「それでも自己啓発本を信じますか?」と、刺激的なオビ。


 きのうに引き続き「疑似科学シリーズ」ということで、『その科学が成功を決める』(リチャード・ワイズマン著、文藝春秋刊、2010年1月)を読みました。



■自己啓発や成功哲学で言う、「成功した自分の姿を思い浮かべる」という手法は成功につながらない。むしろ挫折に弱い人間をつくる
■「能力や才能をほめる子育て」は、失敗を恐れる弱い子をつくる


など、従来の自己啓発やコーチングの常識を覆す内容がオンパレード。それぞれ、ちゃんとした実験で立証しています。


(じゃあ、子どもをほめるのは意味がないのかというと、努力をほめるのはよいのだそうです。努力をほめれば、努力をいとわず困難にチャレンジする子をつくります。わたしどもでいう「行動承認」ですね)


 割とショッキングだったのは、


「1950年代、イエール大学の学生で目標をもっていた学生、もっていなかった学生のその後を調べると、前者のほうが成功していた」


 という、感動的なエピソードの否定。実は、そういう実験をした形跡そのものがなく、「都市伝説」のようなものであろう、という。


 この話は自己啓発の世界でもコーチングでもワリと普通に信じられている。(私はある時期から使わなくなっていたけれど)


 で、数々の「常識のウソ」を暴いたあと、だれでも簡単に幸せになるやり方は何かといえば、


●自分の目標(現実的なもの)を人に話す
●笑顔で過ごす
●日記をつける
●感謝する
●弱点を最初にさらす
●犬を飼う
●クラシック音楽を聴く
・・・


などです。常識的ですね。
やっぱり、基本はだいじです。


 このほか、「みんなで話し合うと独創的なアイデアは生まれない」など、ブレストの効用の否定につながるものもあります。

 「衆知を集める」は、情報収集とか参画意識を高めるうえではいいけれど、徹底的に質の高いアイデアという面では良くないのかもしれない。


 「独創的なアイデアの産み方」を知りたい人にもお勧めです。


 
 著者、リチャード・ワイズマンは英国ハートフォードシャー大学教授で、厖大な被験者のデータを分析する科学的アプローチを得意とし、いわゆる超常体験、超自然現象を疑問視する研究によっても国際的に有名なのだそうです。


 なのでこの本もちゃんとした本だと思いますが、著者名がリチャード・ワイズマン「博士」になっているところがなんだかこけおどしっぽい…。
 この人の前職はプロマジシャンだったのだそうです。


 きのうの『代替医療のトリック』の著者、サイモン・シンの筆致がジャーナリストらしく、平易だけどまじめだったのに比べると、「トリッキー」なのが鼻についてしまったので星4つにしました。でも内容はまじめです。




神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
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