正田佐与の 愛するこの世界

神戸の1位マネジャー育成の研修講師・正田佐与が、「承認と職場」、「よのなかカフェ」などの日常を通じて日本人と仕事の幸福な関係を語ります。現役リーダーたちが「このブログを読んでいればマネジメントがわかる」と絶賛。 現在、心ならずも「アドラー心理学批判」と「『「学力」の経済学』批判」でアクセス急増中。コメントは承認制です

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あの日



 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第11弾です。

 ちょうど先週、「週刊文春」がTVコメンテーターの「ショーン・K」の学歴詐称・職歴詐称を報じ、ショーン・Kが番組降板をする騒ぎになっていました。今回はそれに少し近い話題です。

 今回の内容です:

1.「ヒューリスティック」が私たちを誤らせる
2.「小保方プレゼン」にみる、確信と幼い一生懸命さ
3.ハロー効果:強い後ろ盾と英会話力、そして「美形」
 
 それではまいりたいと思います―


1.「ヒューリスティック」が私たちを誤らせる


 小保方晴子さんがなぜ、理研のユニットリーダーというような重要なポストに就き、Natureに投稿することまで許されていたか?

 それまでには、何人もの世界的な研究者たちが小保方さんに騙されていたことになります。
 なぜ、彼らは騙されたのだろう。
 そこには、上司・指導者たちの要因と小保方晴子さん自身の類まれなる資質があります。
 今回の記事では、小保方さん側の資質。どういうやり方で彼女がすり抜けていったのかを、みてみたいと思います。
 このシリーズの(6)「私の会社でも」―読者からのお便り でみたように、類似の“事件”は企業社会のあちこちで起こっています。社長、株主、といった人たちが次々と騙されていきます。ですので、「まさか」と思われるかもしれませんが、トラブルの種は身近なところにあると思って、この事件から学べることを最大限学習していきましょう。




 わたしたちは、いくつかの判断材料がそろうと、それを基に「〜だから、〜だろう」と推論をする癖があります。
 そうした類推を「ヒューリスティック(自動思考)」といいます。それはわたしたちが日々、多数の事柄を扱い判断していく必要上生まれたもの。どんな人も毎日どこかでヒューリスティックをしていることを免れません。実務経験豊かな、「自分は判断力がある」「自分は人をみる目がある」と自信のある人ほど、日常的にヒューリスティックを使っていることでしょう。

 ところが、ヒューリスティックがわたしたちを誤らせることもあるのは確かなのです。
 その典型が、「小保方晴子さんの出世物語」であるといえます。
 さて、そこにはどんなヒューリスティックが働いたのでしょう。

※なお、「ヒューリスティック」に俄然ご興味が湧いたという方は、このブログのカテゴリ
「判断を歪めるもの(ヒューリスティック・バイアス・ステレオタイプ)」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/cat_50056283.html
を、ご参照ください。良質な参考文献もご紹介しています




2.「小保方プレゼン」にみる、確信と幼い一生懸命さ



 小保方さんの「売り」は、なんと言ってもそのプレゼン能力。

 是非、過去の学会発表の様子までみてみたいものですが、残念ながらそれらは動画の資料がありません。
 今ウェブ上でみられるのは、
(1)2014年1月28日、STAP論文のNature掲載を記者発表したときのもの
   (5分強の動画)
(2)同年4月9日、小保方さん自身による釈明会見
   (2時間〜2時間30分の動画)

 です。ご興味のある方はご自身でご覧になってみてくださいね。
 簡単に言うとここには「確信あるポーズ」と「青年の主張ポーズ」というテクニックが入っています。

(1) は、われらが小保方晴子さんが一躍、お茶の間の時の人となった記念すべきプレ ゼンです。
これをきいてみると、非常に上手いプレゼンであることがわかります。

「…隠された細胞メカニズムを発見しました」
「…胎盤にも胎児にもなれるという特徴的な分化能を有していることがわかりました」
「…2種類の細胞株を取得することに成功しました」

 「えーと」「あのー」などの「つなぎ」の言葉が一切入らない。それぞれのセンテンスの語尾まで迷いなくきれいに言いきっています。聴衆に向ける笑顔に曇りひとつありません。

 そして最後の決め、
「もしかしたら夢の若返りも目指していけるのではと考えております」
 この言葉は内容的にはすごく飛躍しているのですが、きれいなよく通る発声を維持したまま、確信をもって発音しています。ですのでこの言葉を頼りに、一時の夢をみてしまった高齢者のかたも多いようです。

 これらが、聞き手にとってどのような効果をもたらすか。
「ここまで迷いなく言い切れるのは、何度も実験に成功し、自分の中に確信があるからだろう」
 普通の人は、そう思います。

 それはわたしたち自身が、そうだからなのですね。大勢の人の前で話すということは非常に緊張するものです。そこで確信をもって語尾まできっぱり言い切れる、感情的なブレもなく、というのは、自分が何度も経験した上で確信を持っているからに違いない。わたしたちのうちほとんどの人が、そうでないとそのようなプレゼンは出来ないものです。

 しかし、そうした類推(ヒューリスティック)を裏切るのが、小保方さんのプレゼンです。

 前々回の記事(9)「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻 をお読みになった方なら、小保方さんは、「テラトーマができていない」という致命的な欠陥を隠したまま論文を書き、このプレゼンを行ったことがわかります。

 しかし、そういう「瑕疵」の匂いを一切感じさせない。可愛らしい満面の笑みを浮かべながら、伸びやかな発声でよどみなく、達成してきたことと今後のシナリオまで言い切ります。
 これが、「小保方プレゼン」の凄さです。
 プレゼンだけをきいたら、物凄く優秀な研究者であるように見えます。

 (もっとも、多くの偽健康食品や投資詐欺などの説明会で講師を務める人は、得てしてこういうものなのかもしれません)


(2)4月の釈明会見

 非常に長い動画ですが、ここでの小保方さんは1月のプレゼントはまた別の顔をみせます。
 まず、髪はシンプルなハーフアップ。フィット&フレアーのすっきりしたシルエットの紺のワンピース。
 プレゼンの口調は、1月の時よりはやや甲高くか細く、単調。ごくまれに質問に答えて「あのー」が出る以外はやはりよどみがありません。

 そして顔の表情。この『あの日』出版以後は、この会見の時の顔写真がTVでも頻繁に使われています。少しうつむき加減の、今にも泣きだしそうな表情。唇は小さく形よく結んでいることが多く、お雛様のよう。1月の時より一段階、あどけなく可愛らしい印象になります。

 お顔の表情だけを拝見すると、30歳の人というよりは、女子大生、いや女子中学生、下手をすると小学生のような印象です。

 見ていて胸が痛くなります。こんな幼い弱々しい表情をしているんだから、ちょっと刺激したら泣き出してしまうんじゃないか―。しかし小保方さん、2時間以上にわたって口調は変わりません。涙を流した場面もありましたが、また今にも泣き崩れそうに涙声が混じりかけた場面もありましたが、語尾に震えなどは一切入りません。その状態のまま、きれいに各センテンスを言い切っています。

 あの有名なフレーズ
「STAP細胞は、あります」
 この言葉は目をぱっちり大きく見開いてまじまじと質問を発した記者を見つめ、軽くうなずきを入れながら、児童劇団のセリフのようにはっきり発音されています。

 全体として、これによく似た若い人のプレゼンを見た、と思ったのは、そう、「青年の主張」です。
 小さな、取るに足らない存在の私。無力な私。その私が一生懸命実験をした、一生懸命やった。その中に一部、ミスがあったけれどそれは未熟な私がしたことなんです。全体としては良い意図をもってやっているので許してください。やや甲高い声のトーン、幼さと一生懸命さを印象づける顔の表情、いかにも「青年の主張」という感じです。

 ただ当時30歳という年齢や、修士時代から7年間の華麗な研究者履歴を考え、またNatureという世界の研究者が羨む雑誌への掲載という研究者としての円熟のステージを考えると、本当は幼い表情も「青年の主張」ポーズも、ちょっと無理があるのですが・・・。
 その無理を強引に押し切ってしまうのが小保方さんなのでした。

 このシリーズを執筆し始めてから友人と対話したところでは、友人の中でも聡明な、しかし非常に優しい人が、この時の会見で小保方さんに同情したことがわかりました。
「優しい」人の心をつかむプレゼン術を心得ている、したたかな小保方晴子さんなのでした。

 ここでも同じです。顔の表情や声のトーンをそのように調整し、よどみを作らないことで、小保方晴子さんは「一生懸命な、悪くない私」を演出してしまっています。

 そして、それを聴いているみているわたしたちの側にある「ヒューリスティック」とは。

「こんなに若くて、良家のお嬢さん風のあどけない顔立ちの女性が、一生懸命な面持ちでブレずに話しているのだから、悪いことをするわけがない」

 そういうヒューリスティックがわたしたちの中にあります。なまじ人生経験が豊富だからと、わたしたちの頭の中に刻まれている推論が、わたしたちを正しく考えることを妨げます。

 (1)(2)をまとめますと、(1)は「成果が上がりました!」というときの、経験豊富で確信に満ちた自分を演出するプレゼン。
 (2)は、小さい幼い自分と、一生懸命な良い意図をもった自分を演出するプレゼン。

 これまでの人生で、小保方さんは、この(1)(2)を上手く使い分けてきたことが想像されます。
 例えば、早稲田のAO入試や、「日本学術振興会特別研究員DC1」の取得のための「情に訴える」プレゼンなら幼く一生懸命な(2)を。
 また学会発表や、理研ユニットリーダーへの応募のプレゼンなら確信に満ちた(1)を。
 あるいは場合によって、(1)(2)の混合を。

 『あの日』には、2012年12月、理研ユニットリーダーに応募しプレゼンを行った小保方晴子さんが、そこで故笹井芳樹氏(理研グループディレクター=当時。のち理研CDB副センター長。2014年8月没)と出会ったくだりが書かれています。
 ここでも、笹井氏は小保方さんのプレゼンに「コロッと」騙されてしまったようです。

 多くの人が、「笹井氏ほどの人が何故騙されたのか?」と疑問を投げかけるのですが、小保方さんのプレゼン能力というのはそれほど凄いのだ、というしかないでしょう。恐らく、2007年以来様々な学会に顔を出す中で、経験豊富な研究者の口調や仕草などを物にしていったことでしょう。また上手くいかないところがあっても細部まで辻褄を合わせるテクニックも発達させていたでしょう。
(注:笹井氏側の「騙されやすかった」要因については、次回の記事で取り上げたいと思います)

 しかし、ウソをつき通した末にSTAP論文が大々的に発表になり、世間の注目を集めたことで不正が追及されることになる、というところまでは、小保方さんは想像力が働かなかったのでした。



3.ハロー効果:強い後ろ盾と英会話力、そして「美形」


「高名な学者たちが、本当は中身のない小保方晴子さんに何故騙されたのか?」

 だれもが抱く疑問です。

 この問いには、小保方晴子さんの7年間の研究者人生の後半の方で出会う学者たちについては、「ハロー効果」で説明できます。これもヒューリスティックの1つです。

 つまり、前任者の上司や指導者たちが「この人は優秀だから」と太鼓判を押してくれていると、それは「ハロー効果」となって小保方晴子さんを全面的に信用する材料になってしまいます。

 2010年、神戸の理研CDBに初めて行った頃の小保方さんは、それ以前の早稲田大学、東京女子医科大学、ハーバード大学時代の評価が積み上がっていました。ハーバードのチャールズ・バカンティ氏、東京女子医大の大和雅之教授、といった高名な学者たちの推薦もかちえていました。博士課程の学生の中でも最も優秀な人だけが貰える「日本学術振興会特別研究員DC1」を取得していることも、ハロー効果の材料になります。

 そうした「後光」の差すような教授たちの推薦という美しいアクセサリを身につけた小保方さん。その彼女に対しては毎日延々と長時間の実験をし、土日も出勤して実験し、成果が上がっているのかどうかはっきり分からなくても、それを疑問視したりはしません。「実験ノートを見せて」などと、初心者に言うような野暮なことも言いません。
(小保方さんの事件以後、この点は多くの研究機関で大分改善されたようですが)


 「ハロー効果」を補強するものとして、小保方さんの英会話能力も挙げられるかもしれません。ハーバード仕込み、非常に流暢に話す人だったようです。想像ですが、日本語でもこれだけ「感情表現」を沢山織り交ぜて話す小保方さんなので、英語でも普通以上に「感情語」を多用したかもしれないですね。その結果、ロジカルな会話しかできない多くの研究者と異なり、会話が弾んだかもしれないですね。英語に弱いとされる若山照彦氏(理研チームリーダー、のち山梨大教授)などにとっては、頭の上がらない存在だったかもしれません。

 これも、ビジネスの世界では「英語ができる」が過大評価されることが往々にしてありますので、気をつけたいところです。小保方晴子さんのように、能力の凸凹が大きいなかで言語能力だけが突出して高い人が、英会話が得意であるというのは珍しいことではありません。やはり「あくまで色々な能力の中の1つ」と考え、実行/責任に関わる能力を常に第一にみたほうがいいでしょう。


 ・・・えっ、「あれ」を忘れているだろうって?
 そうでした。
 第8回 「『キラキラ女子』の栄光と転落、『朝ドラヒロイン』が裁かれる日」でもとりあげましたが、「お顔」「見た目」という要素、やはり大きいですね。

 大きくていい、というつもりはないですよ。容姿などではなく、実力で選ばれるのが理想です。ただ現実には大きいです、残念ながら。
 研修講師のわたしからみて、「えっ?」と思うような、明らかに人格が悪いとか能力が低い人を、お顔がキレイだからと、マネジャーに引き上げようとするトップの方、いらっしゃいますね。

 部下側の人に「上司との関係」をきいていくうち、「人格が悪いけどお顔がキレイな人が、やっぱりマネジャーになりやすい」という声はきかれました。

 というわけで「見た目ヒューリスティック」「美形ヒューリスティック」というもの、やはり存在しそうです。

 ショーンK氏問題に絡めて、May_Roma氏は

「最も効率のよい投資は自分への投資だと言われています。ショーンK氏の件でわかったことは、成功するために最もコスパが高いのは整形だということです」

と、身も蓋もないことを言います。

 




 今回のまとめです。

(1) 自信満々なプレゼン
(2) 幼い、一生懸命な自分を演出するプレゼン
(3) 高名な人からの推薦
(4) 英会話力など外国語能力
(5) きれいな・かっこいい見た目

 ある人がこれらを持っているからと言って、うっかり信用しないようにしましょう。
 もちろん、これらを持っている人が「本物」である場合もあります。しっかりと言葉の裏をとり、細部まで確認しましょう。「事実」と「行動」が最も重要なのです。

 先週発覚した、ショーン・Kの経歴詐称事件は、ウソつきの人が長期間、東京キー局のTVコメンテーターという目立つ場所に起用されていて、誰もその経歴を疑わなかったという現象でもありました。
 人の言葉(表示も)をうっかり信用せず、細かく裏をとる作業、大事ですね。スマホ時代でわたしたちはどうしても認知的負荷をサボりがちになります。気をつけたいところです。


 次回は、騙された側の上司たちには、何が起こっていたのか?正田と同世代の「おじさん」たちの心理を読み解きます。



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


  小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第10弾です。

 今回の内容は:

1.「STAP細胞はありませんでした」と研究不正
2.「ぶっちゃけ小保方さん大嫌い」なぜ、このシリーズを書き続けるか
3.ネット世界と現実世界のギャップ


 それではまいりたいと思います―


1.「STAP細胞はありませんでした」と研究不正


 まず、前回のおさらいです。

社会人のための「小保方手記」解読講座(9)「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html


 この記事のポイントは「STAP細胞はありません」。

 小保方晴子さんが「夢の若返りも可能です」と声を張り上げて主張した、万能細胞のSTAP細胞なるものは、存在しません。
 多能性を証明するための肝心のテラトーマ(奇形腫)ができていなかった。小保方さんがそれを隠し通して、研究を続け周りの人を巻き込みNatureにまで掲載させたことで、死者まで出る騒動になった。これがSTAP事件の根幹だ、ということです。

 その、一番都合の悪いことを、ウソだらけのこの本の中で小保方さん自身が「ぽろっ」と書いてしまったところに、この本の価値があります。
「STAP細胞はあります!」
 もう、あの魔法の杖は使えないのです。

 自慢ではありますが上記の(9)の記事をアップした12日(土)の夜、理研のサーバーからもこの記事にアクセスがありました。ひょっとしたら、『あの日』の出版以来苦虫をかみつぶした顔で推移を見守ってきた理研の現在の研究者たちも、この本に「不都合な真実」が書いてあることがわかって胸をなで下ろしたかもしれませんね。

 また、小保方さんの行った「悪事」の程度を確認しておきたいと思います。これも上記の記事の末尾部分に書きましたので、ご覧にならなかった方も多いかも。再掲します。

「「論文不正」ではなく「研究不正」、
 これも、仁さんのこのすぐ上のコメントに出ていますね。
 そのようにこの問題を捉えないといけません。
 うっかりミスで論文に瑕疵をつくったわけではない、そもそもの出発点でできていないものをできたと言い、研究をすすめたことの結果が論文不正であり、全体として「研究不正」と捉えるべきなのです。

 だから、小保方晴子さんが今、研究界から追放された状態になっているのも、身から出た錆、仕方のないことなのです。」


 本シリーズ読者の皆様は、このことも是非、押さえておいてください。

「小保方さんが小さないくつかのミスのために研究者生命を絶たれるのは可哀想」
「若い研究者の将来を奪っていいのか」

 これらの同情論は、当たっていません。小保方さんは、自分のしたことの大きさのために順当な制裁を受けたのです。これは野球賭博や八百長相撲を行った選手や力士が永久追放になるのと同じです。



2.「ぶっちゃけ、小保方さん大嫌い」なぜ、このシリーズを書き続けるか

 『あの日』出版以来、多くの論者がネット上にも意見をUPしています。批判派、同情派、賛否両論入り乱れています。

 3月13日(日)の朝日新聞書評では、この本をかなり好意的に取り上げました。

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 (略)
 …いわば、まわりの大人たちに振り回されながら、その期待に応えようとして、本人は一生懸命頑張る涙と根性の物語である。研究者の複雑な人間関係、主人公が女性であるがゆえの周囲の特別視といった側面からも読めるだろう。あえてジャンル名を与えるとすれば「少女サイエンス“ノン”フィクション」とでも呼ぶべきか。あまり読んだことがなく、だからこそ面白い。が、これが現実とリンクしていることが最大の驚きだ。
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 残念ながら、本シリーズで指摘している「STAP細胞はなかった」この重要ポイントへの言及は、なかったですね。東北大学教授の書評子さんです。
 お蔭で、止まったかにみえていたAmazonでの売上もベストセラー184位から64位と、息をふきかえした感があります。

 で、本シリーズのスタンスはどうなのか、というと。
 正直、ぶっちゃけ、正田はこの本の著者のことは「大嫌い」であります。(あ、初めて言っちゃいました)あの「STAP細胞はあります!」の会見にも嫌悪感しか抱きませんでした。このシリーズの毎回の記事を、吐き気をこらえながら執筆しています。ウソ、妄想、他責、被害者意識にまみれた本だと思っています。

 なんでじゃあ、そこまでしてこのシリーズを執筆するのか、と思われますでしょうか。

 それは、「社会人の分断」を危惧する立場からです。

 わたしはもともとはこの本のことも購入する予定はありませんでした。「印税稼ぎ」の意図が見え見えで、不快感の塊でした。
 ところが、Amazonレビューを見ているうち、とりわけ前回の記事に登場したパルサさんのレビューを見るうち、
「そうか、ウソだらけの本ではあっても著者自身が自分に都合の悪いことを漏らしている部分があるのか」
と気づき、そこで初めて価値を認めてAmazonの中古で購入したわけです。

 そうなのです、この本は「研究不正」に関心のある人にとっては一級の資料と思います。資料として持っておきたい方は、かつ著者に印税を渡したくないという方は、中古で購入なさってください。



 それはともかく。
 第8回にも書きましたが、この本の読者層が、主に若手社会人と高齢者層らしいということ。
 そのうち若手社会人は、アドラー心理学の『嫌われる勇気』の読者層と重なるということ。

 このことを考えると、この本『あの日』は、また新たな社会人の中の上司世代―部下世代の分断の火ダネになるかもしれないな、と思っています。
 まさか、と思われますでしょうか。


 『嫌われる勇気』のときも、わたしは30代若手リーダー層との間に目に見えない壁を感じていました。『嫌われる勇気』は、会社にも上司にも不信感をもつ若手向けに、「周囲に認められることを期待するな。自分の軸で生きよ」と、「精神的マッチョの教え」を勧める本です。

 いわば、欧米的「アトム型自己観」の極端なものを植え付ける教えと言ってもいい。そこへ、わたしがやっているような、「人は本来他者とのつながりを前提に自己をつくり、仕事をするものだ」という「承認論」のマネジメントを説いても、まったく受け付けられないのです。
 その「受けつけない」態度は、一種の洗脳のようにも感じました。
 
 それと同じ効果が、この本『あの日』に、あるのではないだろうか。
 それは26万部という、ベストセラーとはいえ「微妙」な部数ではあっても、今からジワジワと人の心に影響を与えるのではないだろうか。


 多数の良心的な識者の方がネット上にこの本と著者に対する批判のコメントや記事を書かれています。
 ただ、それをみて不肖わたしが思うのは、「批判」するのはむしろ簡単だということです。一瞬で切って捨てること、嫌悪の感情をまぶしてこの本を語ること。心ある人にとっては自然な行動ですが、それだけではこの本に心情的に吸い寄せられた人たちには説得力がない、ということです。

 わたしも、本音ではそうしたい。
でも、それだと対話の糸が切れてしまいます。うっかり、この本に感情移入して読んでしまった人たちと永遠に話が通じないままになってしまいます。



 このシリーズ継続中にも、企業の管理職研修では40-50代の管理職の悩みとして、「若手と話が通じない」ということが挙がります。
 もし、管理職側の正当な努力にもかかわらず若手側に「心の壁」が作られていてしまったら―、それを崩すのは、容易ではありません。



 この本は、たとえば昨年6月に出版された『絶歌』などとは、また違う種類のインパクトがあります。現実の職場を舞台にし、現実にいる、どこにでもいそうな男性上司たちが登場するからです。
 理研チームリーダー(当時)だった若山照彦氏の言動1つ1つを再現して、若山氏の異常性を強調するように、また著者自身の被害者意識をたっぷりまぶして書いています。
 読者にはそれが事実か否か知るすべもなく、極めて具体的に記述されているのでよほど注意深く読まないと事実と信じ込んでしまいます。この本に感情移入した人は若山氏が悪人であることを刷り込まれていきます。

 そうして、「上司=悪」と学習した若い人々は、自分の職場の上司たちにも若山氏との共通点を何かしら見出し、不信感を募らせるための口実とすることでしょう。


 もうひとつの時代背景として、「総スマホ依存」。いまや、電車に乗ってスマホ、タブレットに向かっていない社会人世代などないと言っていいくらいです。そしてスマホ育ちの若い人たちの、脳機能の偏りや行動力不足が指摘されています。

 行動しなければ、上司から叱責される頻度も高くなる。仕事の現場とはそういうものです。ところがそのために若い働き手たちの未熟な自己愛が刺激され、ちょっとしたキッカケで被害者意識を募らせ、キレたり上司に憎悪を募らせる可能性というのはたぶんにあります。
 そのように、「弱い若い人をますます弱くする」場合によっては、恐ろしい作用を持つ本であります。



3.ネット世界と現実世界のギャップ:「晴子さん」が跋扈する?ネット世界



 小保方晴子さんのプロファイリングについては、このシリーズで下記に取り上げましたが、
(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html 

(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html 

 ・・・が、ここに挙げた見方はまだ「甘い」のかもしれません。

 巷には、もっとはるかに厳しい見方が溢れています。

 『虚言症、嘘つきは病気か DR.林のこころと脳の相談室特別編(林 公一、impress Quickbooks,Kindle版、2014年8月)には、小保方晴子さんとそっくりな、自分を盛ってしまう・研究のデータすら捏造してしまう人物の事例のオンパレードです。これらを、著者は「自己愛性人格障害」「演技性人格障害」と名づけます。

 『自己愛モンスター―「認められたい」という病』(片田珠美、ポプラ新書、2016年3月)では、小保方晴子さんを名指しで取り上げ、
「私の見立てでは、小保方さんは『空想虚言症』である」
としています。

 こうした、疾患名を挙げる作業は、専門医のかたにお任せしておこうかな、と思います。ただし、このブログでいう「ASD-ADHD」の「能力の凸凹」は、それ単体では何の罪もないものであっても、生育環境や世渡りしてきた状況によっては、こうした「病気」に発展する可能性のあるものだ、と言えるでしょう。悪い面を助長してしまうような子育てがあったかもしれない。また変に能力の一番高いところに合わせたプライドを形づくってしまうと、小保方さんが「研究者になりたい」と今も望み続けるような、身の丈に合わないプライドになってしまうかもしれません。
 そしてそうした疾患名のつく段階になってしまうと、残念ながら「異常人格」として恐怖や嫌悪の対象になったりするものです。

 小保方晴子さんのしてきたことについても、わたし個人はやはり、嫌悪の念を隠せないでいます。
 それは、男性上司たちの「引き」で、ご本人の能力よりはるかに高いところまで引き上げてもらいそのことに一点の疑問も感じずにいたらしいこと、そして過剰な上昇志向の帰結として「テラトーマできてないやんけ!」を隠し通したままSTAP研究を推進していたこと、若山氏や笹井氏といった高名な学者たちを巻き込み、笹井氏に至っては死に至らしめてしまったこと。そしてこの本、『あの日』を出版して若山氏を悪者扱いしたこと。

 「STAP細胞はありませんでした。」ここを起点に、小保方さんのしたことの全体像が明らかになればなるほど、そこに嫌悪の感情を持たずにはいられません。

 しかし。
 
 大人世代のこうした冷ややかな視線をよそに、ネット世界には案外、小保方さんへの同情論・擁護論が溢れている現実があります。

 Amazonレビューでは本日現在、全702レビュー中★5つが421、★1つが140、平均3.9。

 これを昨年6月に出版された『絶歌』(元少年A、太田出版)と比べてみましょう。本日現在、全2,109レビュー中★5つが248、★1つが1,577、平均1.7です。
 ですので一般的に「良書」といわれる本のレビューの水準には届かないものの、ワルイコトをして処分を受けた人の手記としては、大いに健闘しているといえます。
(ちなみに『あの日』の評価、他店でみると楽天ブックスでは4.65、ヨドバシカメラ3.62でした)


 そして、擁護レビューの内容をみると、先にも挙げたように
「若い研究者の未来を潰していいのか」
「小さなミスで小保方さんだけが責められるのはおかしい」
といった感情論。
「こうして若い人にすべてを押しつける組織の風潮はある」
といった、同世代の人らしき自分に惹きつけた同調論。
あるいは「STAP細胞はある」に立脚した、どこかの巨大組織によるSTAP研究潰しがあった、という「陰謀論」。

 ―陰謀論の側からは、今盛んにKindle本が出版されています。「STAP細胞はあります」であったほうが、陰謀論の方々は際限なくSTAP細胞と小保方晴子さんを使ってご商売ができるのです。

 現実世界とのつながりが弱く、ネットから主な情報を取り込む若い人がこうした言説から影響を受けないか、というのは、大変心配になります。
 

 わたしがこの「社会人のための『小保方手記』解読講座」を書き続けるのは、こうした若い人たちに何とか「届く言葉」を書きたい。また現場で若い人たちをみておられる上司の方々にも、同様に「届く言葉」を語っていただきたい。両方をつなぐ言葉を書きたい。それに尽きるように思います。



 本シリーズ今後は:

●小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
●情けないぞおじさんたち!バブル世代の「ええかっこしい」上司群と欲得上司群


 ・・・といったことを、取り上げたいと思います。
 読者の皆様、どうか応援よろしくお願いいたします!m(_ _)m



 おまけ:19日(土)、久しぶりに発達障害をもつ大人の会さんの会合にお出かけしてきました。

 1人、「空想に入ってしまう」タイプの発達障害(診断名は「広汎性発達障害(PDD)」)の方にお会いし、少し詳しくお話をきかせていただきました。
 仕事で入力作業をしていても途中から空想に入ってしまう。空想の内容は、過去の嫌な思い出のときもあるし、理想のなりたい自分のときもある。周りの人と上手くコミュニケーションが取れている状態の自分や、有名人ではこれまで政治家、野球選手、サッカー選手になったことがある。
 政治家になったときは、どんなか。演説している自分を向こう側にみているときもあるし、自分の身体がそれをしているようなときもある。野球、サッカーなどでは、実際にプレーしているかのように自分の身体もかるく振動する。
 子供の頃から、勉強をしていても空想に入ってしまう。先生の話を続けてきいていられない。だから成績は悪かった。子供の頃の空想は、クラスの人気者になっているさまを思い浮かべるなど。

 この方は幸い、空想と現実を混同してウソをついてしまうようなことはない方のようでした。障碍者手帳をとり、障害者枠で働いていました。
 この会合にくる方々はそんな色々な形質について潔く認めている方々なので、ほっとすると同時に、人の多様性の豊かさというものに改めて目を開かされるのでした。

 またこの会で、小保方晴子さんの代理人、三木秀夫弁護士が、2014年当時「発達障害について知りたい」と周囲に語っていた、というお話も伺いました。



2016年3月25日追記:

 今月19日付で「アメリカのSTAP細胞研究」なる情報が飛び交い、
「STAP細胞は本当はあったのではないか」
「小保方さんはハメられたのではないか」
という、「陰謀論」がネットで再燃しています。

 iMuSCs(損傷誘導性の筋肉由来幹様細胞)というものを、アメリカの研究者グループが発見したが、これはSTAP細胞と同じアイデアではないのか?盗まれ、海を渡ったのではないか?

 これについては、当ブログでは否定しておきます。
 (9)でも登場された、Amazonレビュアーで研究者の「仁」さんのコメントを引用しておきます。

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iMuSCsをSTAP細胞と同列に論じるのは、拙速だと思います。
もともと体内にあった多能性成体幹細胞を単離した、という議論の延長線上で捉えることもできるので。この議論は、21世紀に入ってからのトレンドです。

以下、発表年順に私の知るものを並べますので、詳細は、個別に検索してみてください。
MAPC(2001年 Catherine Verfaille)、MIAMI 細胞(2004年 Paul C. Schiller )、VSEL(2006年 Mariusz Z. Ratajczak )、BLSC(2007年 Henry E. Young )、Muse細胞(2010年 出澤真理)、Muse-AT(2013年 Gregorio Chazenbalk)

Muse(Multi-lineage differentiating Stress Enduring)細胞については、『あの日』でも紹介されていました。
また、『あの日』では、小保方氏が2008年までの先行研究を整理したことが述べられていますが、上記の多能性成体幹細胞についても、調べたことと思います。
幹細胞生物学が専門ではない私でも知っているくらいですから。

また、STAP細胞のように、「体細胞を多能性細胞に初期化する方法」については、小保方氏が取り組む前から、既に日本で研究されていました。
STAP細胞のアイディアそのものが、二番煎じという側面があります。

奇しくも、小保方氏が若山研でテラトーマを作成するため、STAP「様」細胞の移植実験を行ったその前日(2012年12月26日)に、熊本大学准教授の太田氏による研究がPLOS ONE誌に掲載されました。
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0051866
本件は、2012年末に、日経新聞で取り上げられています。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG29011_Q2A231C1CR8000/

熊本大学は、上記論文の技術に関して、5年近く前(2011年7月11日)に国内特許を出願しています。翌年(2012年7月)には、国際特許も出願されました。
・発酵能を有する細菌を用いた多能性細胞の製造方法
http://jstore.jst.go.jp/nationalPatentDetail.html?pat_id=33241

いずれにせよ、小保方氏の方法では、小保方氏自身がSTAP細胞を用いたテラトーマの作成に失敗しており、多能性は証明できませんでした。
したがって、小保方氏の方法ではSTAP細胞を作成できない、という点については、誰がどんな発表を行おうと、未だ完全に否定されている状況に、何ら変わりありません。


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 また、このiMuSCs(損傷誘導性の筋肉由来幹様細胞)の論文が掲載されたのは、Nature Scientific Reports (ネイチャー・サイエンティフィック・リポーツ)という雑誌で、ネイチャー・グループの発行する雑誌ではありますが、他の雑誌でリジェクトされた論文もどんどん掲載する、査読のゆるい雑誌です。追試などはしていません。ですのでこの研究に再現性があるかどうかはまったくわからない、というものです。

●Nature Scientific Reportsの掲載基準はこちら
>>http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/journal-information/faq#q2



これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


 小保方晴子さんの手記『あの日』(講談社、2016年1月)の読書日記 第9弾です。

 今回は、また別の話題。

「人間的側面はいいから、STAP細胞って本当にあったの?そこが知りたいよ」
というお声も、主に男性諸氏からききました。

 そうした声にお応えして、今回は「STAP細胞はあったのか」そして「研究不正の全体像はなんだったのか」これをテーマにしたいと思います。そのなかで「誰がわるかったのか」の問題にも触れたいと思います。


1)「テラトーマができていない!」
2)マウス系統の謎:若山氏の”陰謀”を推理する!
3)仁さんレビュー(研究不正の全容の仮説とさらなる疑義)
4)STAP細胞とは、結局なんだったのか ⇒ 「多能性細胞」ではなく「自家蛍光細胞」

 それではまいりたいと思います―


1)「テラトーマができていない!」


 「ネイチャー」に掲載された2報のSTAP論文については、理研調査委員会の最終報告書「研究論文に関する調査報告書」(2014年12月25日)が公表されており、下記からみることができます。

>>http://www3.riken.jp/stap/j/c13document5.pdf  この報告書では結論で、
「本調査により、STAP 細胞が多能性を持つというこの論文の主な結論が否定され た問題である。その証拠となるべき STAP 幹細胞、FI 幹細胞、キメラ、テラトーマは、すべ て ES 細胞の混入に由来する、あるいはそれで説明できることが科学的な証拠で明らかにな った。」
と締めくくっています。すなわち、「すべてがES細胞混入によるものだった」いわば、「ES混入説」と呼べるものです。

 しかし、これでは今ひとつ説明しきれない部分があり、様々な陰謀論の種になってきました。「小保方さんはハメられた!」という方々は、例外なくこの理研報告書および「ES混入説」を根拠にしています。
ところが、小保方晴子さん自身の手記『あの日』を読み解くことで真相に迫ろうとした人々が、Amazonレビュアーの中にいらっしゃいました。

 STAP論文の「ネイチャー」投稿後、PubPeerや2ちゃんねるの匿名の投稿者が一斉に「ネット査読」を開始し、画像の不正や使い回しなどを洗い出しました。そこまでの規模とはいきませんが、『あの日』についてもちょっとした「ネット査読」のようなものがあったのです。
これらの作業を行った匿名のレビュアーさん方に敬意を表しつつ、そこで行われた発見をまとめたいと思います。

 (なお、匿名のAmazonレビューの中の議論を引用することが正しいか?というと、知人のある研究者の見解では、「例えばある論文の妥当性を議論するときにPubPeerでの議論を引用することはアカデミズムの世界でもあるので、問題ないのでは」ということでした)

 ここでの重要ポイントは「テラトーマができていない!」
 『あの日』から引用してみますと……。

 2008年、博士課程に進んでハーバード大・バカンティ研に留学することができた小保方さん。
バカンティ教授の提唱する「スポアライクステムセル」仮説を私が証明しよう!と勇んで実験を開始します。
スフェア細胞が、そのスポアライクステムセルだと見当をつけ、それが多能性を持つものだということを段階を踏んで立証しようとします。多能性を証明するためには、3つの条件をクリアしないといけません。

 小保方さん自身の記述によれば、

「現在、細胞の多能性を示すには、3つの方法がある。1つ目は培養系での分化培養実験で、三胚葉系の細胞に分化可能であることを示すこと。2つ目は免疫不全マウスの生体内への移植で、自発的な三胚葉由来すべての組織形成(テラトーマ形成)が観察されること。3つ目はキメラマウスの作製が可能であることを示すこと。この順に、細胞の多能性の証明の厳密さが増すが、同時に技術的な難易度も上がる。」(『あの日』p.54)

 すなわち、
幅広い細胞種に分化できることを証明する
テラトーマ(奇形種)を形成することを示す
キメラマウスの作製が可能であることを示す
ことが条件となります。

 そこで、小保方さんは,良広い細胞種に分化できることを同じバカンティ研の仲間と時間をかけて証明。
 次の段階、▲謄薀函璽泙侶狙に挑戦します。
 ところが……。

「ただ注入するだけではテラトーマを形成することはなかった。しかし、研究室が得意としていた組織工学の技術を使ってテラトーマに似た組織を作ることができた。」(p.55)
と、言っています。
ここはうっかりすると読みとばしますが、重要な記述です。何を言っているかお分かりになりますか。
まず、「ただ注入するだけではテラトーマを形成することはなかった。」テラトーマはできなかったのです。
ところが、
「しかし、研究室が得意としていた組織工学の技術を使ってテラトーマに似た組織を作ることができた。」

 これはどういうことか。つまり、本物のテラトーマができないのでまがい物を作ってお茶を濁した、ということです。この書き方でいうと、ES細胞由来のテラトーマを作ったのではないのだろうと思われます。そうだとしたら「テラトーマに似た組織」という言い方はしませんから。

「研究室が得意としていた組織工学の技術を使って」

 想像ですが恐らく、バカンティマウスを作ったバカンティ研のこと。「金型と軟骨組織で作った人間の耳の形をしたものを背中にくっつけたマウス」のような、科学的にはまったく意味のない肉の盛り上がりを作ったのだろうと思われます。このテラトーマが実際に何でできていたのかは、今となってはわかりません。

 このあと小保方さんはここまでの実験結果を基に「スフェア細胞は多能性を有する」ことを主張する論文を雑誌に投稿したが、あえなくリジェクト。その時の査読意見で、「掲載はキメラマウスを作製することが条件となる」と言われました。

 ということは、その論文では多能性の証明の´△泙任蓮△任たことにしていたと考えられます。「テラトーマに似た組織を作れた(テラトーマはできなかった)」では、多能性を主張する論文としては体をなしていないですね。査読意見も、キメラマウスより「まず、テラトーマを作製してください」ということになったと思われます。

 そして、この論文のリジェクトを契機に、「キメラマウスを作るしかない」とバカンティ研内の意見がまとまりました。しかしバカンティ研にはキメラマウス作製の設備はない。

 そこで、小保方さんは理研の若山研究室の門戸を叩くことになりました。世界で初めてクローンマウスを作製、世界一のキメラマウス作製の腕を持つ若山照彦氏にキメラマウス作製をお願いすることになったのです。このあたりの経緯が『あの日』p.54~62に載っています。

 この流れは、大事です。押さえておいてくださいね。

 小保方晴子さんを擁護する人は、このすぐあとの展開で、「キメラマウス作製するしかないよ、うんうん」と前のめりになっている若山氏の様子(小保方さん描写による)をみて、「若山氏こそがSTAP研究の主導者であり、論文不正の責任も本来若山氏にある」と、うっかり誤解されているようです。

 でも本来の経緯は、小保方晴子さんがSTAP細胞の多能性を証明する 銑の最後の段階を若山氏にお願いしに行った、若山氏はリレーの最後の走者を頼まれてやっただけ、ということです。そしてそのリレー全体の企画発案者は、小保方晴子さんです。ということで、小保方さんが論文の「ファースト・オーサー」になっているのです。

 このあと、「テラトーマ」は『あの日』の記述の中からきれいに消えます。

 これについて小保方さんは、恐らく「テラトーマができていない」ことに向き合いたくなかった。育児放棄したように、ぽーんと頭から抜けてしまったのだろう、という見方があります。

 しかしテラトーマができていない段階で若山氏がキメラマウス作りに応じるだろうか。想像してみてください。若山氏には、「テラトーマは『できています(バカンティ研では)』」とプレゼンした可能性のほうがありそうですね。
のちにこの「テラトーマ」が「STAP論文」のアキレス腱になります。論文に載せたテラトーマの画像は、小保方さんの博士論文、それもまったく関係ないテーマでの博士論文の画像の使い回しだったことがわかりました。これが致命的となり、共著者の若山氏による論文取り下げの呼びかけとなったのです。

 ではそれは、単なるケアレスミスだったのか。そうではない、そもそもテラトーマができたことは一度としてなかった、可能性が大なのです。だから画像が存在しないのです。

 そうしますと、この研究全体の仮説検証のストーリーを描いた責任者はやはり小保方さん。本当はできていないものを「できた」と言い、ほかの人をそのストーリーに沿って動かした立場の人です。



2) マウス系統の謎:若山氏の“陰謀”を推理する!

 実は、Amazonレビューでの“新説”にはもう少し続きがあります。それは、

「若山氏がマウス系統を秘密裏に変更したのではないか?」

というものです。


 これはまったく憶測、推論の域を出ません。しかし、この説を使えば、2014年の若山氏の言説の奇妙な変遷、そして「ES混入説」の不整合をきれいに説明できるのです。

 巷に流布する「若山氏主犯説」と比べても、こちらのほうがはるかに整合性があります。ここでは、あくまで推測の域を出ないのをお断りしたうえで、あえて「Amazonレビュー新説後半・若山氏の“陰謀”」をご紹介したいと思います。


(なお、この”説"については、現在「著作権者」を主張する方がいらっしゃいますが、Amazonレビューで最初に提起される1か月ほど前に別のブログコメントの中で提起した人物がおり、この人は「著作権者」を名乗る人とは別人であるらしいことが分かっています。このため、特定の誰かが「著作権者」と考えることが難しい状況にあります。現在主張されている方とは別の方が「自分こそが著作権者」と名乗り出てくる可能性もあります)



 この説のポイントは、

「若山氏が小保方さんに渡したマウスは、論文に載っていたOct4-GFPマウスではなく、Acr-GFP(アクロシンGFP)マウスだったのではないか。若山氏が秘密裏に変更していたのではないか」

ということです。

 これが、のちに「ES混入説」として誤って流布し理研報告書にも載ってしまった、というのです。
 ではなぜ、若山氏はそのような変更をしていたか?

 ここは本当に机上の想像でしかありません。しかしそれによれば、若山氏はマイクロマニピュレーターによる胚操作実験に倦んでいた。第六講でみますように、マイクロマニピュレーター操作は非常にハードな作業です。それに代わるより簡便な方法を考えた。それがすなわち、培養皿上で卵子に細胞核が自動的に入り、細胞分裂して細胞塊や仔や胎盤を形成するという方法です。そのために必要なのがアクロシン。

 アクロシンは精子の先体に存在するタンパク質分解酵素で、卵子の細胞壁を貫通する能力があります。そこでできたものは疑似精子といえます。

 『あの日』でいうこの部分、

 また、ジャームライントランスミッションを観察する実験の際には、マウスが自然交配するのに要する時間を節約するために、若山先生は幹細胞化した細胞からできたキメラマウスから「光る精子」を顕微鏡下で採取し、顕微授精させる実験を行っていた。(『あの日』p.106)

 この「光る精子」とは、「光る疑似精子」だ、とAmazonレビュー新説では指摘します。

 「Acr-GFPマウス」の体細胞(リンパ球など)をSTAP処理して光らせたもの。それを「CAG-GFPマウス」の卵子に受精させようとしたものだ、と。「時間を節約するため」というのは、小保方さん向けの方便だといいます。次世代シーケンサー使用を禁止していた(同p.128)のも、そのためだと。

 いかがでしょうか。

 若山氏にも、不誠実なところがあった。小保方さんは「テラトーマができていない」という研究の根幹を隠し通していたが、若山氏もマウスの系統変更を隠していたという罪があった。お互い隠し事をした同士の「同床異夢」がSTAP研究の実態だった。これがAmazonレビュー新説です。狐と狸の化かしあい、「囚人のジレンマ」とも呼べます。

 もちろんその場合でも、研究の根幹のアイデアを、必要な証明ができないまま掲げ続けた小保方さんの罪がもっとも重いことに変わりはありません。

 ここまで、推測に次ぐ推測を重ねてきました。当事者の発言がない以上、これ以上この説を確認することはできません。

 それにしても、ネット上に流布している「若山氏主犯説」こちらよりははるかに整合性のある説です。





 ここで、もうお1人のレビュアーさんにご登場いただきます。研究者の「仁」さんです。研究不正に関心があり、STAP事件についても関心を持っておられたそうです。上記のパルサさん説を強く支持したうえで、仁さんの言葉で再度、まとめてくださっています。
 こちらも、ご了承をいただきましたので引用させていただきましょう:



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5つ星のうち 2.0
<改題>情報の「切り貼り」と「切り抜き」から見えてくる真相, 2016/2/22
投稿者 仁

>>http://www.amazon.co.jp/review/R2LY60901P9VNH/ref=cm_cr_rdp_perm(固定リンク)



【旧レビュー】
理研が、問題発覚から一ヶ月以上(2014年3月まで)「STAP細胞論文の結論に揺るぎはない」と表明し、組織に守られ、不正認定を最小限に留めようと温情を示されていたにも関わらず、その事実に言及せず、「高圧的」や「嘲笑」という表現(147ページ)で、理研の調査委員会のせいで不正が結論づけられたかのように読者を誘導しています。なお、理研の予備調査は、2014年2月13日~17日にかけて行われました。小保方氏がこの本で指摘するようなバッシングが加熱する以前で、当時の理研は、小保方氏やSTAP細胞論文を守ろうとしていました。(その結果、理研自身が、批判にさらされることになったのは周知の通りです。)
この本では、そもそも論文の核心部分の説明に用いている図について、なぜSTAPと直接関係のない博士論文から転用したのかについて、一切説明がありません。記者会見の時に強弁したように、本当に実験結果を示す正しい図があるのなら、この本に掲載すれば良いのに…と思いました。
また、早稲田大学に提出した博士論文について、「最終ではないバージョンのものをまちがえて製本所へ持って行ってしまった」(73ページ)と言うのであれば、やはりこの本に、最終稿を掲載すれば良いのに…とも思いました。(もっとも製本して大学図書館と国会図書館に提供する博士論文を草稿と最終稿を取り違え、チェックもせずに提出するというのは考え難いのですが…)実際、昨年11月の博士号取消しの際に代理人を通じて出したコメントでは、「年度内に公表」ということでしたが、結局はそれも果たされていません。
気になったのは、話しの流れと無関係なのに実名を出されている登場人物(セレナ:34ページ、バネッサ:35ページなど)が複数いる一方で、真相に迫る部分で実名を出さない(ある先輩:99ページ、2人のテクニカルスタッフ:131ページ、シーケンス解析専門の研究者:150ページ、情報を教えてくれた共著者の一人:151ページ、理研の理事:213ページなど)実在確認が取れない登場人物が多数いる点に、意図的なものを感じ、違和感を覚えました。
これでは本の内容について、事実認定ができません。

【追補】
事実確認できる情報と合わせて読むことをお勧めします。
小保方氏が行っている事実の「切り貼り」にもまた、重要な意味があると思います。

【再追補:小保方氏による「切り取り」情報と「切り貼り」情報から見るSTAP問題の本質】

STAP細胞研究の根底を揺るがせた「テラトーマ」の架空性について

小保方氏が極力言及を避けている、博士論文から転用したテラトーマ画像こそ、STAP細胞の架空性を物語る物的証拠です。
『あの日』の記述(切り貼り情報)を信じるならば、p.56に「テラトーマを形成することはなかった」、「テラトーマに似た組織を作ることができた」とあり、小保方氏はSTAP細胞(スフェア細胞)からはテラトーマができなかった、ことが告白されています。
ところで、小保方氏が公開していながら、『あの日』では詳細が触れられていない(切り取り)情報は、STAP細胞由来とされるテラトーマに関する実験ノートです。
この実験ノートは、小保方氏の代理人弁護士により公開され、毎日新聞(2014年5月24日:4枚の写真のうち、1枚目と3枚目がテラトーマに関するもの:検索ワード「STAP細胞+小保方氏+実験ノート+公表」)に写しが掲載されています。
この実験ノートよれば、年代は不明ながら、12月27日に、テラトーマ形成を目的としたSTAP細胞の移植が行われたことが確認できます。
『あの日』の記述(切り貼り情報)を信じるならば、p.206に「テラトーマに関しては、私がアメリカ出張の間にできてきたサンプルだった。そして調査の結果それらは、すべてて既存のES細胞由来だったと結論付けられた。」とあり、このアメリカ出張は、p.113に「日本が正月休暇の間、アメリカで実験をしたいと思っていた」とあることから、『あの日』の前後の記述と照合すると、2012年末~2103年始であることがわかります。
これで、小保方氏の代理人弁護士により公開された実験ノートの日付が、2012年12月27日と確定しました。そして、この実験で形成されたテラトーマは、STAP細胞論文不正問題を契機とした調査委員会によって、ES細胞由来であったことが判明しています。
2012年12月は、笹井氏が小保方氏のユニットリーダー採用面接に立ち会うとともに、STAP細胞論文作成に参画したタイミングになります。
テラトーマができていないことがわかってしまうと、STAP細胞の実在性の根幹が揺らいでしまいます。そこで、慌ててテラトーマを作ろうとしたのが、2012年12月27日の移植実験です。しかし、STAP細胞由来のテラトーマは、調査委員会の解析結果からも、存在していないことは明らかで、STAP細胞論文のテラトーマは、実は架空のものであった可能性が高いと思います。
問題は、一体なぜES細胞由来のテラトーマが見つかったのか?

次の3つの可能性がありますが、私には詰め切れません。
1)誰とも知れない第三者が作成した。
2)若山研の誰かが作成した。
3)小保方研の誰かが作成した。

※この時点で☆3つ

【再々追補:切り取り情報に潜む真実】

小保方氏が理研CDBに採用される際に示したであろう論文における疑義-真臨氏への回答-

少なくとも次の3報に、図の使い回しや利益相反の未申告などの問題があります。

1)Tissue Eng Part A. 2011 Mar;17(5-6):607-15. doi: 10.1089/ten.TEA.2010.0385. Epub 2011 Jan 10.
"The potential of stem cells in adult tissues representative of the three germ layers"
<問題点1>Fig.2のFgf5の画像とFig.3のNat1の画像が同じ。
<問題点2、3>Fig.3のKlf4の画像を上下反転させるとFig.3のCriptoの画像が同じ。これらの画像の一部はFig.4のNat1と同じ。
<問題点4>Fig.2のKlf4の画像の一部が、Fig.3のSox2の画像の一部と同じ。
<問題点5>Fig.1は、博士論文のFig.6を上下反転したものと同じ。

2)Tissue Eng Part A. 2011 Jun;17(11-12):1507-15. doi: 10.1089/ten.TEA.2010.0470. Epub 2011 Apr 12.
"Development of osteogenic cell sheets for bone tissue engineering applications"
<問題点>「Disclosure Statement」に「No competing financial interests exist.」とセルシード社との利益相反を申告せず。

3)Nature Protocols 6, 1053?1059 (2011) doi:10.1038/nprot.2011.356 Published online 30 June 2011
"Reproducible subcutaneous transplantation of cell sheets into recipient mice"
<問題点1>Fig.5aのNumber of B cellsとFig.5bのNumber of neutrophilsが同じ。
<問題点2>マウスの株を記載していない。また、免疫不全マウスを使っているのにT細胞がある。
<問題点3>「Competing financial interests」に「The authors declare no competing financial interests.」とセルシード社との利益相反を申告せず。

本著では、これらを含む過去の不正についても、正直に認め、背景や理由を説明していただきたかった…というのが、私の率直な気持ちです。
なぜなら、小保方氏が戻る『あの日』は、大学院に入学する時点だと、私は思うから。良き師にさえ恵まれれば、違った人生を歩めたのかも知れません。
比較的短期間で、一人で一冊書き上げる集中力があることは、十分に理解できました。研究者の素養はあると思います。

小保方氏は、とうとうかつての恩師にも梯子を外されてしまいました。小保方氏の同意を得ることなく、Nature Protocolsの論文が、取り下げられてしまうとは、恩師とは思えない酷い仕打ちです。

真臨氏から、問われたので、小保方氏の過去の論文を精査し、再々追補することになりました。
その結果、意図的な改竄等を指摘せざるを得ないため、☆2つに下げることとします。

小保方氏には、ぜひ『あの日』の続編を執筆され、不正の全貌を明らかにしていただきたいです。博士課程時代・留学時代の不正の実態を、余すことなく告白されたときは、☆5つです。

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●STAP細胞とは、結局なんだったのか ⇒ 「多能性細胞」ではなく「自家蛍光細胞」



もうひとつ仁さんのコメントから、「若山氏の責任」に言及されたところを抜き出します。

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(仁さんコメント 3月12日)

若山氏についてですが、私としては、キメラマウスが一体何によって作成されたのか(若山氏がどんな手品?を使ったのか)は、追求すべきだと思っています。
でもこれは、小保方氏の既に認定された問題とは、別件として区別した方がわかりやすい、と思います。
STAP問題の全体像としては、一プロジェクトに異なる2つの問題があるとすると、小保方氏が『あの日』で訴えたかったことが理解できるように思います。

ちなみに、小保方氏が作ったのは、正確には、多能性(Pluripotency)のあるSTAPではなく、自家蛍光(Autofluorescence)するSTAA(Stimulus-Triggered Acquisition of Autofluorescence)細胞とでもいうべきもので、STAP細胞で作ったテラトーマは存在しません。
だから、テラトーマの画像は、全く別の研究、別の実験の画像を、博士論文から転用せざるを得なかった、と考えるなら、しっくりきます。
つまり、小保方氏は、論文不正(捏造)の背景として、研究不正(できていないことをできたように振る舞った)も行っています。

いずれにせよ、若山氏も悪いし、小保方氏も悪い、ということかとは思います。
で、どっちがより悪いかというと、テラトーマを捏造した方が、より悪いと思います。
なぜなら、そもそも多能性がない細胞ということがわかっていたら、わざわざ、それを使ってキメラマウスを作るまでもないので。

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 ・・・ここまで、いかがでしたか?
 パルサさん、仁さん(どちらもパルサ説の人とみなせる)文体の異なるお二人のレビュー内容は、今の時点ではAmazonレビューにしか出ていないものです。
(今回、初めて引用させていただきましたが)
 大人の皆様が読まれて、納得いただけましたでしょうか?

 理研のES混入説は、STAPの存在が疑われた当初から、ありそうな仮説に当てはめた説であり、細かくみると辻褄の合わないところがあるのです。パルサ説、仁説では、そのあたりがクリアになっているかと思います。

 また「論文不正」ではなく「研究不正」、
 これも、仁さんのこのすぐ上のコメントに出ていますね。
 そのようにこの問題を捉えないといけません。
 うっかりミスで論文に瑕疵をつくったわけではない、そもそもの出発点でできていないものをできたと言い、研究をすすめたことの結果が論文不正なのです。

 だから、小保方晴子さんが今、研究界から追放された状態になっているのも、身から出た錆、仕方のないことなのです。
 
 
 このブログではお二人のご了承を得て本日時点でのレビューを引用させていただくにとどめました。
 また、お二人ご自身でまとめなおして世に出される機会がきっとあると思いますので、その日を楽しみにお待ちしたいと思います。


これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936058.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(7)―“惑わされる”理系男子:女性必見!もしもあなたの彼が「隠れ小保方ファン」だったら
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

あの日


 今日は「国際女性デー」。
 『あの日』(小保方晴子、講談社、2016年1月)読書日記 第8弾です。

 今回は、社会学者千田有紀氏による、Yahoo!ニュース記事
「小保方晴子さんの『罠』 私たちはなぜ彼女に魅了されるのか」(2016年3月4日)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sendayuki/20160304-00055024/ 

 この記事にかこつけて、いわば「本歌取り」をして、「小保方さんに惹きつけられる仕事の世界の人々」の心理をさぐってみたいと思います。

今回の骨子です:

●「キラキラ女子」が成り上がる「朝ドラ世界」とIT企業
● 現実化してきたヒロインたちの転落と不信、『嫌われる勇気』
● 女性版「ヒラメ型」は男性よりきつい?


 それではまいりたいと思います―

●「キラキラ女子」が成り上がる「朝ドラ世界」とIT企業


「小保方さんは、会社で働いたことのある若い女性の仕事上でぶつかる困難を投影するアイコンになったのである。そして仕事で成果をあげたようにみえても、失敗したときには一転して、ひとり批判されるのではないかという成功不安を投影する対象でもある。」(上記記事より)

 なるほど〜。
 『あの日』26万部、それを支えているのは20−30代女性なのですと。あと「自分の娘や孫がいじめられている気がする」というおとしより世代なのですと。

 あるTVでの解説によれば、『あの日』の前半は、「朝ドラヒロイン」そのままなのだそうです。良い先生に出会って、温かい言葉をかけてもらって、ちょっとドジな晴子ちゃんがチャンスを貰って次のステージに行く、と。ヒロインの目線でぐんぐん進み、プレゼンするたびに扉が向こうから開いていきます。
 
 また、後半では小保方さんの「論文の瑕疵」が明るみに出、叩かれ、内臓も破れる思いを何度もし(第5回の記事参照)、繰り返し泣く場面が出てきますが、それでも
「私は誰かを騙そうとして図表を作成したわけでは決してありません。一片の邪心もありませんでした」
と、心の正しさを語ります。それは、
「朝ドラヒロインの私が悪いわけがない!」
というメンタリティなのだそうです。
 
 これもまたなるほど〜〜。
 読者の皆様、いかがですか?

 わたしは小保方晴子さんというと、あまりこれまで結び付けられませんが、ここ数年ネットで流行っている言葉、「キラキラ女子」というのを思い浮かべます。

「容姿端麗でセンスもよく、明るくて性格もいい。もちろん頭もよく、仕事だってバリバリ」
「仕事だけでなく、おしゃれもプライベートも全方位で手を抜かない」
「ファッションもメイクも恋愛も仕事も楽しんでる」

 そういう、キレイで仕事もできる欲張りな若い女性のことを指します。

 IT企業のサイバー・エージェント(CA)が、「キラキラ女子」を採用し、業績躍進の原動力としたのは有名。
「僕、よく『顔採用』してるといわれるんですけれど、それは正直いって違うんです。美女を集めて業績悪かったら、僕はアホじゃないですか。ただ、社内の女性を見ると、すごくキラキラしている雰囲気はある。実際、女性としても輝いていて、かつ仕事も活躍しているし、頑張っている。できる女性が多い。みんな、公私が充実しているのは確かですね」
(CA社の藤田晋社長、2013年2月23日日経新聞)



●現実化してきたヒロインたちの転落と不信、『嫌われる勇気』との共通点


 しかし、そういう「キラキラ女子」はまた、「いつ切られるかわからない」不安も抱えています。
 以下は、今年1月26日「ダイヤモンド・オンライン」に載った、「キラキラ女子残酷物語」―。


*********************************************

――女性社員を「キラキラ女子」にすることは、採用戦略で大切ですか?

A氏 もちろんです。フェイスブックなどで、人事や広報の社員が自社の「キラキラ女子」をシェアしまくっていますね。ビジネスサイトなどで取材を受けると、一気に数千人にシェアして、「いいね!」と称え合う。20代後半までの女性社員も、「先輩、素敵です!」って……(笑)。
 あれは会社のPR戦略であり、採用戦略です。女性社員をいかにキラキラにするか。それが上手くいけば、男子学生のエントリーが確実に増えます。2000年前後から業績が上昇しているベンチャーのB社などは、そのあたりは実によくできていて、新卒採用の姿としてはもう、「上がり(ゴール)」です。社長が私生活を含め、目立つ人でしたからね。
(中略)
――先ほどのお話にも出ましたが、そうした「キラキラ女子」「体育会系女子」は、リストラ要員にされやすいのでしょうか。
A氏 会社からすると、辞めさせやすい存在です。「キラキラ女子」「体育会系女子」の多くが社内恋愛の末、結婚した相手の男性が今の会社に勤務しています。30代後半〜40代の女性でまとめ役の存在の社員が、こう言うわけです。当然、社長(グループCEO)の意向を踏まえ、発言をしています。
「うちの会社の経営状態は、芳しくない。人員を減らすことになるけど、あなたたちのご主人の雇用は(会社が)きちんと守るから……」
 暗に辞表を出すことを求めるのです。「キラキラ女子」「体育会系女子」のほとんどが、抵抗することなく辞めていくのです。ベンチャーのリストラでは、女性社員のまとめ役が社長の意向を受けて、退職勧奨の最前線に立ちます。女性社員との1対1の話し合いなどで、追い詰めます。ヒステリーには叱らない。クールに、ねちねちと接していきます。そのときはもう、目の前にいる「キラキラ女子」「体育会系女子」は部下ではないから……。追い詰められ、気を失った女性もいました。

(「一流企業のマネジャーが明かす、学歴重視の新卒採用をやめられない理由」ダイヤモンド・オンライン2016年1月26日)

*********************************************

 いかがでしょうか。
 花のいのちは短くて。わたしはここ数年持ち上げられていた「キラキラ女子」について、今年になって出たこの記事にちょっと暗澹となりました。

 そう、キレイだ、可愛い、とちやほやされる時期は短いのです。
 実は女性活躍推進などと言っても、女性を異性として消費するだけの存在とみている「男性目線」は全然変わっていない。どんなに美しく生まれついても短い賞味期限で消費される、労働力としてはひたすら不安定な存在です。

 今月7日付日本経済新聞には、「マタハラ隠し」の字が躍りました。
「妊娠などを職場に報告した女性が『能力不足』を理由に解雇される事例が目立つ。『妊娠したなら辞めて』という従来のパターンとは違い、妊娠に触れないのが最近の特徴という。」
 妊娠したら理由もはっきりせず切られる。女性の人生に対して企業社会はどこまでも理不尽です。


 そのように、女性たちにとってチヤホヤされ持ち上げられる時代から一転、会社というところは牙をむきます。上司たちは手のひらを返します。

 小保方晴子さんの手記『あの日』の後半は、牙をむき手のひら返す会社と男性上司たちの仕打ちを、ホラー小説ばりに描き出します。
 それは現役でお勤めする「キラキラ女子」たちにとってリアリティのある恐怖かもしれません。


 そういう風に、企業社会の中で不安定な若者〜中堅の心を掴んだ本としては、2年前に流行った『嫌われる勇気』もそうでした。
 他人からの評価に左右される必要はない、他人の期待に応える必要はない。理不尽な企業社会と上司たちに対して「精神的マッチョ」になって心を硬くしてやり過ごせ。そういう教えでした。
 『嫌われる勇気』が出た2014年は、研修でお出会いする30代若手リーダーたちと奇妙に話がかみ合わず、困った年でもありました。この世代の人にとって『嫌われる勇気』はバイブルのようなもので、下手をしたら、同じ会社の上司など彼らにとって嘲笑の対象だった可能性があります。

 若者を使い捨てにし、上司たちが自己保身に走る企業社会の閉塞感を背景に若者の心を取り込んだ『嫌われる勇気』が、そこへ取り込まれた若者たちの心をますます頑ななものにした、そういう現象をみました。



●女性版「ヒラメ型」は男性よりきつい?


 わたしは数年前に仕事でお会いしたある「キラキラ女子」のことを思い出していました。

 ある中堅食品メーカーの総務部の女性でした。31歳独身。ほっそりして、可愛くてファッショナブル。オープンセミナーの中に入って華やいだ空気を持ち込みました。だれかが言った言葉には間髪入れず合いの手を入れる、それも内容のきちんとかみ合った合いの手を入れる、その当意即妙の受け答えはお見事でした。


「仕事、楽しくてしょうがないんです。休日出勤もしょっちゅうです」
 彼女は目をキラキラさせて語りました。
 きっとこんな女の部下と一緒に仕事をしたら上司たちも会社に向かう足取りも軽くなるだろう。


「彼女は社長や役員からも一目置かれているんですよ」
 上司の次長は相好を崩しました。

 採用シーズンになると華のある彼女は企業説明会で引っ張りだこ。女性の少ない会社の中の「出世頭」である彼女、華やかな容姿と才気煥発な人柄で、「広告塔」として男女大学生を惹きつけます。

 セミナーの前に実施した360度調査では―、 
 彼女の上司は、惜しみなく彼女に承認を与えていることがわかります。彼女自身もモチベーション高く仕事をしていることがわかります。

 ところが。
彼女の1人だけいる女性部下は、上司である彼女に厳しい評価をつけました。「承認」を一切貰っていないようでした。モチベーションも惨憺たるものでした。どの項目も恐るべき低い数字でした。

 何が起こっていたのだろう。

 もうひとつ、「承認研修」では、研修後にかならず「承認の宿題」をやっていただきます。
 彼女から返ってきた宿題は、どうだったか。

 そこでは、彼女から行った「承認」は教科書通り完璧なものでした。それに対して部下の反応は。「研修で習ってきたのですか」と苦笑した、とのことでした。

 過去の経験では、こういう反応は、それまでの文脈とあまりにかけ離れた行動を上司がとった時に起こります。つまり、それまでは「承認」らしいことはまったく行っていなかった。むしろ真逆の行動をとっていた。
 ・・・と考えると、先ほどの360度調査の結果と符合します。


 あくまでわたしの想像ですが、ひょっとしたら、上司に可愛がられるために全神経を使っている人は、部下に対して気が回らなくなり、説明不足や、そのために起こる行き違いに対する理不尽な叱責を起こしているかもしれません。
 いわば、「ヒラメ型上司」の女性版です。それも自分の賞味期限が下手をするとすごく短いのかもしれない、上司が手のひらを返したとき守ってくれるものが誰もいないかもしれない、という恐怖感があればあるほど、上司のほうにだけ全神経を集中してしまうかもしれないですね。男性より「キラキラ女子型女性管理職」のほうが、ヒラメ型いわば二面性がきつく出るかもしれないですね。


 残念ながらこの会社とはその後ご縁がありませんでしたが、「彼女」が会社の大理石のフロアを歩くときの踊るような足取りと「どう?美しいでしょう。私、この会社のエントランスが大好きなんです」と手を広げたゼスチャー、それに襟ぐりの大きく開いたオレンジ色のフィット&フレアのワンピース姿が印象に残っています。
 今は、30代半ばになっているはず。あの彼女はどうしているやら。


 まとめです。

 
 今まさに「朝ドラヒロイン」として世界をつきすすむ、若く美しき女子たちには、このブログの言葉は耳に入らないかもしれません。彼女らにとって世界は扉を開けてくれるもの。そして教授や上司といった、自分にチャンスを与えてくれる”準主役級”のターゲットの人たちにに全神経を注ぎ、それ以外の人はサブキャラとしておざなりに扱うことが、あまりにも自然なのかもしれません。
 
 それでも、彼女たちに言いたい。
 この本はあなたがたが自分を投影する価値はないよ、と。

 小保方晴子さんはしてはならない研究不正をした。このことは今、Amazonレビューとコメント欄の中で過去の理研調査委員会の結論にもなかった新しい観点が生まれつつありますが、そこでも小保方さんの役割ははっきりしています。単純ミスでは済まされない、研究者としてしてはならないことをしたのです。自分のしたことの大きさのために処分されたのです。

 そこは、朝ドラには絶対「ない」展開ですが、この場合はそうなのです。

 そしてわたしが企業社会に望むことは、

 一部のお顔やお色気で成り上がろうとする野心高き女子たちは置いておいて、そうでない大多数の真摯な働き女子たちには、普通に働き手としての扱いをしてあげてください。

 可愛らしい異性としてチヤホヤすることも正しくないし、ちょっと歳をとったから、妊娠したからと切り捨てることも正しくありません。人としてしっかり見て、戦力として能力や実績で評価するとともに妊娠出産に関わらず、働く権利を保障してあげてください。
 わたしが関わらせていただく先ではそうなりますように。
 親御さんたちが心を込めて育てた大事なお嬢さん方が、お色気などに頼ることなく、しっかりと誇りをもってその人生を生きられますように。


 

これまでの記事:
●社会人のための「小保方手記」解読講座(1)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935543.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(2)―印象的な”ツカミ”のエピソードはこう読め!Vol.2
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935599.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんのプロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
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●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(6)―「私の会社でも」読者からのお便り
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>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936162.html
 
●社会人のための「小保方手記」解読講座(8)―「キラキラ女子」の栄光と転落、「朝ドラヒロイン」が裁かれる日
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936340.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(9)―「STAP細胞はあります!」は本当か?Amazonレビュアーが読み解くプロジェクトの破綻
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936570.html

●社会人のための『小保方手記』解読講座(10 )―再度「STAP細胞はありません」―「ウソ」と真実・ネット世界と現実世界のギャップ、社会人の分断リスク
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51936986.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(11)― 騙されないためのケーススタディー:小保方晴子さんが使った「ヒューリスティック(自動思考・錯覚)」の罠
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937126.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(12)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(前編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937436.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(13)情けないぞおじさんたち!!「ええかっこしい上司」「放置プレイ上司」そして「欲得・不正系上司」(後編)
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937542.html

●社会人のための「小保方手記」解読講座(14)(最終) まとめ:あなたの会社から「モンスター」を出さないために―女性活躍、発達凸凹対応、そして改めて「行動承認」
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937655.html


●エイプリルフール特別企画・シリーズ番外編:社会人のための「小保方情報」解読講座
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51937719.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ・・・……<<<エウダイモニア通信>>>……・・・
                          発行日 2016.3.1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ※「エウダイモニア」は「幸福」、また「栄える」という意味のギリシア語
です。
 「業績1位」の山を築いてきた承認マネジメントの研修講師・正田佐与が、
 経済的繁栄を含めたわたしたちの「幸せ」についてご一緒に考えるメルマガ
です。
 
※このメールは、正田が過去にお名刺を交換させていただいた方、イベントや
セミナーに  ご来場いただいた方にお送りしています。
ご不要の方は、お手数ですがメール末尾にありますURLより解除ください。

■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ┃本日の話題 ☆☆☆☆☆
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【1】 小保方手記解読講座、「社会人 小保方」でトップになりました。
   〜正田流・小保方晴子さんのプロファイリングは「こういう人」!?

【2】 連載「ユリーの星に願いを」第3回「失敗の共有できていますか?」
 ※メルマガではこの記事のタイトルが間違っていました。ここでは修正しました。
  大変申し訳ありません

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【1】 小保方手記解読講座、「社会人 小保方」でトップになりました。
   〜正田流・小保方晴子さんのプロファイリングは「こういう人」!?

 早いものでもう3月。読者の皆様、年度末へ向けてスタートダッシュをされた
でしょうか。
 さて、前号から配信を開始した「社会人のための『小保方手記』解読講座」、
お蔭様できょう3月1日現在、Googleで「社会人 小保方」で検索すると
トップになりました。メールニュース読者の皆様ご愛読ありがとうございます!

 この本『あの日』は先週25万部を突破。今年1番のベストセラーになるのは
間違いなさそうです。
 内容は、残念ながら事実関係の信頼性が低いと言わざるをえません。たとえば、
先週配信の内容では、東京女子医大の研究員時代に小保方さんが初めて行った
学会発表の場が事実と異なっていることがわかります。本来は日本免疫学会総会で
あったものが、シカゴでのバイオマテリアル学会の年次大会と、より華々しい
ほうにすり替わっています。
 一事が万事、その調子で自分に都合のよいほうにすり替えたり、都合のわるい
ことはスルーしたりと、事実の加工がおこなわれていると考えたほうがよいです。

 でも25万部売れたということは、日本人の400人に1人は読んでいるわけ。
あなたの部下も読んでないとは言い切れません。
 
 というわけで、良識的な社会人の方々が「この本」によってその良識が揺るが
ないために。また同僚の方々との大切な信頼関係が揺るがないために。
 と言い訳しながら、「社会人 小保方」でトップ独走中のシリーズを続けたいと
思います。
 今回は、「小保方晴子さんはどんな性格、特性をもった人か」という、プロファ
イリングのシリーズです。

●社会人のための「小保方手記」解読講座(3)―1位マネジャー製造講師・
正田が読む・晴子さんのプロファイリングはVol.1
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935610.html  ―正田がふだん使う5種類の人分析ツールを使って小保方さんの個性を解読し
ます。

●社会人のための「小保方手記」解読講座(4)―正田が読む・晴子さんの
プロファイリングVol.2 小保方さんの生育環境は
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935705.html 
―もともとの個性に加え、家庭環境によっても助長されてきた可能性がありま
す。

●社会人のための「小保方手記」解読講座(5)―プロファイリングVol.3 
多彩な感情表現は人を被害者的にする!心理学セミナー、カウンセリングの副
作用のお話
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51935878.html 
―さらに、現代の社会人向けのセミナーやカウンセリングがその個性を助長し
た可能性があります。要注意です。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【3】連載・「ユリーの星に願いを」第3回「失敗の共有できていますか?」
By ユリー
 ユリーのプロフィール:40代女性。インターネットベンチャーの創業、マー
ケティングやプランニング、プロジェクトマネジャー、コンサルティング、
研修講師などを行う。現在の仕事は起業家支援、新規事業開発や商品プロデュ
ースなど。
***********************************

「失敗の共有できていますか?」

こんにちは、ユリーです。皆さまは宇宙に興味はありますか?私は、物理学
的な知識はほとんどないのですが、宇宙の誕生にはとても興味をもっています。
 先日、11人目の日本人宇宙飛行士の大西卓哉さんのインタビュー記事を読み
ました。どこを読んでも興味深くとても学ぶところの多い記事でしたが、大西
さんが、前職の旅客機の操縦士訓練で経験した「失敗の共有」に関する話が特
に印象的で、皆さまにもご紹介したいと思います。
 
“パイロットの世界では、最初のチームが失敗をして、同じ試験を受けた別の
チームが同じ失敗をしたら、教官が叱るのは最初のチームです。「なぜお前は、
自分の失敗を次のチームに伝えなかったんだ!」と必ず言われます。次のチー
ムを怒ることはありません。失敗を共有して、チームとして最善のパフォーマ
ンスを発揮するマインドセットは、パイロットは徹底しています。”

 後続のチームに自らの失敗を共有すれば、当然その失敗を教訓にした後続チ
ームが高得点をとる確率が高まり、先行の自チームは操縦士になるチャンスを
失う可能性があります。「競争」原理は、最善のチームのためのマインドセッ
トには不要なのです。
 もう何年も前のことです。先輩(経営者)が、
「部下の複数の部長同士を競争させることで、社内を活性化し業績を向上させ
るのだ」
と私に言いました。
私は、
「いや、それは違う。今の先輩の会社でそんなことをしたら、各部長はマイナ
スになる情報を隠し、部門同士の協力関係を拒み、部下を翻弄し一般社員が疲
弊して、全体業績を下げる。」
と危惧を伝えました。しかし、一回り以上年長で経営者として実積豊富な先輩
に対して、この危惧を理解してもらうだけの説明能力が当時の私にはありませ
んでした。
結局、私の危惧は的中し、先輩の会社は「承認不全」が蔓延し、業績を上げる
ことはできませんでした。   
 競争を否定はしません。ただ、組織において競争を有効に機能させるために
は、「環境」が必要だという立場です。承認が組織全体に行き渡り、社員相互
が承認しあい、組織としてのビジョン、ミッション、そしてバリューが浸透し
た状態であれば、競争は組織の健全な成長に貢献するはずと思います。
競争の前に承認があるべきで、承認無き競争は組織を崩壊させると思うのです。

 そして大西飛行士のかつての職場の全日空(ANA)の企業カルチャーを、正田
先生が2012年に詳しく取材なさっています。ぜひお読みください。

>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51820115.html 


□□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ┃今日の一筆箋  
□□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 今週の「ユリーの星に願いを」、いかがでしたか?
 ユリーさんと同じような経験、コンサルタントや「士業」の方々はおもち
なのではないでしょうか。
 原稿の最後に、4年前に全日空を取材させていただいたときのブログ記事の
URLを、ユリーさんがつけてくださいました。
 そんな以前の記事まで読んでいただいていて、びっくり。感激でした。
 「承認」に関心のある方々にとって繰り返し参照していただける、信頼できる
ブログになっているといいですね。
 自分個人がどうなりたいというのはないですが、そんなことを思いました。
 「小保方手記」解読講座のシリーズはどうなのかって?
 さあ、皆様にお役に立つようですといいですが…。

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│  近著『行動承認―組織の能力を最大化する「認める力」』
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