正田佐与の 愛するこの世界

神戸の1位マネジャー育成の研修講師・正田佐与が、「承認と職場」、「よのなかカフェ」などの日常を通じて日本人と仕事の幸福な関係を語ります。現役リーダーたちが「このブログを読んでいればマネジメントがわかる」と絶賛。 現在、心ならずも「アドラー心理学批判」と「『「学力」の経済学』批判」でアクセス急増中。コメントは承認制です

タグ:『あの日』

あの日

 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第14弾。いよいよ最終回です。









 今回の内容は以下の通りです:

はじめに:小保方さん残された問題:奨学金・研究費返還問題、博士号訴訟?
1. 女性活躍推進―新たな段階、ピリッとしろ男性上司たち!!
2. 発達凸凹対応―「差別」を卒業し、10人に1人の「個性」を知る
3. 言葉がキレイ、お顔がキレイ、経歴詐称オンパレード
 ―もういちど「行動承認」、痛みを踏まえて振り返れ

 それではまいりたいと思います―



はじめに:小保方さん残された問題:奨学金・研究費返還問題、博士号訴訟?

 前回もお知らせしましたように、STAP細胞問題をめぐり理研OBによる窃盗容疑の告発は、被疑者不詳のまま兵庫県警が捜査書類を検察送致し、一応の捜査終結となりました。(ただし「検察送致」のあと「起訴」になることはまれではありますがあるそうです)

 しかし、小保方晴子さんの“受難”はまだまだ続きそう。

 1つの例に、「奨学金問題」があります。

 小保方さんは、学術振興会の特別研究員制度を利用して毎月20万円の奨学金と、年間60万円の研究費を3年間、受け取っていました。この「DC1」というカテゴリに博士課程1年目から採択されるのは、通常よほど優秀な学生だそうであり、ここにも「裏口」「コネ」の影がちらつきます。ともあれこのDC1で、小保方さんは3年間で総額900万円を受け取っていました。
 ところが、この学術振興会の特別研究員制度の規定では、研究不正を行ったら奨学金、研究費は返還しないといけません。

 参考URL:「遵守事項および諸手続の手引」
>>https://www.jsps.go.jp/j-pd/data/tebiki/h28_tebiki.pdf
(3月31日現在PDFへのアクセス不能)

 これに加え、小保方晴子さんは早稲田の応用化学会給付奨学金も受給しており、
参考URL:
>>http://www.waseda-oukakai.gr.jp/gakusei/shougakukin/kyuuhu-shougakusei-2007.html

 さらにCOE留学費用も受給していたとのことで、これらが時期的に重なっていれば、不正受給になる可能性があります。少なくとも上記の日本学術振興会特別研究員の「遵守事項および諸手続の手引」には抵触します。

 したがって、これらの奨学金・研究費の返還を求められる可能性は大いにあります。

 STAP細胞論文をめぐる問題で、理化学研究所(理研)が不正調査や検証にかけた経費の総額が、8360万円に上ったとのことです。主な経費の内訳は、STAP細胞の有無を調べる検証実験1560万円▽研究室に残った試料の分析1410万円▽二つの調査委員会940万円▽記者会見場費など広報経費770万円など。弁護士経費など2820万円、精神科医の来所など関係者のメンタルケアに200万円です。
  一方で、小保方晴子さんには、論文投稿料の約60万円を返還請求したのみでした。(2015年3月21日、毎日新聞など)。この60万円は同年7月小保方さんから返還されたそうです。

 それ以前には「年間6億円の研究費」といった庶民感覚からするとびっくりするような額が週刊誌を賑わせておりました(「週刊文春」2014年6月19日号)。それらについての返還は求められないそうです。



 一方で今年3月25日、STAP HOME PAGE というサイトが立ち上げられ、この中でHaruko Obokata名の人がSTAP細胞プロトコルを公表しました。また昨年11月、博士号剥奪の決定をした早稲田大学に対して訴訟を検討していることを明らかにしました。
 3月31日現在、このサイトの真偽は不明です。→代理人の三木秀夫弁護士のコメントにより、このページの作者は小保方晴子さん自身だそうです。

 というわけでこの問題はまだまだ続きそうです…。

 さて、現状をこんな風にまとめたうえで、今日の記事の本題です:



1. 女性活躍推進―新たな段階、ピリッとしろ男性上司たち!!

 前回の記事の末尾近くに、米雑誌「ニューヨーカー」に今年2月掲載されたSTAP細胞に関する記事“The Stress Test”と、それを転載した「週刊現代」の記事のご紹介をしました。

>>http://www.newyorker.com/magazine/2016/02/29/the-stem-cell-scandal
>>http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48272 (日本語版)

 しかし、上記の記事をみて、わたしが「ああ、これはやはり『フジヤマ・ゲイシャ』だな」と思った部分があります。
 それは、「日本の女性研究者」に関する部分。

「この仕事(STAP)の背後にいた『革命児』が小保方晴子であった。彼女は男性中心の日本の科学界に女性として一石を投じた。彼女は他の女性に比べて、男たちとの駆け引きの中で生きることに長けていた。」

「それに対して小保方はこう返した。『日本では女性研究者は二流です。たとえ年下の大学生でも、男性が必要としたら、女性は顕微鏡を使うのを諦めないといけません』」(日本語版より)

 これを読むと、日本では女性は二流扱い、その中で小保方晴子さんは突出した才能に恵まれ頑張っていた人、と読めてしまいそうです。
 どうもこれは、アメリカ人の先入観に合わせて小保方さんがまた「盛って」いるのではないか?と私には思えます。

 日本の理系の研究室の女性活用の構図というのは、それほど単純な性差別問題ではありません。もっと複雑な様相を呈しています。

 わたしの正直な感想を言いますと、過去にみた理系の研究機関では、むしろ女性研究者たちは奇妙に幼く(それこそ小保方さんが時には小学生のように幼くみえたように)、年齢にふさわしくない、思考力不足や特定の論点への固執を繰り返していました。男性指導者の考えから抜け出せず頭が切り替わらないという傾向も顕著でした。
 社会人として鍛えられていない。
 そういう人が残りやすいのか、そのように育てられてしまうのか。

 2014年7月1日、理研の高橋政代プロジェクトリーダー(54)が、「理研の倫理観に耐えられない」とツイートし、iPS細胞の臨床応用の中止も考えることを表明しました。(実際には9月にiPS細胞から作った網膜の細胞を、「加齢黄斑変性」の患者に移植する臨床研究の手術を行い、この患者は1年後も良好な経過だったとのこと)

 研究組織に限らず多くの企業・組織共通できく話です。ある世代までの女性は、パイオニア精神をもって男性並みに頑張る。ところがある世代から下は、見た目や態度の可愛らしさで男性上司に気に入られようとする女子が増えてくる。
 小保方晴子さんは、そのあとの方の女性の代表格です。

 ここは、このシリーズの上司編(12)(13)でみたように、バブル世代を中心とした男性上司たちの心の引き締めをお願いしたいところです。

「女の子は可愛いほうがいいなあ」
「僕の言った通りのことを上手に相槌を打ち、合いの手を入れ、素直にやってくれる部下は、可愛いなあ」

 こういう心の隙に忍び寄ってくる部下がいます。男性、女性に限らず。彼・彼女らは、上司の心の弱いところを目ざとく見つけてきます。


 自分の中にそういう「弱さ」がないだろうか。上司特有の孤独に耐えられず、甘い言葉で言い寄ってくる部下に依存するようになっていないだろうか。女性部下との間に疑似恋愛関係のようなものを作りたいという願望がないだろうか。上司は、つねに自己点検をお願いしたいものです。

 「女性活躍推進法」が4月1日から施行され、従業員301人以上の大企業は、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが新たに義務づけられます。その中には、女性管理職や女性役員の数値目標といった要素が入ってきます。
 是非、その中でも本当に優秀な、だれもが納得する女性人材の選抜を行っていただきたい。「数ありき」の女性管理職づくりなどは論外。もちろん「見た目が可愛い」などという理由も論外です。実力主義を貫く中で、浮かび上がってくる候補を見出すようにしてください。


2. 発達凸凹対応―「差別」を卒業し、10人に1人の「個性」を知る

 このシリーズでは「プロファイリング編」の(3)(4)(5)で、小保方晴子さんに発達障害の可能性があることに触れました。
 犯罪や研究不正といった問題のたびに「発達障害」の要素がクローズアップされると、当事者のかたがお気の毒です。とはいえ、ことさらにこの問題にふたをしておくわけにはいきません。何しろ何度も言いますように10人に1人の障害であり、ほとんどの人にはどこかにそれらしい形質があり、一種の「個性」と捉えてしまってもいいぐらいです。マネジメント指導の中では今や欠かせなくなっています。
 発達障害は、できれば幼少の頃にご家庭で見つけだしてほしい障害です。子供のころから始めるのと大人になってからでは、療育の困難さが全然変わってきますから。大人になってから発見されると、社会適応が難しくなります。
 しかし現実には、仕事に入ってから発見されることが非常に多いのです。

 研究職の場合ですと、エジソンがADHDだったことでもわかるように、発達障害の人は一般社会より多いと思われます。ただわたしの経験でも、「発達障害」という概念が研究機関のマネジメント職の人々に普及しているとはいえません。「研究者は少し変なぐらいの奴がいいんだ」これが常識のため、研究機関には「びっくり人間ショー」のような人々がいます。しかしその「変」の中身を丁寧に見極めようとはしていません。意外に、この「発達障害」「アスペルガー」の話題をタブー視して避ける方々によくお会いしました。

 発達障害の中にもいろいろなタイプがあり、“症状”の出方は十人十色です。部下がそう(発達障害)だと分かるまでには、マネジャーはその独特の個性に振り回され、非常に悩むものです。部下10人の中に1人発達障害の人がいれば、マネジャーの悩みの9割はその人のことだ、というぐらいに。

 一方で、いったんマネジメント研修の中で一通りのご説明をし、その人の場合はこういう特性である可能性がある、と理解してしまうと、マネジャーたちは嘘のように悩みから解放されます。また特性に合わせたマネジメント、というのもちょっとした工夫で難なくできるようになります。ですのでどの職場でも、発達障害の人に対するマネジメント指導の研修というのは入ってほしいものだと思います。

 小保方晴子さんの場合はどうか、というと、恐らく空想に入りやすくぼーっとしやすい、時間管理が下手な人なので、上司が毎週のように進捗確認をしてやり、それに合わせて「次の一手」の行動計画を作ってやること。また、ご本人がそうしたやや厳しい指導に入ることを厭わないこと、が必要になります。

 もしご本人が管理されることをイヤがり、かつ成果を出せなかったらー。残念ながら、そのときは「あなたは研究者に向いていない」と引導を渡すことになりますね。

 こうした、発達障害の人の側が管理されて仕事することを受け入れる必要性というのは、やはり子供の頃からの療育の中で、自分の特性を理解しそのうえで「生きる」とは何か、「働く(収入を得る)」とは何か、を繰り返し問い直し仕事の枠組みの中で生きることを受け入れることが必要になります。

詳しくはこちらの記事参照
「われわれは覚悟のある障碍者を雇用します」
>> http://c-c-a.blog.jp/archives/51884894.html

 残念ながら、小保方晴子さんの場合はどうか、というと、このシリーズの(4)でみたように、研究者のお母さん、優秀なお姉さんたちの家庭に育ち、また「発達障害」という概念のない時代の心理学理論のもとで育ったため、その極端な能力の凸凹を正しく見いだされることなく、身の丈以上のセルフイメージを持って育ってしまった可能性が大です。言語能力が突出して高く、実行能力がそれに伴っていなかったのですが、その実行能力の弱さが見いだされませんでした。結果的に嘘、言い訳、他責の人になってしまいました。

 そして普通の仕事に就けば何かしら行動の遅さとか確実性の低さが見いだされ矯正されたかもしれませんが、理系の研究職では、顕微鏡を覗きながらぼーっとしていても、周囲からその実行能力の低さが見いだされにくい環境です。研究職は普通の仕事より、はるかにチェックが働きにくいのですね。

 研究機関の方はぜひ、若い研究職の方がこういう人なのではないか、と一応のアンテナは立てておいていただきたいものです。それとともに発達障害の様々なタイプについて、そういう人のマネジメント法について、学習していただきたいものです。
 またどの職業においても、発達障害の方にはさまざまな個性があります。10人に1人はいらっしゃるのですから、あまり不安になったり感情的になったりすることなく、その人の個性を理解し、働きやすいように環境整備をしてやっていただきたいものです。


3. 言葉がキレイ、お顔がキレイ、経歴詐称オンパレード
 ―もういちど「行動承認」、痛みを踏まえて振り返れ

 このシリーズ連載中にもTVコメンテーター・自称コンサルタント「ショーン・K」氏の経歴詐称問題が出、しばらく雑誌を賑わしました。
 同氏のコメント力はなかなかのものでしたが、しかしそれは当意即妙に辻褄を合わせる口先の技術だった、ともいえます。そして「整形疑惑」も一緒に明らかになってしまいました。わかりやすい例ですね。
 
 ことほどかようにわたしたちは、「見た目」と「言葉」に翻弄されやすい生き物。
 
 そこで、我田引水とお叱りを受けそうですが、わたしが任意団体、NPO時代を通じて10数年にわたり確立してきたマネジメント手法、「行動承認」が有効であり、重要であることを改めて申し上げるのをお許しください。

 「行動承認」とは、マネジャーが部下の行動をみて、「あなたは、○×(行動)をしたね」「やってくれたね」と、事実そのままに認める、というものです。「すごいね」「偉いね」等の褒める言葉を使う必要はありません。事実の通り認めるのです。
 これを習慣づけて繰り返すと、部下は極めて能動的になり、指示されなかったことも自発的に考えてやってくれるようになります。また信頼関係が高まり、指示したことや教えたことも正確に受け止めてくれます。職場の行動量もコミュニケーション量も飛躍的に上がり、業績が上がります。
 行動承認の下では、過去13年間にわたり「業績1位マネジャー」が生まれています。

 過去の受講生の皆様、行動承認のやり方や意義、効果についてはもう「耳タコ」でいらっしゃると思いますが、もう一度確認していただきたいのです。

 みなさんは、「話を聴く(傾聴)」も学ばれていると思います。
 しかし、よく混同してしまうところですが、「傾聴」はそれ自体が目的なのではない。「行動承認」のためにこそある、と思ってください。
 能弁な人が世の中にはいらっしゃいます。今の時代、スマホ全盛で行動力が軒並み下がっています。子供時代から手を動かして何かをやったことがなく、弁だけが立つ人が過去に比べて増えています。言い訳のうまい人も増えています。
 言葉を聴いても、行動の伴わない言葉に惑わされないでください。本シリーズ(2)でお伝えしましたように、相手が本当にその行動をとったのか、きちっと「裏をとって」ください。そして、本当に行動をとったことに関してはしっかり「承認」してやってください。

 出発点で少々行動力の弱い人でも、それを繰り返していると、自然と「行動すれば承認してもらえるんだ」と刷り込まれ、行動力のある人に育っていきます。

 また、上司のあなたの側も、少々面倒ではあっても「裏をとる」ことを習慣づけていれば、部下が「やっています」と言葉だけで、実際はやっていなかった。などというとんでもない事態で真っ青にならずに済みます。
 過去に比べ、こうしたマネジメント法の必要性はいや増しています。転ばぬ先の杖、行動承認。

 「小保方騒動」を眺めてきた今、それを他山の石としてわたしたちが学ぶべきは、何か。最終的には「行動承認」これのさらなる徹底を、というお話になるのです。

 受講生様方、大丈夫ですね。






 14回にわたり連載させていただいた「社会人のための『小保方手記』解読講座」これにて終了とさせていただきます。(今後も各章にちょこちょこ追記させていただくかもしれません)
 当初は全体の構成も立てずに書いてきたこのシリーズでしたが、途中から「プロファイリング編」「読者編」と徐々に構成らしいものができ、中盤に「STAP細胞はあったのか」について、優れたAmazonレビュアーの皆様のお蔭をもって、独自の見解をご提示することができました。そして「上司編」には、とりわけ多くの上司世代の方々のご反響をいただくことができました。
 この間、意気阻喪するようなこともありましたが、読者の皆様の応援のメッセージに励まされてまいりました。長い間のご愛読、ありがとうございました。
 また、差し支えなければ全体のご感想を、ブログコメント、FBコメントその他の形でいただければ嬉しく思います。


これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第12弾です。

 本日は、小保方さんの上司/指導教官たちは、何をしていたのか?なぜ彼女の能力不足を見ぬけなかったのか?という話題です。
 いいかえれば小保方さんはなぜ、教育訓練とチェックをすり抜け、実力のないまま研究者として実績を積みNatureに論文が掲載されるまでになってしまったか、というお話の「上司要因バージョン」。こちらも、このシリーズを開始して以来、読者の皆様から何度もご質問いただいたことです。

 本日の骨子です

1. 時系列でみる 小保方さんの「バブル世代おじさま」たち
2.「ええかっこしい」の系譜(1)常田聡氏の“教えない教育”
3.「ええかっこしい」の系譜(2)笹井芳樹氏の"前のめり"と"イッチョカミ"の悲劇

 (後編の内容はこちらです)

4.「無関心」⇒「擁護」⇒「放棄と紆余曲折」:若山氏
5. 闇の紳士たち?:大和氏、バカンティ氏、セルシード社

 それではまいりたいと思います―


1.時系列でみる 小保方さんの「バブル世代おじさま」たち

 小保方晴子さんは、AO入試で入った早稲田大学理工学部を2006年3月に卒業。そのあといくつかの研究室をステップアップしていき、何人かの指導教官、上司の下につきます。

 問題は、小保方さんになぜ研究者としての十分な教育訓練が施されなかったか。
 また、教育しても身につけられなかった場合、つまり基準に達さなかった場合、どこかで
「あなたは研究者に向いていない」
と、引導を渡す役回りの人がいればよかったのですが、それがいなかった。いわば、「スクリーニング機能」が各段階でうまく果たされなかった。それはなぜなのか、ということです。

 それはどうも、この教授・上司たち1人1人に少しずつ責任があったようです。


 何人かの上司・教授の名前が出てくるので一度、年代順に整理して「スッキリ」しておきましょう:

2004-2006年 早稲田大学理工学部応用化学科にて海洋微生物を研究。常田聡教授に師事(注:2004年当時は助教授、06年教授に昇進)
2006-2008年 早稲田大学大学院 理工学研究科 修士課程。この期間は東京女子医大と早大とが合同で設立した医工融合研究教育拠点である先端生命医科学センター (TWIns) にて外部研修生となる。指導教官は大和雅之・東京女子医科大学教授。大和氏のもとでセルシード社の細胞シート研究を行うとともに、国内外の学会で精力的に発表を行う。
2008年 博士課程。ハーバード大学大学院教授(当時)のチャールズ・バカンティ氏のもとへ短期留学。バカンティ氏のスポアライクセル細胞のアイデアをヒントに現在のSTAP細胞のアイデアを思いつき、実験を開始。直接の指導教官は小島宏司氏。
2010年7月 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸、CDB)でチームリーダーだった若山照彦氏と初めて会う。STAP細胞の証明第2段階までをクリアした論文を雑誌にリジェクトされたため、若山氏にキメラマウス作製を依頼する。
2011年3月 早稲田大学博士号を取得(指導教官:常田聡教授[前出])。
2011年4月 理研CDB若山研究室の客員研究員となる。この当時はポスドクで無給。
2012年12月 理研CDBのユニットリーダーに応募。笹井芳樹・理研CDBグループディレクター(GD、翌年4月より複センター長。故人)に初めて会う。笹井氏の論文指導を受けるようになる。
2013年3月 理研CDBユニットリーダー。独立の研究室を持つ。
2014年1月 STAP論文Nature掲載を発表。

 以上です。

 まとめますと、小保方さんを指導する立場だった人は、常田氏―大和氏―バカンティ氏/小島氏―若山氏―笹井氏。この6人のリレー。
 今回は、この6人の「おじさま」、それぞれについてわかっている人物像や責任の程度についてみていきたいと思います。

 実はわたし正田が個人的にとても残念なことがあります。この人々のうちのほとんどは、わたしと同年代すなわち1960年代初めから半ばまでの生まれなのです。そして、その世代の人々特有の問題を露呈しているように思います。もちろん、理研・大学に限らず、さまざまな企業で共通に起こっている現象ですので、読み解く値打ちはあります。
 Wikipediaでわかっているかれらの生年月日をみると、

常田聡氏 1965年10月 (50歳)
大和雅之氏 1964年?月 (52歳)
チャールズ・バカンティ氏 生年月日不詳
小島宏司氏 生年月日不詳 1990年研修医(1967年前後生まれ?)
若山照彦氏 1967年4月1日(48歳)
笹井芳樹氏 1962年3月5日(52歳没、生きていれば54歳)

 そして、この人たちの問題というのは、大まかに

「ええかっこしい(ザル)系」(常田氏、笹井氏)
「無関心放置プレイ系」(若山氏)
「欲得・不正系」(大和氏、バカンティ氏)

と分類できると思います。

 年代順でいうと、

ええかっこしい系 ⇒ 欲得・不正系 ⇒ 欲得・不正系 ⇒ 無関心放置プレイ系 ⇒ ええかっこしい系

 という順に、「おじさま」の傘下に入ったわけであります。
 このことも、小保方晴子さんの「教育訓練・スクリーニングすり抜けマジック」に寄与していたと思われます。

 このうち今回の記事では、問題の性質が似ている(と思われる)常田氏と笹井氏を取り上げてみたいと思います。


2.「ええかっこしい」の系譜(1)常田聡氏の“教えない教育”

【早稲田・常田研時代】
 常田聡氏 1965年10月 (50歳)。

 常田聡教授が小保方晴子さんを「叱った」という逸話が日経ビジネスオンラインで紹介されています。

「彼女は分野が違って特別だから」(シリーズ検証 STAP細胞、失墜の連鎖)
>>http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140805/269676/?rt=nocnt
 
 「先輩の研究とどこが違うの? 自分の研究部分を明らかにしないと。意味ないよ!」。2006年2月、早稲田大学理工学部(当時)の研究棟の廊下に、怒気を含んだ声が響いた。
 声の主は応用化学科教授の常田聡。「環境微生物の分離培養」と題した学士卒業論文の内容を説明した4年生の女子学生に、書き直しを命じた。先輩学生との共同実験のデータを明示せずに盛り込んだ点を指摘したのだ。

 女子学生は口を真一文字に結び、表情をこわばらせた。だが、大学院への進学を決める際に、彼女はあっけらかんと常田にこう訴えた。「微生物では自分の力を発揮できないと思います。細胞の研究をやりたいんです」。


 おおー。小保方さん、全然叱られないで育ってきたわけではないんですね。お見それしました。
(このエピソードの存在は、Amazonレビュアーの「ほのぴよさん」から教えていただきました)
 ただし。このエピソードにも突っ込んでしまうわたしです。

 2006年2月。それは、学部の卒論の提出期限後の時期ではなかろうか?
 …というのは、私学より進行の遅いわたしの出身大学ではたしか、卒論の提出期限は1月20日だったというのをおぼえているので…。
 常田教授、データが先輩の丸写し、というのをもっと前に見抜けなかったのだろうか?それまでの年度を通じた卒論指導では何をやっていたのだろうか?

 また、このあとに小保方さんは修士への進学を希望した、それも専攻を変えて、ということでしたが、先輩のデータを使い回すような「研究不正」の兆候のある人を修士に進学させて良かったのだろうか?資格をクリアしていたろうか?
 
 ・・・と、意地のわるい突っ込みがどんどん湧いてしまうわたしです。
 ご覧になっている読者の皆様は、いかがでしょうか。

 もちろん、この時点の常田教授は、小保方晴子さんがその後「STAP細胞事件」という、「世界3大研究不正の1つ」とまで言われる騒動の主人公になるとは夢にも思わなかったわけで。

 記事のこのあとのくだりで、常田教授は「教えない教育」ということを言います。

「常田のモットーは「教えない教育」。学生の自主性を重んじ、自由に研究をさせた。」(上記の記事)

 「教えない教育」。「自主性」「自由」。
 かっこいいですが、このブログ「正田佐与の愛するこの世界」では「教えない教育」のことも長年、批判してきました。教える側の責任放棄だ、と。

 「教えない教育」は1990年代末の「ゆとり教育」の学習指導要領改訂のころから流行ったフレーズです。生徒の自発性を促すことは本来は悪いことではありません。しかし、それが教師の責任放棄となり、質の低下を招いていることを大村はま氏が早くも2003年には批判しています。

※詳しくはこちらの記事などを参照
「教える覚悟」への真摯な思考に耳を傾けよう―『教えることの復権』を読む
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51879635.html  

 「教える」ことは教えられる側の学生からときに反発を招きます。「教えない教育」は、軋轢を生むことを好まない性格の、「ええかっこしい」の指導者の方々に好んで使われるフレーズでした。ストレングスファインダーでいうと、「ポジティブ―自我」の持ち主のかたが好んで使いそうなフレーズと言えます。しかし、ある時期「教えない教育」は確かに一部の教育者の「錦の御旗」ではあったのでした。

 「ええかっこしい」の常田聡氏の研究室では、博士論文不正の調査で小保方晴子さん以外にも6人のコピペが明るみに出ました。
 残念ながら、「教えない教育」とは、この場合、「規範のないゆるゆるの教育」と同義であったようです。よほど気をつけないと容易にそうなってしまうのです。

 先ほどの小保方晴子さんの卒論指導に戻ると、他の人はどうあれ、小保方さんの個性、すなわちADHD傾向でぼーっとしやすく、時間管理が下手な傾向を考えると、かなり「ガチガチ」に指導してやらなければダメだった可能性があります。
 卒論という「成果物」ができてくるのを待って指導するのではなく、各月、各週のペースで、細かくチェックして進捗を管理し、「次の一手」をアドバイスしてやる必要がありました。実際に職場でのADHDの人のマネジメントというのは面倒でもそうする必要があるのです。
 小保方さんという人を管理するには極めて不適任な指導者であり、しかし小保方さんのほうでも、そうした「ゆるさ」を狙って常田氏の指導下に入っていた可能性があるのでした。


 このあと小保方さんは早稲田と東京女子医大が合同で設立した先端生命医科学センター(TWIns) で外部研修生となりました。そこでは東京女子医大の大和雅之教授の指導下に。
 どうも、大和氏の恩師だった、林利彦氏が東大を退職後に奉職した先の大学が、小保方さんのお母さんが学科長を務める大学だった、という因縁が、ここにはあるようです。(『STAP細胞に群がった悪いヤツら』p.19)
 そういうご縁があるとすると、「初対面から『明日からおいで〜』と明るく言ってくださった。」(『あの日』p.14)というノリも、雰囲気的にわかりますね。

 この経緯をみると、常田氏のもとでいったん研究者の適性としては「?」マークがついた小保方さんが、お母さんのご縁でTWInsの大和氏に拾われ、それで常田氏も「ダメだ」とは言えず、「行ってらっしゃい」と送り出した、という風にみえます。「スクリーニング機能」が発揮されなかった第一の段階ですね。

 「欲得不正系」に分類させていただいた大和氏については次回の記事、(13)上司編・後編で解説したいと思います。


3.「ええかっこしい」の系譜(2)笹井芳樹氏の"前のめり"と"イッチョカミ"の悲劇

【理研・2012年〜】
笹井芳樹氏 1962年3月5日(52歳没、生きていれば54歳)

 さて、年代は6年ほど飛んで、2012年末に小保方さんが出会った故・笹井芳樹氏(理研CDBグループディレクター=当時、のち同副センター長)です。若山照彦氏の研究室にいたポスドクの小保方さんが、理研のユニットリーダーに採用されるタイミングで出会い、STAP論文の執筆を担当してくれることになります。

 この方が、いわば「小保方さんおじさまリレー」のアンカー。そして自殺という悲劇的な最期を遂げた人でもあります。

 STAP論文の不正については、ファースト・オーサーである小保方晴子さんが第一責任者ですが、管理責任を問うのであればこの笹井氏の責任が大きいのです。
 では、この方がなぜ論文のデータや画像の捏造を見抜けなかったのか。
 亡くなられた方なので、指摘するのは死者に鞭打つことになり、非常に気が重いところです。
 ですがこの方も言うなれば、「ええかっこしい上司」のカテゴリに括れると思います。

 『あの日』での笹井氏の登場シーンは印象的です。
 2012年12月21日、小保方さんは理研ユニットリーダーに応募し、面接を受けました。高名な理研のグループディレクター(GD)たちを前にプレゼン。「分化した細胞の柔軟性と幹細胞性の関連について話し、GDたちからてんで勝手なコメントをされたとのことです。

「それにしても疲れた。ぐったりして、若山研の自分のデスクに座っていると、人事部の人から電話がかかってきて、『もう一度面接室に戻ってきてください』と連絡を受けた。緊張感が舞い戻った。足早に面接会場に向かい、深呼吸をした後、重いドアを開けると、逆光が射す窓際に一人の先生が立っていた。
『はじめまして、笹井です。あなたの希望の研究をするために、とにかく今の論文を終わらせましょう』といわれた。『はい、よろしくお願いいたします』と反射的に答えた。これが笹井芳樹先生との最初の会話だった」(『あの日』p.110)

 どうでしょう、この登場の仕方。「逆光が射す窓際に一人の先生が立っていた」だって。スタイリッシュな絵が浮かびますね。映画かドラマのシナリオみたいです。
 
 そして、論文を通すことに定評があり、
「ネイチャー誌には何度も論文が通った経験があって、論文を投稿してリジェクトになったことはここ数年まったくない」(同p.112)
「ネイチャーとかに論文が通ってもね、カバー(雑誌の表紙写真)を取れないとちょっと悔しい」(同)
・・・と、笹井氏のかっこいい台詞が続きます。
 それまで若山氏のもとで、ネイチャー、セル等に論文を投稿してリジェクトされ続けてきた小保方晴子さんにとっては白馬の騎士現る。

 このあと笹井氏は「STAP細胞」という細胞名を決め、2013年、いよいよ笹井氏の論文執筆がはじまります。

「アーティクルは謡うように読み手に訴えかけるように、レターは詩のように切れ味よく文章を書くという笹井先生の論文執筆は、経験の浅い私にさえ『ずば抜けた違い』を感じさせるものだった。途切れなくつむぎだされる言葉の選択が優美で的確で、かつリズミカル。まるで間違えずに音楽を演奏しているかのように言葉が繰り出されていった。」(同p.115)

 と、笹井氏の挙措はどこまでも「かっこよく」。
 そう、これが笹井氏の人物像でもあったようです。かっこいい美学。のちにSTAP論文の不正疑惑が起こると、笹井氏は「ぼくはケビン・コスナーになる」(注:映画『ボディガード』の主演俳優。小保方さんを守る役回りをするの意)と周囲に言っていたようです。

 あの2014年1月28日のNature掲載の発表では、笹井氏は自らSTAP細胞のiPS細胞と比較した優秀性を示す1枚物のペーパーを作成し、配りました。わかりやすく両者を比較したイラストが使われ、STAP細胞側には小保方晴子さんをイメージしたのか、魔女が杖を振るイラストが付せられました。この配布資料は、iPS細胞の作製方法が既に大幅に改善されていることに触れていなかったことから、のちにiPS研究の山中伸弥氏から抗議を受け、大慌てで回収されることになります。


 『あの日』には書かれなかった、笹井氏が「前のめり」になり、小保方さんの真贋を見極められなかった要因は、なんでしょうか。

 有名な話ですが笹井氏はiPS細胞の第一人者、山中伸弥氏(現京大iPS細胞研究所所長・教授)が出てくるまでは日本の再生医療のトップランナーでした。ES細胞研究を推進して1998年、史上最年少の36歳で京大再生医科学研究所教授に。同い年の山中氏が京大同研究所教授になったのは2004年ですから、二人の出世レースはある時期まで圧倒的に笹井氏が「上」だったのです。
 ところが、iPS細胞研究の論文が2006年セル誌に掲載され、作製技術も確立されて2012年にはノーベル医学賞も獲得。一方ES細胞研究は、人間の受精卵を使用するため倫理的な問題が指摘され、形勢不利に。ES細胞は研究費の獲得が難しくなりつつあり、笹井氏はES細胞やiPS細胞にも代わる“第3の万能細胞”をノドから手が出るほど求めていただろうことが推測されます。
 そこへいいタイミングで小保方晴子さんのSTAP細胞研究が向こうからやってきました。C・バカンティ氏や大和雅之氏、常田聡氏の折り紙つきで。
 そういう笹井氏にとってのベストタイミング、があったのでした。

 そして、笹井氏がではSTAP論文のデータや画像の不正をどうして見抜けなかったか?
 ここは推測でしかありません。
 笹井氏が手がけるプロジェクトはあまりに多岐にわたり、STAP論文はあくまでその1つに過ぎなかった、ということです。笹井氏は研究者でありながら例外的に非常に視野が広く、コーディネーター的資質もある人であり、理研CDBの予算獲得や新施設「融合連携イノベーション推進棟」の実現にも尽力した、とWikipediaにはあります。そうした、“政治的”手腕がある一方で、自分の研究としてアフリカツメガエルの初期胚の研究を行ったり、理研のiPS臨床研究を含むいくつかの文科省再生医療プロジェクトの代表を務め、文科省ライフサイエンス委員会の委員も務めたとあります。体がいくつあっても足りないぐらい多忙だった。
 一方で学会の打ち上げでチェロを演奏したり、国際会議でバーテンダー役を務めたり・・・と趣味人の顔もWikiには載っているのですが。

 STAP論文不正が明るみに出た2014年4月16日、笹井氏は記者会見で自己弁護に終始しました。

「御覧になった方はよく覚えておられよう。笹井は、自らの責任をほとんど認めようとはしない戦略でカメラの放列の前に姿を現したのである。人事は、竹市センター長の責任。実験は若山照彦・山梨大教授の責任。論文執筆は、ファースト・オーサーの小保方晴子とラスト・オーサーのチャールズ・ヴァカンティ。笹井が論文執筆に加わったときには、すでにSTAP論文の概要は出来上がっていて、自らが関与したのは文章をネイチャー誌に掲載可能な水準にブラッシュアップしただけ。しかも自ら希望して参画したのではなく、竹市センター長に請われて、最後の二か月だけ関わったと釈明したのである。したがって、画像の差し替えや切り貼りなど不正行為を見抜くことは土台ムリであるから、STAP論文において、捏造・改竄・盗用の不正行為に手を染められるわけがなかったと弁明したわけである。しかも、小保方は直属の部下ではなく、独立した研究室のリーダーだったので、不躾に実験ノートを見せるように要求することなどできなかった。そして記者会見の最後では、こうぬけぬけと言い放ったのである。
『私の(メインの)仕事として、STAP細胞を考えたことなどない』」(『STAP細胞に群がった悪いヤツら』p.99)


 ・・・と、この時点ではいきなりケビン・コスナーをかなぐり捨て無責任路線になっている笹井氏です。
 先ほど挙げたような笹井氏の抱えていたプロジェクト群を考えると、最後の笹井氏の放り出し発言は、気持ちとしてはわからないではない。しかし、論文の「共著者」「コレスポンデント・オーサー」という立場は、本来は論文のすみずみに目を通し共同責任を負う立場なので、この笹井氏の言葉は「あってはならない」のです。とりわけ理研CDB副センター長でもあり、論文執筆と同時に組織運営上も管理責任のある笹井氏の責任は重大でしょう。

 このあと笹井氏は8月5日、笹井氏は先端医療センターの中で首吊り自殺をしてしまいます。

 自殺の動機は諸説ありますが、小保方晴子さんの不正を見抜けなかった自分の不明を悔いたこと、それに自分の研究室の研究員らの将来に責任を感じたのであろう、とみられています。


 笹井氏から小保方晴子さんに宛てた遺書は、優しさと思いやりにあふれていました。

 『捏造の科学者』によると、

「小保方氏宛ての遺書は一枚。『限界を超えた。精神的に疲れました』と断り、『小保方さんをおいてすべてを投げ出すことを許してください』と謝罪の言葉で始まっていた。更に、小保方氏と共にSTAP研究に費やした期間にも言及し、『こんな形になって本当に残念。小保方さんのせいではない』と小保方氏を擁護する記述もあった。末尾には『絶対にSTAP細胞を再現してください』と検証実験への期待を込め、『実験を成功させ、新しい人生を歩んでください』と激励する言葉で締めくくられていたという。」(『捏造の科学者』須田桃子、文藝春秋社、2014年p.347)

 この遺書の言葉をとらえて、小保方さんを擁護する人々は、「笹井氏は小保方氏を最後まで擁護していた」と主張します。
 しかし、今年になって出た、笹井氏の未亡人に対するインタビューでは違う見方が述べられています。

「A子さんは、夫が書いた真意が小保方氏には伝わっていないのではないかという。
『主人の遺書にあった“新しい人生を歩んで下さい”という言葉。あれは、“あなたには研究者の資質がないから辞めなさい”という意味なんです。実際、主人は何度も言っていました。“彼女は研究者には向いてない。辞めたほうがいい”って。これが、彼女を間近で見てきた主人が最後に下した結論だったのです』」
(「故笹井芳樹氏の妻 遺書の真意「小保方氏に伝わっていない」
NEWSポストセブン2月4日(木)16時0分)
>>http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0204/sgk_160204_5082077530.html
 というわけで、いまだ謎に包まれている部分が多いものの、本シリーズとしては「女性に優しい男を自認していた笹井氏が小保方さんを信じすぎて墓穴を掘ってしまった」と推論せざるを得ないのです。
 もちろん、責任は一義的には、ウソ、誤魔化しの積み重ねで上位者のヒューマン・エラーを誘ってきた小保方さんにあります。


 『捏造の科学者』では、笹井氏に同情的な別の見方も述べられています。
 すなわち、笹井氏は基礎研究を愛していた。しかし、再生医療を看板にしないとお金がとってこられない。

「基礎研究を愛し、若手の自由な研究環境を守るために、臨床応用の近いiPS細胞と比べることでSTAP研究の意義を宣伝した―。そう考えると、笹井氏こそ、CDBの抱える矛盾を体現していたように思えてならなかった」(『捏造の科学者』p.353)

 笹井氏は巨額の研究予算をとる権限を持ち、才覚のあった人でした。そのことに使命感を持っていた人でもありました。若手の研究者に対する擁護者を自ら任じてもいたことでしょう。
 そのことが仇となり、小保方晴子さんの不正を見抜く目が甘くなったとしたら、それもまた痛ましいことです。
 −こういうスケールのことを「ええかっこしい」と呼んでしまうのは気の毒なことではあるのですが。でも突き詰めていうとやはりそれになります。

 
 そしてまた、いくつかの謎が残っています。 
 笹井氏は「光る胎盤をみた」とも言います。
 これについて小保方さんが行ったとみられる「手品」についていろいろ推測があり、要は「えっ」と拍子抜けするような子供だましのテクニックでこれらが実現する可能性があるのです。高名な学者が、むしろ「まさか、そこまでバカバカしいことをするとは」と疑わず、ダマされてしまった可能性があるのです。
 そのあたりは(9)で登場したレビュアー「パルサさん」がいずれ、解説してくれる機会があるかもしれません…。
 要は、「ヒューマン・エラー」が積み重なった。笹井氏の予算獲得の野望、iPS細胞への対抗心、そして女性や若い人に対して優しい擁護者を自認していたことがチェックの甘さにつながった。それが悲劇につながったのだろうと、今は推測するほかないのです。


 次回は、残された「おじさん」たち、「放置プレイ系」若山氏と、「欲得・不正系」大和氏・バカンティ氏を取り上げます。



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日

 『あの日』(小保方晴子、講談社、2016年1月)読書日記 第7弾です。

 今回は、世の女性がたにとって気になる話題。もしあなたの大切なパートナーの男性が小保方晴子さんの「隠れファン」だったらどうしたら?という話題です。
 でもこの記事は、多くの男性読者の方をご機嫌ななめにさせてしまうかもしれないですね。結構、リアルの会話でも「あっ、地雷を踏んだ」とヒヤヒヤするところです。ホンマホンマ。

 しかし、「1位マネジャー輩出講師」のわたし正田としましては、マネジメントの作業につきものの現象として、あえてこの問題を取り上げたいと思います。女性管理職を含む賢い女性読者の皆様、どうか応援してくださいね!

 今回の骨子です

●「整形疑惑説」に逆ギレする男子は要注意!
●理系もしくは論理性男子は女性の「見た目」に弱い
●「惑わされている」男子は数字と画像で説得しよう



 それではまいりたいと思います―。

●「整形疑惑説」に逆ギレする男子は要注意!


 女性のみなさん。
男性って「感情認識」が下手じゃないですか!?EQ(感情知性)を構成する、「感情認識」「感情活用」のうちの基本、「感情認識」のところができないので、男性というものはわれわれ女性からみると、ときに非常に理不尽、非論理的なことをします。

 ここはよく誤解されるところですね。とくに論理性に自信のある男性は、「論理性こそがすべてに優ってすばらしいもので、それに比べると感情というものは女・子供の幼稚なものだ、レベルの低いものだ」と思っておられることが多いです。しかしそうした男性が、「感情」がわからないために、傍からみると実におかしな決断をし行動をとってしまう、ということがよくあります。

 結局、論理的というか合理的な決断というのは、論理だけじゃなく感情も加味しないといけない。あるいは、「自分がどんな感情に囚われているか」を自覚して、そこからの影響を最小限にしないといけない。男性諸氏にも、「感情認識」のトレーニングをしていただきたいところです。

 さて、脱線してしまいましたが「小保方晴子さん」がらみで、また読者の方からおもしろい話を伺いました。
 
 この内容をざっくり言いますと、ある男性が

●小保方晴子さんの「美容整形」に関する話題をいやがる
●同じ人が、STAP騒動について論評したとき、小保方さんの研究不正への関与度を低く見積もったり、罪の種類を軽く(単純ミスのように)評価してしまう(注:本当は、かなり悪質な不正で、単純ミスではない)


という傾向が繰り返し現れた、ということです。

 これ、意味おわかりになりますか?
 もう少し詳しく、この人のお話をご紹介したいと思います。
 あるコミュニティFM放送局に参画する女性の話です。

*********************************************

 私の放送局で、ベストセラーとなっている小保方さんの『あの日』を番組で取り上げよう、ということになりました。
 その企画会議と、合間の雑談の席のこと。
 同僚の30代の男性(独身)の前で、わたしが「小保方晴子さんは整形してるよね」という意味のことを複数回言いました。するとその都度、その男性は
「あなたは非論理的だ」
「女性は論理性が低いという自分の欠点を自覚してしゃべらなければならない(!)」
と、私を非難したのでした。
 彼は、数学科を出てふだんから「論理的」と自認する人なんです。EQは低めだと思います(幸い、私の彼とかではありません)
 今回は、
「整形を話題にする=非論理的だ、感情的だ」
この決めつけが、なんだかよくわからずモヤモヤしてしまいました。

 ところがその彼が、企画会議で「研究不正」について番組でどう触れようか、という話になったときに、妙に、小保方さんの関与度を低く言ったり、「不正」の悪質度を軽く言ったりするのです。
「小保方氏の役割は、不正に前のめりになっていた日米の他の学者たちの『つなぎ役』だよね」
「論文にほかの論文からの画像を転用したりコピペをする『瑕疵』があったことは確かだよね」
(ちなみにこの彼は、「瑕疵」っていう言葉をよく使います。頭が良さそうにみえるんですカネ・・・)

「ちょっと待って。この研究不正の件、どうみても小保方晴子さんが自分で捏造もコピペもして、小保方さんが主犯よ。というかひょっとしたら単独犯よ。つなぎ役なんて小さい役割じゃないわよ。
 それに、この件は画像の転用とかコピペといった、『ミス』の問題じゃないの。そもそもできもしないものをできたと言ったり、やってもいない実験をやったことにしたらしいことが問題で、研究不正としてはかなり悪質な不正なのよ。」
 私は、ネット検索してそこそこの知識を得ていましたので、こう言い返しました。だって、リスナーの方に間違った情報を届けてはいけないでしょう?

 すると30代男性の彼はまた、
「だから女性は感情的だ!!社会を知らない!」
と、荒れくるって、議論にならないのです。あとは私に対して暴言のかずかず。
 どう思います?こういうのって。

 あとで、同じ会議にいたうちの放送局のチーフディレクター(女性)とご飯食べにいったんですけど、チーフ曰く、
「あの子(30代男性)どうみても小保方晴子さんに惚れてるわよね。だから『小保方さん整形疑惑』の話をするのもイヤがるし、無意識に小保方さんの不正への関与度を下げて、彼女の罪が軽いことにしちゃってるのよ。
 そういうのは、小保方晴子さんが実力もないのに彼女に騙された学者たちと一緒なんじゃないかなあ。自分が小保方さんを『すきだ』ということに気がついてなくて、無意識に評価にゲタをはかせちゃってるのよ」

 結局、チーフの判断で、彼はこの企画から外れてもらいました。

*********************************************

 いかがでしょうか。
 「小保方さん整形疑惑」これ、初めてきいたという方もいらっしゃいますか?
 でも女性の方々はすぐ気がつかれると思いますねー。

 えーとこのブログでは、小保方さんの画像を掲載したりはいたしません。もし強いご興味のある読者の方は、小保方さんの小学校時代、高校時代、大学時代の写真をネットでご覧になってみてください。で、「間違い探しクイズ」の感覚でみていただくと・・・、そんなことを言うわたしは意地悪な女なんでしょうか。
でも小保方晴子さんのキャラクターをより正確に理解するためには、知っておいても良いことですね。


●「理系男子」「論理性男子」は女性の「見た目」に弱い


 ちなみに小保方さんは、あの栄誉あるSTAP細胞論文のNature掲載の発表の直後、出身学校への取材が殺到したので、自ら出身校に電話して「取材に応じないでください」と頼んだ、ということが『あの日』に載っています(p.140)。こういう、出身校に取材に応じないようにわざわざ頼む、ということも珍しい気がしますけどねー。いろいろと憶測はできますけれども、とりわけ「写真」が流出するのは困ったのではないかと。しかし現実には流出してしまいました。みると一目瞭然です。

 でもねー、この話題をイヤがる方はすごくイヤがられるんです。とくに男性はそうですね。
 この話題すなわち「小保方さん整形疑惑」がなぜそんなにイヤなのでしょうか。

 あくまでわたしの想像なんですが、その男性方にとっては、「小保方さん」とは、あの2014年4月9日の会見の時のお顔の方なのです。
 清楚で、ほっそりしたお顔、今にも泣きだしそうに少しうるんだ、きれいな二重瞼にふちどられた目、長い長いくるんとしたまつげに中央部分がふっくらした小さな唇、毛先を巻いたロングヘア。そして理系の研究職という、ちょっと謎めいた知的なイメージの職種ということも、ドキドキワクワクする要素です。

 まああんまり細かく言いませんが。女性の方々はこれらのディテールにはどんなテクニック、あるいはマジックが入っているか、よーくご存知と思います。でも男性は悲しいかなご存知ないんです。そして、ひとつひとつのパーツが、男性諸氏にとっては心乱れるカタチをしているのです。

 一般に男性は女性に比べて「視覚優位」の方が多いと思いますねー。もちろん聴覚体感覚優位の方もいらっしゃいますが、視覚優位の方の分布は女性に比べて多いと思います。大昔狩猟をする性だったですからね。すると男性にとってある人を知る手掛かりは「見た目」の比重が大きいんです。とくに、理系の男性は「視覚優位」の傾向が強いと思います。

 そしてまた、男性とくに理系というか、「論理性」を自認する男性というのは、「感情認識力」が低い傾向にあります。まれに、論理性も感情認識力も両方高い方もお見かけしますが、出現頻度は低いです。感情認識力が低いというのは、要は自分は小保方晴子さんに「惚れてる」ということを「認められない」ということです。

 自分が「惚れてる」って自覚できないまま、「私にはこんなにすごい実績があって、今こんなすごい研究をしてるんです」という、とっても自信と責任感たっぷり(な感じ)に話す可愛い女の子を目の前にしたら・・・、
 わけもなく、気持ちが高揚する。感動した気分になる。
 その勢い余って、彼女に学位を与えちゃうかもしれないですねえ。地位を与えちゃうかもしれないですねえ。

 要は、「惚れてる」を自覚できない男性は、小保方晴子さんへの評価を間違えて高めにつけてしまう可能性があるんです。そして、自分のそういう「評価間違い」にいつまでも気づくことができません。だって原因がわかってないんですから。

 もうひとつは、ちょっと「びろう」な話題ですが「論理的な男性は性欲が強い可能性が高い」。ご指摘しておいてもいいかと思います。経験的に、彼らのテストステロン値は高めです(だから攻撃性もわりと高いです)。アスペルガー症候群ほか自閉症スペクトラム障害は、「超男性脳」といわれますね。論理脳がすごく発達していて、感情脳が未熟なんです。その分反発心とかの幼児的な感情が強く出やすいんですが、、、感情脳が未熟というのは、感情がないということではなくて感情とか衝動は湧く。でもそれを自覚できないです。

 英雄色を好む?さあ、関係あるんでしょうか・・・

 まとめますと、論理的な男性というのは、大まかな傾向として、

●異性への関心はけっこう高い
●感情認識力が低く、異性に恋愛感情をもったときにそれを自覚できにくい
●視覚情報への依存度が高く、見た目に左右されやすい

 ほらね、あぶないあぶない。
 そして、そういう愛すべき「論理的な男性」を攻略するのに、見た目を「盛る」のが一番効果的だ、と気がついたのが、われらがヒロイン小保方晴子さんだ、というわけです。
 おわかりでしょうか?

 上に挙げた「論理的男性の傾向」、もちろんいずれも個体差があり、論理的な男性がみんなみんなそうだ、というわけではありません。でも皆さんお気をつけになったほうがいいと思うんですよネ。気をつけていれば、騙される確率が下がります。あ、「確率」なんて言っちゃった、論理的男性向けに。


●「惑わされている」男子は画像と数字で説得しよう


 さて、ここまできました。
 
 現実問題として、ではどうすればいいでしょうか。


 たとえば、読者のあなたの彼氏が小保方ファンだった場合には。
 一般に、「小保方晴子さん」に心動いた男性は、それを他人に指摘されると怒りだして、とりつく島もなくなります。まあ既婚者の方もいらっしゃいますからね・・・
 
 そして、現実の職場でも、小保方さん本人ではない「小保方さん型女性」がいらして、周囲の男性の心を惑わしていらっしゃるようです。また職場の中の評価や序列をかき乱していらっしゃるようです。わたしはコンサルタントとしてこの2年ほどの間に、なんどかそうした話題をききました。

 「枕営業」があったかなかったか、そのへんは置いといて、仮になくても、評価が左右される。こういう現象は確かにあるようです。先ほどのFM局のお話のように。


 まずは、「彼は隠れ小保方ファンじゃないかしら?」ご心配になった場合には。
 試しに、「整形疑惑」をふってみましょう。
 あなた自身の言葉でなくていいんですよ。このブログで読んだと言って、かるく水を向けてみましょう。
 そこで、
「くだらんことを言う奴がいるな!だからマスコミの小保方バッシングは!」
などと「感情的」な反応が返ってきたら・・・、
 大いに、怪しいですね。

「自分は惑わされている」
 このことに自覚していただくには、どうしたらいいんでしょうか。
 惑わされているご本人、意地でも認めないですからねぇ。

 めっちゃ乱暴ですが、「自分は小保方さんに惚れてなんかいない!!」と主張する男性は、ウソ発見器みたいなのに座っていただいて、そこで2014年4月小保方会見の動画をみてもらって、そのときの呼吸、脈拍、発汗、血圧、脳波、脳血流、性ホルモン分泌などを計測してもらったらいいんじゃないかと思います。さあどう出るかな。数字で話すことが好きな男性なんかは、数字で出ると納得してもらえるかもしれません。
 おうちで行うなら、脈拍、体温、血圧、このあたりを失礼して、ゲーム感覚でみさせていただくといいかもしれないですね。

 あとは、もし小保方ファン男子がマネジャーとして、だれかをいざ評価するときには、やっぱり脳波とか脳血流、性ホルモン値をモニターした状態で、自分が完全に冷静に、いい判断ができる状態を作ってからするとかね。

 えっ、そんな手間ひまかけられないって?じゃあ、その人にこのブログ記事を読ませましょう(笑) 
 あと本人さんの画像を2〜3持ってきて、「間違いさがしクイズ」をしてみるのもいいかもしれません。
 それと、くどいようですが「行動承認」。言っていることでなく行動でその人を評価する。マネジャーの基本中の基本の心得として、忘れないようにしてくださいね。


 老婆心としては、ぶっちゃけ
「小保方さんに惑わされるような男とくっついていてもしかたないよ」
とご忠告申し上げたい気もします。シンデレラの王子と一緒でね、あのカップルもくっついた後すぐ「ぐちゃぐちゃ」になる、というストーリーがミュージカル映画「イントゥ・ザ・ウッズ」ですが(ネタバレ)、女性の容姿にコロッと騙される男とくっついていても未来はない。洋の東西を問わず一緒です。

 しかし、やっぱり女性としては、生活設計上そんな男ともくっついとかないといけない場合もありますよね。
 その場合は、あなたも小保方さんにならって容姿を「盛って」みましょう・・・。


 実はこの関連で「最近の女性学者や女医は妙にキレイなのが多くねえか?」という疑惑もあるにはあるんですが。今年1月にもこのブログで、ある「美人教育経済学者」の書いたベストセラー本がいかに無価値で、にもかかわらず功成り名遂げた男性経済学者たちが絶賛しているという現象をとりあげました。その学者たちこのブログをみんなが読んだらはずかしくねえか?とも思いますが、まあそれもおいおい・・・。


これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
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●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日

 『あの日』(小保方晴子、講談社、2016年1月)読書日記 第3弾です。

 ここまでは、小保方晴子さんの手記『あの日』の前半部分に出てくる印象的な2つのエピソードから、読み取れることや矛盾点、明らかにウソだと言えることを抽出してみました。

 今回はちょっと箸休めで、小保方晴子さんとはどんな人格の持ち主なのか?どういう遺伝形質でどういう育ち方をしたのだろうか?というのを、ごく限られた手がかりから解読してみたいと思います。
 もう既に沢山の精神科医・心理学者の方が同様にプロファイリングをなさっているようですが、企業の人材育成屋、そして「13年1位マネジャー輩出」のマネジメント教育のプロ、という立場からの解読も、あってもいいかと思います。
 でも、このブログの長年の読者の皆様からみると、そんなに突飛なことは言わないですよ。いつも言ってることの延長ですよ。

 わたし正田は、「人」をみるとき、大体5通りぐらいの人格類型ツールを使っています。
【1】 ソーシャルスタイル(四分法、コーチ・エイの「4つのタイプ分け」とほぼ同義)
【2】 ストレングスファインダー(おなじみ、米ギャラップ社の強み診断ツール。34通りの強み分類をし、その人の上位5つの強みがその人を物語るとする)
【3】 価値観(強みのうちさらにコアなもの?その人の強い動機づけとなる)
【4】 学習スタイル/優位感覚(視覚、聴覚、体感覚のどれが優位か、というもの)
【5】 発達障害の有無/種類

 拙著『行動承認』ではこのうち、「【1】ソーシャルスタイル」しかご説明してなかったですね。「【2】強み」「【5】発達障害」はこのブログにはちょこちょこ書いています。【3】【4】はあまり触れたことがなかったカナー。
 そんなに色々使って大丈夫か、と思われそうですが安心してください。慣れるとこれぐらい使うものなのですね。わたし「個別化」の人なので、人のプロファイリングはいくらやっても飽きないんです。

 さて、小保方晴子さんは、それぞれのツールを使うとどういう人なのか。
 このシリーズ第一弾の記事の中で、「【3】価値観」をとりあげました。

******************************************
  著者の価値観とは、何か。
 読み取れるのは:上昇、希望、鮮やかな色彩(とりわけ「金色」が度々出てきます)、世界の最高峰への移動、憧れ、挑戦、華々しい、美しいものへの賛美、頭の良さへの賛美。
 上位者からのまなざし。「褒められる」こともたびたび出てきます。
 「優しい」という言葉もたびたび出てきます。
 「細胞のふるまいの自由さ」(p.50)という印象的な言葉もあるので、「自由なふるまい」ということ、また細胞の時時刻刻の変化を見守ることも価値観なのかもしれません。
******************************************

 今みると、ここにはもう1つ付け加えたい価値観の言葉があります。
 それは…でもここに書くのはやめておこう。わたしがふだん使っている、価値観リストの中には載っている言葉です。漢字1文字です。(「嘘」じゃないですよ)
 これは、このシリーズ記事第一弾の末尾部分で引用した、東スポWEB2014年3月の記事の中にある、高校時代の小保方晴子さんがついたウソの内容からプロファイリングしました。
 小保方さんにならって、「ほのめかしのスキル」を使おうと思います。やっぱりブログの品格、大事ですもんね。
 
 
 あと付け加えるなら、実は別の小保方さん自身の手になる文書に、留学先のハーバードで身につけたと思われる価値観の言葉が載っていました。

「ここがよかった!GCOE ハーバード留学体験記」
>>http://www.waseda.jp/prj-GCOE-PracChem/jpn/newsletter/img/GCOENL01_C.pdf

 この中には、バカンティ教授の「教え」のようなものが書かれています。
「Dr.Vacantiはたくさんの助言をくださいました。もっとも印象的だったのは、『皆が憧れる、あらゆる面で成功した人生を送りなさい。すべてを手に入れて幸せになりなさい』と言われたことです。この言葉は、『見本となるような人生を送りなさい』という、すべての若者に向けた言葉だと理解しています。」
 うーむなるほどー。
 このページの存在はあるAmazonレビュアーの方から教えていただいて開いてみたのですが、うなってしまいました。
 まんま、アメリカの成功哲学。
 「成功することはすばらしい!」
 わたしはコーチングの学習の中でも「成功」という言葉が出てくると「ひいて」しまったほうなのですけどね。アメリカ由来の独特の価値観の体系ですね。
 当然、最高峰に憧れてハーバードのバカンティ研に留学した小保方晴子さん、憧れの教授からこう言われてこの価値観に染まっていたでしょう。

 というような価値体系をもつ、小保方晴子さんです。
 でもここまでは、別に変なとか異常なとかいうことはないですね。
 次のツールにいってみましょう。

【2】ストレングスファインダー。
 私がみたところでは、小保方晴子さんがもっている強みは、
・最上志向
・自我
・内省
・コミュニケーション
・適応性
です。
 このほか「競争性または指令性」「社交性」「ポジティブ」あたりも高いかもしれません。
 「コミュニケーション」は、抜群のプレゼン能力につながります。
 記者会見の場で、質問に臨機応変に答えられる、あれは「コミュニケーション―適応性」があるからできるのだと思います。
 そして「上を目指したい」これが強いのはたぶん、「最上志向―自我」。
 「自我」は、「褒められたい」ということにもつながりますね。人一倍強い承認欲求、ナルシシズムの資質です。
 「最上志向」さんは―、
 以前男性の最上志向さんについて書いた記事で、「これ小保方さんにも当てはまりそうだなあ」と思う記事があります。
「最上志向の男性はなぜ喋り続けるのか」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51757211.html 
 ずーっと喋り続ける。また時々すごく変な方向にすごい努力しちゃう。最上志向の人みんながみんなそうじゃないんですよ。

 妄想が強い、これは「内省」が高くて行動力の強みが低い人だとそうなります。
 人が「できない」ということを「やりたい」と思ってしまうのはなんなんだろうなー。負けず嫌いの競争性、天邪鬼の指令性あたりとポジティブ、最上志向あたりが合体するとそうなるかもしれません。でも行動の強みがあったほうがいいですね。「できなかった」というイヤなことに向き合えないのは「ポジティブ」カナー。
 ほんとは「裏ストレングスファインダー」で、ここには書けないお話もいっぱいあるのですが、ご興味のある方はわたしに直接おききになってください。

 その他、
【1】 ソーシャルスタイル:P+Aでしょうね。
【2】 学習スタイル/優位感覚:たぶん視覚優位。でも言語能力も高い、ということは聴覚もかなり優位。そしてこの本『あの日』の中には身体感覚を表現した感情表現の言葉がたくさん出てきます。だから体感覚優位なのかというと・・・うーん。
 
 そしてそして、
【6】 発達障害の有無/種類

 たぶん、このブログの長い読者の皆様は、一番お知りになりたいところでしょう。
 初めてご覧になる方は「えっ?」と思われるかも。

 わたしがみるに、愛すべきわれらが小保方晴子さんは、ASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥多動性症候群)のハイブリッドだと思います。
 これも本人さんがご覧になった時嫌な気持ちになられるかもしれません。「障害」という言葉に対して「差別だ!」といわれたり、「名誉棄損だ!」といわれるかもしれません。
 しかし。このブログでは一貫して、「発達障害は全人口の1割前後を占める非常にポピュラーな障害なので、隠すことも差別することも正しくない。もっとこの概念が普及してみんなが自己受容したほうがよい」という立場をとっています。この障害の疑いをご指摘させていただくことが差別や名誉棄損にあたる、という認識がそもそもありません。あしからず。

 発達障害でも人により千差万別で、ASDだからこういう性格、ADHDだからこういう性格、というふうに決めることができません。小保方さんの場合はどうかというと、こだわりの強いASD。その中でもIQや言語能力のすごく高いアスペルガー症候群。それと、ミスの多いADHDがまじっていると思います。言語能力の高さと、実行能力の低さのギャップが激しいので、ウソをついたり言い訳をしたり、がすごく多くなる。これは本人さんにもどうしようもないところだと思います。で周囲の人も、こういう人をみたことがない人には理解できないだろうと思います。
 だから、せっかく小保方さんという人と出会えたことを「チャンスだ」と捉えて、わたしたちは学習したほうがいいわけですね。

 また一般に発達障害の方は、手先が不器用だったり運動神経がダメダメだったり、ということが多いです。マラソンや水泳、自転車など、一人作業のスポーツを好む発達障害さんは多いですね。だから超難しい実験をこなしたことになっている小保方さんが、ほんとに手先が器用かというと・・・クエスチョンです。子供のころ器用だったというエピソードは出ていません。

 そして、妄想が強い。これはASDでもADHDでもこういう特性をもった方は多いかな。小保方さんも実験をしながら色々な不思議な妄想をしています。

 メンタル面が弱くてすぐ「折れて」しまう、これも発達障害の人にはありがちです。もともとミスが多く、子どもの頃から叱られる場面が多いので自尊感情が低い。そして叱られると昔からのトラウマがわーっと出てきてすぐ折れてしまう。発達障害の人に鬱エピソードは多いです。また、双極性障害(躁鬱病)や統合失調症など、さまざまなメンタル疾患に発達障害が深く関わっていることが近年わかってきています。自分を叱った相手に対する恨みの感情もこのタイプの人は強いです。

 小保方さんは「自己愛」だ、というふうにも言われます。これも、自己愛性人格障害ととれなくもないし、基礎疾患としてのASD―ADHD(要は発達障害)をみたほうがいいかもしれません。もともと発達障害と人格障害の線引きはすごく曖昧なんです。感情の起伏が激しく他人に対する毀誉褒貶も激しい境界性人格障害も発達障害の一種なのかもしれない。また自己愛も発達障害の一種なのかもしれない。発達障害の人は「メタ認知能力」が弱いので、「できてない自分」を直視することができないんです。かつ、人の言葉の裏を読めないという特性もあるので、「あなたはすばらしいですね」と言われると、たとえ社交辞令でも本気で信じ込んでしまうところがあります。小保方さん、褒められることもだいすきでしたね。そして小保方さんのように妄想がきつく、一方で言語能力のものすごく高い人であると、できもしないものを本気で「できる」と信じてプレゼンをすることができるんですネ。

 こういうのは、本人さんのもっている能力の組み合わせで外に現象として出てきてしまうので、「けしからん!」と反応したり「心の闇」といったホラーっぽい理解の仕方をするのは正しくないのだと思います。

 そのほかうそつき、ほらふき、詐病だとかいうことでミュンヒハウゼン症候群という病名を挙げた精神科医の方もいらっしゃいましたけど、ああいう精神疾患の病名って、20世紀の半ばぐらいまでに作られたもので、まだ発達障害の知見が出てなかったころです。今のものさしだと発達障害と理解したほうが早いよ、そのほうが対処法もわかるよ、などと、正田はおもいます。

 では、小保方さんがこういうASD−ADHDの資質をもった人だとして、なぜ子どもの頃気づかれなかったんでしょうか?今まで矯正されなかったんでしょうか?
 そして、こういう人がもし職場にいたらどういう指導をしてあげるのがいいんでしょうか?理研では何故できなかったんでしょうか?

 そのあたりのお話は次回…。
 

これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
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●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
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●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日



 引き続き、かの有名なSTAP細胞論文騒動の主役、小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)を読んでいます。

 きのうこのシリーズ第一弾の記事をUPしフェイスブックにも転送したところ、信頼できるマネジャーのお友達からさっそく、感謝の言葉をいただきました。

「読んでいないのでコメントできません。ただ、この類いの本を出すのは、あまり品の良いことではありませんね。正田さんのおかげで、読んだような気持ちになりました。」

 ああそうなんだ、と正田は安堵いたしました。わたしが信頼申し上げるマネジャーの知性のもちぬしは、この本をはなから買わず、したがって“汚染”されてない方が多いんだ。

・・・でもその方々の部下は読んでるかもしれないんですよね・・・

 たぶんこの本の主流読者は学生、主婦、高齢者その他ワイドショー視聴者の方々なのだと思いますが、その他に会社にお勤めしている人の中の末端の働き手、いわば「部下側」の方もいらっしゃると思います。

 なのでこのブログでは、
・この本を「読まない」主にマネジャー層の方々
と、
・この本を「読んだ」主に部下側の方々
を、読者層に想定しながら、すすめたいと思います。マネジャーの方々にはウンチク材料として、また読んでうっかりこの本を「良い」と思われた方も「大人はこういう読み方をしたほうがいいんだ」という学びの場として。


 前回は、この本の冒頭にある印象的なエピソード「病気のお友達の話」を題材に、「そこで何もしなかっただろー小保方チャン!!」とつっこんでみました。
 自分は何もしなかった(と思われる)のに病気のお友達をネタに美しいエピソードを1つ作り上げ、それをひっさげて早稲田のAO入試、東京女子医科大学、ハーバード大、と門戸を叩き扉を開けていく才能。さすがです。

 これに続き今回は、ツカミネタ第二弾。すっごい難しい実験をやったと書いてあるけれど「それ自分でやってないだろー小保方チャン!!それか、その実験ほんとにあったのか小保方チャン!!」とつっこみを入れるお話です。そして今度のエピソードも、著者・小保方さんがその後ハーバード大・バカンティ研に留学するのに役立ったと思われる、いわば「立身出世の立役者」的なエピソードです。「実験の天才・小保方晴子さん伝説」をつくりあげたエピソードです。

 なのですが今回は前回よりはるかにページ数も多く専門用語も多いので、お忙しい読者の皆様の利便性のために、この記事では、構成をこのようにしようと思います:

1.結論(短く) 2.理由(かいつまんで) 3.一般的な実務上の提言  4.資料としてこの本『あの日』からの引用。

 それでは、肝心の結論…。

1. 【結論】小保方さんは、『あの日』pp.19-25に書かれている「ラットの口腔粘膜自家移植実験」の少なくとも手術部分を実際にはやっていなかった、すなわちだれか心優しい人に代わりにやってもらった可能性が濃厚。あるいは、この実験自体が存在せず、別の実験のデータを使いまわした可能性もある。


2.【理由】
‐保方さんは、早稲田の応用化学から東京女子医大の修士に進学、そこで初めて動物実験や細胞培養を行ったのでした。手術―細胞培養―手術―組織観察というこの実験の手順全体からみて、膨大な量のOJTや個人トレーニングが必要になるでしょう。
⊂保方さんは、この研究を2007年3月14日の第6回日本再生医療学会総会で発表し、輝かしい研究者人生のデビューを飾ります。しかし「数十匹のラットを用いた自家移植の実験を連日8カ月以上にわたって行った。」(p.24)というからには、遅くても2006年7月初めにはこの実験を始めていたことになります。,任いΔ箸海蹐OJTや個人トレーニングの期間がどうみても足りない。この実験をするのは素人がリストを弾くようなもの、あるいは素人が甲子園に行くようなもの。
この本の中に細胞培養のやり方はテクニカルスタッフから習った(p.15)とあるのですが、手術の仕方を習ったり独学でトレーニングしたという記述はありません。本当は実験全体の中では手術の部分がはるかに難しく(とくに縫合)、この実験がチャレンジングなものであるポイントはここなのです。それにチャレンジしたということを言う以上は、そのトレーニングについての説明があったほうが自然ですね。
ぜ存核榿屬竜述をみると、やはり細胞シート上の培養された細胞の時時刻刻の変化は克明に文学的な表現で記されています。いっぽうで難しい手術場面はごく技術的な説明に終始しており、論文や学会発表の原稿をそのままコピペしたかのようです。実際にやったという臨場感が感じられません。(唯一臨場感があるのは、手術後のラットが手の中でピクピクして目覚めるというくだり(p.21)です)このあたりこの記事の後半で『あの日』から文章を引用してご紹介したいと思います。

 以上 銑いら、この実験のとくに手術の部分は小保方さん以外の心優しい人がやってくれた可能性が濃厚です。あるいは、もし手術がうまくいかなければラットが死んでしまい、自家移植が成り立たなくなるので、実験自体が存在せず、細胞培養のデータなどは別の実験から使いまわした可能性もあります。

 また蛇足ですが、この本『あの日』では、小保方さんの初めての学会発表は2007年4月のシカゴでのバイオマテリアル学会年次大会だったとなっていますが(p.25)、上記のようにそれはウソで、本当は1か月早い2007年3月14日の第6回日本再生医療学会総会(横浜)が最初の発表のようです。(現在確認中⇒確認がとれました。日本再生医療学会事務局より、上記の日付・学会においてポスター・セッションの発表者になっているとご連絡をいただきました)

 なんでそんなウソつくカナー。小保方さん、見栄っ張りさんなのカナー。研究発表デビューの場は日本よりシカゴだったことにしたかった?あるいは、のちに2014年8月、日本再生医療学会は声明を発表して小保方さんを見放してしまったので、この学会の存在自体を頭から消したかった可能性もあります。というわけで実験そのものの疑義はまだ「疑いレベル」ですが、この記念すべき学会発表デビューの日時場所は明らかにウソが入ってます。

 ふーふー、ここまででもうワード原稿3ページ目に入ってしまいました・・・。
 で、お忙しい読者の皆様のためにお待たせしました、一般的な実務上の提言です。


3.【提言:実績は2度訊け】

 あくまで一般論で、ここで小保方さんがそうだ、と決めつけるわけにはまいりませんが、「経歴でウソつく人」って、やっぱりいらっしゃるんです。自分がやったのじゃないことを自分がやったように言う。あるいは根本的にやってないことをやったかのように言う。

 そこでマネジャー側、あるいは採用側としては、どうしたらいいでしょう。

 わたしの受講生さんで脇谷泰之さんという、上海工場を大成功させた総経理の方がいらっしゃいます。今どうしてはるカナー。この人の話でおもしろかったのが、
「面接は時間を置いて2回やれ。同じ業績を2度訊け」
というお話。

 こちらの記事に載っています
「『責めない現場』は可能か?」後半部分
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51866966.html 
 中国でも人材採用難です。脇谷さんは募集をかけて色んな人を面接するうち、
「ウソをつかない人間を採用する」
という方針になりました。
 そして、じゃあ、どうやってウソをつく人を見分けることができるでしょう。
 それが、「時間を置いて2回面接し、同じ質問をする」という方法です。
 脇谷さん自身の言葉をご紹介しましょう。

「2回面接したらわかります。日をあけて。今の営業技術部の部長してるのも2回しました。今、承認を教えてる第二世代目のメンバーも僕が2回面接しました。1回目と2回目でまったく同じことをききます。過去の成績。どんなことをしてきたか。あなたが今自信をもっていえる成果は何ですか。ということを2回、同じことをききました。20人ぐらい面接してると1回目と2回目はほとんど違います。1回目に言ったことが2回目になるとすっごい膨らんで言うときもあります。
 …そこで色々突っ込んでいくと、じゃあどういうことしたの、こうしたのああしたの、こんなこと起こらなかった、あんなこと起こらなかった?と、通訳を交えてしゃべっていくと、大体『こいつはこのレベルまでしかしてない』とか『誰かにくっついて一緒にやったことやなあ』とわかるんで、そういう人は全部排除します。」

 いかがでしょ。
 これが現場の知恵です。こういう、仕事の現場の人の言葉ってなかなか表に出ないですよネー。大学教授なんてそれに比べると、全っ然世間を知らない、実務を知らない。

 小保方さんの美しい「病気のお友達エピソード」や、「私はこんなすごい実験をしましたエピソード」も、どちらも「そこであなたは何をしましたか?」と「行動の質問」でつっこんだほうがいい。それも時間を置いて2回、同じところをつっこんだほうがいい。そういうお話です。



 ここまで、駆け足で・結論・理由・提言 という、この記事の骨子の部分をお話してきました。

 この後は、ちょっとお時間の余裕のある読者の方向けに、この本のストーリーを丁寧に追いながら、また本文の抜き書きもしながら、どうしてこういう理由、こういう結論になったのか?というお話をいたします。本を読まないでウンチクに肉づけをしたい方は、どうぞこちらもお読みになってください。


*******************************************

 さて、この本の筋書きを追いますと、われらがヒロイン小保方晴子さんは成長し、高校に進学し、大学は早稲田大学理工学部応用化学科にAO入試で受かり、大学院は再生医療を志して東京女子医大先端生命医科学研究所へ。
 この修士課程に入ったころから、がぜん専門用語が多くなります。ここで文系の多くの読者の方は挫折感を味わうようです。

 なるべく、私自身も文系ですので(でも過去には科学記者や医薬翻訳者だったこともあるのだが。恥。ちょっと詳しい話になるとお手上げです)そうした“挫折組”の方々もあっなるほどあの話はそういうことだったのか、と思っていただけるように解説したいと思います。

 大学を卒業した小保方晴子さんは晴れて、女子医大先端生命研の修士課程に外部研究生(外研生)として入り、大和雅之教授(現先端生命研所長)の率いる上皮細胞シートの研究チームに配属されます。

 上皮細胞シート。これ、どこのメーカーの製品かご存知ですか。
 はい、あの「株式会社セルシード」社のなんですね。
えっ、どこかできいたことあるって?そうでしょう、小保方晴子さん主著者のSTAP論文ネイチャー誌掲載!を発表したときに株価がガーンと上がった、あの会社です。
 こんな頃から小保方さん、あの会社とご縁があった。看板娘だったんですね。
 で、ここからはこの「細胞シート」が大活躍してくれます。

 「大和教授から最初に与えられた研究テーマは口腔粘膜上皮細胞に関する研究だった」(p.17)
 口の内頬からとった細胞を、上皮細胞シートとして目の角膜に移植すると角膜として機能を果たす。現在ではこれは角膜治療法として確立されているそうです。

 では角膜でない他の場所に移植するとその場所に応じてどう変化するか?小保方さんが挑戦するのは、そういう未知の課題です。
 これを、大型のネズミであるラット、それも若齢のラットの口腔粘膜で実験してみることにしました。

 ほらほら〜、既に漢字が多くて疲れてきていませんか?

 普通、移植手術って同じラットの個体同士で移植する「自家移植」なら、拒絶反応が起きにくいわけです。
 だから理想としては自家移植したい。でも若齢のラット(離乳―性成熟前、8−9週齢まで)を使うと若いから細胞の分化がいいはずなんだけど、若齢のラットだと口が最大でも1センチほどしか開かない。すると、生かしたまま組織をほほの内側から採取することは難しいだろう。要は採取後、止血して縫合するのがうまくいかなくて出血多量で死なせてしまうだろうということですかネ。死なせてしまうとそのラットに自家移植ができません。

 なので大和先生は無理だろうという意味のことを言われます。
「そのために、先生からは、この(他家移植をしても拒絶反応が起きにくい)ルイスラットを用いた『他家移植』による実験系を提案されていた。」(p.20)

 しかし、われらが小保方晴子さんは納得しません。難しい若齢ラットでの自家移植をすることにこだわります。
「しかし、この提案を受けても、私はどうしても、口腔粘膜を用いるからこそ、組織を採取する患者さんへの負担が少なく、自分の細胞を用いることができるので拒絶反応が起こらないという、この研究の原点にある角膜治療研究の根本の価値となる原理を崩したくなかった。自家移植にこだわりたい。無知であるがゆえに、沸き起こるチャレンジ精神が背中を押した。
 そこで、ラットに麻酔をかけ、生きたまま口腔粘膜を採取し、培養した口腔粘膜を同じラットの背中に移植する『自家移植』の実験系の立案を試みた」(同)
 やれやれ、小保方さんたら、とっても向こうっ気の強い方ですね。

 この文章に続いて次のセンテンスではすぐ、ラットの手術が始まります。
「ラットに麻酔をかけ、顎が外れないように優しく、しかしできるだけ大きく口を開ける。舌やその他の部分に傷をつけないように小さなピンセットでラットの口元を支えながら、先端に直径4ミリの円形の鋭利な金属が付いた細長い筒状の道具をラットの口腔内に挿入し、ラットのほほの内側に金属の先端を優しく押し付けて直径4ミリの円形の切り込みを作り、できるだけ傷が浅く済むように、厚さ3ミリほどで小さなはさみで剥離し、必要最小限の口腔粘膜組織を採取する。血の塊でのどが詰まらないように綿棒で圧迫して止血を施し、術後から負担なく食事ができるように口腔内の傷口を丁寧に縫合した。」(pp.20-21)
 「優しく」という言葉がこの中で2回、「丁寧に」という言葉が1回、使われています。小保方さんって、とっても優しい丁寧な人なんですねっっ。。
 (というかむしろ、「こんな難しい手術を練習もせず、優しく丁寧にやればできるって思ってんじゃねー!!」ってつっこむのが正しいのかもしれない)

 この後には、手術後の麻酔の覚めてないラットを手のひらで包み込んで温め、「どうか生きてください」と祈りながら、麻酔から覚めるのを待った、という印象的な光景があります。まあなんて優しいんでしょう。実験動物にこんな愛をもって接するなんて。

 おい。わたしはここでツッコミをいれます。
 先生も無理だからほかのやり方で、と言ってる実験系を主張してやりはじめた割には、えらいすんなり手術しちゃってるじゃないかい。
 上の文章をよ〜〜く見ましょう。
「私はどうしても、口腔粘膜を用いるからこそ、…原理を崩したくなかった。自家移植にこだわりたい。」
の文のあと、いきなり
「無知であるがゆえに、沸き起こるチャレンジ精神が背中を押した」
って言ってますが。
 ここは、「沸き起こるチャレンジ精神」なんて精神論を言ってる場合じゃないのです。
「具体的にどうやって、難しい手術を成功させてラットを死なせず自家移植まで持っていくか」
というテクニカルな説明を、先生を納得させるような形でするところです。もちろん読者のわたしたちにも。
 で次のパラグラフではいきなり手術成功しちゃってる。やれやれ、神の手小保方さん。

 この手術、「ラットの口の中の粘膜から組織をとる」の部分の最大のカギは、「縫合」にあります。1cmしか開かないラットの口の中をいかに縫合するか。それも後の食餌で不都合のないようにきれいな縫合で。
 今は「縫合トレーニングセット」という、手術初心者のための有難いキットもある由ですが。それでも、相当難易度の高い手技だと思います。
 実はこれ、わたしが初めて言ったんじゃなく、ある生物系というAmazonレビュアーさんから、
「小保方さんこの実験自分でやってないでしょう!本当にやったのならこの部分もっと詳しく説明してみて」
という疑義が上がっていました。
 わたしのような素人からみると、上記の手術の描写も十分詳しくみえるのだが、経験者には全然そうではないみたいです。相当の難手術のようです、これ。特にやはり縫合の部分は。
 縫合を手早く正確にやらないと、この手術はラットを出血多量で死なせてしまい、自家移植をすることはできなくなります。
 しかし。早稲田の応用化学から東京女子医大の修士に来て1年目の小保方さん。テクニカルスタッフから細胞の培養の仕方を習ったとはありますが(p.15)、ラットの手術の仕方を習ったとはどこにも書いてありません。
 じゃあ誰がやったの?

 ここは、まったく想像ですが、この研究室の先輩とかで「実験マイスター」「手術マイスター」というような方がいらして、その部分はやってくださったんじゃないですかねえ。
 一応あとでラットの背中の皮膚下に細胞シートを移植してますから、自家移植はしてたんだと思います。なので同じラットの頬の内側の組織をだれかが採取したんだと思います。
でも早稲田からきたばかりの小保方さんにはどう見ても無理ですね。そういう離れ業をやったのなら、それについて猛特訓したという文章が、ここにあってしかるべきだと思います。
 案外、「はるちゃん、これ持ってて」と手術後のラットを渡され手の中で温めていた、そこだけは自分でやったかもしれません。

 この実験は、要は4つの段階から成ります。
(1) ラットの頬の内側の組織を採取する(手術)
(2) 採取した組織を細胞シート上で培養する
(3) 培養した細胞シートを同じラットの背中の皮膚下に移植する(手術)
(4) 移植後の組織の変化を観察する

 で(1)と(3)の手術シーンは、先ほどもあったように、一応の手順を書いてはありますが、論文に記述した通りなのか、妙に機械的でそそくさとした文章です。ほんとはすごく難易度の高い、実験者にとってはドラマチックなはずの場面がね。
 ところが、(2)の細胞培養のパートは豪華絢爛たる文章で、視覚優位・絵画的あるいは動画的な小保方さんの文体の面目躍如です。
 どんなかというと―。

「若齢のラットの口腔粘膜上皮細胞の増殖力は強く、1週間ほどで、たった直径4ミリの組織から採取した細胞を直径35ミリの細胞皿を埋め尽くすまでに増殖させることができた。フィーダー細胞上に播かれた口腔粘膜上皮細胞は最初コロニーと呼ばれる円形の細胞集団をつくり出す。培地の海の中に小さな島々が点在しているように見えるコロニーの周りには、フィーダー細胞が、海のさざ波のように散在して観察される。日が経つにつれて、この島状のコロニーはだんだんと大きくなり、島の間のさざ波はだんだんと数が減っていく。こうしてコロニーが大きくなっていくと、いつの間にか、離れ小島だったコロニー同士がくっつき、一枚の細胞シートとなる。隙間なくコロニーが接着したら、いよいよ細胞シートの回収時期だ。うまくいくと1週間ほどで温度応答性培養皿上に、ヨーロッパの道の石畳のような、敷石状に敷き詰められた美しい口腔粘膜上皮細胞シートが観察される。」(p.22)
「実験は純粋に楽しかった。毎日、温度応答性培養皿上で巻き起こる陣取り合戦のような世界。増殖していく細胞が描き出すモザイク画のような芸術。細胞が変化していく様子を観察するたび、生と死との生命の神秘を感じ、さまざまなことを考えた。」(p.25)

 いかがでしょうか。「口腔粘膜上皮細胞シート」「フィーダー細胞」なんていう専門用語のところを我慢すれば、「ヨーロッパの道の石畳のような」細胞シートなんて、詩的な表現でしょ?
 しかし細胞シートというのが某社の商品であることを考えると、この文章はなんかそれのプロモーションビデオのナレーションみたいにきこえなくもないのだが。小保方さあんセルシード社から広告料とってます?
 

 でこの研究がなんと、2007年4月シカゴで開催されたバイオマテリアル学会の年次大会で口頭発表の栄誉に浴しました。と本書にはあります。

 ふーんふーん。
 実は、小保方さんはこのほかに・2007年3月14日第六回日本再生医療学会総会と2008年3月14日第七回日本再生医療学会総会で、2回にわたって同じ演題で発表しています。(日本再生医療学会事務局に確認ずみ)なので、この実験に関する延々7ページにわたる記述は、この修士時代の2回に渡る日本語での発表原稿にもとづいているのだろうと推測されます。まあ、コピペなのかもしれません。
 大和教授が特許を持っている、当時最新式の細胞培養皿を使った細胞シートの研究を担い、大舞台で発表を繰り返していた、看板娘の小保方さんでした。
 同期や先輩の方々、嫉妬しなかったのかなあ。まあどうみても可愛がられっこですよね。しかし、提案者は小保方さんだったかもしれないけれど、内容的にはどうみても自分ではない。こういう抜擢の仕方ってどうよ、と大人なので勘ぐってしまいますね。

 あと、バイオマテリアル学会でデビューした、というのは、やっぱりウソ。本当は上記のように、1か月早い日本での日本再生医療学会総会で発表したんです。これでも相当名誉なことだったと思うんですけど、小保方さんにとっては今いちだった。シカゴでデビューしたことにしたかったんですね。

(注:好意的に解釈すれば、小保方さんのつもりでは「オーラル(口頭発表)のデビューがシカゴだった」ということなのかもしれません。日本再生医療学会総会では、ポスターセッションでの発表でした。ただ、ふつうはそうと断りますね、つまり「口頭での初めての発表は」という言い方をしますね)

 そして実験のお話がこの本で延々7ページも続いたのは、やはり、自分を凄腕の研究者、実験者だと印象づけたい、からだろうと思います。これ以降のページでは、こんなに1つの実験を長々と書いたものはありません。STAP細胞と直接関係ないのにね。

 このエピソードも、小保方さんがその後ハーバード大学のバカンティ研究室に自分を売り込むことに役立ったことでしょう。バカンティ教授は「そんな優秀な学生なのか!」と目を輝かせたことでしょう。
 しかし、こんなすごい実験ができるのに、バカンティ研に移ってからの小保方さんは、この系統の実験を長くは続けませんでした。最初ヒツジの鼻の粘膜を自家移植する実験をやっていましたが、すぐSTAP細胞の、あまり高度な実験スキルを必要としない研究テーマに替わっています。神通力は、落ちてしまったのでした。


****************************************

 ふうふう。まとめです。

 前回の記事とあわせると、小保方さんを「すごくお友達思いの、優しい人」と印象づけた「病気のお友達エピソード」、しかしそこで本人さんは実は何もお友達を助けたりしてなかった。
 それに続き今回の記事では、小保方さんを「すごい実験の天才」と印象づけた、「すごい難しい実験のエピソード」は、実はほかの人が難しい部分をやってくれたか、あるいはそもそも実験自体が存在しなかった疑いすらある。
 そういうお話でした。
 (ついでに記念すべき初めての学会発表の日時場所の間違いもみつかりました。より華々しい方向に「盛って」いました)

 どうでしょう。『あの日』という本の印象、ここまででどうなりましたか?

 えーとここまででわたしもだいぶ疲れてしまったので、次回は、わたしの得意分野である、小保方晴子さんという人のプロファイリングのお話をしたいと思います。

 これまでの記事:

●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html



●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日

 『あの日』(小保方晴子、講談社、2016年1月)を読みました。かの有名な、STAP細胞論文騒動の主役の手記。
 読まないって言ってたのにね。裏切者〜!って石投げられそうです。

 本日2月23日現在、Amazon総合ランキング16位、「科学史・科学者」「日本のエッセー・随筆/近現代作品」「科学・テクノロジー」の各カテゴリで1位。本屋さんにはずらり平積みで並んでいます。

 沢山の識者、専門家、コメンテーターの方々がこの本に言及しています。またAmazonのレビュー数は早くも500を突破しました。
 数字を論じるのが好きなかたのために内訳を言うと、560レビュー中★5つ321、同4つ52、3つ47、2つ12、そして★1つが128です。

 賛否両論あるなかで、まあせっかくの流行り物ですので、このブログでは、良識的な社会人、とりわけマネジャー層の読者の皆様にターゲットを絞って、「この本の正しい読み方」を解説していきたいと思います。


 この本を賞賛する人々は多くは前半を賞賛します。
 前半部分は、著者・小保方晴子氏の子供時代に始まり、高校、大学(早稲田)、修士課程(東京女子医大)そして米ハーバード大学のバカンティ研、ととんとん拍子に階段を上っていきます。
色彩感覚豊かで、画面に動きがあり、映画をみせられているような気分になります。著者の高揚感がダイレクトに伝わります。

 人材育成屋のわたしは、「この著者はどんな価値観・動機づけをもって生きている人か?」ということに関心が向くほうです。
 この本の前半部分、ハーバードに行って滞在中の前半までのくだり。ここの文章はなぜこんなにも輝きを放つのでしょうか。
 わたしはそれは、著者の価値観がもっとも顕著に出ているからなのだと思います。

 著者の価値観とは、何か。
 読み取れるのは:上昇、希望、鮮やかな色彩(とりわけ「金色」が度々出てきます)、世界の最高峰への移動、憧れ、挑戦、華々しい、美しいものへの賛美、頭の良さへの賛美。
 上位者からのまなざし。「褒められる」こともたびたび出てきます。
 「優しい」という言葉も度々出てきます。
 「細胞のふるまいの自由さ」(p.50)という印象的な言葉もあるので、「自由」ということ、また細胞の時時刻刻の変化を見守ることも価値観なのかもしれません。
(ほかにもありますか?是非、読者の皆様、ブログコメントでもFBメッセージでも、「私はこういうのも価値観だと思う」というのがありましたら、ご教示ください)

 これらが同時に連動して現れるのがこの本の前半部分です。こうした価値観を多少なりとももつであろう大部分の読者はその世界に引き込まれるでしょう。前半だけでも楽しい気持ちにさせてくれるので、この本は読む価値があると言えるかもしれません。
(この著者に印税を渡したくないという方は古本か立ち読みで十分です)

 その前半部分には、印象的な2つのエピソードが載っています。希望に満ちたこの本の前半を象徴するような、とても魅力的で美しいエピソードです。
 そのひとつは、子ども時代の病気のお友達の話。「第一章 研究者への夢」の冒頭部分に出てきます。
 この記事では、少し長くなりますが、あとで読み解くための材料として、このエピソードを丸々引用させていただきましょう:

****************************************

 私を再生医療研究の道に導いたのは、幼い頃の大切な友人との出会いだった。彼女が描いた絵や、作った工作作品は、たくさんの生徒の作品が並ぶ中にあっても、格段に目を引き、一目で彼女の作品だとわかるほど、抜群の才能を感じさせた。彼女の描いた明るい色使いのひまわり畑の絵や、細かな細工が施されたかわいらしい動物形の木工作品は、彼女の笑顔とともに、今でもはっきりと思い出すことができる。
 彼女に変化が現れだしたのは、小学校4年生の頃だったと思う。病名は小児リウマチだった。それから、彼女とは中学校3年生までずっと同じクラスで、担任の先生からも、「困ったことがあったら助けてあげてほしい」と言われていたが、彼女は病気の辛さを一切表に出さず、私はこれまでと同じように一緒に時を過ごしていた。
 中学校を卒業する頃には、誰よりも繊細で器用だった彼女の手が、だんだんと曲がっていく様子にも気がつきはじめた。痛みはあるのだろうか、どんな気持ちでいるのだろうか、と思うと、どう接したらいいのかもわからなかった。そんな私の心情を察してくれたのも、彼女だった。ある冬の日の放課後、「一緒に帰ろう」と私の座る席の隣に笑顔で立っていた。二人でゆっくり歩く、いつもの帰り道、「はるちゃんは頭がいいから、将来なんにでもなれるよ」と励ますように言った。助けてもらっていたのは、いつも心の弱い私のほうだった。何もしてあげることができなかったという無力感と、友人に訪れた運命の理不尽さに対する怒りや悲しみは、「この理不尽さに立ち向かう力がほしい、自分にできることを探したい」との思いに変わり、この思いはいつしか私の人生の道しるべとなっていった。(pp.6-7)

***************************************

 しばらく余韻にひたってみてください。いかがでしょうか。
 この本に魅入られた方は、ほとんどが「このエピソードに感動した」と言われます。そして、「こんなにお友達思いの小保方さんが悪いことをするわけがない」と言われます。
 このブログをお読みになっているあなたのご感想は、いかがでしょう。

 もし「感動した」という方ですと、非常にお気の毒なことをしてしまうかもしれないのですが、ここではこのエピソードを現役の企業のマネジャー、あるいは「かしこい採用担当者」の視点で、少々辛口に読み解いてみたいと思います。

 ここでは、印象的な表現が出てきます。
 幼い頃の友達。「彼女の描いた明るい色使いのひまわり畑の絵や、細かな細工が施されたかわいらしい動物形の木工作品は、彼女の笑顔とともに、今でもはっきりと思い出すことができる。」
 すごいですねー。この著者は基本、「視覚優位」なのだと思います。子供の頃の自分の作品ではなく、お友達の作品のことをこんなに細かにおぼえている。お恥ずかしいことにわたしはおぼえてません。全然。
 そして、「明るい色のひまわり畑の絵」この表現。ここでは、「何色」と色を特定していません。でもひまわりだから、誰もが「黄色」を思い浮かべるだろう。むしろ、「黄色」と言葉で特定しないぶん、読者の脳裏にはひときわ鮮やかな黄色が思い浮かべられるのではないか。すばらしい、文字表現の粋です。
次の「細かな細工が施されたかわいらしい動物形の木工作品」これも同じですね。動物なにかなー、クマさんかなーウサギさんかなーネズミさんかなー。明言しないことによって、読者に想像の余地を与えてくれます。むしろ自分の好きな動物のイメージをかぶせながら、いきいきと思い描くことができます。

 いや、「作文教室」の指導のノリになってしまいました。

 本題に戻ります。
 このあと、お友達は小児リウマチに侵されます。中学を卒業するころにはどんどん手が曲がっていったとある。そして先生からは、「困ったことがあったら助けてほしい」と言われていました。
 で、われらが小保方晴子さんは、どうしたでしょうか。じゃーん。
 どうも、全然何もしてあげなかったっぽいのです。

 小学校から中学までずっと同じクラス。これもある意味すごいことです。いくら少子化とはいえ、ベッドタウンの千葉県松戸市のことです。1学年1クラスということはない。だから、9年も一緒にいたら「因縁のお友達」というところだと思いますが、小保方さんは、
「私はこれまでと同じように一緒に時を過ごしていた」
「痛みはあるのだろうか、どんな気持ちでいるのだろうか、と思うと、どう接したらいいのかもわからなかった。」
というのみで、何かしてあげた形跡はありません。

 唯一、このお友達からある日「一緒に帰ろう」と言ってくれて、一緒に帰った。
「二人でゆっくり歩く、いつもの帰り道」
 これは、この二人がいつも一緒に帰っていた帰り道なんだろうか。いや、そうとは限りません。「二人でいつも一緒にゆっくり歩く帰り道」とは言ってませんもの。
 どうも、この二人はそれまでは別行動していて、この日だけお友達のほうから誘ってくれて、一緒に帰った。そういうふうにとれますね。
 でこのあと、
「何もしてあげれなかったという無力感」
とも言ってますし、たぶん本当に何もしてあげなかったんでしょう。

 なんでこういう意地のわるい読み方をするのか?
 なぜかというと、おそらくこのエピソードは、小保方さんのその後の各ステップごとに関門をくぐりぬけてきた、プレゼンの「定番エピソード」だからなのです。早大のAO入試、東京女子医科大学の修士、ひょっとしたらハーバード大バカンティ研の門戸を叩いたときも理研の門戸を叩いたときも?ずっと使ってきた、そして教授たちのハートをつかんだ「きめ」のエピソードだからです。
 このエピソード全体が言っているのは、子どもの頃仲の良かったお友達が、美しい繊細なものを作れる器用な手をもっていたのに小児リウマチに侵されその能力を奪われてしまった。自分は何もできなかった無力感。それがあるから医療分野の研究をして人類に貢献したいんだ、ということです。
 そのお友達を襲った運命の残酷さが、きく者の心を捉えます。とりわけお友達の小さい頃の作品をみる楽しさと「手が曲がっていく」ことの対比が。

 しかし。
 しつこいようですが、小保方さんはそこで何もしてないのです。
 これは、企業の採用の時に気をつけたい重要ポイント。
「あなたはそこで何をしましたか?」
と、「行動」に関わる質問をしましょう。
(詳しくは伊賀泰代『採用基準』など参照。もちろん拙著『行動承認』も)

 なぜ、「行動」を尋ねてほしいかというと、もし医療分野に従事するために重要な資質、
「病気や怪我、障害に興味がある」
「人の困りごとをみると助けずにはいられない」
(ストレングスファインダーでいうと「回復志向」ですネ)
があれば、そこで必ず何かするからです。小児リウマチというのがどんな性質をもった病気か調べたり、お友達に親身になってあれこれ世話をやいて、病気になるとはどんな気持ちなのか、どんな助けが必要か直接尋ねる、というようなことをします。
 そういう価値観のある人であれば、ほっといてもそういう行動をとり、それが喜びなのです。
 あるいは、「責任感」の高い人であると、先生から「助けてあげてね」と言われていれば、必ず人一倍お友達のお世話を焼くはずです。

・・・ちなみに、わたしは回復志向はないですが責任感だけはあるほうなので、子供時代いいことも悪いこともやりましたけれど、ある異様に無口なお友達にやたらちょっかいをかけ、ギャグツッコミをして笑わせて学年の最後のほうにはかなりしゃべるようになってくれていた、という思い出はあります。それも、「面倒をみてあげてね」と先生に言われていたからです。
 医療などはとくにしんどいことの多い仕事なので、そういう価値観とか強みをもった人でないと続けるのが難しいでしょう。ほっといても自然にそっちの方へ身体が動くという人であれば、少々のしんどいことも耐えてやり通すことができるでしょう。
 なので、適性があるかどうかをみるには、必ず「あなたはそこで何をしましたか」行動をきく質問をしてください。小保方さんはこの点、残念ながら落第っぽいです。

 ではなんで、このエピソードで「私はお友達のお世話をした」ということを、ウソでいいから入れなかったか。
 想像ですがひょっとしたら、「では具体的にどういうふうにお世話をしたか?」とつっこまれると、しどろもどろになってしまうから、でしょうかねえ・・・

 小保方さんにとって有難いことに、彼女の進学先は医療の臨床のほうではなかったのです。早稲田の応用化学、東京女子医大の組織工学。ほんとの医療ではないので、教授たちもそこまでつっこまなかったようです。単に、お友達を襲った残酷な運命、そして傍観者だった小保方さんが中学時代に一度だけこのお友達と一緒に帰った、それだけの物語で「すばらしい!」と感動してくれたっぽいのです。
 ・・・こういう採用をしちゃダメだ、という見本ですね・・・

 また、よく考えるとこのエピソードは、この本、『あの日』の構成全体の雛形ともいえるエピソードです。
 すなわち、希望と色彩感にみちた前半部分と、運命に巻き込まれ残酷な結末を迎える後半部分。
 こういうお話の構成をすると、読者や聴き手の心をつかめるようだ。
 彼女は人生を決める大事なプレゼンでこのエピソードで繰り返し成功を収め、学習してきたのではないでしょうか。そのノウハウを『あの日』で踏襲したのではないでしょうか。



蛇足 1.
 小保方さんのプレゼンする動画は、YoutubeにいくつもUPされているのでみることができます。
 たとえばこちら
>>https://www.youtube.com/watch?v=agyNRRITN-I
 残念ながらこの病気のお友達のエピソードを語ってくれてはいませんが、今見れば「青年の主張」のような小保方さんの語り口に、このお友達のエピソードは見事にぴたりとはまっています。

蛇足 2.
 中学時代にお友達から「一緒に帰ろう」と言われて一緒に帰った。
 どうもそれまでは一緒に帰ってなかったっぽい。さて、この日に限って何故、お友達が私の座る席の隣に笑顔で立っていたのだろうか。
 色々、大人なので裏読みをしてしまいます。
 これ言うとファンの方々におこられそうなんだな〜〜
 例えば、こちら。

「小保方氏の同級生が明かした『メルヘン妄想&虚言癖』」(東スポWEB 2014年3月19日)
>>http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/246439/
 ネイチャーのSTAP細胞論文の不正疑惑がどんどん明るみに出、共著者の若山照彦教授が論文撤回を呼び掛けたころに出た記事です。
 (報道けしからん!マスコミけしからん!という声もあるのですけどね、こういう理研とかの関係者以外の、現在の利害関係のない人から出た証言には一定の信憑性があります)

 上の記事は高校時代のお友達の談として、「小保方さんは虚言癖があり不思議ちゃんとして有名だった」「妄想、虚言の癖があるとみんなわかったから、仲の良かった女子の友達も離れていった」という意味のことを述べています。

 これはあくまで高校時代のお話ですが、ひょっとしたら中学までも同じようなことがあったかもしれない。何かのウソがばれて信用を失い、ほかのお友達がみんな離れていった、というような場面が。
 そういう場面に、病気のお友達が現れて「一緒に帰ろう」と言ってくれた、とすれば、このシーンは全然別の意味を持ってくるのです。
「はるちゃんは頭がいいから、将来なんにでもなれるよ」
 このお友達の言葉もそう考えると意味深なのです。


・・・


 えーと以前から毀誉褒貶の激しいかたなので、このブログでもこうした辛口レビューをすると、「小保方さんへのバッシングけしからん!」とファンの方からお叱りを受けるかと思います。
 でこの本自体にも強烈な「報道批判」が盛り込まれているので、あえて、当時の報道とりわけ理研・若山氏サイドから出たとみられる情報は避け、同じ理由で『捏造の科学者』も読むのを避け、(本当はおさぼりしてるだけなのかもしれませんが)
 できるだけこの本、『あの日』と、プラス小保方さん自身が発信した、記者会見での発言、文章、などを材料に、現役社会人の読者向けに「小保方さんの人格とどう付き合うべきか」を読み解いていきたいと思います。

 あるいは、「『あの日』を100倍楽しむ法」とかですね、
 とにかく、高学歴の男性を次々破滅させた今世紀最大の悪女なわけですので、こういう女性と同時代を生きていることをとことん楽しみながら、大人として身につけるべき知識知恵を身につけたいと思うのであります。
(でも羊頭狗肉に終わるかもしれないですけど。そうなったらゴメンナサイ)

 すみません、実はまだ全体の構成を考えてないので、今から順次記事をUPしてから各記事にインデックスを追加していきたいと思います。


これまでの記事は:

●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
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●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
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●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
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