
第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51923763.html
第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
第七章 伝えたいことが「伝わる」伝え方(2016年1月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51934650.html



(一財)承認マネジメント協会
 正田佐与

 「月刊人事マネジメント」誌(ビジネスパブリッシング社発行)7月号に掲載された、「上司必携・『行動承認マネジメント読本』〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜」第1章のゲラをいただきました。

 掲載から1か月たちましたので、同誌編集部のご厚意でこちらにも転載させていただきます。第一章は題して「『行動承認』は”儲かる技術”である」です。


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以下、本文の転載です:

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上司必携・『行動承認マネジメント読本』
〜人手不足チームのやる気と力の引き出し方〜


一般財団法人 承認マネジメント協会 理事長
正田佐与


第1章 「行動承認」は”儲かる技術”である


 生産年齢人口、若年労働者人口の減少に伴い、採用した人材をいかに余すところなく活用し戦力化するかは、人事部の方、そして管理者の方にとっても喫緊の課題でしょう。

 本連載では、人手が足りないなかでもチームのやる気と力を安定的に引き出して業績向上に寄与する「行動承認マネジメント」という手法をご紹介し、上司の立場におられる読者の皆様に職場の課題解決のヒントをご提供します。


「行動承認」って何ですか?


 「行動承認」とは、文字通り「行動を認める」ことです。

 一口に「認める」というと漠然としていますが、そこには「行動承認(良い行動を事実通り認める)」をはじめ、「共感する」「任せる」「力づける」、ときには「叱る」など、場面によって様々な言葉がけや行為が該当します。総じては「相手の存在価値や良い行動を認めること」といえます。

 この中の「行動承認」について、なぜ、部下を持つ上司のあなたにそのマネジメント手法をお伝えしたいのかというと、行動こそが承認を通して最も「人」の成長を促す基準だからです。

 そして、実はこの「行動承認」は、単に人の行いを褒めるだけの”甘い”マネジメントではなく、極めて業績向上の効果が高い手法であることが実証されています。

 過去13年にわたって、「承認」を導入した職場では、製造・銀行・生保・コールセンター・OA機器販売・福祉・自治体など業種を問わずに、売上・品質・生産性・人材定着率といった各種指標が上がることが報告されてきました。そこでは「人」の成長が促され、それも女性・若手・外国人・障がい者…といった従来マイノリティだった人々が成長し、その力が業績を押し上げたのです。

 業界・業種の個別性、企業戦略の適否を別にすると、「人の成長」そして「良好な人間関係」「マネジャーの求心力」が業績向上に大きく寄与するということは、おそらく時代を超えて変わらないことなのでしょう。そして、上司による「(行動)承認」というシンプルな行動規範こそがそこで”儲かる技術”としての大きな役割を果たすというわけです。

 こうした過去の事例も踏まえて、「行動承認」の具体的な手法とその応用により組織に起こる各種の効用について、これから述べていきたいと思います。

 
 なぜ「承認」が業績につながるのですか?


 上司による「承認」は部下たちの前向きの行動を増やすとともに、部門内の協力行動を増やし、情報共有を増やし、極めて効率のよい組織運営につながります。なぜでしょうか?

 そのメカニズムが科学的に解明されているわけではありませんが、ここでは有力とされる3つの点を指摘しておきます。

 嵒坩造米本人」を能動的に変える

 例えば、アメリカ人と日本人では生得的にも成人してからも大きく気質が異なるといわれています。文化心理学、遺伝子学などの研究でも、平均的な日本人はアメリカ人に比べて不安感が高く、他人からの評価を気にかける人が多いことが分かっています(図表)。

 「承認」はこうした日本人特有の不安感を払拭し、プラスの行動量を増やす働きがあると考えられます。実際に、「承認」をトップ以下全社的に取り入れた職場の例では、社員の失敗を恐れずチャレンジする気風が生まれ、逆にそれまではよくみられた、仕事を振られて尻込みsるうような社員の後ろ向きの発言がなくなった、ということです。

脳が成長することの幸福感

 「脳は貪欲なまでに成長を求める臓器だ」という脳科学者の言葉があります。そうした脳の性質から成長が人の幸福感をつくること、さらに受験勉強的な知識の蓄積ではなく、行動を通じての学びによって脳は最も成長することが分かっています。

 「行動承認」では行動することを尊び、行動を奨励しますが、身近な他者から行動と成長を励まされることは、特に若手にとっては大きな幸福感につながるといえそうです。このことは離職防止の回で詳しく述べたいと思います。

信頼⇒幸福感⇒協力行動の促進

 近年、信頼ホルモン、共感ホルモンと呼ばれる女性ホルモンの1つ「オキシトシン」という物質の作用が大きくクローズアップされています。人は、他人との間で信頼する・される経験をすると、男性・女性を問わず血中にオキシトシンが分泌され、幸福感を覚えます。幸福感が高いと身体の行動量が増えることも分かっており、このことも「承認」のある職場の業績全般が上がることの根拠の1つとなりそうです。

 幸福感が高まることのもう1つの効用として、他人に親切な振る舞いをするようになることが挙げられます。「承認」が定着した組織では、人々が成長するだけでなく、例えば困っている同僚がいればさっと近寄って手伝うというような「協力行動」が増えます。

 「行動承認マネジメント」では、お世辞を言うのではなく事実に基づいて相手のプラスの行動を言うことを奨励します。間違いのない事実の言葉ですから、それは言われた相手が上司のあなたの存在を信頼することにつながります。すると、幸福感が高くなり、互いに協力し合う、有機的な職場が生まれるのです。


どうすれば実践できるのですか?

 こうした「行動承認」による一連の職場改革を起こすためには、まずはマネジャーが一定の行動規範に沿って適切な言葉がけや行動をとり続けること。そのために適切な教育プログラムを施すことが大切になります。

 しかし、日常の多くの実務に忙殺されているマネジャーがコンスタントに実践できるということを考えると、あまり専門的・複雑になりすぎず、シンプルな法則から成り立ったプログラムであることも大切です。

 では、どうすれば職場のマネジャーが行動承認マネジメントを実践できるようになるのでしょうか。まず簡単にそのポイントに触れておきます。

●行動理論による「強化」の考え方を理解する
●「承認」が人の働く動機づけの最大のものであること(承認論)を理解する
●「行動承認」をはじめとする「承認」のバリエーションを理解する
●「行動承認」+「Iメッセージ」を使った実習で部下の心にどう働きかけるかを体感する


 次回は、上記のような「行動承認」をはじめとした「承認」の具体的な学習ステップを、実際の研修の順序に沿ってお伝えします。

(了)



「上司必携・行動承認マネジメント読本」シリーズ全体の構成は:

第一章 行動承認は”儲かる技術”である(2015年7月号)
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 第二章  「承認」の学習ステップ(8月号掲載)
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第三章 女性活用と登用は「上司の眼差し」次第(9月号掲載)
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第四章 LINE世代に対するマネジメントとは(10月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51925545.html
第五章 「踏み込みすぎない」メンタルヘルス対策(11月号掲載)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51927183.html
第六章 部下の凸凹を戦力化に転じる(12月号掲載・本記事)
 http://c-c-a.blog.jp/archives/51932814.html
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