正田佐与の 愛するこの世界

神戸の1位マネジャー育成の研修講師・正田佐与が、「承認と職場」、「よのなかカフェ」などの日常を通じて日本人と仕事の幸福な関係を語ります。現役リーダーたちが「このブログを読んでいればマネジメントがわかる」と絶賛。 現在、心ならずも「アドラー心理学批判」と「『「学力」の経済学』批判」でアクセス急増中。コメントは承認制です

カテゴリ:学びに感謝 > 社会人のための「小保方手記」解読講座

 今朝iPadを開くとこんな記事が「グノシー」から届いていました。


 「STAP細胞ビジネス」がついに欧米で始まった! 小保方潰しに没頭した日本は巨大マネーもノーベル賞も逃す羽目に?」
>>https://gunosy.com/articles/RoXC9


 この記事の筆者は(文=王山覚/グローバルコンサルティングファームに勤務するビジネスウォッチャー)となっており、肩書はなんだかすごそうですが、上田眞実氏大宅健一郎氏に続く新たなトンデモライターの出現です。

 
 わたし自身はSTAP細胞ネタは重要でもないし単なる目くらましの気すらして、早くこの話題から離れたいのです。しかし「あるある」の方々が絶え間なく話題づくりをして世論をかく乱します。


 たまたま上記の例は「グノシー」ですが、このところビジネスジャーナル上田眞実氏大宅健一郎氏の「STAPあるあるネタ」が「Yahoo!ニュース」「MSNニュース」等、大手ニュースサイトに上がってくる例が続きました。

 こうしたニュースサイトは、要は儲け主義なのです。記事のアクセス数が多ければ広告主からの評価が上がるので、「STAP―小保方ネタは美味しい」ということです。また、ニュースサイトの運営というのは少ない人員でやっており、「ビジネスジャーナル」などは2人でやっているのだそうです。勢い、他のニュースサイトの記事を裏も取らずに転載することになります。

 こうしてネットデマは作られていくというお手本。



 国会では、山本太郎氏が「小保方晴子氏を潰した理研が「特定国立研究開発法人」(スーパー法人)になるのはけしからん!」と候補から外すよう求める動議を内閣委員会に出したんだそうな。



>>http://biz-journal.jp/2016/06/post_15341.html

 これはおなじみ上田眞実氏の記事。


 STAP―小保方ネタ、国会に上陸。


●STAP特許のありえない大ウソと、STAPあるあるウイルスに罹患したひとのこころの病
 

 さて、上記のグノシーの記事にある「特許ネタ」は、これまで当ブログでは紹介していなかったのですが、先月ビジネスジャーナルが騒いでいました。

「STAP細胞の特許出願、米ハーバード大学が世界各国で…今後20年間、権利独占も」(by上田眞実)
>>http://biz-journal.jp/2016/05/post_15184.html

 ・・・・・あるあるの方々の情報を全部フォローしてご紹介する気力が正直いってないのです……

 
 で、手が回りきらないので上記の記事の裏取りはしないでほっておいたところ、スカッと気が晴れる専門家の検証記事が出ました。

「STAP細胞の特許と論文 見比べて初めてわかる図版の不自然さ」
>>http://bylines.news.yahoo.co.jp/takumamasako/20160603-00058326/

 正しい記事なのでタイトルを太字にしております(笑)STAP事件を発生当初から追っていた科学ライター、詫間雅子氏の記事。丁寧な検証の結果、衝撃的な結果が出ています。

 STAP論文で正式に不正と認定された4つの図版のうち、3つが特許の書類にそのまま残っている。
 STAP論文の図版は「おえかき」か

 ぜひ、この内容をみるために上記のリンクをクリックして記事を一度ご覧ください。
 どれだけ悪質なウソか。

 専門家がみるとこれらは一発で特許却下になるレベルなのだそうで、ハーバードというかブリガムウィメンズ病院がどれだけお金を使って話題づくりをしたかわかりませんが、だませるのは素人だけのようです。


 友人は、上記の詫間雅子氏の記事の内容などを米国の弁護士の友人に送ると言っています。確認が取れたら特許は一発アウトであろうとも。


 しかし。

 以前にも少し触れましたが、
 「STAPあるあるウイルス」に感染すると、人間がおかしくなってしまう。

 という例を、最近も新たに1例、友人で体験しました。


 私と同年代の既婚、個人事業者の女性です。
 この人が上記の上田眞実氏のSTAP特許の記事をフェイスブックでシェアし、自分のコメントとして
「これでまたアメリカがボロ儲けってことでしょうかねー」
と、揶揄うような言葉を添えていました。

 わたしはそれにコメントを入れ、そうではないということを説明しましたが、彼女は会話しているふりをしますが受け付けていないのでした。

 記事内容をもとに次から次へと質問を投げつけ、わたしがそれに答えても回答への応答はなし、次の質問を投げつけるのみでした。明らかに回答は読んでおらず、単なる悪意を投げつけられたとしか認識していないのでした。そして自分も手りゅう弾を投げつけて反撃するのでした。コミュニケーションではなく、勝ち負けの問題になっているのでした。

 なんでこんなふうになるんだろう。


 以前は、というかほかの点では聡明だった女性でした。哲学カフェを主宰もしていました。


 無力感でした。わたしがこれまでのノウハウを基に、丁寧に丁寧に、相手へのリスペクトを欠かさない姿勢で語っても、逆に相手は当方を「下」にみて嘲笑するのみ。

 単にネットでみたしょもないデマジャーナリズムを信じこみ、普通の誠実な人を信じなくなるとは。

 デマジャーナリズムの中にある、嘲笑、揶揄、居丈高、センセーショナリズム、そしてマスメディアより自分たちが偉いんだという「上から目線」に感染したとしか思えないのでした。

 自分がすごいことを知っている特別な人間だという思い込み。
 まるでSTAPを妄想した元研究者の人格をコピーしているようです。

 そして、単なるナルシシズムを通り越した攻撃性。
あとで友人と話しました。これは「下剋上感覚」なのではないかと。
研究者、理研、マスメディア。普段ならどうやっても太刀打ちできない大きな権力を持った存在に、「STAP細胞」「小保方さん」という題材は、「自分は不遇だ」「抑圧されている」と思っている人にとっては意趣返しするための有効なネタだ、と捉えられているのではないかと。

でも、STAPがこういう人間を作ったのです。こういう人が今後、Yahoo!、MSN、グノシーといった大手ニュースサイトを通じて次々つくられていく可能性があります。


 このブログを読んでいるあなたの隣の人も、既にそうかもしれません。

 そして国会にまで行っているし。


 ほらね、3月ごろブログに書いた、

「元特ダネ記者のわたしが『まずい』と思うことは多分本当にまずいのです」

当たってたでしょう?


 STAP細胞自体は科学的決着がついている問題なのです。わたしはそれより、人びとの「こころの病」の問題のほうが怖い。

 久しぶりにまたSTAP関係の話題です。
 今日、たまたま普通の社会人(注:ここでは、STAP/小保方擁護派でも批判派でもなく、特段強い関心があるとはいえない企業人の意)のお友達のフェイスブックページに遊びにいったところ、

「 ちょっと質問^_^;ドイツとアメリカでスタップ細胞実験成功って本当ですか?」

と、ご質問を受けました。

 すっかりこの分野の人とみられてしまっているなぁ。
 でもこうして真正面からご質問いただけるのは幸せなことなのです。

 ちょっと居ずまいを正したかんじで、こうお答えしました。

「はい、ご質問ありがとうございます。お答えします。
ネットでまことしやかに言われてますが、あれはデマです。
アメリカとドイツ、どちらの論文もまったく実験方法が違い、スタップ細胞ではありません。
ただメカニズムのコンセプトは似ていて、外部刺激で細胞が初期化するとか万能細胞になるとかいうことをめざしています。
ただこの種の実験はもう10数年来あちこちで行われています。スタップ細胞だというためには実験方法が同じでないといけません。
論文を最後までちゃんと読むと違うものだとわかるのですが、小保方さんの熱心なファンの方が部分的な一致だけでスタップだスタップだと騒いでいらっしゃるのです。」



 半可通のくせに、生意気にねえ。
 実は、本当にたまたまだったのですが、この同じ内容の質問をSTAP細胞に詳しいある科学者の方(先生の身辺に危険が及ぶかもしれないので、仮に「ドクターX」としておきますね)にしていて、それへの回答がけさ、返ってきてそれを読ませていただいたところだったので、割合自信をもってすらすら答えられたんです。X先生からのご回答はもっとはるかに専門的な長文のもので、上記のはわたしが勝手にそれを素人言葉で縮めてしまいました。

 有り難いことに質問者のお友達とそのやりとりを読まれていたお友達の方々には、このご説明でご理解いただけたようです。


 このSTAP細胞をめぐる言説というのは今、本当に特異な状況になっています。
 大手メディアは、黙殺。そしてネット上には、「STAPあるある」の言説があふれています。で、そちらはデマです。

 例えばマスコミが電通とかロスチャイルド(?)に支配されていて信用ならん!と思ったとき、これまでのわたしたちだったら「じゃあネットをみてみよう。そちらのほうが真実だろう」と思います。ところがそういう過去のノウハウがまったく当てはまらないのが、今のSTAP細胞・小保方晴子さんをめぐる情報です。

 ドクターXら少数の心ある科学者が匿名のグループで運用しているブログがあり、それによると、小保方さん擁護の総本山のようなブログがあります。宣伝する気もないので名前は出しませんが、そのブログのコメント欄というのは、複数の擁護派の非専門家いわば素人の人がコメントしあい、科学的に間違ったことを言い合います。要は、上記のアメリカとかドイツの紛らわしい論文をネタに、

「これで小保方さんの正しさは証明された!」
「日本では大きな力が働いて小保方さんを潰した!」

とか、わいわい仲良く言い合っているわけです。
 そこへ、ドクターXのような研究者が、「いやそうじゃないよ。科学的にはこうだよ」ということを言うと、その素人の方々が総攻撃してその人を叩き出します。それだけでなく、ブログ主は「アク禁(アクセス禁止)」という手段で、気に入らないコメント者を締め出すことができ、実際にそれをやって締め出しています。結果、コメント欄は素人だけになり、科学を装った似非科学コメントで溢れるそうです。

 それだけではありません。
 なんと、これまで小保方さんを実名で批判した科学者には、擁護派の方々は脅迫状を送ったり、Twitterで「死ね」とツイートしたり、勤務先の大学へメールして圧力をかけたりするんだそうです。そのためにブログ閉鎖に追い込まれた科学者の方もいるそうです。

 そうして、ネット上では小保方さん同情論・擁護論だけが幅を利かせることになります。


 えっ、正田はどうかって?

 まあ、老い先短い身なので、「どうぞ、やるならやってください」という心境で、実名で批判しております。
 「小保方さん」も「STAP」も割としょうもない問題ではありますが、言論統制というのは、いやですね。

 そんなことをやっていると案の定自分の著書のAmazonページに「呪いレビュー」を書かれましたけど(苦笑)

 
 『ダメ情報の見分けかた―メディアと幸福につきあうために』(荻上チキ他、NHK生活人新書、2010年)を久しぶりに手にとりました。
 たしか震災の年の6月、「情報とどうつきあう?」のよのなかカフェの時にこの本を参照した記憶があります。

 ここでは、「ウェブ流言」というものにも触れていますので、その部分を引用してみましょう:

「インターネットが普及してから、これまで数多くの流言やデマがウェブ上に広がってきました。もちろん流言やデマは、ネットが普及する以前のどの社会にも存在する、普遍的な現象です。しかしインターネットは、流言やデマの拡散を様々な形で強化してしまいます。短期間でより多くの人たちの目に留まるようになり、そのログをいつまでも残してしまうためです。

 そうしたインターネットと付き合うには、マスメディアに『批判的』で、『多様な解釈』をすることで『抵抗』していくとする、従来の『反権力』的なメディア・リテラシー論の枠組みだけでは不十分です。これまで以上に、『大きな権力に騙されない』といった気構えや能力だけではなく、『隣の誰かに騙されない』ための気構えや能力が必要となります」
(『ダメ情報の見分けかた』pp.31-32)


 ね?上で言ってることと一緒でしょ?
 要は、この問題に関しては、「大手メディアがダメだからネットで見よう」という、「AがダメだからB」という思考では、ダメなんです。ネット上に「ためにする情報」を確信犯的に流している方がいらっしゃるので、今、ネットはデマだらけなのだと思ってください。

 で、読者の利便のためにその「ためにする情報」を確信犯的に流す代表格の方のお名前を出しておきます。

 まずは、前にも名前をお出ししましたが自称ジャーナリスト(女性)の上田眞実(まみ)氏。別名「木星通信」。この方が、アメリカとドイツの論文を「どうしたらそこまで『誤読』できるの?」というぐらい誤読して拡散した張本人の方です。(これは人格批判ではありませんからね、単に行動をトレースして言っているだけです。)
 それから、これも自称ジャーナリスト、こんどは男性の大宅健一郎氏。この方も小保方さん擁護の記事をやたらと書いてはりますがほとんど根拠はありません。苗字から、大宅壮一とか映子の縁者なのかとうっかり思ってしまいますが違うようです。紛らわしいですネ。

 上記のお二人の「自称ジャーナリスト」が、これも以前に触れましたが(株)サイゾー運営の「ビジネスジャーナル」という情報サイトに頻繁に寄稿します。だからこのお二人プラス「ビジネスジャーナル」が発信源ともいえます。このサイトも、名前からして一見ニュースサイト風ですが信憑性は非常に低いところだといわざるをえません。

 あとは有名人で、前にも出した武田邦彦氏、青山繁晴氏、西岡昌紀氏も盛んに小保方さん擁護の論陣を張ってらっしゃいますが、内容をよくきいていただくとわかりますが根拠はありません。また、日本全国回ったことが自慢の最近落ち目の地域エコノミストのMK氏もネット上で盛んに匿名で擁護してはります。別にいいです、家に火をつけられても。


 
 もうひとつタイトルに「『あの日』症候群」とつけてしまったので、それについても書きたいと思います。

 小保方さんに騙される人たち。うっかり同情してしまう人たち。
 過去のブログ連載や著書にも書きましたが、非常に多様な人たちが「とりこまれやすい」因子をもっています。

 まず、高齢者。
 小保方晴子さんを自分の娘や孫のように感じ、「娘や孫がいじめられている」と受け取ってしまう。
 高齢になると人は細かいことを考えずポジティブになるので、「研究で少々ミスがあっても不正があっても、STAP細胞が存在するならそれでいいじゃないか」と考える(科学者サイドからみると、これは非常に悩ましい思考のようなのだが)その人たちにとっては、擁護派”ジャーナリスト”たちの「STAP細胞はある!」言説は、細かいロジックはどうでもよく喜ばしいことなのだ。「振り込め詐欺」に騙される層の人と重なる。
 なんらかの持病を持っているので、それをSTAP細胞が治してくれると考えている。小保方さんが「若い」ことも、なんとなく「若返り」作用がありそうで期待できる。

 それに、アスペ気味の理系男子。ブログなのでぶっちゃけ「アスペ」って書いてしまいますね。
 実は「アスペは詐欺に遭いやすい」これは常道なのです。過去に漁った発達障害関連の文献に出ていました。わたしも身近な高学歴男子で詐欺に引っかかりそうになったのを必死で止めた経験があります。小保方さんに高名な学者さんもたくさん引っかかりましたが…やめとこ。

 著書にも書きましたが、美貌正社員女子(「キラキラ女子」)。
 美貌に頼って上司の覚えめでたく、正社員・管理職として活躍。しかし自分のその地位は上司のご寵愛に頼る非常に不安定なものだとわかっている。ちょっとしたきっかけでポイと捨てられるとわかっている。その彼女らの不安心理に見事にフィットするのが小保方さんの手記『あの日』です。

 その他、大組織からスピンアウトした転職組、個人事業者の方々。
 給与や福利厚生のいい大組織を離れるには何らかの挫折があるものですが、その挫折経験のトラウマやら現在の境遇への不満が『あの日』に触れたときにワーッと出てきてしまう。自分を重ね合わせてしまう。そして、彼ら彼女らは大抵、「自分は悪くない。当時の上司や同僚が悪い」と思っていますから、それと重ね合わせて「理研けしからん!若山許すまじ!」とやる。

 ・・・・

 ほかにも、難治性の病気や障害をもった人で、「STAP細胞なら、治してくれるかも」と期待を託す人は、下手するとみんな小保方さん贔屓になるのかもしれません。知人のそのまた知人に、iPS細胞の治療の適応の病気なんだけれど状態がわるすぎて治療してもらえない、という人がいたそうですが、その人はもう、「iPSはヒドい。STAP細胞なら治してくれるかもしれない」と思っているんだそうです。

 そのあたりは、お気の毒なことですがiPSの臨床応用は慎重に慎重にすすめられていて、やたら高いところで適応の「足切り」をしてしまうところが確かにあるのかもしれません。でもそれはiPS細胞の罪でもないし、山中伸弥教授ら京大iPS細胞研究所の罪でもありません。そして、STAP細胞はほぼ「ない」細胞なのですが、仮にあったにしても臨床応用されるのは遠い遠い未来の話です。
 

 要は、「詐欺は人の弱いところにつけこむ」。

 身内に病気の人がいると高額の壺を買わされるように、STAP・小保方さんの場合は、身体の病気だけでなく心にもちょっとでもトラウマがあると、そこに入り込んできます。脆弱なところが1つでもあったら、危ないと思わなければなりません。

 わたしも、優秀な「承認リーダー」でこの人は大丈夫だろうと思っていた人が「小保方さんのあの件は、単なるケアレスミスですよね」と言っていて「えっ」とのけぞった経験をしましたので、「この人は大丈夫だろう」というラインが、この問題は「ない」のだな、と思いました。


 以上は、「こういう因子をもった人が巻き込まれやすい」という話ですが、じゃあ巻き込まれたらどうなってしまうかというと、それが「『あの日』症候群」です。
 すなわち、やたら感情的になる。やたら一方的にしゃべったり、情に流されて相手の言い分を受け付けなくなる。合理的に判断し、行動していたその人の面影は微塵もなくなる。ネットのデマを無批判に信じ込み、そしてネットデマの中にある2ちゃんねる的な嘲笑的な傲慢なスタンスも学習してしまい、事実に基づいて丁寧に議論する人を嘲笑するようになる。自分のほうがワイドショーレベルの低次元な思考法をしているのに、です。


 残念ながらこうなると、宗教談義をしているのと一緒ですね。政治と宗教の話はしない、と取り決めをするように、「小保方さん・STAP細胞」の話題を避けるしかありません。しかし、信じているご本人は宗教だと思っていないので、問題を現実とリンクさせます。「理研けしからん!Wけしからん!」で、下手すると焼き討ちしに行きかねない勢いです。

 3月末、理研OBの男性が告発していたES細胞窃盗事件の捜査が終結し、玉虫色のままになりましたが、この告発した男性は郷里で自宅に石を投げられたそうです。そういう本当に怖い世界です。


 わたしは、某岸見先生の唱道するアドラー心理学――アドラー心理学全般ではなく、「岸見アドラー心理学」と呼ぶべきなのだと思う――も、その種のラジカルな新興宗教に近いものだと思っていますが、ネットでそういう新種の「教団」が短時間で形成されてしまう時代です。


 というわけで、このブログを読んでくださる長年の友人たちは、もう既に連載を通じてこの問題に免疫ができていることと思いますが、是非周囲の方にご注意喚起ください。『あの日』は、心身に有害な本です。今からは古本で廉価で出回ると思いますが、免疫がない状態で読むことは厳にお控えください。
 
 


 
 

 前2つの記事(『アリストテレス『ニコマコス倫理学』を読む』読書日記前後編)の読書は、このところのわたしによい示唆を与えてくれました。
 すみませんリンクを出しておきますね
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939597.html (前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939825.html (後編)


 「こころの栄養になるような良書を読みたい」と思っていたのもたしかですが、目下のテーマ「小保方さん・STAP事件」についてのヒントを探していたのもたしかです。


 で、結論としてはヒント、大ありでした。
 

「アリストテレスはこの徳の学習における魂の発達の初期段階により大きな注意を払っており、教室での徳の教育のためには、「聴講者の魂は習慣によってあらかじめ、美しい仕方でよろこび、かつ嫌うように準備されていなければならない」ことを強調する。」
「性格の徳とも関係することであるが、喜ぶべきものを喜び、嫌うべきものを嫌うことが最も重要なことであると考えられる。」
「徳に基づく行為は美しく、また美しいことのために為される。」
「子供は「カロン(美しい・立派な)」といった言葉、あるいは「アイスクネー(みにくい、恥ずかしい)」といった言葉を対象や行為に適用する仕方を学び、「美しい、立派な」「みにくい、恥ずべき」といった事態を徐々に了解できるようになっていく。その結果、「美しい、立派な」行為へと動機づけられ、「恥ずべき」行為を避けるようになる。したがって、どのような現象や行為を「カロン(美しい)」と捉えるかに習熟していくことは「思慮」の能力と密接に結びついており、「思慮」の機能の成立は情念や欲求の訓練と切り離すことはできない」


 このあたりの言葉を書きうつしながらわたしが何を考えていたのかというと…

 「不正をしない教育」には何が必要か、ということでした。言い換えれば「高い倫理性を備えさせるための教育」ともいえます。

 それは「美しい」「みにくい」ということへの感受性を育て、美しいことを喜ぶと同時にみにくいことを嫌うように仕向けること。その営みが不可欠になると。

 ここで「嫌う(嫌悪)」という要素が入ってきます。

 実は、わたしが自分で「小保方さん」についてなぜ嫌悪感を禁じ得ないか。それを延々と考えるうち、この「教育において『嫌う』ように仕向ける必要があるからだ」ということに行き着いたのです。わたしの中の「教育屋気質」がそこに反応するわけです。

 そこは、ほんとうは「罪を憎んで人を憎まず」というのが正しいのだろうけれども、この言葉もけっこう「誤読」されていて、本来は、人を憎んではいけないが罪は憎んでいい、いやむしろ憎む必要があるのです。行為は憎んでいいのです。それがなんとなく、罪も人も憎まない方がいい、のように理解されてしまっているところがある、言葉の語義を離れて。要は「まあまあ」と火消しにまわって、ネガティブ感情は全部良くないよ、と言っているような感覚です。

 ここでいえば「不正」という行為は憎む必要がある、嫌悪する必要がある。それらの甘い誘惑に耳を貸さない人になるために。

 それをまだ感受性の柔らかい子供や若者のうちに叩き込まないといけないわけですが、そこへ昨今の「小保方さん同情論」があり、「可愛い」「可哀想」さらには「きっと悪い人ではない」「罪のない間違い」という、「憎む」対象とは程遠いイメージが入ってきます。

 学問の府の中では「絶対にしてはならない、截然と一線を画すべきもの」という教育をしても、世間一般の、下手をしたらマジョリティのイメージとしては、そうではありません。学生が家に帰ったらお父さんお母さんお爺ちゃんお婆ちゃんが、そう思っていない可能性があるのです。晩御飯を食べながら、「小保方さんは可哀想にねえ。純粋ないい人なのに」と話題にしているかもしれないわけです。

 それが、こわい。教育を施す側からしたら。


 さきほど、「小保方さん」への嫌悪、という言い方をしたのは何故か。「行為」だけでなくカギカッコつきの「存在」まで広げて嫌悪するような言い方をしたのは何故か。

 それはわたしからみて、「小保方さん」とは既に「一個人ではない社会現象」だからです。認定された不正の事実」にとどまらず、その後2年たってもまだ再燃し続ける、「無実を訴えるご本人の言い訳自己正当化のデマゴーグと、それを擁護しデマを流し続ける集団のパトス(情念)の集合体」という奇妙なモンスターになっているからでしょう。

 その集団のパトスが、下手をしたら自分のごく身近なところにも入り込んでいるかもしれない。

 例えばそうした人びととそれと知らずに一緒に仕事をする羽目になるとしたら。
 わたしは、過去に心理学セミナーにかぶれた人びとと仕事をした経験を思い出し、底知れぬ恐ろしさをおぼえます。

 
 健全に「不正への嫌悪」を共有できる人とだけお仕事できたらいいですが。同じ倫理観を共有し、過剰に疑心暗鬼に陥ることなく、性悪説を前提とすることなく、サクサクストレスフリーでお仕事できると思いますが。


 榎木英介氏『嘘と絶望の生命科学』(文春新書、2014年7月)には、「ピペド(奴)」という言葉が出てきます。将来への見通しも立たず、ひたすら毎日ピペットを振り続ける若手研究者の日常。その彼ら・彼女らにとって、下手をしたら「不正」の甘い囁きは魅力的です。


 「小保方さん」――「晴子さん」といったほうがいいのだろうか――は、こうしてわたしたちの日常に奇妙に影を投げかけ続けます。


「余話」を結局シリーズ化しました

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(1)二つの原風景の話

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51938782.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(2)『あの日』に至るまでのわたしの流れは

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939260.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(3)じゃあなんで書きはじめたのか―科学者・科学ライターの「言葉」の限界

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939319.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(4)「研究不正」した人が「アイドル」という現象が社会にもたらすもの

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939444.html
 
◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(5)「捏造」と「データ不在」のオンパレード――やっぱり基本情報”判決”を読んでみよう

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939558.html


◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(6)アリストテレス曰く、不正は嫌悪するのが正しい

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939831.html

 1つ前の記事で「小保方晴子さんは、『研究不正』をした人です」と書き、それについて「研究の世界での判決のようなものが出ていますから」とも言いました。

 で、その「判決」のところをあまり詳しく言っていませんでしたので、それを少し詳しく書いた、Kindle本の中の一節を今日はご紹介しようと思います。ここは、ブログ連載では触れていなくて、Kindle本化するにあたり加筆したところです。

 第四講2.2)、「理研調査委報告書でみる、小保方さんの「捏造」「研究不正」という項目。

 Kindle本をダウンロードしてくださった方も、この箇所までは読んでくださらなかったんじゃないかなー。

 親しい友人と話していますと、今も「小保方さんのあのSTAP論文は単純ミスが重なったんじゃないの?」という見方に出会います。

 いえ、「公式に認定された事実」からすると、STAP論文は捏造だらけ、真っ当な部分がほとんどないような論文だったんです。そして10数か所も認定された画像の捏造あるいは間違い(不正とは断定できないもの)の責任はすべて小保方さんにあります。いわば「作りまくった」んです。そんなこんなで、「公式に認定された事実」と、「一般に信じられていること」とのギャップにがく然とします。

 その「公式に認定された事実」が、今からみる「理研調査委報告書(桂報告書)」です。理研側の文書やんけ、とは言わないでください。ちゃんとした外部専門家による調査委であり、この作成にあたっては小保方さんにもヒアリングし、小保方さんも少なくとも2つの捏造を自分がやったことを認めています。もちろん弁護士も入っています。

 これは、「研究不正」の世界で一般に判決のようなものとして通用するものであり、さすが敏腕弁護士を4人も抱える小保方さんもこの文書に関して異議申し立てをしていません。ですので、この文書に書いてあることは「事実」として前提としてよいのです。

 ここまで、よいでしょうか?

 最近でもこの「桂報告書」の内容があまりにも一般に知られていないことを知りました。小保方さんは、ここで認定された事実のほとんどを『あの日』には盛り込まず、ただ「ES細胞混入は自分ではない」の部分だけを主張しています。

 それだけをみると、「ES混入をしていない小保方さんは、潔白なんだ。不正なんてなかったんだ、全部冤罪だったんだ」とみえてしまうかもしれません。

 しかし、ES細胞混入以外の実にたくさんの「捏造」および「不正と断定できないがグレーの箇所」があり、その責任者は小保方さんなのです。ぜひ、そのことはブログ読者の皆様には知っていただきたいのです。
 
 それではその内容をご紹介しましょう―。


(以下Kindle本『社会人のための「あの日」の読み方』第四講2.2)
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2) 理研調査委報告書でみる、小保方さんの「捏造」「研究不正」

 今度の報告書は前回よりボリュームが多めです。A4、32ページのPDFです。
2014年12月25日、「研究論文に関する調査委員会」(桂勲委員長)が発表した「研究論文に関する調査報告書」。
http://www3.riken.jp/stap/j/c13document5.pdf

 ちなみに同じ内容のスライド資料はこちらです。24ページのもの。こちらのほうが要点がわかりやすいかもしれません。

http://www3.riken.jp/stap/j/h9document6.pdf

 ここでは、まず連続して「ES混入」の事実を突きつけます。これは各種解析により動かせないところです。
●STAP幹細胞FLSおよびFI幹細胞CTSは、ES細胞FES1由来である(pp.4-7)
●STAP幹細胞GLSは、ES細胞GOF-ESに由来する(pp.7-8)
●STAP幹細胞AC129は、129B6F1マウスから作製された受精卵ES細胞に由来する(pp.8-10)
●STAP細胞やSTAP幹細胞由来のキメラはES細胞由来である可能性が高い(pp.10-11)
●STAP細胞から作製されたテラトーマは、ES細胞FES1に由来する可能性が高い(pp.11-13)
 しかしだれがその混入を行ったかについては、
「若山氏の聞き取り調査から、当時のCDB若山研では、多くの人が夜中にこの部屋(インキュベーター)に入ることが可能だった。つまり…多くの人に混入の機会があったことになる。」(p.14)
「小保方氏をはじめ、いずれの関係者も故意又は過失による混入を全面的に否定しており、…委員会は、誰が混入したかは特定できないと判断した。」(p.15)
と、特定を避けました。
 このあと、マウスの系統が論文記載のものと異なっている疑義、FI幹細胞のRNA-seqのデータが二種類の細胞種を含んだサンプルに由来する指摘などが提示されます。
 これについての評価。
 「小保方氏が様々なバックグラウンドの細胞を寄せ集めてRNA-seq解析、ChIP-seq解析を行ったことは自明であり、…本来比較対象とならないデータを並べて論文に使用したことは不正の疑いを持たれて当然のことである。しかし、聞き取り調査などを通じて小保方氏は「条件を揃える」という研究者としての基本原理を認識していなかった可能性が極めて高く、意図的な捏造であったとまでは認定できないと思われる。」(p.17)

「一方、FI幹細胞データに関しては当初の解析結果が同氏の希望の分布をとらなかったこと、それにより同氏が追加解析を実施していること、当初解析結果と追加解析結果で使用したマウスの種類も含め結果が異なること、複数細胞種を混ぜた可能性が高いこと(故意か過失かは不明)から不正の可能性が示されるが、どのようにサンプルを用意したかを含め同氏本人の記憶しかないため、意図的な捏造との確証を持つには至らなかった。よって、捏造に当たる研究不正とは認められない。」(同)
 とこのように、「不正が疑われるが証拠がなく証明ができない、よって研究不正とは認められない」という箇所がこのあとも非常に多いのです。なんだかイライラする結論ですネ。
 調査報告書のこのあとのくだりでも
「小保方氏にオリジナルデータの提出を求めたが、提出されなかった。」
「オリジナルデータの調査ができなかった。」
という文言が6回出てきます。このことは、調査報告書のまとめの部分で、

 第二は、論文の図表の元になるオリジナルデータ、特に小保方氏担当の分が、顕微鏡に取り付けたハードディスク内の画像を除きほとんど存在せず、「責任ある研究」の基盤が崩壊している問題である。最終的に論文の図表を作製したのは小保方氏なので、この責任は大部分、小保方氏に帰せられるものである。(p.30)

という厳しい指摘につながっています。
 追及逃れのために元データを提出しなかったのか。それともそもそも実験を行っていないのか。それは不明です。
 そして、明らかな不正と認定されたのは以下の2点。

研究論文に関する調査委員会「調査結果報告」スライドp.21
(1)Articleの論文のFig.5c 細胞増殖率測定のグラフにおいて、ESとSTAP幹細胞の細胞数測定のタイミングが不自然な点。(pp.17-18)山中伸弥教授らのiPS細胞の論文のグラフと酷似しています。
ここでは実験をしたとされる時期に3日に1回実験ができた時期が、出勤記録と照合したところ見つからなかったとあります。
小保方氏は聞き取り調査で、若山氏から山中教授らのような図が欲しいと言われて作成したと説明したそうです(若山氏もそうしたやりとりについては認めた)。
このことの評価として、
この実験は行われた記録がなく、同氏の勤務の記録と照合して、Article Fig.5cのように約3日ごとに測定が行われたとは認められない。……同氏が細胞数の計測という最も基本的な操作をしていないこと、また希釈率についても1/5と説明したり、1/8から1/16と説明したりしていること、オリジナルデータによる確認もできないことから、小保方氏の捏造と認定せざるを得ない。
…小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根底から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものと言わざるを得ない。よって、捏造に当たる研究不正と判断した。(p.18)
大変に厳しい言葉ですね。
そしてもう1点、不正と認定された箇所があります。

同上 p.23
(2)Article論文のFig.2cメチル化実験の疑義。細胞は分化するとメチル化し、それが初期化すれば脱メチル化を起こします。細胞が初期化しており脱メチル化しているかどうかを調べるのは、その細胞が多能性を有しているかどうかをみるための方法の1つです。
この図ではメチル化を示す黒丸および白丸の整列に乱れがあり、またオリジナルデータとの不一致がありました。手動で作図され、また仮説を支持するデータとするために意図的なDNA配列の選択や大腸菌クローンの操作を行ったことが小保方さんへの聞き取りでわかりました。
「この点について、小保方氏から誇れるデータではなく、責任を感じているとの説明を受けた。」(p.20)

(1)(2)に関してどうして捏造、研究不正と認定できたかというと、(1)は出勤記録との照合ができたから。(2)はオリジナルデータが存在したから。のようです。
ES混入、2つの明らかな捏造。
調査報告書ではそれ以外に10数か所の疑義や間違いが指摘されましたが、「オリジナルデータの提出がない」ことが壁になって、不正と認定されるには至りませんでした。
調査報告書ではまとめとして、2報のSTAP論文は非常に不正や間違い、怪しいデータの多い論文であること、小保方さんの責任とともにそれを見落とした笹井氏、若山氏ほか共著者の責任、またプログレスレポートのあり方など研究室運営の問題にも触れています。



 さて、以上のように、理研の2つの報告書から、小保方晴子さんがSTAP論文作成に当たって行った「不正」についてみてきました。認定されなかった多数の項目も、単にオリジナルデータの提出がなく確認がとれなかったから不正と認定できなかっただけだ、ということもみてきました。
 これらをご紹介するのは残酷でしょうか。
 小保方さんの手記『あの日』には、不思議なほどこれら、認定された不正の事実には触れていません。自ら認めた不正もあるのに、です。ただ、鬱のような状態で聞き取り調査を受け回答した、という記述があるのみです。不正認定された「メチル化」という用語に至っては、実験段階でそうした解析を行ったという記述すら出てきません。
 そして、小保方さん同情論の人が主張するような「この報告書は理研が一方的に小保方さんを非難し潰したものだ」という批判も当たってはいません。例えば「ES混入」については、報告書では誰が行ったかは特定していないのです。後にある理研OBがES窃盗容疑で小保方さんを告発しようとし、結局「被疑者不詳」で告発が受理され捜査した結果「被疑者不詳」のまま検察送致となった、という経緯もありましたが、これは理研調査委の報告書とは明らかに「別件」です。報告書ではそこまでのストーリーを描いてはいません。共著者の責任、管理責任者の責任にも触れています。
 もしこの報告書をもって「理研が罠にはめた!一方的に小保方さんに罪を着せて幕引きを図った!」と主張したいのであれば、社会人として当然名誉に関わる、今後の進路にも関わることですから、小保方さんは理研に対して地位保全の申し立てをしたり、公文書偽造もしくは名誉棄損の訴訟を起こすのが正しいのです。もしあなたが小保方さんの立場だったら、当然そうするでしょう。小保方さんの場合は、有能な弁護士を4人も雇っていたのです。にもかかわらずそれをしない以上は、これらの報告書の内容を小保方さんも認めたことになります。
 言いかえればこれらの報告書の内容は、事実認定されたとして使ってよろしい、ということです。
 そして、STAP事件の事実は何か、という問いになります。
 報告書で認定されたことを事実としてみるなら、やはり小保方さんのしたことは「けしからん」のです。不正など頭をよぎったこともなく、地道に日々実験を行っている大多数の研究者からしたら、唾棄すべき行為でしょう。
現在、多くの実験系の研究者は『あの日』を黙殺していると言われます。もはや、「関わりたくない」の一言なのでしょう。あまりにも「論外」「問題外」すぎるのです。一部理論系の研究者には小保方さんシンパがいるといいます。
「実験はこういうものだよ。この通りやりなさいよ」
と、教え込んで基本動作を身につけさせる、あるいは先輩や指導者の言うことを素直に実行し練習してスキルを身に着けていく、そういうどこのラボにもあるありふれたOJTの風景をも、小保方さんの行為は嘲笑してしまっています。
 理研から追い出され寄る辺ない身の上になった小保方晴子さん。その彼女に対して同情の念が湧くのは、日本人の「判官びいき」の心情として、自然なことかもしれません。
 しかし、彼女のしたことの重大性、悪質性を事実に基づいて考えるなら、やはり同情すべきではないのです。「認定された事実」と「同情論」の間には、天と地ほどの乖離があります。
 小保方さんに同情する人たちは、ぜひ、このことをもう一度考えてみていただきたいものだと思います。彼女に同情することで、自分も普通のまじめな仕事の営為を嘲笑する側に立ってしまっていないだろうか?と。


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 ・・・今見るとこの文章も結構「感情的」になっているかもしれないなあ、と思います。「怒り炸裂モード」などとほかの人のことを言えません。

 やっぱり、「やったことの重さ」と、それでもなお『あの日』を書いて言い訳するメンタリティというのが、みればみるほど「信じられない」と口ポカンとなってしまうのです。

 でもまあ、世の中こういう人ばかりでなく、真っ当な良心的な人が大半だからちゃんと回ってるんだ、ということに感謝したいですね。

 小保方さんに同情する人は、普通の人たちが真っ当に仕事をしてわたしたちの生活を支えてくれることの有り難さを忘れがちになるんじゃないでしょうか。

 おとしより世代の方は、あなたがお世話になっているお医者さんや訪問看護師さん、薬剤師さん、ヘルパーさんの中にこういう人が一人もいないことに感謝してください。それは奇跡のようなことかもしれないのです。


「余話」をシリーズ化しましたので、インデックスを作ります

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(1)二つの原風景の話

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51938782.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(2)『あの日』に至るまでのわたしの流れは

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939260.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(3)じゃあなんで書きはじめたのか―科学者・科学ライターの「言葉」の限界

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939319.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(4)「研究不正」した人が「アイドル」という現象が社会にもたらすもの

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939444.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(5)「捏造」と「データ不在」のオンパレード――やっぱり基本情報”判決”を読んでみよう

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939558.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(6)アリストテレス曰く、不正は嫌悪するのが正しい

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939831.html

 2つ前の記事で取り上げた『研究不正』(黒木登志夫、中公新書、2016年4月)をもうちょっと読んでみます。

 こうして「研究不正」という現象を横断的にみることも、いま起きている社会現象としての「小保方晴子さん・STAP細胞」現象をみるうえで助けになります。

 たぶん、この本の著者もそういう読み方をされることを願っていることでしょう。


 まずは、

「小保方晴子さんは、『研究不正』をした人だ」

 この点は、大前提として押さえていただいてよろしいでしょうか。


 単純なミスをしたわけではない、研究不正という、その世界では許されないことをした人だと。どの会社でも重大な就業規則違反をした人は解雇されるように、小保方さんも懲戒解雇相当になっていますが、それは仕方がないのだと。

 4人も有能な弁護士をつけていてもその処分を防げなかったのです。

 それを「ない」ことにはできません。また、他の多数の研究不正事件と比較しても、処分が特別に重いとはいえません。

 問題は、その研究不正の主役である小保方晴子さんが今も奇妙な「国民的人気」があり、本を出すと26万部というそこそこのベストセラーになってしまい(ありがたいことに、26万部から先の増刷はないそうですが。講談社企画出版部にききました)
「W山こそがすべての首謀者だ!小保方さんはハメられた!」
という陰謀論が蔓延している。

※これについては、争点は「ES細胞混入は小保方さんだったのか、それともほかの人か」というところに絞って理解したほうがいいと思います。先日兵庫県警の捜査が終結し、「ES盗難は小保方さんとは特定できない」という結論になったところです。

 しかし、ES細胞混入以外のところで、小保方さんは少なくとも2件のはっきりした「捏造」を認定しヒアリングで本人も認めています。このことは『あの日』には書かれていないだけです。他にも「オリジナルデータの提出がない」だけで不正と認定しきれなかったグレーの箇所が10数か所もあるわけです。

 『あの日』だけを読んでこうしたほかの重要な資料を読んでいない人だと、小保方さんのしたことの「重さ」は、想像がつかないと思います。普通の社会人の規範の世界からしてもどれほどかけ離れたことをしてしまった人か、ということが。

 たとえば、銀行の美人営業ウーマンがとってきた融資案件の大半が捏造で架空の顧客だったとか、美人編集者が、著者が遅筆なので勝手に自分がどんどん書いちゃったとか美人記者がとってきた特ダネが大半は捏造だったとか、美人看護師が患者のバイタルを見ていたが記録は大半が捏造だったとか美人教師の担任するクラスは学年トップの成績だったが生徒の成績の大半は捏造だったとか。あとどんな例えがあるでしょうねえ。。。


 さらに追加で「STAP細胞はある!」等の情報をどんどん出してくる。数日たってガセとわかるがその都度騒然とし、「やっぱり日本のマスコミや科学者はウソをついている!」的な「空気」ができてしまう。


 そういう「研究不正」をした人が「アイドル」になっているという現象が、わたしたちの社会に何をもたらすでしょうか。

 職場では、規律規範はどうなるのでしょうか。

 たとえばわたしと同世代くらいの部長級の人が、小保方さんのことをうっかり「可愛い。きっと無実だ」と思っていたとき、その部下の中の可愛い容姿の女性が何かのミスや改ざんをして、ちょうど小保方さんと同じような言い訳を部長に言ったとします。
 つい、クラクラッとならないでしょうか。直属の上司の課長や係長に
「君、厳しすぎるんじゃないか。A子さんに何か含みでもあるのか。A子さんはだれかにハメられたんじゃないかあ?」
と茶々を入れたりしないでしょうか。

 わたしと同世代の男性って、やりそうなんだよなあ、そういうこと。

 それはしかし、もう「乱倫職場」って言われても仕方ないんですけどね。周りの従業員のモチベーションは下がりまくりますね。A子さんが仮にお追従上手の男性でも同じです。


 「行動承認」は「論功行賞」「信賞必罰」や「理非曲直」など、昔から日本のマネジメントにあった四字熟語の体現だ。

 というようなことを、これはまだ本には書いていなかったですが、講演などでは時々言います。

 それでいえば、「小保方さんは不正をした人」だ、ときっちりいうのは、「理非曲直」の側面を出すということです。

 それはもう、研究の世界では「判決」が出ていることなので、小保方さんもそれに異議申し立てをしていないので、仕方ないのです。「一方の意見だ」というレベルの話ではありません。

 沢山ある研究不正事件のひとつとして、教訓を学びとり、過去のものとして前に進むのが正しいのです。


 これも少し余談になりますが、
 「罰」は、存在しないといけない。「罰」の存在しない世界はやりたい放題になり、結果的に人が離れていく。

 そういう「罰」の効用を言ったのが、わたしのよく参照する本『経済は競争では繁栄しない―神経化学物質オキシトシンの効用』です。本全体でいう「共感」「信頼」の効用とは真逆のことを言っている箇所ですが、「罰」はやはり、社会の維持のためにスパイスとしてないといけないのです。

 詳しくはこちらの記事を参照

わが国ではハグはちょっと―じゃあ、どうする?神経化学物質オキシトシンの知見『経済は「競争」では繁栄しない』
>> http://c-c-a.blog.jp/archives/51889965.html

 この記事の上から3分の1ぐらいスクロールしたところにこんな一節があります:

 ●「公共財ゲーム」を使った実験では、厳罰主義のクラブBは最終的に大金を稼ぎ、やりたい放題のクラブAの資産はゼロになった。善に報いるだけでなく悪を制裁することによって向社会的行動を奨励する制度が最高の見返りをもたらすことがはっきりした。

 
 ですね。
 わたしも「承認」をいう人なので、どんなことにも「承認」で対応して仏様のように振る舞うべきだと主張している人のようにみられがちなのですが、これはNOです。わるい行動に正しく「罰」を与えることは、承認のコインの裏表のようなもので、必要なことなのです。その部分がなかったら逆に「承認」も言えません。


 
 もうひとつ『研究不正』の本でおもしろかったのが、研究不正をおこなう人の年齢です。
 簡単に言うと、功成り名遂げた教授もやるし、若い研究者、小保方さんぐらいの歳の研究者もやる、ということです。
 42も事例を出してくれて横断してみると、小保方さんが不正と断罪されて処分されたことが、若いからといって決して「トカゲのしっぽ切り」だとはいえない、ということがわかります。若い人は若い人で、ちゃんと不正をしたくなる動機があります。それを正しく処分しないようでは困るのです。


・事例5 論文盗作事件のエリアス・アルサブチは発覚当時、26歳。
・事例6 スペクター事件のマーク・スペクターはコーネル大学の大学院生(博士課程?)
・事例7 ハーバード大学不正事件の主役は33歳の循環器内科医のダーシー。
・事例12 有名な「シェーン事件」のシェーンは31歳。
・・・

 こういう若い人主導の研究不正を、この本では「ボトムアップ型研究不正」と呼んでいます。

 とりわけ、近年ではアメリカ留学中の日本人の大学院生、ポスドクの人がおこなう不正が急増しているようです。「アメリカで認められたい」という気持ちが勝ちすぎるからでしょうか。

 たまたま、日本では研究室を主宰する「おじさん」教授が主体で不正を行ったケースが多かったので、「不正をやる人=おじさん」という固定観念が、わたしたちに刷り込まれているだけなのかもしれないんですね。小保方さんは、『あの日』でその固定観念(=いわばヒューリスティック)をうまく使い、「若山先生が主犯よ!だっておじさんなんだもん!」というイメージを作ることに成功したともいえますね。

 
 この本では、上記の事例6「スペクター事件」事例12「シェーン事件」とSTAP事件の3つを表にまとめ、その共通項を比較したりしています。(ご興味のある方はこの本をお買い求めください)


 さあ、いかがでしょう。

 「小保方さんは若くて可愛いのに、可哀想」
という幻想は、覚めましたか?


 

 最後に、やはり「教育」にどう影響してくるのか、ということも考えたいところです。

 小学校高学年ぐらいから、理科の実験がはじまり、「レポートの書き方」も教えられると思います。
 実験の目的、手順、材料、結果、考察、などを書くよう指導されると思います。

 ところが、それを全然ちゃんとやっていなかったのが小保方さんのあの実験ノートなわけです。

 ハーバードなのに。理研なのに。

 もちろん、もっと上の年代の「科学者教育」に携わる人たちにはさらに頭の痛いところでしょう。緻密に地道に、手順を覚え1つ1つ積み重ねてデータをとっていく…基本の倫理が崩れてしまいます。

 
 だから、「小保方さんOK」にしてしまうと、社会の隅々まで変てこりんなことになってしまうんです。

 前にも書きましたが、うっかり小保方さんに肩入れした人たちは、思考法全般が「変てこりん」になっていきます。事実、情報の評価が歪み、おかしなセンセーショナルな情報に流され、多数の良心的な人々の気持ちを思いやることなく小保方さん中心にものを考えるようになります。
 そんな人が今からも増殖する気配があります。


 わたしは、そこで「社会にたいするむだな責任感」を抑えられるかというと。。。


 

結局シリーズ化したので、インデックスを作ります

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(1)二つの原風景の話

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51938782.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(2)『あの日』に至るまでのわたしの流れは

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939260.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(3)じゃあなんで書きはじめたのか―科学者・科学ライターの「言葉」の限界

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939319.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(4)「研究不正」した人が「アイドル」という現象が社会にもたらすもの(本記事)


◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(5)「捏造」と「データ不在」のオンパレード――やっぱり基本情報”判決”を読んでみよう

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939558.html


◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(6)アリストテレス曰く、不正は嫌悪するのが正しい

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939831.html

 前回の記事で、『あの日』に関して批判的解読をするのは、できればおさぼりしたかった、という意味のことを書きました。教育分野の「ダメなベストセラー」の批判の作業だけで手いっぱいだった。『あの日』に関しては批判的なレビューを書いている方も多数おられるので、その方々の良識に任せたい。

 ・・・と思っていたのに、なぜ結局ブログで15回もの連載をやり、Kindle本まで書くことになったか?


 それは、たぶん、「この問題で科学者・科学ジャーナリストの言葉に残念ながら説得力がない」と感じたからです。

 ウソだ、とは言わないです。彼ら・彼女らは正しいんだけど、一般の人の心に届く言葉が言えていない。


 ひとつの例として、今月19日に出たばかりの『研究不正―科学者の捏造、改竄、盗用』(黒木登志夫、中公新書)という本を読んでいます。

 著者は1936年生まれ、元東大医科学研究所教授。
 STAP細胞事件がこの本の出版の動機だ、と著者自身述べているように、全部で42の研究不正の例を集めていますが、中でもSTAP事件は事例21として大きな紙幅を割いています。これ自体は、大変な労作です。わたしのKindle本なんか比較にならない。資料的価値のある本といえるでしょう。

 その中のSTAP事件に関する記述をみてみましょう:


STAP細胞は、ねつ造、改ざん、盗用の重大研究不正をすべて目いっぱい詰め込んだ細胞であった。はなばなしい発表からわずか11か月で、そのような細胞が存在しなかったことが明らかになり、わが国の名誉を傷つけた末に、消えていった。(p.ii)


 HOは、STAP細胞発表から2年後の2016年1月、『あの日』という本を出版した。自らを正当化し、若山照彦にすべてを押しつけようとする作為的な内容である。彼女は、ES細胞の混入を「仕掛けられた罠」として否定している。(p.124)



 いかがでしょうか。
 これが、科学界の標準的な小保方さんに対する見方です。きついでしょう?

 それは、一般には知られていないそう信じるべき根拠があるから、そうなのです。つまり、わたしの本にも書きましたが、理研の再現実験報告書であったり調査報告書であったり、昨年9月ネイチャーに載った「世界で133回追試して再現されなかった」という報告であったり。

 ところが、それら通常なら「決まり。ここで議論打ち切り」になるような資料があまり存在も知られず参照されず、中には「陰謀だ」とまで言われる困った状況が、STAP騒動にはあります。

 とりわけ今年になってからの状況では、真偽不明の小保方さん側が出す情報だけがネットでセンセーショナルに取り上げられ、リツイートされ、マジョリティになってしまう。


 科学者の言葉が通じにくくなった。少なくともこの問題に関しては。
 

 もうひとつ例を挙げると、こちら

「STAP騒動『あの日』担当編集者に物申す」(2016年2月27日)

>>http://bylines.news.yahoo.co.jp/takumamasako/20160227-00053974/


 STAP騒動について初期から発言してこられた、科学ライター詫間雅子氏の記事。

 これも、正しいことを言っている記事です。なのだけれども、実は『あの日』という本でやっている多数の欺瞞を指摘していると、とくに記事1本ぶんの短い文章では、「怒り炸裂」のトーンになってしまうことを免れない。

 そして「怒り炸裂」トーンになると、読者がついてきてくれなくなってしまう。
 本当に初期から小保方晴子さんの一連の言動の異常さがわかっていて、今も記憶に残っている読者なら、この記事に共感できるでしょう。
 でもそうではない、2年前の研究不正報道、出るもの出るものウソだらけだったという衝撃がすでに記憶のかなたになり、今は小保方さん側の出す情報の妙な「感情的説得力」に感化され、ひょっとしたらこちらが正しいのかな?と思い始めている普通の社会人は、共感できるかどうか疑問です。
 せっかく、正しいことを言っていても。


 どんなに正しくても、この件は、「伝え方をえらぶ」と思いました。相当、考えた伝え方をしないといけない。


 そこでわたしが選択したのは、

「読者のあなた」

をつねに主語に置く、ということでした。

 あなたのことなんですよ。あなたの身近にもこういう人いるでしょう。今仕事を頑張っているあなたなら、同情しなくていいんですよ。

 これは例の、「内側前頭前皮質」というやつです。ご興味のある方はこのブログの検索窓にこの言葉を入れてみてください。


 いや、成功しているかどうかわかりませんよ。Amazonレビューでは、「科学者にきかなくては意味がない!」と書かれましたね。・・・最近うんざりして、みていません・・・

 しかし、科学者・サイエンスライターの方が書いたとしても、説得力をもてるかどうかは疑問なのです。この件に関しては。
 書く人と書き方をかなりえらぶ、というしかないですね。



 
 上述の『研究不正』という本からの引用の続きです。



 (STAP事件の)何よりも深刻な影響は、人々が科学と科学者を信頼しなくなり、わが国の科学が世界からの信用を失ったことである。自らの研究に誇りをもち、一生懸命研究を行っていた研究者にとって、これほどひどい仕打ちはない。(p.125)


研究不正の基本にあるのは、周囲からの様々な圧力、ストレスに加えて、競争心、野心、功名心、出世欲、傲慢さ、こだわり、思い上がり、ずさんさなど、われわれ自身が内包しているような性(さが)である。そのような背景は、社会的な不正と共通している。(pp.287-288)


 わが国は、いつの間にか、研究不正大国になってしまった。…そして、わが国の研究不正は、2014年にピークを迎えた。
 しかし、2014年の不幸な事件は無駄ではなかった。…STAP細胞事件の影は、今でも、われわれ研究者の心に、重くのしかかっている。しかし、われわれは、2014年の不幸な事件を共有し、不正のもつ重大な意味を再認識し、立ち上がろうとしている。その意味で、STAP細胞事件の主役HOは反面教師として偉大な存在であった。(p.289)




「余話」を結局シリーズ化しました

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(1)二つの原風景の話

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51938782.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(2)『あの日』に至るまでのわたしの流れは

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939260.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(3)じゃあなんで書きはじめたのか―科学者・科学ライターの「言葉」の限界

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939319.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(4)「研究不正」した人が「アイドル」という現象が社会にもたらすもの(本記事)

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939444.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(5)「捏造」と「データ不在」のオンパレード――やっぱり基本情報”判決”を読んでみよう

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939558.html


◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(6)アリストテレス曰く、不正は嫌悪するのが正しい

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939831.html

 ブログ更新がまた時間が空いてしまいました。

 長い読者の方はご存知と思いますが、昨年末ぐらいからこのブログで「ベストセラー本の批判的解読」という作業を立て続けにしました。

 時系列に並べると
『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(昨12月、4回連載)
『「学力」の経済学』(1月、7回連載)
『ほめると子どもはダメになる』(1月、1回)

 それと本ではないですが、『嫌われる勇気』の著者、岸見一郎氏の講演会で異議申し立てをした(1月16日)というのも記憶に新しいです。

 本当は『嫌われる勇気』もまた、上記の本と同様に「逐文的」に批判読みをしないといけないのですが、おさぼりしています。それはあまりにもわたしからみて「パッと読んでダメ」な部類の本だったからです。それがこんなに影響力をもってしまうとは。

 そんなことをやっている分「良書」を読むことがこのところ後回しになりがちで、こころの栄養が足りないと思っていました。

 
 そんな風に、教育分野のものだけでもダメなベストセラーが量産されていて、それらを批判する作業だけで忙しすぎたので、『あの日』については、サボろうと思っていました。わたしがやることではない、と思っていました。


 なんでこう、ダメなベストセラーばかり出るのだろう。

 答えはわかっています。出版不況だからです。人々が本を読まないからです。


 「紙の出版物、15年の販売額5.3%減 減少率は過去最大 」(2016年1月25日日経)
 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25II6_V20C16A1TI1000/?n_cid=SPTMG002


 「出版業界の調査・研究を手がける出版科学研究所(東京・新宿)は25日、2015年の紙の出版物の推定販売額を発表した。14年比5.3%減の1兆5220億円と、減少率は1950年に調査を始めてから過去最大となった。特に稼ぎ頭の雑誌の落ち込みが深刻で、出版市場は底入れの兆しが見えていない。

 前年割れとなるのは11年連続。減少率は14年の4.5%を上回り、過去最大だった。書籍は240万部超の大ヒットになった又吉直樹氏の「火花」(文芸春秋)など文芸書が好調で14年比1.7%減の7419億円にとどまったが、雑誌は同8.4%減の7801億円と大きく落ち込んだ。「15年は雑誌市場の衰退が一気に進んだ」(出版科学研究所)」


 出版社別にみると、例えば『あの日』の出版元で業界2位の講談社は、2012年売上高が前年度比マイナス3.3%となっています。(数字がちょっと古いですが、大きな趨勢としてはこうなのでしょうネ)


 そして前にも書いたかと思いますが、こういう本離れの時代にどうやって買わせようとするかというと、「逆張り」がよくやるテクニックです。なかでも教育分野では、「ほめる否定」を使うのがこのところ顕著です。

 子供をもつ親御さんというのはどの時代も不安なのだと思いますが、その心理につけこんで「逆張り」をやり、「ほめてはいけない」という、もっとも不安を煽ることをやる。「えっ、自分のやっていたことは間違いだったのだろうか」と思わせる。上記の『「学力」の経済学』『ほめると子どもはダメになる』『嫌われる勇気』いずれもそうです。

 ちょっと丁寧に読めばそれは意図的な論理のスリカエを行っていたり
(例えば『ほめるとー』では、「ほめる教育」と「叱らない教育」をわざと混同している)、
でたらめなデータの並べ方をやっていたり
(『学力の――』では、データをいくつか並べるがそれと結論がどうみてもつながっていなかった)
するのです。そんなやり方で親御さんの不安を煽ってどうするんだ。

 そして、行動理論−行動分析学のほうの、「ほめて伸ばす」で明らかにパフォーマンスが上がるほうのデータは、意図的に見せません。ずるいですねえ。


 ※ここからちょっと寄り道で、

 まあ「ほめる」にはゆきすぎ現象も確かにあるので、わたしは極力「ほめる」という語を使わないできたのですが。ゆきすぎれば問題があるということと、最初から全否定することは当然違います。


 また、否定ばかりして育てた結果、強い個体は生き延びるし雑草のように根性がすわって育つかもしれませんが、それはやはり「歩留まりのわるい」やり方といわなければなりません。ごく一部の強い個体を除いて死滅してしまい、収穫高はわるくなります。本性に逆らう育て方をしたら。人は、ごく一部を除いては肯定されて育つほうが育ちやすいんです。そして、「否定して育てる」を推奨した場合にパワハラや虐待を防止できるのか?クエスチョンです。普通は、「否定する」を推奨した場合はエスカレートしやすいんです。

 最近ドラマなどで「日陰において育てると強くなる」とか、ちょっと「鍛える」的な言い回しをききますが、それは一人歩きすると指導者側の傲慢にすぐつながると思いますね。相手がそこまでして育ちたいと思っているかどうかですね。子供さんだったらグレさせてしまってからでは遅いですね。

 そう、「否定して育てる」は、反発心のいたずらに強い、ひねくれた嫌な人格を作ってしまうリスクもあります。育てられた当人も他人を否定ばかりするようになります。
 逆に肯定して育てるといろんな意味で素直な性格に育つので、教えたこともよく受け取って学習します。効率がいいのです。

 わたしが「承認」と言っているときはおおむねGOとSTOPを適切な比で与えよ、GOのほうを多く、STOPをたまに効果的に、それが一番いい結果につながるから、ということを言ってるんです。もちろん相手の個体差も丁寧にみます。否定メッセージを比較的好む個体というのもあるにはあります。それも程度問題で、否定ばかりで育てていい個体などありません。

 日本人の場合例の遺伝子的な特性で、肯定的な感情を初期設定ではあまり持っていないのです。で指導者になる人も、人を肯定するということを訓練なしにはできないのです。一方で育つ側というのは肯定されたほうが育つ、これは日本人の場合であっても真理なので、指導者側の訓練が要るんですね。やっぱりほめるタイプの先生のほうが成績は伸ばしますよ。

 

 はい、最近あまり「承認」のことをブログに書いていなかったので、久しぶりに基本のことを書かないといけませんね。

 閑話休題です。




 そうして「ほめてはいけない」のメッセージを与えられた今の時代の親御さんたちがどうなっていくのか、というのは空恐ろしいです。いや本なんかみんな読んでないから大丈夫だよ、という考えもあるでしょうが、例えば上記の『「学力」の―』の著者は安倍首相の教育再生会議の委員です。新自由主義を教育に持ち込み教育をその支配下に置きたい、という主義主張の方です。この本の影響ですでに大阪市教委は先生方の給与体系に成果主義を大幅導入することを決めました。『ほめると―』はちょっとわかりませんが、『嫌われる勇気』の津々浦々までの浸透ぶりはすごいですねえ。講演会にはごく普通の善男善女という感じの方々が来られていました。そこでは英語教室で「Good job」も言ってはいけないんだそうです。


 だから、本が売れない時代のベストセラーというのは、手段を選ばず人間性を破壊するようなとんでもないことを書きます。それをなめてかかっていると案外な影響力を及ぼし、とても変な世の中をつくっていきます。

 『あの日』もその中の1つです。
 『あの日』を読んでその変なロジックに巻き込まれ被害者表現もすべて真に受けてしまった人というのは―(略)


 こういう時代に対して変に責任感をもつわたしはどこかおかしいのでしょうか――。


 『あの日』に関わるのは本来は3月いっぱいまでのつもりでした。連載の第14回を「最終回」として書き上げ、年度も変わりさあ次へ進もう、というつもりでした。

 ところが、同じ3月31日の数時間後に例の「STAP HOPE PAGE」というのが公開され、それでまた一時期騒然となり、この問題が収まりそうにありません。


 そこで翌4月1日、仕方なく落としたエンジンをまた回転させたようなつもりで、「エイプリルフール企画・社会人のための小保方情報」解読講座」というのを追加で書きました。
 やっぱり、ネット上には小保方さんに一方的に有利な情報ばかりあふれている。それをうのみにしてしまうと、今度は普通に良心的にやっている科学者研究者の方々が非難されたり不信の目でみられてしまうことになる。ひいては、普通の仕事の現場の規律規範までガタガタになってしまう。そのあたりはちょっと、やむにやまれぬ気持でした。アホだ、と自分でも思いますが。


 そうして「毒食わば皿」で、Kindle本をつくってしまおう、ということになりました。

 というのも、ブログ読者の方々はご存知かどうかわかりませんが、既に「STAP細胞・小保方晴子さん」関連のKindle本というのはうじゃうじゃ出ているのです。
 内容は
「小保方さんは若山照彦にハメられた!」
「STAP細胞はある!」
という怪しげなもの。それも紙の本で20−40ページ程度の内容のものが500円とか700円という価格で出ています。


 それだったら既に新書本1冊分くらいの分量のあるもので、科学的にも「情報の読み方」的にも正しいところを伝える本を1冊Kindleから出したほうがいいじゃないか。

 そんな思いでKindle本『社会人のための「あの日」の読み方』を出すことになったのですが、まあそのあともゴタゴタ長引いています。まだこの件から手を引けそうにありません。


 本当は、今月からはもともとの教育分野に戻って『「学力」の経済学』批判や岸見アドラー心理学批判をしたかったな。
 それに前著の『行動承認』のKindle化もしたかったな。


 
 
 『行動承認』は、たぶん100年後に残る本です。
 地味で、ベストセラーになる種類の本ではありません。

 しかし私は書きながら読者を定めたのです。
 頭でっかちの学者さんやコンサルタントさんにわかってもらわなくてもいい。
 頭に思い描いていたのは、研修でお出会いする、高卒の工場リーダーやサービス業のリーダーたちでした。現場で育ち仕事脳を発達させてきた、彼・彼女らにわかってもらえればいい。「自分たちのことだ」と思ってもらえればいい。

 そう、例えば大手商社やメーカーのホワイトカラーの旧帝大出の人たちも眼中にありませんでした。人事・研修担当者も、極端にいえば対象外でした。

 現場のリーダー層の人たちにわかってもらえれば。


 そんな思いが通じてか、去年は、お陰で2か所で研修テキストとして採用していただきました。受講生様方の手元に「あの本」がありました。
 とりわけ、「研修前にもう本を読んで自己流で実践を始めています」というある受講生様の言葉には感激でした。


 読者対象として想定していなかった層の人にも響いたようでした。

 佐賀県のご同業の宮崎照行さんからも、「医大の救命救急センターで組織開発サブテキストとして採用しています」と嬉しいご連絡をいただきました。
(これは本来想定外の読者層でしたが、わたしのつもりでは易しい言葉だけれど医学的にも正しいことを書いているつもりなので、幸甚でした)

 またオープンセミナーに参加された、獣医さんにも好評でした。
 

 『行動承認』を自分が教えたい、と思う講師のかたは、このブログの「教授法へのこだわり―人に教えるということ」というカテゴリをぜひ読まれてください。

 あのカテゴリに書かれていることが、いわば『行動承認』研修のプロトコルのようなものです。講師がどんな心構えであれば伝わるか、というお話が書かれています。

 また「研修副作用関連」のカテゴリも読んでください。
 あれは、わたしなりに観察してまとめてきた、「研修の『やってはいけない』」集です。


 もし、『行動承認』を読んでいただいてそれから「教授法へのこだわり」カテゴリと、「研修副作用関連」カテゴリを読まれたときに「すっ」と反発心なしに頭に入るようでしたら、その方はきっと『行動承認』の講師の適性がある方だと思いますね。


 
 たぶん『行動承認』は再出版などされることなく、Kindle本で出しなおすことになると思います。「エウダイモニアブックス」というレーベルで。できれば、今の哲学や脳科学の動向を入れた『行動承認 第二章』のようなものも出せないかなと思っています。

 そういう、素直に読んでいただければものすごく実際の役に立つもの、というのはもう今の時代、出版社さんが出せなくて、Kindleで出すしかないのかもしれませんね。


 わたしがそこまで生きていられれば。
 
 

「余話」を結局シリーズ化しました

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(1)二つの原風景の話

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51938782.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(2)『あの日』に至るまでのわたしの流れは

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939260.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(3)じゃあなんで書きはじめたのか―科学者・科学ライターの「言葉」の限界

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939319.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(4)「研究不正」した人が「アイドル」という現象が社会にもたらすもの

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939444.html


◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(5)「捏造」と「データ不在」のオンパレード――やっぱり基本情報”判決”を読んでみよう

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939558.html


◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(6)アリストテレス曰く、不正は嫌悪するのが正しい

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939831.html 
 
 

 

 Kindle本『社会人のための「あの日」の読み方』
 お陰様で無料キャンペーン期間中、295名の方にダウンロードいただきました。
 この期間中はKindle実践経営・リーダーシップ1位、投資・金融・経営1位だったのですが、有料化したとたんどーんと下がってしまいました。トホホです。

 さて、今は500円ですが、たぶんそれぐらいの値打ちはあると思います。通勤通学の途中でさらさらっと読めて、ちょっとした(正しい)知識が身について、資料的価値もありますから。

 こちら

 http://ur0.work/tk27

のページでご購入くださいね。

 あっ、Kindleは専用端末をお持ちでなくても大丈夫です。スマホ、タブレット、PC用にKindle無料アプリがあります。Kindle本を購入しようとすると、Amazonさんがアプリのダウンロードをお勧めしてくるとおもいます。この際なのでダウンロードしてしまいましょう。


 さて、本を書き終わると、後から色々と言葉がついて出て、ブログを汚します。過去2作のときもそうでした。


 今回は、「なぜわたしがこんなに小保方晴子さんにこだわるか?」という思い切り私情のお話です。

 たぶんこのブログの長い読者の方ですと、わたしのこれまでの生き方が思い切り小保方さんと相いれない、というのはご存知のことと思います。

 たとえば比較的最近ではこちらの記事

「痛みに満ちた進歩の歴史と「こころの退化」と―世界の経営学にNOを言う 考察編(3) 」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51931465.html

 まあ要は、「均等法第一世代」であります。男並みに働く権利とともに義務も手にした女の子が、まじめにシャカリキに働いた結果、セクハラには遭うし体力的にも限界だし社内制度は整備されてないし、でリタイアしていきました。

 しかし、おじさん連中に媚びることはしなかったぞ。それは胸を張って言えると思います。

 わたしの場合は、東京の内勤でセクハラおじさん連中と大喧嘩し(今でもネット上でしつこく絡んでくる厭らしい中年男がいますがネ)広島支社に転勤して、思ったことは

「これでやっと実力勝負ができるゾ」

ということでした。
 あっ、「勝負」という言葉を使うからといって「勝ち負けがすきな人」だとは思わないでくださいね。わたしはとにかく、自分でないものとみなされるのがイヤなんです。可愛い子ちゃんと思われるのもイヤ、劣った存在とみなされるのもイヤ。お色気も媚びも使わず、実力で特ダネもぎとってきて、「あいつは、やる」と言われたいわけです。

 そんな、パンツスーツ姿で男社会に喧嘩を売っていた日々の中に、「島根医大での日本初の生体肝移植」の取材というのが入ってきました。

 以前にも書いたと思いますが執刀医の永末直文・島根医大第二外科助教授(当時、のちに教授)とは、妙に馬が合いました。永末氏もちょっと傍流っぽい、九州大医学部から広島赤十字病院へ、そして島根医大へという経歴。広島から島根に行ったときガクンとお給料は下がったそうです。それでも研究への志やみがたかったそうです。

 外科医としては、手術の天才的に上手い名外科医。そして研究者としても一流誌の常連。その永末氏のもとで医師団はまとまっていました。

 その中にポスドクの若い医局員が2人いました。当時のわたしときたら、ポスドクのなんたるやも知らなかったのですが、島根医大に常勤の医師として勤務しているのに、ICUの移植患者のことも診ているのに、無給。数日に1回、関連病院の夜勤のアルバイトをして生計を立てています。その合間に実験動物の世話をし、実験をし、論文を書きます。「風呂入ってないだろー」眼だけがギラギラしていた時もありました。四六時中一種の興奮状態、倒れないギリギリのところにいる感じでした。

 その彼らが主著者になった論文が一流誌にアクセプトされたという、医局室のホワイトボードの字を何度かみました。永末氏は名指導者でもあり、サジェスチョンを与えてテーマを設定させ、実験をさせ、そして「論文は書き出しが大事なんだ」と、サラサラと英文を書いて、それが一流誌に載るのだとか。

 この人たちとは手術発生直後から患者の坊やが亡くなる翌年8月まで、9か月にわたり月の半分位顔をみていたので、お互いウンザリするぐらいでしたが、そういうひたむきで過酷な青春を送る人々がいる、ということは当時刷り込まれていたのです。いいことか悪いことかは別にして。

 だから、小保方さん。ポスドクで無給(理研からは)でありながら、ヴィヴィアンウエストウッドで身を固めポートピアホテルに宿泊する、それは「おじさま転がし」で「不正研究者」だからできたことだと、色々証拠が出てきた今ではつながるわけですが、それはやはり許しがたい。わたしの「原風景」からするとそうなわけです。自分のぶんと、取材先のぶんと。


 本当は、そういう「原風景」のお話までしないと、「あの本」を書いた動機というのは説明がつかないかもしれませんね。今度加筆しようかな。


 
「余話」を結局シリーズ化しました

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(1)二つの原風景の話

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51938782.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(2)『あの日』に至るまでのわたしの流れは

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939260.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(3)じゃあなんで書きはじめたのか―科学者・科学ライターの「言葉」の限界

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939319.html

◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(4)「研究不正」した人が「アイドル」という現象が社会にもたらすもの

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939444.html
 
◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(5)「捏造」と「データ不在」のオンパレード――やっぱり基本情報”判決”を読んでみよう

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939558.html


◆『社会人のための「あの日」の読み方』余話(6)アリストテレス曰く、不正は嫌悪するのが正しい

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51939831.html

すみません!!m(_ _)m きのう「連載終了」を宣言したにもかかわらず、新年度に入ったのにまだ引きずっています。


 小保方晴子さんがきのう3月31日開設したとされる、”STAP HOPE PAGE” が、その後アクセス不能な状態が続いています。
>>https://stap-hope-page.com/
 
 「サイバー攻撃に遭った」と弁護士などが声明を出しておりますが、真相のところはどうなんでしょ。

 ところが幸い、これを閲覧可能な間に魚拓をとってくださった方がいて、こちらではみることができます。
>>https://archive.is/ttnfp 

 このサイトも、STAP細胞作製プロトコルを公開とはいいながら、
「ATP Solutionの記述がおかしい」
などと早くも突っ込みが出ており、撤回されたSTAP論文と同様、信頼性の低いものです。

 わたしも、このサイトの”Results of the STAP verification experiment” のページを見たとき、写真やグラフにクレジット類が入ってないのが気になっておりました。理研の再現実験の画像としたら、所有権や著作権の問題はないのかな?と。

 それでも、このサイトの公開を受けて、Amazonの『あの日』の売り上げランキングは600位台から100位と再び急上昇。中古本も910円→980円と上がっており、落ちてきていた本の売り上げのカンフル剤と、小保方さんサイドは「にんまり」していることでしょう。

 情報としては意味はない、それでも何かしらの形でUPすると話題になる。
 こういう滋味をおぼえてしまったようです、小保方晴子さん。

 小保方さんと似た、自己愛のウソつきの方はほかにも多数いらっしゃいますが、小保方さんほど世論の妙な同情をかちえ、その後も本の出版、ネットでの擁護派による援護情報、そしてホームページ開設と、多彩な情報操作の技を繰り出してくる方はいらっしゃいません。
 ちょっと油断していると、小保方さんに有利な情報が、しかしよくみると中身のない情報がばらまかれている。本来どうということのない研究不正事件なのに、その後も奇妙な情報戦を仕掛ける才覚のある方であります。またご本人の周辺の方々も。

 というわけで今日は、「エイプリルフール特別企画」として、「小保方さんとその周辺情報とのつきあい方」をお送りします。


1.「STAP細胞ができた」という“偽情報”について
2.“ジャーナリスト”上田眞実氏、「木星通信」、「ビジネスジャーナル」
3.武田邦彦氏、青山繁晴氏、西岡昌紀氏・・・小保方晴子さんを愛するおじさま評論家たち


 それではまいりたいと思います・・・。


1.「STAP細胞ができた」という“偽情報”について


 昨年12月と今年3月に、2回にわたり
「アメリカでSTAP細胞に似た研究を発表!小保方晴子さんの研究は正しかった!」という情報がネットを駆け巡りました。
 どちらも、発信元は自称ジャーナリスト上田眞実氏であり、3月のものは「ビジネスジャーナル」というニュースサイトに掲載されました。

「STAP現象、米国研究者Gが発表…小保方晴子氏の研究が正しかったことが証明」
>>http://biz-journal.jp/2016/03/post_14306.html

 しかし、読者の皆様このタイトルをみておおっ、とはならないでください。
 この情報は、実はよくみると昨年12月に一度流されてデマだとわかった情報と同じものです。
 一度否定された情報をまた3月に臆面もなく持ち出してきただけです。
 この情報が「ガセ」「流言」であり、また一度否定された情報の焼き直しだということを、
本シリーズの(10)でも一度お伝えしたかと思いますが、再度、サイエンスライター粥川準二氏の2回にわたるブログ記事を引用してお伝えいたします。

お蔵出し:米研究者が「STAP細胞」の再現に成功?
>>http://d.hatena.ne.jp/KAYUKAWA/20160210
STAP細胞をめぐる「流言」を検討する
>>http://blogos.com/article/168854/

では、アメリカの新たな研究はSTAP研究とは実験方法も結果も異なり、STAP細胞とは呼べないこと。またこの論文をよくみると、日本語ジャーナリズムの報道とは全く異なり、論文中でSTAP研究は否定していること。この研究を掲載した「サイエンティフィックリポーツ」は、以前にもお伝えしたように査読基準のゆるい雑誌であること。
では、,力聖櫃魴り返すとともに、3月に再燃した流言は12月のものの焼き直しであることを述べています。
 もうひとつ△任もしろかったのは粥川氏の言葉で、次のくだりです:

信じ込んでしまっている人を説得するのはほぼ不可能である。科学やメディアのプロがすべきことは、よくわからず判断に迷っている人たちを念頭にして、手堅いファクト(事実)と厳密なロジック(論理)で、結論を急がず粘り強い議論を継続することである。そのことが流言やデマを信じてしまう「集団的な心理」を変化させ、「情報環境」を整え、科学をめぐる言論空間を豊かにすると筆者は考えている。


 これはその通りと思い膝をうちました。そうです、批判するのに最初から旗幟鮮明にすることは上手いやり方とはいえません。「手堅いファクトと厳密なロジックで、結論を急がず粘り強い議論を継続すること」、わたしが本シリーズで試みたのも、まさしくそれでした。(成功しているかどうかわかりません)

 さて、上記の´△如◆屮優奪箸STAP細胞が再現されたって言ってたよ!」となっていた方も、納得していただけたでしょうか?

 わたしの友人は、「STAP細胞がアメリカで再現されたそうだ。新聞に載っていた」と言うので、再度「どこの新聞?」と確認をとると、上述の「ネイチャー・サイエンティフィック・リポーツ」のことだったわけです。「新聞に載っていた」というのは、友人のそのまた友人が言っていたのだそうで。
 そこで、上述のようにその雑誌は「ネイチャー」社の発行ではあるが査読基準のゆるい雑誌で、権威はない、ということをじっくりご説明したわけです。
 やれやれ、紛らわしく手間暇のかかることですね。大人は正確な知識をもっていないといけません。

 それにしても、この“ガセ情報”を2度にわたって流したジャーナリスト上田眞実氏とはどういう人物なのでしょうか・・・。
 この人物も今後小保方晴子さん絡みで繰り返し登場するとみられますので、一度触れておきたいと思います。

2.“ジャーナリスト”上田眞実氏、「木星通信」、「ビジネスジャーナル」

 前述のサイエンスライター粥川氏の△竜事の中に、「記事の著者の個人攻撃は・・・」という文言もあり、その著者というのがジャーナリスト上田眞実氏のことです。
 なのでここでこの方に言及するのが正しいのかどうかわかりません。しかし、STAP細胞や小保方晴子さんについて繰り返し真偽のはっきりしない情報を発信する、わるくいえば「デマ元」のような存在である以上、この方の位置づけをしておかないといけないように思います。

 上田眞実(まみ)氏。女性。自称ジャーナリスト、市民記者。ブログ「木星通信」執筆者。「小保方晴子さんへの不正な報道を追及する有志の会」代表。
 これ以上のことは、経歴も年齢も不明です。顔写真もどこにも出ていません。たまに原発報道に出かけたり、上杉隆氏講演会に出かけたりしているようですので、小保方晴子さん本人ではないようです。
 粥川準二氏ら、STAP事件を研究するサイエンスライターの会合に“乱入”したとの噂もあります。

 その「木星通信」というブログをみてみると・・・
>>http://jupiter-press.doorblog.jp/  
 このブログの中ではいろいろな話題を扱っていますが、先ほどの「ネイチャー・サイエンティフィック・リポーツ」に載った「STAPに似た細胞」こと「iMuSCs細胞」に関する昨年12月の記事をご紹介しましょう:
>>http://jupiter-press.doorblog.jp/archives/46236779.html
 おもしろいことに、この記事はこの論文を完全に「誤読」しています。この記事の下のほうまでずっとスクロールしてみると・・・、引用されたこの論文のアメリカ人の著者は、この新たに発見された細胞は、STAP細胞とは違うものですよ、ということを明確に言っています。

「我々の知見は、iMuSCsはこれまで研究されたすべての細胞型とは異なる特性(形態、大きさ、および遺伝子発現プロフィール)を有する細胞のユニークな、非常に敏感な集団であることを示しています。」

 STAPというより小保方さんの過去の他の論文も参考のために読んだが、それとは違うものですよ、と言っているのです。
 この論文を素直に読めば「小保方晴子さんの発見は真実だった!」なんていう、ドヤ顔の見出しになるはずはないのですが。完全に「飛ばし記事」であります。


また、「小保方晴子さんへの不正な…有志の会」のブログをみてみると・・・
>>http://blog.livedoor.jp/obokata_file-stap/

 昨3月31日には「 小保方晴子氏 HPを開設「STAP HOPE PAGE」で プロトコルを 公開へ。」
 また本日4月1日は、「小保方晴子氏のHP、何者かがサイバー攻撃、閲覧不能状態に。」とあり、まるでここの会は小保方晴子さんのスポークスマンのようです。

 そしてこの同じ上田眞実氏が、去る3月19日には「ビジネスジャーナル」に投稿して、12月に一度否定し笑われた「iMuSCs細胞」のまったく同じ論文の話を蒸し返して、新たなスクープであるかのように言い立てた、ということです。
 
 この方にたいする「人格攻撃」は、しないことにします。でも、読者の皆様はここまでのお話で、この方の行動パターンをある程度読み取れたのではないでしょうか?
 今後もSTAP細胞がらみで同じようなことを繰り返す可能性がありますので、ここでは「上田眞実氏」「木星通信」という固有名詞を押さえておいていただくとよいのではないかと思います。

 そして、この上田氏の記事をちょこちょこ載せている「ビジネスジャーナル」というWEBニュースサイトにも触れておきましょう。
 「Buisiness Journal(ビジネスジャーナル)は株式会社サイゾーが2012年4月から運営する企業・経済ニュースなどビジネス記事を扱うサイトだ、とWikiにはあります。
>>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%BE%E3%83%BC

 その「BJ」のサイトはこちら
>>http://biz-journal.jp/

 きょう4月1日の画面をみますと、「障害者400人が鎖に繋がれた「呪われた村」! 恐ろしいほど残酷な差別の実態とは?=インドネシア」という悲惨な写真入りニュースなどと並んで、「STAP現象、理研で再現されていたことが発覚…若山教授、不当に実験成果物を大量持ち出し」とう見出しが並んでいます。これも上田眞実氏の記事。
>>http://biz-journal.jp/2016/04/post_14498.html 

 この記事がまたですね、若山照彦氏と理研の間の「成果物譲渡契約書」なるものを「スクープ!」と称して公開しているんですが、この契約書が存在しているにもかかわらず、記事のあとのほうでは「契約もないのに物を持ち出した」と言っていたり、また記事の3ページ目では「理研の再現実験ではSTAP現象は再現されていた!」と言っているがよくみるとそれは「STAP“様”細胞」でしょ、多能性を有する「STAP幹細胞」じゃないでしょ、と、話の筋を知っている人ならすぐ突っ込める文章。この方の頭の中は、どうなってるんでしょうか。

 というわけで、支離滅裂な記事を書く上田氏も上田氏なら、それをノーチェックで載せている「BJ」のほうも相当いい加減。

 「BJ」って、名前だけみると真っ当なニュースサイトのように見えますが、しかも株式会社サイゾーの運営なら真っ当だろう、と思いたくなりますが、実態はニュースサイトを名乗るのもおこがましいような、怪しげなサイトだと思っていいようです。

 こういうことも、あなたの職場の若い人が「だって新聞社のサイトでそう言ってたもん!」って真に受けてしまうことがあり得ますので、知識として持っておいたほうがよいでしょう。



3.武田邦彦氏、青山繁晴氏、西岡昌紀氏・・・小保方晴子さんを愛するおじさま評論家たち


 2016年現在、小保方晴子さんを擁護する有名識者、評論家の方はいまだにいらっしゃるようです。
 その筆頭が、武田邦彦氏(中部大学総合工学研究所特任教授)、青山繁晴氏(独立総合研究所社長)、西岡昌紀氏(内科医)。
 個々の方について論評するのは控えさせていただきます・・・。
 おひとり挙げるなら、武田邦彦氏が3月に入って動画で小保方晴子さんを擁護していたのを聴かせていただき、そのあまりの無根拠・印象論ぶりに失笑せざるを得ませんでした。しかし、一般人の擁護論の人というのは、そのような性質をもった人びとなのです。印象論、感覚でものごとを理解する人たち。そこに対しては正しいマーケティングをしていると言うべきかもしれません。

 しかし、やはり仕事の世界に生きるわたしの受講生さんや読者の方々は、もうちょっとしっかりした論理的な思考方法をしていただきたい。ので、このブログや小保方手記のシリーズを書いてきたわけであります。

「小保方さん擁護おじさま」、もうお一人、このブログにも過去に登場されたちょっと有名なエコノミストの方がいらっしゃいましたけど・・・(略)

 というわけで、エイプリルフールにお送りした蛇足、「社会人のための『小保方情報』解読講座」ここまででございます。

 あっ、正田はアホみたいに正直な人間なので、エイプリルフールだからといって「ウソ」はつけないのです。代わりに「ウソ対策」の記事をUPするのです。


 読者の皆様、桜満開の良い週末をお過ごしになりますように。



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日

 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第14弾。いよいよ最終回です。









 今回の内容は以下の通りです:

はじめに:小保方さん残された問題:奨学金・研究費返還問題、博士号訴訟?
1. 女性活躍推進―新たな段階、ピリッとしろ男性上司たち!!
2. 発達凸凹対応―「差別」を卒業し、10人に1人の「個性」を知る
3. 言葉がキレイ、お顔がキレイ、経歴詐称オンパレード
 ―もういちど「行動承認」、痛みを踏まえて振り返れ

 それではまいりたいと思います―



はじめに:小保方さん残された問題:奨学金・研究費返還問題、博士号訴訟?

 前回もお知らせしましたように、STAP細胞問題をめぐり理研OBによる窃盗容疑の告発は、被疑者不詳のまま兵庫県警が捜査書類を検察送致し、一応の捜査終結となりました。(ただし「検察送致」のあと「起訴」になることはまれではありますがあるそうです)

 しかし、小保方晴子さんの“受難”はまだまだ続きそう。

 1つの例に、「奨学金問題」があります。

 小保方さんは、学術振興会の特別研究員制度を利用して毎月20万円の奨学金と、年間60万円の研究費を3年間、受け取っていました。この「DC1」というカテゴリに博士課程1年目から採択されるのは、通常よほど優秀な学生だそうであり、ここにも「裏口」「コネ」の影がちらつきます。ともあれこのDC1で、小保方さんは3年間で総額900万円を受け取っていました。
 ところが、この学術振興会の特別研究員制度の規定では、研究不正を行ったら奨学金、研究費は返還しないといけません。

 参考URL:「遵守事項および諸手続の手引」
>>https://www.jsps.go.jp/j-pd/data/tebiki/h28_tebiki.pdf
(3月31日現在PDFへのアクセス不能)

 これに加え、小保方晴子さんは早稲田の応用化学会給付奨学金も受給しており、
参考URL:
>>http://www.waseda-oukakai.gr.jp/gakusei/shougakukin/kyuuhu-shougakusei-2007.html

 さらにCOE留学費用も受給していたとのことで、これらが時期的に重なっていれば、不正受給になる可能性があります。少なくとも上記の日本学術振興会特別研究員の「遵守事項および諸手続の手引」には抵触します。

 したがって、これらの奨学金・研究費の返還を求められる可能性は大いにあります。

 STAP細胞論文をめぐる問題で、理化学研究所(理研)が不正調査や検証にかけた経費の総額が、8360万円に上ったとのことです。主な経費の内訳は、STAP細胞の有無を調べる検証実験1560万円▽研究室に残った試料の分析1410万円▽二つの調査委員会940万円▽記者会見場費など広報経費770万円など。弁護士経費など2820万円、精神科医の来所など関係者のメンタルケアに200万円です。
  一方で、小保方晴子さんには、論文投稿料の約60万円を返還請求したのみでした。(2015年3月21日、毎日新聞など)。この60万円は同年7月小保方さんから返還されたそうです。

 それ以前には「年間6億円の研究費」といった庶民感覚からするとびっくりするような額が週刊誌を賑わせておりました(「週刊文春」2014年6月19日号)。それらについての返還は求められないそうです。



 一方で今年3月25日、STAP HOME PAGE というサイトが立ち上げられ、この中でHaruko Obokata名の人がSTAP細胞プロトコルを公表しました。また昨年11月、博士号剥奪の決定をした早稲田大学に対して訴訟を検討していることを明らかにしました。
 3月31日現在、このサイトの真偽は不明です。→代理人の三木秀夫弁護士のコメントにより、このページの作者は小保方晴子さん自身だそうです。

 というわけでこの問題はまだまだ続きそうです…。

 さて、現状をこんな風にまとめたうえで、今日の記事の本題です:



1. 女性活躍推進―新たな段階、ピリッとしろ男性上司たち!!

 前回の記事の末尾近くに、米雑誌「ニューヨーカー」に今年2月掲載されたSTAP細胞に関する記事“The Stress Test”と、それを転載した「週刊現代」の記事のご紹介をしました。

>>http://www.newyorker.com/magazine/2016/02/29/the-stem-cell-scandal
>>http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48272 (日本語版)

 しかし、上記の記事をみて、わたしが「ああ、これはやはり『フジヤマ・ゲイシャ』だな」と思った部分があります。
 それは、「日本の女性研究者」に関する部分。

「この仕事(STAP)の背後にいた『革命児』が小保方晴子であった。彼女は男性中心の日本の科学界に女性として一石を投じた。彼女は他の女性に比べて、男たちとの駆け引きの中で生きることに長けていた。」

「それに対して小保方はこう返した。『日本では女性研究者は二流です。たとえ年下の大学生でも、男性が必要としたら、女性は顕微鏡を使うのを諦めないといけません』」(日本語版より)

 これを読むと、日本では女性は二流扱い、その中で小保方晴子さんは突出した才能に恵まれ頑張っていた人、と読めてしまいそうです。
 どうもこれは、アメリカ人の先入観に合わせて小保方さんがまた「盛って」いるのではないか?と私には思えます。

 日本の理系の研究室の女性活用の構図というのは、それほど単純な性差別問題ではありません。もっと複雑な様相を呈しています。

 わたしの正直な感想を言いますと、過去にみた理系の研究機関では、むしろ女性研究者たちは奇妙に幼く(それこそ小保方さんが時には小学生のように幼くみえたように)、年齢にふさわしくない、思考力不足や特定の論点への固執を繰り返していました。男性指導者の考えから抜け出せず頭が切り替わらないという傾向も顕著でした。
 社会人として鍛えられていない。
 そういう人が残りやすいのか、そのように育てられてしまうのか。

 2014年7月1日、理研の高橋政代プロジェクトリーダー(54)が、「理研の倫理観に耐えられない」とツイートし、iPS細胞の臨床応用の中止も考えることを表明しました。(実際には9月にiPS細胞から作った網膜の細胞を、「加齢黄斑変性」の患者に移植する臨床研究の手術を行い、この患者は1年後も良好な経過だったとのこと)

 研究組織に限らず多くの企業・組織共通できく話です。ある世代までの女性は、パイオニア精神をもって男性並みに頑張る。ところがある世代から下は、見た目や態度の可愛らしさで男性上司に気に入られようとする女子が増えてくる。
 小保方晴子さんは、そのあとの方の女性の代表格です。

 ここは、このシリーズの上司編(12)(13)でみたように、バブル世代を中心とした男性上司たちの心の引き締めをお願いしたいところです。

「女の子は可愛いほうがいいなあ」
「僕の言った通りのことを上手に相槌を打ち、合いの手を入れ、素直にやってくれる部下は、可愛いなあ」

 こういう心の隙に忍び寄ってくる部下がいます。男性、女性に限らず。彼・彼女らは、上司の心の弱いところを目ざとく見つけてきます。


 自分の中にそういう「弱さ」がないだろうか。上司特有の孤独に耐えられず、甘い言葉で言い寄ってくる部下に依存するようになっていないだろうか。女性部下との間に疑似恋愛関係のようなものを作りたいという願望がないだろうか。上司は、つねに自己点検をお願いしたいものです。

 「女性活躍推進法」が4月1日から施行され、従業員301人以上の大企業は、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが新たに義務づけられます。その中には、女性管理職や女性役員の数値目標といった要素が入ってきます。
 是非、その中でも本当に優秀な、だれもが納得する女性人材の選抜を行っていただきたい。「数ありき」の女性管理職づくりなどは論外。もちろん「見た目が可愛い」などという理由も論外です。実力主義を貫く中で、浮かび上がってくる候補を見出すようにしてください。


2. 発達凸凹対応―「差別」を卒業し、10人に1人の「個性」を知る

 このシリーズでは「プロファイリング編」の(3)(4)(5)で、小保方晴子さんに発達障害の可能性があることに触れました。
 犯罪や研究不正といった問題のたびに「発達障害」の要素がクローズアップされると、当事者のかたがお気の毒です。とはいえ、ことさらにこの問題にふたをしておくわけにはいきません。何しろ何度も言いますように10人に1人の障害であり、ほとんどの人にはどこかにそれらしい形質があり、一種の「個性」と捉えてしまってもいいぐらいです。マネジメント指導の中では今や欠かせなくなっています。
 発達障害は、できれば幼少の頃にご家庭で見つけだしてほしい障害です。子供のころから始めるのと大人になってからでは、療育の困難さが全然変わってきますから。大人になってから発見されると、社会適応が難しくなります。
 しかし現実には、仕事に入ってから発見されることが非常に多いのです。

 研究職の場合ですと、エジソンがADHDだったことでもわかるように、発達障害の人は一般社会より多いと思われます。ただわたしの経験でも、「発達障害」という概念が研究機関のマネジメント職の人々に普及しているとはいえません。「研究者は少し変なぐらいの奴がいいんだ」これが常識のため、研究機関には「びっくり人間ショー」のような人々がいます。しかしその「変」の中身を丁寧に見極めようとはしていません。意外に、この「発達障害」「アスペルガー」の話題をタブー視して避ける方々によくお会いしました。

 発達障害の中にもいろいろなタイプがあり、“症状”の出方は十人十色です。部下がそう(発達障害)だと分かるまでには、マネジャーはその独特の個性に振り回され、非常に悩むものです。部下10人の中に1人発達障害の人がいれば、マネジャーの悩みの9割はその人のことだ、というぐらいに。

 一方で、いったんマネジメント研修の中で一通りのご説明をし、その人の場合はこういう特性である可能性がある、と理解してしまうと、マネジャーたちは嘘のように悩みから解放されます。また特性に合わせたマネジメント、というのもちょっとした工夫で難なくできるようになります。ですのでどの職場でも、発達障害の人に対するマネジメント指導の研修というのは入ってほしいものだと思います。

 小保方晴子さんの場合はどうか、というと、恐らく空想に入りやすくぼーっとしやすい、時間管理が下手な人なので、上司が毎週のように進捗確認をしてやり、それに合わせて「次の一手」の行動計画を作ってやること。また、ご本人がそうしたやや厳しい指導に入ることを厭わないこと、が必要になります。

 もしご本人が管理されることをイヤがり、かつ成果を出せなかったらー。残念ながら、そのときは「あなたは研究者に向いていない」と引導を渡すことになりますね。

 こうした、発達障害の人の側が管理されて仕事することを受け入れる必要性というのは、やはり子供の頃からの療育の中で、自分の特性を理解しそのうえで「生きる」とは何か、「働く(収入を得る)」とは何か、を繰り返し問い直し仕事の枠組みの中で生きることを受け入れることが必要になります。

詳しくはこちらの記事参照
「われわれは覚悟のある障碍者を雇用します」
>> http://c-c-a.blog.jp/archives/51884894.html

 残念ながら、小保方晴子さんの場合はどうか、というと、このシリーズの(4)でみたように、研究者のお母さん、優秀なお姉さんたちの家庭に育ち、また「発達障害」という概念のない時代の心理学理論のもとで育ったため、その極端な能力の凸凹を正しく見いだされることなく、身の丈以上のセルフイメージを持って育ってしまった可能性が大です。言語能力が突出して高く、実行能力がそれに伴っていなかったのですが、その実行能力の弱さが見いだされませんでした。結果的に嘘、言い訳、他責の人になってしまいました。

 そして普通の仕事に就けば何かしら行動の遅さとか確実性の低さが見いだされ矯正されたかもしれませんが、理系の研究職では、顕微鏡を覗きながらぼーっとしていても、周囲からその実行能力の低さが見いだされにくい環境です。研究職は普通の仕事より、はるかにチェックが働きにくいのですね。

 研究機関の方はぜひ、若い研究職の方がこういう人なのではないか、と一応のアンテナは立てておいていただきたいものです。それとともに発達障害の様々なタイプについて、そういう人のマネジメント法について、学習していただきたいものです。
 またどの職業においても、発達障害の方にはさまざまな個性があります。10人に1人はいらっしゃるのですから、あまり不安になったり感情的になったりすることなく、その人の個性を理解し、働きやすいように環境整備をしてやっていただきたいものです。


3. 言葉がキレイ、お顔がキレイ、経歴詐称オンパレード
 ―もういちど「行動承認」、痛みを踏まえて振り返れ

 このシリーズ連載中にもTVコメンテーター・自称コンサルタント「ショーン・K」氏の経歴詐称問題が出、しばらく雑誌を賑わしました。
 同氏のコメント力はなかなかのものでしたが、しかしそれは当意即妙に辻褄を合わせる口先の技術だった、ともいえます。そして「整形疑惑」も一緒に明らかになってしまいました。わかりやすい例ですね。
 
 ことほどかようにわたしたちは、「見た目」と「言葉」に翻弄されやすい生き物。
 
 そこで、我田引水とお叱りを受けそうですが、わたしが任意団体、NPO時代を通じて10数年にわたり確立してきたマネジメント手法、「行動承認」が有効であり、重要であることを改めて申し上げるのをお許しください。

 「行動承認」とは、マネジャーが部下の行動をみて、「あなたは、○×(行動)をしたね」「やってくれたね」と、事実そのままに認める、というものです。「すごいね」「偉いね」等の褒める言葉を使う必要はありません。事実の通り認めるのです。
 これを習慣づけて繰り返すと、部下は極めて能動的になり、指示されなかったことも自発的に考えてやってくれるようになります。また信頼関係が高まり、指示したことや教えたことも正確に受け止めてくれます。職場の行動量もコミュニケーション量も飛躍的に上がり、業績が上がります。
 行動承認の下では、過去13年間にわたり「業績1位マネジャー」が生まれています。

 過去の受講生の皆様、行動承認のやり方や意義、効果についてはもう「耳タコ」でいらっしゃると思いますが、もう一度確認していただきたいのです。

 みなさんは、「話を聴く(傾聴)」も学ばれていると思います。
 しかし、よく混同してしまうところですが、「傾聴」はそれ自体が目的なのではない。「行動承認」のためにこそある、と思ってください。
 能弁な人が世の中にはいらっしゃいます。今の時代、スマホ全盛で行動力が軒並み下がっています。子供時代から手を動かして何かをやったことがなく、弁だけが立つ人が過去に比べて増えています。言い訳のうまい人も増えています。
 言葉を聴いても、行動の伴わない言葉に惑わされないでください。本シリーズ(2)でお伝えしましたように、相手が本当にその行動をとったのか、きちっと「裏をとって」ください。そして、本当に行動をとったことに関してはしっかり「承認」してやってください。

 出発点で少々行動力の弱い人でも、それを繰り返していると、自然と「行動すれば承認してもらえるんだ」と刷り込まれ、行動力のある人に育っていきます。

 また、上司のあなたの側も、少々面倒ではあっても「裏をとる」ことを習慣づけていれば、部下が「やっています」と言葉だけで、実際はやっていなかった。などというとんでもない事態で真っ青にならずに済みます。
 過去に比べ、こうしたマネジメント法の必要性はいや増しています。転ばぬ先の杖、行動承認。

 「小保方騒動」を眺めてきた今、それを他山の石としてわたしたちが学ぶべきは、何か。最終的には「行動承認」これのさらなる徹底を、というお話になるのです。

 受講生様方、大丈夫ですね。






 14回にわたり連載させていただいた「社会人のための『小保方手記』解読講座」これにて終了とさせていただきます。(今後も各章にちょこちょこ追記させていただくかもしれません)
 当初は全体の構成も立てずに書いてきたこのシリーズでしたが、途中から「プロファイリング編」「読者編」と徐々に構成らしいものができ、中盤に「STAP細胞はあったのか」について、優れたAmazonレビュアーの皆様のお蔭をもって、独自の見解をご提示することができました。そして「上司編」には、とりわけ多くの上司世代の方々のご反響をいただくことができました。
 この間、意気阻喪するようなこともありましたが、読者の皆様の応援のメッセージに励まされてまいりました。長い間のご愛読、ありがとうございました。
 また、差し支えなければ全体のご感想を、ブログコメント、FBコメントその他の形でいただければ嬉しく思います。


これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第13弾です。

 前回は、

1. 時系列でみる 小保方さんの「バブル世代おじさま」たち
2.「ええかっこしい」の系譜(1)常田聡氏の“教えない教育”
3.「ええかっこしい」の系譜(2)笹井芳樹氏の前のめりとイッチョカミの悲劇


という内容を取り上げました。
※詳しくは第12回参照
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html
 今回は、残りの上司たちについて。

4.「無関心」⇒「擁護」⇒「放棄と紆余曲折」:若山氏
5. 闇の紳士たち?:大和氏、バカンティ氏、セルシード社


 この人たちを取り上げようと思います。
 それではまいりたいと思いますが、その前に。

 例の「告発状」について、結果が出ておりました。
 昨3月28日、「STAP細胞論文の研究不正問題に絡み、舞台となった神戸市中央区の理化学研究所の研究室から、胚性幹細胞(ES細胞)が盗まれたとする窃盗容疑で告発を受けていた兵庫県警は28日、容疑者不詳のまま捜査書類を神戸地検に送付し、捜査を終えた。」
との報道が出ました。
 このES細胞窃盗容疑の告発の件については、本シリーズでは「研究不正問題の本筋の話ではない」と考え、これまで触れないできました。
 正直、昨年5月の告発状受理以来これまで捜査が継続していたので万一、窃盗が立件されるようなことがあれば、小保方さんの研究の日常の一端がわかるかも?という期待があったのですが。
 シリーズの(9)でご紹介したパルサ説では、「STAP細胞はES細胞混入ではない」という立場をとっていることもあり、ここではこの告発の件を重視しないできました。
 ・・・と、少し言い訳めいているわたしです。

 それでは改めて本日の内容にまいりたいと思います―



4.「無関心」⇒「擁護」⇒「放棄と紆余曲折」:若山氏

【理研・2010〜2012】
若山照彦氏 1967年4月1日(48歳、理研チームリーダー=当時、2013年より山梨大教授)

 若山氏は、小保方晴子さんの手記『あの日』では、典型的な悪役として登場します。『あの日』だけを読まれ、他からあまり情報を得ていない方ですと、「若山氏がすべてを仕組んだ黒幕だ!若山氏は怪しからん!」と、なってしまわれる方も多いようです。
 私個人的には、あまり『あの日』の若山氏に関する記述をそのままここに引用するのは気が進まないのです。といいますのは、このシリーズの「プロファイリング編」でみましたように、小保方晴子さんの特性としてかなりの空想癖がありそうです。またこの本全体にも事実関係の異同が多く、実験データも正確に残していないことでもわかるように、物事を正確に記録・記憶するタイプの人かどうか疑わしい。カギカッコの言葉として書かれていることも本当にそう言ったのか、空耳や記憶違いではないのか、また本当だとしても単なる社交辞令ではなかったのか。はなはだ疑わしいのです。
 よって、それをここに引用することはかえって小保方晴子さんによる若山氏への攻撃に手を貸すことになってしまいそうな気がするのです。

 若山氏をよく知るという人物によれば、同氏は非常に実直な人物であり周囲から信頼されているという言葉が出ます。
 ・・・ただ、本シリーズではことSTAP研究に関しては、完全に「シロ」とも言い難いかな?という立場です。もちろん第一の責任者は小保方晴子さんです。

 また、『あの日』だけでは若山氏の研究業績全体は決して見えないだろうとも思います。
 手っ取り早く、Wikiの若山照彦ページのリード部分だけでも御覧ください。

若山 照彦(わかやま てるひこ、1967年4月1日 - )は、日本の生物学者。茨城大学農学部卒、東京大学博士(獣医学)[1]。
世界で初めてクローンマウスを実現した人物であり、マイクロマニピュレータの名手として知られる。2008年には16年間冷凍保存していたマウスのクローン作成に成功し、絶滅動物復活の可能性を拓いた[2]。更に2014年には妻の若山清香とともに、宇宙マウスの誕生に成功している[3]。また、2014年に騒動となった、STAP論文の共著者でもある[4][5][6]。
ハワイ大学医学部助教授、京都大学再生医科学研究所客員准教授、理化学研究所CDBチームリーダー等を経て、2012年より山梨大学生命環境学部教授、2014年より山梨大学附属発生工学研究センター長兼務[7]。日本学術振興会賞、文部科学大臣表彰科学技術賞、材料科学技術振興財団山崎貞一賞等を受賞。

>>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8B%A5%E5%B1%B1%E7%85%A7%E5%BD%A6


というふうに、STAP細胞以外にも壮大な広がりのある研究をしてきた人です。

 またその研究の日常というのは、日々マイクロマニピュレータを覗きっぱなし、非常に集中力を要し目を酷使する作業であること。
 
 例えば、こちら

理研若山照彦氏インタビュー「試し終わらない毎日。」(2011年8月)
>>http://article.researchmap.jp/tsunagaru/2011/08/


「現在、僕の研究室では、マイクロマニュピュレータという機械を使ってマウスの卵子から核を抜き、作ったクローン胚を入れる実験を午前の日課にしています。マウスの卵子は、人の髪の毛の断面よりもやや小さい、80マイクロメーターぐらいのサイズ。でもマイクロマニピュレータを使うと手の動きをマイクロサイズの微細な動きに換えてくれるため、顕微鏡を見ながらいわばサッカーボールを扱っているような感覚で、操作ができるようになっています。3ヶ月ぐらい訓練すれば、手でできることは何でもできる機械です。しかし1日に100、200個と作業すると、集中するのでかなり疲れるんですね。昼にひと息入れて、夕方からは作ったクローン胚をマウスの子宮内へ移植するというのが研究室の通常スケジュールになっています。」

と、毎日かなりハードな実験ぶりです。

もう一つ注目されるのが、


「研究所内にも分子生物学の共同研究者がいますが、理論の仮説を作るにも、研究の材料になる情報が必要です。まずそれを最初に作る人間がいなければならない。そこで僕らはもう思いついたアイデアはすぐ試し、クローン作製に効果があるか確かめます。ほとんどの場合全く効果はなく、試行錯誤の連続です。」

ということを言っています。
 ありとあらゆるアイデアを試す。その精神の延長線上にSTAP細胞研究もあった、と読むこともできます。このインタビューは小保方晴子さんがポスドクの客員研究員として若山研に合流した後のものです。

 どうも、口ぶりからは「可能性がゼロに近くてもあるならやってみる」そんな感じにきこえなくもありません。
 ただし。ここは矛盾するところですが、小保方さんが若山研に籍を置くようになって以降、STAP論文を投稿した先はネイチャー、セル、サイエンスという一流誌でした。(ただし軒並みリジェクト)それをみると、どうも「可能性は低いが当たれば大きい」と若山氏が考えていたであろうことも伺われます。

 あるいは、こちら
生命科学DOKIDOKI研究室
「第11回 独自のアプローチでクローン技術の再生医学への応用をめざす」(2011年)
>>http://www.terumozaidan.or.jp/labo/interview/11/05.html 


 ここでは、
「マニピュレーターを操作するのは意外に体力がいるものなんです。午前中集中して操作すると、午後は3時間くらいなにもできないほど疲れてしまいます。研究というのは体力勝負なんですよ(笑)。」
ということも言っていて、どうやらマニピュレータ−を覗いてるか休んでいるか、という時間の過ごし方をしていたよう。職人さんですネ。

 「若山氏はなぜ小保方晴子さんをもっと管理していなかったか?」

 こうした疑問が出ますが、まず、小保方さんは若山氏の研究室の正規の研究員ではなく(身柄は若山研、雇用はチャールズ・バカンティ氏)という立場のいわば「外様」。もともとが違う指揮命令系統の下にいる人なのです。それに加えて若山氏のこの研究生活ぶりであると、小保方晴子さんの実験ぶりについては、見ている余力がなかったのではないか、と想像されます。

 言うなれば「放置プレイ上司」。ではありますがかなり同情できる、無理もないといえそうな事情であった、ということです。
(あ、わたしの受講生さんだったらやっぱり、「ちゃんと見ましょうね」と言いたいですね)



 研究室の見取り図というのがおもしろいことにネット上にUPされています。
「STAP細胞研究当時の若山研究室」
>>http://image.itmedia.co.jp/news/articles/1412/26/l_yuo_chosa_03.jpg

 これで見ますと、研究室での若山氏と小保方さんの席はかなり近い。しかし、若山氏の仕事の本筋であるマイクロマニピュレータは、この図の左上の「はい操作室」にあったと考えられるので、1日の大半をここにいると、小保方さんと接触することはほとんどなかったであろうと考えられます。


 『あの日』における、若山氏への批判材料は、大まかに以下の通りです。

1) STAP細胞研究に前のめりになり、「キメラマウスを作らなければ意味がない」と、自分が主導するかのような発言をしていたこと。特許の51%を要求していたこと
2) 実験にコントロールを置かない、論文にデータを仮置きするなど、不適切な研究方法をとっていた
3) 論文不正疑惑が起きたとき、途中から手のひらを返したように「豹変」し、論文撤回を他の共著者に呼びかけた
4) その後2014年3−7月にかけて頻繁に記者会見を行い、マウスの系統問題などで発言がコロコロブレたこと
5) 理研の再現実験に参加せず、自らキメラマウスを作製しなかったこと


 やはりこれらだけを読むと「若山氏怪しからん!」と、なってしまいそうですけれど。

 これについて、今わかっている若山氏側の事情を述べますと、

1) 若山氏の主導であるかのような記述。この記述は本来小保方さんが若山氏にキメラマウス作りを委嘱した経緯を、その直前に書いてあるにもかかわらず直後に捻じ曲げて書いてしまっています。委嘱した経緯は、このシリーズの(9)で述べたとおりで、小保方さんはSTAP細胞に多能性があることを証明するプロセスの第一段階第二段階までできたが雑誌に論文をリジェクトされたため、次の段階であるキメラマウス作りを若山氏に委嘱しなければならなかったとあります。ですので若山氏はあくまでリレーのアンカーを走っただけであり、リレー全体を構想したのは小保方さんです(『あの日』pp.53-64)
 また特許の配分については、小保方さんと若山氏の名の入っている国内でのSTAP研究に関する出願中の特許をこちらから見ることができますが、
https://www7.j-platpat.inpit.go.jp/tkk/tokujitsu/tkkt/TKKT_GM403_ToItem.action  この特許には7人の発明者がおり、請求項目が74あります。74の請求項目のうち、若山氏が関わったのが何項目あったかで特許配分が変わってくるでしょう。この特許配分をもって若山氏がこの研究の主導者だとみなすことはできないのです。

2)  不適切な研究方法:不明。(もし事実だとすればダメージが大きいかも、という気はします。しかし研究現場なんてこんなものだ、という声もあるのですね)

3)  2014年3月、論文撤回の呼びかけ。これは、このシリーズの(9)でみた通りであります。テラトーマがそもそもできていなかった。画像は博士論文からの転用とわかった。研究の根幹を揺るがす情報が出てきたこの時点で若山氏が「これはまずい」と思ったとしても不思議ではないのです。たとえ若山氏自身にも多少のまずい事情を抱えていたとしても。
 なお、若山氏は2014年2月中には複数の雑誌のインタビューに応じ、「自らSTAP細胞を作製したことがある、小保方氏立ち会いの下で」等と研究を擁護する発言をしています。この理由としては、・笹井氏の場合と同じく「目くらまし」が入っていた・理研の上層部からも「小保方さんを守れ」と指令が出ていたらしいこと ・若山氏自身がクローンマウス成功をNatureに掲載したとき、世界中で追試するもうまくいかず、自ら各国の研究室を飛び回ってやり方を指導し追試を成功させた経験の持ち主であること、等の要因が考えられます。しかしそうした要因があっても「守り切れない」と感じる決定的な情報が出てきたときには、撤回するのが自然だったのではないでしょうか。

4)  2014年発言のブレについて。若山氏は3月10日、6月16日、7月23日と、会見や記者発表を行いました。このうち3月10日は論文撤回の呼びかけ。6月16日は小保方さんに渡したマウスと小保方さんが作製したSTAP細胞が異なり、STAP細胞は若山研究室で飼育していたマウスのものではなく外部から持ち込まれたものだという、小保方さんによるES細胞混入説を裏付けるような発表。ところが7月23日にはこれを訂正し、以前に研究室で飼育していたマウスと特徴が一致するとしました。
 しかし、これは「陰謀」というレベルのことなのかどうか。わたしは首を傾げます。
「混乱していた」と説明してもよいことなのではないか、と思えるのです。
 若山氏にしてみると、4月9日の小保方晴子さんの会見、同16日の笹井芳樹氏の会見、いずれも「若山先生が」「若山教授が」と、若山氏に責めを負わすものでした。理研を離れて山梨大にいる若山氏にしてみれば、「オレはハメられる」「破滅させられる」と、恐怖感にかられてもおかしくありません。
 8月に入り、笹井氏の自殺の報に接した若山氏は、精神のバランスを崩しカウンセリングを受け始めた、と発表します。科学者にとっては長期にわたるSTAP事件への報道の過熱化、時間的な拘束、ストレスは小保方さんに限らず、苦痛な日々であったであろうことは想像に難くありません。
 一方でこの年の7月30日、若山氏は妻の若山清香氏(同大学助教)とともに会見し、「宇宙マウス」の誕生を発表しました。国際宇宙ステーションで冷凍保管し地上に持ち帰ったマウスの精子が、宇宙線の影響を受けず、受精し仔マウスが生まれた、というもの。実験精神は旺盛であり、若山氏としては本来はこちらに、あるいはその他の研究に神経を傾注したかっただろうと想像されるのでした。
これを「保身」と責められるのか―、読者諸賢のご判断を待ちたいと思います。

5) 理研の再現実験に参加しなかったこと。これはやはり本シリーズ(9)に出た見解ですね。「テラトーマができていない」これを2014年3月にわかった段階で、若山氏は「この研究には意味がない」はっきりとモードが切り替わってしまったのです。そこで、再現実験に参加する意義なし、としたのです。

 『あの日』で指摘された批判点についての回答は、以上です。読者の皆様、よろしいでしょうか?




 さて、それでは、「テラトーマができていない」にも関わらず、STAP論文用に若山氏が作ったキメラマウスとは、一体何だったのでしょう。

 本シリーズとしては、若山氏の疑義としてこの1点を指摘しておきたいと思います。人によっては「若山氏が小保方さん引き留めのため、ES細胞を使ってキメラマウスを捏造していたのではないか(いずれは正しいSTAP幹細胞ができると思っていたため)」という見方もあります。
たとえそうであったとしても、本シリーズで繰り返しお伝えしていましたように、
「一番悪いのは小保方さん」
ここは、変わりません。若山氏はうっかり小保方さんの
「テラトーマまで、できたんですう」
という言葉を信じて、危ない橋を渡ってしまった、ということになります。

 『あの日』での熾烈な「若山氏バッシング」に応えて、若山氏の側が口を開く日はくるのでしょうか―。

 なお、若山氏の受けた処分としては、理研の出勤停止相当、客員研究員委嘱解除。また2015年に山梨大発生工学センター長の職を3か月職務停止となっています(既に復帰)。

「和モガ」というブログで、若山氏の疑惑についてまとめてあります。もしご興味のある方はどうぞ
>>http://wamoga.blog.fc2.com/



5.闇の紳士たち?大和氏、バカンティ氏、セルシード社
【東京女子医大TWINS時代】
大和雅之氏 1964年生(52歳)


 「闇の紳士たち」。本シリーズとしては珍しく、物々しい言葉を使ってしまいました。
 STAP研究にまつわるインサイダー疑惑、利益相反は「知る人ぞ知る」話題。ここでは既に文献に出ている情報を中心にご紹介したいと思います。
 
 若山氏との出会いから4年ほど遡る2006年。小保方晴子さんは早稲田大学を卒業、修士に進学。早稲田と東京女子医大が合同で設立した先端生命医科学センター (TWIns)で外部研修生となり、東京女子医大の大和雅之教授の指導下に。再生医療、組織工学の研究者として一歩を踏み出します。

 この大和教授の学生になったいきさつがちょっと「訳あり」のようだ、というお話を、前回しました。
 また、学部生時代に動物実験の経験が全然なかった小保方さんが、修士1年目にして超難しい実験に挑戦し、見事成功、その実験系を確立して学会発表して回るに至る、というちょっとミステリアスなお話を本シリーズの(2)に書かせていただきました。
 そこには、何があったのでしょう。

 ひとつの種明かしは、岡野―大和ラインの「セルシード閥」です。

 新しい名前が出てきました。
岡野光夫(てるお)氏。1949年3月21日生まれ、67歳。日本再生医療学会の理事長を務め、東京女子医大教授を退職後現在、特任教授。株式会社セルシードの社外取締役であり大株主。細胞シートの発明者。

 この人が、小保方さんの指導教官・大和教授の恩師でもあり、また早稲田の応用化学科の出身で小保方さんの先輩に当たりました。という、3人は学問的には大先生、弟子、孫弟子のような関係に当たります。

 そして岡野氏がセルシード社の実質的な設立者ですが、弟子の大和氏もまた細胞シートの多数の特許を持ち、セルシード社と緊密な関係にありました。

 当然、岡野氏と大和氏は細胞シートを応用した研究をどんどん発表したい。
 また、岡野氏は早稲田の応用化学科の後輩である小保方さんに思い入れがあった可能性もあるし、大和氏は前回触れたような別の恩師のご縁で、小保方さんを大事にしたかった。

 そんな3人の思惑が一致すると、小保方さんが嘘のような難しい実験をこなして大舞台で学会発表…というマジックができるのもあながち不思議ではないですね。
 とにかく、小保方さんは「手術の練習をした」とは一言も言ってないのに、難しい手術をしたことになってますからね。

 2006年の間実験三昧であった小保方さんは、2007年に学会デビュー。2007−08年にかけて、日本再生医療学会総会で2回連続、またシカゴでのバイオマテリアル学会年次大会や大阪での国際人工臓器学会年次大会など、学会発表を繰り返します。まるで、細胞シートのプリンセスのように。

 岡野氏、大和氏とも、セルシード社と密接な関係にありながらその「細胞シート」を使った論文において「利益相反」つまり、営利的な行為と公正な学術研究の立場が相反することを申告していなかった、という疑義が持たれています。これは大和氏が共著者として名を連ねるSTAP論文も、また両氏が共著者である、2011年に「ネイチャー・プロトコル」に掲載された(のちに撤回)小保方さんの論文でも同様です。

 単純なことのようでこれは大変根深いことです。岡野氏などは日本再生医療学会理事長を務めた立場ですから、利益相反行為の申告の重要性を知らなかったわけではないはず。
 この点が「ナアナア」であるということは、怖いことです。
 例えば近年臨床試験に製薬会社社員が関わっていたことがわかった「ディオパン」の問題と同様、ある製薬会社やバイオベンチャーが産学共同で開発した医薬品や医療用具の有効性を、大学で実験して裏付けるときに、開発者が有利になるよう色をつけたデータを論文に盛り込んでしまう可能性があるということです。
 また、動物実験の段階で色をつけたデータの論文が通ったものは、次に臨床実験の段階になっても、担当者が良い結果を出そうと焦るあまり良いデータばかりを選び出す可能性もあるわけですね。そうして、効果が十分ではない、また副作用が検証されていない医薬品や医療用具が認可されてしまうことになります。おお怖い。
 
 研究不正とまで言えなくても、このような「データ操作」はまかり通っているのだそうで、再度科学研究の自浄作用を望みたいところです。

 ・・・で、小保方さんの修士時代の細胞シート研究は何かの「不正」の影はなかったのかどうか・・・(2)にも書きましたがどなたか究明していただきたいものですね。

 2014年1月、STAP論文の「ネイチャー」掲載が発表されると、翌30日、セルシード社の株はストップ高になりました。
 詳しくいいますとセルシード社は、2013年夏に倒産の危機に瀕していましたがUBS証券と新株予約権付き証券発行及び第三者割当増資引受契約を結び、UBS証券より34億円のファイナンスに成功しました。倒産の危機にある状態でそれまで付き合いのない外資系証券会社が34億円のファイナンスを行うことは普通考えられず、「特段の事情」があったことが考えられます。その特段の事情とは、恐らくその年の3月、小保方さんがネイチャーに投稿したSTAP論文が査読者とのやりとりが続いており、掲載される可能性が高いこと。また同4月にはSTAP細胞の国際特許が出願され、10月に公開されました。いずれも部外者には知りえない情報であり、ここにインサイダー取引が行われた余地が高い、とみられています。(『STAP細胞に群がった悪いヤツら』(新潮社、小畑峰太郎、2014年11月、pp.41-46)

 実はセルシード社はそれまでにも目玉商品の細胞シートの実用化のめどがなかなか立たないことから経営不振にあえいでおり、小保方晴子さんの細胞シートの論文発表のたびに瀕死状態から息を吹き返してきたという実態だったそうです。 小保方さんにおんぶにだっこの会社なのですね。

 岡野氏と大和氏、いずれも細胞シートの発明者ですが決して安閑としていられない立場だったといえましょう。日本再生医療学会を押さえてはいますが、その中であの手この手と細胞シートを売り込む手練手管を練る必要がありました。プレゼン能力のある小保方さんはどうもそこへうってつけの人材だったようであります。

 「欲得・不正系上司」とこのシリーズで名付けてしまった意味がおわかりでしょうか。
 ちなみに大和氏、2014年2月5日に脳出血で倒れ、その年の4月から東京女子医大
先端生命医科学研究所の所長に就任。しかし所長代行を立て、出勤できない状態が続いています。
 
 

 お話変わって、次の「欲得・不正系上司」のところにまいります。


【ハーバード・バカンティ研時代】
チャールズ・A・バカンティ氏 生年月日不詳
 
 2008年、博士課程となった小保方晴子さんは岡野氏、大和氏と2人の恩師に可愛がられていたTWINSを離れ、ハーバードのC・バカンティ氏のもとに短期留学します。

 ご存知のようにこのバカンティ氏も“曲者”です。本来は麻酔科医でありながら生体組織工学(ティッシュ・エンジニアリング)の先駆者で、1995年にマウスの背中に人間の耳をつけた「バカンティ・マウス」で有名になりました。(しかし、これは耳の形の金型で作成した軟骨細胞を皮下に移植しただけと後に分かりました)

 「ティッシュ・エンジニアリング学会」と学会誌を主催する立場でもあり、岡野氏・大和氏と同様、この人の指導下であればこの学会で発表するのは楽勝そうです。2002年よりブリガム&ウィメンズ病院麻酔科部長兼再生医科学研究室長兼ハーバード・メディカルスクール麻酔科教授。

 その1年前よりバカンティ氏は「スポアライクセル」(胞子様細胞)の仮説を提唱。これは生体内に眠った状態の小さい多能性細胞が存在し、刺激を与えることで初期化するというものでした。その仮説を忠実に再現しようとしたのが、われらがヒロイン小保方晴子さんです。

 小保方さんのバカンティ研での身分は、短期留学生、そしてどうやらバカンティ氏に個人的に雇われたアルバイトのような身分であったようです。(『STAP細胞に群がった―』p.54)『あの日』の中には、小保方さんがバカンティ氏のスポアライクステムセルの説を一歩進めた仮説をプレゼンすると、バカンティ氏が絶賛してくれ、そのうえで「これから先の留学にかかる生活費、渡航費は僕が援助する」と言ってくれた、という場面があります。
同窓生のヴァネッサから「アメリカではお金を払うという宣言は能力を認めたという意味なのよ。よかったわね」と喜んでもらった、とか。(『あの日』p.51-52)これがつまり、「アルバイトで雇いますよ」ということ。

 意地悪な見方をしますと、小保方さんは修士時代にやっていた、細胞シートを使った自家移植実験の続きはバカンティ研に来てからは何らかの理由で行えなくなり、そこで先生の年来の仮説を私がもっと「盛った」形で立証します!と、買って出て、バカンティ氏に気に入られた、というふうにみえなくもありません。意地悪ですねー。


 一麻酔科医がなんで人ひとりの生活費渡航費を面倒みれるんだ、というと、なんでも麻酔科医は向こうでは大変な高収入なのだそうですね。たまたま、「日米医師のお財布事情」というサイトを見つけました。
>>http://ameilog.com/atsushisorita/2012/08/06/223931

 これによると麻酔科医は整形外科医、放射線科医に次いで高収入トップ2位。2600万円とのことです。大病院の麻酔科長であればさらに推して知るべしですね。

 そしてバカンティ氏が取得した特許の数。Wikiには付与された特許、出願中の特許がズラリと並んでいます。「金になると踏めば、特許だけ申請して、あとは利益が転がり込んでくるのをじっと待つ。」(『STAP細胞に群がった―』p.81)

 ですので非常に「金」の匂いには敏感な人であり、山っ気のある研究者であったといえましょう。この人が豊かなイマジネーションで構想した「多能性細胞」のアイデアを、小保方さんは自分のテーマとして熱心に取り組みました。ただ、彼女が実験は行ってもデータを記録する習慣のない研究者であったことをどこまで見抜いていたかは謎です。

 小保方さんがのちにキメラマウスの作り手を求めて理研の若山氏を頼っていった背景には、理研の潤沢な研究資金を当てにしたバカンティ氏の意向があったと言われています。

 小保方さんは、尊敬するバカンティ先生のアイデアを形にするために、理研に「刺客」として送り込まれたのでした。
 そしてSTAP細胞のアイデアをネイチャーに投稿することにより、東京女子医大の2人の恩師・岡野、大和両氏の関係する会社の「インサイダー取引」にも貢献したことになります。


 バカンティ氏はSTAP騒動の続く2014年9月より「休職中」の身分となりました。
 小保方晴子さんに関わったばかりに高収入の麻酔科医の身分から無職へ。これも「破滅した紳士たち」の系譜であります。

 今年2月に米高級雑誌「ニューヨーカー」に掲載された記事"The Stress Test"でインタビューを受けたバカンティ氏は、(注:インタビュー時期は昨年7月末)「STAP理論は正しいと信じている。墓場まで持っていく」と断言しました。

 詳しくはこちらの記事を参照 "The Stress Test"
>>http://www.newyorker.com/magazine/2016/02/29/the-stem-cell-scandal

 「週刊現代」に掲載されたこの記事の邦訳
小保方さんの恩師もついに口を開いた!米高級誌が報じたSTAP騒動の「真実」
>>http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48272
(しかし、この記事についてわたしの感想を言わせていただきますと、かなり海千山千のバカンティ氏大和氏に丸め込まれ彼らの小保方さんに関する社交辞令をそのまま掲載せざるを得ず、インタビューからは核心に迫るような事実を最後まで得られなかった。かろうじてダレイという学者の「追試できなかった」という論文がネイチャーに掲載された、という事実を述べてお茶を濁している、気の毒なくらい苦心の作だといえます。「ニューヨーカー」が高級誌であっても、「狸」から決定的発言を引き出すことはできなかった、というお話です。)

(もうひとつこの記事の中で小保方さんが「日本の科学界で女性は…」的な発言をしておりますが、それについては多少かの国の「フジヤマ、ゲイシャ」願望に迎合したところがあるのではないかな、とわたくしは思っております。それについては次回に書きたいと思います)



 「小保方手記」上司編のまとめです。

 前回みましたように、小保方晴子さんは実力のないまま何故成り上がってしまったのか?


 上司たちの系譜でみると

ええかっこしい系 (早稲田大学・常田聡教授)
   ↓
欲得・不正系 (東京女子医大・岡野光夫、大和雅之両教授)
   ↓
欲得・不正系 (ハーバード大・チャールズ・バカンティ教授)
   ↓
無関心放置プレイ系 (理研CDB・若山照彦氏)
   ↓
ええかっこしい系 (同・笹井芳樹氏)


 このうち初期の2段階、「ええかっこしい系」常田氏と、「欲得・不正系」岡野・大和氏のところで、教育訓練あるいはスクリーニングをする必要があった。しかし諸般の事情でそれがなされないままその段階をノーチェックで通過してしまい、その後の段階では素通しとなってしまった。そういう経緯であるようです。


 前回みたように第一段階の常田教授のところをギリギリでクリアしてしまった小保方さん、第二段階の東京女子医大時代が1つのカギだったのではないかと思います。

 海洋微生物の研究をしていた大学時代から、動物実験での細胞シート研究花盛りの大和氏の研究室へ。何から何まで初めて尽くしだったはずです。そこで、細胞シートの操作法はテクニカル・スタッフから習ったとのことですが、それ以外のことについて「徒弟制」で教えてくれる人はいなかったのだろうか。学部時代にこうした実験をしていませんから、「1」から手取り足取り教えてくれる人が必要だったはずです。

 しかし「細胞のふるまいの自由さ」(『あの日』p.50)という印象的な言葉を使う小保方さん、手取り足取り教えてくれる人が仮にいたとしても、その人の下で神妙に徒弟制で学ぶことができたか、は謎です。
 そして大和教授による彼女への大抜擢。「シンデレラストーリーありき」の中で動いていると、地道に手を動かして実験をすること、少なくともデータを記録することを学びそこなってしまったかもしれません。

 この時期、「日曜夜遅くまで実験している、熱心な学生だ」と、岡野教授が称賛したという逸話が残っていますが、実は小保方さん、背を丸めて顕微鏡を覗くことはしていたがその間、空想の世界に入っていたのでは?という疑いが消えないのです。

 この段階で十分に学ばなかったのが、のちのち致命傷になったのではないか。わたしはどうもそんな気がします。
 このあとの段階、ハーバード―理研では、小保方さんはもはや完成された研究者として扱われてしまいます。

 それは、「欲得ありき」でプレゼン能力の高い小保方さんを重用したかった「おじさま」たちと、夢見がちだがつねに目立つ高みに昇りたい小保方さんの個性が、悪い形で上手く組み合わさってしまったのではないかと思えるのでした。
 
 


これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第12弾です。

 本日は、小保方さんの上司/指導教官たちは、何をしていたのか?なぜ彼女の能力不足を見ぬけなかったのか?という話題です。
 いいかえれば小保方さんはなぜ、教育訓練とチェックをすり抜け、実力のないまま研究者として実績を積みNatureに論文が掲載されるまでになってしまったか、というお話の「上司要因バージョン」。こちらも、このシリーズを開始して以来、読者の皆様から何度もご質問いただいたことです。

 本日の骨子です

1. 時系列でみる 小保方さんの「バブル世代おじさま」たち
2.「ええかっこしい」の系譜(1)常田聡氏の“教えない教育”
3.「ええかっこしい」の系譜(2)笹井芳樹氏の"前のめり"と"イッチョカミ"の悲劇

 (後編の内容はこちらです)

4.「無関心」⇒「擁護」⇒「放棄と紆余曲折」:若山氏
5. 闇の紳士たち?:大和氏、バカンティ氏、セルシード社

 それではまいりたいと思います―


1.時系列でみる 小保方さんの「バブル世代おじさま」たち

 小保方晴子さんは、AO入試で入った早稲田大学理工学部を2006年3月に卒業。そのあといくつかの研究室をステップアップしていき、何人かの指導教官、上司の下につきます。

 問題は、小保方さんになぜ研究者としての十分な教育訓練が施されなかったか。
 また、教育しても身につけられなかった場合、つまり基準に達さなかった場合、どこかで
「あなたは研究者に向いていない」
と、引導を渡す役回りの人がいればよかったのですが、それがいなかった。いわば、「スクリーニング機能」が各段階でうまく果たされなかった。それはなぜなのか、ということです。

 それはどうも、この教授・上司たち1人1人に少しずつ責任があったようです。


 何人かの上司・教授の名前が出てくるので一度、年代順に整理して「スッキリ」しておきましょう:

2004-2006年 早稲田大学理工学部応用化学科にて海洋微生物を研究。常田聡教授に師事(注:2004年当時は助教授、06年教授に昇進)
2006-2008年 早稲田大学大学院 理工学研究科 修士課程。この期間は東京女子医大と早大とが合同で設立した医工融合研究教育拠点である先端生命医科学センター (TWIns) にて外部研修生となる。指導教官は大和雅之・東京女子医科大学教授。大和氏のもとでセルシード社の細胞シート研究を行うとともに、国内外の学会で精力的に発表を行う。
2008年 博士課程。ハーバード大学大学院教授(当時)のチャールズ・バカンティ氏のもとへ短期留学。バカンティ氏のスポアライクセル細胞のアイデアをヒントに現在のSTAP細胞のアイデアを思いつき、実験を開始。直接の指導教官は小島宏司氏。
2010年7月 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸、CDB)でチームリーダーだった若山照彦氏と初めて会う。STAP細胞の証明第2段階までをクリアした論文を雑誌にリジェクトされたため、若山氏にキメラマウス作製を依頼する。
2011年3月 早稲田大学博士号を取得(指導教官:常田聡教授[前出])。
2011年4月 理研CDB若山研究室の客員研究員となる。この当時はポスドクで無給。
2012年12月 理研CDBのユニットリーダーに応募。笹井芳樹・理研CDBグループディレクター(GD、翌年4月より複センター長。故人)に初めて会う。笹井氏の論文指導を受けるようになる。
2013年3月 理研CDBユニットリーダー。独立の研究室を持つ。
2014年1月 STAP論文Nature掲載を発表。

 以上です。

 まとめますと、小保方さんを指導する立場だった人は、常田氏―大和氏―バカンティ氏/小島氏―若山氏―笹井氏。この6人のリレー。
 今回は、この6人の「おじさま」、それぞれについてわかっている人物像や責任の程度についてみていきたいと思います。

 実はわたし正田が個人的にとても残念なことがあります。この人々のうちのほとんどは、わたしと同年代すなわち1960年代初めから半ばまでの生まれなのです。そして、その世代の人々特有の問題を露呈しているように思います。もちろん、理研・大学に限らず、さまざまな企業で共通に起こっている現象ですので、読み解く値打ちはあります。
 Wikipediaでわかっているかれらの生年月日をみると、

常田聡氏 1965年10月 (50歳)
大和雅之氏 1964年?月 (52歳)
チャールズ・バカンティ氏 生年月日不詳
小島宏司氏 生年月日不詳 1990年研修医(1967年前後生まれ?)
若山照彦氏 1967年4月1日(48歳)
笹井芳樹氏 1962年3月5日(52歳没、生きていれば54歳)

 そして、この人たちの問題というのは、大まかに

「ええかっこしい(ザル)系」(常田氏、笹井氏)
「無関心放置プレイ系」(若山氏)
「欲得・不正系」(大和氏、バカンティ氏)

と分類できると思います。

 年代順でいうと、

ええかっこしい系 ⇒ 欲得・不正系 ⇒ 欲得・不正系 ⇒ 無関心放置プレイ系 ⇒ ええかっこしい系

 という順に、「おじさま」の傘下に入ったわけであります。
 このことも、小保方晴子さんの「教育訓練・スクリーニングすり抜けマジック」に寄与していたと思われます。

 このうち今回の記事では、問題の性質が似ている(と思われる)常田氏と笹井氏を取り上げてみたいと思います。


2.「ええかっこしい」の系譜(1)常田聡氏の“教えない教育”

【早稲田・常田研時代】
 常田聡氏 1965年10月 (50歳)。

 常田聡教授が小保方晴子さんを「叱った」という逸話が日経ビジネスオンラインで紹介されています。

「彼女は分野が違って特別だから」(シリーズ検証 STAP細胞、失墜の連鎖)
>>http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140805/269676/?rt=nocnt
 
 「先輩の研究とどこが違うの? 自分の研究部分を明らかにしないと。意味ないよ!」。2006年2月、早稲田大学理工学部(当時)の研究棟の廊下に、怒気を含んだ声が響いた。
 声の主は応用化学科教授の常田聡。「環境微生物の分離培養」と題した学士卒業論文の内容を説明した4年生の女子学生に、書き直しを命じた。先輩学生との共同実験のデータを明示せずに盛り込んだ点を指摘したのだ。

 女子学生は口を真一文字に結び、表情をこわばらせた。だが、大学院への進学を決める際に、彼女はあっけらかんと常田にこう訴えた。「微生物では自分の力を発揮できないと思います。細胞の研究をやりたいんです」。


 おおー。小保方さん、全然叱られないで育ってきたわけではないんですね。お見それしました。
(このエピソードの存在は、Amazonレビュアーの「ほのぴよさん」から教えていただきました)
 ただし。このエピソードにも突っ込んでしまうわたしです。

 2006年2月。それは、学部の卒論の提出期限後の時期ではなかろうか?
 …というのは、私学より進行の遅いわたしの出身大学ではたしか、卒論の提出期限は1月20日だったというのをおぼえているので…。
 常田教授、データが先輩の丸写し、というのをもっと前に見抜けなかったのだろうか?それまでの年度を通じた卒論指導では何をやっていたのだろうか?

 また、このあとに小保方さんは修士への進学を希望した、それも専攻を変えて、ということでしたが、先輩のデータを使い回すような「研究不正」の兆候のある人を修士に進学させて良かったのだろうか?資格をクリアしていたろうか?
 
 ・・・と、意地のわるい突っ込みがどんどん湧いてしまうわたしです。
 ご覧になっている読者の皆様は、いかがでしょうか。

 もちろん、この時点の常田教授は、小保方晴子さんがその後「STAP細胞事件」という、「世界3大研究不正の1つ」とまで言われる騒動の主人公になるとは夢にも思わなかったわけで。

 記事のこのあとのくだりで、常田教授は「教えない教育」ということを言います。

「常田のモットーは「教えない教育」。学生の自主性を重んじ、自由に研究をさせた。」(上記の記事)

 「教えない教育」。「自主性」「自由」。
 かっこいいですが、このブログ「正田佐与の愛するこの世界」では「教えない教育」のことも長年、批判してきました。教える側の責任放棄だ、と。

 「教えない教育」は1990年代末の「ゆとり教育」の学習指導要領改訂のころから流行ったフレーズです。生徒の自発性を促すことは本来は悪いことではありません。しかし、それが教師の責任放棄となり、質の低下を招いていることを大村はま氏が早くも2003年には批判しています。

※詳しくはこちらの記事などを参照
「教える覚悟」への真摯な思考に耳を傾けよう―『教えることの復権』を読む
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51879635.html  

 「教える」ことは教えられる側の学生からときに反発を招きます。「教えない教育」は、軋轢を生むことを好まない性格の、「ええかっこしい」の指導者の方々に好んで使われるフレーズでした。ストレングスファインダーでいうと、「ポジティブ―自我」の持ち主のかたが好んで使いそうなフレーズと言えます。しかし、ある時期「教えない教育」は確かに一部の教育者の「錦の御旗」ではあったのでした。

 「ええかっこしい」の常田聡氏の研究室では、博士論文不正の調査で小保方晴子さん以外にも6人のコピペが明るみに出ました。
 残念ながら、「教えない教育」とは、この場合、「規範のないゆるゆるの教育」と同義であったようです。よほど気をつけないと容易にそうなってしまうのです。

 先ほどの小保方晴子さんの卒論指導に戻ると、他の人はどうあれ、小保方さんの個性、すなわちADHD傾向でぼーっとしやすく、時間管理が下手な傾向を考えると、かなり「ガチガチ」に指導してやらなければダメだった可能性があります。
 卒論という「成果物」ができてくるのを待って指導するのではなく、各月、各週のペースで、細かくチェックして進捗を管理し、「次の一手」をアドバイスしてやる必要がありました。実際に職場でのADHDの人のマネジメントというのは面倒でもそうする必要があるのです。
 小保方さんという人を管理するには極めて不適任な指導者であり、しかし小保方さんのほうでも、そうした「ゆるさ」を狙って常田氏の指導下に入っていた可能性があるのでした。


 このあと小保方さんは早稲田と東京女子医大が合同で設立した先端生命医科学センター(TWIns) で外部研修生となりました。そこでは東京女子医大の大和雅之教授の指導下に。
 どうも、大和氏の恩師だった、林利彦氏が東大を退職後に奉職した先の大学が、小保方さんのお母さんが学科長を務める大学だった、という因縁が、ここにはあるようです。(『STAP細胞に群がった悪いヤツら』p.19)
 そういうご縁があるとすると、「初対面から『明日からおいで〜』と明るく言ってくださった。」(『あの日』p.14)というノリも、雰囲気的にわかりますね。

 この経緯をみると、常田氏のもとでいったん研究者の適性としては「?」マークがついた小保方さんが、お母さんのご縁でTWInsの大和氏に拾われ、それで常田氏も「ダメだ」とは言えず、「行ってらっしゃい」と送り出した、という風にみえます。「スクリーニング機能」が発揮されなかった第一の段階ですね。

 「欲得不正系」に分類させていただいた大和氏については次回の記事、(13)上司編・後編で解説したいと思います。


3.「ええかっこしい」の系譜(2)笹井芳樹氏の"前のめり"と"イッチョカミ"の悲劇

【理研・2012年〜】
笹井芳樹氏 1962年3月5日(52歳没、生きていれば54歳)

 さて、年代は6年ほど飛んで、2012年末に小保方さんが出会った故・笹井芳樹氏(理研CDBグループディレクター=当時、のち同副センター長)です。若山照彦氏の研究室にいたポスドクの小保方さんが、理研のユニットリーダーに採用されるタイミングで出会い、STAP論文の執筆を担当してくれることになります。

 この方が、いわば「小保方さんおじさまリレー」のアンカー。そして自殺という悲劇的な最期を遂げた人でもあります。

 STAP論文の不正については、ファースト・オーサーである小保方晴子さんが第一責任者ですが、管理責任を問うのであればこの笹井氏の責任が大きいのです。
 では、この方がなぜ論文のデータや画像の捏造を見抜けなかったのか。
 亡くなられた方なので、指摘するのは死者に鞭打つことになり、非常に気が重いところです。
 ですがこの方も言うなれば、「ええかっこしい上司」のカテゴリに括れると思います。

 『あの日』での笹井氏の登場シーンは印象的です。
 2012年12月21日、小保方さんは理研ユニットリーダーに応募し、面接を受けました。高名な理研のグループディレクター(GD)たちを前にプレゼン。「分化した細胞の柔軟性と幹細胞性の関連について話し、GDたちからてんで勝手なコメントをされたとのことです。

「それにしても疲れた。ぐったりして、若山研の自分のデスクに座っていると、人事部の人から電話がかかってきて、『もう一度面接室に戻ってきてください』と連絡を受けた。緊張感が舞い戻った。足早に面接会場に向かい、深呼吸をした後、重いドアを開けると、逆光が射す窓際に一人の先生が立っていた。
『はじめまして、笹井です。あなたの希望の研究をするために、とにかく今の論文を終わらせましょう』といわれた。『はい、よろしくお願いいたします』と反射的に答えた。これが笹井芳樹先生との最初の会話だった」(『あの日』p.110)

 どうでしょう、この登場の仕方。「逆光が射す窓際に一人の先生が立っていた」だって。スタイリッシュな絵が浮かびますね。映画かドラマのシナリオみたいです。
 
 そして、論文を通すことに定評があり、
「ネイチャー誌には何度も論文が通った経験があって、論文を投稿してリジェクトになったことはここ数年まったくない」(同p.112)
「ネイチャーとかに論文が通ってもね、カバー(雑誌の表紙写真)を取れないとちょっと悔しい」(同)
・・・と、笹井氏のかっこいい台詞が続きます。
 それまで若山氏のもとで、ネイチャー、セル等に論文を投稿してリジェクトされ続けてきた小保方晴子さんにとっては白馬の騎士現る。

 このあと笹井氏は「STAP細胞」という細胞名を決め、2013年、いよいよ笹井氏の論文執筆がはじまります。

「アーティクルは謡うように読み手に訴えかけるように、レターは詩のように切れ味よく文章を書くという笹井先生の論文執筆は、経験の浅い私にさえ『ずば抜けた違い』を感じさせるものだった。途切れなくつむぎだされる言葉の選択が優美で的確で、かつリズミカル。まるで間違えずに音楽を演奏しているかのように言葉が繰り出されていった。」(同p.115)

 と、笹井氏の挙措はどこまでも「かっこよく」。
 そう、これが笹井氏の人物像でもあったようです。かっこいい美学。のちにSTAP論文の不正疑惑が起こると、笹井氏は「ぼくはケビン・コスナーになる」(注:映画『ボディガード』の主演俳優。小保方さんを守る役回りをするの意)と周囲に言っていたようです。

 あの2014年1月28日のNature掲載の発表では、笹井氏は自らSTAP細胞のiPS細胞と比較した優秀性を示す1枚物のペーパーを作成し、配りました。わかりやすく両者を比較したイラストが使われ、STAP細胞側には小保方晴子さんをイメージしたのか、魔女が杖を振るイラストが付せられました。この配布資料は、iPS細胞の作製方法が既に大幅に改善されていることに触れていなかったことから、のちにiPS研究の山中伸弥氏から抗議を受け、大慌てで回収されることになります。


 『あの日』には書かれなかった、笹井氏が「前のめり」になり、小保方さんの真贋を見極められなかった要因は、なんでしょうか。

 有名な話ですが笹井氏はiPS細胞の第一人者、山中伸弥氏(現京大iPS細胞研究所所長・教授)が出てくるまでは日本の再生医療のトップランナーでした。ES細胞研究を推進して1998年、史上最年少の36歳で京大再生医科学研究所教授に。同い年の山中氏が京大同研究所教授になったのは2004年ですから、二人の出世レースはある時期まで圧倒的に笹井氏が「上」だったのです。
 ところが、iPS細胞研究の論文が2006年セル誌に掲載され、作製技術も確立されて2012年にはノーベル医学賞も獲得。一方ES細胞研究は、人間の受精卵を使用するため倫理的な問題が指摘され、形勢不利に。ES細胞は研究費の獲得が難しくなりつつあり、笹井氏はES細胞やiPS細胞にも代わる“第3の万能細胞”をノドから手が出るほど求めていただろうことが推測されます。
 そこへいいタイミングで小保方晴子さんのSTAP細胞研究が向こうからやってきました。C・バカンティ氏や大和雅之氏、常田聡氏の折り紙つきで。
 そういう笹井氏にとってのベストタイミング、があったのでした。

 そして、笹井氏がではSTAP論文のデータや画像の不正をどうして見抜けなかったか?
 ここは推測でしかありません。
 笹井氏が手がけるプロジェクトはあまりに多岐にわたり、STAP論文はあくまでその1つに過ぎなかった、ということです。笹井氏は研究者でありながら例外的に非常に視野が広く、コーディネーター的資質もある人であり、理研CDBの予算獲得や新施設「融合連携イノベーション推進棟」の実現にも尽力した、とWikipediaにはあります。そうした、“政治的”手腕がある一方で、自分の研究としてアフリカツメガエルの初期胚の研究を行ったり、理研のiPS臨床研究を含むいくつかの文科省再生医療プロジェクトの代表を務め、文科省ライフサイエンス委員会の委員も務めたとあります。体がいくつあっても足りないぐらい多忙だった。
 一方で学会の打ち上げでチェロを演奏したり、国際会議でバーテンダー役を務めたり・・・と趣味人の顔もWikiには載っているのですが。

 STAP論文不正が明るみに出た2014年4月16日、笹井氏は記者会見で自己弁護に終始しました。

「御覧になった方はよく覚えておられよう。笹井は、自らの責任をほとんど認めようとはしない戦略でカメラの放列の前に姿を現したのである。人事は、竹市センター長の責任。実験は若山照彦・山梨大教授の責任。論文執筆は、ファースト・オーサーの小保方晴子とラスト・オーサーのチャールズ・ヴァカンティ。笹井が論文執筆に加わったときには、すでにSTAP論文の概要は出来上がっていて、自らが関与したのは文章をネイチャー誌に掲載可能な水準にブラッシュアップしただけ。しかも自ら希望して参画したのではなく、竹市センター長に請われて、最後の二か月だけ関わったと釈明したのである。したがって、画像の差し替えや切り貼りなど不正行為を見抜くことは土台ムリであるから、STAP論文において、捏造・改竄・盗用の不正行為に手を染められるわけがなかったと弁明したわけである。しかも、小保方は直属の部下ではなく、独立した研究室のリーダーだったので、不躾に実験ノートを見せるように要求することなどできなかった。そして記者会見の最後では、こうぬけぬけと言い放ったのである。
『私の(メインの)仕事として、STAP細胞を考えたことなどない』」(『STAP細胞に群がった悪いヤツら』p.99)


 ・・・と、この時点ではいきなりケビン・コスナーをかなぐり捨て無責任路線になっている笹井氏です。
 先ほど挙げたような笹井氏の抱えていたプロジェクト群を考えると、最後の笹井氏の放り出し発言は、気持ちとしてはわからないではない。しかし、論文の「共著者」「コレスポンデント・オーサー」という立場は、本来は論文のすみずみに目を通し共同責任を負う立場なので、この笹井氏の言葉は「あってはならない」のです。とりわけ理研CDB副センター長でもあり、論文執筆と同時に組織運営上も管理責任のある笹井氏の責任は重大でしょう。

 このあと笹井氏は8月5日、笹井氏は先端医療センターの中で首吊り自殺をしてしまいます。

 自殺の動機は諸説ありますが、小保方晴子さんの不正を見抜けなかった自分の不明を悔いたこと、それに自分の研究室の研究員らの将来に責任を感じたのであろう、とみられています。


 笹井氏から小保方晴子さんに宛てた遺書は、優しさと思いやりにあふれていました。

 『捏造の科学者』によると、

「小保方氏宛ての遺書は一枚。『限界を超えた。精神的に疲れました』と断り、『小保方さんをおいてすべてを投げ出すことを許してください』と謝罪の言葉で始まっていた。更に、小保方氏と共にSTAP研究に費やした期間にも言及し、『こんな形になって本当に残念。小保方さんのせいではない』と小保方氏を擁護する記述もあった。末尾には『絶対にSTAP細胞を再現してください』と検証実験への期待を込め、『実験を成功させ、新しい人生を歩んでください』と激励する言葉で締めくくられていたという。」(『捏造の科学者』須田桃子、文藝春秋社、2014年p.347)

 この遺書の言葉をとらえて、小保方さんを擁護する人々は、「笹井氏は小保方氏を最後まで擁護していた」と主張します。
 しかし、今年になって出た、笹井氏の未亡人に対するインタビューでは違う見方が述べられています。

「A子さんは、夫が書いた真意が小保方氏には伝わっていないのではないかという。
『主人の遺書にあった“新しい人生を歩んで下さい”という言葉。あれは、“あなたには研究者の資質がないから辞めなさい”という意味なんです。実際、主人は何度も言っていました。“彼女は研究者には向いてない。辞めたほうがいい”って。これが、彼女を間近で見てきた主人が最後に下した結論だったのです』」
(「故笹井芳樹氏の妻 遺書の真意「小保方氏に伝わっていない」
NEWSポストセブン2月4日(木)16時0分)
>>http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0204/sgk_160204_5082077530.html
 というわけで、いまだ謎に包まれている部分が多いものの、本シリーズとしては「女性に優しい男を自認していた笹井氏が小保方さんを信じすぎて墓穴を掘ってしまった」と推論せざるを得ないのです。
 もちろん、責任は一義的には、ウソ、誤魔化しの積み重ねで上位者のヒューマン・エラーを誘ってきた小保方さんにあります。


 『捏造の科学者』では、笹井氏に同情的な別の見方も述べられています。
 すなわち、笹井氏は基礎研究を愛していた。しかし、再生医療を看板にしないとお金がとってこられない。

「基礎研究を愛し、若手の自由な研究環境を守るために、臨床応用の近いiPS細胞と比べることでSTAP研究の意義を宣伝した―。そう考えると、笹井氏こそ、CDBの抱える矛盾を体現していたように思えてならなかった」(『捏造の科学者』p.353)

 笹井氏は巨額の研究予算をとる権限を持ち、才覚のあった人でした。そのことに使命感を持っていた人でもありました。若手の研究者に対する擁護者を自ら任じてもいたことでしょう。
 そのことが仇となり、小保方晴子さんの不正を見抜く目が甘くなったとしたら、それもまた痛ましいことです。
 −こういうスケールのことを「ええかっこしい」と呼んでしまうのは気の毒なことではあるのですが。でも突き詰めていうとやはりそれになります。

 
 そしてまた、いくつかの謎が残っています。 
 笹井氏は「光る胎盤をみた」とも言います。
 これについて小保方さんが行ったとみられる「手品」についていろいろ推測があり、要は「えっ」と拍子抜けするような子供だましのテクニックでこれらが実現する可能性があるのです。高名な学者が、むしろ「まさか、そこまでバカバカしいことをするとは」と疑わず、ダマされてしまった可能性があるのです。
 そのあたりは(9)で登場したレビュアー「パルサさん」がいずれ、解説してくれる機会があるかもしれません…。
 要は、「ヒューマン・エラー」が積み重なった。笹井氏の予算獲得の野望、iPS細胞への対抗心、そして女性や若い人に対して優しい擁護者を自認していたことがチェックの甘さにつながった。それが悲劇につながったのだろうと、今は推測するほかないのです。


 次回は、残された「おじさん」たち、「放置プレイ系」若山氏と、「欲得・不正系」大和氏・バカンティ氏を取り上げます。



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日



 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第11弾です。

 ちょうど先週、「週刊文春」がTVコメンテーターの「ショーン・K」の学歴詐称・職歴詐称を報じ、ショーン・Kが番組降板をする騒ぎになっていました。今回はそれに少し近い話題です。

 今回の内容です:

1.「ヒューリスティック」が私たちを誤らせる
2.「小保方プレゼン」にみる、確信と幼い一生懸命さ
3.ハロー効果:強い後ろ盾と英会話力、そして「美形」
 
 それではまいりたいと思います―


1.「ヒューリスティック」が私たちを誤らせる


 小保方晴子さんがなぜ、理研のユニットリーダーというような重要なポストに就き、Natureに投稿することまで許されていたか?

 それまでには、何人もの世界的な研究者たちが小保方さんに騙されていたことになります。
 なぜ、彼らは騙されたのだろう。
 そこには、上司・指導者たちの要因と小保方晴子さん自身の類まれなる資質があります。
 今回の記事では、小保方さん側の資質。どういうやり方で彼女がすり抜けていったのかを、みてみたいと思います。
 このシリーズの(6)「私の会社でも」―読者からのお便り でみたように、類似の“事件”は企業社会のあちこちで起こっています。社長、株主、といった人たちが次々と騙されていきます。ですので、「まさか」と思われるかもしれませんが、トラブルの種は身近なところにあると思って、この事件から学べることを最大限学習していきましょう。




 わたしたちは、いくつかの判断材料がそろうと、それを基に「〜だから、〜だろう」と推論をする癖があります。
 そうした類推を「ヒューリスティック(自動思考)」といいます。それはわたしたちが日々、多数の事柄を扱い判断していく必要上生まれたもの。どんな人も毎日どこかでヒューリスティックをしていることを免れません。実務経験豊かな、「自分は判断力がある」「自分は人をみる目がある」と自信のある人ほど、日常的にヒューリスティックを使っていることでしょう。

 ところが、ヒューリスティックがわたしたちを誤らせることもあるのは確かなのです。
 その典型が、「小保方晴子さんの出世物語」であるといえます。
 さて、そこにはどんなヒューリスティックが働いたのでしょう。

※なお、「ヒューリスティック」に俄然ご興味が湧いたという方は、このブログのカテゴリ
「判断を歪めるもの(ヒューリスティック・バイアス・ステレオタイプ)」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/cat_50056283.html
を、ご参照ください。良質な参考文献もご紹介しています




2.「小保方プレゼン」にみる、確信と幼い一生懸命さ



 小保方さんの「売り」は、なんと言ってもそのプレゼン能力。

 是非、過去の学会発表の様子までみてみたいものですが、残念ながらそれらは動画の資料がありません。
 今ウェブ上でみられるのは、
(1)2014年1月28日、STAP論文のNature掲載を記者発表したときのもの
   (5分強の動画)
(2)同年4月9日、小保方さん自身による釈明会見
   (2時間〜2時間30分の動画)

 です。ご興味のある方はご自身でご覧になってみてくださいね。
 簡単に言うとここには「確信あるポーズ」と「青年の主張ポーズ」というテクニックが入っています。

(1) は、われらが小保方晴子さんが一躍、お茶の間の時の人となった記念すべきプレ ゼンです。
これをきいてみると、非常に上手いプレゼンであることがわかります。

「…隠された細胞メカニズムを発見しました」
「…胎盤にも胎児にもなれるという特徴的な分化能を有していることがわかりました」
「…2種類の細胞株を取得することに成功しました」

 「えーと」「あのー」などの「つなぎ」の言葉が一切入らない。それぞれのセンテンスの語尾まで迷いなくきれいに言いきっています。聴衆に向ける笑顔に曇りひとつありません。

 そして最後の決め、
「もしかしたら夢の若返りも目指していけるのではと考えております」
 この言葉は内容的にはすごく飛躍しているのですが、きれいなよく通る発声を維持したまま、確信をもって発音しています。ですのでこの言葉を頼りに、一時の夢をみてしまった高齢者のかたも多いようです。

 これらが、聞き手にとってどのような効果をもたらすか。
「ここまで迷いなく言い切れるのは、何度も実験に成功し、自分の中に確信があるからだろう」
 普通の人は、そう思います。

 それはわたしたち自身が、そうだからなのですね。大勢の人の前で話すということは非常に緊張するものです。そこで確信をもって語尾まできっぱり言い切れる、感情的なブレもなく、というのは、自分が何度も経験した上で確信を持っているからに違いない。わたしたちのうちほとんどの人が、そうでないとそのようなプレゼンは出来ないものです。

 しかし、そうした類推(ヒューリスティック)を裏切るのが、小保方さんのプレゼンです。

 前々回の記事(9)「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻 をお読みになった方なら、小保方さんは、「テラトーマができていない」という致命的な欠陥を隠したまま論文を書き、このプレゼンを行ったことがわかります。

 しかし、そういう「瑕疵」の匂いを一切感じさせない。可愛らしい満面の笑みを浮かべながら、伸びやかな発声でよどみなく、達成してきたことと今後のシナリオまで言い切ります。
 これが、「小保方プレゼン」の凄さです。
 プレゼンだけをきいたら、物凄く優秀な研究者であるように見えます。

 (もっとも、多くの偽健康食品や投資詐欺などの説明会で講師を務める人は、得てしてこういうものなのかもしれません)


(2)4月の釈明会見

 非常に長い動画ですが、ここでの小保方さんは1月のプレゼントはまた別の顔をみせます。
 まず、髪はシンプルなハーフアップ。フィット&フレアーのすっきりしたシルエットの紺のワンピース。
 プレゼンの口調は、1月の時よりはやや甲高くか細く、単調。ごくまれに質問に答えて「あのー」が出る以外はやはりよどみがありません。

 そして顔の表情。この『あの日』出版以後は、この会見の時の顔写真がTVでも頻繁に使われています。少しうつむき加減の、今にも泣きだしそうな表情。唇は小さく形よく結んでいることが多く、お雛様のよう。1月の時より一段階、あどけなく可愛らしい印象になります。

 お顔の表情だけを拝見すると、30歳の人というよりは、女子大生、いや女子中学生、下手をすると小学生のような印象です。

 見ていて胸が痛くなります。こんな幼い弱々しい表情をしているんだから、ちょっと刺激したら泣き出してしまうんじゃないか―。しかし小保方さん、2時間以上にわたって口調は変わりません。涙を流した場面もありましたが、また今にも泣き崩れそうに涙声が混じりかけた場面もありましたが、語尾に震えなどは一切入りません。その状態のまま、きれいに各センテンスを言い切っています。

 あの有名なフレーズ
「STAP細胞は、あります」
 この言葉は目をぱっちり大きく見開いてまじまじと質問を発した記者を見つめ、軽くうなずきを入れながら、児童劇団のセリフのようにはっきり発音されています。

 全体として、これによく似た若い人のプレゼンを見た、と思ったのは、そう、「青年の主張」です。
 小さな、取るに足らない存在の私。無力な私。その私が一生懸命実験をした、一生懸命やった。その中に一部、ミスがあったけれどそれは未熟な私がしたことなんです。全体としては良い意図をもってやっているので許してください。やや甲高い声のトーン、幼さと一生懸命さを印象づける顔の表情、いかにも「青年の主張」という感じです。

 ただ当時30歳という年齢や、修士時代から7年間の華麗な研究者履歴を考え、またNatureという世界の研究者が羨む雑誌への掲載という研究者としての円熟のステージを考えると、本当は幼い表情も「青年の主張」ポーズも、ちょっと無理があるのですが・・・。
 その無理を強引に押し切ってしまうのが小保方さんなのでした。

 このシリーズを執筆し始めてから友人と対話したところでは、友人の中でも聡明な、しかし非常に優しい人が、この時の会見で小保方さんに同情したことがわかりました。
「優しい」人の心をつかむプレゼン術を心得ている、したたかな小保方晴子さんなのでした。

 ここでも同じです。顔の表情や声のトーンをそのように調整し、よどみを作らないことで、小保方晴子さんは「一生懸命な、悪くない私」を演出してしまっています。

 そして、それを聴いているみているわたしたちの側にある「ヒューリスティック」とは。

「こんなに若くて、良家のお嬢さん風のあどけない顔立ちの女性が、一生懸命な面持ちでブレずに話しているのだから、悪いことをするわけがない」

 そういうヒューリスティックがわたしたちの中にあります。なまじ人生経験が豊富だからと、わたしたちの頭の中に刻まれている推論が、わたしたちを正しく考えることを妨げます。

 (1)(2)をまとめますと、(1)は「成果が上がりました!」というときの、経験豊富で確信に満ちた自分を演出するプレゼン。
 (2)は、小さい幼い自分と、一生懸命な良い意図をもった自分を演出するプレゼン。

 これまでの人生で、小保方さんは、この(1)(2)を上手く使い分けてきたことが想像されます。
 例えば、早稲田のAO入試や、「日本学術振興会特別研究員DC1」の取得のための「情に訴える」プレゼンなら幼く一生懸命な(2)を。
 また学会発表や、理研ユニットリーダーへの応募のプレゼンなら確信に満ちた(1)を。
 あるいは場合によって、(1)(2)の混合を。

 『あの日』には、2012年12月、理研ユニットリーダーに応募しプレゼンを行った小保方晴子さんが、そこで故笹井芳樹氏(理研グループディレクター=当時。のち理研CDB副センター長。2014年8月没)と出会ったくだりが書かれています。
 ここでも、笹井氏は小保方さんのプレゼンに「コロッと」騙されてしまったようです。

 多くの人が、「笹井氏ほどの人が何故騙されたのか?」と疑問を投げかけるのですが、小保方さんのプレゼン能力というのはそれほど凄いのだ、というしかないでしょう。恐らく、2007年以来様々な学会に顔を出す中で、経験豊富な研究者の口調や仕草などを物にしていったことでしょう。また上手くいかないところがあっても細部まで辻褄を合わせるテクニックも発達させていたでしょう。
(注:笹井氏側の「騙されやすかった」要因については、次回の記事で取り上げたいと思います)

 しかし、ウソをつき通した末にSTAP論文が大々的に発表になり、世間の注目を集めたことで不正が追及されることになる、というところまでは、小保方さんは想像力が働かなかったのでした。



3.ハロー効果:強い後ろ盾と英会話力、そして「美形」


「高名な学者たちが、本当は中身のない小保方晴子さんに何故騙されたのか?」

 だれもが抱く疑問です。

 この問いには、小保方晴子さんの7年間の研究者人生の後半の方で出会う学者たちについては、「ハロー効果」で説明できます。これもヒューリスティックの1つです。

 つまり、前任者の上司や指導者たちが「この人は優秀だから」と太鼓判を押してくれていると、それは「ハロー効果」となって小保方晴子さんを全面的に信用する材料になってしまいます。

 2010年、神戸の理研CDBに初めて行った頃の小保方さんは、それ以前の早稲田大学、東京女子医科大学、ハーバード大学時代の評価が積み上がっていました。ハーバードのチャールズ・バカンティ氏、東京女子医大の大和雅之教授、といった高名な学者たちの推薦もかちえていました。博士課程の学生の中でも最も優秀な人だけが貰える「日本学術振興会特別研究員DC1」を取得していることも、ハロー効果の材料になります。

 そうした「後光」の差すような教授たちの推薦という美しいアクセサリを身につけた小保方さん。その彼女に対しては毎日延々と長時間の実験をし、土日も出勤して実験し、成果が上がっているのかどうかはっきり分からなくても、それを疑問視したりはしません。「実験ノートを見せて」などと、初心者に言うような野暮なことも言いません。
(小保方さんの事件以後、この点は多くの研究機関で大分改善されたようですが)


 「ハロー効果」を補強するものとして、小保方さんの英会話能力も挙げられるかもしれません。ハーバード仕込み、非常に流暢に話す人だったようです。想像ですが、日本語でもこれだけ「感情表現」を沢山織り交ぜて話す小保方さんなので、英語でも普通以上に「感情語」を多用したかもしれないですね。その結果、ロジカルな会話しかできない多くの研究者と異なり、会話が弾んだかもしれないですね。英語に弱いとされる若山照彦氏(理研チームリーダー、のち山梨大教授)などにとっては、頭の上がらない存在だったかもしれません。

 これも、ビジネスの世界では「英語ができる」が過大評価されることが往々にしてありますので、気をつけたいところです。小保方晴子さんのように、能力の凸凹が大きいなかで言語能力だけが突出して高い人が、英会話が得意であるというのは珍しいことではありません。やはり「あくまで色々な能力の中の1つ」と考え、実行/責任に関わる能力を常に第一にみたほうがいいでしょう。


 ・・・えっ、「あれ」を忘れているだろうって?
 そうでした。
 第8回 「『キラキラ女子』の栄光と転落、『朝ドラヒロイン』が裁かれる日」でもとりあげましたが、「お顔」「見た目」という要素、やはり大きいですね。

 大きくていい、というつもりはないですよ。容姿などではなく、実力で選ばれるのが理想です。ただ現実には大きいです、残念ながら。
 研修講師のわたしからみて、「えっ?」と思うような、明らかに人格が悪いとか能力が低い人を、お顔がキレイだからと、マネジャーに引き上げようとするトップの方、いらっしゃいますね。

 部下側の人に「上司との関係」をきいていくうち、「人格が悪いけどお顔がキレイな人が、やっぱりマネジャーになりやすい」という声はきかれました。

 というわけで「見た目ヒューリスティック」「美形ヒューリスティック」というもの、やはり存在しそうです。

 ショーンK氏問題に絡めて、May_Roma氏は

「最も効率のよい投資は自分への投資だと言われています。ショーンK氏の件でわかったことは、成功するために最もコスパが高いのは整形だということです」

と、身も蓋もないことを言います。

 




 今回のまとめです。

(1) 自信満々なプレゼン
(2) 幼い、一生懸命な自分を演出するプレゼン
(3) 高名な人からの推薦
(4) 英会話力など外国語能力
(5) きれいな・かっこいい見た目

 ある人がこれらを持っているからと言って、うっかり信用しないようにしましょう。
 もちろん、これらを持っている人が「本物」である場合もあります。しっかりと言葉の裏をとり、細部まで確認しましょう。「事実」と「行動」が最も重要なのです。

 先週発覚した、ショーン・Kの経歴詐称事件は、ウソつきの人が長期間、東京キー局のTVコメンテーターという目立つ場所に起用されていて、誰もその経歴を疑わなかったという現象でもありました。
 人の言葉(表示も)をうっかり信用せず、細かく裏をとる作業、大事ですね。スマホ時代でわたしたちはどうしても認知的負荷をサボりがちになります。気をつけたいところです。


 次回は、騙された側の上司たちには、何が起こっていたのか?正田と同世代の「おじさん」たちの心理を読み解きます。



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


  小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第10弾です。

 今回の内容は:

1.「STAP細胞はありませんでした」と研究不正
2.「ぶっちゃけ小保方さん大嫌い」なぜ、このシリーズを書き続けるか
3.ネット世界と現実世界のギャップ


 それではまいりたいと思います―


1.「STAP細胞はありませんでした」と研究不正


 まず、前回のおさらいです。

社会人のための「小保方手記」解読講座(9)「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html


 この記事のポイントは「STAP細胞はありません」。

 小保方晴子さんが「夢の若返りも可能です」と声を張り上げて主張した、万能細胞のSTAP細胞なるものは、存在しません。
 多能性を証明するための肝心のテラトーマ(奇形腫)ができていなかった。小保方さんがそれを隠し通して、研究を続け周りの人を巻き込みNatureにまで掲載させたことで、死者まで出る騒動になった。これがSTAP事件の根幹だ、ということです。

 その、一番都合の悪いことを、ウソだらけのこの本の中で小保方さん自身が「ぽろっ」と書いてしまったところに、この本の価値があります。
「STAP細胞はあります!」
 もう、あの魔法の杖は使えないのです。

 自慢ではありますが上記の(9)の記事をアップした12日(土)の夜、理研のサーバーからもこの記事にアクセスがありました。ひょっとしたら、『あの日』の出版以来苦虫をかみつぶした顔で推移を見守ってきた理研の現在の研究者たちも、この本に「不都合な真実」が書いてあることがわかって胸をなで下ろしたかもしれませんね。

 また、小保方さんの行った「悪事」の程度を確認しておきたいと思います。これも上記の記事の末尾部分に書きましたので、ご覧にならなかった方も多いかも。再掲します。

「「論文不正」ではなく「研究不正」、
 これも、仁さんのこのすぐ上のコメントに出ていますね。
 そのようにこの問題を捉えないといけません。
 うっかりミスで論文に瑕疵をつくったわけではない、そもそもの出発点でできていないものをできたと言い、研究をすすめたことの結果が論文不正であり、全体として「研究不正」と捉えるべきなのです。

 だから、小保方晴子さんが今、研究界から追放された状態になっているのも、身から出た錆、仕方のないことなのです。」


 本シリーズ読者の皆様は、このことも是非、押さえておいてください。

「小保方さんが小さないくつかのミスのために研究者生命を絶たれるのは可哀想」
「若い研究者の将来を奪っていいのか」

 これらの同情論は、当たっていません。小保方さんは、自分のしたことの大きさのために順当な制裁を受けたのです。これは野球賭博や八百長相撲を行った選手や力士が永久追放になるのと同じです。



2.「ぶっちゃけ、小保方さん大嫌い」なぜ、このシリーズを書き続けるか

 『あの日』出版以来、多くの論者がネット上にも意見をUPしています。批判派、同情派、賛否両論入り乱れています。

 3月13日(日)の朝日新聞書評では、この本をかなり好意的に取り上げました。

*********************************************
 (略)
 …いわば、まわりの大人たちに振り回されながら、その期待に応えようとして、本人は一生懸命頑張る涙と根性の物語である。研究者の複雑な人間関係、主人公が女性であるがゆえの周囲の特別視といった側面からも読めるだろう。あえてジャンル名を与えるとすれば「少女サイエンス“ノン”フィクション」とでも呼ぶべきか。あまり読んだことがなく、だからこそ面白い。が、これが現実とリンクしていることが最大の驚きだ。
*********************************************

 残念ながら、本シリーズで指摘している「STAP細胞はなかった」この重要ポイントへの言及は、なかったですね。東北大学教授の書評子さんです。
 お蔭で、止まったかにみえていたAmazonでの売上もベストセラー184位から64位と、息をふきかえした感があります。

 で、本シリーズのスタンスはどうなのか、というと。
 正直、ぶっちゃけ、正田はこの本の著者のことは「大嫌い」であります。(あ、初めて言っちゃいました)あの「STAP細胞はあります!」の会見にも嫌悪感しか抱きませんでした。このシリーズの毎回の記事を、吐き気をこらえながら執筆しています。ウソ、妄想、他責、被害者意識にまみれた本だと思っています。

 なんでじゃあ、そこまでしてこのシリーズを執筆するのか、と思われますでしょうか。

 それは、「社会人の分断」を危惧する立場からです。

 わたしはもともとはこの本のことも購入する予定はありませんでした。「印税稼ぎ」の意図が見え見えで、不快感の塊でした。
 ところが、Amazonレビューを見ているうち、とりわけ前回の記事に登場したパルサさんのレビューを見るうち、
「そうか、ウソだらけの本ではあっても著者自身が自分に都合の悪いことを漏らしている部分があるのか」
と気づき、そこで初めて価値を認めてAmazonの中古で購入したわけです。

 そうなのです、この本は「研究不正」に関心のある人にとっては一級の資料と思います。資料として持っておきたい方は、かつ著者に印税を渡したくないという方は、中古で購入なさってください。



 それはともかく。
 第8回にも書きましたが、この本の読者層が、主に若手社会人と高齢者層らしいということ。
 そのうち若手社会人は、アドラー心理学の『嫌われる勇気』の読者層と重なるということ。

 このことを考えると、この本『あの日』は、また新たな社会人の中の上司世代―部下世代の分断の火ダネになるかもしれないな、と思っています。
 まさか、と思われますでしょうか。


 『嫌われる勇気』のときも、わたしは30代若手リーダー層との間に目に見えない壁を感じていました。『嫌われる勇気』は、会社にも上司にも不信感をもつ若手向けに、「周囲に認められることを期待するな。自分の軸で生きよ」と、「精神的マッチョの教え」を勧める本です。

 いわば、欧米的「アトム型自己観」の極端なものを植え付ける教えと言ってもいい。そこへ、わたしがやっているような、「人は本来他者とのつながりを前提に自己をつくり、仕事をするものだ」という「承認論」のマネジメントを説いても、まったく受け付けられないのです。
 その「受けつけない」態度は、一種の洗脳のようにも感じました。
 
 それと同じ効果が、この本『あの日』に、あるのではないだろうか。
 それは26万部という、ベストセラーとはいえ「微妙」な部数ではあっても、今からジワジワと人の心に影響を与えるのではないだろうか。


 多数の良心的な識者の方がネット上にこの本と著者に対する批判のコメントや記事を書かれています。
 ただ、それをみて不肖わたしが思うのは、「批判」するのはむしろ簡単だということです。一瞬で切って捨てること、嫌悪の感情をまぶしてこの本を語ること。心ある人にとっては自然な行動ですが、それだけではこの本に心情的に吸い寄せられた人たちには説得力がない、ということです。

 わたしも、本音ではそうしたい。
でも、それだと対話の糸が切れてしまいます。うっかり、この本に感情移入して読んでしまった人たちと永遠に話が通じないままになってしまいます。



 このシリーズ継続中にも、企業の管理職研修では40-50代の管理職の悩みとして、「若手と話が通じない」ということが挙がります。
 もし、管理職側の正当な努力にもかかわらず若手側に「心の壁」が作られていてしまったら―、それを崩すのは、容易ではありません。



 この本は、たとえば昨年6月に出版された『絶歌』などとは、また違う種類のインパクトがあります。現実の職場を舞台にし、現実にいる、どこにでもいそうな男性上司たちが登場するからです。
 理研チームリーダー(当時)だった若山照彦氏の言動1つ1つを再現して、若山氏の異常性を強調するように、また著者自身の被害者意識をたっぷりまぶして書いています。
 読者にはそれが事実か否か知るすべもなく、極めて具体的に記述されているのでよほど注意深く読まないと事実と信じ込んでしまいます。この本に感情移入した人は若山氏が悪人であることを刷り込まれていきます。

 そうして、「上司=悪」と学習した若い人々は、自分の職場の上司たちにも若山氏との共通点を何かしら見出し、不信感を募らせるための口実とすることでしょう。


 もうひとつの時代背景として、「総スマホ依存」。いまや、電車に乗ってスマホ、タブレットに向かっていない社会人世代などないと言っていいくらいです。そしてスマホ育ちの若い人たちの、脳機能の偏りや行動力不足が指摘されています。

 行動しなければ、上司から叱責される頻度も高くなる。仕事の現場とはそういうものです。ところがそのために若い働き手たちの未熟な自己愛が刺激され、ちょっとしたキッカケで被害者意識を募らせ、キレたり上司に憎悪を募らせる可能性というのはたぶんにあります。
 そのように、「弱い若い人をますます弱くする」場合によっては、恐ろしい作用を持つ本であります。



3.ネット世界と現実世界のギャップ:「晴子さん」が跋扈する?ネット世界



 小保方晴子さんのプロファイリングについては、このシリーズで下記に取り上げましたが、
(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html 

(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html 

 ・・・が、ここに挙げた見方はまだ「甘い」のかもしれません。

 巷には、もっとはるかに厳しい見方が溢れています。

 『虚言症、嘘つきは病気か DR.林のこころと脳の相談室特別編(林 公一、impress Quickbooks,Kindle版、2014年8月)には、小保方晴子さんとそっくりな、自分を盛ってしまう・研究のデータすら捏造してしまう人物の事例のオンパレードです。これらを、著者は「自己愛性人格障害」「演技性人格障害」と名づけます。

 『自己愛モンスター―「認められたい」という病』(片田珠美、ポプラ新書、2016年3月)では、小保方晴子さんを名指しで取り上げ、
「私の見立てでは、小保方さんは『空想虚言症』である」
としています。

 こうした、疾患名を挙げる作業は、専門医のかたにお任せしておこうかな、と思います。ただし、このブログでいう「ASD-ADHD」の「能力の凸凹」は、それ単体では何の罪もないものであっても、生育環境や世渡りしてきた状況によっては、こうした「病気」に発展する可能性のあるものだ、と言えるでしょう。悪い面を助長してしまうような子育てがあったかもしれない。また変に能力の一番高いところに合わせたプライドを形づくってしまうと、小保方さんが「研究者になりたい」と今も望み続けるような、身の丈に合わないプライドになってしまうかもしれません。
 そしてそうした疾患名のつく段階になってしまうと、残念ながら「異常人格」として恐怖や嫌悪の対象になったりするものです。

 小保方晴子さんのしてきたことについても、わたし個人はやはり、嫌悪の念を隠せないでいます。
 それは、男性上司たちの「引き」で、ご本人の能力よりはるかに高いところまで引き上げてもらいそのことに一点の疑問も感じずにいたらしいこと、そして過剰な上昇志向の帰結として「テラトーマできてないやんけ!」を隠し通したままSTAP研究を推進していたこと、若山氏や笹井氏といった高名な学者たちを巻き込み、笹井氏に至っては死に至らしめてしまったこと。そしてこの本、『あの日』を出版して若山氏を悪者扱いしたこと。

 「STAP細胞はありませんでした。」ここを起点に、小保方さんのしたことの全体像が明らかになればなるほど、そこに嫌悪の感情を持たずにはいられません。

 しかし。
 
 大人世代のこうした冷ややかな視線をよそに、ネット世界には案外、小保方さんへの同情論・擁護論が溢れている現実があります。

 Amazonレビューでは本日現在、全702レビュー中★5つが421、★1つが140、平均3.9。

 これを昨年6月に出版された『絶歌』(元少年A、太田出版)と比べてみましょう。本日現在、全2,109レビュー中★5つが248、★1つが1,577、平均1.7です。
 ですので一般的に「良書」といわれる本のレビューの水準には届かないものの、ワルイコトをして処分を受けた人の手記としては、大いに健闘しているといえます。
(ちなみに『あの日』の評価、他店でみると楽天ブックスでは4.65、ヨドバシカメラ3.62でした)


 そして、擁護レビューの内容をみると、先にも挙げたように
「若い研究者の未来を潰していいのか」
「小さなミスで小保方さんだけが責められるのはおかしい」
といった感情論。
「こうして若い人にすべてを押しつける組織の風潮はある」
といった、同世代の人らしき自分に惹きつけた同調論。
あるいは「STAP細胞はある」に立脚した、どこかの巨大組織によるSTAP研究潰しがあった、という「陰謀論」。

 ―陰謀論の側からは、今盛んにKindle本が出版されています。「STAP細胞はあります」であったほうが、陰謀論の方々は際限なくSTAP細胞と小保方晴子さんを使ってご商売ができるのです。

 現実世界とのつながりが弱く、ネットから主な情報を取り込む若い人がこうした言説から影響を受けないか、というのは、大変心配になります。
 

 わたしがこの「社会人のための『小保方手記』解読講座」を書き続けるのは、こうした若い人たちに何とか「届く言葉」を書きたい。また現場で若い人たちをみておられる上司の方々にも、同様に「届く言葉」を語っていただきたい。両方をつなぐ言葉を書きたい。それに尽きるように思います。



 本シリーズ今後は:

●小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
●情けないぞおじさんたち!バブル世代の「ええかっこしい」上司群と欲得上司群


 ・・・といったことを、取り上げたいと思います。
 読者の皆様、どうか応援よろしくお願いいたします!m(_ _)m



 おまけ:19日(土)、久しぶりに発達障害をもつ大人の会さんの会合にお出かけしてきました。

 1人、「空想に入ってしまう」タイプの発達障害(診断名は「広汎性発達障害(PDD)」)の方にお会いし、少し詳しくお話をきかせていただきました。
 仕事で入力作業をしていても途中から空想に入ってしまう。空想の内容は、過去の嫌な思い出のときもあるし、理想のなりたい自分のときもある。周りの人と上手くコミュニケーションが取れている状態の自分や、有名人ではこれまで政治家、野球選手、サッカー選手になったことがある。
 政治家になったときは、どんなか。演説している自分を向こう側にみているときもあるし、自分の身体がそれをしているようなときもある。野球、サッカーなどでは、実際にプレーしているかのように自分の身体もかるく振動する。
 子供の頃から、勉強をしていても空想に入ってしまう。先生の話を続けてきいていられない。だから成績は悪かった。子供の頃の空想は、クラスの人気者になっているさまを思い浮かべるなど。

 この方は幸い、空想と現実を混同してウソをついてしまうようなことはない方のようでした。障碍者手帳をとり、障害者枠で働いていました。
 この会合にくる方々はそんな色々な形質について潔く認めている方々なので、ほっとすると同時に、人の多様性の豊かさというものに改めて目を開かされるのでした。

 またこの会で、小保方晴子さんの代理人、三木秀夫弁護士が、2014年当時「発達障害について知りたい」と周囲に語っていた、というお話も伺いました。



2016年3月25日追記:

 今月19日付で「アメリカのSTAP細胞研究」なる情報が飛び交い、
「STAP細胞は本当はあったのではないか」
「小保方さんはハメられたのではないか」
という、「陰謀論」がネットで再燃しています。

 iMuSCs(損傷誘導性の筋肉由来幹様細胞)というものを、アメリカの研究者グループが発見したが、これはSTAP細胞と同じアイデアではないのか?盗まれ、海を渡ったのではないか?

 これについては、当ブログでは否定しておきます。
 (9)でも登場された、Amazonレビュアーで研究者の「仁」さんのコメントを引用しておきます。

*********************************************

iMuSCsをSTAP細胞と同列に論じるのは、拙速だと思います。
もともと体内にあった多能性成体幹細胞を単離した、という議論の延長線上で捉えることもできるので。この議論は、21世紀に入ってからのトレンドです。

以下、発表年順に私の知るものを並べますので、詳細は、個別に検索してみてください。
MAPC(2001年 Catherine Verfaille)、MIAMI 細胞(2004年 Paul C. Schiller )、VSEL(2006年 Mariusz Z. Ratajczak )、BLSC(2007年 Henry E. Young )、Muse細胞(2010年 出澤真理)、Muse-AT(2013年 Gregorio Chazenbalk)

Muse(Multi-lineage differentiating Stress Enduring)細胞については、『あの日』でも紹介されていました。
また、『あの日』では、小保方氏が2008年までの先行研究を整理したことが述べられていますが、上記の多能性成体幹細胞についても、調べたことと思います。
幹細胞生物学が専門ではない私でも知っているくらいですから。

また、STAP細胞のように、「体細胞を多能性細胞に初期化する方法」については、小保方氏が取り組む前から、既に日本で研究されていました。
STAP細胞のアイディアそのものが、二番煎じという側面があります。

奇しくも、小保方氏が若山研でテラトーマを作成するため、STAP「様」細胞の移植実験を行ったその前日(2012年12月26日)に、熊本大学准教授の太田氏による研究がPLOS ONE誌に掲載されました。
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0051866
本件は、2012年末に、日経新聞で取り上げられています。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG29011_Q2A231C1CR8000/

熊本大学は、上記論文の技術に関して、5年近く前(2011年7月11日)に国内特許を出願しています。翌年(2012年7月)には、国際特許も出願されました。
・発酵能を有する細菌を用いた多能性細胞の製造方法
http://jstore.jst.go.jp/nationalPatentDetail.html?pat_id=33241

いずれにせよ、小保方氏の方法では、小保方氏自身がSTAP細胞を用いたテラトーマの作成に失敗しており、多能性は証明できませんでした。
したがって、小保方氏の方法ではSTAP細胞を作成できない、という点については、誰がどんな発表を行おうと、未だ完全に否定されている状況に、何ら変わりありません。


*********************************************


 また、このiMuSCs(損傷誘導性の筋肉由来幹様細胞)の論文が掲載されたのは、Nature Scientific Reports (ネイチャー・サイエンティフィック・リポーツ)という雑誌で、ネイチャー・グループの発行する雑誌ではありますが、他の雑誌でリジェクトされた論文もどんどん掲載する、査読のゆるい雑誌です。追試などはしていません。ですのでこの研究に再現性があるかどうかはまったくわからない、というものです。

●Nature Scientific Reportsの掲載基準はこちら
>>http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/journal-information/faq#q2



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第9弾です。

 今回は、また別の話題。

「人間的側面はいいから、STAP細胞って本当にあったの?そこが知りたいよ」
というお声も、主に男性諸氏からききました。

 そうした声にお応えして、今回は「STAP細胞はあったのか」そして「研究不正の全体像はなんだったのか」これをテーマにしたいと思います。そのなかで「誰がわるかったのか」の問題にも触れたいと思います。


1)「テラトーマができていない!」
2)マウス系統の謎:若山氏の”陰謀”を推理する!
3)仁さんレビュー(研究不正の全容の仮説とさらなる疑義)
4)STAP細胞とは、結局なんだったのか ⇒ 「多能性細胞」ではなく「自家蛍光細胞」

 それではまいりたいと思います―


1)「テラトーマができていない!」


 「ネイチャー」に掲載された2報のSTAP論文については、理研調査委員会の最終報告書「研究論文に関する調査報告書」(2014年12月25日)が公表されており、下記からみることができます。

>>http://www3.riken.jp/stap/j/c13document5.pdf  この報告書では結論で、
「本調査により、STAP 細胞が多能性を持つというこの論文の主な結論が否定され た問題である。その証拠となるべき STAP 幹細胞、FI 幹細胞、キメラ、テラトーマは、すべ て ES 細胞の混入に由来する、あるいはそれで説明できることが科学的な証拠で明らかにな った。」
と締めくくっています。すなわち、「すべてがES細胞混入によるものだった」いわば、「ES混入説」と呼べるものです。

 しかし、これでは今ひとつ説明しきれない部分があり、様々な陰謀論の種になってきました。「小保方さんはハメられた!」という方々は、例外なくこの理研報告書および「ES混入説」を根拠にしています。
ところが、小保方晴子さん自身の手記『あの日』を読み解くことで真相に迫ろうとした人々が、Amazonレビュアーの中にいらっしゃいました。

 STAP論文の「ネイチャー」投稿後、PubPeerや2ちゃんねるの匿名の投稿者が一斉に「ネット査読」を開始し、画像の不正や使い回しなどを洗い出しました。そこまでの規模とはいきませんが、『あの日』についてもちょっとした「ネット査読」のようなものがあったのです。
これらの作業を行った匿名のレビュアーさん方に敬意を表しつつ、そこで行われた発見をまとめたいと思います。

 (なお、匿名のAmazonレビューの中の議論を引用することが正しいか?というと、知人のある研究者の見解では、「例えばある論文の妥当性を議論するときにPubPeerでの議論を引用することはアカデミズムの世界でもあるので、問題ないのでは」ということでした)

 ここでの重要ポイントは「テラトーマができていない!」
 『あの日』から引用してみますと……。

 2008年、博士課程に進んでハーバード大・バカンティ研に留学することができた小保方さん。
バカンティ教授の提唱する「スポアライクステムセル」仮説を私が証明しよう!と勇んで実験を開始します。
スフェア細胞が、そのスポアライクステムセルだと見当をつけ、それが多能性を持つものだということを段階を踏んで立証しようとします。多能性を証明するためには、3つの条件をクリアしないといけません。

 小保方さん自身の記述によれば、

「現在、細胞の多能性を示すには、3つの方法がある。1つ目は培養系での分化培養実験で、三胚葉系の細胞に分化可能であることを示すこと。2つ目は免疫不全マウスの生体内への移植で、自発的な三胚葉由来すべての組織形成(テラトーマ形成)が観察されること。3つ目はキメラマウスの作製が可能であることを示すこと。この順に、細胞の多能性の証明の厳密さが増すが、同時に技術的な難易度も上がる。」(『あの日』p.54)

 すなわち、
幅広い細胞種に分化できることを証明する
テラトーマ(奇形種)を形成することを示す
キメラマウスの作製が可能であることを示す
ことが条件となります。

 そこで、小保方さんは,良広い細胞種に分化できることを同じバカンティ研の仲間と時間をかけて証明。
 次の段階、▲謄薀函璽泙侶狙に挑戦します。
 ところが……。

「ただ注入するだけではテラトーマを形成することはなかった。しかし、研究室が得意としていた組織工学の技術を使ってテラトーマに似た組織を作ることができた。」(p.55)
と、言っています。
ここはうっかりすると読みとばしますが、重要な記述です。何を言っているかお分かりになりますか。
まず、「ただ注入するだけではテラトーマを形成することはなかった。」テラトーマはできなかったのです。
ところが、
「しかし、研究室が得意としていた組織工学の技術を使ってテラトーマに似た組織を作ることができた。」

 これはどういうことか。つまり、本物のテラトーマができないのでまがい物を作ってお茶を濁した、ということです。この書き方でいうと、ES細胞由来のテラトーマを作ったのではないのだろうと思われます。そうだとしたら「テラトーマに似た組織」という言い方はしませんから。

「研究室が得意としていた組織工学の技術を使って」

 想像ですが恐らく、バカンティマウスを作ったバカンティ研のこと。「金型と軟骨組織で作った人間の耳の形をしたものを背中にくっつけたマウス」のような、科学的にはまったく意味のない肉の盛り上がりを作ったのだろうと思われます。このテラトーマが実際に何でできていたのかは、今となってはわかりません。

 このあと小保方さんはここまでの実験結果を基に「スフェア細胞は多能性を有する」ことを主張する論文を雑誌に投稿したが、あえなくリジェクト。その時の査読意見で、「掲載はキメラマウスを作製することが条件となる」と言われました。

 ということは、その論文では多能性の証明の´△泙任蓮△任たことにしていたと考えられます。「テラトーマに似た組織を作れた(テラトーマはできなかった)」では、多能性を主張する論文としては体をなしていないですね。査読意見も、キメラマウスより「まず、テラトーマを作製してください」ということになったと思われます。

 そして、この論文のリジェクトを契機に、「キメラマウスを作るしかない」とバカンティ研内の意見がまとまりました。しかしバカンティ研にはキメラマウス作製の設備はない。

 そこで、小保方さんは理研の若山研究室の門戸を叩くことになりました。世界で初めてクローンマウスを作製、世界一のキメラマウス作製の腕を持つ若山照彦氏にキメラマウス作製をお願いすることになったのです。このあたりの経緯が『あの日』p.54~62に載っています。

 この流れは、大事です。押さえておいてくださいね。

 小保方晴子さんを擁護する人は、このすぐあとの展開で、「キメラマウス作製するしかないよ、うんうん」と前のめりになっている若山氏の様子(小保方さん描写による)をみて、「若山氏こそがSTAP研究の主導者であり、論文不正の責任も本来若山氏にある」と、うっかり誤解されているようです。

 でも本来の経緯は、小保方晴子さんがSTAP細胞の多能性を証明する 銑の最後の段階を若山氏にお願いしに行った、若山氏はリレーの最後の走者を頼まれてやっただけ、ということです。そしてそのリレー全体の企画発案者は、小保方晴子さんです。ということで、小保方さんが論文の「ファースト・オーサー」になっているのです。

 このあと、「テラトーマ」は『あの日』の記述の中からきれいに消えます。

 これについて小保方さんは、恐らく「テラトーマができていない」ことに向き合いたくなかった。育児放棄したように、ぽーんと頭から抜けてしまったのだろう、という見方があります。

 しかしテラトーマができていない段階で若山氏がキメラマウス作りに応じるだろうか。想像してみてください。若山氏には、「テラトーマは『できています(バカンティ研では)』」とプレゼンした可能性のほうがありそうですね。
のちにこの「テラトーマ」が「STAP論文」のアキレス腱になります。論文に載せたテラトーマの画像は、小保方さんの博士論文、それもまったく関係ないテーマでの博士論文の画像の使い回しだったことがわかりました。これが致命的となり、共著者の若山氏による論文取り下げの呼びかけとなったのです。

 ではそれは、単なるケアレスミスだったのか。そうではない、そもそもテラトーマができたことは一度としてなかった、可能性が大なのです。だから画像が存在しないのです。

 そうしますと、この研究全体の仮説検証のストーリーを描いた責任者はやはり小保方さん。本当はできていないものを「できた」と言い、ほかの人をそのストーリーに沿って動かした立場の人です。



2) マウス系統の謎:若山氏の“陰謀”を推理する!

 実は、Amazonレビューでの“新説”にはもう少し続きがあります。それは、

「若山氏がマウス系統を秘密裏に変更したのではないか?」

というものです。


 これはまったく憶測、推論の域を出ません。しかし、この説を使えば、2014年の若山氏の言説の奇妙な変遷、そして「ES混入説」の不整合をきれいに説明できるのです。

 巷に流布する「若山氏主犯説」と比べても、こちらのほうがはるかに整合性があります。ここでは、あくまで推測の域を出ないのをお断りしたうえで、あえて「Amazonレビュー新説後半・若山氏の“陰謀”」をご紹介したいと思います。


(なお、この”説"については、現在「著作権者」を主張する方がいらっしゃいますが、Amazonレビューで最初に提起される1か月ほど前に別のブログコメントの中で提起した人物がおり、この人は「著作権者」を名乗る人とは別人であるらしいことが分かっています。このため、特定の誰かが「著作権者」と考えることが難しい状況にあります。現在主張されている方とは別の方が「自分こそが著作権者」と名乗り出てくる可能性もあります)



 この説のポイントは、

「若山氏が小保方さんに渡したマウスは、論文に載っていたOct4-GFPマウスではなく、Acr-GFP(アクロシンGFP)マウスだったのではないか。若山氏が秘密裏に変更していたのではないか」

ということです。

 これが、のちに「ES混入説」として誤って流布し理研報告書にも載ってしまった、というのです。
 ではなぜ、若山氏はそのような変更をしていたか?

 ここは本当に机上の想像でしかありません。しかしそれによれば、若山氏はマイクロマニピュレーターによる胚操作実験に倦んでいた。第六講でみますように、マイクロマニピュレーター操作は非常にハードな作業です。それに代わるより簡便な方法を考えた。それがすなわち、培養皿上で卵子に細胞核が自動的に入り、細胞分裂して細胞塊や仔や胎盤を形成するという方法です。そのために必要なのがアクロシン。

 アクロシンは精子の先体に存在するタンパク質分解酵素で、卵子の細胞壁を貫通する能力があります。そこでできたものは疑似精子といえます。

 『あの日』でいうこの部分、

 また、ジャームライントランスミッションを観察する実験の際には、マウスが自然交配するのに要する時間を節約するために、若山先生は幹細胞化した細胞からできたキメラマウスから「光る精子」を顕微鏡下で採取し、顕微授精させる実験を行っていた。(『あの日』p.106)

 この「光る精子」とは、「光る疑似精子」だ、とAmazonレビュー新説では指摘します。

 「Acr-GFPマウス」の体細胞(リンパ球など)をSTAP処理して光らせたもの。それを「CAG-GFPマウス」の卵子に受精させようとしたものだ、と。「時間を節約するため」というのは、小保方さん向けの方便だといいます。次世代シーケンサー使用を禁止していた(同p.128)のも、そのためだと。

 いかがでしょうか。

 若山氏にも、不誠実なところがあった。小保方さんは「テラトーマができていない」という研究の根幹を隠し通していたが、若山氏もマウスの系統変更を隠していたという罪があった。お互い隠し事をした同士の「同床異夢」がSTAP研究の実態だった。これがAmazonレビュー新説です。狐と狸の化かしあい、「囚人のジレンマ」とも呼べます。

 もちろんその場合でも、研究の根幹のアイデアを、必要な証明ができないまま掲げ続けた小保方さんの罪がもっとも重いことに変わりはありません。

 ここまで、推測に次ぐ推測を重ねてきました。当事者の発言がない以上、これ以上この説を確認することはできません。

 それにしても、ネット上に流布している「若山氏主犯説」こちらよりははるかに整合性のある説です。





 ここで、もうお1人のレビュアーさんにご登場いただきます。研究者の「仁」さんです。研究不正に関心があり、STAP事件についても関心を持っておられたそうです。上記のパルサさん説を強く支持したうえで、仁さんの言葉で再度、まとめてくださっています。
 こちらも、ご了承をいただきましたので引用させていただきましょう:



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5つ星のうち 2.0
<改題>情報の「切り貼り」と「切り抜き」から見えてくる真相, 2016/2/22
投稿者 仁

>>http://www.amazon.co.jp/review/R2LY60901P9VNH/ref=cm_cr_rdp_perm(固定リンク)



【旧レビュー】
理研が、問題発覚から一ヶ月以上(2014年3月まで)「STAP細胞論文の結論に揺るぎはない」と表明し、組織に守られ、不正認定を最小限に留めようと温情を示されていたにも関わらず、その事実に言及せず、「高圧的」や「嘲笑」という表現(147ページ)で、理研の調査委員会のせいで不正が結論づけられたかのように読者を誘導しています。なお、理研の予備調査は、2014年2月13日~17日にかけて行われました。小保方氏がこの本で指摘するようなバッシングが加熱する以前で、当時の理研は、小保方氏やSTAP細胞論文を守ろうとしていました。(その結果、理研自身が、批判にさらされることになったのは周知の通りです。)
この本では、そもそも論文の核心部分の説明に用いている図について、なぜSTAPと直接関係のない博士論文から転用したのかについて、一切説明がありません。記者会見の時に強弁したように、本当に実験結果を示す正しい図があるのなら、この本に掲載すれば良いのに…と思いました。
また、早稲田大学に提出した博士論文について、「最終ではないバージョンのものをまちがえて製本所へ持って行ってしまった」(73ページ)と言うのであれば、やはりこの本に、最終稿を掲載すれば良いのに…とも思いました。(もっとも製本して大学図書館と国会図書館に提供する博士論文を草稿と最終稿を取り違え、チェックもせずに提出するというのは考え難いのですが…)実際、昨年11月の博士号取消しの際に代理人を通じて出したコメントでは、「年度内に公表」ということでしたが、結局はそれも果たされていません。
気になったのは、話しの流れと無関係なのに実名を出されている登場人物(セレナ:34ページ、バネッサ:35ページなど)が複数いる一方で、真相に迫る部分で実名を出さない(ある先輩:99ページ、2人のテクニカルスタッフ:131ページ、シーケンス解析専門の研究者:150ページ、情報を教えてくれた共著者の一人:151ページ、理研の理事:213ページなど)実在確認が取れない登場人物が多数いる点に、意図的なものを感じ、違和感を覚えました。
これでは本の内容について、事実認定ができません。

【追補】
事実確認できる情報と合わせて読むことをお勧めします。
小保方氏が行っている事実の「切り貼り」にもまた、重要な意味があると思います。

【再追補:小保方氏による「切り取り」情報と「切り貼り」情報から見るSTAP問題の本質】

STAP細胞研究の根底を揺るがせた「テラトーマ」の架空性について

小保方氏が極力言及を避けている、博士論文から転用したテラトーマ画像こそ、STAP細胞の架空性を物語る物的証拠です。
『あの日』の記述(切り貼り情報)を信じるならば、p.56に「テラトーマを形成することはなかった」、「テラトーマに似た組織を作ることができた」とあり、小保方氏はSTAP細胞(スフェア細胞)からはテラトーマができなかった、ことが告白されています。
ところで、小保方氏が公開していながら、『あの日』では詳細が触れられていない(切り取り)情報は、STAP細胞由来とされるテラトーマに関する実験ノートです。
この実験ノートは、小保方氏の代理人弁護士により公開され、毎日新聞(2014年5月24日:4枚の写真のうち、1枚目と3枚目がテラトーマに関するもの:検索ワード「STAP細胞+小保方氏+実験ノート+公表」)に写しが掲載されています。
この実験ノートよれば、年代は不明ながら、12月27日に、テラトーマ形成を目的としたSTAP細胞の移植が行われたことが確認できます。
『あの日』の記述(切り貼り情報)を信じるならば、p.206に「テラトーマに関しては、私がアメリカ出張の間にできてきたサンプルだった。そして調査の結果それらは、すべてて既存のES細胞由来だったと結論付けられた。」とあり、このアメリカ出張は、p.113に「日本が正月休暇の間、アメリカで実験をしたいと思っていた」とあることから、『あの日』の前後の記述と照合すると、2012年末~2103年始であることがわかります。
これで、小保方氏の代理人弁護士により公開された実験ノートの日付が、2012年12月27日と確定しました。そして、この実験で形成されたテラトーマは、STAP細胞論文不正問題を契機とした調査委員会によって、ES細胞由来であったことが判明しています。
2012年12月は、笹井氏が小保方氏のユニットリーダー採用面接に立ち会うとともに、STAP細胞論文作成に参画したタイミングになります。
テラトーマができていないことがわかってしまうと、STAP細胞の実在性の根幹が揺らいでしまいます。そこで、慌ててテラトーマを作ろうとしたのが、2012年12月27日の移植実験です。しかし、STAP細胞由来のテラトーマは、調査委員会の解析結果からも、存在していないことは明らかで、STAP細胞論文のテラトーマは、実は架空のものであった可能性が高いと思います。
問題は、一体なぜES細胞由来のテラトーマが見つかったのか?

次の3つの可能性がありますが、私には詰め切れません。
1)誰とも知れない第三者が作成した。
2)若山研の誰かが作成した。
3)小保方研の誰かが作成した。

※この時点で☆3つ

【再々追補:切り取り情報に潜む真実】

小保方氏が理研CDBに採用される際に示したであろう論文における疑義-真臨氏への回答-

少なくとも次の3報に、図の使い回しや利益相反の未申告などの問題があります。

1)Tissue Eng Part A. 2011 Mar;17(5-6):607-15. doi: 10.1089/ten.TEA.2010.0385. Epub 2011 Jan 10.
"The potential of stem cells in adult tissues representative of the three germ layers"
<問題点1>Fig.2のFgf5の画像とFig.3のNat1の画像が同じ。
<問題点2、3>Fig.3のKlf4の画像を上下反転させるとFig.3のCriptoの画像が同じ。これらの画像の一部はFig.4のNat1と同じ。
<問題点4>Fig.2のKlf4の画像の一部が、Fig.3のSox2の画像の一部と同じ。
<問題点5>Fig.1は、博士論文のFig.6を上下反転したものと同じ。

2)Tissue Eng Part A. 2011 Jun;17(11-12):1507-15. doi: 10.1089/ten.TEA.2010.0470. Epub 2011 Apr 12.
"Development of osteogenic cell sheets for bone tissue engineering applications"
<問題点>「Disclosure Statement」に「No competing financial interests exist.」とセルシード社との利益相反を申告せず。

3)Nature Protocols 6, 1053?1059 (2011) doi:10.1038/nprot.2011.356 Published online 30 June 2011
"Reproducible subcutaneous transplantation of cell sheets into recipient mice"
<問題点1>Fig.5aのNumber of B cellsとFig.5bのNumber of neutrophilsが同じ。
<問題点2>マウスの株を記載していない。また、免疫不全マウスを使っているのにT細胞がある。
<問題点3>「Competing financial interests」に「The authors declare no competing financial interests.」とセルシード社との利益相反を申告せず。

本著では、これらを含む過去の不正についても、正直に認め、背景や理由を説明していただきたかった…というのが、私の率直な気持ちです。
なぜなら、小保方氏が戻る『あの日』は、大学院に入学する時点だと、私は思うから。良き師にさえ恵まれれば、違った人生を歩めたのかも知れません。
比較的短期間で、一人で一冊書き上げる集中力があることは、十分に理解できました。研究者の素養はあると思います。

小保方氏は、とうとうかつての恩師にも梯子を外されてしまいました。小保方氏の同意を得ることなく、Nature Protocolsの論文が、取り下げられてしまうとは、恩師とは思えない酷い仕打ちです。

真臨氏から、問われたので、小保方氏の過去の論文を精査し、再々追補することになりました。
その結果、意図的な改竄等を指摘せざるを得ないため、☆2つに下げることとします。

小保方氏には、ぜひ『あの日』の続編を執筆され、不正の全貌を明らかにしていただきたいです。博士課程時代・留学時代の不正の実態を、余すことなく告白されたときは、☆5つです。

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●STAP細胞とは、結局なんだったのか ⇒ 「多能性細胞」ではなく「自家蛍光細胞」



もうひとつ仁さんのコメントから、「若山氏の責任」に言及されたところを抜き出します。

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(仁さんコメント 3月12日)

若山氏についてですが、私としては、キメラマウスが一体何によって作成されたのか(若山氏がどんな手品?を使ったのか)は、追求すべきだと思っています。
でもこれは、小保方氏の既に認定された問題とは、別件として区別した方がわかりやすい、と思います。
STAP問題の全体像としては、一プロジェクトに異なる2つの問題があるとすると、小保方氏が『あの日』で訴えたかったことが理解できるように思います。

ちなみに、小保方氏が作ったのは、正確には、多能性(Pluripotency)のあるSTAPではなく、自家蛍光(Autofluorescence)するSTAA(Stimulus-Triggered Acquisition of Autofluorescence)細胞とでもいうべきもので、STAP細胞で作ったテラトーマは存在しません。
だから、テラトーマの画像は、全く別の研究、別の実験の画像を、博士論文から転用せざるを得なかった、と考えるなら、しっくりきます。
つまり、小保方氏は、論文不正(捏造)の背景として、研究不正(できていないことをできたように振る舞った)も行っています。

いずれにせよ、若山氏も悪いし、小保方氏も悪い、ということかとは思います。
で、どっちがより悪いかというと、テラトーマを捏造した方が、より悪いと思います。
なぜなら、そもそも多能性がない細胞ということがわかっていたら、わざわざ、それを使ってキメラマウスを作るまでもないので。

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 ・・・ここまで、いかがでしたか?
 パルサさん、仁さん(どちらもパルサ説の人とみなせる)文体の異なるお二人のレビュー内容は、今の時点ではAmazonレビューにしか出ていないものです。
(今回、初めて引用させていただきましたが)
 大人の皆様が読まれて、納得いただけましたでしょうか?

 理研のES混入説は、STAPの存在が疑われた当初から、ありそうな仮説に当てはめた説であり、細かくみると辻褄の合わないところがあるのです。パルサ説、仁説では、そのあたりがクリアになっているかと思います。

 また「論文不正」ではなく「研究不正」、
 これも、仁さんのこのすぐ上のコメントに出ていますね。
 そのようにこの問題を捉えないといけません。
 うっかりミスで論文に瑕疵をつくったわけではない、そもそもの出発点でできていないものをできたと言い、研究をすすめたことの結果が論文不正なのです。

 だから、小保方晴子さんが今、研究界から追放された状態になっているのも、身から出た錆、仕方のないことなのです。
 
 
 このブログではお二人のご了承を得て本日時点でのレビューを引用させていただくにとどめました。
 また、お二人ご自身でまとめなおして世に出される機会がきっとあると思いますので、その日を楽しみにお待ちしたいと思います。


これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


 今日は「国際女性デー」。
 『あの日』(小保方晴子、講談社、2016年1月)読書日記 第8弾です。

 今回は、社会学者千田有紀氏による、Yahoo!ニュース記事
「小保方晴子さんの『罠』 私たちはなぜ彼女に魅了されるのか」(2016年3月4日)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sendayuki/20160304-00055024/ 

 この記事にかこつけて、いわば「本歌取り」をして、「小保方さんに惹きつけられる仕事の世界の人々」の心理をさぐってみたいと思います。

今回の骨子です:

●「キラキラ女子」が成り上がる「朝ドラ世界」とIT企業
● 現実化してきたヒロインたちの転落と不信、『嫌われる勇気』
● 女性版「ヒラメ型」は男性よりきつい?


 それではまいりたいと思います―

●「キラキラ女子」が成り上がる「朝ドラ世界」とIT企業


「小保方さんは、会社で働いたことのある若い女性の仕事上でぶつかる困難を投影するアイコンになったのである。そして仕事で成果をあげたようにみえても、失敗したときには一転して、ひとり批判されるのではないかという成功不安を投影する対象でもある。」(上記記事より)

 なるほど〜。
 『あの日』26万部、それを支えているのは20−30代女性なのですと。あと「自分の娘や孫がいじめられている気がする」というおとしより世代なのですと。

 あるTVでの解説によれば、『あの日』の前半は、「朝ドラヒロイン」そのままなのだそうです。良い先生に出会って、温かい言葉をかけてもらって、ちょっとドジな晴子ちゃんがチャンスを貰って次のステージに行く、と。ヒロインの目線でぐんぐん進み、プレゼンするたびに扉が向こうから開いていきます。
 
 また、後半では小保方さんの「論文の瑕疵」が明るみに出、叩かれ、内臓も破れる思いを何度もし(第5回の記事参照)、繰り返し泣く場面が出てきますが、それでも
「私は誰かを騙そうとして図表を作成したわけでは決してありません。一片の邪心もありませんでした」
と、心の正しさを語ります。それは、
「朝ドラヒロインの私が悪いわけがない!」
というメンタリティなのだそうです。
 
 これもまたなるほど〜〜。
 読者の皆様、いかがですか?

 わたしは小保方晴子さんというと、あまりこれまで結び付けられませんが、ここ数年ネットで流行っている言葉、「キラキラ女子」というのを思い浮かべます。

「容姿端麗でセンスもよく、明るくて性格もいい。もちろん頭もよく、仕事だってバリバリ」
「仕事だけでなく、おしゃれもプライベートも全方位で手を抜かない」
「ファッションもメイクも恋愛も仕事も楽しんでる」

 そういう、キレイで仕事もできる欲張りな若い女性のことを指します。

 IT企業のサイバー・エージェント(CA)が、「キラキラ女子」を採用し、業績躍進の原動力としたのは有名。
「僕、よく『顔採用』してるといわれるんですけれど、それは正直いって違うんです。美女を集めて業績悪かったら、僕はアホじゃないですか。ただ、社内の女性を見ると、すごくキラキラしている雰囲気はある。実際、女性としても輝いていて、かつ仕事も活躍しているし、頑張っている。できる女性が多い。みんな、公私が充実しているのは確かですね」
(CA社の藤田晋社長、2013年2月23日日経新聞)



●現実化してきたヒロインたちの転落と不信、『嫌われる勇気』との共通点


 しかし、そういう「キラキラ女子」はまた、「いつ切られるかわからない」不安も抱えています。
 以下は、今年1月26日「ダイヤモンド・オンライン」に載った、「キラキラ女子残酷物語」―。


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――女性社員を「キラキラ女子」にすることは、採用戦略で大切ですか?

A氏 もちろんです。フェイスブックなどで、人事や広報の社員が自社の「キラキラ女子」をシェアしまくっていますね。ビジネスサイトなどで取材を受けると、一気に数千人にシェアして、「いいね!」と称え合う。20代後半までの女性社員も、「先輩、素敵です!」って……(笑)。
 あれは会社のPR戦略であり、採用戦略です。女性社員をいかにキラキラにするか。それが上手くいけば、男子学生のエントリーが確実に増えます。2000年前後から業績が上昇しているベンチャーのB社などは、そのあたりは実によくできていて、新卒採用の姿としてはもう、「上がり(ゴール)」です。社長が私生活を含め、目立つ人でしたからね。
(中略)
――先ほどのお話にも出ましたが、そうした「キラキラ女子」「体育会系女子」は、リストラ要員にされやすいのでしょうか。
A氏 会社からすると、辞めさせやすい存在です。「キラキラ女子」「体育会系女子」の多くが社内恋愛の末、結婚した相手の男性が今の会社に勤務しています。30代後半〜40代の女性でまとめ役の存在の社員が、こう言うわけです。当然、社長(グループCEO)の意向を踏まえ、発言をしています。
「うちの会社の経営状態は、芳しくない。人員を減らすことになるけど、あなたたちのご主人の雇用は(会社が)きちんと守るから……」
 暗に辞表を出すことを求めるのです。「キラキラ女子」「体育会系女子」のほとんどが、抵抗することなく辞めていくのです。ベンチャーのリストラでは、女性社員のまとめ役が社長の意向を受けて、退職勧奨の最前線に立ちます。女性社員との1対1の話し合いなどで、追い詰めます。ヒステリーには叱らない。クールに、ねちねちと接していきます。そのときはもう、目の前にいる「キラキラ女子」「体育会系女子」は部下ではないから……。追い詰められ、気を失った女性もいました。

(「一流企業のマネジャーが明かす、学歴重視の新卒採用をやめられない理由」ダイヤモンド・オンライン2016年1月26日)

*********************************************

 いかがでしょうか。
 花のいのちは短くて。わたしはここ数年持ち上げられていた「キラキラ女子」について、今年になって出たこの記事にちょっと暗澹となりました。

 そう、キレイだ、可愛い、とちやほやされる時期は短いのです。
 実は女性活躍推進などと言っても、女性を異性として消費するだけの存在とみている「男性目線」は全然変わっていない。どんなに美しく生まれついても短い賞味期限で消費される、労働力としてはひたすら不安定な存在です。

 今月7日付日本経済新聞には、「マタハラ隠し」の字が躍りました。
「妊娠などを職場に報告した女性が『能力不足』を理由に解雇される事例が目立つ。『妊娠したなら辞めて』という従来のパターンとは違い、妊娠に触れないのが最近の特徴という。」
 妊娠したら理由もはっきりせず切られる。女性の人生に対して企業社会はどこまでも理不尽です。


 そのように、女性たちにとってチヤホヤされ持ち上げられる時代から一転、会社というところは牙をむきます。上司たちは手のひらを返します。

 小保方晴子さんの手記『あの日』の後半は、牙をむき手のひら返す会社と男性上司たちの仕打ちを、ホラー小説ばりに描き出します。
 それは現役でお勤めする「キラキラ女子」たちにとってリアリティのある恐怖かもしれません。


 そういう風に、企業社会の中で不安定な若者〜中堅の心を掴んだ本としては、2年前に流行った『嫌われる勇気』もそうでした。
 他人からの評価に左右される必要はない、他人の期待に応える必要はない。理不尽な企業社会と上司たちに対して「精神的マッチョ」になって心を硬くしてやり過ごせ。そういう教えでした。
 『嫌われる勇気』が出た2014年は、研修でお出会いする30代若手リーダーたちと奇妙に話がかみ合わず、困った年でもありました。この世代の人にとって『嫌われる勇気』はバイブルのようなもので、下手をしたら、同じ会社の上司など彼らにとって嘲笑の対象だった可能性があります。

 若者を使い捨てにし、上司たちが自己保身に走る企業社会の閉塞感を背景に若者の心を取り込んだ『嫌われる勇気』が、そこへ取り込まれた若者たちの心をますます頑ななものにした、そういう現象をみました。



●女性版「ヒラメ型」は男性よりきつい?


 わたしは数年前に仕事でお会いしたある「キラキラ女子」のことを思い出していました。

 ある中堅食品メーカーの総務部の女性でした。31歳独身。ほっそりして、可愛くてファッショナブル。オープンセミナーの中に入って華やいだ空気を持ち込みました。だれかが言った言葉には間髪入れず合いの手を入れる、それも内容のきちんとかみ合った合いの手を入れる、その当意即妙の受け答えはお見事でした。


「仕事、楽しくてしょうがないんです。休日出勤もしょっちゅうです」
 彼女は目をキラキラさせて語りました。
 きっとこんな女の部下と一緒に仕事をしたら上司たちも会社に向かう足取りも軽くなるだろう。


「彼女は社長や役員からも一目置かれているんですよ」
 上司の次長は相好を崩しました。

 採用シーズンになると華のある彼女は企業説明会で引っ張りだこ。女性の少ない会社の中の「出世頭」である彼女、華やかな容姿と才気煥発な人柄で、「広告塔」として男女大学生を惹きつけます。

 セミナーの前に実施した360度調査では―、 
 彼女の上司は、惜しみなく彼女に承認を与えていることがわかります。彼女自身もモチベーション高く仕事をしていることがわかります。

 ところが。
彼女の1人だけいる女性部下は、上司である彼女に厳しい評価をつけました。「承認」を一切貰っていないようでした。モチベーションも惨憺たるものでした。どの項目も恐るべき低い数字でした。

 何が起こっていたのだろう。

 もうひとつ、「承認研修」では、研修後にかならず「承認の宿題」をやっていただきます。
 彼女から返ってきた宿題は、どうだったか。

 そこでは、彼女から行った「承認」は教科書通り完璧なものでした。それに対して部下の反応は。「研修で習ってきたのですか」と苦笑した、とのことでした。

 過去の経験では、こういう反応は、それまでの文脈とあまりにかけ離れた行動を上司がとった時に起こります。つまり、それまでは「承認」らしいことはまったく行っていなかった。むしろ真逆の行動をとっていた。
 ・・・と考えると、先ほどの360度調査の結果と符合します。


 あくまでわたしの想像ですが、ひょっとしたら、上司に可愛がられるために全神経を使っている人は、部下に対して気が回らなくなり、説明不足や、そのために起こる行き違いに対する理不尽な叱責を起こしているかもしれません。
 いわば、「ヒラメ型上司」の女性版です。それも自分の賞味期限が下手をするとすごく短いのかもしれない、上司が手のひらを返したとき守ってくれるものが誰もいないかもしれない、という恐怖感があればあるほど、上司のほうにだけ全神経を集中してしまうかもしれないですね。男性より「キラキラ女子型女性管理職」のほうが、ヒラメ型いわば二面性がきつく出るかもしれないですね。


 残念ながらこの会社とはその後ご縁がありませんでしたが、「彼女」が会社の大理石のフロアを歩くときの踊るような足取りと「どう?美しいでしょう。私、この会社のエントランスが大好きなんです」と手を広げたゼスチャー、それに襟ぐりの大きく開いたオレンジ色のフィット&フレアのワンピース姿が印象に残っています。
 今は、30代半ばになっているはず。あの彼女はどうしているやら。


 まとめです。

 
 今まさに「朝ドラヒロイン」として世界をつきすすむ、若く美しき女子たちには、このブログの言葉は耳に入らないかもしれません。彼女らにとって世界は扉を開けてくれるもの。そして教授や上司といった、自分にチャンスを与えてくれる”準主役級”のターゲットの人たちにに全神経を注ぎ、それ以外の人はサブキャラとしておざなりに扱うことが、あまりにも自然なのかもしれません。
 
 それでも、彼女たちに言いたい。
 この本はあなたがたが自分を投影する価値はないよ、と。

 小保方晴子さんはしてはならない研究不正をした。このことは今、Amazonレビューとコメント欄の中で過去の理研調査委員会の結論にもなかった新しい観点が生まれつつありますが、そこでも小保方さんの役割ははっきりしています。単純ミスでは済まされない、研究者としてしてはならないことをしたのです。自分のしたことの大きさのために処分されたのです。

 そこは、朝ドラには絶対「ない」展開ですが、この場合はそうなのです。

 そしてわたしが企業社会に望むことは、

 一部のお顔やお色気で成り上がろうとする野心高き女子たちは置いておいて、そうでない大多数の真摯な働き女子たちには、普通に働き手としての扱いをしてあげてください。

 可愛らしい異性としてチヤホヤすることも正しくないし、ちょっと歳をとったから、妊娠したからと切り捨てることも正しくありません。人としてしっかり見て、戦力として能力や実績で評価するとともに妊娠出産に関わらず、働く権利を保障してあげてください。
 わたしが関わらせていただく先ではそうなりますように。
 親御さんたちが心を込めて育てた大事なお嬢さん方が、お色気などに頼ることなく、しっかりと誇りをもってその人生を生きられますように。


 

これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日

 『あの日』(小保方晴子、講談社、2016年1月)読書日記 第7弾です。

 今回は、世の女性がたにとって気になる話題。もしあなたの大切なパートナーの男性が小保方晴子さんの「隠れファン」だったらどうしたら?という話題です。
 でもこの記事は、多くの男性読者の方をご機嫌ななめにさせてしまうかもしれないですね。結構、リアルの会話でも「あっ、地雷を踏んだ」とヒヤヒヤするところです。ホンマホンマ。

 しかし、「1位マネジャー輩出講師」のわたし正田としましては、マネジメントの作業につきものの現象として、あえてこの問題を取り上げたいと思います。女性管理職を含む賢い女性読者の皆様、どうか応援してくださいね!

 今回の骨子です

●「整形疑惑説」に逆ギレする男子は要注意!
●理系もしくは論理性男子は女性の「見た目」に弱い
●「惑わされている」男子は数字と画像で説得しよう



 それではまいりたいと思います―。

●「整形疑惑説」に逆ギレする男子は要注意!


 女性のみなさん。
男性って「感情認識」が下手じゃないですか!?EQ(感情知性)を構成する、「感情認識」「感情活用」のうちの基本、「感情認識」のところができないので、男性というものはわれわれ女性からみると、ときに非常に理不尽、非論理的なことをします。

 ここはよく誤解されるところですね。とくに論理性に自信のある男性は、「論理性こそがすべてに優ってすばらしいもので、それに比べると感情というものは女・子供の幼稚なものだ、レベルの低いものだ」と思っておられることが多いです。しかしそうした男性が、「感情」がわからないために、傍からみると実におかしな決断をし行動をとってしまう、ということがよくあります。

 結局、論理的というか合理的な決断というのは、論理だけじゃなく感情も加味しないといけない。あるいは、「自分がどんな感情に囚われているか」を自覚して、そこからの影響を最小限にしないといけない。男性諸氏にも、「感情認識」のトレーニングをしていただきたいところです。

 さて、脱線してしまいましたが「小保方晴子さん」がらみで、また読者の方からおもしろい話を伺いました。
 
 この内容をざっくり言いますと、ある男性が

●小保方晴子さんの「美容整形」に関する話題をいやがる
●同じ人が、STAP騒動について論評したとき、小保方さんの研究不正への関与度を低く見積もったり、罪の種類を軽く(単純ミスのように)評価してしまう(注:本当は、かなり悪質な不正で、単純ミスではない)


という傾向が繰り返し現れた、ということです。

 これ、意味おわかりになりますか?
 もう少し詳しく、この人のお話をご紹介したいと思います。
 あるコミュニティFM放送局に参画する女性の話です。

*********************************************

 私の放送局で、ベストセラーとなっている小保方さんの『あの日』を番組で取り上げよう、ということになりました。
 その企画会議と、合間の雑談の席のこと。
 同僚の30代の男性(独身)の前で、わたしが「小保方晴子さんは整形してるよね」という意味のことを複数回言いました。するとその都度、その男性は
「あなたは非論理的だ」
「女性は論理性が低いという自分の欠点を自覚してしゃべらなければならない(!)」
と、私を非難したのでした。
 彼は、数学科を出てふだんから「論理的」と自認する人なんです。EQは低めだと思います(幸い、私の彼とかではありません)
 今回は、
「整形を話題にする=非論理的だ、感情的だ」
この決めつけが、なんだかよくわからずモヤモヤしてしまいました。

 ところがその彼が、企画会議で「研究不正」について番組でどう触れようか、という話になったときに、妙に、小保方さんの関与度を低く言ったり、「不正」の悪質度を軽く言ったりするのです。
「小保方氏の役割は、不正に前のめりになっていた日米の他の学者たちの『つなぎ役』だよね」
「論文にほかの論文からの画像を転用したりコピペをする『瑕疵』があったことは確かだよね」
(ちなみにこの彼は、「瑕疵」っていう言葉をよく使います。頭が良さそうにみえるんですカネ・・・)

「ちょっと待って。この研究不正の件、どうみても小保方晴子さんが自分で捏造もコピペもして、小保方さんが主犯よ。というかひょっとしたら単独犯よ。つなぎ役なんて小さい役割じゃないわよ。
 それに、この件は画像の転用とかコピペといった、『ミス』の問題じゃないの。そもそもできもしないものをできたと言ったり、やってもいない実験をやったことにしたらしいことが問題で、研究不正としてはかなり悪質な不正なのよ。」
 私は、ネット検索してそこそこの知識を得ていましたので、こう言い返しました。だって、リスナーの方に間違った情報を届けてはいけないでしょう?

 すると30代男性の彼はまた、
「だから女性は感情的だ!!社会を知らない!」
と、荒れくるって、議論にならないのです。あとは私に対して暴言のかずかず。
 どう思います?こういうのって。

 あとで、同じ会議にいたうちの放送局のチーフディレクター(女性)とご飯食べにいったんですけど、チーフ曰く、
「あの子(30代男性)どうみても小保方晴子さんに惚れてるわよね。だから『小保方さん整形疑惑』の話をするのもイヤがるし、無意識に小保方さんの不正への関与度を下げて、彼女の罪が軽いことにしちゃってるのよ。
 そういうのは、小保方晴子さんが実力もないのに彼女に騙された学者たちと一緒なんじゃないかなあ。自分が小保方さんを『すきだ』ということに気がついてなくて、無意識に評価にゲタをはかせちゃってるのよ」

 結局、チーフの判断で、彼はこの企画から外れてもらいました。

*********************************************

 いかがでしょうか。
 「小保方さん整形疑惑」これ、初めてきいたという方もいらっしゃいますか?
 でも女性の方々はすぐ気がつかれると思いますねー。

 えーとこのブログでは、小保方さんの画像を掲載したりはいたしません。もし強いご興味のある読者の方は、小保方さんの小学校時代、高校時代、大学時代の写真をネットでご覧になってみてください。で、「間違い探しクイズ」の感覚でみていただくと・・・、そんなことを言うわたしは意地悪な女なんでしょうか。
でも小保方晴子さんのキャラクターをより正確に理解するためには、知っておいても良いことですね。


●「理系男子」「論理性男子」は女性の「見た目」に弱い


 ちなみに小保方さんは、あの栄誉あるSTAP細胞論文のNature掲載の発表の直後、出身学校への取材が殺到したので、自ら出身校に電話して「取材に応じないでください」と頼んだ、ということが『あの日』に載っています(p.140)。こういう、出身校に取材に応じないようにわざわざ頼む、ということも珍しい気がしますけどねー。いろいろと憶測はできますけれども、とりわけ「写真」が流出するのは困ったのではないかと。しかし現実には流出してしまいました。みると一目瞭然です。

 でもねー、この話題をイヤがる方はすごくイヤがられるんです。とくに男性はそうですね。
 この話題すなわち「小保方さん整形疑惑」がなぜそんなにイヤなのでしょうか。

 あくまでわたしの想像なんですが、その男性方にとっては、「小保方さん」とは、あの2014年4月9日の会見の時のお顔の方なのです。
 清楚で、ほっそりしたお顔、今にも泣きだしそうに少しうるんだ、きれいな二重瞼にふちどられた目、長い長いくるんとしたまつげに中央部分がふっくらした小さな唇、毛先を巻いたロングヘア。そして理系の研究職という、ちょっと謎めいた知的なイメージの職種ということも、ドキドキワクワクする要素です。

 まああんまり細かく言いませんが。女性の方々はこれらのディテールにはどんなテクニック、あるいはマジックが入っているか、よーくご存知と思います。でも男性は悲しいかなご存知ないんです。そして、ひとつひとつのパーツが、男性諸氏にとっては心乱れるカタチをしているのです。

 一般に男性は女性に比べて「視覚優位」の方が多いと思いますねー。もちろん聴覚体感覚優位の方もいらっしゃいますが、視覚優位の方の分布は女性に比べて多いと思います。大昔狩猟をする性だったですからね。すると男性にとってある人を知る手掛かりは「見た目」の比重が大きいんです。とくに、理系の男性は「視覚優位」の傾向が強いと思います。

 そしてまた、男性とくに理系というか、「論理性」を自認する男性というのは、「感情認識力」が低い傾向にあります。まれに、論理性も感情認識力も両方高い方もお見かけしますが、出現頻度は低いです。感情認識力が低いというのは、要は自分は小保方晴子さんに「惚れてる」ということを「認められない」ということです。

 自分が「惚れてる」って自覚できないまま、「私にはこんなにすごい実績があって、今こんなすごい研究をしてるんです」という、とっても自信と責任感たっぷり(な感じ)に話す可愛い女の子を目の前にしたら・・・、
 わけもなく、気持ちが高揚する。感動した気分になる。
 その勢い余って、彼女に学位を与えちゃうかもしれないですねえ。地位を与えちゃうかもしれないですねえ。

 要は、「惚れてる」を自覚できない男性は、小保方晴子さんへの評価を間違えて高めにつけてしまう可能性があるんです。そして、自分のそういう「評価間違い」にいつまでも気づくことができません。だって原因がわかってないんですから。

 もうひとつは、ちょっと「びろう」な話題ですが「論理的な男性は性欲が強い可能性が高い」。ご指摘しておいてもいいかと思います。経験的に、彼らのテストステロン値は高めです(だから攻撃性もわりと高いです)。アスペルガー症候群ほか自閉症スペクトラム障害は、「超男性脳」といわれますね。論理脳がすごく発達していて、感情脳が未熟なんです。その分反発心とかの幼児的な感情が強く出やすいんですが、、、感情脳が未熟というのは、感情がないということではなくて感情とか衝動は湧く。でもそれを自覚できないです。

 英雄色を好む?さあ、関係あるんでしょうか・・・

 まとめますと、論理的な男性というのは、大まかな傾向として、

●異性への関心はけっこう高い
●感情認識力が低く、異性に恋愛感情をもったときにそれを自覚できにくい
●視覚情報への依存度が高く、見た目に左右されやすい

 ほらね、あぶないあぶない。
 そして、そういう愛すべき「論理的な男性」を攻略するのに、見た目を「盛る」のが一番効果的だ、と気がついたのが、われらがヒロイン小保方晴子さんだ、というわけです。
 おわかりでしょうか?

 上に挙げた「論理的男性の傾向」、もちろんいずれも個体差があり、論理的な男性がみんなみんなそうだ、というわけではありません。でも皆さんお気をつけになったほうがいいと思うんですよネ。気をつけていれば、騙される確率が下がります。あ、「確率」なんて言っちゃった、論理的男性向けに。


●「惑わされている」男子は画像と数字で説得しよう


 さて、ここまできました。
 
 現実問題として、ではどうすればいいでしょうか。


 たとえば、読者のあなたの彼氏が小保方ファンだった場合には。
 一般に、「小保方晴子さん」に心動いた男性は、それを他人に指摘されると怒りだして、とりつく島もなくなります。まあ既婚者の方もいらっしゃいますからね・・・
 
 そして、現実の職場でも、小保方さん本人ではない「小保方さん型女性」がいらして、周囲の男性の心を惑わしていらっしゃるようです。また職場の中の評価や序列をかき乱していらっしゃるようです。わたしはコンサルタントとしてこの2年ほどの間に、なんどかそうした話題をききました。

 「枕営業」があったかなかったか、そのへんは置いといて、仮になくても、評価が左右される。こういう現象は確かにあるようです。先ほどのFM局のお話のように。


 まずは、「彼は隠れ小保方ファンじゃないかしら?」ご心配になった場合には。
 試しに、「整形疑惑」をふってみましょう。
 あなた自身の言葉でなくていいんですよ。このブログで読んだと言って、かるく水を向けてみましょう。
 そこで、
「くだらんことを言う奴がいるな!だからマスコミの小保方バッシングは!」
などと「感情的」な反応が返ってきたら・・・、
 大いに、怪しいですね。

「自分は惑わされている」
 このことに自覚していただくには、どうしたらいいんでしょうか。
 惑わされているご本人、意地でも認めないですからねぇ。

 めっちゃ乱暴ですが、「自分は小保方さんに惚れてなんかいない!!」と主張する男性は、ウソ発見器みたいなのに座っていただいて、そこで2014年4月小保方会見の動画をみてもらって、そのときの呼吸、脈拍、発汗、血圧、脳波、脳血流、性ホルモン分泌などを計測してもらったらいいんじゃないかと思います。さあどう出るかな。数字で話すことが好きな男性なんかは、数字で出ると納得してもらえるかもしれません。
 おうちで行うなら、脈拍、体温、血圧、このあたりを失礼して、ゲーム感覚でみさせていただくといいかもしれないですね。

 あとは、もし小保方ファン男子がマネジャーとして、だれかをいざ評価するときには、やっぱり脳波とか脳血流、性ホルモン値をモニターした状態で、自分が完全に冷静に、いい判断ができる状態を作ってからするとかね。

 えっ、そんな手間ひまかけられないって?じゃあ、その人にこのブログ記事を読ませましょう(笑) 
 あと本人さんの画像を2〜3持ってきて、「間違いさがしクイズ」をしてみるのもいいかもしれません。
 それと、くどいようですが「行動承認」。言っていることでなく行動でその人を評価する。マネジャーの基本中の基本の心得として、忘れないようにしてくださいね。


 老婆心としては、ぶっちゃけ
「小保方さんに惑わされるような男とくっついていてもしかたないよ」
とご忠告申し上げたい気もします。シンデレラの王子と一緒でね、あのカップルもくっついた後すぐ「ぐちゃぐちゃ」になる、というストーリーがミュージカル映画「イントゥ・ザ・ウッズ」ですが(ネタバレ)、女性の容姿にコロッと騙される男とくっついていても未来はない。洋の東西を問わず一緒です。

 しかし、やっぱり女性としては、生活設計上そんな男ともくっついとかないといけない場合もありますよね。
 その場合は、あなたも小保方さんにならって容姿を「盛って」みましょう・・・。


 実はこの関連で「最近の女性学者や女医は妙にキレイなのが多くねえか?」という疑惑もあるにはあるんですが。今年1月にもこのブログで、ある「美人教育経済学者」の書いたベストセラー本がいかに無価値で、にもかかわらず功成り名遂げた男性経済学者たちが絶賛しているという現象をとりあげました。その学者たちこのブログをみんなが読んだらはずかしくねえか?とも思いますが、まあそれもおいおい・・・。


これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


 「社会人のための『小保方手記』解読講座」
 少し中休みです。

 お蔭様で、一昨日メルマガでお知らせしたとおり、このシリーズが「社会人 小保方」で検索するとGoogleトップに出るようになりました。
 Googleは、記事の内容の質、量に基づいて表示順位を決めていると言われていますので、特別SEO対策などしないのにトップに表示されるということは、この記事内容が高く評価していただいていることと思います。大変、光栄なことです。

 読者の皆様、ご興味のありそうなお友達に教えてあげてくださいね!


 このブログの読者の方から、大変興味深い、また真摯なお便りをいただきました。
 ご了承をいただき、引用させていただきます。


*********************************************

 小保方さんの記事、なるほどと思いながら興味深く読ませていただいています。

実は、私も過去に在籍した大企業で、既に退職した(当時は在職)理系高学歴男性の介入と妄言による組織運営の混乱に遭遇し、もしかしたら、彼も小保方さんのような問題を抱えていたのではないか?と仮説しています。

 私の遭遇した件の方は、結局、幸運なことに解決に向かって進みました。 当該の理系高学歴男性は、組織人として服務規程に違反することをしていたために、上司が激怒し大組織を退職することになったようです。しかし、彼には全く悪意もなく、自分は悪くない、組織では自分のやりたいことが徹底できない等と言っていたようです。が、それは明らかに言い訳だと思います。

  また、当該人物は、企業経営に関する知見があると勘違いしていて、大言壮語を繰り返し、周囲はその発言を信じて、信頼を寄せていました。しかし、ふたを開けてみれば、彼がこれまで繰り返してきた「自分は実力者」というアピールのほとんどは、実体のないものでした。  


 あまり具体的にお話しすることが出来ないのですが、とにかく、社会には高学歴だけれども社会性が欠如し、社会人として組織人として当然の常識を欠いた人物がいます。しかし、理系社会では、その欠如が、社会人初期では表面化しづらいのかもしれないと感じました。(当該の人物も入社以来研究部門にいたそうです。)

 結局、その当該人物の妄言被害?に遭った会社が複数あることがその後発覚しました。たまたま、被害に遭った社長と、私のいた会社の社長があるところで知己を得て、情報交換する中で、同じ人物が同じパタンで各社に迷惑をかけていたことが判明したわけです。

  実は、当該人物をここまで増長させた周囲の問題もあるような気もしています。 大企業の看板、高学歴、一見人当たりの良く話がうまい、スマートに見える立ち居振る舞い、だけを見て、その人の本質を見ようとしなかった周囲(今回のケースで言えば、私のいた会社の株主たちー地元の若手有力者)にも、表面的な情報だけで人間を評価してしまうところがあり、その当該人物をうまく「利用」しようと考えたこと。 お互いがお互いの利用だけを優先させて、共同のゴール・成功をめざすことをしなかったのだと思いました。


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 いかがでしょうか。
 大変、真摯な、リアリティのあるお便りでした。
 今、理研に在籍している研究員たちも同じ気持ちなのかもしれません・・・。

 どうも、わたしたちの社会では一定頻度でこういう問題が発生しているみたいなのです。本当は珍しくないことなのかもしれません。

 ただこのお便りのケースでも、社長さんや株主さん方まで巻き込んで騒動になるぐらいですから、ある程度世間を知っている人も騙される。
 だから、この「小保方騒動・その手記騒動」を契機に、学習したほうがよいですね。

 学歴、華やかな経歴、自慢話、に騙されない。心したほうがよいと思います。


 前にもお話したとおり、「小保方手記」に関しては、わたしの友人の真っ当な社会人は、はなから買ったり読んだりしません。
 でもそういっているうちに26万部のベストセラーになってきました。メディアでもまだしばらく取沙汰され、それをきっかけに読む人も多いでしょう。

 できれば、1つの会社が理研CDBのように機能不全になったり解体されたりしないために、この種の「人」の問題についても早い段階で共通認識をもつことができるようにしたいと思います。

 「承認マネジメント」としてはイレギュラーな話題ですけれども、言葉と行動の不一致な人にダマされないように。
 そこはやはり「行動承認」の価値にもういちど戻りたいものです。



 匿名希望さん、ありがとうございました!!

 このシリーズ記事に素晴らしい華を添えてくださいました。
 良識的な社会人の方のお声を聴けて、わたくしもほっといたしました。



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第5弾です。

 前々回、前回の2回で、小保方晴子さんは「発達障害」なのであろう、こだわりの強いASD、さらにその中でもIQの高いアスペルガー症候群の中の言語能力の極めて高い人であり、さらにミスが多くぼーっとしやすいADHDも組み合わさっているだろう、ということを書きました。
 そして残念ながら家庭環境、すなわちお母さんとお姉さんが心理学者であるという環境がそれを助長していたろう、とも。 

 今回の記事では、そうした小保方晴子さんが成人してから影響を受けた、ひょっとしたら現在も影響を受けている可能性のある、心理学セミナーやカウンセリングの害について取り上げたいと思います。
 えっ、職場の対応法を書くんじゃなかったのって?すいません、その前にちょっと寄り道です。

 そして例によってお忙しい現役ビジネスパーソンのために、この記事の骨子を最初に挙げておきます:

●「小保方手記」に登場するような感情表現を学べる場がある。一部の心理学セミナーでは、「身体が―」「内臓が―」といった身体表現を伴う感情表現が奨励される。
●身体表現を饒舌に駆使することを学んだ人々は、表現力を手に入れる代わり被害者意識が強まる。メンタルが弱くなり持続力がなくなる。言い訳が多くなる。
●視覚・聴覚・体感覚に訴える言葉を使うことで聴衆に訴える力を磨く心理学セミナーもある。そこでは同時に「目標達成」を奨励し、過去にも「目標のために手段を選ばない」人をつくっている
●心理学セミナーにかぶれた若い人について、職場運営実務における提言⇒本文参照
●小保方さんへの提言

     
 すごーく要らんお節介かもしれない記事なんですけど、なのでご興味のない方は読み飛ばしてくださればいいんですけど、わたしの過去アーカイブの中に、教育によって「小保方さん的症状」を呈した人は何人も出てきているんです。何がどう作用してそうなったのか。因果関係を知っていると、やっぱり大人として1つ階段を上がるかもですよ(うそうそ)

 そしてもちろん、われらが小保方晴子さん自身がが現実を受け入れ、社会で再び自分の道をみつけて地に足をつけて生きていかれるためにも、こうした一見よさげな心理学セミナーの害をご指摘しその影響をオフにすることは、大変重要なプロセスであろうと思います。多くの人はまだその害をご存知ありません。

 では、やっと記事の中身に入ります・・・。

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●感情表現は心理学セミナーでつくれる!


 この本、『あの日』の後半は希望にみちた前半と異なり、一気に暗転します。小保方晴子さんは、論文の共著者に裏切られマスコミのバッシングを浴び、残酷な運命に翻弄されます。みているこちらの胸が痛くなるほどです。
 そこの事実関係はここでは置いておいて。

 ここに出てくる「表現」について見てみたいと思います。多くの識者、コメンテーターの方が、小保方さんの「表現力」を絶賛されます。

 この後半のくだりでは、「苦しみ」を表す感情表現が大量に出てきます。
 少し引用してみましょう:

「驚きのあまり全身の温度が下がり、パニックになってしまった」(p.143)
「申し訳なさで胸が張り裂けそうだった」(p.144)
「鉛を呑み込んだように大きな不安を抱えた」(p.145)
「すべての内臓がすり潰されるような耐えがたい痛みを伴う凄まじいものだった」(p.148)
「体が凍りついた」(p.203)
「ただただ恐怖だった」(p.205)
「押し寄せる絶望的な孤独感が心の一部をえぐり取っていくようだった」
「小石を1つずつ呑み込まされるような喉のつかえと、みぞおちの痛みを感じ、息苦しさは日を追うごとに増していった。」(p.216)
「毎日、着せられるエプロンは、レントゲンを撮る時に着せられる鉛の防衣のように重く感じられ、体を自由に動かすことができなかった。」
「身動き一つ制限されることへの精神的な負担が、肉体的な痛みだけでなく、思考力や記憶力までも、少しずつ奪っていった。」
「熱く焼けた大きな石を呑み込み、内臓が焼け焦げているようだった。」(p.224)
「(検証実験中)体中が痛く耐えられない。皮膚が裂けるように痛い。内臓が焼けるように痛い。頭が割れるように痛い。何より魂が痛い。魂が弱り薄らいでいくようだった」(p.226)
「突然の質問がシャープに耳を通り抜け、脳に突き刺さった。」(p.230)
「ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。」「虚無感だけが、あふれでる水のように、体内から湧き出して体を包み込んだ。」(p.232)
「ギプスでカチカチに固めた心が研ぎ澄まされたカミソリでサクッと半分に分かたれるのを感じた。」(p.236)

 いかがでしょうか。
 1人の人が、生きたまま内臓をすり潰され小石を呑まされ脳に突き刺さり研ぎ澄まされたカミソリで半分に分かたれ…、
 なんて、ひどいんでしょう。むごいんでしょう。
 わたしも、もらい泣きしてしまいそうです。
 小保方さんの肉体は、これが本当なら既にこの世にないはずです。

(しかし「内臓をすり潰される」ってどんな感覚なんでしょう・・・実験では、マウスの内臓をすり潰すことはしょっちゅう小保方さん自身がなさっていたのではないかと思いますが・・・こういう主語の転倒、「投影」あるいはその逆のような現象が小保方さんやその擁護派の方々にはよくあります)


 この方、小保方晴子さんがもしASDだとすると、一般にASDの人は脳の中の恐怖を司る部位、扁桃体が普通より大きく、恐怖を感じやすいといわれます。人一倍怖がりさんなんです。トラウマも残りやすいです。そのことは特記しておきたいと思います。

 また、ASDだとすると、「知覚過敏」がひょっとしたらあるのかもしれません。小保方さんは視覚もかなり鋭敏ですがそれだけでなく、こうした内臓の感覚もとても鋭敏な方なのかもしれません。(だとしたら食べ物も刺激の少ないものだけを選んで食べなければならず、不自由なはず。とてもラーメンの替え玉なんて食べてる場合じゃないはず。大丈夫ですか小保方さん!!!)
 また、経験的にも、ASDの人は内臓が弱い人は多いようだ、ある程度以上負荷をかけると内臓の病気を起こしてしまいやすいようだ、というのも思います。

 そうした「ASD的恐怖心と知覚過敏要因」も可能性があるとして。

 実は、こうした「内臓がどうのこうの」という種類の感情表現が、奨励され、量産される場所があるのです。そういう表現をしなさいと指導する場所があるのです。と言ったら、読者の皆様は驚かれるでしょうか。いえ、作文教室ではありませんよ。

 それは、一部の心理学セミナーの場です。詳しくいうと、わたしが経験したのは某コーチング大手研修機関です。コーチングというよりカウンセリングの要素がかなり入っていて、わたしはその研修機関をこのブログで長年批判してきました。カウンセリングの中でもかなりディープな、その場でクライアントを傷つけてしまう危険性も長期的副作用もある手法をど素人にやらせている、と言って。はい、わたし自身もそこのワークショップの手法は一通り学んでいます。3日間連続のワークショップが基礎から応用まで5回、計15日間のプログラムです。

 そこでは、4回目に「感情」にどっぷり「浸かる」3日間のワークショップがあります。
 どんなかというと…、
 ちょっとその実例をご紹介しましょう。

 最初に、リーダー(インストラクター)がお手本をやってみせます。
「何かをしていて、『自分の心に引っ掛かりがある』」という意味のことをクライアント役のリーダーが言う。
もうひとりのコーチ役のリーダーが、
「ほう、その引っ掛かりとはどんなものですか?」
と、そこに着眼してきく。最初のリーダーが答える。
 すると、コーチ役は
「それを言っていて〇〇さんは、どんなお気持ちですか?」
と再度尋ねる。
「ちょっと嫌な感じです」
「ちょっと嫌な感じ。それは体の感じで言うとどんな感じですか?」
 最初のリーダー、沈黙。自分の身体感覚を探っているのでしょう。
「…こう、胃のあたりに小さなトゲが刺さっているような感じです」
 さあ、「身体感覚語」が出てきました。
「なるほど。では〇〇さん、そのトゲが刺さっている感覚を、ラジオの音量を最大にするような感じで、思い切り強く感じてみてください」
「・・・」
 しばしの沈黙のあと、最初のリーダーは、
「ああ、胃がかたい岩のようにこわばった感じです。おなか全体にずうん、ときます。抱えきれない、ような気持ちです」
 リーダーはそう言って、「抱えきれない」ということを表わすように、両手をおなかの前にまるく形づくります。
「もっと、もっと、それを強く感じてみてください。どうですか?」
「…おなかの中の岩が地球のように膨れ上がって私を圧倒しています」
「今どんな気持ちですか?」
「無力感です。泣きたい気持ちです」
「泣いていいですよ」
 リーダー(男)の頬に涙がつーっと流れます。
「ああ、少し気持ちが楽になってきました。
 あの仕事を一緒にしているパートナーにこの違和感を伝えてみようかな、と思います」
「いいですね。是非おやりになってください」
 ぱちぱちぱちぱち・・・。

 いかがでしょうか。
 リーダーはごく日常の些細な言葉の行き違い的なことから違和感を感じ、それをグワーッと拡大して身体に感じ、岩が地球の大きさまで拡大するところまで感じ、涙まで流し、それから「パートナーに何かを言う」ことを決断しました。

 その、何かを決断したということだけ見るとめでたしめでたし、なんですけれど。
 このブログを読まれている、有能なビジネスパーソンのあなたなら、
「そんな手間暇かける必要のあることかい!」
 って、つっこみたくなりませんか。

 些細なきっかけから始まってすべてがそのクライアント役の心の中だけで起こり、膨張し、収縮し、完結する。その徹頭徹尾主観の中のわけのわからないプロセスを経てさいごは「パートナーに何か言う」というアウトプットになるようですけれども、言われたパートナーも困ってしまうでしょう。妙にハレヤカな顔をして相方が何か言ってきても。新興宗教のお告げでももらったんか、と思うでしょう。
 涙を流すと、人はストレスホルモンが涙と一緒に外へ出ていくので、爽快な気分になるらしいですけどね。
 この、かなりカウンセリング的なやりとりが、ここの研修機関の「売り」です。感情の谷間を下り、上がる、それを「コーチ」がついていて質問して手助けしてやる、というのが。


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●身体感覚表現を学んだ人びとが被害者意識過剰になる


 わたしは2000年代の前半のある時期、怖いものみたさでしばらくこの流派のコーチングも受けていました。ただその結果、「この手法はその時はちょっとしたカタルシスになるけれど、あとあと情緒不安定になるだけで、またちょっとしたことも一々コーチのサポートを受けないと解決できない『ひよわ』な人になってしまいそうで、良くないな」と思い、早々にリタイアしてしまったのでした。

 また、その当時はマネジャー教育の団体を運営していたのですが、団体運営の中でこの研修機関の影響を受けた人たちが妙にイレギュラーな行動をとってくることにも気がつきました。彼・彼女らの行動も第三者的にみることもわたしによい示唆を与えてくれました。
 その人たちはやたら提案をしてくるのだが、その提案を採用してその人たち自身にやってもらおうとすると、妙につべこべ言い訳が多くなり、人の揚げ足をとり、「ちょっと違和感があった。胃に小さなトゲが刺さっている気がする」的なことを言い、それをもって、自分が言いだしたことをやらない(不履行)の言い訳にしようとするのでした。

 たしか、その過程では、
「正田さんから督促のメールがくると、胸がばくばくして苦しい」
みたいなことも、おっしゃった方もいらっしゃいます。そう、まるで『あの日』の中で小保方晴子さんが、毎日新聞の須田桃子記者から脅迫的なメールが来た、ただただ恐怖感でいっぱいだった、と書いているように。
 そのたぐいのことがあまりに多いので、私はこの研修機関の人を出入り禁止にしてしまいました。

 要は、「自分の身体感覚に敏感」というのは、「無用に被害者意識が強い」ということにつながるんです。傍迷惑な人なんです。
 でもその人たちは、それが「有害」だとは気がついてないんです。だって、とっても優しそうな人たちが集まる、優しそうなリーダーが主宰するワークショップで、
「身体感覚をじっくり感じ、表現するのはいいことだ」
って習ったんですから。
(困ったことにこのワークショップのリーダーをやる人たちはおしなべて高学歴でもあります。東大出、慶大出なんてゴロゴロいます)

 なので、お話を小保方晴子さんに戻しますと、
 小保方さんがこのワークショップの受講者だったかどうかは、わかりません。しかしこのワークショップに限らず、心理学には、自分の感情を微に入り細をうがち表現することを奨励する流派があります。そこでは、
「内臓が破れた」
「身体のどこそこが痛む」
と言うと、「マル」をもらえます。ひょっとしたら小保方さんが現在受けているカウンセリングがそういう流派かもわかりません。

 わたしなどは周りの人がやたらと「心臓が」とか「内臓が」とか自分の内臓を主語にして饒舌に言っているのをきいていると、人としてミットモナイと思ってその手の表現はしないことにしているのですが、まだ32歳、うら若き小保方さんは、そういうのがすばらしいことだ、と思っていらっしゃるかもしれません。「身体が」とか「内臓が」と言えば、褒めてもらえる世界なんです。

 このワークショップは最終的には「自己実現」「自己表現」を売りにしているので、自己実現ずき表現ずき小保方さんが受けていても不思議ではないんですよね。

 …えっ、小保方さんは本当に心を病むところまでいってしまったのに、苦痛の感情表現を冗談ごとにするのはけしからんって?
 どうなんでしょうねえ、本当の鬱というのは、そのさなかでは「失感情、失感覚」というのが普通だと思います。感情もないし感覚もないんです。こんなに強くものごとを感じたり表現力豊かに表現したりは、できないものですよ。

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●視覚・聴覚・体感覚に訴え、目標達成に駆り立てるセミナーもある


 もうひとつ、心理学ワークショップで小保方さんが影響を受けたのではないかな、と思われるのが、神経言語プログラミング(NLP)です。こちらもわたしは応用コースまで述べ18日間受講しました。 
 このセミナーには、プレゼンを上手になりたい人が通うことが多い。周囲の受講生には、わたしと同様研修講師業のかたもいました。営業マンもいました。
 そこでは、「優位感覚」を時間をかけて扱います。あの、視覚・聴覚・体感覚のうち何が優位か、というやつ。人前で話すときには、聴衆の視覚・聴覚・体感覚に訴える言葉で語りましょう。文章を書くときには、読み手の視覚・聴覚・体感覚に訴える言葉で書きましょう。
 ・・・小保方さんの『あの日』の文章には、NLPの影響があるだろう、と考えるのは考えすぎでしょうか。

 ひところはコーチングをやる人も猫も杓子も「NLPコーチング」と名刺に刷ったものですが、今はブームも下火になり、それほど見かけなくなりました。小保方さんが学会発表の寵児になった2007年はちょうどNLPブーム真っ盛りのころ。プレゼン能力を上げるために、小保方さんがNLPセミナーに通ったとしても不思議ではないのです。

 NLPにはまた、「目標達成セミナー」という性格もあり、もともと夢ずき自己実現好きの小保方さんとはこの点でも相性がいいのです。
 ところが、その「目標達成」に駆り立てる要素が、こんどは目標のためには手段をいとわない人をつくりだす性格となり・・・(後述)
 

 ここまでをまとめましょう。
小保方晴子さんはもともと発達障害の特性をもって生まれついているのに加え、ご家族が心理学者というご家庭環境、それに今どきの心理学ワークショップにより、もって生まれたその特性を助長・強化された可能性が高いのです。
 こうしたセミナーにはおそらく小保方さんと同様の、自覚していないASD、ADHDの方たくさん来られ、そしてその偏った認知特性を強化されていきます。わたしが「一応の勉強のために」そうしたセミナーに通っていた当時、発達障害の概念にまだ親しんでいませんでした。今振り返ると、あそこでご一緒した方々の半分ぐらいは、そうだったん違うかなーと思います。
 
 そしてまた、知性の高いアスペルガー症候群を含むASD(自閉症スペクトラム障害)の人のもつリジッドな特性、すなわち、一度思いこんだことはなかなか修正が利かない、「くっつきやすくはがれにくい」知性があるため、こうした心理学セミナーでの教えが現実と整合しないことになかなか気づかず、長期にわたってその教えを信奉してしまうということが考えられます。
 これは、ASDの中でも特に重症の自閉症の人にたいする療育を学んでみるとわかります。自閉症の人の「誤学習」というのはやっかいで、一度間違ったことをおぼえるとなかなか抜けません。たとえばスーパーに連れていって駄々をこねてお菓子を買ってもらった、という経験をすると、その経験から学習してしまい、スーパーに行けば必ずお菓子を買ってもらえる、買ってくれるべきだ、と考えます。ひいては、買ってもらえないとパニックを起こすようになります。これと同様なことが、アスペルガー・ASDの人たちでも日常的に起こっています。間違った思い込みの修正が利かないのです。

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●職場への提言


 こうした心理学セミナーは今もあります。あからさまに自己啓発セミナーでなくても、その内容や効果は自己啓発セミナーと同じようなものです。利己的で平気で他人を利用する人や、一見優しいけれど被害者的で言い訳の多い人をつくっていきます。
 そうして、正統的な心理学を装って若い人を吸引します。
 では、実際問題、現役マネジャーの読者の方向けの話題です。あなたの職場の若い人がこうしたセミナーにかぶれて仕事のできない、言い訳の多い人になったら、何をしたらよいのでしょうか?


 思想信条で人を差別したり解雇することは憲法をはじめ法律で禁じられています。だから、こうした心理学セミナーの教えにかぶれているというだけでは処分することはできません。
 しかし、その思想が原因で問題行動をとれば、その問題行動を解雇事由にすることはできます。いよいよ必要だと思ったら、問題行動や発言を日時とともに記録しておくことをお勧めします。
上述の感情表現を奨励するタイプの心理学セミナーでしたら、「不履行」という形の問題行動が起きやすいので、指示を出したこと、先方がその指示を確かに受け取ったこと、そして不履行が起こったことをそれぞれ日時とともに記録しておきましょう。
不履行とそれに伴う言い訳は、上司のあなたの感情を揺さぶり、ひょっとしたらカッとなってあなたのほうが不規則発言をしてしまうかもしれません。くれぐれも、感情的に動揺しないことをお勧めします。暴言を吐いてしまったりしたら、相手の思うツボです。「課長が酷い暴言を吐くので体が金縛りになったように硬直して動けなくなった」次の言い訳のタネを与えることになります。この記事を読んで、「こういう人の“被害”に遭ったのは自分だけではないんだ」と思って、気持ちを鎮めましょう。
解雇その他の処分のプロセスの中では、本人さんに対する「警告」の段階があります。このとき、できるだけ淡々と感情的にならないようにし、自分は本人さんの味方であること、できれば本人さんが職業生活を続けられるよう願っていることなどを伝えましょう。もし本人さんが失職を恐れて少し素直になってくれるようであれば、上記のような心理学セミナーに参加したことがないかどうか、それとなく訊いてみましょう。もし、それをカミングアウトしてくれれば、しめたものです。
あとは、時間をかけて、そうした心理学セミナーの中には間違った教えが入っていること、社会人にとっては「感情」ではなく「行動」が大事なのだということを教え諭してあげましょう。行動をとることを約束するのが雇用契約なのだと。

 めんどくさいですが、自社がSTAP騒動並みのスキャンダルに巻き込まれないためには、こうした企業理念に反するおそれのある人びとへの対応法をきめておいたほうがよいと思います。 



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●小保方さんへの提言


 この本、『あの日』の出版自体が小保方さんにとっての「癒し」なのではないかと言われた、医療関係者の方がいらっしゃいました。
 しかし、ノンフィクションの形をとりながら実名の人を登場させて事実関係のあやふやなことを書いて傷つける、ということは、すでにとても大きな加害行為です。
 小保方さん、ご自身の受けた被害をはるかに上回る加害を、人に与えてしまっていらっしゃいます。こんなことをしていても何も癒しにはなりませんよ。
 これからもこの本のようなオファーをしてくる出版社さんやTV局さんはあるかもしれませんが、是非、そうしたところとは手をきってください。
 それから、今回の記事で書いたような手法、「感情表現を思い切りしたら癒しになって次の前向きな行動がとれるんだ」というのを、心理学セミナーであれカウンセリングであれ、信じておられるとしたら、それは間違いです。もう、その手法とも手をきりましょう。それは、小保方さんがますます情緒不安定になって周囲の人への悪感情を増幅させるだけで、結局小保方さんにわるさをしてしまっています。ますます身心をむしばんでしまいます。また大切なご家族もますますダメージを受けてしまいます。

 この事件は小保方さんに大きなトラウマを作ってしまっていると思いますが、そのトラウマの処理方法としてわたしがお勧めしたいのは、「EMDR」という手法です。感情表現を多用することなく、スピーディーにトラウマを消してくれます。スピーディーといっても大体半年くらいはかかり、その間多少の副作用がありますが、やたらと感情表現をして人に相槌をうってもらうよりずっと効果がありますよ。



 このブログでは、定期的に「研修副作用」のお話をやっています。
 詳しくは「研修副作用関連」のカテゴリをクリックしてみてください。
 過去の記事で「小保方さん」に関係のありそうなものをピックアップしてみました

研修副作用の話(6)―「表現力」が大事か、「責任感」が大事か
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51905855.html  プレゼンセミナーやNLPセミナーでは「表現力」が上がるけれど「行動する力」は上がらないですよ。責任感は上がらないですよ。ひいては口先ばっかりの人をつくってしまうだけですよ。責任感は本人を日常目の前でみている指導者だけがつくってやることができるものですよ。ということを言っています

研修副作用の話(5)―目標設定セミナーについて
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51905839.html  「目標設定」「目標達成」を過度に重視するタイプのセミナーを受けると、目標のためには手段をいとわない人になっちゃう可能性がありますよ。NLPセミナーとか一部のコーチングセミナーなどがそうです。うちの団体で過去、その手のセミナーを受けた人から営業資料の盗用の被害に遭いました

ときどきコーチを返上してジャーナリストになるです
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51336521.html  「ワークショップ症候群」になってしまった人々の“症状”をリストアップした記事。仕事ぶりにむらが多く、言い訳が多く、自分を叱ってくる人を見下したり恨んだり。最後には会社を辞めてしまうことが多い。


自己実現の時代から責任の時代へ?
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51440997.html  アメリカでも「責任」を強調する子育てから「自尊感情」を強調する子育てに変わった。そして犯罪者や暴力的な傾向のある人は、「自尊感情」が高すぎるのではないか、とアメリカ心理学会会長・セリグマンが主張します

感情と自由の暴走がなにをもたらすか
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51339067.html 
 一部の心理学ワークショップに耽溺した人々の「感情の暴走」が起き、自律性を欠きだらしなくなる現象。また「自由」の観念も暴走し規律の観念がなくなる、というお話



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日









※この記事内のインデックスです


(1) 20世紀型心理学が小保方晴子さんを育てた
  ―発達障害概念の普及の遅れとカウンセリング自体にひそむ限界―

(2) どうすれば良かったのか?

(3) 障害の受容のむずかしさ
   ―ASDの人特有のプライド



『あの日』(小保方晴子、講談社、2016年1月)読書日記 第4弾です。
 前回の記事では、このブログ独自に小保方晴子さんのプロファイリングを行わせていただきました。

社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

 この記事の末尾部分で、「発達障害」ということに注目しました。
 小保方さんは、おそらくこだわりの強いASD(自閉症スペクトラム障害)とミスの多いADHD(注意欠陥多動性障害)のハイブリッドなのであろう。
 また、ASDの中でもIQの高いアスペルガー症候群、中でもとりわけ言語能力の高いタイプの人なのだろう。言語能力と実行能力に極端なギャップのある人なのだろう。
 このことが小保方晴子さんという人の研究不正、捏造、コピペ、見えすいたウソや言い訳、そしてほかの人を極端に理想化したり悪しざまに言ったり、という、普通の社会人からみると不可解な行動の源になっているだろう。

 そして最後にこう投げかけて終わりました。

1.では、小保方さんがこういうASD−ADHDの資質をもった人だとして、なぜ子どもの頃気づかれなかったんでしょうか?今まで矯正されなかったんでしょうか?
2.そして、こういう人がもし職場にいたらどういう指導をしてあげるのがいいんでしょうか?理研では何故できなかったんでしょうか?


 というわけで、今回の記事ではこの疑問点の1.にお答えすることになります。

 しかし正直言って気が重いです・・・
 というのは、残念ながら「お子さんのころの親御さんの責任」ということにも、触れざるをえないからです。うまれつきの形質だけで今のようになったわけではない、育て方の問題も入っていると考えられるからです。
 ただ本人さんもう32歳の方ですので、りっぱな大人です。そんな歳になったお子さんの子育てについて、蒸し返されるのは親御さんその他の方々にとってお気の毒なことではあるんですが。

(1)20世紀型心理学が小保方晴子さんを育てた
    発達障害概念の普及の遅れとカウンセリング自体にひそむ限界


  小保方さんは子どもの頃なぜ気づかれなかったか。矯正されなかったか。
 
 これは、シンプルに言うと「20世紀の心理学が小保方さんの人格を育てた」ということなのではないかな、というのがわたしの推測です。

 小保方さんのご家庭。個人的なことをほじくるのは…といいながら、やはり家族構成とご家族のご職業をみると「なるほど、これは」と思います。
 小保方さんは3人姉妹の末っ子。そして、お母さんとお姉さんのうちの1人が、なんと心理学者なのです。それぞれ、現在も東京都内の大学の教授、准教授を務めていらっしゃいます。

 お子さんがしょっちゅううそをついたり言い訳をしたり、日常生活でミスが多いお子さんだったら、心理学者たるもの「この子はちょっと普通ではないんではないか。発達障害なのではないか」と気づくのではないでしょうか?と思われるでしょう。
 それがそうではないのです。むしろ、逆に働いてしまった可能性があるのです。

 小保方さんのお家で起こったことを推測する材料はここにはありませんので、あくまで一般論として、「発達障害」をめぐる精神医学・心理学の「世代間断絶」というお話をしたいと思います。



 このブログではかねてから、「少し上の世代の心理学者、精神科医は、発達障害のことを知らない」ということをご指摘しています。

 精神医学が体系づけられたのは19世紀末、精神科医のエミール・クレペリンという人の功績です。この人の書いた精神医学の教科書の第6版が1899年に発刊され、精神病を大きく13の疾患に分類しました。これが現代の『精神疾患の診断と統計マニュアル(DSM)』のもとになっています。その後は20世紀初めにフロイトの精神分析学が現れ、一世を風靡しました。
 今流行りのアドラー心理学の教祖、アドラーの没年は1937年です。


 いっぽうで発達障害が精神疾患として認知された歴史は比較的浅いのです。精神障害の診断・統計マニュアルであるDSMには、1987年改訂のDSM-III-Rに初めて「発達障害」という語が登場。それ以前にトレーニングを受けた精神科医・心理学者らは、基本的に発達障害の概念を使いません。

 このブログでは今年に入ってからだけでも、『ほめると子どもはダメになる』や『嫌われる勇気』の著者らに対して、「発達障害の概念をスルーした議論をしている」と、異議申し立てをしております。
 本当は、発達障害はASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥・多動性症候群)を合わせると、子供世代の約1割、10人に1人のペースで出現する障害ですから、この障害を「ない」ことにして無視し続けるのはおかしなことなのです。「何か変だな」と思ったらまっさきにこの障害を疑うのが正解と思います。しかし、上記の心理学者・自称哲学者らは、「発達障害」の存在をオミットしているため、まったく見当はずれの議論をしてしまっています。それは専門家として非常にこまったことなのです。



 それにプラスして、カウンセリングという手法そのものにひそむ限界。

 例えばここに、よくウソを言うお子さんがいるとします。決して、小保方さんがそうだ、というわけじゃないですよ。
 しかし、その子の言うことがウソだ、ということを知るには、周囲の人にウラをとらなければなりません。同じ現象をみているほかの人に、「確かにそうだったか」と尋ね、もしそこに矛盾があれば、こんどは子供さんの言うことが本当かほかの人の言うことが本当か、もうひとつ確認をしなければなりません。2人、3人と人の話をきいていかなければなりません。非常にめんどうですね。

 ところが。カウンセリングという手法は、基本的にクライエント1人の話しか聴きません。ウラをとるということをしません。
 家族療法のような手法も一部にありますけれども、それはむしろ例外。わたしも人生で何度かカウンセリングのお世話になってますけれど、カウンセラーさんは基本的にわたしの話だけをずーっと聴いてくださいました。そして信じてくださいました。お蔭でわたしは何度か心の危機を脱したのですけれど、もしそこでわたしがウソつきだったら、どうしようもないんです。「信じてやる」ということが、癒しにつながるメリットもあるんですが、ウソつきを増長させる可能性もあるんです。

 これはカウンセリングだけでなくパーソナルコーチングにも言えることです。個人契約で、基本的にそのクライアントの話だけをずーっと聴き、「すばらしい!」と言ったり、「ぜひそれをおやりになってください!」と言ったりします。
 コーチングの場合、「行動」を促進するものなので、カウンセリング以上に、方向性を間違えるとたいへんなことになってしまいます。クライアントさんがウソついてるのに「すばらしい!」「ぜひおやりになってください!」って背中を押したりしていると。
 だから、わたしはある時期から基本的にパーソナルコーチングをお引き受けしなくなりました。
 そして、状況全体を知っていて周囲の人からもウラをとることができ、かつ業績向上へのモチベーションもある、上司によるコーチング(以前は「企業内コーチング」と言っていた。今は「承認マネジメント」という言い方に変わっています)こそが、もっとも推進すべきものだ、と考えるようになりました。



(2)どうすれば良かったのか?


 閑話休題。
 小保方さんの子供時代に起こっていた可能性のあること、というお話に戻ります。

 小保方さんのお母さんやお姉さんは、立派な大学で教える心理学者さんですし、そうした心理学の手法そのものに限界がある、とは思っておられなかった可能性があります。よく、子育てについて教える心理学者さんカウンセラーさん、同様に企業でメンタルヘルスについて教える心理学者さんカウンセラーさんもそうなのですけど、

「心優しく本人さんの話を聴いてあげる(傾聴)」

 このことだけを言われますね。
 傾聴のスキルが足りないから問題が起きるんだと。あと一歩がまんして傾聴してやればいいんだと。
 そして、実習で傾聴のやり方(スキル)を習ったお母さんお父さん方やマネジャー方は、実習そのものがもたらす高揚感も手伝って、
「こんなやり方で傾聴をすれば良かったんだ。私に足りなかったのはこれなんだ」
と、思い込んでしまいます。


 しかーし。
 そういう子育て指導、マネジメント指導は、「本人さんがウソをつく人だったらどうするのか?」という視点を欠いています。
 ウソをつきやすい言い訳をしやすい人に対してすべきは、「心優しい傾聴」だけではないんです。周囲の人にウラをとり、本人さんに再度当て、
「ウソは通用しないんだよ」
と示すことです。


 その手間を、小保方さんの周囲の人は省いてしまった可能性があります。とくに、単なるカウンセラーではなく大学で教えている心理学者さんであり、人に教えるたびごとに自分の手法の正しさを確信する立場であると、自己強化されますから。相手を疑ったり、ウラをとったり、という、手間のかかるしかも心理学の教科書に載ってないような卑しい作業をしたいとは思わないことでしょう。

 次の記事で解説いたしますが、発達障害の人を多く雇用する特例子会社さんなどでは、やはりミスのときに言い訳、自己正当化、他責をしやすいので、「現物を呈示する」というやり方をします。要は口先だけで逃げられないようにします。

 そしてまた。
 これは蛇足ですが、過去の子育てのノウハウでは、「逃げ道をつくってやる」ということが言われていましたね。今でも人生相談のページなどではよくみます。
 これ、子供さんが「ウソつき」の場合には、不正解です。
 事実はひとつ。量子力学の議論は置いといて(笑)。ウラとりによって子供さんの言ったことがウソだと証明されれば、そこは家族全員で「ウソは通用しないよ」という態度をとったほうがいい。5人家族で、上が優しいお姉さん2人で、(しかも心理学)ということであると、この「家族が一致してウソを許さない」という統一歩調がとれない可能性があるのです。

だれか一人でも心優しくウソをついたお子さんをかばってしまうと、子供さんは機会主義者ですから、すぐ一番優しい人のところに逃げ込んでウソをつき続けます。だから、子供さんにウソつきの形質があるとわかった段階で、家族の間で意思統一をしないといけません。表面的な優しさのためでなく、子供さんの将来のために、全員一致して子供さんを突き放さなければなりません。



 そして、子供さんがそうした、ウソをつきやすいお子さんだと判明したときは、どうしたらいいのでしょうねえ。

 わたしが提言したいのは、要は「行動承認」です。長い読者の皆様、もう耳タコですね。ごめんなさい。

 この子は、言葉を操ることはとても上手だ。でも行動力がそれに伴わない、はるかに低い。ちょっと何かをやらせるとミスをしてしまう。またちょっと目を離すとぼーっと妄想に入ってしまい、行動がおるすになってしまう。
 そういう子だから、してなかったことをしたと言ったり、ミスしたことを言い訳して人のせいにしたり、なんとか自己正当化の方向に言葉の力を使ってしまう。生物ですから、なんとか生存しようとするんです。そのために自分の持っている能力の高いところを使ってしまうんです。

 こういう状況に陥っているお子さんを救うには、なんとか行動力のほうを上げてあげることです。

 小さなことでも、「やったんだね」と承認してあげる(でも、やったことがウソじゃダメです)それは身近な、本人さんの行動を目の前でみている一番小さなコミュニティ、家族の中だからできることです。
 そして、「本当に行動をとったら、『承認』をもらえるんだ」と、本人さんに理解してもらう。そして、行動をとることを楽しんでもらう。
 これの繰り返しで、行動力を上げてあげることができます。非常に辛抱づよい作業になりますが、やはりご家族だからこそできることでしょう。



(3)障害の受容のむずかしさ
    ―ASDの人特有のプライド

小保方さんは発達障害で診断を受けるべきかどうか。わたしは、受けたほうがいいと思います。
 詳しくは、こちらの記事を参照

「広野ゆい氏にきく(2-3)「発達障害者マネジメントの『困った!』問答」」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51911281.html

 上記の記事のように、ひょっとしたらADHDの不注意によってミスや不行動が出やすいかもしれないので、診断を受けてADHD治療薬をのむ、というのも正解かもしれないです。薬をのむということに関しては、わたしもちょっと疑問があるのではあるのですが。上記の記事の中で発達障害者の会の代表の方に伺ったところでは、コンサータやストラテラといったADHD薬は、多少ミスの多さを改善させる働きがある。その方は、自分にとって面倒くさい仕事に取り組むときは、やる気を出すために薬をのむ、と言われました。
 
 もうひとつ「診断」について大事なことは、とくにASDの中でも高機能のアスペルガー症候群の方は、プライドが高いので大人になってから障害を受け入れることが非常にむずかしくなる、ということです。場合によっては告知されたことで、鬱になったり、自殺したり、ということもあるそうです。だから子供さんの間に診断を受け障害を受容したほうが、傷が浅くて済む。そして自覚のないまま大人になったアスペルガーさんは、なまじ障害の程度が軽くてIQが高いだけに、仕事上で非常に不都合をきたしてしまうんですね。

 したがって、子供さんを愛しているなら、子供さんがASDかもしれないと思ったら、小さいうちに診断を受けたほうがいいということです


 「障害の受容」。
 さあ、今の小保方さんにそれが可能でしょうか。つらいところですね。
 
 2つ前の記事の末尾に近いほうで、
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

「もともと発達障害と人格障害の線引きはすごく曖昧。感情の起伏が激しく他人に対して毀誉褒貶の激しい境界性人格障害も発達障害の一種なのかもしれない。また『自分はすごい』と思いこんでいる自己愛性人格障害も発達障害の一種なのかもしれない。」
ということを言いました。

 「発達障害」と人格障害その他の精神疾患の関係性は、ちょうど認知症でいう、「中核症状―行動・心理症状」の関係に似ている、という言い方もできます。
 認知症について詳しくは厚労省のこちらのページをご参照ください
>>http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/a02.html
 少しここから文章を引用しましょう:
「脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状が記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下など中核症状と呼ばれるものです。これらの中核症状のため周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。
 本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題が起こってきます。これらを行動・心理症状と呼ぶことがあります。」

 つまり、能力の低下が先にあり、それと環境要因が組み合わさって精神症状や問題行動が起きてしまう。鬱の症状などもできてしまう。
 認知症のおとしよりが、ひどく疑いぶかくなったり、暴れたり、徘徊したり、というすごく困った行動も、「能力の低下からきているんだ」ということを周囲の人が念頭において、本人さんの不安感をじょうずに受容してあげると、そうした困った行動が収まるようなのです。つまりそうした困った行動が、認知症そのものの症状で不可逆的で仕方がないもの、というわけではなく、治る可能性があるのです。


 これは認知症なので、本人さんがもともと持っていた能力が低下した、というお話ですが、この「中核症状―行動・心理症状」の関係性は、発達障害の場合にも大いに当てはまります。
 発達障害の場合は、老化に伴ってではなく、もともとある部分の能力がすごく低く、一方ですごく高い部分もあり、その能力の凸凹が社会不適応を引き起こします。ひいてはメンタルヘルスを害し、鬱や統合失調症のような症状が出たり、人格障害のような症状が出る、ということです。

 解決のためには本人さんも周囲の人も、ご自分のそうした極端な能力の凸凹を自覚することです。そして正しい自己像をもち、ある部分で分不相応のプライドをもっていたところも見直し、そんな等身大の自分が今から生きる道は何か、を模索することです。




 で小保方さんの場合は、今は、受容できない段階だろうと思います。たぶん精神的によくない状態なのだろう。この本、『あの日』を出版してしまうということからしても、受容できなくて徹底的に他責に走ってしまっている。まだ、「不正をして理研を辞めさせられた自分」という事態を受け入れていないようです。

 また、なまじ研究者としてはハーバード留学、ネイチャー掲載という、「頂点」にまで昇りつめた人なので、「自分は単なるミスが多くて言い訳が多く、でも身の程知らずに高いところをめざすのがすきな人だっただけだ」ということを認めるのはつらいことです。

 なまじ1点でも優れたところがあると、発達障害の受容がむずかしい。
 そういう心理を、また発達障害をもつ大人の会代表・広野ゆいさんに語っていただきましょう。

広野ゆい氏にきく(2)―見過ごされる発達障害―メンタルヘルス、自己愛、虐待・過干渉、DV、引きこもり
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51901747.html

広野:そう、自覚がないというより自覚したくないんですよ。認めちゃうと、皆さん感じてるのはものすごい恐怖感なんですね。ダメな人間と思われたくない。やっぱり「認めてもらいたい」んです。
 本当は、「ここはできないけど、ここはできるんだね」という認められ方を人間はしてもらいたいと思うんです。「あなたはこういう人なんだね」と、丸ごとみてくれて、その中で「じゃああなたができる仕事はこれだね」という認められ方をしたい。特にその凸凹の大きい人は必要としていると思います。
 だけどできる部分だけにしがみついて、できない部分を隠して隠して生きてきた人にとっては、ここは絶対に見せてはいけないというか、認めてはいけないところなんです。ここが崩れると全部が崩れちゃう(と思いこんでいる)からなんです。
 

 いかがでしょうか。

 発達障害、とりわけ高機能のASDの人にとっては、発達障害を「認める」ことは、これぐらいものすごい恐怖感をともなうことなんですね。

 わたしも、小保方さんほどではないですがそこそこ高い学歴をもって半世紀以上生きてきて、「自分は大した人間じゃない」と認めるのはすごくつらいことです。だから、「認めたくない」という小保方さんの気持ちは痛いほどわかります。

 でも。この方、小保方晴子さんは、もう何人もの人(自分の家族を含め)を破滅させ、自殺者まで1人出している人なのです。
 だから小保方さんの文脈でばかり物を考えてあげるわけにはいかない。

 たぶん、小保方さんのお母さんやお姉さんは今でもつかず離れず、晴子さんを見守っていることでしょう。
 ぜひ、その方々が、晴子さんの自己受容を助けてあげてほしい。
 わたしはそう思います。

 そして今後は、できれば研究というような自由度の高い仕事ではなく、もっときっちり上の人に仕事を監督されるようなお仕事について生計を立てられることをお勧めします。

 作家さんがいいのかというと、ご本人さんはそれでいいかもしれませんが、今回のようにノンフィクションの体裁をとりながら実在の人を傷つけるようなことを書いてしまう場合もありますから、お勧めしません。出版社さんも、もうこういうことで儲けるのはやめましょうよ。




 次回の記事では、小保方さんのような人が入社してきたら職場ではどうするべきか?また理研のような研究組織ではどうするべきか?というお話をしたいと思います。

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2016年2月29日追記:と予告していましたが、その後もう1回「プロファイリング」の記事を書きました。
小保方さんの生育環境に加え、(5)心理学セミナーの影響の可能性についても書かせていただきました。


これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html" target="_blank" title="">http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html

●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日

 『あの日』(小保方晴子、講談社、2016年1月)読書日記 第3弾です。

 ここまでは、小保方晴子さんの手記『あの日』の前半部分に出てくる印象的な2つのエピソードから、読み取れることや矛盾点、明らかにウソだと言えることを抽出してみました。

 今回はちょっと箸休めで、小保方晴子さんとはどんな人格の持ち主なのか?どういう遺伝形質でどういう育ち方をしたのだろうか?というのを、ごく限られた手がかりから解読してみたいと思います。
 もう既に沢山の精神科医・心理学者の方が同様にプロファイリングをなさっているようですが、企業の人材育成屋、そして「13年1位マネジャー輩出」のマネジメント教育のプロ、という立場からの解読も、あってもいいかと思います。
 でも、このブログの長年の読者の皆様からみると、そんなに突飛なことは言わないですよ。いつも言ってることの延長ですよ。

 わたし正田は、「人」をみるとき、大体5通りぐらいの人格類型ツールを使っています。
【1】 ソーシャルスタイル(四分法、コーチ・エイの「4つのタイプ分け」とほぼ同義)
【2】 ストレングスファインダー(おなじみ、米ギャラップ社の強み診断ツール。34通りの強み分類をし、その人の上位5つの強みがその人を物語るとする)
【3】 価値観(強みのうちさらにコアなもの?その人の強い動機づけとなる)
【4】 学習スタイル/優位感覚(視覚、聴覚、体感覚のどれが優位か、というもの)
【5】 発達障害の有無/種類

 拙著『行動承認』ではこのうち、「【1】ソーシャルスタイル」しかご説明してなかったですね。「【2】強み」「【5】発達障害」はこのブログにはちょこちょこ書いています。【3】【4】はあまり触れたことがなかったカナー。
 そんなに色々使って大丈夫か、と思われそうですが安心してください。慣れるとこれぐらい使うものなのですね。わたし「個別化」の人なので、人のプロファイリングはいくらやっても飽きないんです。

 さて、小保方晴子さんは、それぞれのツールを使うとどういう人なのか。
 このシリーズ第一弾の記事の中で、「【3】価値観」をとりあげました。

******************************************
  著者の価値観とは、何か。
 読み取れるのは:上昇、希望、鮮やかな色彩(とりわけ「金色」が度々出てきます)、世界の最高峰への移動、憧れ、挑戦、華々しい、美しいものへの賛美、頭の良さへの賛美。
 上位者からのまなざし。「褒められる」こともたびたび出てきます。
 「優しい」という言葉もたびたび出てきます。
 「細胞のふるまいの自由さ」(p.50)という印象的な言葉もあるので、「自由なふるまい」ということ、また細胞の時時刻刻の変化を見守ることも価値観なのかもしれません。
******************************************

 今みると、ここにはもう1つ付け加えたい価値観の言葉があります。
 それは…でもここに書くのはやめておこう。わたしがふだん使っている、価値観リストの中には載っている言葉です。漢字1文字です。(「嘘」じゃないですよ)
 これは、このシリーズ記事第一弾の末尾部分で引用した、東スポWEB2014年3月の記事の中にある、高校時代の小保方晴子さんがついたウソの内容からプロファイリングしました。
 小保方さんにならって、「ほのめかしのスキル」を使おうと思います。やっぱりブログの品格、大事ですもんね。
 
 
 あと付け加えるなら、実は別の小保方さん自身の手になる文書に、留学先のハーバードで身につけたと思われる価値観の言葉が載っていました。

「ここがよかった!GCOE ハーバード留学体験記」
>>http://www.waseda.jp/prj-GCOE-PracChem/jpn/newsletter/img/GCOENL01_C.pdf

 この中には、バカンティ教授の「教え」のようなものが書かれています。
「Dr.Vacantiはたくさんの助言をくださいました。もっとも印象的だったのは、『皆が憧れる、あらゆる面で成功した人生を送りなさい。すべてを手に入れて幸せになりなさい』と言われたことです。この言葉は、『見本となるような人生を送りなさい』という、すべての若者に向けた言葉だと理解しています。」
 うーむなるほどー。
 このページの存在はあるAmazonレビュアーの方から教えていただいて開いてみたのですが、うなってしまいました。
 まんま、アメリカの成功哲学。
 「成功することはすばらしい!」
 わたしはコーチングの学習の中でも「成功」という言葉が出てくると「ひいて」しまったほうなのですけどね。アメリカ由来の独特の価値観の体系ですね。
 当然、最高峰に憧れてハーバードのバカンティ研に留学した小保方晴子さん、憧れの教授からこう言われてこの価値観に染まっていたでしょう。

 というような価値体系をもつ、小保方晴子さんです。
 でもここまでは、別に変なとか異常なとかいうことはないですね。
 次のツールにいってみましょう。

【2】ストレングスファインダー。
 私がみたところでは、小保方晴子さんがもっている強みは、
・最上志向
・自我
・内省
・コミュニケーション
・適応性
です。
 このほか「競争性または指令性」「社交性」「ポジティブ」あたりも高いかもしれません。
 「コミュニケーション」は、抜群のプレゼン能力につながります。
 記者会見の場で、質問に臨機応変に答えられる、あれは「コミュニケーション―適応性」があるからできるのだと思います。
 そして「上を目指したい」これが強いのはたぶん、「最上志向―自我」。
 「自我」は、「褒められたい」ということにもつながりますね。人一倍強い承認欲求、ナルシシズムの資質です。
 「最上志向」さんは―、
 以前男性の最上志向さんについて書いた記事で、「これ小保方さんにも当てはまりそうだなあ」と思う記事があります。
「最上志向の男性はなぜ喋り続けるのか」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51757211.html 
 ずーっと喋り続ける。また時々すごく変な方向にすごい努力しちゃう。最上志向の人みんながみんなそうじゃないんですよ。

 妄想が強い、これは「内省」が高くて行動力の強みが低い人だとそうなります。
 人が「できない」ということを「やりたい」と思ってしまうのはなんなんだろうなー。負けず嫌いの競争性、天邪鬼の指令性あたりとポジティブ、最上志向あたりが合体するとそうなるかもしれません。でも行動の強みがあったほうがいいですね。「できなかった」というイヤなことに向き合えないのは「ポジティブ」カナー。
 ほんとは「裏ストレングスファインダー」で、ここには書けないお話もいっぱいあるのですが、ご興味のある方はわたしに直接おききになってください。

 その他、
【1】 ソーシャルスタイル:P+Aでしょうね。
【2】 学習スタイル/優位感覚:たぶん視覚優位。でも言語能力も高い、ということは聴覚もかなり優位。そしてこの本『あの日』の中には身体感覚を表現した感情表現の言葉がたくさん出てきます。だから体感覚優位なのかというと・・・うーん。
 
 そしてそして、
【6】 発達障害の有無/種類

 たぶん、このブログの長い読者の皆様は、一番お知りになりたいところでしょう。
 初めてご覧になる方は「えっ?」と思われるかも。

 わたしがみるに、愛すべきわれらが小保方晴子さんは、ASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥多動性症候群)のハイブリッドだと思います。
 これも本人さんがご覧になった時嫌な気持ちになられるかもしれません。「障害」という言葉に対して「差別だ!」といわれたり、「名誉棄損だ!」といわれるかもしれません。
 しかし。このブログでは一貫して、「発達障害は全人口の1割前後を占める非常にポピュラーな障害なので、隠すことも差別することも正しくない。もっとこの概念が普及してみんなが自己受容したほうがよい」という立場をとっています。この障害の疑いをご指摘させていただくことが差別や名誉棄損にあたる、という認識がそもそもありません。あしからず。

 発達障害でも人により千差万別で、ASDだからこういう性格、ADHDだからこういう性格、というふうに決めることができません。小保方さんの場合はどうかというと、こだわりの強いASD。その中でもIQや言語能力のすごく高いアスペルガー症候群。それと、ミスの多いADHDがまじっていると思います。言語能力の高さと、実行能力の低さのギャップが激しいので、ウソをついたり言い訳をしたり、がすごく多くなる。これは本人さんにもどうしようもないところだと思います。で周囲の人も、こういう人をみたことがない人には理解できないだろうと思います。
 だから、せっかく小保方さんという人と出会えたことを「チャンスだ」と捉えて、わたしたちは学習したほうがいいわけですね。

 また一般に発達障害の方は、手先が不器用だったり運動神経がダメダメだったり、ということが多いです。マラソンや水泳、自転車など、一人作業のスポーツを好む発達障害さんは多いですね。だから超難しい実験をこなしたことになっている小保方さんが、ほんとに手先が器用かというと・・・クエスチョンです。子供のころ器用だったというエピソードは出ていません。

 そして、妄想が強い。これはASDでもADHDでもこういう特性をもった方は多いかな。小保方さんも実験をしながら色々な不思議な妄想をしています。

 メンタル面が弱くてすぐ「折れて」しまう、これも発達障害の人にはありがちです。もともとミスが多く、子どもの頃から叱られる場面が多いので自尊感情が低い。そして叱られると昔からのトラウマがわーっと出てきてすぐ折れてしまう。発達障害の人に鬱エピソードは多いです。また、双極性障害(躁鬱病)や統合失調症など、さまざまなメンタル疾患に発達障害が深く関わっていることが近年わかってきています。自分を叱った相手に対する恨みの感情もこのタイプの人は強いです。

 小保方さんは「自己愛」だ、というふうにも言われます。これも、自己愛性人格障害ととれなくもないし、基礎疾患としてのASD―ADHD(要は発達障害)をみたほうがいいかもしれません。もともと発達障害と人格障害の線引きはすごく曖昧なんです。感情の起伏が激しく他人に対する毀誉褒貶も激しい境界性人格障害も発達障害の一種なのかもしれない。また自己愛も発達障害の一種なのかもしれない。発達障害の人は「メタ認知能力」が弱いので、「できてない自分」を直視することができないんです。かつ、人の言葉の裏を読めないという特性もあるので、「あなたはすばらしいですね」と言われると、たとえ社交辞令でも本気で信じ込んでしまうところがあります。小保方さん、褒められることもだいすきでしたね。そして小保方さんのように妄想がきつく、一方で言語能力のものすごく高い人であると、できもしないものを本気で「できる」と信じてプレゼンをすることができるんですネ。

 こういうのは、本人さんのもっている能力の組み合わせで外に現象として出てきてしまうので、「けしからん!」と反応したり「心の闇」といったホラーっぽい理解の仕方をするのは正しくないのだと思います。

 そのほかうそつき、ほらふき、詐病だとかいうことでミュンヒハウゼン症候群という病名を挙げた精神科医の方もいらっしゃいましたけど、ああいう精神疾患の病名って、20世紀の半ばぐらいまでに作られたもので、まだ発達障害の知見が出てなかったころです。今のものさしだと発達障害と理解したほうが早いよ、そのほうが対処法もわかるよ、などと、正田はおもいます。

 では、小保方さんがこういうASD−ADHDの資質をもった人だとして、なぜ子どもの頃気づかれなかったんでしょうか?今まで矯正されなかったんでしょうか?
 そして、こういう人がもし職場にいたらどういう指導をしてあげるのがいいんでしょうか?理研では何故できなかったんでしょうか?

 そのあたりのお話は次回…。
 

これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
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●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
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あの日



 引き続き、かの有名なSTAP細胞論文騒動の主役、小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)を読んでいます。

 きのうこのシリーズ第一弾の記事をUPしフェイスブックにも転送したところ、信頼できるマネジャーのお友達からさっそく、感謝の言葉をいただきました。

「読んでいないのでコメントできません。ただ、この類いの本を出すのは、あまり品の良いことではありませんね。正田さんのおかげで、読んだような気持ちになりました。」

 ああそうなんだ、と正田は安堵いたしました。わたしが信頼申し上げるマネジャーの知性のもちぬしは、この本をはなから買わず、したがって“汚染”されてない方が多いんだ。

・・・でもその方々の部下は読んでるかもしれないんですよね・・・

 たぶんこの本の主流読者は学生、主婦、高齢者その他ワイドショー視聴者の方々なのだと思いますが、その他に会社にお勤めしている人の中の末端の働き手、いわば「部下側」の方もいらっしゃると思います。

 なのでこのブログでは、
・この本を「読まない」主にマネジャー層の方々
と、
・この本を「読んだ」主に部下側の方々
を、読者層に想定しながら、すすめたいと思います。マネジャーの方々にはウンチク材料として、また読んでうっかりこの本を「良い」と思われた方も「大人はこういう読み方をしたほうがいいんだ」という学びの場として。


 前回は、この本の冒頭にある印象的なエピソード「病気のお友達の話」を題材に、「そこで何もしなかっただろー小保方チャン!!」とつっこんでみました。
 自分は何もしなかった(と思われる)のに病気のお友達をネタに美しいエピソードを1つ作り上げ、それをひっさげて早稲田のAO入試、東京女子医科大学、ハーバード大、と門戸を叩き扉を開けていく才能。さすがです。

 これに続き今回は、ツカミネタ第二弾。すっごい難しい実験をやったと書いてあるけれど「それ自分でやってないだろー小保方チャン!!それか、その実験ほんとにあったのか小保方チャン!!」とつっこみを入れるお話です。そして今度のエピソードも、著者・小保方さんがその後ハーバード大・バカンティ研に留学するのに役立ったと思われる、いわば「立身出世の立役者」的なエピソードです。「実験の天才・小保方晴子さん伝説」をつくりあげたエピソードです。

 なのですが今回は前回よりはるかにページ数も多く専門用語も多いので、お忙しい読者の皆様の利便性のために、この記事では、構成をこのようにしようと思います:

1.結論(短く) 2.理由(かいつまんで) 3.一般的な実務上の提言  4.資料としてこの本『あの日』からの引用。

 それでは、肝心の結論…。

1. 【結論】小保方さんは、『あの日』pp.19-25に書かれている「ラットの口腔粘膜自家移植実験」の少なくとも手術部分を実際にはやっていなかった、すなわちだれか心優しい人に代わりにやってもらった可能性が濃厚。あるいは、この実験自体が存在せず、別の実験のデータを使いまわした可能性もある。


2.【理由】
‐保方さんは、早稲田の応用化学から東京女子医大の修士に進学、そこで初めて動物実験や細胞培養を行ったのでした。手術―細胞培養―手術―組織観察というこの実験の手順全体からみて、膨大な量のOJTや個人トレーニングが必要になるでしょう。
⊂保方さんは、この研究を2007年3月14日の第6回日本再生医療学会総会で発表し、輝かしい研究者人生のデビューを飾ります。しかし「数十匹のラットを用いた自家移植の実験を連日8カ月以上にわたって行った。」(p.24)というからには、遅くても2006年7月初めにはこの実験を始めていたことになります。,任いΔ箸海蹐OJTや個人トレーニングの期間がどうみても足りない。この実験をするのは素人がリストを弾くようなもの、あるいは素人が甲子園に行くようなもの。
この本の中に細胞培養のやり方はテクニカルスタッフから習った(p.15)とあるのですが、手術の仕方を習ったり独学でトレーニングしたという記述はありません。本当は実験全体の中では手術の部分がはるかに難しく(とくに縫合)、この実験がチャレンジングなものであるポイントはここなのです。それにチャレンジしたということを言う以上は、そのトレーニングについての説明があったほうが自然ですね。
ぜ存核榿屬竜述をみると、やはり細胞シート上の培養された細胞の時時刻刻の変化は克明に文学的な表現で記されています。いっぽうで難しい手術場面はごく技術的な説明に終始しており、論文や学会発表の原稿をそのままコピペしたかのようです。実際にやったという臨場感が感じられません。(唯一臨場感があるのは、手術後のラットが手の中でピクピクして目覚めるというくだり(p.21)です)このあたりこの記事の後半で『あの日』から文章を引用してご紹介したいと思います。

 以上 銑いら、この実験のとくに手術の部分は小保方さん以外の心優しい人がやってくれた可能性が濃厚です。あるいは、もし手術がうまくいかなければラットが死んでしまい、自家移植が成り立たなくなるので、実験自体が存在せず、細胞培養のデータなどは別の実験から使いまわした可能性もあります。

 また蛇足ですが、この本『あの日』では、小保方さんの初めての学会発表は2007年4月のシカゴでのバイオマテリアル学会年次大会だったとなっていますが(p.25)、上記のようにそれはウソで、本当は1か月早い2007年3月14日の第6回日本再生医療学会総会(横浜)が最初の発表のようです。(現在確認中⇒確認がとれました。日本再生医療学会事務局より、上記の日付・学会においてポスター・セッションの発表者になっているとご連絡をいただきました)

 なんでそんなウソつくカナー。小保方さん、見栄っ張りさんなのカナー。研究発表デビューの場は日本よりシカゴだったことにしたかった?あるいは、のちに2014年8月、日本再生医療学会は声明を発表して小保方さんを見放してしまったので、この学会の存在自体を頭から消したかった可能性もあります。というわけで実験そのものの疑義はまだ「疑いレベル」ですが、この記念すべき学会発表デビューの日時場所は明らかにウソが入ってます。

 ふーふー、ここまででもうワード原稿3ページ目に入ってしまいました・・・。
 で、お忙しい読者の皆様のためにお待たせしました、一般的な実務上の提言です。


3.【提言:実績は2度訊け】

 あくまで一般論で、ここで小保方さんがそうだ、と決めつけるわけにはまいりませんが、「経歴でウソつく人」って、やっぱりいらっしゃるんです。自分がやったのじゃないことを自分がやったように言う。あるいは根本的にやってないことをやったかのように言う。

 そこでマネジャー側、あるいは採用側としては、どうしたらいいでしょう。

 わたしの受講生さんで脇谷泰之さんという、上海工場を大成功させた総経理の方がいらっしゃいます。今どうしてはるカナー。この人の話でおもしろかったのが、
「面接は時間を置いて2回やれ。同じ業績を2度訊け」
というお話。

 こちらの記事に載っています
「『責めない現場』は可能か?」後半部分
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51866966.html 
 中国でも人材採用難です。脇谷さんは募集をかけて色んな人を面接するうち、
「ウソをつかない人間を採用する」
という方針になりました。
 そして、じゃあ、どうやってウソをつく人を見分けることができるでしょう。
 それが、「時間を置いて2回面接し、同じ質問をする」という方法です。
 脇谷さん自身の言葉をご紹介しましょう。

「2回面接したらわかります。日をあけて。今の営業技術部の部長してるのも2回しました。今、承認を教えてる第二世代目のメンバーも僕が2回面接しました。1回目と2回目でまったく同じことをききます。過去の成績。どんなことをしてきたか。あなたが今自信をもっていえる成果は何ですか。ということを2回、同じことをききました。20人ぐらい面接してると1回目と2回目はほとんど違います。1回目に言ったことが2回目になるとすっごい膨らんで言うときもあります。
 …そこで色々突っ込んでいくと、じゃあどういうことしたの、こうしたのああしたの、こんなこと起こらなかった、あんなこと起こらなかった?と、通訳を交えてしゃべっていくと、大体『こいつはこのレベルまでしかしてない』とか『誰かにくっついて一緒にやったことやなあ』とわかるんで、そういう人は全部排除します。」

 いかがでしょ。
 これが現場の知恵です。こういう、仕事の現場の人の言葉ってなかなか表に出ないですよネー。大学教授なんてそれに比べると、全っ然世間を知らない、実務を知らない。

 小保方さんの美しい「病気のお友達エピソード」や、「私はこんなすごい実験をしましたエピソード」も、どちらも「そこであなたは何をしましたか?」と「行動の質問」でつっこんだほうがいい。それも時間を置いて2回、同じところをつっこんだほうがいい。そういうお話です。



 ここまで、駆け足で・結論・理由・提言 という、この記事の骨子の部分をお話してきました。

 この後は、ちょっとお時間の余裕のある読者の方向けに、この本のストーリーを丁寧に追いながら、また本文の抜き書きもしながら、どうしてこういう理由、こういう結論になったのか?というお話をいたします。本を読まないでウンチクに肉づけをしたい方は、どうぞこちらもお読みになってください。


*******************************************

 さて、この本の筋書きを追いますと、われらがヒロイン小保方晴子さんは成長し、高校に進学し、大学は早稲田大学理工学部応用化学科にAO入試で受かり、大学院は再生医療を志して東京女子医大先端生命医科学研究所へ。
 この修士課程に入ったころから、がぜん専門用語が多くなります。ここで文系の多くの読者の方は挫折感を味わうようです。

 なるべく、私自身も文系ですので(でも過去には科学記者や医薬翻訳者だったこともあるのだが。恥。ちょっと詳しい話になるとお手上げです)そうした“挫折組”の方々もあっなるほどあの話はそういうことだったのか、と思っていただけるように解説したいと思います。

 大学を卒業した小保方晴子さんは晴れて、女子医大先端生命研の修士課程に外部研究生(外研生)として入り、大和雅之教授(現先端生命研所長)の率いる上皮細胞シートの研究チームに配属されます。

 上皮細胞シート。これ、どこのメーカーの製品かご存知ですか。
 はい、あの「株式会社セルシード」社のなんですね。
えっ、どこかできいたことあるって?そうでしょう、小保方晴子さん主著者のSTAP論文ネイチャー誌掲載!を発表したときに株価がガーンと上がった、あの会社です。
 こんな頃から小保方さん、あの会社とご縁があった。看板娘だったんですね。
 で、ここからはこの「細胞シート」が大活躍してくれます。

 「大和教授から最初に与えられた研究テーマは口腔粘膜上皮細胞に関する研究だった」(p.17)
 口の内頬からとった細胞を、上皮細胞シートとして目の角膜に移植すると角膜として機能を果たす。現在ではこれは角膜治療法として確立されているそうです。

 では角膜でない他の場所に移植するとその場所に応じてどう変化するか?小保方さんが挑戦するのは、そういう未知の課題です。
 これを、大型のネズミであるラット、それも若齢のラットの口腔粘膜で実験してみることにしました。

 ほらほら〜、既に漢字が多くて疲れてきていませんか?

 普通、移植手術って同じラットの個体同士で移植する「自家移植」なら、拒絶反応が起きにくいわけです。
 だから理想としては自家移植したい。でも若齢のラット(離乳―性成熟前、8−9週齢まで)を使うと若いから細胞の分化がいいはずなんだけど、若齢のラットだと口が最大でも1センチほどしか開かない。すると、生かしたまま組織をほほの内側から採取することは難しいだろう。要は採取後、止血して縫合するのがうまくいかなくて出血多量で死なせてしまうだろうということですかネ。死なせてしまうとそのラットに自家移植ができません。

 なので大和先生は無理だろうという意味のことを言われます。
「そのために、先生からは、この(他家移植をしても拒絶反応が起きにくい)ルイスラットを用いた『他家移植』による実験系を提案されていた。」(p.20)

 しかし、われらが小保方晴子さんは納得しません。難しい若齢ラットでの自家移植をすることにこだわります。
「しかし、この提案を受けても、私はどうしても、口腔粘膜を用いるからこそ、組織を採取する患者さんへの負担が少なく、自分の細胞を用いることができるので拒絶反応が起こらないという、この研究の原点にある角膜治療研究の根本の価値となる原理を崩したくなかった。自家移植にこだわりたい。無知であるがゆえに、沸き起こるチャレンジ精神が背中を押した。
 そこで、ラットに麻酔をかけ、生きたまま口腔粘膜を採取し、培養した口腔粘膜を同じラットの背中に移植する『自家移植』の実験系の立案を試みた」(同)
 やれやれ、小保方さんたら、とっても向こうっ気の強い方ですね。

 この文章に続いて次のセンテンスではすぐ、ラットの手術が始まります。
「ラットに麻酔をかけ、顎が外れないように優しく、しかしできるだけ大きく口を開ける。舌やその他の部分に傷をつけないように小さなピンセットでラットの口元を支えながら、先端に直径4ミリの円形の鋭利な金属が付いた細長い筒状の道具をラットの口腔内に挿入し、ラットのほほの内側に金属の先端を優しく押し付けて直径4ミリの円形の切り込みを作り、できるだけ傷が浅く済むように、厚さ3ミリほどで小さなはさみで剥離し、必要最小限の口腔粘膜組織を採取する。血の塊でのどが詰まらないように綿棒で圧迫して止血を施し、術後から負担なく食事ができるように口腔内の傷口を丁寧に縫合した。」(pp.20-21)
 「優しく」という言葉がこの中で2回、「丁寧に」という言葉が1回、使われています。小保方さんって、とっても優しい丁寧な人なんですねっっ。。
 (というかむしろ、「こんな難しい手術を練習もせず、優しく丁寧にやればできるって思ってんじゃねー!!」ってつっこむのが正しいのかもしれない)

 この後には、手術後の麻酔の覚めてないラットを手のひらで包み込んで温め、「どうか生きてください」と祈りながら、麻酔から覚めるのを待った、という印象的な光景があります。まあなんて優しいんでしょう。実験動物にこんな愛をもって接するなんて。

 おい。わたしはここでツッコミをいれます。
 先生も無理だからほかのやり方で、と言ってる実験系を主張してやりはじめた割には、えらいすんなり手術しちゃってるじゃないかい。
 上の文章をよ〜〜く見ましょう。
「私はどうしても、口腔粘膜を用いるからこそ、…原理を崩したくなかった。自家移植にこだわりたい。」
の文のあと、いきなり
「無知であるがゆえに、沸き起こるチャレンジ精神が背中を押した」
って言ってますが。
 ここは、「沸き起こるチャレンジ精神」なんて精神論を言ってる場合じゃないのです。
「具体的にどうやって、難しい手術を成功させてラットを死なせず自家移植まで持っていくか」
というテクニカルな説明を、先生を納得させるような形でするところです。もちろん読者のわたしたちにも。
 で次のパラグラフではいきなり手術成功しちゃってる。やれやれ、神の手小保方さん。

 この手術、「ラットの口の中の粘膜から組織をとる」の部分の最大のカギは、「縫合」にあります。1cmしか開かないラットの口の中をいかに縫合するか。それも後の食餌で不都合のないようにきれいな縫合で。
 今は「縫合トレーニングセット」という、手術初心者のための有難いキットもある由ですが。それでも、相当難易度の高い手技だと思います。
 実はこれ、わたしが初めて言ったんじゃなく、ある生物系というAmazonレビュアーさんから、
「小保方さんこの実験自分でやってないでしょう!本当にやったのならこの部分もっと詳しく説明してみて」
という疑義が上がっていました。
 わたしのような素人からみると、上記の手術の描写も十分詳しくみえるのだが、経験者には全然そうではないみたいです。相当の難手術のようです、これ。特にやはり縫合の部分は。
 縫合を手早く正確にやらないと、この手術はラットを出血多量で死なせてしまい、自家移植をすることはできなくなります。
 しかし。早稲田の応用化学から東京女子医大の修士に来て1年目の小保方さん。テクニカルスタッフから細胞の培養の仕方を習ったとはありますが(p.15)、ラットの手術の仕方を習ったとはどこにも書いてありません。
 じゃあ誰がやったの?

 ここは、まったく想像ですが、この研究室の先輩とかで「実験マイスター」「手術マイスター」というような方がいらして、その部分はやってくださったんじゃないですかねえ。
 一応あとでラットの背中の皮膚下に細胞シートを移植してますから、自家移植はしてたんだと思います。なので同じラットの頬の内側の組織をだれかが採取したんだと思います。
でも早稲田からきたばかりの小保方さんにはどう見ても無理ですね。そういう離れ業をやったのなら、それについて猛特訓したという文章が、ここにあってしかるべきだと思います。
 案外、「はるちゃん、これ持ってて」と手術後のラットを渡され手の中で温めていた、そこだけは自分でやったかもしれません。

 この実験は、要は4つの段階から成ります。
(1) ラットの頬の内側の組織を採取する(手術)
(2) 採取した組織を細胞シート上で培養する
(3) 培養した細胞シートを同じラットの背中の皮膚下に移植する(手術)
(4) 移植後の組織の変化を観察する

 で(1)と(3)の手術シーンは、先ほどもあったように、一応の手順を書いてはありますが、論文に記述した通りなのか、妙に機械的でそそくさとした文章です。ほんとはすごく難易度の高い、実験者にとってはドラマチックなはずの場面がね。
 ところが、(2)の細胞培養のパートは豪華絢爛たる文章で、視覚優位・絵画的あるいは動画的な小保方さんの文体の面目躍如です。
 どんなかというと―。

「若齢のラットの口腔粘膜上皮細胞の増殖力は強く、1週間ほどで、たった直径4ミリの組織から採取した細胞を直径35ミリの細胞皿を埋め尽くすまでに増殖させることができた。フィーダー細胞上に播かれた口腔粘膜上皮細胞は最初コロニーと呼ばれる円形の細胞集団をつくり出す。培地の海の中に小さな島々が点在しているように見えるコロニーの周りには、フィーダー細胞が、海のさざ波のように散在して観察される。日が経つにつれて、この島状のコロニーはだんだんと大きくなり、島の間のさざ波はだんだんと数が減っていく。こうしてコロニーが大きくなっていくと、いつの間にか、離れ小島だったコロニー同士がくっつき、一枚の細胞シートとなる。隙間なくコロニーが接着したら、いよいよ細胞シートの回収時期だ。うまくいくと1週間ほどで温度応答性培養皿上に、ヨーロッパの道の石畳のような、敷石状に敷き詰められた美しい口腔粘膜上皮細胞シートが観察される。」(p.22)
「実験は純粋に楽しかった。毎日、温度応答性培養皿上で巻き起こる陣取り合戦のような世界。増殖していく細胞が描き出すモザイク画のような芸術。細胞が変化していく様子を観察するたび、生と死との生命の神秘を感じ、さまざまなことを考えた。」(p.25)

 いかがでしょうか。「口腔粘膜上皮細胞シート」「フィーダー細胞」なんていう専門用語のところを我慢すれば、「ヨーロッパの道の石畳のような」細胞シートなんて、詩的な表現でしょ?
 しかし細胞シートというのが某社の商品であることを考えると、この文章はなんかそれのプロモーションビデオのナレーションみたいにきこえなくもないのだが。小保方さあんセルシード社から広告料とってます?
 

 でこの研究がなんと、2007年4月シカゴで開催されたバイオマテリアル学会の年次大会で口頭発表の栄誉に浴しました。と本書にはあります。

 ふーんふーん。
 実は、小保方さんはこのほかに・2007年3月14日第六回日本再生医療学会総会と2008年3月14日第七回日本再生医療学会総会で、2回にわたって同じ演題で発表しています。(日本再生医療学会事務局に確認ずみ)なので、この実験に関する延々7ページにわたる記述は、この修士時代の2回に渡る日本語での発表原稿にもとづいているのだろうと推測されます。まあ、コピペなのかもしれません。
 大和教授が特許を持っている、当時最新式の細胞培養皿を使った細胞シートの研究を担い、大舞台で発表を繰り返していた、看板娘の小保方さんでした。
 同期や先輩の方々、嫉妬しなかったのかなあ。まあどうみても可愛がられっこですよね。しかし、提案者は小保方さんだったかもしれないけれど、内容的にはどうみても自分ではない。こういう抜擢の仕方ってどうよ、と大人なので勘ぐってしまいますね。

 あと、バイオマテリアル学会でデビューした、というのは、やっぱりウソ。本当は上記のように、1か月早い日本での日本再生医療学会総会で発表したんです。これでも相当名誉なことだったと思うんですけど、小保方さんにとっては今いちだった。シカゴでデビューしたことにしたかったんですね。

(注:好意的に解釈すれば、小保方さんのつもりでは「オーラル(口頭発表)のデビューがシカゴだった」ということなのかもしれません。日本再生医療学会総会では、ポスターセッションでの発表でした。ただ、ふつうはそうと断りますね、つまり「口頭での初めての発表は」という言い方をしますね)

 そして実験のお話がこの本で延々7ページも続いたのは、やはり、自分を凄腕の研究者、実験者だと印象づけたい、からだろうと思います。これ以降のページでは、こんなに1つの実験を長々と書いたものはありません。STAP細胞と直接関係ないのにね。

 このエピソードも、小保方さんがその後ハーバード大学のバカンティ研究室に自分を売り込むことに役立ったことでしょう。バカンティ教授は「そんな優秀な学生なのか!」と目を輝かせたことでしょう。
 しかし、こんなすごい実験ができるのに、バカンティ研に移ってからの小保方さんは、この系統の実験を長くは続けませんでした。最初ヒツジの鼻の粘膜を自家移植する実験をやっていましたが、すぐSTAP細胞の、あまり高度な実験スキルを必要としない研究テーマに替わっています。神通力は、落ちてしまったのでした。


****************************************

 ふうふう。まとめです。

 前回の記事とあわせると、小保方さんを「すごくお友達思いの、優しい人」と印象づけた「病気のお友達エピソード」、しかしそこで本人さんは実は何もお友達を助けたりしてなかった。
 それに続き今回の記事では、小保方さんを「すごい実験の天才」と印象づけた、「すごい難しい実験のエピソード」は、実はほかの人が難しい部分をやってくれたか、あるいはそもそも実験自体が存在しなかった疑いすらある。
 そういうお話でした。
 (ついでに記念すべき初めての学会発表の日時場所の間違いもみつかりました。より華々しい方向に「盛って」いました)

 どうでしょう。『あの日』という本の印象、ここまででどうなりましたか?

 えーとここまででわたしもだいぶ疲れてしまったので、次回は、わたしの得意分野である、小保方晴子さんという人のプロファイリングのお話をしたいと思います。

 これまでの記事:

●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日

 『あの日』(小保方晴子、講談社、2016年1月)を読みました。かの有名な、STAP細胞論文騒動の主役の手記。
 読まないって言ってたのにね。裏切者〜!って石投げられそうです。

 本日2月23日現在、Amazon総合ランキング16位、「科学史・科学者」「日本のエッセー・随筆/近現代作品」「科学・テクノロジー」の各カテゴリで1位。本屋さんにはずらり平積みで並んでいます。

 沢山の識者、専門家、コメンテーターの方々がこの本に言及しています。またAmazonのレビュー数は早くも500を突破しました。
 数字を論じるのが好きなかたのために内訳を言うと、560レビュー中★5つ321、同4つ52、3つ47、2つ12、そして★1つが128です。

 賛否両論あるなかで、まあせっかくの流行り物ですので、このブログでは、良識的な社会人、とりわけマネジャー層の読者の皆様にターゲットを絞って、「この本の正しい読み方」を解説していきたいと思います。


 この本を賞賛する人々は多くは前半を賞賛します。
 前半部分は、著者・小保方晴子氏の子供時代に始まり、高校、大学(早稲田)、修士課程(東京女子医大)そして米ハーバード大学のバカンティ研、ととんとん拍子に階段を上っていきます。
色彩感覚豊かで、画面に動きがあり、映画をみせられているような気分になります。著者の高揚感がダイレクトに伝わります。

 人材育成屋のわたしは、「この著者はどんな価値観・動機づけをもって生きている人か?」ということに関心が向くほうです。
 この本の前半部分、ハーバードに行って滞在中の前半までのくだり。ここの文章はなぜこんなにも輝きを放つのでしょうか。
 わたしはそれは、著者の価値観がもっとも顕著に出ているからなのだと思います。

 著者の価値観とは、何か。
 読み取れるのは:上昇、希望、鮮やかな色彩(とりわけ「金色」が度々出てきます)、世界の最高峰への移動、憧れ、挑戦、華々しい、美しいものへの賛美、頭の良さへの賛美。
 上位者からのまなざし。「褒められる」こともたびたび出てきます。
 「優しい」という言葉も度々出てきます。
 「細胞のふるまいの自由さ」(p.50)という印象的な言葉もあるので、「自由」ということ、また細胞の時時刻刻の変化を見守ることも価値観なのかもしれません。
(ほかにもありますか?是非、読者の皆様、ブログコメントでもFBメッセージでも、「私はこういうのも価値観だと思う」というのがありましたら、ご教示ください)

 これらが同時に連動して現れるのがこの本の前半部分です。こうした価値観を多少なりとももつであろう大部分の読者はその世界に引き込まれるでしょう。前半だけでも楽しい気持ちにさせてくれるので、この本は読む価値があると言えるかもしれません。
(この著者に印税を渡したくないという方は古本か立ち読みで十分です)

 その前半部分には、印象的な2つのエピソードが載っています。希望に満ちたこの本の前半を象徴するような、とても魅力的で美しいエピソードです。
 そのひとつは、子ども時代の病気のお友達の話。「第一章 研究者への夢」の冒頭部分に出てきます。
 この記事では、少し長くなりますが、あとで読み解くための材料として、このエピソードを丸々引用させていただきましょう:

****************************************

 私を再生医療研究の道に導いたのは、幼い頃の大切な友人との出会いだった。彼女が描いた絵や、作った工作作品は、たくさんの生徒の作品が並ぶ中にあっても、格段に目を引き、一目で彼女の作品だとわかるほど、抜群の才能を感じさせた。彼女の描いた明るい色使いのひまわり畑の絵や、細かな細工が施されたかわいらしい動物形の木工作品は、彼女の笑顔とともに、今でもはっきりと思い出すことができる。
 彼女に変化が現れだしたのは、小学校4年生の頃だったと思う。病名は小児リウマチだった。それから、彼女とは中学校3年生までずっと同じクラスで、担任の先生からも、「困ったことがあったら助けてあげてほしい」と言われていたが、彼女は病気の辛さを一切表に出さず、私はこれまでと同じように一緒に時を過ごしていた。
 中学校を卒業する頃には、誰よりも繊細で器用だった彼女の手が、だんだんと曲がっていく様子にも気がつきはじめた。痛みはあるのだろうか、どんな気持ちでいるのだろうか、と思うと、どう接したらいいのかもわからなかった。そんな私の心情を察してくれたのも、彼女だった。ある冬の日の放課後、「一緒に帰ろう」と私の座る席の隣に笑顔で立っていた。二人でゆっくり歩く、いつもの帰り道、「はるちゃんは頭がいいから、将来なんにでもなれるよ」と励ますように言った。助けてもらっていたのは、いつも心の弱い私のほうだった。何もしてあげることができなかったという無力感と、友人に訪れた運命の理不尽さに対する怒りや悲しみは、「この理不尽さに立ち向かう力がほしい、自分にできることを探したい」との思いに変わり、この思いはいつしか私の人生の道しるべとなっていった。(pp.6-7)

***************************************

 しばらく余韻にひたってみてください。いかがでしょうか。
 この本に魅入られた方は、ほとんどが「このエピソードに感動した」と言われます。そして、「こんなにお友達思いの小保方さんが悪いことをするわけがない」と言われます。
 このブログをお読みになっているあなたのご感想は、いかがでしょう。

 もし「感動した」という方ですと、非常にお気の毒なことをしてしまうかもしれないのですが、ここではこのエピソードを現役の企業のマネジャー、あるいは「かしこい採用担当者」の視点で、少々辛口に読み解いてみたいと思います。

 ここでは、印象的な表現が出てきます。
 幼い頃の友達。「彼女の描いた明るい色使いのひまわり畑の絵や、細かな細工が施されたかわいらしい動物形の木工作品は、彼女の笑顔とともに、今でもはっきりと思い出すことができる。」
 すごいですねー。この著者は基本、「視覚優位」なのだと思います。子供の頃の自分の作品ではなく、お友達の作品のことをこんなに細かにおぼえている。お恥ずかしいことにわたしはおぼえてません。全然。
 そして、「明るい色のひまわり畑の絵」この表現。ここでは、「何色」と色を特定していません。でもひまわりだから、誰もが「黄色」を思い浮かべるだろう。むしろ、「黄色」と言葉で特定しないぶん、読者の脳裏にはひときわ鮮やかな黄色が思い浮かべられるのではないか。すばらしい、文字表現の粋です。
次の「細かな細工が施されたかわいらしい動物形の木工作品」これも同じですね。動物なにかなー、クマさんかなーウサギさんかなーネズミさんかなー。明言しないことによって、読者に想像の余地を与えてくれます。むしろ自分の好きな動物のイメージをかぶせながら、いきいきと思い描くことができます。

 いや、「作文教室」の指導のノリになってしまいました。

 本題に戻ります。
 このあと、お友達は小児リウマチに侵されます。中学を卒業するころにはどんどん手が曲がっていったとある。そして先生からは、「困ったことがあったら助けてほしい」と言われていました。
 で、われらが小保方晴子さんは、どうしたでしょうか。じゃーん。
 どうも、全然何もしてあげなかったっぽいのです。

 小学校から中学までずっと同じクラス。これもある意味すごいことです。いくら少子化とはいえ、ベッドタウンの千葉県松戸市のことです。1学年1クラスということはない。だから、9年も一緒にいたら「因縁のお友達」というところだと思いますが、小保方さんは、
「私はこれまでと同じように一緒に時を過ごしていた」
「痛みはあるのだろうか、どんな気持ちでいるのだろうか、と思うと、どう接したらいいのかもわからなかった。」
というのみで、何かしてあげた形跡はありません。

 唯一、このお友達からある日「一緒に帰ろう」と言ってくれて、一緒に帰った。
「二人でゆっくり歩く、いつもの帰り道」
 これは、この二人がいつも一緒に帰っていた帰り道なんだろうか。いや、そうとは限りません。「二人でいつも一緒にゆっくり歩く帰り道」とは言ってませんもの。
 どうも、この二人はそれまでは別行動していて、この日だけお友達のほうから誘ってくれて、一緒に帰った。そういうふうにとれますね。
 でこのあと、
「何もしてあげれなかったという無力感」
とも言ってますし、たぶん本当に何もしてあげなかったんでしょう。

 なんでこういう意地のわるい読み方をするのか?
 なぜかというと、おそらくこのエピソードは、小保方さんのその後の各ステップごとに関門をくぐりぬけてきた、プレゼンの「定番エピソード」だからなのです。早大のAO入試、東京女子医科大学の修士、ひょっとしたらハーバード大バカンティ研の門戸を叩いたときも理研の門戸を叩いたときも?ずっと使ってきた、そして教授たちのハートをつかんだ「きめ」のエピソードだからです。
 このエピソード全体が言っているのは、子どもの頃仲の良かったお友達が、美しい繊細なものを作れる器用な手をもっていたのに小児リウマチに侵されその能力を奪われてしまった。自分は何もできなかった無力感。それがあるから医療分野の研究をして人類に貢献したいんだ、ということです。
 そのお友達を襲った運命の残酷さが、きく者の心を捉えます。とりわけお友達の小さい頃の作品をみる楽しさと「手が曲がっていく」ことの対比が。

 しかし。
 しつこいようですが、小保方さんはそこで何もしてないのです。
 これは、企業の採用の時に気をつけたい重要ポイント。
「あなたはそこで何をしましたか?」
と、「行動」に関わる質問をしましょう。
(詳しくは伊賀泰代『採用基準』など参照。もちろん拙著『行動承認』も)

 なぜ、「行動」を尋ねてほしいかというと、もし医療分野に従事するために重要な資質、
「病気や怪我、障害に興味がある」
「人の困りごとをみると助けずにはいられない」
(ストレングスファインダーでいうと「回復志向」ですネ)
があれば、そこで必ず何かするからです。小児リウマチというのがどんな性質をもった病気か調べたり、お友達に親身になってあれこれ世話をやいて、病気になるとはどんな気持ちなのか、どんな助けが必要か直接尋ねる、というようなことをします。
 そういう価値観のある人であれば、ほっといてもそういう行動をとり、それが喜びなのです。
 あるいは、「責任感」の高い人であると、先生から「助けてあげてね」と言われていれば、必ず人一倍お友達のお世話を焼くはずです。

・・・ちなみに、わたしは回復志向はないですが責任感だけはあるほうなので、子供時代いいことも悪いこともやりましたけれど、ある異様に無口なお友達にやたらちょっかいをかけ、ギャグツッコミをして笑わせて学年の最後のほうにはかなりしゃべるようになってくれていた、という思い出はあります。それも、「面倒をみてあげてね」と先生に言われていたからです。
 医療などはとくにしんどいことの多い仕事なので、そういう価値観とか強みをもった人でないと続けるのが難しいでしょう。ほっといても自然にそっちの方へ身体が動くという人であれば、少々のしんどいことも耐えてやり通すことができるでしょう。
 なので、適性があるかどうかをみるには、必ず「あなたはそこで何をしましたか」行動をきく質問をしてください。小保方さんはこの点、残念ながら落第っぽいです。

 ではなんで、このエピソードで「私はお友達のお世話をした」ということを、ウソでいいから入れなかったか。
 想像ですがひょっとしたら、「では具体的にどういうふうにお世話をしたか?」とつっこまれると、しどろもどろになってしまうから、でしょうかねえ・・・

 小保方さんにとって有難いことに、彼女の進学先は医療の臨床のほうではなかったのです。早稲田の応用化学、東京女子医大の組織工学。ほんとの医療ではないので、教授たちもそこまでつっこまなかったようです。単に、お友達を襲った残酷な運命、そして傍観者だった小保方さんが中学時代に一度だけこのお友達と一緒に帰った、それだけの物語で「すばらしい!」と感動してくれたっぽいのです。
 ・・・こういう採用をしちゃダメだ、という見本ですね・・・

 また、よく考えるとこのエピソードは、この本、『あの日』の構成全体の雛形ともいえるエピソードです。
 すなわち、希望と色彩感にみちた前半部分と、運命に巻き込まれ残酷な結末を迎える後半部分。
 こういうお話の構成をすると、読者や聴き手の心をつかめるようだ。
 彼女は人生を決める大事なプレゼンでこのエピソードで繰り返し成功を収め、学習してきたのではないでしょうか。そのノウハウを『あの日』で踏襲したのではないでしょうか。



蛇足 1.
 小保方さんのプレゼンする動画は、YoutubeにいくつもUPされているのでみることができます。
 たとえばこちら
>>https://www.youtube.com/watch?v=agyNRRITN-I
 残念ながらこの病気のお友達のエピソードを語ってくれてはいませんが、今見れば「青年の主張」のような小保方さんの語り口に、このお友達のエピソードは見事にぴたりとはまっています。

蛇足 2.
 中学時代にお友達から「一緒に帰ろう」と言われて一緒に帰った。
 どうもそれまでは一緒に帰ってなかったっぽい。さて、この日に限って何故、お友達が私の座る席の隣に笑顔で立っていたのだろうか。
 色々、大人なので裏読みをしてしまいます。
 これ言うとファンの方々におこられそうなんだな〜〜
 例えば、こちら。

「小保方氏の同級生が明かした『メルヘン妄想&虚言癖』」(東スポWEB 2014年3月19日)
>>http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/246439/
 ネイチャーのSTAP細胞論文の不正疑惑がどんどん明るみに出、共著者の若山照彦教授が論文撤回を呼び掛けたころに出た記事です。
 (報道けしからん!マスコミけしからん!という声もあるのですけどね、こういう理研とかの関係者以外の、現在の利害関係のない人から出た証言には一定の信憑性があります)

 上の記事は高校時代のお友達の談として、「小保方さんは虚言癖があり不思議ちゃんとして有名だった」「妄想、虚言の癖があるとみんなわかったから、仲の良かった女子の友達も離れていった」という意味のことを述べています。

 これはあくまで高校時代のお話ですが、ひょっとしたら中学までも同じようなことがあったかもしれない。何かのウソがばれて信用を失い、ほかのお友達がみんな離れていった、というような場面が。
 そういう場面に、病気のお友達が現れて「一緒に帰ろう」と言ってくれた、とすれば、このシーンは全然別の意味を持ってくるのです。
「はるちゃんは頭がいいから、将来なんにでもなれるよ」
 このお友達の言葉もそう考えると意味深なのです。


・・・


 えーと以前から毀誉褒貶の激しいかたなので、このブログでもこうした辛口レビューをすると、「小保方さんへのバッシングけしからん!」とファンの方からお叱りを受けるかと思います。
 でこの本自体にも強烈な「報道批判」が盛り込まれているので、あえて、当時の報道とりわけ理研・若山氏サイドから出たとみられる情報は避け、同じ理由で『捏造の科学者』も読むのを避け、(本当はおさぼりしてるだけなのかもしれませんが)
 できるだけこの本、『あの日』と、プラス小保方さん自身が発信した、記者会見での発言、文章、などを材料に、現役社会人の読者向けに「小保方さんの人格とどう付き合うべきか」を読み解いていきたいと思います。

 あるいは、「『あの日』を100倍楽しむ法」とかですね、
 とにかく、高学歴の男性を次々破滅させた今世紀最大の悪女なわけですので、こういう女性と同時代を生きていることをとことん楽しみながら、大人として身につけるべき知識知恵を身につけたいと思うのであります。
(でも羊頭狗肉に終わるかもしれないですけど。そうなったらゴメンナサイ)

 すみません、実はまだ全体の構成を考えてないので、今から順次記事をUPしてから各記事にインデックスを追加していきたいと思います。


これまでの記事は:

●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
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